説明

建物の防蟻構造及びその建物

【課題】建物内の環境を汚染することなく軸組や床組等をシロアリによる食害から確実に保護できる建物の防蟻構造及びその建物を提供する。
【解決手段】建物Aのべた基礎1における基礎スラブ2と周囲の地表面より高く位置する該基礎スラブ2上面の外周部分から周方向に延びるように立設される外周立ち上がり部3との継ぎ目4の外側を防蟻シート7により閉塞することによりシロアリ5が通過して床下空間6へ侵入するのを防止する建物の防蟻構造であって、前記防蟻シート7の横断面がフラットな状態になるように該防蟻シート7が前記外周立ち上がり部3及び前記基礎スラブ2の外周面に接着されることにより前記継ぎ目4の外側を閉塞した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建物のべた基礎における基礎スラブと外周立ち上がり部との継ぎ目をシロアリが通過して床下空間へ侵入するのを防止するための建物の防蟻構造及びその建物に関する。
【背景技術】
【0002】
建物における従来のシロアリ防除技術としては、例えば、(1)建物の床下の地盤(土壌)と、地面から1m以内の木部とを薬剤で処理する方法、(2)床下の地盤上に、薬剤を練り込んだ合成樹脂シートを敷設する方法、等が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来例(1)においては、薬剤に起因する化学物質過敏症等の問題があり、即ち、建物内の環境が化学物質によって汚染されると共に、5年程度で薬効が切れるために再処理の必要があるという問題点がある。
【0004】
また、従来例(2)においては、合成樹脂シートの周囲の隙間からシロアリが侵入することがあるという問題点がある。
【0005】
この発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、建物内の環境を汚染することなく軸組や床組等をシロアリによる食害から確実に保護できる建物の防蟻構造及びその建物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の防蟻構造は、建物のべた基礎における基礎スラブと周囲の地表面より高く位置する該基礎スラブ上面の外周部分から周方向に延びるように立設される外周立ち上がり部との継ぎ目の外側を防蟻シートにより閉塞することによりシロアリが通過して床下空間へ侵入するのを防止する建物の防蟻構造であって、前記防蟻シートの横断面がフラットな状態になるように該防蟻シートが前記外周立ち上がり部及び前記基礎スラブの外周面に接着されることにより前記継ぎ目の外側を閉塞したものである。
【0007】
請求項2の防蟻構造においては、前記防蟻シートが、前記シロアリの分泌物に耐性かつ少なくとも約70のショア硬度を有する耐用性の耐腐食性材料からなる。
【0008】
請求項3の防蟻構造においては、前記防蟻シートが、いずれの方向においても前記シロアリの頭部横断面の最大直線寸法より小さい直線寸法の多数の孔を有するメッシュシートである。
【0009】
請求項4の建物は、請求項1乃至3のいずれか記載の防蟻構造を有するものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1及び請求項4の発明によれば、防蟻シートにより継ぎ目を閉塞しておけば、防蟻シートが障害となってシロアリが継ぎ目を通過して床下空間へ侵入するのを阻止でき、そのため建物内の環境を汚染することなく軸組や床組等をシロアリによる食害から確実に保護できる。
【0011】
請求項2及び請求項4の発明によれば、防蟻シートが前記耐腐食性材料からなるので、シロアリによって食い破られるおそれがなく、そのためシロアリの床下空間への侵入をより確実に阻止できる。
【0012】
請求項3及び請求項4の発明によれば、防蟻シートが前記メッシュシートであるので、接着モルタルによる接着等の際にアンカー効果によってより強固に取付けできると共に、立ち上がり部や押えコンクリートに埋設する際にアンカー効果によってより強固に一体化できるという利点がある。また、孔の直線寸法はいずれの方向においてもシロアリの頭部横断面の最大直線寸法より小さいので、シロアリがメッシュシートを通り抜けることもない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る建物の防蟻構造を示す概略縦断面図。
