説明

建物内の地図提示システム

【課題】表示対象となる階を切り替えても、切替前後における空間的な位置関係を容易に把握させる。
【解決手段】階床地図データ格納部10には、各階の階床地図データが格納されている。表示対象切出部20は、切出条件格納部60内に格納されている切出条件に基づいて、f階の階床地図データD(f)から、基準点P(x,y)の位置周辺の地図を倍率mで表示するための表示対象データを切り出し、これを表示対象データ格納部30に格納する。表示処理部70は、この表示対象データに基づいて、ディスプレイ80上に地図を表示する。切出条件変更部50は、指示入力部40から与えられるユーザの指示に基づき、切出条件を変更する。階数変更指示が与えられた場合、階数fのみを変更し、基準点P(x,y)および倍率mを維持することにより、真上もしくは真下の位置の周辺地図が同じ倍率で表示されるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内の地図提示システムに関し、特に、複数の階を有する建物について、ユーザの要求に応じた特定の階の特定の部分の地図をユーザが利用する電子機器のディスプレイ画面上に提示するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、パソコンや携帯電子端末などに対して、インターネットを介して地図を提示するサービスが普及しており、ユーザは、世界中の所望の地点の周辺地図を所望の倍率で閲覧することができる。
【0003】
一方、大型ビルディング、百貨店、ショッピングセンターなどにおいて、建物内部の階床ごとの地図を顧客に提示するサービスも提案されている。たとえば、下記の特許文献1には、複数の建屋の階床図面をグループ分けして管理することにより、隣接する建屋を含んだ地図について、縮小表示やスクロールを自由に行うことができる建物内の地図管理システムが開示されている。また、特許文献2には、エスカレータなどを利用して階を移動した場合にも、階床地図の切り替えが適切に行われるようにする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−259964号公報
【特許文献2】特開2010−181447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数の階を有する建物では、階を移動した際に、移動前の階と移動後の階との間の空間的な位置関係を把握することが困難である。特に、百貨店やショッピングセンターなどでは、どの階も似たような売り場が並んでおり、東西南北も判別しにくいため、階を移動した場合に、移動前の階との位置関係が混乱することが少なくない。
【0006】
建物内の地図を提示する場合にも同様のことが言える。従来の一般的な建物内の地図提示システムでは、ユーザが、表示中の地図を別な階の地図に切り替えた場合、切り替え前の階床地図と切り替え後の階床地図との空間的な位置関係を把握することが困難であり、混乱を招きやすい。特に、百貨店やショッピングセンターといった実際の建物の中で、ユーザが携帯型の電子端末装置を用いてリアルタイムで地図表示を行うような場合、別な階の階床地図に切り替えたときの位置関係が十分に把握できないと、実際に階を移動した際に迷いを生じることになる。
【0007】
そこで本発明は、表示対象となる階を切り替えた場合にも、切替前後における空間的な位置関係を容易に把握できる建物内の地図提示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 本発明の第1の態様は、複数の階を有する建物について各階の地図を提示する建物内の地図提示システムにおいて、
ユーザに地図を提示する表示画面をもったディスプレイと、
原点Oをもった二次元XY座標系上に定義された画像データとして、第f階(fは階数を示すパラメータ)の階床地図を示す階床地図データを各階について格納する階床地図データ格納部と、
原点Gをもった二次元αβ座標系上に定義された画像データとして、表示対象となる地図を示す表示対象データを格納する表示対象データ格納部と、
表示対象データに基づいて、ディスプレイの画面上に地図の表示を行う表示処理部と、
表示対象となる階数fと、表示基準点Pを示す座標値P(x,y)と、表示倍率mと、を切出条件として格納する切出条件格納部と、
切出条件に基づいて、階床地図データ格納部に格納されている第f階の階床地図データから、座標値P(x,y)を基準とする位置の地図をディスプレイに表示倍率mで表示するための表示対象データを切り出し、これを二次元αβ座標系上の画像データに変換して表示対象データ格納部に格納する表示対象切出部と、
切出条件格納部に格納されている切出条件を変更するためのユーザの指示を入力する指示入力部と、
指示入力部が入力したユーザの指示に基づいて、切出条件格納部に格納されている切出条件を変更する切出条件変更部と、
を設け、
指示入力部が階数fを変更する階数変更指示を入力した場合に、切出条件変更部が、当該階数変更指示の入力時点の切出条件を遷移前条件として、この遷移前条件に対して、階数fに関しては、階数変更指示に応じた階数に変更し、表示基準点Pを示す座標値P(x,y)に関しては、表示基準点Pが建物内の同一鉛直線上に維持されるように必要があれば変更し、表示倍率mに関しては、変更せずにそのまま維持することにより遷移後条件を生成し、切出条件格納部内の遷移前条件を、直接的に、もしくは、過渡条件を仲介して間接的に、遷移後条件に書き換えることにより、遷移前階床地図から遷移後階床地図へ表示を切り替える階床遷移処理を行うようにしたものである。
【0009】
(2) 本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係る建物内の地図提示システムにおいて、
建物内に基準となる三次元XYZ座標系を定義し、このXYZ座標系の各座標軸を基準X軸,基準Y軸,基準Z軸としたときに、
階床地図データ格納部が、基準Z軸上に定義された原点Oと、基準X軸に平行なX軸と、基準Y軸に平行なY軸と、を有する二次元XY座標系にそれぞれ配列された画素からなる画像データとして、各階の階床地図データを格納しており、
指示入力部が階数fを変更する階数変更指示を入力した場合に、切出条件変更部が、階数変更指示に応じて変更された階数fと、遷移前条件と同一の座標値P(x,y)と、遷移前条件と同一の表示倍率mと、を有する遷移後条件を生成するようにしたものである。
【0010】
(3) 本発明の第3の態様は、上述した第1の態様に係る建物内の地図提示システムにおいて、
建物内に基準となる三次元XYZ座標系を定義し、このXYZ座標系の各座標軸を基準X軸,基準Y軸,基準Z軸としたときに、
階床地図データ格納部が、基準Z軸上に定義された点を、基準X軸方向にオフセット量ΔX、基準Y軸方向にオフセット量ΔYだけ移動させた位置オフセットを生じた位置に定義された原点Oと、この原点Oを通り基準X軸に平行なX軸および基準Y軸に平行なY軸と、を有する二次元XY座標系にそれぞれ配列された画素からなる画像データとして、各階の階床地図データを格納しており、
指示入力部が階数fを変更する階数変更指示を入力した場合に、切出条件変更部が、階数変更指示に応じて変更された階数fと、遷移前条件の座標値P(x,y)に対して各階のオフセット量ΔXおよびΔYに基づいて各階の位置オフセットを解消させる修正を行うことによって得られる座標値と、遷移前条件と同一の表示倍率mと、を有する遷移後条件を生成するようにしたものである。
【0011】
(4) 本発明の第4の態様は、上述した第1の態様に係る建物内の地図提示システムにおいて、
建物内に基準となる三次元XYZ座標系を定義し、このXYZ座標系の各座標軸を基準X軸,基準Y軸,基準Z軸としたときに、
階床地図データ格納部が、基準Z軸上に定義された原点Oと、この原点Oを通り基準X軸および基準Y軸に平行な軸を基準Z軸を回転軸としてそれぞれオフセット角Δθだけ回転させることにより回転オフセットを生じた向きに定義されたX軸およびY軸と、を有する二次元XY座標系にそれぞれ配列された画素からなる画像データとして、各階の階床地図データを格納しており、
指示入力部が階数fを変更する階数変更指示を入力した場合に、切出条件変更部が、階数変更指示に応じて変更された階数fと、遷移前条件の座標値P(x,y)に対して各階のオフセット角Δθに基づいて各階の回転オフセットを解消させる修正を行うことによって得られる座標値と、遷移前条件と同一の表示倍率mと、を有する遷移後条件を生成するようにしたものである。
【0012】
(5) 本発明の第5の態様は、上述した第1の態様に係る建物内の地図提示システムにおいて、
建物内に基準となる三次元XYZ座標系を定義し、このXYZ座標系の各座標軸を基準X軸,基準Y軸,基準Z軸としたときに、
階床地図データ格納部が、基準Z軸上に定義された点を、基準X軸方向にオフセット量ΔX、基準Y軸方向にオフセット量ΔYだけ移動させた位置オフセットを生じた位置に定義された原点Oと、この原点Oを通り基準X軸および基準Y軸に平行な軸を原点Oを通り基準Z軸と平行な軸を回転軸としてそれぞれオフセット角Δθだけ回転させることにより回転オフセットを生じた向きに定義されたX軸およびY軸と、を有する二次元XY座標系にそれぞれ配列された画素からなる画像データとして、各階の階床地図データを格納しており、
指示入力部が階数fを変更する階数変更指示を入力した場合に、切出条件変更部が、階数変更指示に応じて変更された階数fと、遷移前条件の座標値P(x,y)に対して各階のオフセット量ΔXおよびΔYに基づいて各階の位置オフセットを解消させ、各階のオフセット角Δθに基づいて各階の回転オフセットを解消させる修正を行うことによって得られる座標値と、遷移前条件と同一の表示倍率mと、を有する遷移後条件を生成するようにしたものである。
【0013】
(6) 本発明の第6の態様は、上述した第1〜第5の態様に係る建物内の地図提示システムにおいて、
切出条件変更部が、階床遷移処理を行う際に、遷移前の階床全体の地図をディスプレイの表示画面に表示するのに適した切出条件からなる第1過渡条件と、遷移後の階床全体の地図をディスプレイの表示画面に表示するのに適した切出条件からなる第2過渡条件と、を生成し、遷移前条件を第1過渡条件に書き換える処理を行った後、更に、第1過渡条件を第2過渡条件に書き換え、その後に、第2過渡条件を遷移後条件に書き換える処理を行い、
表示対象切出部が、第1過渡条件に基づいて表示対象データを切り出したときに、遷移前条件の表示基準点Pを示す位置指標を付加した表示対象データを表示対象データ格納部に格納し、第2過渡条件に基づいて表示対象データを切り出したときに、遷移後条件の表示基準点Pを示す位置指標を付加した表示対象データを表示対象データ格納部に格納するようにしたものである。
【0014】
(7) 本発明の第7の態様は、上述した第6の態様に係る建物内の地図提示システムにおいて、
切出条件変更部が、遷移前条件を第1過渡条件に書き換える処理を行う際に、遷移前条件から第1過渡条件に徐々に変化する中間段階の条件を仲介した書き換え処理を行い、第2過渡条件を遷移後条件に書き換える処理を行う際に、第2過渡条件から遷移後条件に徐々に変化する中間段階の条件を仲介した書き換え処理を行うようにしたものである。
【0015】
(8) 本発明の第8の態様は、上述した第1〜第7の態様に係る建物内の地図提示システムにおいて、
切出条件格納部が、更に、Y軸とβ軸とのなす角として定義される切出方位角φを、切出条件の一部として格納し、
表示対象切出部が、切出方位角φを考慮して表示対象データの切り出しを行い、
切出条件変更部が、遷移前条件から遷移後条件に書き換える処理を行う際に、切出条件内の切出方位角φを一定に維持するようにしたものである。
【0016】
(9) 本発明の第9の態様は、上述した第1〜第8の態様に係る建物内の地図提示システムを、コンピュータにプログラムを組み込むことにより構成したものである。
【0017】
(10) 本発明の第10の態様は、上述した第1〜第8の態様に係る建物内の地図提示システムにおいて、
指示入力部が、ディスプレイの表示画面上に設けられたタッチパネルと、このタッチパネルに対する押圧操作を検出して、ユーザの指示を入力する入力インターフェイスと、を有し、
表示処理部が、ディスプレイの画面上に、昇階ボタンおよび降階ボタンを地図とともに表示する機能を有し、
入力インターフェイスが、昇階ボタンに対する押圧操作を、階数fを昇階方向に変更する階数変更指示の入力と認識し、降階ボタンに対する押圧操作を、階数fを降階方向に変更する階数変更指示の入力と認識するようにしたものである。
【0018】
(11) 本発明の第11の態様は、上述した第10の態様に係る建物内の地図提示システムにおいて、
