説明

建物の防蟻構造

【課題】
本発明は、効果的にシロアリの侵入を防ぐことができる建物の防蟻構造を提供することを目的とする。
【解決手段】
建物基礎の外周立ち上がり部の屋外側面に、20℃における水への溶解度が100mg/L以上である殺虫組成物と、アルキド樹脂、アクリル樹脂、アミノ樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂及びビニル樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種類以上の樹脂を含有するもので被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布基礎やベタ基礎などの基礎の外周立上がり部の屋外側からのシロアリの侵入を防ぐ建物の防蟻構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の建物におけるシロアリ防除技術としては、建物の床下の地面から1メートル程度の範囲の木材や建物の下の土壌に、シロアリを駆除できる薬剤を処理する方法やシロアリに少量の薬剤を含む毒餌を摂食させて根絶するベイト工法などの方法が知られている。しかし、上述の建物の床下に薬剤を処理する方法においては、臭気やカビの発生の点で問題がある。また、ベイト工法においては、コロニー全体の活力を衰退させることにあり、その開始から終了までに少なくとも数ヶ月以上を要するという問題がある。
薬剤を使用せずにシロアリの侵入を物理的に阻止する工法も種々提案されている。防蟻シートを、建物基礎に取付けたり、基礎下に敷いて、建物内にシロアリが侵入することを防ぐ防蟻方法が挙げられる。しかし、上述の工法では非常に施工に手間がかかり、また僅かな隙間からシロアリが進入するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−247816号公報
【特許文献2】特開2004−8161号公報
【特許文献3】特開平3−175924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、効果的にシロアリの侵入を防ぐことができる建物の防蟻構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、このような課題を解決するため鋭意研究を行った結果、建物基礎の外周立ち上がり部の屋外側面に、20℃における水への溶解度が100mg/L以上である殺虫組成物で被覆することによって効果的にシロアリの侵入を防ぐことを見出した。すなわち本発明は、
(1)建物基礎の外周立ち上がり部の屋外側面に、20℃における水への溶解度が100mg/L以上である殺虫組成物で被覆することを特徴とする防蟻構造。
(2)20℃における水への溶解度が100mg/L以上である殺虫組成物にアルキド樹脂、アクリル樹脂、アミノ樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂及びスチレン樹脂及びビニル樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種類以上の樹脂を含有することを特徴とする請求項1の防蟻構造。
に関するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の防蟻構造を用いることにより、住宅木材部分へのシロアリによる被害を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は防蟻構造の一例を示す住宅基礎の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に用いられる、20℃における100mg/L以上である殺虫組成物としては、1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリジン−2−イリデンアミン、(E)−N−〔(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル〕N`−シアノ−N−メチルエタンイミダミド、3−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−5−メチル−N−ニトロ−1,3,5−オキサジアジナン−4−イリデンアミン、(E)−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン、3−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−1,3−チアゾリジン−2−イリデンシアナミド、N−((6−クロロ−3−ピリジニル)メチル)−N−エチル−N‘−メチル−2−ニトロ−1,1−エチンジアミンO,S−ジメチル−N−アセチルホスホロアミドチオエート、2−メチル−2−メチルホルニプロピオンアルデヒドO−メチルカルバモイルオキシム(アルドキシカルブ)、2,2−ジメチル−1,3−ベンゾジオキソル−4−イル メチルカーバメート、ホスホロジチオ酸O,O−ジメチル S−(N−メチルカルバモイルメチル、S−メチル−N−[(メチルカルバモイル)−オキシ]−チオアセトイミデート(メソミル)、ホウ酸、硼砂、などが挙げられる。特に、(E)−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン及び1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリジン−2−イリデンアミンが特に好ましい。
【0009】
本発明に用いられる樹脂としては、アルキド樹脂、アクリル樹脂、アミノ樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂及びビニル樹脂などが挙げられる。特にアクリル樹脂とシリコン樹脂が好ましい。
【0010】
本発明の殺虫組成物は、有効成分をそのまま用いても良いが、通常製剤化して用いる。製剤の種類は特に限定されないが、扱いやすさの点から液状の製剤が好ましい。液状の製剤としては、水溶剤、乳剤、油剤、フロアブル剤等を挙げることができるが、これらの製剤に限定されない。さらに、製剤自体の安定化や、処理時の薬液の安定化のために一般の細菌に有効な防腐剤、安定剤、酸化防止剤、キレート剤、防錆剤、消泡剤、pH調節剤等を添加しても良い。
【0011】
建物基礎の外周立ち上がり部の屋外側面に、20℃における水への溶解度が100mg/L以上である殺虫組成物で被覆する場合は、吹きつけ塗布や、刷毛塗り、ロ−ル塗布であっても良い。もちろんこれら以外であってもよいし、処理条件もその薬剤に適する方法を適宜選択すればよい。また、建物基礎の外周立ち上がり部の屋外側面上に化粧モルタルや断熱材がある場合は、その上から20℃における水への溶解度が100mg/L以上である殺虫組成物で被覆することも可能である。
【実施例】
【0012】
次に実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0013】
本発明の実施例、比較例に用いた殺虫組成物とその20℃における水溶解度について表1と以下に示す。
化合物A:(E)−1−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−3−メチル−2−ニトログアニジン(商品名「タケロックMC50スーパー」、日本エンバイロケミカルズ株式会社製、化合物Aを2.5%含有)
化合物B:1−(6−クロロ−3−ピリジルメチル)−N−ニトロイミダゾリジン−2−イリデンアミン(商品名「ハチクサンFL」、バイエルクロップサイエンス株式会社製、化合物Bを20%含有)
化合物C:3−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−5−メチル−N−ニトロ−1,3,5−オキサジアジナン−4−イリデンアミン(商品名「ザモックス」、ケミプロ化成株式会社製、化合物Cを20%含有)
化合物D: ホウ酸(和光純薬工業株式会社製)
化合物E:2−(4−エトキシフェニル)−2−メチルプロピル 3−フェノキシベンジル エーテル(商品名「メトロフェン乳剤」、三井化学アグロ株式会社製、化合物Eを8%含有)
化合物F:5−アミノ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−3−シアノ−4−トリフルオロメチルスルフィニルピラゾール(商品名「アジェンダSC」、バイエルクロップサイエンス株式会社製、化合物Fを9.1%含有)
化合物G:2−イソプロピル−4−メチルピリミジル−6−ジエチルホスフェイト(商品名「ダイアジノンクリンES」、住化エンビロサイエンス株式会社製、化合物Gを5%含有)
【0014】
【表1】