【図2】継ぎ目の内側付近の要部拡大縦断面図。
【図3】(a)はシロアリの平面図、(b)は(a)のY−Y線断面図。
【図4】防蟻シートの要部拡大平面図。
【図5】第2実施形態に係る建物の防蟻構造を示す要部拡大縦断面図。
【図6】第3実施形態に係る建物の防蟻構造を示す概略縦断面図。
【図7】継ぎ目付近の要部拡大縦断面図。
【図8】第4実施形態に係る建物の防蟻構造を示す要部拡大縦断面図。
【図9】第5実施形態に係る建物の防蟻構造を示す要部拡大縦断面図。
【図10】第6実施形態に係る建物の防蟻構造を示す要部拡大縦断面図。
【図11】第7実施形態に係る建物の防蟻構造を示す概略縦断面図。
【図12】継ぎ目付近の要部拡大縦断面図。
【図13】第8実施形態に係る建物の防蟻工法において、コンクリート型枠とベース部との間に防蟻シートを介在させた状態を示す要部拡大縦断面図。
【図14】立ち上がり部に外端を埋設した防蟻シートを折曲してその内端を所定位置に支持した状態を示す要部拡大縦断面図。
【図15】防蟻シートの内端を押えコンクリートに埋設した状態を示す要部拡大縦断面図。
【図16】第9実施形態に係る建物の防蟻工法において、2つ折りとした防蟻シートをコンクリート型枠の内側に固定する様子を示す要部拡大縦断面図。
【図17】2つ折りとした防蟻シートをコンクリート型枠の内側に固定した状態を示す要部拡大縦断面図。
【図18】立ち上がり部を打設した状態を示す要部拡大縦断面図。
【図19】防蟻シートの内端側を折曲する様子を示す要部拡大縦断面図。
【図20】防蟻シートの内端を所定位置に支持した状態を示す要部拡大縦断面図。
【図21】防蟻シートの内端を押えコンクリートに埋設した状態を示す要部拡大縦断面図。
【図22】第10実施形態に係る建物の防蟻工法において、下型枠と上型枠との間に防蟻シートを挟持した状態を示す要部拡大縦断面図。
【図23】コーナー部における防蟻シートの挟持状態の一例を示す概略平面図。
【図24】コーナー部における防蟻シートの挟持状態の他の例を示す概略平面図。
【図25】立ち上がり部を打設した状態を示す要部拡大縦断面図。
【図26】防蟻シートの内端を押えコンクリートに埋設した状態を示す要部拡大縦断面図。
【図27】第11実施形態に係る建物の防蟻工法において、防蟻シートの内端を押えコンクリート上に取付けた状態を示す要部拡大縦断面図。
【図28】第12実施形態に係る建物の防蟻工法において、防蟻シートの内端を押えコンクリートに埋設した状態を示す要部拡大縦断面図。
【図29】第13実施形態に係る建物の防蟻工法において、未硬化のベース部に防蟻シートの下端を差し込んだ状態を示す要部拡大縦断面図。
【図30】防蟻シートの上端を押えコンクリートに埋設した状態を示す要部拡大縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図4に示すように、第1実施形態に係る建物Aの防蟻構造は、建物Aのべた基礎1における基礎スラブ2と外周立ち上がり部3との継ぎ目4をシロアリ5が通過して床下空間6へ侵入するのを防止するものであって、防蟻シート7により継ぎ目4の例えば内側を閉塞したものである。
【0015】
基礎スラブ2は、図1に示すように、建物Aの床下に全面的に施工されており、この基礎スラブ2の下方には捨てコンクリート8や割栗石9が施工されている。なお、基礎スラブ2の縦断面形状等は特に限定されるものではなく、従来公知の各種の構成を採用できる。また、割栗石9と捨てコンクリート8の間、又は捨てコンクリート8と基礎スラブ2の間には、必要に応じて防湿シート等を敷設してもよい。
【0016】
外周立ち上がり部3は、基礎スラブ2上の外周部分に周方向に延びるように立設されており、基礎スラブ2と外周立ち上がり部3との打ち継ぎ部分に継ぎ目4が形成されている。この外周立ち上がり部3の内方には、床下空間6が形成されていると共に、必要に応じて柱状の又は縦横等に延びる立ち上がり部10が立設されている。