入力インターフェイスが、昇階ボタンに対するn回の連続タップ操作を、階数fを昇階方向にn階分だけ変更する階数変更指示の入力と認識し、降階ボタンに対するn回の連続タップ操作を、階数fを降階方向にn階分だけ変更する階数変更指示の入力と認識するようにしたものである。
【0019】
(12) 本発明の第12の態様は、上述した第1〜第8の態様に係る建物内の地図提示システムにおいて、
指示入力部が、ディスプレイの表示画面上に設けられたタッチパネルと、このタッチパネルに対する押圧操作を検出して、ユーザの指示を入力する入力インターフェイスと、を有し、
表示処理部が、ディスプレイの画面上に、各階の数字を示す階数表示ボタンを地図とともに表示する機能を有し、
入力インターフェイスが、階数表示ボタンの特定の数字に対する押圧操作を、階数fを当該数字に対応する階数に変更する階数変更指示の入力と認識するようにしたものである。
【0020】
(13) 本発明の第13の態様は、上述した第1〜第8の態様に係る建物内の地図提示システムにおいて、
少なくともディスプレイと、表示対象データ格納部と、表示処理部と、指示入力部と、を携帯型の電子端末装置によって構成し、
少なくとも階床地図データ格納部を、電子端末装置と無線交信可能なサーバ装置によって構成し、
切出条件変更部と、切出条件格納部と、表示対象切出部とを、それぞれ電子端末装置またはサーバ装置のいずれかによって構成したものである。
【0021】
(14) 本発明の第14の態様は、上述した第1〜第8の態様に係る建物内の地図提示システムにおいて、
階床地図上の所定位置と当該所定位置の場所名とを対応づける場所名対応データを格納する場所名対応データ格納部と、
建物内の任意の地点間のアクセスルートを示すルートデータを格納するルートデータ格納部と、
建物内におけるディスプレイの現在地を階床地図上の現在地座標として認識する現在地認識部と、
ユーザから特定の目的地についての探索指示が与えられたときに、場所名対応データを検索することにより、目的地を階床地図上の目的地座標として認識する目的地認識部と、
ルートデータに基づいて、現在地から目的地までの推奨ルートを探索するルート探索部と、
を更に付加し、
指示入力部に、探索指示を入力する機能をもたせ、
表示処理部に、ディスプレイの画面上に、推奨ルートを地図とともに表示する機能をもたせることにより、建物内のナビゲーションシステムを構成したものである。
【0022】
(15) 本発明の第15の態様は、上述した第1〜第8の態様に係る建物内の地図提示システムにおいて、
階床地図上の所定位置と当該所定位置の場所名とを対応づける場所名対応データを格納する場所名対応データ格納部と、
建物内の任意の地点間のアクセスルートを示すルートデータを格納するルートデータ格納部と、
ユーザの指示に基づいて階床地図上の任意の地点を出発地に設定する出発地設定部と、
ユーザから特定の目的地についての探索指示が与えられたときに、場所名対応データを検索することにより、目的地を階床地図上の目的地座標として認識する目的地認識部と、
ルートデータに基づいて、出発地から目的地までの推奨ルートを探索するルート探索部と、
を更に付加し、
指示入力部に、探索指示を入力する機能をもたせ、
表示処理部に、ディスプレイの画面上に、推奨ルートを地図とともに表示する機能をもたせることにより、建物内のナビゲーションシステムを構成したものである。
【0023】
(16) 本発明の第16の態様は、上述した第14または第15の態様に係る建物内のナビゲーションシステムにおいて、
探索された推奨ルートが階床遷移を伴う場合に、表示処理部が、ディスプレイの画面上に階床遷移を示す情報を付加表示する機能を有するようにしたものである。
【0024】
(17) 本発明の第17の態様は、上述した第14〜第16の態様に係る建物内のナビゲーションシステムにおいて、
探索された推奨ルートがエレベータを利用した階床遷移を伴い、指示入力部が、ユーザからの自動階数変更指示を入力した場合に、切出条件変更部が、エレベータを利用した遷移先もしくは遷移元の階床に切り替える階床遷移処理を自動的に行うようにしたものである。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る地図提示システムによれば、ディスプレイ画面上に表示される地図は、階数f,表示基準点P,表示倍率mという切出条件の下で階床地図データから切り出される。そして、表示対象となる階を切り替える際には、表示基準点Pが建物内の同一鉛直線上に維持されるようにし、表示倍率mがそのまま維持されるような階床遷移処理が実行される。このため、階を切り替えても、建物内の同一鉛直線上の位置(すなわち、真上もしくは真下の位置)の周辺地図が、切替前と同一の倍率で表示されることになり、ユーザは、切替前後における空間的な位置関係を容易に把握できるようになる。
【0026】
また、遷移前条件から遷移後条件に書き換える際に、遷移前の階床全体の地図を表示するための第1過渡条件と、遷移後の階床全体の地図を表示するための第2過渡条件と、を仲介させる実施形態では、表示対象となる階を切り替える際に、切替前の階の全体表示および表示基準点位置の指標表示と、切替後の階の全体表示および表示基準点位置の指標表示とがなされるため、ユーザは、表示対象となる部分地図が階床全体の地図のどの部分を占めているのかを把握することができ、建物全体に対する空間的な位置関係を容易に把握できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の基本的な実施形態に係る建物内の地図提示システムの構成を示すブロック図である(一部、座標系および地図の平面図が示されている)。
【図2】図1に示すシステムにおいて、階床地図データから表示対象データを切り出す切出処理の一例を示す平面図である。
【図3】図2に示す切出処理によって切り出された表示対象データを示す平面図である。
【図4】図2に示す切出位置を横方向に移動させた状態を示す平面図である。
【図5】図4に示す切出位置を縦方向に移動させた状態を示す平面図である。
【図6】図2に示す切出処理に対して拡大操作を行った状態を示す平面図である。
【図7】図2に示す切出処理に対して縮小操作を行った状態を示す平面図である。
【図8】図1に示すシステムにおいて、階床遷移前の階床地図データから表示対象データを切り出す切出処理の一例を示す平面図である。
【図9】図1に示すシステムにおいて、階床遷移後の階床地図データから表示対象データを切り出す切出処理の一例を示す平面図である。
【図10】図8および図9に示す切出処理によってディスプレイに表示される階床遷移を示す平面図である。
【図11】図1に示すシステムにおいて、オフセットが生じていない場合の各階床地図データが定義された座標系を示す斜視図である。
【図12】図11に示す座標系に位置オフセットをもたせた状態を示す平面図である。
【図13】図11に示す座標系に回転オフセットをもたせた状態を示す平面図である。
【図14】切出条件を遷移前条件から遷移後条件に書き換える際に、階床全体の地図を提示するための過渡条件を仲介させた場合にディスプレイに表示される階床遷移を示す平面図である。
【図15】遷移前の階床全体の地図を提示するための第1過渡条件に基づく切出処理を示す平面図である。
【図16】遷移後の階床全体の地図を提示するための第2過渡条件に基づく切出処理を示す平面図である。
【図17】切出方位角φを考慮した切出処理の一例を示す平面図である。
【図18】タッチパネルを用いた階数変更指示の入力形態の変形例を示す平面図である。
【図19】本発明に係る地図提供システムを利用して構成したナビゲーションシステムを示すブロック図である。
【図20】図19に示す場所名対応データ格納部150に格納されるデータの一例を示す図である。
【図21】図19に示すディスプレイ80に表示された目的地の探索指示入力画面の一例を示す平面図である。
【図22】図19に示すルート探索部によって行われたルート探索処理の結果を示す平面図である。
【図23】図22に示すルート探索処理の結果を利用して表示される地図画面を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0029】
<<< §1. 本発明の基本的な実施形態 >>>
図1は、本発明の基本的な実施形態に係る建物内の地図提示システムの構成を示すブロック図である(一部、座標系および地図の平面図が示されている)。図示のとおり、このシステムは、階床地図データ格納部10、表示対象切出部20、表示対象データ格納部30、指示入力部40、切出条件変更部50、切出条件格納部60、表示処理部70、ディスプレイ80によって構成されており、複数の階を有する建物について各階の地図を提示する機能を有する。
【0030】
ディスプレイ80は、ユーザに地図を提示する表示画面をもった装置であり、たとえば、液晶パネルとその制御回路によって構成することができる。図1では、説明の便宜上、ディスプレイ80のブロック内に、実際の表示画面の一例を示してある。この例の場合、表示画面は、地図表示画面81と指示入力画面82によって構成されており、地図表示画面81に、百貨店の売場の一部の地図が表示された例が示されている。一方、指示入力画面82には、昇階ボタン83および降階ボタン84が表示されている。
【0031】
地図表示画面81に表示される地図は、階床地図データ格納部10に画像データとして用意されている。階床地図データ格納部10は、各階の階床地図を示す階床地図データを格納するする構成要素である。本願では、この階床地図データを、原点Oをもった二次元XY座標系上に定義された画像データとして取り扱うことにする。具体的には、建物の1階の階床地図データD(1)、2階の階床地図データD(2)、...、第f階の階床地図データD(f)が、それぞれXY座標系上に配列された画素の集合からなる画像データとして用意されることになり、階床地図上の1点Pは、座標値P(x,y)で表すことができる。
【0032】
ここで、階床地図データD(f)は、この建物の第f階の階床全体の地図を示すデータであり、ユーザは、その全体を地図表示画面81に表示させることもできるし、必要な一部分のみを地図表示画面81に表示させることもできる。なお、本願において、fは階数を示すパラメータであり、たとえば、f=1,2,... などの数値をとる。もちろん、パラメータfは必ずしも整数値にする必要はなく、地下を表現するために−1,−2などの負の数をとるようにしてもよいし、1.5などの小数値により半階を表現するようにしてもかまわない。また、B1,B2,Rなどのアルファベットを用いて地下や屋上を表現するようにしてもかまわない。
【0033】
一方、表示対象データ格納部30は、表示対象となる地図を示す表示対象データを格納する構成要素である。本願では、この表示対象データを、原点Gをもった二次元αβ座標系上に配列された画素からなる画像データとして取り扱うことにする。表示対象地図上の1点Pは、座標値P(α,β)で表すことができる。表示処理部70は、この表示対象データ格納部30に格納されている表示対象データに基づいて、ディスプレイ80の地図表示画面81上に地図の表示を行う。別言すれば、地図表示画面81上に表示されている地図画像は、表示対象データ格納部30に格納されている表示対象データに対応するものであり、この表示対象データを書き換えれば、地図表示画面81上の地図画像も書き換えられることになる。
【0034】
表示対象切出部20は、階床地図データ格納部10内の階床地図データを切り出して、表示対象データ格納部30に格納する切出処理を行う構成要素である。別言すれば、表示対象データ格納部30内の表示対象データは、この表示対象切出部20によって作成されることになる。切出条件格納部60には、表示対象となる階数fと、表示基準点Pを示す座標値P(x,y)と、表示倍率mと、が切出条件として格納されており、表示対象切出部20は、この切出条件に基づいて、階床地図データ格納部10に格納されている第f階の階床地図データから、座標値P(x,y)を基準とする位置の地図をディスプレイ80に表示倍率mで表示するための表示対象データを切り出し、これを二次元αβ座標系上の画像データに変換して表示対象データ格納部30に格納する処理を行う。
【0035】
ここで、切出条件を構成する階数fは、階床地図データ格納部10に格納されている複数の階床地図データのいずれを選択すべきかを示すパラメータになり、表示基準点Pを示す座標値P(x,y)は、選択された階床地図データのどの部分から地図の切り出しを行うかを示すパラメータになり、表示倍率mはどの程度の広さをもった領域を切り出すかを示すパラメータになる。結局、この切出条件は、どの階の階床地図データの、どの位置から、どの程度広い領域を切り出すかを示す情報ということになり、ディスプレイ80の地図表示画面81に表示される地図画像の内容は、この切出条件によって左右されることになる。なお、この§1に示す基本的実施形態では、常に、α軸とX軸とが平行、β軸とY軸とが平行となるような切り出しを前提としている。
