建物の水勾配構造
【課題】水勾配を簡易に形成することができる建物の水勾配構造を提供する。
【解決手段】建物の張出屋根部15には屋根ユニット40が取り付けられている。屋根ユニット40のフレームアセンブリ41は、建物の躯体に連結される下側フレーム42と、野地板46や断熱材47を下方から支持する上側フレーム43と、下側フレーム42と上側フレーム43とを連結する複数のブラケット44とを有している。複数のブラケット44は縦板部44aと横板部44bとをそれぞれ有し、縦板部44aが、上側フレーム43の側面部に所定の重ね代で固定されるとともに、横板部44bが、下側フレーム42の上面部に当接した状態で固定されている。フレームアセンブリ41では縦板部44aにおける重ね代が複数のブラケット44で各々定められており、その重ね代に応じて屋根面に所定の水勾配が形成されている。
【解決手段】建物の張出屋根部15には屋根ユニット40が取り付けられている。屋根ユニット40のフレームアセンブリ41は、建物の躯体に連結される下側フレーム42と、野地板46や断熱材47を下方から支持する上側フレーム43と、下側フレーム42と上側フレーム43とを連結する複数のブラケット44とを有している。複数のブラケット44は縦板部44aと横板部44bとをそれぞれ有し、縦板部44aが、上側フレーム43の側面部に所定の重ね代で固定されるとともに、横板部44bが、下側フレーム42の上面部に当接した状態で固定されている。フレームアセンブリ41では縦板部44aにおける重ね代が複数のブラケット44で各々定められており、その重ね代に応じて屋根面に所定の水勾配が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物屋外の屋根面やバルコニ床面等に水勾配面を形成するための建物の水勾配構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅等の建物において、陸屋根の上面に水勾配を形成するための各種技術が提案されている。例えば、屋根材を支持するための支持金物として各々高さ寸法の異なる複数種類の支持金物を用い、それにより屋根材に勾配を付ける技術が知られている(特許文献1参照)。より具体的には、建物の小屋梁に複数の母屋材が連結されるとともに、その母屋材の上に各々高さ寸法の異なる複数種類の支持金物が固定され、その複数種類の支持金物の上に屋根材が支持される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−4187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成において、高さ寸法の各々異なる複数種類の支持金物を用意することは製造コストの観点からして望ましくないと考えられる。また、複数種類の支持金物を用い、さらにそれらの支持金物を母屋材(建物の躯体)に各々固定することを考えると、建物施工の作業性にも優れていないという不都合があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、水勾配を簡易に形成することができる建物の水勾配構造を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。
【0007】
第1の発明は、建物の屋外部分に敷き板部材が設けられており、その敷き板部材の上面に水勾配面が設けられている建物の水勾配構造であって、
前記建物の躯体に連結される第1フレームと、
前記敷き板部材を下方から支持する第2フレームと、
前記第1フレームを下側、前記第2フレームを上側としてこれら両フレームを連結する複数のブラケットと、
を有してなるフレームアセンブリを備え、
前記複数のブラケットは、上下方向に延びる縦板部と、その縦板部に直交する方向に延びる横板部とをそれぞれ有し、前記縦板部が、前記第1フレーム及び前記第2フレームのうち一方のフレームの側面部に所定の上下方向の重ね代で固定されるとともに、前記横板部が、他方のフレームの上面部又は下面部に当接した状態で固定されており、
前記フレームアセンブリにおいて前記縦板部における前記重ね代が前記複数のブラケットで各々定められており、その重ね代に応じて前記水勾配面に所定の水勾配が形成されていることを特徴とする。
【0008】
上記構成では、フレームアセンブリにおいて第1フレームに対する第2フレームの高さ位置が複数のブラケットにより調整されるようになっており、それにより水勾配面に所定の水勾配が形成されるようになっている。この場合、複数のブラケットはそれぞれ、縦板部が、第1フレーム及び第2フレームのうち一方のフレームの側面部に所定の重ね代をもって固定されており、これら各重ね代を水勾配に応じて各々調整することにより、所望の水勾配を形成することができる。つまり、同一構成のブラケットを使用して、所望の水勾配を形成することができるようになっている。これにより、第1フレームに対する第2フレームの高さの違いに応じて各々異なるブラケットを用いることをしなくてもよくなり、その点、製造コストの上昇が抑えられる。また、所定の水勾配に応じて傾斜して設けられる第2フレームは、第1フレームと共にフレームアセンブリとして設けられているため、建物施工時には、少なくともフレームアセンブリを含むユニット体を建物の躯体に対して取り付ける作業を行えばよく、建物施工の作業性が向上することとなる。以上により、建物の屋外面において水勾配を簡易に形成することができるようになる。
【0009】
第2の発明は、前記フレームアセンブリにおいて、前記第1フレームと前記第2フレームとは互いに交差して設けられており、前記第2フレームには前記第1フレームとの交差点に前記ブラケットが設けられていることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、互いに交差して設けられる第1フレームと第2フレームとがブラケットにより相互に連結されてフレームアセンブリが構成されている。この場合、ブラケットは、フレームアセンブリのフレーム結合と水勾配面の勾配調整との両方の役目を担うものとなっており、部材の兼用化を実現できる。つまり、フレーム結合用の部材と勾配調整用の部材とを各々個別に設けることが不要となっている。
【0011】
第3の発明は、前記第1フレームは、前記建物の外壁よりも外側に張り出して設けられる片持ち梁部材を含むものであり、前記第2フレームは、前記片持ち梁部材に対して交差しかつ架け渡された状態で設けられていることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、屋根や屋外床(バルコニ床)を、建物の外壁よりも外側に張り出した片持ち構造にして設けられることができ、その屋根や屋外床の上面において所望とする水勾配を簡易に設けることができる。
【0013】
第4の発明は、前記建物は、床及び天井の大梁と柱とからなる鉄骨ラーメン構造の建物ユニットを複数用いて構築されたユニット式建物であり、前記片持ち梁部材は、前記建物ユニットの外壁部となる位置に、前記大梁に対して屋外側に張り出すように連結されていることを特徴とする。
【0014】
鉄骨ラーメン構造の建物ユニットを複数用いて構築されたユニット式建物は剛性が高い。したがって、上記のとおり建物ユニットの大梁に片持ち梁部材が連結される構成は、建物の外壁よりも外側に張り出して屋根や屋外床(バルコニ床)を設ける上で好適である。
【0015】
第5の発明は、前記第2フレームは、その長手方向に分割されてなる複数の梁材よりなり、それら各梁材同士がそれぞれ異なる傾斜角度を有する状態で連結プレートにより互いに連結されており、前記複数のブラケットは、前記縦板部が前記第2フレームの側面部に固定され、かつ前記第2フレームとの重ね代が各自調整されているとともに、前記横板部が同一の高さ位置に並ぶようにして配置されていることを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、第2フレームの長手方向において同フレームを山形や谷形等の形状に折り曲げた状態にでき、屋根面や屋外床面における水勾配の方向(排水の方向)を両流れや中央流れなど、任意に設定することができる。
【0017】
ここで、上記のように屋根や屋外床(バルコニ床)を片持ち構造にする場合には、片持ち梁部材(第1フレーム)を短手方向、第2フレームを長手方向とする構成が想定され、かかる構成においては長手方向の両側に排水できる構成となる。
【0018】
第6の発明は、前記敷き板部材は、複数の板材に分割されて前記第2フレームの上方に敷設されるものを含み、前記複数の板材として、板厚の違いによりその上面の勾配方向が互いに異なるものを有していることを特徴とする。
【0019】