【0017】
シロアリ5とは、ゴキブリに近縁の社会生活をする不完全変態の昆虫であって、シロアリ目(等翅類)Isopteraの総称である。このシロアリ5は、図3に示すように、非変形性の堅い頭部5aを有している。このようなシロアリ5としては、例えば、ヤマトシロアリやイエシロアリ等の各種のものが挙げられる。
【0018】
防蟻シート7としては、例えば、「アリ断(商品名,フクビ化学工業株式会社製)」等の防蟻剤を練り込んだ合成樹脂シート、「シロアリシャッター(商品名,大日本木材防腐工業株式会社製)」等の防蟻剤を塗布したガラス繊維シート等の防蟻性を有する従来公知の各種のシート材や板材等が挙げられるが、シロアリ5から放出されるギ酸等の分泌物に耐性で、かつ、シロアリ5が噛み砕くことができない硬さである少なくとも約70のショア硬度を有し、使用環境下で数十年の耐用年数を有する耐用性の耐腐食性材料からなるものが望ましい。
【0019】
このような防蟻シート7としては、例えば、前記耐腐食性材料からなる金属製や合成樹脂製等のシート材や板材等が挙げられるが、図4に示すように、ステンレス鋼ワイヤ11から製織され、いずれの方向においてもシロアリ5の頭部5a横断面の最大直線寸法Hより小さい直線寸法の多数の網目(孔)12を有するステンレスメッシュ7S〔例えば「ターミメッシュ(TERMI−MESH,商品名)」,ターミメッシュジャパン株式会社製〕等、柔軟性に優れ、かつ、切断、折曲による造形、折曲時の輪郭付け等が容易なメッシュシートが好適である。
【0020】
なお、シロアリバリアー材としてのメッシュシートは、ステンレスメッシュ7Sの他、例えば、セラミックス・ガラス・合成樹脂・金属(特にステンレス)等の繊維・フィラメント・ストランド等から製織又は製編等されたワイヤーラス等や不織布、あるいはパンチングメタル、メタルラス等の各種のものを使用できる。要するに、網目12等の多数の孔を有していればよい。この孔の形状は特に限定されるものではなく、矩形状や円状等の適宜の形状とすることができる。
【0021】
このように構成される防蟻シート7は、図2に示すように、継ぎ目4の内側を閉塞するように外周立ち上がり部3及び基礎スラブ2に取付けられている。防蟻シート7を取付けるには、防蟻シート7を横断面がL字形等となるように折曲又は成形等した状態で、モルタルに適宜のポリマー等を配合した接着モルタル13を塗布することによって外周立ち上がり部3及び基礎スラブ2に接着等すればよい。接着モルタル13による接着の前には、例えば釘、止めワッシャ付き釘(例えばヒルト社製)、ステープル等の止着部材(図示せず)で止着しておくのが望ましい。
【0022】
このように、防蟻シート7により継ぎ目4を閉塞しておけば、シロアリ5が屋外Dから継ぎ目4に侵入した場合でも、防蟻シート7が障害となって床下空間6への侵入が阻止される。そのため、建物A内の環境を汚染することなく軸組Bや床組C等をシロアリ5による食害から確実に保護できるという利点がある。
【0023】
ここで、前記耐腐食性材料からなる防蟻シート7を使用した場合は、シロアリ5によって食い破られるおそれがないので、シロアリ5の床下空間6への侵入をより確実に阻止できるという利点がある。また、防蟻シート7としてメッシュシートを使用した場合でも、網目12等の孔の直線寸法はいずれの方向においてもシロアリ5の頭部5a横断面の最大直線寸法Hより小さいので、シロアリ5がメッシュシートを通り抜けるのは不可能である。また、メッシュシートは多数の孔を有しているので、接着モルタル13による接着等の際にアンカー効果によってより強固に取付けできるという利点がある。
【0024】
この場合、前記最大直線寸法Hは、イエシロアリの職蟻で1.1〜1.25mm程度、ヤマトシロアリの職蟻で1.0〜1.2mm程度であるので、ヤマトシロアリが生息する地域では、孔の直線寸法をいずれの方向においても2.0mm程度以下としておくのが望ましい。また、接着モルタル13に含まれる細骨材としては、シロアリ5が噛み砕くことができない砂等が挙げられるが、塗布した接着モルタル13がいずれの部分においてもシロアリ5によって食い破られないように、孔を通過する大きさのものを使用すると共に、互いの間隔が前記最大直線寸法Hより小さくなるように配合するのが望ましい。