【0036】
指示入力部40は、切出条件格納部60に格納されている切出条件を変更するためのユーザの指示を入力する構成要素であり、ここに示す実施形態の場合、タッチパネル41と入力インターフェイス42とを含んでいる。図1のブロック図では、指示入力部40とディスプレイ80とを別々のブロックで示してあるが、タッチパネル41は、実際には、ディスプレイ80の表示画面上に設けられており、入力インターフェイス42は、このタッチパネル41に対する押圧操作を検出して、ユーザの指示を入力する機能を有する。
【0037】
切出条件変更部50は、この指示入力部40が入力したユーザの指示に基づいて、切出条件格納部60に格納されている切出条件を変更する処理を行う。すなわち、ここに示す実施形態の場合、切出条件変更部50は、タッチパネル41を利用したユーザの指示に基づいて、切出条件格納部60に格納されている階数f、座標値P(x,y)、表示倍率mを、それぞれ別個独立して書き換える機能を有する。ユーザが各切出条件をそれぞれ所望の値に書き換えるための指示を入力する具体的な方法は§2で詳述する。
【0038】
図2は、図1に示すシステムにおいて、表示対象切出部20が、階床地図データ格納部10内の階床地図データD(f)から、表示対象データを切り出す切出処理の一例を示す平面図である。ここでは、百貨店の第f階の個々の売場等を示す階床地図の例が示されている(実際には、個々の売場を示す文字列などが含まれているが、図示の便宜上、省略する。なお、「エレベータ」については「EV」と略記した)。前述したとおり、階床地図データD(f)は、第f階の階床地図を示す画像データであり、その実体は、原点Oをもった二次元XY座標系上に配列された画素の集合体である。したがって、個々の画素の位置は、座標値(x,y)によって示すことができる。
【0039】
切出条件格納部60に格納されている切出条件のうち、階数fは、特定の階床地図データD(f)を選択するためのパラメータであり、図2に示す階床地図データD(f)は、この階数fなるパラメータに基づいて選択された画像データということになる。一方、座標値P(x,y)は、表示基準点Pを示すパラメータであるが、ここでは、複数の表示基準点Pを相互に区別する便宜上、図示の×印の位置(表示基準点Paの位置)を示す座標値Pa(xa,ya)が切出条件格納部60に格納されていたものとしよう。
【0040】
本願における表示基準点Pは、地図上の1点Pを、ディスプレイ80の表示画面の特定位置に表示することを示す指標である。ここに示す実施形態の場合、表示画面の特定位置として、地図表示画面81の中心点をとっている。したがって、ここに示す実施形態では、表示基準点Pは、地図表示画面81の中心に表示すべき点ということになり、図2に示す例の場合、表示基準点Paの位置が、地図表示画面81の中心に表示されることになる。
【0041】
一方、表示倍率mは、第一義的には、ディスプレイ80に表示する地図の倍率を示すパラメータであるが、通常、ディスプレイ80の表示画面の画素数(解像度)は固定した状態で利用されるため、表示倍率mは、表示基準点Pを基準として、切出領域の面積(画素数)を定めるパラメータとして機能する。図2の例では、表示基準点Paを中心として、矩形の切出枠Waが設定された状態が示されており、表示対象切出部20は、この切出枠Wa内の画像を切り出して、これを二次元αβ座標系上の画像データに変換して、表示対象データ格納部30に格納する切出処理を実行することになる。
【0042】
図3は、このような切出処理によって切り出された表示対象データを示す平面図である。図3に示す点Pt(αt,βt)は、αβ座標系において、地図表示枠Tの中心点となる座標であるが、ここに位置する地図上の1点は、図2に示す表示基準点Pa(xa,ya)に位置する地図上の1点に対応する。結局、図3に示す地図表示枠Tの内部の地図画像は、図2に示す切出枠Waの内部の地図画像に対応することになる。図1に示すディスプレイ80に表示されている地図画像は、この図3に示す地図表示枠T内の地図画像に他ならない。別言すれば、図1の例の場合、表示対象切出部20が、図2に示す階床地図データD(f)から切出枠Waの内部画像を切り出し、これを図3に示すようなαβ座標系上の画像データとして表示対象データ格納部30に格納する切出処理を実行し、表示処理部70が、当該表示対象データをディスプレイ80に与えたため、図1に示すような地図画像の表示が行われたことになる。
【0043】
もちろん、図3に示す地図表示枠Tのサイズ(画素数)は、図1に示すディスプレイ80の地図表示画面81のサイズ(画素数)に対応したものになる。また、地図画像の縦横を等倍率で表示するためには、図2に示す切出枠Waの縦横比は、図3に示す地図表示枠Tの縦横比(すなわち、図1に示す地図表示画面81の縦横比)に一致させる必要がある。したがって、図2に示す切出枠Waと図3に示す地図表示枠Tとは相似形の関係になり、そのサイズ比を示すパラメータが表示倍率mということになる。
【0044】
ここで、表示対象切出部20が実行する座標変換処理、すなわち、図2に示すXY平面上に定義された切出枠Wa内の画像を、図3に示すαβ平面上に定義された地図表示枠T内の画像に変換する処理は、実際には、地図表示枠T内の画像を構成する個々の着目画素について、階床地図データD(f)の対応画素を求め、当該対応画素の画素値を当該着目画素に付与する処理として実行することができる。
【0045】
たとえば、図3に示す表示基準点Pt(αt,βt)に位置する画素を着目画素として、その画素値を決定する場合、当該着目画素についての対応画素として、図2に示す表示基準点Pa(xa,ya)に位置する画素を求め、当該対応画素の画素値を着目画素の画素値とすればよい。上述したとおり、αβ座標系上に定義された地図表示枠Tと、XY座標系上に定義された切出枠Waとは相似形の関係にあるので、一方の任意の点に対応する他方の対応点は幾何学的な演算によって求めることができる。よって、地図表示枠T内の画像を構成する個々の着目画素について、それぞれ切出枠Wa内の対応画素を求めることができ、画素値を決定することができる。なお、実際には、地図表示枠T内の画素と切出枠Wa内の画素とは必ずしも1対1に対応するわけではないので、必要に応じて補間処理が必要になる。このような補間処理は公知の技術であるため、ここでは詳しい説明は省略する。
【0046】
なお、ここに示す実施形態の場合、上述したとおり、図2に示す階床地図データD(f)上の表示基準点Pa(xa,ya)の位置が、図3に示す地図表示枠Tの中心点Pt(αt,βt)、すなわち、図1に示す地図表示画面81の中心点となるような切出処理を行うことにしているが、表示基準点Pa(xa,ya)の位置は、必ずしも地図表示枠Tの中心点にする必要はない。たとえば、表示基準点Pa(xa,ya)の位置が、地図表示枠Tの左下隅点(図3に示す原点G)となるような切出処理を行うようにしてもかまわない。この場合、表示基準点Pa(xa,ya)は、切出枠Waの左下隅点ということになる。このように、本発明における表示基準点Pは、地図表示画面81の任意の点に対応づけることができ、必ずしも中心点に対応づける必要はない。ただ、本願実施例では、説明の便宜上、上例のように中心点に対応づけた例を述べることにする。
【0047】
<<< §2. 切出条件の変更方法 >>>
ここでは、§1で述べた基本的な実施形態に係る地図提供システムにおいて、ユーザが各切出条件f,P(x,y),mを変更するための指示を入力する具体的な方法を説明する。ここで述べる実施形態における指示入力部40は、前述したとおり、ディスプレイ80の表示画面81,82上に設けられたタッチパネル41を備えており、入力インターフェイス42によって、このタッチパネル41に対する押圧操作を検出して、ユーザの指示を入力することができる。したがって、ユーザは、このタッチパネル41上に当てた指によって、様々な指示を与えることができる。
【0048】
まず、表示基準点Pの座標値P(x,y)を変更するための指示について説明する。座標値P(x,y)を変更する指示は、タッチパネル41上(具体的には、図1に示す地図表示画面81上)で、指を横方向もしくは縦方向にスライドさせる操作によって行うことができる。入力インターフェイス42は、指を横方向に移動させるスライド操作を検出した場合、座標値xを増減する変更指示を受けたものと判断し、指を縦方向に移動させるスライド操作を検出した場合、座標値yを増減する変更指示を受けたものと判断する。
【0049】
たとえば、図1の地図表示画面81上で、指をタッチパネル41に接触させ、左から右へと横方向にスライドさせる操作を行うと、入力インターフェイス42は、表示基準点Pの座標値xを減少させる変更指示を受けたものと判断する。切出条件変更部50は、当該変更指示に基づいて、切出条件格納部60に格納されている座標値P(x,y)のxの値を減少させる変更処理を行う。
【0050】
図4は、このような変更処理によって、切出位置が横方向に移動した状態を示す平面図である。すなわち、変更処理により、表示基準点Pの座標はPa(xa,ya)からPb(xb,yb)に変更され、切出枠はWaからWbに変更されている(破線は変更前の位置を示す)。上記操作は、横方向スクロール操作に相当し、x座標値はxaからxbに減少するが、y座標値は変わらず、yb=yaである。この操作により、地図表示画面81上には、より左側の地図画像が表示されることになる。
【0051】
逆に、指を右から左へと横方向にスライドさせる操作を行うと、入力インターフェイス42は、表示基準点Pの座標値xを増加させる変更指示を受けたものと判断する。切出条件変更部50は、当該変更指示に基づいて、切出条件格納部60に格納されている座標値P(x,y)のxの値を増加させる変更処理を行う。その結果、切出枠は図4における右方向へ移動し、地図表示画面81上には、より右側の地図画像が表示される。
【0052】
一方、指を下から上へと縦方向にスライドさせる操作を行うと、入力インターフェイス42は、表示基準点Pの座標値yを減少させる変更指示を受けたものと判断する。切出条件変更部50は、当該変更指示に基づいて、切出条件格納部60に格納されている座標値P(x,y)のyの値を減少させる変更処理を行う。
【0053】
図5は、図4に示す状態から、上記変更処理によって、切出位置が縦方向に移動した状態を示す平面図である。すなわち、変更処理により、表示基準点Pの座標はPb(xb,yb)からPc(xc,yc)に変更され、切出枠はWbからWcに変更されている(破線は変更前の位置を示す)。上記操作は、縦方向スクロール操作に相当し、y座標値はybからycに減少するが、x座標値は変わらず、xc=xbである。この操作により、地図表示画面81上には、より下側の地図画像が表示されることになる。
【0054】
逆に、指を上から下へと横方向にスライドさせる操作を行うと、入力インターフェイス42は、表示基準点Pの座標値yを増加させる変更指示を受けたものと判断する。切出条件変更部50は、当該変更指示に基づいて、切出条件格納部60に格納されている座標値P(x,y)のyの値を増加させる変更処理を行う。その結果、切出枠は図5における上方向へ移動し、地図表示画面81上には、より上側の地図画像が表示される。
【0055】
このように、ユーザは、横方向スクロール操作と縦方向スクロール操作とを適宜組み合わせることにより、表示基準点Pの座標値P(x,y)を任意に変更することができ、所望の地図画像を表示させることができる。もちろん、ユーザが指を斜め方向にスライドさせる操作を行った場合に、当該操作を横方向の操作成分と縦方向の操作成分とに分解して入力する機能を入力インターフェイス42にもたせておけば、x座標値とy座標値とを同時に変更することも可能であり、地図表示画面81上で地図画像を斜め方向にスクロールする操作を行うことができる。
【0056】
続いて、表示倍率mを変更するための指示について説明する。表示倍率mは、前述したとおり、図2に示す切出枠Waと図3に示す地図表示枠Tとのサイズ比を示すパラメータである。表示倍率mの単位は任意に設定できるが、ここでは、一次元の画素数を単位として表示倍率mを定義している。すなわち、地図表示枠Tの横方向(もしくは縦方向)の画素数の切出枠Waの横方向(もしくは縦方向)の画素数に対する比を表示倍率mと定義している。したがって、表示倍率mを大きくすればするほど、切出枠Waは小さくなり、表示倍率mを小さくすればするほど、切出枠Waは大きくなる。
【0057】