上記の水勾配構造では、第1フレームに対する第2フレームの高さ調整により水勾配面に水勾配を設定できることに加え、断熱材等からなる葺き板部材(複数の板材)の板厚の違いによっても水勾配面に水勾配を設定できる。この場合、第2フレームの高さ調整による水勾配の傾斜方向と、葺き板部材の板厚の違いによる水勾配の傾斜方向とを各々別に設定することにより、屋根面や屋外床面において排水の方向を多様に設定でき、設計の自由度を高めることができる。この場合、雨水等を好適に排水ポートに導くことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】張出屋根部の構成を説明するための断面図。
【図2】張出屋根部の構成を説明するための断面図。
【図3】張出屋根部の構成を説明するための断面図。
【図4】屋根ユニットの主要な構成を分解して示す分解斜視図。
【図5】建物の概略を示す斜視図。
【図6】(a)は、断熱材において各断熱板片の上面における傾斜方向を示す図、(b)は、フレームアセンブリにおけるフレーム傾斜方向を示す図。
【図7】(a)は、断熱材において各断熱板片の上面における傾斜方向を示す図、(b)は、フレームアセンブリにおけるフレーム傾斜方向を示す図。
【図8】(a)は、断熱材において各断熱板片の上面における傾斜方向を示す図、(b)は、フレームアセンブリにおけるフレーム傾斜方向を示す図。
【図9】(a)は、断熱材において各断熱板片の上面における傾斜方向を示す図、(b)は、フレームアセンブリにおけるフレーム傾斜方向を示す図。
【図10】図9の構成をより具体的に示す図。
【図11】図10の構成の変形例を示す図。
【図12】フレームアセンブリの変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、複数の建物ユニットにより構築される二階建てのユニット式建物での具体化を想定しており、その上階部分における張出屋根部分に、本発明の建物の水勾配構造を適用することとしている。
【0022】
建物の概略を説明すると、図5に示すように、建物10は、複数の建物ユニットからなる一階部11と、同じく複数の建物ユニットからなる二階部12とを有し、その二階部12の上方には、フラットルーフ(陸屋根)タイプの屋根部13が設けられている。屋根部13には、その周縁部においてパラペット14が設けられている。また、屋根部13の一部は、建物10の一側面において二階部12の外壁よりも外側に張り出しており、それが張出屋根部15となっている。張出屋根部15は、屋根張出方向(建物外壁に直交する方向)が短辺、それに直交する方向(建物外壁に平行となる方向)が長辺となる長尺状をなすものとなっている。
【0023】
ちなみに、建物ユニットについては周知であるため、同ユニットの図示は省略するが、その構成を簡単に説明すると、建物ユニットは、鉄骨ラーメン構造を有するものであり、各々長方形状に組まれた床大梁及び天井大梁と、それら各大梁の四隅に配設されて床大梁と天井大梁とを連結する4本の柱とを備え、これら床大梁、天井大梁及び柱により直方体状の骨格が形成されている。床大梁及び天井大梁は断面コ字状の溝形鋼よりなり、柱は四角筒状の角形鋼よりなる。そして、建物ユニットの床部には、床小梁に支持された状態で床面材が設けられ、天井部には、天井小梁に支持された状態で天井面材が設けられている。また、外壁部には、外壁面材と下地フレームとを有してなる外壁パネルが複数並べて設けられている。
【0024】
次に、張出屋根部15の詳細な構成を説明する。図1〜図4は、張出屋根部15の構成を説明するための断面図であり、図1は図5におけるA−A線断面図であり、図2は図5におけるB−B線断面図である。また、図3は、張出屋根部15を構築するための屋根ユニット40を建物から離して示す断面図であり、図4は、屋根ユニット40の主要な構成を分解して示す分解斜視図である。
【0025】
図1においては、ラインDLが建物10の外周面を規定するラインであり、そのラインDLよりも右側が二階部12の建物ユニットに相当する部分、同ラインDLよりも左側が張出屋根部15となっている。なお、建物ユニット側の構成として、天井大梁21には、その屋外側に外壁パネル22が組み付けられるとともに、外壁パネル22の屋内側に断熱材や内壁面材からなる内壁部23が設けられている。また、天井大梁21には、天井小梁や天井面材からなる天井部24が組み付けられている。さらに、天井大梁21には、天井部24の上方に、ブラケット(アングル材)26を介して屋根受け小梁27が組み付けられており、その屋根受け小梁27の上に、野地板28や断熱材29、屋根シート30等からなる陸屋根部31が設けられている。断熱材29は例えばポリスチレンフォームからなる硬質系断熱材である。屋根シート30は例えば軟質ポリ塩化ビニル製シート(DNシート)である。
【0026】
張出屋根部15は、図3に示すように、建物ユニットの二階部12に対して屋根ユニット40が取り付けられることで構成されており、屋根ユニット40は、天井大梁21に固定された連結部材であるブラケット33に対して連結されている。より具体的には、ブラケット33は、天井大梁21のウエブ外側面に溶接等により固定されており、そのブラケット33に対して屋根ユニット40(詳しくは後述の連結プレートPL)がネジ等の締結手段34により連結されている。ブラケット33は、外壁パネル22の外壁面材に形成された開口部に設けられており、ブラケット33の外側面は外壁面材と略面一になっている。
【0027】
屋根ユニット40は、同ユニットの骨格となる構成としてフレームアセンブリ41を備えている。フレームアセンブリ41の構成については図4を併せ参照されたい。このフレームアセンブリ41は、建物ユニット側(建物躯体としての天井大梁21)に連結される部位である第1フレームとしての下側フレーム42と、その上面側に設けられる第2フレームとしての上側フレーム43とを有している。この場合、下側フレーム42は、屋根部張出方向(図1に示す天井大梁21に直交する方向)に延びる複数のフレーム材42aと、それに直交する方向に延びフレーム材42aの一端側(屋根先端側)に設けられるフレーム材42bとが互いに連結されて構成されている。このうちフレーム材42aが、建物の外壁よりも外側に張り出して設けられる片持ち梁部材に相当する。これら各フレーム材42a,42bは溝形鋼よりなる。なお、下側フレーム42において、フレーム材42aの屋根基端側の端部に連結プレートPLが溶接等により固定されており、その連結プレートPLによって屋根ユニット40が天井大梁21に連結されている。
【0028】
また、上側フレーム43は、屋根張出方向に直交する方向に延びる向きで複数設けられるものであり、勾配調整用の支持部材であるブラケット44を介して下側フレーム42に取り付けられている。この場合、下側フレーム42のフレーム材42aと上側フレーム43とは互いに交差して設けられており、上側フレーム43の下面側には、下側フレーム42(フレーム材42a)との交差位置にそれぞれブラケット44が設けられている。言い換えれば、上側フレーム43には、複数のフレーム材42a(片持ち梁部材)の設置間隔と同じ間隔でブラケット44がそれぞれ設けられている。そして、上側フレーム43とブラケット44との上下方向の重なり量(重ね代)を変更することにより、下側フレーム42に対する上側フレーム43の高さ方向の位置が各々調整できるものとなっている。
【0029】
より具体的には、上側フレーム43は、横断面が矩形状をなす角形鋼よりなる。また、ブラケット44は、横断面がコ字状をなす形綱よりなり、上側フレーム43の側面部に重なり合う一対の縦板部44aと、その一対の縦板部44aの下端部に設けられる横板部44bとを有する。そして、ブラケット44の開口を上向きとしてその開口に上側フレーム43が挿し入れられた状態とされ、その状態でそれら両者が溶接等により互いに接合されている。この場合、それら両者が重なっている部分の重なり代、別の言い方をすれば、上側フレーム43の底部下面とブラケット44の底部上面との間の隙間高さ(図1のH1,H2)を各ブラケット44で相違させることにより、複数の上側フレーム43について各上側フレーム43で上面高さ位置を相違させたり、同一の上側フレーム43についてその長手方向で上面高さ位置を相違させたりすることが可能となっている。
【0030】
上側フレーム43の下側フレーム42への組付け構造としては、上側フレーム43の下面側に固定されたブラケット44の横板部44bを下側フレーム42の上面に載せた状態とし、その状態で下側フレーム42と横板部44bとをネジ等の締結手段により互いに固定するようにしている。
【0031】
本実施形態では、張出屋根部15における水勾配の傾斜方向を、張出屋根部15の基端側から先端側に向けて下方に傾斜する方向としている(水勾配=1/100)。そして、その構成を実現すべく、屋根張出方向に並ぶ複数(本実施形態では2本)の上側フレーム43について、上側フレーム43とブラケット44との間の隙間高さを、図1に示すとおり「張出基端側の隙間高さH1>張出先端側の隙間高さH2」としている。つまり、張出基端側の上側フレーム43の上面を、張出先端側の上側フレーム43の上面よりも高い位置としている。
【0032】