【0025】
図5に示すように、第2実施形態に係る建物Aの防蟻構造は、第1実施形態において、継ぎ目4の外側を防蟻シート7により閉塞したものである。そのため、接着モルタル13や防蟻シート7が障害となって、シロアリ5が継ぎ目4を通過して床下空間6へ侵入するのを阻止できるという利点がある。
【0026】
この場合、防蟻シート7は、横断面がフラットな状態で、必要に応じて既述の止着部材で止着した後、接着モルタル13を塗布することによって外周立ち上がり部3及び基礎スラブ2に接着等すればよい。
【0027】
図6及び図7に示すように、第3実施形態に係る建物Aの防蟻構造は、建物Aの布基礎31,32の立ち上がり部33,34と押えコンクリート35との継ぎ目36をシロアリ5が通過して床下空間6へ侵入するのを防止するものであって、防蟻シート7により継ぎ目36の例えば上方側を閉塞したものである。
【0028】
布基礎31,32は、建物Aの外周部分及びその内方に施工されており、立ち上がり部33(34)とベース部37(38)とから横断面が逆T字状に形成されている。外周部分に施工されて周方向に延びる立ち上がり部33の内方の地盤39は、内方に施工されて縦横等に連続する立ち上がり部34により複数の区画に区分されている。布基礎31,32の下方には、捨てコンクリート8や割栗石9が施工されている。
【0029】
押えコンクリート35は、外周部分及び内方の立ち上がり部33,34で包囲された地盤39上に例えば目つぶし砂利40を介して施工されており、内部にワイヤーメッシュ等が埋設されている。なお、押えコンクリート35と目つぶし砂利40との間、又は目つぶし砂利40と地盤39との間には、必要に応じて防湿シート等を敷設してもよい。
【0030】
防蟻シート7は、継ぎ目36の上方側を閉塞するように、立ち上がり部33,34及び押えコンクリート35に横断面がL字形となるようにして例えば止着部材や接着モルタル13等で取付けられている。そのため、シロアリが地盤39中から継ぎ目36に侵入した場合でも、防蟻シート7が障害となって床下空間6へ侵入するのを阻止できるという利点がある。
【0031】
ここで、この実施形態のように、防蟻シート7の例えば隅角部等に伸縮用ひだ部41を周方向に沿って延設しておけば、地震等の振動により立ち上がり部33,34と押えコンクリート35との相対位置が変動する場合でも伸縮用ひだ部41が伸縮するので、防蟻シート7が立ち上がり部33,34や押えコンクリート5から外れるのを防止でき、修繕の必要がないという利点がある。この場合、接着モルタル13は、伸縮用ひだ部41が埋設されないように、伸縮用ひだ部41を含む所定範囲を開けて塗布等するのが望ましい。また、伸縮用ひだ部41は、所定範囲を折り返す等して防蟻シート7にあらかじめ延設しておいてもよいし、あるいは施工現場で延設してもよい。
【0032】
更に、押えコンクリート35の下方に防蟻シート42を敷設しておけば、押えコンクリート35に万が一クラックが生じた場合でも、シロアリ5がそのクラックを通過して床下空間6へ侵入するのを阻止できるという利点がある。
【0033】
なお、防蟻シート42は、押えコンクリート35と目つぶし砂利40との間の他、目つぶし砂利40と地盤39との間等に敷設してもよい。このような押え用防蟻シート42としては、防蟻シート7と同様のものを使用できる。
【0034】
図8に示すように、第4実施形態に係る建物Aの防蟻構造は、第3実施形態において、防蟻シート7の内端7bを押えコンクリート35に埋設したものである。そのため、防蟻シート7の内端7bを確実に押えコンクリート35に取付けられると共に、押えコンクリート35の打設時に埋設できるので、取付け作業を省力化できるという利点がある。
【0035】
この場合、防蟻シート7の外端7aは、押えコンクリート35を施工する前に立ち上がり部33,34に止着部材や接着モルタル13等で取付けておけばよい。防蟻シート7の内端7bは、適当な部位で折曲して所定位置に支持した状態で、押えコンクリート35を打設して埋設すればよい。なお、伸縮用ひだ部41は、押えコンクリート35の打設によって埋設されないように、押えコンクリート35よりも高い位置に延設しておくのが望ましい。