ここに示す実施形態の場合、表示倍率mを変更する指示は、タッチパネル41上(具体的には、図1に示す地図表示画面81上)で、2本の指をスライドさせる操作によって行うことができる。入力インターフェイス42は、2本指の間隔を広げるようなスライド操作(いわゆる、ピンチアウト操作)を検出した場合、表示倍率mを増加させる変更指示(地図を拡大表示する指示)を受けたものと判断し、逆に、2本指の間隔を狭めるようなスライド操作(いわゆる、ピンチイン操作)を検出した場合、表示倍率mを減少させる変更指示(地図を縮小表示する指示)を受けたものと判断する。切出条件変更部50は、当該変更指示に基づいて、切出条件格納部60に格納されている表示倍率mを増減させる変更処理を行う。
【0058】
図6は、図2に示す状態から、ピンチアウト操作を受け、表示倍率mを増加させる変更処理が行われた状態を示す平面図である。この変更処理により、切出枠はWaからWdに変更されており(破線は変更前の位置を示す)、地図表示画面81上には、切出枠Wd内の画像が拡大表示される。これに対して、図7は、図2に示す状態から、ピンチイン操作を受け、表示倍率mを減少させる変更処理が行われた状態を示す平面図である。この変更処理により、切出枠はWaからWeに変更されており(破線は変更前の位置を示す)、地図表示画面81上には、切出枠We内の画像が縮小表示される。上記操作によって、表示倍率mが増減しても、表示基準点Paの位置には変わりがないので、切出位置はそのまま維持されることになる。
【0059】
最後に、階数fを変更するための指示について説明する。ここに示す実施形態の場合、階数fを変更する指示は、タッチパネル41上で、指をタップする操作によって行うことができる。図1に示すように、ディスプレイ80の表示画面は、地図表示画面81と指示入力画面82とを含んでおり、表示処理部70は、地図表示画面81上に地図を表示するとともに、指示入力画面82上に昇階ボタン83および降階ボタン84を表示する機能を有している。また、タッチパネル41は、地図表示画面81および指示入力画面82の両方をカバーするように設けられており、入力インターフェイス42は、昇階ボタン83に対する押圧操作を、階数fを昇階方向に変更する階数変更指示の入力と認識し、降階ボタン84に対する押圧操作を、階数fを降階方向に変更する階数変更指示の入力と認識することができる。
【0060】
したがって、ユーザが、昇階ボタン83をタップする操作を行うと、入力インターフェイス42によって昇階を示す階数変更指示があったものと認識され、切出条件変更部50が、切出条件格納部60に格納されている階数fを1階分だけ昇階させる変更を行う。また、ユーザが、降階ボタン84をタップする操作を行うと、入力インターフェイス42によって降階を示す階数変更指示があったものと認識され、切出条件変更部50が、切出条件格納部60に格納されている階数fを1階分だけ降階させる変更を行う。
【0061】
また、ここに示す実施形態の場合、入力インターフェイス42は、所定の時間間隔内で行われた複数回のタップ操作(いわゆるマルチタップ操作)を認識する機能を有しており、昇階ボタン83に対するn回の連続タップ操作を、階数fを昇階方向にn階分だけ変更する階数変更指示の入力と認識し、降階ボタン84に対するn回の連続タップ操作を、階数fを降階方向にn階分だけ変更する階数変更指示の入力と認識する。切出条件変更部50は、複数n階分の階数変更指示の入力があった場合には、切出条件格納部60に格納されている階数fをn階分だけ昇階もしくは降階させる変更を行う。
【0062】
したがって、たとえば、現在、切出条件として、階数f=5が設定されており、階床地図データD(5)に基づいて5階の地図が表示されている状態において、ユーザが昇階ボタン83を連続して3回タップする操作を行えば、切出条件変更部50によって切出条件格納部60内の階数がf=8に書き換えられ、降階ボタン84を連続して4回タップする操作を行えば、切出条件変更部50によって切出条件格納部60内の階数がf=1に書き換えられる。
【0063】
ここでは、このように階数fを変更する階数変更指示の入力により、切出条件格納部60内の階数fが書き換えられ、その結果、ディスプレイ80に表示される地図が切り替わる動作を「階床遷移」と呼び、変更前の切出条件(階数変更指示の入力時点の切出条件)を「遷移前条件」、変更後の切出条件を「遷移後条件」と呼ぶことにする。また、ディスプレイ80に表示される切替前の地図を「遷移前階床地図」と呼び、切替後の地図を「遷移後階床地図」と呼ぶことにする。
【0064】
本発明に係る地図提供システムにおける階床遷移の基本的な考え方は、指示入力部40が階数fを変更する階数変更指示を入力した場合に、切出条件変更部50が、当該階数変更指示の入力時点の切出条件である遷移前条件に対して、階数fに関しては、当該階数変更指示に応じた階数に変更し、表示基準点Pを示す座標値P(x,y)に関しては、表示基準点Pが建物内の同一鉛直線上に維持されるように必要があれば変更し、表示倍率mに関しては、変更せずにそのまま維持することにより遷移後条件を生成し、切出条件格納部60内の遷移前条件を、遷移後条件に書き換えることにより、遷移前階床地図から遷移後階床地図へ表示を切り替える階床遷移処理を行うことにある。
【0065】
ここで重要な概念は、表示基準点Pを建物内の同一鉛直線上に維持する点と、表示倍率mをそのまま維持する点である。ユーザが、昇階ボタン83や降階ボタン84をタップして階数fを変更する階数変更指示を入力すると、ディスプレイ80上の遷移前階床地図は、階が異なる遷移後階床地図に切り替えられることになるが、このとき、表示基準点Pが建物内の同一鉛直線上に維持され、表示倍率mがそのまま維持されるため、ディスプレイ80に表示されている地図において、建物内の同一鉛直線上の位置(すなわち、真上もしくは真下の位置)の周辺地図が、切替前と同一の倍率で表示されることになる。このため、ユーザは、階が切り替わった場合でも、切替前後における空間的な位置関係を容易に把握できるようになる。
【0066】
以下、第i階から第j階への階床遷移を具体例で示そう。図8は、図1に示すシステムにおいて、階床遷移前の階床地図データD(i)から表示対象データを切り出す切出処理の一例を示す平面図であり、図9は、階床遷移後の階床地図データD(j)から表示対象データを切り出す切出処理の一例を示す平面図である。図8の右欄に示すとおり、遷移前条件は、fi,Pi(xi,yi),miであり、図9の右欄に示すとおり、遷移後条件は、fj,Pj(xj,yj),mjである。ここで、fiは第i階を示す階数パラメータ、fjは第j階を示す階数パラメータであり、階床遷移前は第i階の階床地図データD(i)からの切り出しが行われ、階床遷移後は第j階の階床地図データD(j)からの切り出しが行われる。
【0067】
上記基本的な考え方によれば、階床遷移の前後において、表示倍率mはそのまま維持することになるので、表示倍率mi=mjになる。したがって、図8に示す切出枠Wiと図9に示す切出枠Wjは同じ大きさの矩形になり、切出領域の範囲は変化しない。
【0068】
一方、Pi(xi,yi)とPj(xj,yj)との関係については、階床地図データD(i)のXY座標系と階床地図データD(j)のXY座標系との間にオフセットが生じていなければ、xi=xj、yi=yjになる。図8および図9に示す例は、オフセットが生じていない場合の例であり、表示基準点Pi(xi,yi)とPj(xj,yj)とが、XY座標系上での同一座標値をもつ点であれば、両点Pi,Pjは、建物内の同一鉛直線上にある点になる。別言すれば、図8における表示基準点Pi(xi,yi)で示される階床地図上の位置と、図9における表示基準点Pj(xj,yj)で示される階床地図上の位置とは、一方が他方の真上にある関係になる。
【0069】
図10(a) ,(b) は、それぞれ図8および図9に示す切出処理によってディスプレイ80の地図表示画面81に表示される階床遷移を示す平面図である。図10(a) は、図8の切出枠Wiの内部に対応する遷移前階床地図(第i階の地図)を示しており、図10(b) は、図9の切出枠Wjの内部に対応する遷移後階床地図(第j階の地図)を示している。階が第i階から第j階に切り替わっているものの、建物内の同一鉛直線上の同じ位置(真上もしくは真下の位置)が同じ向き、同じサイズで表示されているため、ユーザは、切替前後における空間的な位置関係を容易に把握できる。
【0070】
階床遷移の際に、表示基準点Pが建物内の同一鉛直線上に維持されるようにするために、切出条件変更部50が行うべき具体的な処理は、各階の階床地図データの定義方法によって異なる。以下、この点を、いくつかの具体的なバリエーションを挙げながら説明する。いずれの場合も、説明の便宜上、建物内に基準となる三次元XYZ座標系を定義することにする。また、この三次元XYZ座標系の各座標軸を基準X軸,基準Y軸,基準Z軸と呼び、各階床地図データを定義するための二次元XY座標系のX軸,Y軸と区別することにする。
【0071】
(1) オフセットが生じていない場合
上述した図8および図9に示す例がオフセットが生じていない場合の例である。図11は、このようなオフセットが生じていない場合の各階床地図データが定義された座標系を示す斜視図である。図示のとおり、第i階の階床地図データD(i)が定義された階床遷移前の座標系Siは、原点Oi,Xi軸,Yi軸をもった二次元XY座標系であり、第j階の階床地図データD(j)が定義された階床遷移後の座標系Sjは、原点Oj,Xj軸,Yj軸をもった二次元XY座標系である。ここで、原点Oi,Ojは、いずれも基準Z軸に定義された点であり、Xi軸,Xj軸は、いずれも基準X軸に平行な軸であり、Yi軸,Yj軸は、いずれも基準Y軸に平行な軸である。
【0072】
このように、座標系にオフセットが生じていない場合、すなわち、階床地図データ格納部10が、基準Z軸上に定義された原点O(図11の例の場合、原点Oi,Oj)と、基準X軸に平行なX軸(図11の例の場合、Xi軸,Xj軸)と、基準Y軸に平行なY軸(図11の例の場合、Yi軸,Yj軸)と、を有する二次元XY座標系にそれぞれ配列された画素からなる画像データとして、各階の階床地図データを格納しているケースでは、階床遷移の際に、表示基準点Pを示す座標値P(x,y)を書き換える必要はない。
【0073】
したがって、このようなケースでは、指示入力部40が階数fを変更する階数変更指示を入力した場合、切出条件変更部50は、階数変更指示に応じて変更された階数fと、遷移前条件と同一の座標値P(x,y)と、遷移前条件と同一の表示倍率mと、を有する遷移後条件を生成すれば足り、実際には、階数fだけを変更する処理を行えばよい。
【0074】
すなわち、遷移前条件を、図8の右欄に示すとおり、fi,Pi(xi,yi),miとし、遷移後条件を、図9の右欄に示すとおり、fj,Pj(xj,yj),mjとした場合、xi=xj、yi=yj、mi=mjになるので、切出条件変更部50は、階数fiをfjに書き換える処理を行うだけでよい。たとえば、X座標値を経度情報、Y座標値を緯度情報とした緯度経度を示す二次元座標系上に定義された階床地図データを採用した場合、このようなオフセットが生じていないケースとして取り扱うことになる。
【0075】
(2) 位置オフセットを生じている場合
一方、階床ごとに位置オフセットが生じているケースでは、表示基準点Pを示す座標値P(x,y)に対して、位置オフセットを解消するための修正が必要になる。図12は、図11に示す座標系に位置オフセットをもたせた状態を示す平面図(図11に示す座標系を上方から見た図)である。
【0076】
図示のとおり、第i階の階床地図データD(i)が定義された階床遷移前の座標系は、原点Oi,Xi軸,Yi軸をもった二次元XY座標系であり、第j階の階床地図データD(j)が定義された階床遷移後の座標系は、原点Oj,Xj軸,Yj軸をもった二次元XY座標系である。ここで、Xi軸,Xj軸は、いずれも基準X軸に平行な軸であり、Yi軸,Yj軸は、いずれも基準Y軸に平行な軸であるが、原点Oi,Ojは、基準Z軸(図の原点Oの位置に立てた紙面に対して垂直な軸)から若干外れている。すなわち、原点Oiは、基準Z軸上に定義された点(図11の点Oiの位置にある点)を、基準X軸方向にオフセット量ΔXi、基準Y軸方向にオフセット量ΔYiだけ移動させた位置に定義されており、原点Ojは、基準Z軸上に定義された点(図11の点Ojの位置にある点)を、基準X軸方向にオフセット量ΔXj、基準Y軸方向にオフセット量ΔYjだけ移動させた位置に定義されている。
【0077】
このように、座標系に位置オフセットが生じている場合、すなわち、階床地図データ格納部10が、基準Z軸上に定義された点を、基準X軸方向にオフセット量ΔX、基準Y軸方向にオフセット量ΔYだけ移動させた位置オフセットを生じた位置に定義された原点Oと、この原点Oを通り基準X軸に平行なX軸および基準Y軸に平行なY軸と、を有する二次元XY座標系にそれぞれ配列された画素からなる画像データとして、各階の階床地図データを格納しているケースでは、階床遷移の際に、表示基準点Pが建物内の同一鉛直線上に維持されるようにするために、表示基準点Pを示す座標値P(x,y)に対して、位置オフセットを解消するための修正が必要になる。