また、フレームアセンブリ41の上側フレーム43の上には野地板46と断熱材47とが上下に積層された状態で固定されている。この場合、野地板46は、フレームアセンブリ41の上側フレーム43の上面に載置された状態で固定されている。野地板46、断熱材47は、それぞれ陸屋根部31の野地板28、断熱材29と同材質のものであり、その厚み寸法も同じである。
【0033】
図1に示す張出屋根部15の設置状態では、張出屋根部15の断熱材47の上面と陸屋根部31の断熱材29の上面とが同一平面で連続しており、水勾配の向き及び勾配角度も同じである。また、それら断熱材47,29の上に、陸屋根部31から連続して屋根シート30等が敷設されている。
【0034】
野地板46と断熱材47とに関してより詳しくは、図4に示すように、フレームアセンブリ41の上に、屋根長手方向に分割された複数の野地板片を並べて配置することで野地板46が設けられている。さらに、野地板46の上に、屋根長手方向及び屋根短手方向にそれぞれ分割された複数の断熱板片を並べて配置することで断熱材47が設けられている。なお、図4中の符号48は、断熱材47の目地(境界)部分を補強する目地補強材である。
【0035】
断熱材47において複数の断熱板片には、それ自身の厚みが不均等な勾配断熱板片47aが含まれており、この勾配断熱板片47aは、屋根張出方向の先端側に配設されている。つまり、複数の断熱板片において勾配断熱板片47aとそれ以外とでは板厚の違いによりその勾配方向が互いに異なるものとなっている(勾配断熱板片47a以外は、板厚が均等である)。
【0036】
また、複数の断熱板片のうち1つは、排水ポートの下に敷かれる排水ポート下用の断熱板片47bとなっている。つまり、図2に示すように、屋根ユニット40の長手方向一端側には屋根上の雨水等を排出するための排水ポート(排水桶)51が設けられており、その排水ポート51の下に、他よりも薄肉の断熱板片47bが敷設されている。図2において、符号52は、排水ポート51から外部への排水を行うための配水管であり、この配水管52は建物側方に設けられた縦樋(図示略)に接続されている。
【0037】
また、屋根ユニット40は、そのユニット周縁部の三方を囲むようにして設けられるパラペット壁部55を備えている。このパラペット壁部55は、建物ユニット上方に設けられるパラペット14(図5参照)連続しており、張出屋根部15を含む屋根部13の全体として一連のパラペットを形成するものとなっている。パラペット壁部55は、フレームアセンブリ41の下側フレーム42を囲むようにして設けられるパラペットフレーム56と、その外側に固定される外板57と、パラペットフレーム56の上端部に被せて設けられる笠木58とを備えている。なお、パラペットフレーム56、外板57の概要は図4に示すとおりである。
【0038】
また、屋根ユニット40において、フレームアセンブリ41の下方には軒天板61が取り付けられている。詳しくは、フレームアセンブリ41の下側フレーム42には、その下面側に軒天下地木62がビス等により取り付けられており、その軒天下地木62の下面側に軒天板61が取り付けられている。その他、符号63は、パラペット壁部55と軒天板61との見切り(境界)部分を隠す見切り材である。
【0039】
なお、図3に示すとおり、張出屋根部15は、建物ユニットの二階部12に対して屋根ユニット40が取り付けられることで構成されているが、屋根ユニット40の取付時には、軒天板61を装着していない状態でユニット取付作業を行い、そのユニット取付後に、軒天板61の取付作業を行うようにするとよい。これにより、ブラケット33に対する屋根ユニット40のネジ締結作業を容易に実施できる。
【0040】
ここで、屋根ユニット40における水勾配の形態について図6を用いて補足する。図6の(a)は、断熱材47において各断熱板片の上面における傾斜方向を示す図であり、(b)は、フレームアセンブリ41におけるフレーム傾斜方向を示す図である。
【0041】
図6に示す構成では、図1で説明したとおり、フレームアセンブリ41において張出基端側の上側フレーム43の上面を、張出先端側の上側フレーム43の上面よりも高い位置としており、フレームアセンブリ41の傾斜方向は図の矢印A1に示す方向となっている。
【0042】
また、断熱材47の上面の傾斜方向は基本的にはフレーム傾斜方向と同じ方向(A1方向)であるが、張出屋根部15の張出先端部は、勾配断熱板片47a自体が張出屋根部15の長手方向(A1方向に直交する方向)に水勾配を有していることから、その上面の傾斜方向が張出屋根部15の長手方向(A1方向に直交する方向)となっている(なお、図6に示す構成では便宜上、図4と比べて、勾配断熱板片47aの傾斜方向が異なるものとしている)。つまり、勾配断熱板片47aは、上側フレーム43の長手方向(屋根張出方向に直交する方向)に厚みが相違しており、その水勾配は1/270である。これにより、張出屋根部15の屋根面上に存在する雨水等は、張出屋根部15の張出先端側に流れるとともに、その張出先端部において同先端部に沿って流れ、順々に排水ポート51に導かれるようになっている。
【0043】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0044】
屋根ユニット40のフレームアセンブリ41において、下側フレーム42と上側フレーム43とを勾配調整用の複数のブラケット44を介して連結する構成とし、下側フレーム42に対する上側フレーム43の高さ位置を複数のブラケット44により調整することで、張出屋根部15の屋根面(水勾配面)に所定の水勾配を形成するようにした。かかる構成では、複数のブラケット44はそれぞれ、縦板部44aが上側フレーム43の側面部に所定の重ね代をもって固定されており、これら各重ね代を水勾配に応じて各々調整することにより、所望の水勾配を形成することができる。つまり、同一構成のブラケットを使用して、所望の水勾配を形成することができるようになっている。これにより、下側フレーム42に対する上側フレーム43の高さの違いに応じて各々異なるブラケットを用いることをしなくてもよくなり、その点、製造コストの上昇が抑えられる。また、両フレーム42,43を一体化してフレームアセンブリ41として設けたため、建物施工時には建物の躯体に対してフレームアセンブリ41を取り付ける作業を行えばよく、建物施工の作業性が向上することとなる。以上により、建物の屋外面において水勾配を簡易に形成することができるようになる。
【0045】
フレームアセンブリ41と、その上の敷き板部材(野地板46及び断熱材47)と、パラペット壁部55とを一体化(ユニット化)してそれを屋根ユニット40とするとともに、その屋根ユニット40を建物ユニットの天井大梁21に対して連結することで、建物の張出屋根部15を構成した。かかる構成では、建物施工現場での施工作業の一層の簡易化を実現することができる。
【0046】
フレームアセンブリ41において下側フレーム42と上側フレーム43とを互いに交差して設け、それらフレーム42,43の交差点にブラケット44を配置する構成とした。この場合、ブラケット44は、フレームアセンブリ41のフレーム結合と水勾配面の勾配調整との両方の役目を担うものとなっており、部材の兼用化を実現できる。つまり、フレーム結合用の部材と勾配調整用の部材とを各々個別に設けることが不要となっている。
【0047】
下側フレーム42のフレーム材42aを片持ち梁部材として用い、建物ユニットに屋根ユニット40を片持ち支持させる構成とした。この場合、建物ユニットは鉄骨ラーメン構造を有しており、その剛性は高いものとなっている。したがって、上記のとおり建物ユニットの大梁に片持ち梁部材が連結される構成は、建物の外壁よりも外側に張り出して張出屋根部15を設ける上で好適である。
【0048】
敷き板部材としての断熱材47は、複数の断熱板片に分割されて上側フレーム43の上方に敷設されるようになっており、複数の断熱板片としては、板厚の違いによりその勾配方向が互いに異なるもの(勾配断熱板片47a)を含んでいる。かかる構造では、下側フレーム42に対する上側フレーム43の高さ調整により水勾配面に水勾配を設定できることに加え、断熱材47(断熱板片)の板厚の違いによっても水勾配面に水勾配を設定できる。この場合、上側フレーム43の高さ調整による水勾配の傾斜方向と、断熱材47の板厚の違いによる水勾配の傾斜方向とを各々別に設定することにより、屋根面において排水の方向を多様に設定でき、設計の自由度を高めることができる。この場合、雨水等を好適に排水ポートに導くことが可能となる。
【0049】
屋根ユニット40における水勾配の形態を図7〜図9のように変更してもよい。これら各図では、上述の図6と同様に、(a)は、断熱材47において各断熱板片の上面における傾斜方向を示す図であり、(b)は、フレームアセンブリ41におけるフレーム傾斜方向を示す図である。以下、図6に示す構成との相違点を中心に説明する。
【0050】