【0036】
ここで、この実施形態のように、防蟻シート7の内端7bを上方等の適宜の方向に少なくとも1回折曲しておけば、埋設後に押えコンクリート35から抜けにくいという利点がある。
【0037】
図9に示すように、第5実施形態に係る建物Aの防蟻構造は、第4実施形態において、防蟻シート7の外端7aを粘着テープ51により立ち上がり部33,34に仮止めすると共に、これら防蟻シート7の外端7a及び粘着テープ51を釘52等の止着部材により立ち上がり部33,34に固定したものである。そのため、防蟻シート7の外端7aの取付け作業を簡単に行えるという利点がある。
【0038】
このような粘着テープ51に使用される粘着剤53としては、防蟻性を有するアスファルト系材料又はコールタール系材料等からなるものが望ましく、立ち上がり部33,34に貼付ける際又は加熱後に貼付ける際に、防蟻シート7の孔を通過する粘性を有するものが更に望ましい。止着部材としては、釘52の他、例えばステープルやビス等であってもよい。防蟻シート7の外端7aの仮止め及び固定は、第4実施形態と同様、押えコンクリート35を施工する前に行っておけばよい。
【0039】
図10に示すように、第6実施形態に係る建物Aの防蟻構造は、第2乃至第5実施形態において、防蟻役物61の垂直板62を止着部材で立ち上がり部33,34に固定し、防蟻役物61の水平板63を押えコンクリート35に埋設し、防蟻シート7の上端7cを立ち上がり部33,34に止着部材や接着モルタル13で取付けると共に、この防蟻シート7の下端7dを垂直板62に止着部材や接着モルタル13で取付けたものである。
【0040】
防蟻役物61は、垂直板62と水平板63とから長尺かつ横断面がL字形に形成されている。この防蟻役物61の材質は特に限定されるものではないが、シロアリ5によって食い破られないように、ポリ塩化ビニルやポリプロピレン等の比較的硬質の合成樹脂、アルミニウムやステンレス等の金属等で構成しておくのが望ましい。
【0041】
このように、継ぎ目36を防蟻役物61により閉塞すると共に、防蟻役物61の上方を防蟻シート7により閉塞しているので、シロアリ5が継ぎ目36を通過して床下空間6へ侵入するのを阻止できるという利点がある。
【0042】
ここで、この実施形態のように、水平板63の先端に適宜の方向に突出する突出板64を周方向に沿って延設しておけば、埋設後に押えコンクリート35から抜けにくいという利点がある。
【0043】
図11及び図12に示すように、第7実施形態に係る建物Aの防蟻構造は、第2乃至第5実施形態において、防蟻シート42の代わりに防蟻シート7を押えコンクリート35の下方に敷設すると共に、この防蟻シート7の外端7aを止着部材や接着モルタル13で立ち上がり部33,34に取付けたものである。そのため、シロアリ5が継ぎ目36を通過して床下空間6へ侵入するのを阻止できると共に、押えコンクリート35に万が一クラックが生じた場合でも、シロアリ35がそのクラックを通過して床下空間6へ侵入するのを確実に阻止できるという利点がある。
【0044】
なお、防蟻シート7の外端7aの取付けは、押えコンクリート35を施工する前でもよいし、あるいは施工した後でもよい。
【0045】
図13乃至図15に示すように、第8実施形態に係る建物Aの防蟻工法は、第4及び第5実施形態において、継ぎ目36を閉塞するように防蟻シート7を施工する工法であって、防蟻シート7の外端7aを立ち上がり部33,34に埋設し、この防蟻シート7を折曲してその内端7bを所定位置に支持した後、この防蟻シート7の内端7bを押えコンクリート35に埋設するものである。
【0046】
即ち、まず、図13に示すように、立ち上がり部33を打設するためのコンクリート型枠81,82をベース部37上に間隔を開けて相対向して立設する際に、内側のコンクリート型枠81とベース部37との間に防蟻シート7を挟持しておき、適当な部位を折曲等してその外端7aを所定位置に支持しておく。なお、ベース部37と立ち上がり部33とをほぼ同時又は同時に打設する一体打ち工法により施工する場合は、内側のコンクリート型枠81の下方に上記と同様にして防蟻シート7を配設しておけばよい。