【0078】
したがって、このようなケースでは、指示入力部40が階数fを変更する階数変更指示を入力した場合、切出条件変更部50は、階数変更指示に応じて変更された階数fと、遷移前条件の座標値P(x,y)に対して各階のオフセット量ΔXおよびΔYに基づいて各階の位置オフセットを解消させる修正を行うことによって得られる座標値と、遷移前条件と同一の表示倍率mと、を有する遷移後条件を生成することになる。
【0079】
たとえば、図12に示す例の場合、第i階の階床地図データD(i)上の座標値と第j階の階床地図データD(j)上の座標値とでは、基準X軸方向に(ΔXi+ΔXj)だけ位置オフセットを生じており、基準Y軸方向に(ΔYi+ΔYj)だけ位置オフセットを生じている。したがって、遷移前条件を、fi,Pi(xi,yi),miとし、遷移後条件を、fj,Pj(xj,yj),mjとした場合、切出条件変更部50は、階数fiをfjに書き換える処理を行うとともに、xj=xi−(ΔXi+ΔXj)、yj=yi−(ΔYi+ΔYj)とする書き換え処理を行う必要がある。なお、表示倍率は、mj=miであり、変わりはない。
【0080】
(3) 回転オフセットを生じている場合
また、階床ごとに回転オフセットが生じているケースでは、表示基準点Pを示す座標値P(x,y)に対して、回転オフセットを解消するための修正が必要になる。図13は、図11に示す座標系に回転オフセットをもたせた状態を示す平面図(図11に示す座標系を上方から見た図)である。
【0081】
図示のとおり、第i階の階床地図データD(i)が定義された階床遷移前の座標系は、原点Oi,Xi軸,Yi軸をもった二次元XY座標系であり、第j階の階床地図データD(j)が定義された階床遷移後の座標系は、原点Oj,Xj軸,Yj軸をもった二次元XY座標系である。ここで、原点O,Oi,Ojはいずれも基準Z軸上に定義された点であり、図11に示す点O,Oi,Ojと全く同じ点である。しかしながら、Xi軸およびYi軸は、原点Oiを通り基準X軸および基準Y軸に平行な軸(図11のXi軸およびYi軸)を基準Z軸を回転軸としてそれぞれオフセット角Δθiだけ回転させることにより得られる軸であり、Xj軸およびYj軸は、原点Ojを通り基準X軸および基準Y軸に平行な軸(図11のXj軸およびYj軸)を基準Z軸を回転軸としてそれぞれオフセット角Δθjだけ回転させることにより得られる軸である。
【0082】
このように、座標系に回転オフセットが生じている場合、すなわち、階床地図データ格納部10が、基準Z軸上に定義された原点Oと、この原点Oを通り基準X軸および基準Y軸に平行な軸を基準Z軸を回転軸としてそれぞれオフセット角Δθだけ回転させることにより回転オフセットを生じた向きに定義されたX軸およびY軸と、を有する二次元XY座標系にそれぞれ配列された画素からなる画像データとして、各階の階床地図データを格納しているケースでは、階床遷移の際に、表示基準点Pが建物内の同一鉛直線上に維持されるようにするために、表示基準点Pを示す座標値P(x,y)に対して、回転オフセットを解消するための修正が必要になる。
【0083】
したがって、このようなケースでは、指示入力部40が階数fを変更する階数変更指示を入力した場合、切出条件変更部50は、階数変更指示に応じて変更された階数fと、遷移前条件の座標値P(x,y)に対して各階のオフセット角Δθに基づいて各階の回転オフセットを解消させる修正を行うことによって得られる座標値と、遷移前条件と同一の表示倍率mと、を有する遷移後条件を生成することになる。
【0084】
たとえば、図13に示す例の場合、第i階の階床地図データD(i)上の座標値と第j階の階床地図データD(j)上の座標値とでは、(Δθj−Δθi)だけ回転オフセットを生じている。したがって、遷移前条件を、fi,Pi(xi,yi),miとし、遷移後条件を、fj,Pj(xj,yj),mjとした場合、切出条件変更部50は、階数fiをfjに書き換える処理を行うとともに、xiをxjに、yiをyjに、それぞれ回転オフセットを解消するための補正を行う必要がある。なお、表示倍率は、mj=miであり、変わりはない。
【0085】
(4) 位置・回転の両オフセットを生じている場合
更に、階床ごとに、上述した位置オフセットと回転オフセットとの双方が生じているケースでは、表示基準点Pを示す座標値P(x,y)に対して、位置オフセットと回転オフセットとの双方を解消するための修正が必要になる。
【0086】
すなわち、階床地図データ格納部10が、基準Z軸上に定義された点を、基準X軸方向にオフセット量ΔX、基準Y軸方向にオフセット量ΔYだけ移動させた位置オフセットを生じた位置に定義された原点Oと、この原点Oを通り基準X軸および基準Y軸に平行な軸を原点Oを通り基準Z軸と平行な軸を回転軸としてそれぞれオフセット角Δθだけ回転させることにより回転オフセットを生じた向きに定義されたX軸およびY軸と、を有する二次元XY座標系にそれぞれ配列された画素からなる画像データとして、各階の階床地図データを格納しているケースでは、階床遷移の際に、表示基準点Pが建物内の同一鉛直線上に維持されるようにするために、表示基準点Pを示す座標値P(x,y)に対して、位置オフセットおよび回転オフセットの双方を解消するための修正が必要になる。
【0087】
したがって、このようなケースでは、指示入力部40が階数fを変更する階数変更指示を入力した場合、切出条件変更部50は、階数変更指示に応じて変更された階数fと、遷移前条件の座標値P(x,y)に対して各階のオフセット量ΔXおよびΔYに基づいて各階の位置オフセットを解消させ、各階のオフセット角Δθに基づいて各階の回転オフセットを解消させる修正を行うことによって得られる座標値と、遷移前条件と同一の表示倍率mと、を有する遷移後条件を生成することになる。
【0088】
<<< §3. 階床全体の地図を提示する実施形態 >>>
続いて、ここでは、本発明を実施する上で、より好ましい実施形態を説明する。ここで述べる実施形態に係る地図提示システムの構成は、図1に示す基本的実施形態に係るシステムの構成とほぼ同じである。ただ、切出条件変更部50には、階床遷移時に、階床全体の地図を提示する付加的な機能が備わっている。以下、この付加的な機能について説明しよう。
【0089】
これまで述べた基本的実施形態では、指示示入力部40が、階数fiをfjに変更する階数変更指示を入力した場合、切出条件変更部50が、図8の右欄に示す遷移前条件を図9の右欄に示す遷移後条件に直接的に書き換える処理を行っていた。このため、ディスプレイ80上では、図10(a) に示す遷移前階床地図から図10(b) に示す遷移後階床地図へと表示が切り替えられることになる。
【0090】
これに対して、ここで述べる実施形態では、図8の右欄に示す遷移前条件を、過渡条件を仲介して間接的に、図9の右欄に示す遷移後条件に書き換える処理を行う。別言すれば、図8の右欄に示す遷移前条件を、一旦、別に用意した過渡条件に書き換えた後、更に、この過渡条件を図9の右欄に示す遷移後条件に書き換える。当然ながら、ディスプレイ80上では、図10(a) に示す遷移前階床地図から、一旦、上記過渡条件に応じた過渡的地図への表示切替が行われ、その後、図10(b) に示す遷移後階床地図へと表示が切り替えられることになる。そして、この過渡的地図として、階床全体の地図を表示するようにし、かつ、当該階床全体の地図上に表示基準点Pを示す位置指標を併せて表示するのである。
【0091】
図14は、切出条件を遷移前条件から遷移後条件に書き換える際に、階床全体の地図を提示するための過渡条件を仲介させた場合にディスプレイに表示される階床遷移を示す平面図である。ディスプレイ80の地図表示画面81上には、図に白抜きの矢印で示すように、図14(a) ,(b) ,(c) ,(d) の順に地図画像が表示されてゆく。ここで、図14(a) に示す地図は、図10(a) に示す地図と同じ遷移前階床地図であり、図8の右欄に示す遷移前条件に基づいて階床地図データD(i)から切り出された画像である。また、図14(d) に示す地図は、図10(b) に示す地図と同じ遷移後階床地図であり、図9の右欄に示す遷移後条件に基づいて階床地図データD(j)から切り出された画像である。
【0092】
図14に示す階床遷移は、遷移前条件と遷移後条件との間に、第1過渡条件および第2過渡条件という2つの過渡条件を挿入したものである。第1過渡条件は、図15の右欄に示すように、fi,Pu(xu,yu),muである。ここで、Pu(xu,yu)およびmuは、遷移前の第i階の階床全体の地図をディスプレイ80の地図表示画面81に表示するのに適した切出条件を設定するための表示基準点座標および表示倍率である。より具体的に説明すれば、図15に示すとおり、第i階の階床地図データD(i)によって示される階床全体の地図を包含する切出枠Wuとして、縦横比が地図表示画面81の縦横比に等しく、各辺がX軸もしくはY軸に平行で、階床全体の地図に外接する矩形を求め、この切出枠Wuの中心点として、表示基準点Pu(xu,yu)を決定し、この切出枠Wuのサイズに応じた倍率muを決定すればよい。図14(b) に示す地図は、このような第1過渡条件に基づいて階床地図データD(i)から切り出された画像である。
【0093】
一方、第2過渡条件は、図16の右欄に示すように、fj,Pv(xv,yv),mvである。ここで、Pv(xv,yv)およびmvは、遷移後の第j階の階床全体の地図をディスプレイ80の地図表示画面81に表示するのに適した切出条件を設定するための表示基準点座標および表示倍率である。より具体的に説明すれば、図16に示すとおり、第j階の階床地図データD(j)によって示される階床全体の地図を包含する切出枠Wvとして、縦横比が地図表示画面81の縦横比に等しく、各辺がX軸もしくはY軸に平行で、階床全体の地図に外接する矩形を求め、この切出枠Wvの中心点として、表示基準点Pv(xv,yv)を決定し、この切出枠Wvのサイズに応じた倍率mvを決定すればよい。図14(c) に示す地図は、このような第2過渡条件に基づいて階床地図データD(j)から切り出された画像である。
【0094】
結局、切出条件格納部60内に遷移前条件「fi,Pi(xi,yi),mi」(図8)が格納されている状態において、ユーザが、指示示入力部40に対して、階数fiをfjに変更する階数変更指示を入力すると、切出条件変更部50は、まず、切出条件を第1過渡条件「fi,Pu(xu,yu),mu」(図15)に書き換え、しばらくして(たとえば、2〜3秒おいて)、切出条件を第2過渡条件「fj,Pv(xv,yv),mv」(図16)に書き換え、しばらくして(たとえば、2〜3秒おいて)、切出条件を遷移後条件「fj,Pj(xj,yj),mj」(図9)に書き換える階床遷移処理を行うことになる。
【0095】
その結果、地図表示画面81の表示は、図14(a) 、図14(b) 、図14(c) 、図14(d) と変遷し、第i階の遷移前階床画像から第j階の遷移前階床画像に切り替えられる。ここで、図14(a) の遷移前階床画像と図14(d) の遷移後階床画像とを比べると、一方が他方の真上に位置し、表示倍率が同一の地図画像ということになる。しかも、両者の間に介挿された図14(b) の画像は、遷移前の第i階の階床全体の地図を示す画像であり、図14(c) の画像は、遷移後の第j階の階床全体の地図を示す画像であるため、ユーザは、各階の階床全体の地図を確認しながら異なる階の地図へ表示を切り替えることができる。
【0096】
更に、表示対象切出部20の機能によって、階床全体を示す地図画像上には、図14(b) ,14(c) に星印で示すような位置指標H1,H2が付加される。ここで、位置指標H1は、遷移前条件の表示基準点Pi(xi,yi)の位置(図8参照)を示す指標であり、位置指標H2は、遷移後条件の表示基準点Pj(xj,yj)の位置(図9参照)を示す指標である。このような位置指標が付加された階床全体の地図を表示することにより、ユーザは、表示対象となる部分地図が階床全体の地図のどの部分を占めているのかを把握することができ、建物全体に対する空間的な位置関係を容易に把握できる。
【0097】
たとえば、図14に示す例の場合、まず、図14(a) に示す第i階の部分地図が、図14(b) に示す第i階の階床全体の地図に切り替わることにより、ユーザは、今まで見ていた地図が、第i階の階床全体の地図における位置指標H1で示す位置周辺の部分地図であったことを確認することができる。そして、更に、図14(c) に示す第j階の階床全体の地図に切り替わることにより、今度は、この第j階における位置指標H2で示す位置周辺の部分地図に切り替わる旨の予告を受けることができ、最後に、図14(d) に示す第j階の部分地図に切り替わることにより、予告どおりの部分地図に切り替わったことを認識することができる。かくして、ユーザは、この建物全体における遷移前階床地図と遷移後階床地図との空間的な位置関係を容易に把握することができる。