図7に示す構成では、図6で説明した構成とは逆に、フレームアセンブリ41において張出基端側の上側フレーム43の上面を、張出先端側の上側フレーム43の上面よりも低い位置としており、フレームアセンブリ41の傾斜方向は図の矢印A2に示す方向となっている。また、断熱材47の上面の傾斜方向もフレーム傾斜方向と同じ(A2方向)となっている。この場合、張出屋根部15の屋根面上に存在する雨水等は、張出屋根部15の張出先端側から張出基端側に流れることとなる。
【0051】
また、図8に示す構成では、フレームアセンブリ41において各上側フレーム43の上面を、その長手方向に沿って傾斜させるようにしており、フレームアセンブリ41の傾斜方向は図の矢印A3に示す方向となっている。この場合、上側フレーム43ごとに設けられる各3つのブラケット44について、それぞれ上側フレーム43の底部下面とブラケット44の底部上面との間の隙間高さを相違させることにより、同一の上側フレーム43についてその長手方向で上面高さ位置を相違させるようにしている。また、断熱材47の上面の傾斜方向もフレーム傾斜方向と同じ(A3方向)となっている。この場合、張出屋根部15の屋根面上に存在する雨水等は、張出屋根部15の長手方向一側から他側に流れることとなる。
【0052】
また、図9に示す構成では、フレームアセンブリ41において各上側フレーム43の上面を、山形(ヘ字状)に傾斜させるようにしており、フレームアセンブリ41の傾斜方向は図の矢印A4,A5に示す両方向となっている。この場合、断熱材47の上面は山形に二方向に傾斜したものとなる。かかる構成についてより具体的には、図10に示すように、上側フレーム43は、その長手方向に分割されてなる複数の梁材よりなり、それら各梁材同士がそれぞれ異なる傾斜角度(正負逆の傾斜角度)を有する状態で連結プレート71により互いに連結されている。そして、複数のブラケット44は、上側フレーム43との重ね代が各自調整され、かつその下面(横板部44b)が同一の高さ位置に並ぶようにして上側フレーム43に対して取り付けられている。
【0053】
上記構成によれば、上側フレーム43の長手方向において同フレーム43を山形(ヘ字状)に折り曲げた状態にでき、屋根面における水勾配の方向(排水の方向)を両流れにすることができる。
【0054】
図10に示す構成の変形例として、図11(a)に示すように、フレームアセンブリ41において各上側フレーム43の上面を、谷形(逆ヘ字状)に傾斜させるようにしてもよい。この場合、断熱材47の上面は谷形に二方向に傾斜したものとなる。また、図11(b)に示すように、フレームアセンブリ41において各上側フレーム43の上面を、同じ傾斜方向としつつも、その傾斜角度(水勾配)がフレーム長手方向で異なるようにしてもよい。その他、図10に示す構成と、図11(a)に示す構成とを組み合わせ、山部と谷部とを共に有するようにすることも可能である。
【0055】
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0056】
・上記実施形態では、フレームアセンブリ41において、複数のブラケット44を、縦板部44aが、上側フレーム43の側面部に所定の重ね代で固定されるとともに、横板部44bが、下側フレーム42の上面部に当接した状態で固定されるようにして設けたが、この構成を図12に示すように変更してもよい。図12では、フレームアセンブリ41において、複数のブラケット44を、縦板部44aが、下側フレーム42の側面部に所定の重ね代で固定されるとともに、横板部44bが、上側フレーム43の下面部に当接した状態で固定されるようにして設けている。かかる構成においても、上記同様、上側フレーム43に所望の水勾配に応じた傾斜を持たせることができる。
【0057】
・上記実施形態では、張出屋根部15の屋根面を水勾配面とし、その屋根面に水勾配を形成する構成について説明したが、これに代えて、張出床部を有する建物においてその張出床部の床面に水勾配を形成する構成であってもよい。例えば、建物に設けられたバルコニにおいて、そのバルコニ床を張出床部として構成する。この場合に、張出床部を、上記の屋根ユニット40と同様に、フレームアセンブリや敷き板部材(床面材)を有してなる床ユニットにより構成するとよい。
【0058】
・上記実施形態では、張出屋根部15の設置状態において、張出屋根部15の断熱材47の上面と陸屋根部31の断熱材29の上面とで、水勾配の向き及び勾配角度を同一としたが(図1参照)、これを変更し、それら両断熱材47,29の上面で、水勾配の向き及び勾配角度の少なくともいずれかを相違させる構成としてもよい。例えば、図1において、ラインDLよりも左側の張出屋根部15では左傾斜の水勾配、ラインDLよりも右側の陸屋根部31では右傾斜の水勾配とする構成とする。又は、例えば、水勾配の向きを同じとした上で、ラインDLよりも左側の張出屋根部15では水勾配=1/50、ラインDLよりも右側の陸屋根部31では水勾配=1/100とする構成とする。
【0059】
・水勾配が大きい場合には、各ブラケット44で上側フレーム43(又は下側フレーム42)との重ね代の違いが大きくなり、全て同一のブラケットでは所望の水勾配を形成しづらくなる場合も想定される。この場合に、縦板部44aの縦寸法が異なる2種類のブラケットを用いることも可能である。ただし本構成においても、基本は同一構成のブラケットを複数箇所で用いることができるため、部品種類の増加は最小限に抑えられる。
【0060】
・建物の張出部以外での本発明の適用も可能である。例えば、陸屋根部の上に、上記構成の屋根ユニットを設置する構成とする。この場合、屋根ユニットを構成するフレームアセンブリの下側フレーム(第1フレーム)を、建物の躯体としての陸屋根部の屋根フレーム(図1の屋根受け小梁27)に載せた状態で連結するとよい。
【0061】
・上記実施形態では、ユニット式建物への適用例を説明したが、本発明が適用できる建物はこれに限らず、他の鉄骨系の建物や木造在来工法など、上記以外の建物に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0062】
10…建物、15…張出屋根部、21…天井大梁、40…屋根ユニット、41…フレームアセンブリ、42…下側フレーム(第1フレーム)、42a…フレーム材(片持ち梁部材)、43…上側フレーム(第2フレーム)、44…ブラケット、44a…縦板部、44b…横板部、46…野地板(敷き板部材)、47…断熱材(敷き板部材)、71…連結プレート。
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物屋外の屋根面やバルコニ床面等に水勾配面を形成するための建物の水勾配構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、住宅等の建物において、陸屋根の上面に水勾配を形成するための各種技術が提案されている。例えば、屋根材を支持するための支持金物として各々高さ寸法の異なる複数種類の支持金物を用い、それにより屋根材に勾配を付ける技術が知られている(特許文献1参照)。より具体的には、建物の小屋梁に複数の母屋材が連結されるとともに、その母屋材の上に各々高さ寸法の異なる複数種類の支持金物が固定され、その複数種類の支持金物の上に屋根材が支持される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−4187号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成において、高さ寸法の各々異なる複数種類の支持金物を用意することは製造コストの観点からして望ましくないと考えられる。また、複数種類の支持金物を用い、さらにそれらの支持金物を母屋材(建物の躯体)に各々固定することを考えると、建物施工の作業性にも優れていないという不都合があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、水勾配を簡易に形成することができる建物の水勾配構造を提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。
【0007】
第1の発明は、建物の屋外部分に敷き板部材が設けられており、その敷き板部材の上面に水勾配面が設けられている建物の水勾配構造であって、
前記建物の躯体に連結される第1フレームと、
前記敷き板部材を下方から支持する第2フレームと、
前記第1フレームを下側、前記第2フレームを上側としてこれら両フレームを連結する複数のブラケットと、
を有してなるフレームアセンブリを備え、
前記複数のブラケットは、上下方向に延びる縦板部と、その縦板部に直交する方向に延びる横板部とをそれぞれ有し、前記縦板部が、前記第1フレーム及び前記第2フレームのうち一方のフレームの側面部に所定の上下方向の重ね代で固定されるとともに、前記横板部が、他方のフレームの上面部又は下面部に当接した状態で固定されており、