【0047】
次いで、図14に示すように、立ち上がり部33を打設すれば、防蟻シート7の外端7aが立ち上がり部33に埋設される。そのため、防蟻シート7の外端7aを確実に立ち上がり部33に取付けられると共に、立ち上がり部33の打設時に埋設できるので、取付け作業を省力化できるという利点がある。
【0048】
コンクリート型枠81,82を除去した後は、防蟻シート7の適当な部位を折曲してその内端7bを所定位置に支持する。更に、図15に示すように、布基礎31周辺土の埋戻し、及び必要に応じて目つぶし砂利40の施工や防蟻シート42の敷設等を行った後、押えコンクリート35を打設すれば、防蟻シート7の内端7bが押えコンクリート35に埋設される。なお、内方の立ち上がり部34においては、立ち上がり部34の両側で上記と同じ操作をそれぞれ行えばよい。
【0049】
このように、防蟻シート7をベース部37とコンクリート型枠81との間に挟持しておけば防蟻シート7を簡単に配置できると共に、あらかじめ配置してから立ち上がり部33,34や押えコンクリート35等を施工すれば止着部材や接着モルタル13等による防蟻シート7の取付け作業が不要であるので、施工コストを低減化できるという利点がある。また、防蟻シート7の外端7aや内端7bは、この実施形態のように、上方等の適宜の方向に少なくとも1回折曲しておくのが望ましく、この場合には防蟻シート7が立ち上がり部33,34や押えコンクリート35から抜けにくいという利点がある。更に、防蟻シート7としてメッシュシートを使用する場合は、多数の孔を有しているので、立ち上がり部33や押えコンクリート35への埋設時にアンカー効果によってより強固に一体化できるという利点がある。
【0050】
図16乃至図21に示すように、第9実施形態に係る建物Aの防蟻工法は、第8実施形態において、離型紙91を間に挟んで2つ折りとされかつ外端7aが外方へ折曲された防蟻シート7の内端7b側を、例えば鋼製のコンクリート型枠81,82のうちの内側のコンクリート型枠81のコンクリートと接触する型枠面81aに複数個の磁石92により周方向に沿って固定した状態で立ち上がり部33を打設するものである。
【0051】
防蟻シート7は、図16及び図17に示すように、離型紙91を間に挟んだ状態で2つ折りとされており、外端7aが外方へ折曲されている。コンクリート型枠81が鋼製であれば、この実施形態のように、磁石92により固定すればよいが、木製や合成樹脂製等のコンクリート型枠81を使用する場合は、釘やステープル等の止着部材により防蟻シート7を固定してもよい。
【0052】
図18に示すように、この状態で立ち上がり部33を打設すれば、防蟻シート7の外端7a側や磁石92が立ち上がり部33に埋設されるが、内端7b側は離型紙91の介在によって埋設されない。図19及び図20に示すように、コンクリート型枠81,82を除去した後は、防蟻シート7の内端7b側を折曲して離型紙91を取外し、内端7bを所定位置に支持する。この場合、防蟻シート7の所定位置に、必要に応じて伸縮用ひだ部41を周方向に沿って延設してもよい。
【0053】
更に、図21に示すように、布基礎31周辺土の埋戻し、及び必要に応じて目つぶし砂利40の施工や防蟻シート42の敷設等を行った後、押えコンクリート35を打設すれば、防蟻シート7の内端7bが押えコンクリート35に埋設される。なお、内方の立ち上がり部34においては、立ち上がり部34の両側で上記と同じ操作をそれぞれ行えばよい。
【0054】
このように、2つ折りとした防蟻シート7をコンクリート型枠81の型枠面81aにあらかじめ固定しておけば防蟻シート7を簡単に配置できると共に、あらかじめ配置してから立ち上がり部33,34や押えコンクリート35等を施工すれば止着部材や接着モルタル13等による防蟻シート7の取付け作業が不要であるので、施工コストを低減化できるという利点がある。
【0055】
図22乃至図26に示すように、第10実施形態に係る建物Aの防蟻工法は、第8及び第9実施形態において、内側に立設された下型枠81Aとこの下型枠81A上に載置された上型枠81Bとの間に防蟻シート7をその外端7aが外方へ突出するように挟持した状態で立ち上がり部33を打設するものである。