【0098】
要するに、この§3で述べる実施形態では、切出条件変更部50が、階床遷移処理を行う際に、遷移前の階床全体の地図をディスプレイの表示画面に表示するのに適した切出条件からなる第1過渡条件と、遷移後の階床全体の地図をディスプレイの表示画面に表示するのに適した切出条件からなる第2過渡条件と、を生成し、遷移前条件を第1過渡条件に書き換える処理を行った後、更に、第1過渡条件を第2過渡条件に書き換え、その後に、第2過渡条件を遷移後条件に書き換える処理を行うことになる。
【0099】
また、この§3で述べる実施形態では、表示対象切出部20が、第1過渡条件に基づいて表示対象データを切り出したときに、遷移前条件の表示基準点Pを示す位置指標を付加した表示対象データを表示対象データ格納部30に格納し、第2過渡条件に基づいて表示対象データを切り出したときに、遷移後条件の表示基準点Pを示す位置指標を付加した表示対象データを表示対象データ格納部30に格納することになる。
【0100】
なお、図14に示す例では、図14(a) に示す遷移前階床地図から、図14(b) に示す階床全体の地図に突然切り替わることになるが、切出条件変更部50が、遷移前条件を第1過渡条件に書き換える処理を行う際に、遷移前条件から第1過渡条件に徐々に変化する中間段階の条件を仲介した書き換え処理を行うようにすれば、図14(a) に示す遷移前階床地図からズームアウトしながら図14(b) に示す階床全体の地図に徐々に切り替わるような動画表示を行うことが可能である。具体的には、図8の右欄に示す表示基準点Pi(xi,yi)および表示倍率miを、図15の右欄に示す表示基準点Pu(xu,yu)および表示倍率muに徐々に近づけるように変化させてゆけばよい。
【0101】
全く同様に、図14に示す例では、図14(c) に示す階床全体の地図から、図14(d) に示す遷移後階床地図に突然切り替わることになるが、切出条件変更部50が、第2過渡条件を遷移後条件に書き換える処理を行う際に、第2過渡条件から遷移後条件に徐々に変化する中間段階の条件を仲介した書き換え処理を行うようにすれば、図14(c) に示す階床全体の地図からズームインしながら図14(d) に示す遷移後階床地図に徐々に切り替わるような動画表示を行うことが可能である。具体的には、図16の右欄に示す表示基準点Pv(xv,yv)および表示倍率mvを、図9の右欄に示す表示基準点Pj(xj,yj)および表示倍率mjに徐々に近づけるように変化させてゆけばよい。
【0102】
<<< §4. その他の変形例 >>>
ここでは、これまで述べてきた建物内の地図提示システムについてのいくつかの変形例を述べておく。
【0103】
(1) 切出方位角φを考慮した変形例
これまで述べてきた実施形態では、各辺がX軸もしくはY軸に平行な矩形からなる切出枠Wを定義し、表示対象画像の切り出しを行うことを前提としていた。別言すれば、階床地図データが定義されたXY座標系と、表示対象データが定義されたαβ座標系とを対比した場合、α軸がX軸に平行な軸になり、β軸がY軸に平行な軸になるような切り出しが行われていた。
【0104】
しかしながら、表示対象画像の切り出しは、必ずしも上述した前提で行う必要はない。図17は、切出方位角φを考慮した切出処理の一例を示す平面図である。図2に示す例と同様に、階床地図データD(f)上の表示基準点Pa(xa,ya)を中心として、その周辺画像を切り出す例であるが、XY座標系に対して切出方位角φだけ傾斜した切出枠W′aが設定されている。表示対象切出部20は、この切出方位角φを考慮して表示対象データの切り出しを行う。切り出された表示対象画像が定義されるαβ座標系は、図示のとおりXY座標系に対して切出方位角φだけ傾斜することになる。
【0105】
このように、切出方位角φを設定し、XY座標系に対して角度φだけ回転した方向を向いたαβ座標系を定義する場合には、切出条件格納部60内に、更に、Y軸とβ軸とのなす角(X軸とα軸とのなす角でも同じ)として定義される切出方位角φを、切出条件の一部として格納するようにし、ユーザが指示入力部40に対して、この切出方位角φを変更する指示を入力できるようにすればよい。切出方位角φの変更指示が入力された場合、切出条件変更部50は、切出条件格納部60内に格納されている切出方位角φを指示に応じた値に変更する処理を行うことになる。
【0106】
この切出方位角φを考慮した変形例では、ユーザは、切出方位角φを変更する指示を入力することにより、ディスプレイ80上で地図を任意の方向に回転させることができるようになる。なお、切出条件変更部50が、遷移前条件から遷移後条件に書き換える処理を行う際には、切出条件内の切出方位角φを一定に維持するようにする。そうすることにより、遷移前階床地図から遷移後階床地図への表示が切り替えられても、ユーザには、常に同じ向きの地図が提示されることになるので、切替前後における空間的な位置把握に支障は生じない。
【0107】
(2) 指示入力部の変形例
図1に示す例では、ディスプレイ80における指示入力画面82上に、昇階ボタン83および降階ボタン84を表示させ、これらのボタンに対するタッチパネル41上での押圧操作により階数変更指示を入力する形態を採っていたが、もちろん、階数変更指示の入力形態は、このような入力形態に限定されるものではない。
【0108】
図18は、タッチパネル41を用いた階数変更指示の入力形態の変形例を示す平面図である。この例の場合、表示処理部70が、ディスプレイ80の指示入力画面82′上に、各階の数字を示す階数表示ボタンを表示する機能を有しており、入力インターフェイス42が、これら階数表示ボタンの特定の数字に対する押圧操作を、階数fを当該数字に対応する階数に変更する階数変更指示の入力と認識する機能を有している。したがって、ユーザは、階数を変更する際には、目的とする階数を示す階数表示ボタンを直接タップする操作を行うだけで、階数変更指示の入力を行うことができる。もちろん、この他にも様々な入力形態を採ることができる。
【0109】
また、これまで述べた例では、ディスプレイ80の表示画面を地図表示画面81と指示入力画面82,82′とに分けているが、両者を融合して、地図上に重なるように、各操作ボタンを表示してもかまわない。もちろん、各操作ボタンは、必ずしもディスプレイ80の表示画面に設けたソフトウエアによるボタンである必要はなく、機械的な接点を有するハードウエアによる押しボタンにしてもかまわない。
【0110】
(3) 画像データの変形例
これまで述べた実施形態では、階床地図データ格納部10に格納される階床地図データD(f)や、表示対象データ格納部30に格納される表示対象データが、多数の画素の集合からなるラスター画像データであるものとして説明を行ってきた。しかしながら、本発明で用いる各画像データは、必ずしもラスター画像データである必要はなく、ベクター画像データであってもよいし、文字コードデータとフォントデータとの組み合わせを含んでいてもよい。要するに、ベクター画像データや、文字コードデータとフォントデータとの組み合わせであっても、二次元座標系上に展開した場合に、概念的に、この二次元座標系上に配列された多数の画素の集合として取り扱うことができるデータであれば、どのようなデータ形式の画像データであってもかまわない。
【0111】
したがって、本願において、「所定の座標系上に配列された画素からなる画像データ」とは、二次元座標系上に展開した場合に多数の画素として把握できる画像データを意味するものであり、必ずしもそのデータ形式がラスター形式である必要はない。
【0112】
(4) コンピュータを用いた構成例
図1には、本発明に係る建物内の地図提示システムの基本構成をブロック図として示したが、実際には、このシステムは、コンピュータに専用のプログラムを組み込むことによって構成することができる。
【0113】
たとえば、階床地図データ格納部10、表示対象データ格納部30、切出条件格納部60は、コンピュータ用のメモリやハードディスク装置などの記録装置によって構成することができ、表示対象切出部20、指示入力部40、切出条件変更部50、表示処理部70は、コンピュータのCPU、入出力機器、インターフェイス回路およびこれらを制御するプログラムによって構成することができる。
【0114】
特に、本発明に係る建物内の地図提示システムは、携帯型の電子端末装置とこの電子端末装置と無線交信可能なサーバ装置とによって構成することができる。具体的には、図1に示す構成において、少なくともディスプレイ80と、表示対象データ格納部30と、表示処理部70と、指示入力部40と、を携帯型の電子端末装置によって構成し、少なくとも階床地図データ格納部10を、この電子端末装置と無線交信可能なサーバ装置によって構成し、切出条件変更部50と、切出条件格納部60と、表示対象切出部20とを、それぞれ電子端末装置またはサーバ装置のいずれかによって構成することができる。
【0115】
<<< §5. ナビゲーションシステムへの応用 >>>
最後に、これまで述べてきた建物内の地図提示システムを利用して、ナビゲーションシステムを構成した応用例を、図19のブロック図を参照しながら説明する。このナビゲーションシステムは、図1に示す地図提示システムの各構成要素に、更に、ルート探索部110、ルートデータ格納部120、現在地認識部130、目的地認識部140、場所名対応データ格納部150を付加するとともに、指示入力部40および表示処理部70に若干の付加機能をもたせたものである。そこで、以下、新たに付加された付加要素および付加機能についての説明のみを行う。
【0116】
場所名対応データ格納部150は、階床地図上の所定位置と当該所定位置の場所名とを対応づける場所名対応データを格納する構成要素である。この場所名対応データの一例を図20に示す。図20に示す表の左欄は場所名を示す文字列であり、右欄は当該場所名に対応づけられる階床地図上の所定位置を示すデータである。たとえば、1行目の左欄には「アメリカンフェアー」なる文字列、右欄には「f7,x1,y2」なる符号が対応づけられているが、これは「アメリカンフェアー」なる売場が、階数f7で示される階床地図データ内の座標値(x1,y2)なる位置に存在することを示している。
【0117】
目的地認識部140は、ユーザから特定の目的地についての探索指示が与えられたときに、場所名対応データ格納部150内の場所名対応データを検索することにより、目的地を階床地図上の目的地座標として認識する機能をもった構成要素である。一方、指示入力部40には、上記探索指示を入力する付加機能が設けられている。
【0118】
ここに示す例の場合、目的値認識部140は、ユーザからの目的値探索要求に基づいて、ディスプレイ80の表示画面上に、目的地探索画面を表示させる機能を有している。図21は、図19に示すディスプレイ80に表示された目的地探索画面85の一例を示す平面図である。ユーザは、指示入力部40内のタッチパネル41を利用して、この目的地探索画面85内の目的値入力欄86に、探索対象となる目的地を示す文字列を入力することができる。文字列を入力するインターフェイスは、入力インターフェイス42によって提供されることになるが、ここでは詳しい説明は省略する。図21には、この目的値入力欄86に「イタリアンレストラン」なる文字列が入力された状態が示されている。
【0119】
この状態で、探索ボタン87をタップすると、目的値認識部140は、場所名対応データ格納部150内の場所名対応データを検索することにより、目的地を階床地図上の目的地座標として認識する処理を実行する。具体的には、図20に示す場所名対応データを検索することにより、「イタリアンレストラン」なる文字列に対して、「f8,x3,y4」なる目的地座標が認識される。具体的には、たとえば、階数f=8に対応する階床地図データD(8)内の座標値(x3,y4)が目的値座標として認識されることになる。
【0120】
一方、現在地認識部130は、建物内におけるディスプレイ80の現在地を階床地図上の現在地座標として認識する機能をもった構成要素である。具体的には、GPSなどの緯度経度認識装置と、この緯度経度認識装置によって認識された緯度経度を特定の階床地図データ内の特定の座標値と対応づける対応表と、を内蔵しており、ディスプレイ80の現在の緯度経度を認識し、これに対応する特定の階床地図データ内の特定の座標値を求める処理を行う。この現在地認識部130の機能により、ディスプレイ80の現在地(すなわち、ディスプレイ80を閲覧しているユーザの現在地)が、たとえば、階数f=1に対応する階床地図データD(1)内の座標値(x1,y2)のような形で認識されることになる。
【0121】