前記フレームアセンブリにおいて前記縦板部における前記重ね代が前記複数のブラケットで各々定められており、その重ね代に応じて前記水勾配面に所定の水勾配が形成されていることを特徴とする。
【0008】
上記構成では、フレームアセンブリにおいて第1フレームに対する第2フレームの高さ位置が複数のブラケットにより調整されるようになっており、それにより水勾配面に所定の水勾配が形成されるようになっている。この場合、複数のブラケットはそれぞれ、縦板部が、第1フレーム及び第2フレームのうち一方のフレームの側面部に所定の重ね代をもって固定されており、これら各重ね代を水勾配に応じて各々調整することにより、所望の水勾配を形成することができる。つまり、同一構成のブラケットを使用して、所望の水勾配を形成することができるようになっている。これにより、第1フレームに対する第2フレームの高さの違いに応じて各々異なるブラケットを用いることをしなくてもよくなり、その点、製造コストの上昇が抑えられる。また、所定の水勾配に応じて傾斜して設けられる第2フレームは、第1フレームと共にフレームアセンブリとして設けられているため、建物施工時には、少なくともフレームアセンブリを含むユニット体を建物の躯体に対して取り付ける作業を行えばよく、建物施工の作業性が向上することとなる。以上により、建物の屋外面において水勾配を簡易に形成することができるようになる。
【0009】
第2の発明は、前記フレームアセンブリにおいて、前記第1フレームと前記第2フレームとは互いに交差して設けられており、前記第2フレームには前記第1フレームとの交差点に前記ブラケットが設けられていることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、互いに交差して設けられる第1フレームと第2フレームとがブラケットにより相互に連結されてフレームアセンブリが構成されている。この場合、ブラケットは、フレームアセンブリのフレーム結合と水勾配面の勾配調整との両方の役目を担うものとなっており、部材の兼用化を実現できる。つまり、フレーム結合用の部材と勾配調整用の部材とを各々個別に設けることが不要となっている。
【0011】
第3の発明は、前記第1フレームは、前記建物の外壁よりも外側に張り出して設けられる片持ち梁部材を含むものであり、前記第2フレームは、前記片持ち梁部材に対して交差しかつ架け渡された状態で設けられていることを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、屋根や屋外床(バルコニ床)を、建物の外壁よりも外側に張り出した片持ち構造にして設けられることができ、その屋根や屋外床の上面において所望とする水勾配を簡易に設けることができる。
【0013】
第4の発明は、前記建物は、床及び天井の大梁と柱とからなる鉄骨ラーメン構造の建物ユニットを複数用いて構築されたユニット式建物であり、前記片持ち梁部材は、前記建物ユニットの外壁部となる位置に、前記大梁に対して屋外側に張り出すように連結されていることを特徴とする。
【0014】
鉄骨ラーメン構造の建物ユニットを複数用いて構築されたユニット式建物は剛性が高い。したがって、上記のとおり建物ユニットの大梁に片持ち梁部材が連結される構成は、建物の外壁よりも外側に張り出して屋根や屋外床(バルコニ床)を設ける上で好適である。
【0015】
第5の発明は、前記第2フレームは、その長手方向に分割されてなる複数の梁材よりなり、それら各梁材同士がそれぞれ異なる傾斜角度を有する状態で連結プレートにより互いに連結されており、前記複数のブラケットは、前記縦板部が前記第2フレームの側面部に固定され、かつ前記第2フレームとの重ね代が各自調整されているとともに、前記横板部が同一の高さ位置に並ぶようにして配置されていることを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、第2フレームの長手方向において同フレームを山形や谷形等の形状に折り曲げた状態にでき、屋根面や屋外床面における水勾配の方向(排水の方向)を両流れや中央流れなど、任意に設定することができる。
【0017】
ここで、上記のように屋根や屋外床(バルコニ床)を片持ち構造にする場合には、片持ち梁部材(第1フレーム)を短手方向、第2フレームを長手方向とする構成が想定され、かかる構成においては長手方向の両側に排水できる構成となる。
【0018】
第6の発明は、前記敷き板部材は、複数の板材に分割されて前記第2フレームの上方に敷設されるものを含み、前記複数の板材として、板厚の違いによりその上面の勾配方向が互いに異なるものを有していることを特徴とする。
【0019】
上記の水勾配構造では、第1フレームに対する第2フレームの高さ調整により水勾配面に水勾配を設定できることに加え、断熱材等からなる葺き板部材(複数の板材)の板厚の違いによっても水勾配面に水勾配を設定できる。この場合、第2フレームの高さ調整による水勾配の傾斜方向と、葺き板部材の板厚の違いによる水勾配の傾斜方向とを各々別に設定することにより、屋根面や屋外床面において排水の方向を多様に設定でき、設計の自由度を高めることができる。この場合、雨水等を好適に排水ポートに導くことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】張出屋根部の構成を説明するための断面図。
【図2】張出屋根部の構成を説明するための断面図。
【図3】張出屋根部の構成を説明するための断面図。
【図4】屋根ユニットの主要な構成を分解して示す分解斜視図。
【図5】建物の概略を示す斜視図。
【図6】(a)は、断熱材において各断熱板片の上面における傾斜方向を示す図、(b)は、フレームアセンブリにおけるフレーム傾斜方向を示す図。
【図7】(a)は、断熱材において各断熱板片の上面における傾斜方向を示す図、(b)は、フレームアセンブリにおけるフレーム傾斜方向を示す図。
【図8】(a)は、断熱材において各断熱板片の上面における傾斜方向を示す図、(b)は、フレームアセンブリにおけるフレーム傾斜方向を示す図。
【図9】(a)は、断熱材において各断熱板片の上面における傾斜方向を示す図、(b)は、フレームアセンブリにおけるフレーム傾斜方向を示す図。
【図10】図9の構成をより具体的に示す図。
【図11】図10の構成の変形例を示す図。
【図12】フレームアセンブリの変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、複数の建物ユニットにより構築される二階建てのユニット式建物での具体化を想定しており、その上階部分における張出屋根部分に、本発明の建物の水勾配構造を適用することとしている。
【0022】
建物の概略を説明すると、図5に示すように、建物10は、複数の建物ユニットからなる一階部11と、同じく複数の建物ユニットからなる二階部12とを有し、その二階部12の上方には、フラットルーフ(陸屋根)タイプの屋根部13が設けられている。屋根部13には、その周縁部においてパラペット14が設けられている。また、屋根部13の一部は、建物10の一側面において二階部12の外壁よりも外側に張り出しており、それが張出屋根部15となっている。張出屋根部15は、屋根張出方向(建物外壁に直交する方向)が短辺、それに直交する方向(建物外壁に平行となる方向)が長辺となる長尺状をなすものとなっている。
【0023】
ちなみに、建物ユニットについては周知であるため、同ユニットの図示は省略するが、その構成を簡単に説明すると、建物ユニットは、鉄骨ラーメン構造を有するものであり、各々長方形状に組まれた床大梁及び天井大梁と、それら各大梁の四隅に配設されて床大梁と天井大梁とを連結する4本の柱とを備え、これら床大梁、天井大梁及び柱により直方体状の骨格が形成されている。床大梁及び天井大梁は断面コ字状の溝形鋼よりなり、柱は四角筒状の角形鋼よりなる。そして、建物ユニットの床部には、床小梁に支持された状態で床面材が設けられ、天井部には、天井小梁に支持された状態で天井面材が設けられている。また、外壁部には、外壁面材と下地フレームとを有してなる外壁パネルが複数並べて設けられている。
【0024】
次に、張出屋根部15の詳細な構成を説明する。図1〜図4は、張出屋根部15の構成を説明するための断面図であり、図1は図5におけるA−A線断面図であり、図2は図5におけるB−B線断面図である。また、図3は、張出屋根部15を構築するための屋根ユニット40を建物から離して示す断面図であり、図4は、屋根ユニット40の主要な構成を分解して示す分解斜視図である。
【0025】
図1においては、ラインDLが建物10の外周面を規定するラインであり、そのラインDLよりも右側が二階部12の建物ユニットに相当する部分、同ラインDLよりも左側が張出屋根部15となっている。なお、建物ユニット側の構成として、天井大梁21には、その屋外側に外壁パネル22が組み付けられるとともに、外壁パネル22の屋内側に断熱材や内壁面材からなる内壁部23が設けられている。また、天井大梁21には、天井小梁や天井面材からなる天井部24が組み付けられている。さらに、天井大梁21には、天井部24の上方に、ブラケット(アングル材)26を介して屋根受け小梁27が組み付けられており、その屋根受け小梁27の上に、野地板28や断熱材29、屋根シート30等からなる陸屋根部31が設けられている。断熱材29は例えばポリスチレンフォームからなる硬質系断熱材である。屋根シート30は例えば軟質ポリ塩化ビニル製シート(DNシート)である。