【0056】
防蟻シート7は、図22に示すように、下型枠81Aと上型枠81Bとの間にフラットな状態で挟持されている。下型枠81Aと上型枠81Bとは、例えばクランプ等の挟着部材(図示せず)により上下に一体化されている。
【0057】
なお、図23に示すように、出隅部や入隅部等のコーナー部においては、長尺な防蟻シート7の端部7e同士を重合するように挟持しておけばよい。あるいは、図24に示すように、平面視がL字形等のコーナー役物としての防蟻シート7をコーナー部に使用し、このL字形の防蟻シート7の両端部7fと長尺な防蟻シート7の端部7eとをそれぞれ重合、接着、又は巻き込み等した状態で挟持するようにしてもよい。
【0058】
この状態で立ち上がり部33を打設すれば、図25に示すように、防蟻シート7の外端7aが立ち上がり部33に埋設される。なお、防蟻シート7が軟質材料で構成されている場合は、押えコンクリート35を打設し易いように、半硬質又は硬質等の比較的硬いシート材や板材等を防蟻シート7の下面に重合しておいたり、あるいは上面又は下面に接着一体化しておいたりして、防蟻シート7が水平等に支持されるようにしておくのが望ましい。
【0059】
次いで、図26に示すように、布基礎31周辺土の埋戻し、及び必要に応じて目つぶし砂利40の施工や防蟻シート42の敷設等を行った後、押えコンクリート35を打設すれば、防蟻シート7の内端7bが押えコンクリート35に埋設される。この場合、下型枠81Aや上型枠81Bの高さは、防蟻シート7の内端7bがそのまま押えコンクリート35に埋設されるように設定しておけばよい。なお、内方の立ち上がり部34においては、立ち上がり部34の両側で上記と同じ操作をそれぞれ行えばよい。
【0060】
このように、防蟻シート7を下型枠81Aと上型枠81Bとの間に挟持しておけば防蟻シート7を簡単に配置できると共に、あらかじめ配置してから立ち上がり部33,34や押えコンクリート35等を施工すれば止着部材や接着モルタル13等による防蟻シート7の取付け作業が不要であるので、施工コストを低減化できるという利点がある。
【0061】
図27に示すように、第11実施形態に係る建物Aの防蟻工法は、第10実施形態において、防蟻シート7の外端7aを立ち上がり部33のより高い位置に埋設した後、この防蟻シート7の内端7bを止着部材や接着モルタル33で押えコンクリート35上に接着等したものである。そのため、伸縮用ひだ部41を防蟻シート7にあらかじめ延設しておいたり、立ち上がり部33への埋設後に折曲等して延設したりできるという利点がある。
【0062】
図28に示すように、第12実施形態に係る建物Aの防蟻工法は、第11実施形態において、防蟻シート7の外端7aを立ち上がり部33の更に高い位置に埋設し、この防蟻シート7を折曲してその内端7bを所定位置に支持した後、防蟻シート7の内端7bを押えコンクリート35に埋設するものである。そのため、第11実施形態と同様、伸縮用ひだ部41を防蟻シート7にあらかじめ延設しておいたり、立ち上がり部33への埋設後に折曲等して延設したりできるという利点がある。
【0063】
図29及び図30に示すように、第13実施形態に係る建物Aの防蟻工法は、第8乃至第12実施形態において、ベース部37を打設した後、この未硬化のベース部37に、周方向に延びかつ沈下防止用突出部101を有する防蟻シート7の下端7dを沈下防止用突出部101が未硬化のベース部37に当接するように差し込んで埋設してから、この防蟻シート7の上端7cを押えコンクリート35に埋設するものである。
【0064】
ベース部37の打設は、既述の一体打ち工法により立ち上がり部33と共に行えばよい。この場合、コンクリート型枠81,82の他、ベース部37用のコンクリート型枠103,104等も所定位置に配置しておけばよい。
【0065】