なお、ディスプレイ80を内蔵する電子端末装置が、無線LANへの接続機能を有している場合は、GPSの代わりに、無線LANを利用して現在地座標を認識することができる。たとえば、建物内に設置された無線LANのアクセスポイントの位置情報を予め登録しておけば、1点もしくは複数点のアクセスポイントからの信号を受信することにより、建物内の現在地座標を認識することができる。
【0122】
ルート探索部110は、現在地認識部130が認識した現在地から、目的地認識部140が認識した目的地までの推奨ルートを探索する機能を果たす構成要素である。ルートデータ格納部120には、建物内の任意の地点間のアクセスルートを示すルートデータが格納されており、ルート探索部110は、このルートデータに基づいて推奨ルートの探索を行うことになる。
【0123】
なお、ルートデータの具体的な形態や、推奨ルートの具体的な探索方法は、一般的な道路マップに基づく推奨ルートの探索方法として、様々な方法が公知であるため、ここでは詳しい説明は省略する。ここで探索する推奨ルートは、建物内部における現在地から目的地までの推奨ルートであるが、建物内部であっても、売場の間を抜ける通路やエレベータなどを個別のアクセスルートとして取り扱えば、公知の探索方法を利用した探索が可能である。たとえば、売場の間を抜ける通路を一般道、エレベータを高速道路、エレベータの乗降口を高速道路のインターチェンジ、として取り扱えば、道路マップに基づく推奨ルートの探索方法をそのまま適用可能である。
【0124】
図22は、図19に示すルート探索部110によって行われたルート探索処理の結果を示す平面図である。ここに示す例は、1階の階床地図データD(1)内の点Q1(x1,y2)の位置が現在地として認識され、8階の階床地図データD(8)内の点Q2(x3,y4)の位置(「イタリアンレストラン」の位置)が目的地として認識された例である。ルート探索部110は、現在地Q1から目的地Q2へ向かう推奨ルートとして、図示のとおり、ルートR1,R2,R3を探索したことになる。ここで、破線で示すルートR2は、徒歩による実際の移動ルートではなく、エレベータを利用して1階から8階へと移動するルートを示している。
【0125】
ここに示すナビゲーションシステムを構成する表示処理部70には、ディスプレイ80の画面上に、ルート探索部110が探索した推奨ルートを地図とともに表示する機能が付加されている。したがって、図22に示す1階の階床地図データD(1)内の地図をディスプレイ画面上に表示する際には、推奨ルートR1が地図とともに表示されることになり、8階の階床地図データD(8)内の地図をディスプレイ画面上に表示する際には、推奨ルートR3が地図とともに表示されることになる。
【0126】
図23は、図22に示すルート探索処理の結果を利用して表示される地図画面を示す平面図である。このような地図表示がなされることになった経緯は、次のとおりである。ここでは、このナビゲーションシステムの一部を構成する、ディスプレイ80を備えた携帯型の電子端末装置を所持したユーザが、1階の食品売場の前で、目的値探索要求を行い、図21に示すような目的地探索画面85を表示させ、目的地入力欄86に「イタリアンレストラン」なる文字列を入力して、探索ボタン87をタップしたものとしよう。その結果、上述のような探索処理が行われ、図22に示すような推奨ルートR1,R2,R3が探索されることになる。
【0127】
図23(a) に示す地図画面は、ユーザが探索ボタン87をタップした直後に表示される初期画面である。この地図画面には、食品売場前の現在地周辺の地図を示すものであるが、現在地から伸びる推奨ルートR1が、地図とともに表示されている。したがって、ユーザは、地図上でこの推奨ルートR1を追うことにより、目的地までのルートを確認することができる。図23(b) は、ユーザがタッチパネル41からなる画面上でスクロール操作(指のスライド操作)を行うことにより、推奨ルートR1を追ってエレベータまで辿り着いた状態を示す画面である。
【0128】
ここで、ユーザが、目的地のある8階への階数変更指示を入力したとしよう。すなわち、指示入力部40に対して、1階から8階への階数変更指示が入力されたことになる。すると、表示画面は、図23(b) ,(c) ,(d) ,(e) と順に変遷することになる。これは、前述した§3で述べた実施形態における階床遷移動作である(図14(a) 〜(d) 参照)。この図23(b) 〜(e)の地図自体は、図14(a) 〜(d)の地図と同じものであるが、地図に重ねて推奨ルートR1,R3が表示されている。最後の図23(f) は、図23(e) に示す状態から、ユーザがタッチパネル41からなる画面上でスクロール操作(指のスライド操作)を行うことにより、推奨ルートR3を追って目的地まで辿り着いた状態を示す画面である。
【0129】
結局、ユーザは、現在地である1階の階床地図と目的地である8階の階床地図との空間的な位置関係を容易に把握することができるとともに、目的地までの推奨ルートの空間的な位置把握も容易に行うことができるようになる。
【0130】
なお、図23(a) ,(b) に示す地図を見たユーザは、1階の推奨ルートR1がエレベータ経由の推奨ルートR2を経て8階の推奨ルートR3へ繋がっていることを認識することはできないので、このままでは、図23(b) に示す状態から8階への階数変更指示を入力することができない。そこで、実用上は、探索された推奨ルートが階床遷移を伴う場合に、表示処理部70が、ディスプレイ80の画面上に階床遷移を示す情報を付加表示する機能を有するようにしておくのが好ましい。
【0131】
具体的には、たとえば、図23(b) に示す例の場合、推奨ルートR2に基づいて、エレベータの位置(推奨ルートR1の末端位置)に「8階ヘ」のように、遷移先の階床を表示するようにすればよい。同様に、図23(e) に示す例の場合も、推奨ルートR2に基づいて、エレベータの位置(推奨ルートR3の始端位置)に「1階から」のように、遷移元の階床を表示するようにすればよい。ユーザは、これらの階床遷移を示す情報に基づいて、1階から8階へ推奨ルートを辿ることができ、また、8階から1階へ推奨ルートを戻ることができる。
【0132】
あるいは、上例のように、探索された推奨ルートがエレベータを利用した階床遷移を伴う場合には、指示入力部40が、ユーザからの自動階数変更指示を入力した際に、切出条件変更部50が、エレベータを利用した遷移先もしくは遷移元の階床に自動的に切り替える階床遷移処理を行うようにしてもよい。
【0133】
たとえば、ディスプレイ80上にエレベータが表示されている場合に、当該エレベータをタップする操作を自動階数変更指示の入力操作と決めておけば、ユーザが図23(b) に示す地図上でエレベータの位置をタップする操作を行うと、切出条件変更部50が、推奨ルートR2(エレベータを利用した1階から8階への階床遷移)を参照して、1階(遷移元)から8階(遷移先)への階床遷移処理を自動的に行うことになる。その結果、表示画面は、図23(b) ,(c) ,(d) ,(e) と自動的に変遷することになり、ユーザは、図23(b) に示されているエレベータの位置をタップするだけで、推奨ルートR1からR2を経てR3を辿ることができる。
【0134】
もちろん、自動階数変更指示の入力は、推奨ルートを戻る場合にも有効である。たとえば、ユーザが図23(e) に示す地図上でエレベータの位置をタップする操作を行うと、切出条件変更部50が、推奨ルートR2(エレベータを利用した1階から8階への階床遷移)を参照して、8階(遷移先)から1階(遷移元)への階床遷移処理を自動的に行うことになる。その結果、表示画面は、図23(e) ,(d) ,(c) ,(b) と自動的に変遷することになり、ユーザは、図23(e) に示されているエレベータの位置をタップするだけで、推奨ルートR3からR2を経てR1に戻ることができる。
【0135】
以上、エレベータの位置をタップする操作を自動階数変更指示の入力と認識する例を述べたが、もちろん、自動階数変更指示の入力をどのような操作で行うかは任意である。たとえば、図1に示す指示入力画面82に、自動階数変更指示ボタンを追加し、当該ボタンのタップ操作を自動階数変更指示の入力と認識するようにしてもよい。あるいは、地図表示画面81上に推奨ルートが表示されているときに、昇階ボタン83もしくは降階ボタン84に対するタップ操作があった場合には、当該タップ操作を自動階数変更指示の入力と認識するようにしてもよい。
【0136】
なお、ユーザは、推奨ルート表示が不要になった場合には、推奨ルート表示の解除指示を入力することにより、推奨ルートの表示を解除することができる。たとえば、指示入力画面82に、推奨ルート表示の解除ボタンを設けておき、この解除ボタンがタップされた場合には、表示処理部70が、推奨ルートの表示を中止するようにすればよい。
【0137】
また、上述したナビゲーションシステムは、ディスプレイ80を閲覧しているユーザの現在地から目的地までの推奨ルートを表示するシステムであるが、変形例として、ユーザの現在地の代わりに、ユーザが指定した任意の地点を出発地として、当該出発地から目的地までの推奨ルートを表示するシステムを構成することも可能である。その場合は、図19に示す現在地認識部130の代わりに、ユーザの指示に基づいて階床地図上の任意の地点を出発地に設定する出発地設定部を設けるようにし、ルート探索部110が、設定された出発地から目的地までの推奨ルートを探索するようにすればよい。
【符号の説明】
【0138】
10:階床地図データ格納部
20:表示対象切出部
30:表示対象データ格納部
40:指示入力部
41:タッチパネル
42:入力インターフェイス
50:切出条件変更部
60:切出条件格納部
70:表示処理部
80:ディスプレイ
81:地図表示画面
82,82′:指示入力画面
83:昇階ボタン
84:降階ボタン
85:目的地探索画面
86:目的値入力欄
87:探索ボタン
110:ルート探索部
120:ルートデータ格納部
130:現在地認識部
140:目的地認識部
150:場所名対応データ格納部
D(1),D(8),D(f):階床地図データ
D(i):階床遷移前の階床地図データ
D(j):階床遷移後の階床地図データ
f,f1〜f8:階数を示すパラメータ
fi:階床遷移前の階数
fj:階床遷移後の階数
G:二次元αβ座標系の原点
H1,H2:位置指標
m:表示倍率
mi:階床遷移前の表示倍率
mj:階床遷移後の表示倍率
mu:第1過渡条件における表示倍率
mv:第2過渡条件における表示倍率
O:三次元XYZ座標系の原点
O,Oi,Oj:二次元XY座標系の原点
P,P(x,y),P(α,β):表示基準点
Pa(xa,ya)〜Pe(xe,ye):表示基準点
Pi(xi,yi):階床遷移前の表示基準点
Pj(xj,yj):階床遷移後の表示基準点
Pu(xu,yu):第1過渡条件における表示基準点
Pv(xv,yv):第2過渡条件における表示基準点
Pt(αt,βt):表示基準点(表示画面の中心点)
Q1(x1,y2):現在地
Q2(x3,y4):目的地
R1〜R3:推奨ルート
Si:階床遷移前の座標系
Sj:階床遷移後の座標系
T:地図表示枠
Wa〜We,Wi,Wj,Wu,Wv,W′a:切出枠
X,Xi,Xj:二次元XY座標系の座標軸
x,x1〜x7:座標値
Y,Yi,Yj:二次元XY座標系の座標軸
y,y2〜y8:座標値
基準X,基準Y,基準Z:三次元XYZ座標系の座標軸
α:二次元αβ座標系の座標軸
β:二次元αβ座標系の座標軸
ΔXi,ΔXj:基準X軸方向へのオフセット量
ΔYi,ΔYj:基準Y軸方向へのオフセット量
Δθi,Δθj:オフセット角
φ:切出方位角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の階を有する建物について各階の地図を提示するシステムであって、
ユーザに地図を提示する表示画面をもったディスプレイと、
原点Oをもった二次元XY座標系上に定義された画像データとして、第f階(fは階数を示すパラメータ)の階床地図を示す階床地図データを各階について格納する階床地図データ格納部と、
原点Gをもった二次元αβ座標系上に定義された画像データとして、表示対象となる地図を示す表示対象データを格納する表示対象データ格納部と、
前記表示対象データに基づいて、前記ディスプレイの画面上に地図の表示を行う表示処理部と、
表示対象となる階数fと、表示基準点Pを示す座標値P(x,y)と、表示倍率mと、を切出条件として格納する切出条件格納部と、
前記切出条件に基づいて、前記階床地図データ格納部に格納されている第f階の階床地図データから、座標値P(x,y)を基準とする位置の地図を前記ディスプレイに表示倍率mで表示するための表示対象データを切り出し、これを前記二次元αβ座標系上の画像データに変換して前記表示対象データ格納部に格納する表示対象切出部と、
前記切出条件格納部に格納されている切出条件を変更するためのユーザの指示を入力する指示入力部と、
前記指示入力部が入力したユーザの指示に基づいて、前記切出条件格納部に格納されている切出条件を変更する切出条件変更部と、
