建物基礎の載荷試験方法
【課題】建物基礎の載荷試験における測定精度を向上させる。
【解決手段】本発明の建物基礎の載荷試験方法は、地中に構築された杭22の上に当接且つ縁を切った状態で基礎コンクリート版26を設ける第一工程と、基礎コンクリート版26が沈下されるように基礎コンクリート版26に載荷荷重を付加する載荷段階と、載荷段階よりも基礎コンクリート版26に付加する載荷荷重を軽減する除荷段階とを交互に行って基礎コンクリート版26の沈下量と載荷荷重を測定する第二工程と、を備えている。
【解決手段】本発明の建物基礎の載荷試験方法は、地中に構築された杭22の上に当接且つ縁を切った状態で基礎コンクリート版26を設ける第一工程と、基礎コンクリート版26が沈下されるように基礎コンクリート版26に載荷荷重を付加する載荷段階と、載荷段階よりも基礎コンクリート版26に付加する載荷荷重を軽減する除荷段階とを交互に行って基礎コンクリート版26の沈下量と載荷荷重を測定する第二工程と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物基礎の載荷試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、杭と、直接基礎とを併用したパイルド・ラフト基礎の載荷試験方法が開示されている。この特許文献1に記載の例では、地盤にパイルド・ラフト基礎に見立てたパイルド・ラフト試験体を構築し、このパイルド・ラフト試験体の直接基礎試験盤に載荷荷重を付加してパイルド・ラフト試験体の支持力を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−57380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の例では、杭の頭部と直接基礎試験盤とが構造的に一体化(結合)されている。従って、直接基礎試験盤が沈下されるように直接基礎試験盤に載荷荷重を付加する載荷段階と、直接基礎試験盤から載荷荷重を取り除く除荷段階とを交互に繰り返してこのパイルド・ラフト試験体の支持力を測定する載荷試験を行った場合、次の問題がある。
【0005】
すなわち、杭と地盤の剛性の違いにより、除荷段階においては、沈下した地盤の方が杭に比べてリバウンド量が大きくなるため、杭の抵抗力が引張力となり、直接基礎試験盤に作用し地盤に圧縮力が作用した状態となる。そのため、基礎試験盤が面外に変形し、変位一定とした載荷試験の実施が困難となる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、建物基礎の載荷試験における測定精度を向上できる載荷試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の建物基礎の載荷試験方法は、地中に構築された基礎体の上に当接且つ縁を切った状態で載荷版を設ける第一工程と、前記載荷版が沈下されるように前記載荷版に載荷荷重を付加する載荷段階と、前記載荷段階よりも前記載荷版に付加する載荷荷重を軽減する除荷段階とを交互に行って前記載荷版の沈下量と載荷荷重を測定する第二工程と、を備えている。
【0008】
この載荷試験方法によれば、第一工程において基礎体の上端部と載荷版とを縁切りした状態で建物基礎試験体を構築し、この建物基礎試験体について載荷段階と除荷段階とを交互に繰り返して載荷版の沈下量と載荷荷重を測定する。
【0009】
従って、除荷段階において、沈下した地盤の方が基礎体に比べて大きくリバウンドしようとしても、基礎体の上端部と載荷版とが縁切り状態とされているので、基礎体から載荷版に抵抗力が作用することを抑制することができる。これにより、その後に載荷段階を再開した場合でも、地盤に圧縮力が作用した状態での載荷となることを抑制できるので、載荷版の面外変形を抑制し、建物基礎の載荷試験における測定精度を向上させることができる。
【0010】
請求項2に記載の建物基礎の載荷試験方法は、請求項1に記載の建物基礎の載荷試験方法における前記除荷段階において、前記載荷版が前記基礎体の上端部と当接した状態に維持されるように前記載荷版に載荷荷重を残す方法である。
【0011】
基礎体の上端部と載荷版とが縁切り状態とされている場合に、例えば、除荷段階において載荷版に付加する載荷荷重がゼロとされたときには、沈下した地盤の方が基礎体に比べて大きくリバウンドするため、基礎体の方が載荷版よりも残留変形量が大きくなる。従って、基礎体や載荷版に残留応力が発生し、基礎体の上端部と載荷版とが離間されてしまう。このため、その後に載荷段階を再開したときには、載荷版が基礎体の上端部と当接されるまで載荷版のみに対して載荷したこととなり、建物基礎の載荷試験における測定精度が低下する。
【0012】
これに対し、本発明の載荷試験方法によれば、除荷段階において、載荷版に載荷荷重を残すことにより、載荷版を基礎体の上端部と当接した状態に維持する。従って、その後に載荷段階を再開した場合でも、載荷段階の開始から載荷版と基礎体の双方に対して載荷することができる。これにより、建物基礎の載荷試験における測定精度をより一層向上させることができる。