防蟻シート7には、所定位置でT字形に折り畳んだり、あるいは成形したりして沈下防止用突出部101が水平に突設されている。この防蟻シート7の下端7は、図29に示すように、未硬化のベース部37に、沈下防止用突出部101が未硬化のベース部37に当接するように差し込んだ状態で埋設すればよい。このように、沈下防止用突出部101を突設しておけば、未硬化のベース部37に防蟻シート7の下端7dを差し込んだ際に防蟻シート7が沈下するのを確実に防止できるので、ベース部37を打設してから比較的早い段階で防蟻シート7を配設できるという利点がある。なお、沈下防止用突出部101を突設しない場合は、防蟻シート7が沈下しないように、ベース部37のコンクリートの粘性がある程度高くなるのを待ってから防蟻シート7の下端7dを差し込めばよい。
【0066】
その後は、図30に示すように、防蟻シート7の内外の埋戻し等をしてから押えコンクリート35を打設すれば、防蟻シート7の上端7cが押えコンクリート35に埋設される。なお、内方の立ち上がり部34においては、立ち上がり部34の両側でベース部38に対して上記と同じ操作をそれぞれ行えばよい。
【0067】
このようにして防蟻シート7を配設すれば、ベース部37と押えコンクリート35との間を閉塞できるので、立ち上がり部33と押えコンクリート35との継ぎ目4をシロアリ5が通過して床下空間へ侵入するのを阻止できるという利点がある。
【0068】
以上の第2乃至第13実施形態においては、外周部分の布基礎31の内方にも布基礎32を施工する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、内方の布基礎32の代わりに、全面的に施工した押えコンクリート35上に互いに間隔を開けて立設される従来公知の複数の床束等を施工してもよい。
【符号の説明】
【0069】
A 建物
1 べた基礎
2 基礎スラブ
3 外周立ち上がり部
4 継ぎ目
5 シロアリ
6 床下空間
7 防蟻シート
7a 外端
7b 内端
7c 上端
7d 下端
7S ステンレスメッシュ(メッシュシート)
12 網目(孔)
31,32 布基礎
33,34 立ち上がり部
35 押えコンクリート
36 継ぎ目
37,38 ベース部
39 地盤
41 伸縮用ひだ部
42 押え用防蟻シート
51 粘着テープ
52 釘(止着部材)
61 防蟻役物
62 垂直板
63 水平板
64 突出板
81,82 コンクリート型枠
81a 型枠面
81A 下型枠
81B 上型枠
91 離型紙
101 沈下防止用突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物のべた基礎における基礎スラブと周囲の地表面より高く位置する該基礎スラブ上面の外周部分から周方向に延びるように立設される外周立ち上がり部との継ぎ目の外側を防蟻シートにより閉塞することによりシロアリが通過して床下空間へ侵入するのを防止する建物の防蟻構造であって、
前記防蟻シートの横断面がフラットな状態になるように該防蟻シートが前記外周立ち上がり部及び前記基礎スラブの外周面に接着されることにより前記継ぎ目の外側を閉塞したことを特徴とする建物の防蟻構造。
【請求項2】
前記防蟻シートが、前記シロアリの分泌物に耐性かつ少なくとも約70のショア硬度を有する耐用性の耐腐食性材料からなる請求項1記載の建物の防蟻構造。
【請求項3】
前記防蟻シートが、いずれの方向においても前記シロアリの頭部横断面の最大直線寸法より小さい直線寸法の多数の孔を有するメッシュシートである請求項1又は2記載の建物の防蟻構造。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか記載の防蟻構造を有する建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2011−99321(P2011−99321A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25753(P2011−25753)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【分割の表示】特願2001−180306(P2001−180306)の分割
【原出願日】平成13年6月14日(2001.6.14)
【出願人】(501239550)ターミメッシュジャパン株式会社 (1)
【Fターム(参考)】