を備え、
前記指示入力部が階数fを変更する階数変更指示を入力した場合に、前記切出条件変更部が、当該階数変更指示の入力時点の切出条件を遷移前条件として、この遷移前条件に対して、階数fに関しては、前記階数変更指示に応じた階数に変更し、表示基準点Pを示す座標値P(x,y)に関しては、表示基準点Pが建物内の同一鉛直線上に維持されるように必要があれば変更し、表示倍率mに関しては、変更せずにそのまま維持することにより遷移後条件を生成し、前記切出条件格納部内の遷移前条件を、直接的に、もしくは、過渡条件を仲介して間接的に、前記遷移後条件に書き換えることにより、遷移前階床地図から遷移後階床地図へ表示を切り替える階床遷移処理を行うことを特徴とする建物内の地図提示システム。
【請求項2】
請求項1に記載の地図提示システムにおいて、
建物内に基準となる三次元XYZ座標系を定義し、このXYZ座標系の各座標軸を基準X軸,基準Y軸,基準Z軸としたときに、
階床地図データ格納部が、前記基準Z軸上に定義された原点Oと、前記基準X軸に平行なX軸と、前記基準Y軸に平行なY軸と、を有する二次元XY座標系にそれぞれ配列された画素からなる画像データとして、各階の階床地図データを格納しており、
指示入力部が階数fを変更する階数変更指示を入力した場合に、切出条件変更部が、階数変更指示に応じて変更された階数fと、遷移前条件と同一の座標値P(x,y)と、遷移前条件と同一の表示倍率mと、を有する遷移後条件を生成することを特徴とする建物内の地図提示システム。
【請求項3】
請求項1に記載の地図提示システムにおいて、
建物内に基準となる三次元XYZ座標系を定義し、このXYZ座標系の各座標軸を基準X軸,基準Y軸,基準Z軸としたときに、
階床地図データ格納部が、前記基準Z軸上に定義された点を、前記基準X軸方向にオフセット量ΔX、前記基準Y軸方向にオフセット量ΔYだけ移動させた位置オフセットを生じた位置に定義された原点Oと、この原点Oを通り前記基準X軸に平行なX軸および前記基準Y軸に平行なY軸と、を有する二次元XY座標系にそれぞれ配列された画素からなる画像データとして、各階の階床地図データを格納しており、
指示入力部が階数fを変更する階数変更指示を入力した場合に、切出条件変更部が、階数変更指示に応じて変更された階数fと、遷移前条件の座標値P(x,y)に対して各階の前記オフセット量ΔXおよびΔYに基づいて各階の前記位置オフセットを解消させる修正を行うことによって得られる座標値と、遷移前条件と同一の表示倍率mと、を有する遷移後条件を生成することを特徴とする建物内の地図提示システム。
【請求項4】
請求項1に記載の地図提示システムにおいて、
建物内に基準となる三次元XYZ座標系を定義し、このXYZ座標系の各座標軸を基準X軸,基準Y軸,基準Z軸としたときに、
階床地図データ格納部が、前記基準Z軸上に定義された原点Oと、この原点Oを通り前記基準X軸および前記基準Y軸に平行な軸を前記基準Z軸を回転軸としてそれぞれオフセット角Δθだけ回転させることにより回転オフセットを生じた向きに定義されたX軸およびY軸と、を有する二次元XY座標系にそれぞれ配列された画素からなる画像データとして、各階の階床地図データを格納しており、
指示入力部が階数fを変更する階数変更指示を入力した場合に、切出条件変更部が、階数変更指示に応じて変更された階数fと、遷移前条件の座標値P(x,y)に対して各階の前記オフセット角Δθに基づいて各階の前記回転オフセットを解消させる修正を行うことによって得られる座標値と、遷移前条件と同一の表示倍率mと、を有する遷移後条件を生成することを特徴とする建物内の地図提示システム。
【請求項5】
請求項1に記載の地図提示システムにおいて、
建物内に基準となる三次元XYZ座標系を定義し、このXYZ座標系の各座標軸を基準X軸,基準Y軸,基準Z軸としたときに、
階床地図データ格納部が、前記基準Z軸上に定義された点を、前記基準X軸方向にオフセット量ΔX、前記基準Y軸方向にオフセット量ΔYだけ移動させた位置オフセットを生じた位置に定義された原点Oと、この原点Oを通り前記基準X軸および前記基準Y軸に平行な軸を前記原点Oを通り前記基準Z軸と平行な軸を回転軸としてそれぞれオフセット角Δθだけ回転させることにより回転オフセットを生じた向きに定義されたX軸およびY軸と、を有する二次元XY座標系にそれぞれ配列された画素からなる画像データとして、各階の階床地図データを格納しており、
指示入力部が階数fを変更する階数変更指示を入力した場合に、切出条件変更部が、階数変更指示に応じて変更された階数fと、遷移前条件の座標値P(x,y)に対して各階の前記オフセット量ΔXおよびΔYに基づいて各階の前記位置オフセットを解消させ、各階の前記オフセット角Δθに基づいて各階の前記回転オフセットを解消させる修正を行うことによって得られる座標値と、遷移前条件と同一の表示倍率mと、を有する遷移後条件を生成することを特徴とする建物内の地図提示システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の地図提示システムにおいて、
切出条件変更部が、階床遷移処理を行う際に、遷移前の階床全体の地図をディスプレイの表示画面に表示するのに適した切出条件からなる第1過渡条件と、遷移後の階床全体の地図をディスプレイの表示画面に表示するのに適した切出条件からなる第2過渡条件と、を生成し、遷移前条件を前記第1過渡条件に書き換える処理を行った後、更に、前記第1過渡条件を前記第2過渡条件に書き換え、その後に、前記第2過渡条件を遷移後条件に書き換える処理を行い、
表示対象切出部が、前記第1過渡条件に基づいて表示対象データを切り出したときに、遷移前条件の表示基準点Pを示す位置指標を付加した表示対象データを表示対象データ格納部に格納し、前記第2過渡条件に基づいて表示対象データを切り出したときに、遷移後条件の表示基準点Pを示す位置指標を付加した表示対象データを表示対象データ格納部に格納することを特徴とする建物内の地図提示システム。
【請求項7】
請求項6に記載の地図提示システムにおいて、
切出条件変更部が、遷移前条件を第1過渡条件に書き換える処理を行う際に、前記遷移前条件から前記第1過渡条件に徐々に変化する中間段階の条件を仲介した書き換え処理を行い、第2過渡条件を遷移後条件に書き換える処理を行う際に、前記第2過渡条件から前記遷移後条件に徐々に変化する中間段階の条件を仲介した書き換え処理を行うことを特徴とする建物内の地図提示システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の地図提示システムにおいて、
切出条件格納部が、更に、Y軸とβ軸とのなす角として定義される切出方位角φを、切出条件の一部として格納し、
表示対象切出部が、前記切出方位角φを考慮して表示対象データの切り出しを行い、
切出条件変更部が、遷移前条件から遷移後条件に書き換える処理を行う際に、切出条件内の切出方位角φを一定に維持することを特徴とする建物内の地図提示システム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の地図提供システムとしてコンピュータを機能させるプログラム。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載の地図提供システムにおいて、
指示入力部が、ディスプレイの表示画面上に設けられたタッチパネルと、このタッチパネルに対する押圧操作を検出して、ユーザの指示を入力する入力インターフェイスと、を有し、
表示処理部が、前記ディスプレイの画面上に、昇階ボタンおよび降階ボタンを地図とともに表示する機能を有し、
前記入力インターフェイスが、前記昇階ボタンに対する押圧操作を、階数fを昇階方向に変更する階数変更指示の入力と認識し、前記降階ボタンに対する押圧操作を、階数fを降階方向に変更する階数変更指示の入力と認識することを特徴とする建物内の地図提示システム。
【請求項11】
請求項10に記載の地図提供システムにおいて、
入力インターフェイスが、昇階ボタンに対するn回の連続タップ操作を、階数fを昇階方向にn階分だけ変更する階数変更指示の入力と認識し、降階ボタンに対するn回の連続タップ操作を、階数fを降階方向にn階分だけ変更する階数変更指示の入力と認識することを特徴とする建物内の地図提示システム。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれかに記載の地図提供システムにおいて、
指示入力部が、ディスプレイの表示画面上に設けられたタッチパネルと、このタッチパネルに対する押圧操作を検出して、ユーザの指示を入力する入力インターフェイスと、を有し、
表示処理部が、前記ディスプレイの画面上に、各階の数字を示す階数表示ボタンを地図とともに表示する機能を有し、
前記入力インターフェイスが、前記階数表示ボタンの特定の数字に対する押圧操作を、階数fを当該数字に対応する階数に変更する階数変更指示の入力と認識することを特徴とする建物内の地図提示システム。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれかに記載の地図提供システムにおいて、
少なくともディスプレイと、表示対象データ格納部と、表示処理部と、指示入力部と、を携帯型の電子端末装置によって構成し、
少なくとも階床地図データ格納部を、前記電子端末装置と無線交信可能なサーバ装置によって構成し、
切出条件変更部と、切出条件格納部と、表示対象切出部とを、それぞれ前記電子端末装置または前記サーバ装置のいずれかによって構成したことを特徴とする建物内の地図提示システム。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれかに記載の地図提供システムに、更に、
階床地図上の所定位置と当該所定位置の場所名とを対応づける場所名対応データを格納する場所名対応データ格納部と、
建物内の任意の地点間のアクセスルートを示すルートデータを格納するルートデータ格納部と、
建物内におけるディスプレイの現在地を階床地図上の現在地座標として認識する現在地認識部と、
ユーザから特定の目的地についての探索指示が与えられたときに、前記場所名対応データを検索することにより、前記目的地を階床地図上の目的地座標として認識する目的地認識部と、
前記ルートデータに基づいて、前記現在地から前記目的地までの推奨ルートを探索するルート探索部と、
を付加し、
指示入力部に、前記探索指示を入力する機能をもたせ、
表示処理部に、ディスプレイの画面上に、前記推奨ルートを地図とともに表示する機能をもたせたことを特徴とする建物内のナビゲーションシステム。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれかに記載の地図提供システムに、更に、
階床地図上の所定位置と当該所定位置の場所名とを対応づける場所名対応データを格納する場所名対応データ格納部と、
建物内の任意の地点間のアクセスルートを示すルートデータを格納するルートデータ格納部と、
ユーザの指示に基づいて階床地図上の任意の地点を出発地に設定する出発地設定部と、
ユーザから特定の目的地についての探索指示が与えられたときに、前記場所名対応データを検索することにより、前記目的地を階床地図上の目的地座標として認識する目的地認識部と、
前記ルートデータに基づいて、前記出発地から前記目的地までの推奨ルートを探索するルート探索部と、
を付加し、
指示入力部に、前記探索指示を入力する機能をもたせ、
表示処理部に、ディスプレイの画面上に、前記推奨ルートを地図とともに表示する機能をもたせたことを特徴とする建物内のナビゲーションシステム
【請求項16】
請求項14または15に記載のナビゲーションシステムにおいて、
探索された推奨ルートが階床遷移を伴う場合に、表示処理部が、ディスプレイの画面上に前記階床遷移を示す情報を付加表示する機能を有することを特徴とする建物内のナビゲーションシステム。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれかに記載のナビゲーションシステムにおいて、
探索された推奨ルートがエレベータを利用した階床遷移を伴い、指示入力部が、ユーザからの自動階数変更指示を入力した場合に、切出条件変更部が、エレベータを利用した遷移先もしくは遷移元の階床に切り替える階床遷移処理を自動的に行うことを特徴とする建物内のナビゲーションシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−33122(P2013−33122A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168963(P2011−168963)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】