【0026】
張出屋根部15は、図3に示すように、建物ユニットの二階部12に対して屋根ユニット40が取り付けられることで構成されており、屋根ユニット40は、天井大梁21に固定された連結部材であるブラケット33に対して連結されている。より具体的には、ブラケット33は、天井大梁21のウエブ外側面に溶接等により固定されており、そのブラケット33に対して屋根ユニット40(詳しくは後述の連結プレートPL)がネジ等の締結手段34により連結されている。ブラケット33は、外壁パネル22の外壁面材に形成された開口部に設けられており、ブラケット33の外側面は外壁面材と略面一になっている。
【0027】
屋根ユニット40は、同ユニットの骨格となる構成としてフレームアセンブリ41を備えている。フレームアセンブリ41の構成については図4を併せ参照されたい。このフレームアセンブリ41は、建物ユニット側(建物躯体としての天井大梁21)に連結される部位である第1フレームとしての下側フレーム42と、その上面側に設けられる第2フレームとしての上側フレーム43とを有している。この場合、下側フレーム42は、屋根部張出方向(図1に示す天井大梁21に直交する方向)に延びる複数のフレーム材42aと、それに直交する方向に延びフレーム材42aの一端側(屋根先端側)に設けられるフレーム材42bとが互いに連結されて構成されている。このうちフレーム材42aが、建物の外壁よりも外側に張り出して設けられる片持ち梁部材に相当する。これら各フレーム材42a,42bは溝形鋼よりなる。なお、下側フレーム42において、フレーム材42aの屋根基端側の端部に連結プレートPLが溶接等により固定されており、その連結プレートPLによって屋根ユニット40が天井大梁21に連結されている。
【0028】
また、上側フレーム43は、屋根張出方向に直交する方向に延びる向きで複数設けられるものであり、勾配調整用の支持部材であるブラケット44を介して下側フレーム42に取り付けられている。この場合、下側フレーム42のフレーム材42aと上側フレーム43とは互いに交差して設けられており、上側フレーム43の下面側には、下側フレーム42(フレーム材42a)との交差位置にそれぞれブラケット44が設けられている。言い換えれば、上側フレーム43には、複数のフレーム材42a(片持ち梁部材)の設置間隔と同じ間隔でブラケット44がそれぞれ設けられている。そして、上側フレーム43とブラケット44との上下方向の重なり量(重ね代)を変更することにより、下側フレーム42に対する上側フレーム43の高さ方向の位置が各々調整できるものとなっている。
【0029】
より具体的には、上側フレーム43は、横断面が矩形状をなす角形鋼よりなる。また、ブラケット44は、横断面がコ字状をなす形綱よりなり、上側フレーム43の側面部に重なり合う一対の縦板部44aと、その一対の縦板部44aの下端部に設けられる横板部44bとを有する。そして、ブラケット44の開口を上向きとしてその開口に上側フレーム43が挿し入れられた状態とされ、その状態でそれら両者が溶接等により互いに接合されている。この場合、それら両者が重なっている部分の重なり代、別の言い方をすれば、上側フレーム43の底部下面とブラケット44の底部上面との間の隙間高さ(図1のH1,H2)を各ブラケット44で相違させることにより、複数の上側フレーム43について各上側フレーム43で上面高さ位置を相違させたり、同一の上側フレーム43についてその長手方向で上面高さ位置を相違させたりすることが可能となっている。
【0030】
上側フレーム43の下側フレーム42への組付け構造としては、上側フレーム43の下面側に固定されたブラケット44の横板部44bを下側フレーム42の上面に載せた状態とし、その状態で下側フレーム42と横板部44bとをネジ等の締結手段により互いに固定するようにしている。
【0031】
本実施形態では、張出屋根部15における水勾配の傾斜方向を、張出屋根部15の基端側から先端側に向けて下方に傾斜する方向としている(水勾配=1/100)。そして、その構成を実現すべく、屋根張出方向に並ぶ複数(本実施形態では2本)の上側フレーム43について、上側フレーム43とブラケット44との間の隙間高さを、図1に示すとおり「張出基端側の隙間高さH1>張出先端側の隙間高さH2」としている。つまり、張出基端側の上側フレーム43の上面を、張出先端側の上側フレーム43の上面よりも高い位置としている。
【0032】
また、フレームアセンブリ41の上側フレーム43の上には野地板46と断熱材47とが上下に積層された状態で固定されている。この場合、野地板46は、フレームアセンブリ41の上側フレーム43の上面に載置された状態で固定されている。野地板46、断熱材47は、それぞれ陸屋根部31の野地板28、断熱材29と同材質のものであり、その厚み寸法も同じである。
【0033】
図1に示す張出屋根部15の設置状態では、張出屋根部15の断熱材47の上面と陸屋根部31の断熱材29の上面とが同一平面で連続しており、水勾配の向き及び勾配角度も同じである。また、それら断熱材47,29の上に、陸屋根部31から連続して屋根シート30等が敷設されている。
【0034】
野地板46と断熱材47とに関してより詳しくは、図4に示すように、フレームアセンブリ41の上に、屋根長手方向に分割された複数の野地板片を並べて配置することで野地板46が設けられている。さらに、野地板46の上に、屋根長手方向及び屋根短手方向にそれぞれ分割された複数の断熱板片を並べて配置することで断熱材47が設けられている。なお、図4中の符号48は、断熱材47の目地(境界)部分を補強する目地補強材である。
【0035】
断熱材47において複数の断熱板片には、それ自身の厚みが不均等な勾配断熱板片47aが含まれており、この勾配断熱板片47aは、屋根張出方向の先端側に配設されている。つまり、複数の断熱板片において勾配断熱板片47aとそれ以外とでは板厚の違いによりその勾配方向が互いに異なるものとなっている(勾配断熱板片47a以外は、板厚が均等である)。
【0036】
また、複数の断熱板片のうち1つは、排水ポートの下に敷かれる排水ポート下用の断熱板片47bとなっている。つまり、図2に示すように、屋根ユニット40の長手方向一端側には屋根上の雨水等を排出するための排水ポート(排水桶)51が設けられており、その排水ポート51の下に、他よりも薄肉の断熱板片47bが敷設されている。図2において、符号52は、排水ポート51から外部への排水を行うための配水管であり、この配水管52は建物側方に設けられた縦樋(図示略)に接続されている。
【0037】
また、屋根ユニット40は、そのユニット周縁部の三方を囲むようにして設けられるパラペット壁部55を備えている。このパラペット壁部55は、建物ユニット上方に設けられるパラペット14(図5参照)連続しており、張出屋根部15を含む屋根部13の全体として一連のパラペットを形成するものとなっている。パラペット壁部55は、フレームアセンブリ41の下側フレーム42を囲むようにして設けられるパラペットフレーム56と、その外側に固定される外板57と、パラペットフレーム56の上端部に被せて設けられる笠木58とを備えている。なお、パラペットフレーム56、外板57の概要は図4に示すとおりである。
【0038】
また、屋根ユニット40において、フレームアセンブリ41の下方には軒天板61が取り付けられている。詳しくは、フレームアセンブリ41の下側フレーム42には、その下面側に軒天下地木62がビス等により取り付けられており、その軒天下地木62の下面側に軒天板61が取り付けられている。その他、符号63は、パラペット壁部55と軒天板61との見切り(境界)部分を隠す見切り材である。
【0039】
なお、図3に示すとおり、張出屋根部15は、建物ユニットの二階部12に対して屋根ユニット40が取り付けられることで構成されているが、屋根ユニット40の取付時には、軒天板61を装着していない状態でユニット取付作業を行い、そのユニット取付後に、軒天板61の取付作業を行うようにするとよい。これにより、ブラケット33に対する屋根ユニット40のネジ締結作業を容易に実施できる。
【0040】
ここで、屋根ユニット40における水勾配の形態について図6を用いて補足する。図6の(a)は、断熱材47において各断熱板片の上面における傾斜方向を示す図であり、(b)は、フレームアセンブリ41におけるフレーム傾斜方向を示す図である。
【0041】
図6に示す構成では、図1で説明したとおり、フレームアセンブリ41において張出基端側の上側フレーム43の上面を、張出先端側の上側フレーム43の上面よりも高い位置としており、フレームアセンブリ41の傾斜方向は図の矢印A1に示す方向となっている。