【0015】
本発明の実施例、比較例に用いた樹脂について以下に示す。アクリル樹脂エマルション(商品名「AE120A」、株式会社イーテック製)シリコン樹脂エマルション(商品名「Mコート56」、信越化学工業株式会社製)ポリウレタン樹脂エマルション(商品名「ユーコートUWS−145」、三洋化成工業株式会社製)
【0016】
上記の殺虫組成物と樹脂を用いて表2と表3に示す実施例1〜8、比較例1〜8の製剤を行った。
【0017】
【表2】

【0018】
【表3】

【0019】
(試験例 防蟻効力試験)実施例及び比較例で製造した組成物に関して防蟻効力試験を行った。10×10×6cmのコンクリートブロック表面に実施例1〜8と比較例1〜8の製剤したものを各々1kg/mの割合で塗布した。1週間養生させた後、ブロックの上に直径3cm、高さ1cmのガラスリングを置き、その中にイエシロアリの職蟻20頭を放飼した。1日後にイエシロアリを観察して致死率を求めた。その結果を表4に示す。
【0020】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の防蟻構造を用いることにより、住宅木材部分へのシロアリによる被害を防止することができ、かつ作業性も良好である。
【符号の説明】
【0022】
1 防蟻構造
2 外周立ち上がり部(コンクリート体)
3 基礎スラブ(コンクリート体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物基礎の外周立ち上がり部の屋外側面に、20℃における水への溶解度が100mg/L以上である殺虫組成物を含有するもので被覆することを特徴とする防蟻構造。
【請求項2】
20℃における水への溶解度が100mg/L以上である殺虫組成物と、アルキド樹脂、アクリル樹脂、アミノ樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂及びビニル樹脂からなる群より選ばれた少なくとも1種類以上の樹脂を含有することを特徴とする請求項1の防蟻構造。



【図1】
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【公開番号】特開2013−5771(P2013−5771A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141638(P2011−141638)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000250018)住化エンビロサイエンス株式会社 (69)
【Fターム(参考)】