【0042】
また、断熱材47の上面の傾斜方向は基本的にはフレーム傾斜方向と同じ方向(A1方向)であるが、張出屋根部15の張出先端部は、勾配断熱板片47a自体が張出屋根部15の長手方向(A1方向に直交する方向)に水勾配を有していることから、その上面の傾斜方向が張出屋根部15の長手方向(A1方向に直交する方向)となっている(なお、図6に示す構成では便宜上、図4と比べて、勾配断熱板片47aの傾斜方向が異なるものとしている)。つまり、勾配断熱板片47aは、上側フレーム43の長手方向(屋根張出方向に直交する方向)に厚みが相違しており、その水勾配は1/270である。これにより、張出屋根部15の屋根面上に存在する雨水等は、張出屋根部15の張出先端側に流れるとともに、その張出先端部において同先端部に沿って流れ、順々に排水ポート51に導かれるようになっている。
【0043】
以上詳述した本実施形態によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0044】
屋根ユニット40のフレームアセンブリ41において、下側フレーム42と上側フレーム43とを勾配調整用の複数のブラケット44を介して連結する構成とし、下側フレーム42に対する上側フレーム43の高さ位置を複数のブラケット44により調整することで、張出屋根部15の屋根面(水勾配面)に所定の水勾配を形成するようにした。かかる構成では、複数のブラケット44はそれぞれ、縦板部44aが上側フレーム43の側面部に所定の重ね代をもって固定されており、これら各重ね代を水勾配に応じて各々調整することにより、所望の水勾配を形成することができる。つまり、同一構成のブラケットを使用して、所望の水勾配を形成することができるようになっている。これにより、下側フレーム42に対する上側フレーム43の高さの違いに応じて各々異なるブラケットを用いることをしなくてもよくなり、その点、製造コストの上昇が抑えられる。また、両フレーム42,43を一体化してフレームアセンブリ41として設けたため、建物施工時には建物の躯体に対してフレームアセンブリ41を取り付ける作業を行えばよく、建物施工の作業性が向上することとなる。以上により、建物の屋外面において水勾配を簡易に形成することができるようになる。
【0045】
フレームアセンブリ41と、その上の敷き板部材(野地板46及び断熱材47)と、パラペット壁部55とを一体化(ユニット化)してそれを屋根ユニット40とするとともに、その屋根ユニット40を建物ユニットの天井大梁21に対して連結することで、建物の張出屋根部15を構成した。かかる構成では、建物施工現場での施工作業の一層の簡易化を実現することができる。
【0046】
フレームアセンブリ41において下側フレーム42と上側フレーム43とを互いに交差して設け、それらフレーム42,43の交差点にブラケット44を配置する構成とした。この場合、ブラケット44は、フレームアセンブリ41のフレーム結合と水勾配面の勾配調整との両方の役目を担うものとなっており、部材の兼用化を実現できる。つまり、フレーム結合用の部材と勾配調整用の部材とを各々個別に設けることが不要となっている。
【0047】
下側フレーム42のフレーム材42aを片持ち梁部材として用い、建物ユニットに屋根ユニット40を片持ち支持させる構成とした。この場合、建物ユニットは鉄骨ラーメン構造を有しており、その剛性は高いものとなっている。したがって、上記のとおり建物ユニットの大梁に片持ち梁部材が連結される構成は、建物の外壁よりも外側に張り出して張出屋根部15を設ける上で好適である。
【0048】
敷き板部材としての断熱材47は、複数の断熱板片に分割されて上側フレーム43の上方に敷設されるようになっており、複数の断熱板片としては、板厚の違いによりその勾配方向が互いに異なるもの(勾配断熱板片47a)を含んでいる。かかる構造では、下側フレーム42に対する上側フレーム43の高さ調整により水勾配面に水勾配を設定できることに加え、断熱材47(断熱板片)の板厚の違いによっても水勾配面に水勾配を設定できる。この場合、上側フレーム43の高さ調整による水勾配の傾斜方向と、断熱材47の板厚の違いによる水勾配の傾斜方向とを各々別に設定することにより、屋根面において排水の方向を多様に設定でき、設計の自由度を高めることができる。この場合、雨水等を好適に排水ポートに導くことが可能となる。
【0049】
屋根ユニット40における水勾配の形態を図7〜図9のように変更してもよい。これら各図では、上述の図6と同様に、(a)は、断熱材47において各断熱板片の上面における傾斜方向を示す図であり、(b)は、フレームアセンブリ41におけるフレーム傾斜方向を示す図である。以下、図6に示す構成との相違点を中心に説明する。
【0050】
図7に示す構成では、図6で説明した構成とは逆に、フレームアセンブリ41において張出基端側の上側フレーム43の上面を、張出先端側の上側フレーム43の上面よりも低い位置としており、フレームアセンブリ41の傾斜方向は図の矢印A2に示す方向となっている。また、断熱材47の上面の傾斜方向もフレーム傾斜方向と同じ(A2方向)となっている。この場合、張出屋根部15の屋根面上に存在する雨水等は、張出屋根部15の張出先端側から張出基端側に流れることとなる。
【0051】
また、図8に示す構成では、フレームアセンブリ41において各上側フレーム43の上面を、その長手方向に沿って傾斜させるようにしており、フレームアセンブリ41の傾斜方向は図の矢印A3に示す方向となっている。この場合、上側フレーム43ごとに設けられる各3つのブラケット44について、それぞれ上側フレーム43の底部下面とブラケット44の底部上面との間の隙間高さを相違させることにより、同一の上側フレーム43についてその長手方向で上面高さ位置を相違させるようにしている。また、断熱材47の上面の傾斜方向もフレーム傾斜方向と同じ(A3方向)となっている。この場合、張出屋根部15の屋根面上に存在する雨水等は、張出屋根部15の長手方向一側から他側に流れることとなる。
【0052】
また、図9に示す構成では、フレームアセンブリ41において各上側フレーム43の上面を、山形(ヘ字状)に傾斜させるようにしており、フレームアセンブリ41の傾斜方向は図の矢印A4,A5に示す両方向となっている。この場合、断熱材47の上面は山形に二方向に傾斜したものとなる。かかる構成についてより具体的には、図10に示すように、上側フレーム43は、その長手方向に分割されてなる複数の梁材よりなり、それら各梁材同士がそれぞれ異なる傾斜角度(正負逆の傾斜角度)を有する状態で連結プレート71により互いに連結されている。そして、複数のブラケット44は、上側フレーム43との重ね代が各自調整され、かつその下面(横板部44b)が同一の高さ位置に並ぶようにして上側フレーム43に対して取り付けられている。
【0053】
上記構成によれば、上側フレーム43の長手方向において同フレーム43を山形(ヘ字状)に折り曲げた状態にでき、屋根面における水勾配の方向(排水の方向)を両流れにすることができる。
【0054】
図10に示す構成の変形例として、図11(a)に示すように、フレームアセンブリ41において各上側フレーム43の上面を、谷形(逆ヘ字状)に傾斜させるようにしてもよい。この場合、断熱材47の上面は谷形に二方向に傾斜したものとなる。また、図11(b)に示すように、フレームアセンブリ41において各上側フレーム43の上面を、同じ傾斜方向としつつも、その傾斜角度(水勾配)がフレーム長手方向で異なるようにしてもよい。その他、図10に示す構成と、図11(a)に示す構成とを組み合わせ、山部と谷部とを共に有するようにすることも可能である。
【0055】
[他の実施形態]
本発明は上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施されてもよい。
【0056】
・上記実施形態では、フレームアセンブリ41において、複数のブラケット44を、縦板部44aが、上側フレーム43の側面部に所定の重ね代で固定されるとともに、横板部44bが、下側フレーム42の上面部に当接した状態で固定されるようにして設けたが、この構成を図12に示すように変更してもよい。図12では、フレームアセンブリ41において、複数のブラケット44を、縦板部44aが、下側フレーム42の側面部に所定の重ね代で固定されるとともに、横板部44bが、上側フレーム43の下面部に当接した状態で固定されるようにして設けている。かかる構成においても、上記同様、上側フレーム43に所望の水勾配に応じた傾斜を持たせることができる。
【0057】
・上記実施形態では、張出屋根部15の屋根面を水勾配面とし、その屋根面に水勾配を形成する構成について説明したが、これに代えて、張出床部を有する建物においてその張出床部の床面に水勾配を形成する構成であってもよい。例えば、建物に設けられたバルコニにおいて、そのバルコニ床を張出床部として構成する。この場合に、張出床部を、上記の屋根ユニット40と同様に、フレームアセンブリや敷き板部材(床面材)を有してなる床ユニットにより構成するとよい。
【0058】
・上記実施形態では、張出屋根部15の設置状態において、張出屋根部15の断熱材47の上面と陸屋根部31の断熱材29の上面とで、水勾配の向き及び勾配角度を同一としたが(図1参照)、これを変更し、それら両断熱材47,29の上面で、水勾配の向き及び勾配角度の少なくともいずれかを相違させる構成としてもよい。例えば、図1において、ラインDLよりも左側の張出屋根部15では左傾斜の水勾配、ラインDLよりも右側の陸屋根部31では右傾斜の水勾配とする構成とする。又は、例えば、水勾配の向きを同じとした上で、ラインDLよりも左側の張出屋根部15では水勾配=1/50、ラインDLよりも右側の陸屋根部31では水勾配=1/100とする構成とする。
【0059】
・水勾配が大きい場合には、各ブラケット44で上側フレーム43(又は下側フレーム42)との重ね代の違いが大きくなり、全て同一のブラケットでは所望の水勾配を形成しづらくなる場合も想定される。この場合に、縦板部44aの縦寸法が異なる2種類のブラケットを用いることも可能である。ただし本構成においても、基本は同一構成のブラケットを複数箇所で用いることができるため、部品種類の増加は最小限に抑えられる。
【0060】
・建物の張出部以外での本発明の適用も可能である。例えば、陸屋根部の上に、上記構成の屋根ユニットを設置する構成とする。この場合、屋根ユニットを構成するフレームアセンブリの下側フレーム(第1フレーム)を、建物の躯体としての陸屋根部の屋根フレーム(図1の屋根受け小梁27)に載せた状態で連結するとよい。
【0061】
・上記実施形態では、ユニット式建物への適用例を説明したが、本発明が適用できる建物はこれに限らず、他の鉄骨系の建物や木造在来工法など、上記以外の建物に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0062】
10…建物、15…張出屋根部、21…天井大梁、40…屋根ユニット、41…フレームアセンブリ、42…下側フレーム(第1フレーム)、42a…フレーム材(片持ち梁部材)、43…上側フレーム(第2フレーム)、44…ブラケット、44a…縦板部、44b…横板部、46…野地板(敷き板部材)、47…断熱材(敷き板部材)、71…連結プレート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の屋外部分に敷き板部材が設けられており、その敷き板部材の上面に水勾配面が設けられている建物の水勾配構造であって、
前記建物の躯体に連結される第1フレームと、
前記敷き板部材を下方から支持する第2フレームと、
前記第1フレームを下側、前記第2フレームを上側としてこれら両フレームを連結する複数のブラケットと、
を有してなるフレームアセンブリを備え、
前記複数のブラケットは、上下方向に延びる縦板部と、その縦板部に直交する方向に延びる横板部とをそれぞれ有し、前記縦板部が、前記第1フレーム及び前記第2フレームのうち一方のフレームの側面部に所定の上下方向の重ね代で固定されるとともに、前記横板部が、他方のフレームの上面部又は下面部に当接した状態で固定されており、
前記フレームアセンブリにおいて前記縦板部における前記重ね代が前記複数のブラケットで各々定められており、その重ね代に応じて前記水勾配面に所定の水勾配が形成されていることを特徴とする建物の水勾配構造。
【請求項2】
前記フレームアセンブリにおいて、前記第1フレームと前記第2フレームとは互いに交差して設けられており、前記第2フレームには前記第1フレームとの交差点に前記ブラケットが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建物の水勾配構造。
【請求項3】
前記第1フレームは、前記建物の外壁よりも外側に張り出して設けられる片持ち梁部材を含むものであり、
前記第2フレームは、前記片持ち梁部材に対して交差しかつ架け渡された状態で設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物の水勾配構造。
【請求項4】
前記建物は、床及び天井の大梁と柱とからなる鉄骨ラーメン構造の建物ユニットを複数用いて構築されたユニット式建物であり、
前記片持ち梁部材は、前記建物ユニットの外壁部となる位置に、前記大梁に対して屋外側に張り出すように連結されていることを特徴とする請求項3に記載の建物の水勾配構造。
【請求項5】
前記第2フレームは、その長手方向に分割されてなる複数の梁材よりなり、それら各梁材同士がそれぞれ異なる傾斜角度を有する状態で連結プレートにより互いに連結されており、
前記複数のブラケットは、前記縦板部が前記第2フレームの側面部に固定され、かつ前記第2フレームとの重ね代が各自調整されているとともに、前記横板部が同一の高さ位置に並ぶようにして配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の建物の水勾配構造。
【請求項6】
前記敷き板部材は、複数の板材に分割されて前記第2フレームの上方に敷設されるものを含み、
前記複数の板材として、板厚の違いによりその上面の勾配方向が互いに異なるものを有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の建物の水勾配構造。
【請求項1】
建物の屋外部分に敷き板部材が設けられており、その敷き板部材の上面に水勾配面が設けられている建物の水勾配構造であって、
前記建物の躯体に連結される第1フレームと、
前記敷き板部材を下方から支持する第2フレームと、
前記第1フレームを下側、前記第2フレームを上側としてこれら両フレームを連結する複数のブラケットと、
を有してなるフレームアセンブリを備え、
前記複数のブラケットは、上下方向に延びる縦板部と、その縦板部に直交する方向に延びる横板部とをそれぞれ有し、前記縦板部が、前記第1フレーム及び前記第2フレームのうち一方のフレームの側面部に所定の上下方向の重ね代で固定されるとともに、前記横板部が、他方のフレームの上面部又は下面部に当接した状態で固定されており、
前記フレームアセンブリにおいて前記縦板部における前記重ね代が前記複数のブラケットで各々定められており、その重ね代に応じて前記水勾配面に所定の水勾配が形成されていることを特徴とする建物の水勾配構造。
【請求項2】
前記フレームアセンブリにおいて、前記第1フレームと前記第2フレームとは互いに交差して設けられており、前記第2フレームには前記第1フレームとの交差点に前記ブラケットが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建物の水勾配構造。
【請求項3】
前記第1フレームは、前記建物の外壁よりも外側に張り出して設けられる片持ち梁部材を含むものであり、
前記第2フレームは、前記片持ち梁部材に対して交差しかつ架け渡された状態で設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物の水勾配構造。
【請求項4】
前記建物は、床及び天井の大梁と柱とからなる鉄骨ラーメン構造の建物ユニットを複数用いて構築されたユニット式建物であり、
前記片持ち梁部材は、前記建物ユニットの外壁部となる位置に、前記大梁に対して屋外側に張り出すように連結されていることを特徴とする請求項3に記載の建物の水勾配構造。
【請求項5】
前記第2フレームは、その長手方向に分割されてなる複数の梁材よりなり、それら各梁材同士がそれぞれ異なる傾斜角度を有する状態で連結プレートにより互いに連結されており、
前記複数のブラケットは、前記縦板部が前記第2フレームの側面部に固定され、かつ前記第2フレームとの重ね代が各自調整されているとともに、前記横板部が同一の高さ位置に並ぶようにして配置されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の建物の水勾配構造。
【請求項6】
前記敷き板部材は、複数の板材に分割されて前記第2フレームの上方に敷設されるものを含み、
前記複数の板材として、板厚の違いによりその上面の勾配方向が互いに異なるものを有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の建物の水勾配構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−96149(P2013−96149A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240278(P2011−240278)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
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