【0013】
請求項3に記載の建物基礎の載荷試験方法は、請求項2に記載の建物基礎の載荷試験方法における前記載荷段階において、前記載荷版の上方に設置された反力部に反力をとり、前記載荷版の上に設置された複数のジャッキにより、前記載荷版に前記載荷荷重を加え、前記除荷段階において、前記複数のジャッキのうち少なくとも一つのジャッキによって前記載荷荷重を残した状態で、前記複数のジャッキのうち残余のジャッキの盛替えを行い、次いで、前記残余のジャッキによって前記載荷荷重を残した状態で、前記少なくとも一つのジャッキの盛替えを行う方法である。
【0014】
この載荷試験方法によれば、除荷段階において、複数のジャッキのうち少なくとも一つのジャッキと、残余のジャッキとについて交互に盛替えを行うので、載荷版を基礎体の上端部と当接した状態に維持したまま、複数のジャッキの盛替えを行うことができる。
【0015】
請求項4に記載の建物基礎の載荷試験方法は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の建物基礎の載荷試験方法における前記除荷段階において、前記基礎体の残留変形に基づき前記載荷版と前記基礎体を当接した状態に維持させる方法である。
【0016】
この載荷試験方法によれば、基礎体の残留変形に基づくことにより、載荷版と基礎体とが実際に当接されているか否か目視にて確認できない状況下においても、載荷版と基礎体とを当接した状態に維持させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上詳述したように、本発明によれば、建物基礎の載荷試験における測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法における載荷段階の実施前の状態を示す正面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法における載荷段階の実施中の状態を示す正面図である。
【図3】図1に示される建物基礎試験体の平面図である。
【図4】図1に示される複数のジャッキと建物基礎試験体との相対的な位置関係を示す平面図である。
【図5】本発明の第一実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法においてジャッキの盛替えを行う順序を説明する図である。
【図6】本発明の第一実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法における載荷段階での荷重サイクルを示す図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法における載荷段階の実施前の状態を示す正面図である。
【図8】図7に示される建物基礎試験体の平面図である。
【図9】本発明の第三実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法における載荷段階の実施前の状態を示す正面図である。
【図10】図9に示される建物基礎試験体の平面図である。
【図11】本発明の第四実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法における載荷段階の実施前の状態を示す正面図である。
【図12】縁切り状態とされた杭及び基礎コンクリート版に対して載荷段階と除荷段階とを交互に繰り返した場合の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第一実施形態]
はじめに、本発明の第一実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法について説明する。
【0020】
[第一工程]
先ず、図1に示されるように、建物を新築する原位置の地盤12に、建物基礎(パイルド・ラフト基礎)に見立てた建物基礎試験体20を構築する。
【0021】
すなわち、地中に基礎体としての杭22を構築する。また、地盤12上に複数の土圧計28を設置すると共に、杭22の頭部に例えば歪ゲージ等により構成された軸力計32を設置する。
【0022】
次いで、この杭22の上方の地表に載荷版としての基礎コンクリート版26を形成して、建物基礎試験体20を構築する。また、この場合に、杭22の上端部と基礎コンクリート版26とを縁切り状態として互いに当接させておく。
【0023】
また、建物基礎試験体20を構築した後、この載荷試験方法を実施するための試験装置40を構築する。つまり、下台座46を基礎コンクリート版26の上に配置する。また、図1,図4に示されるように、複数のジャッキ48をこの下台座46の上に縦横にマトリックス状に並べた状態で設置する。また、図1に示されるように、各反力杭42を地盤12に構築すると共に、上台座44を複数のジャッキ48の上に配置し、この上台座44と複数の反力杭42の頭部とを超張力鋼45により結合する。
【0024】
さらに、建物基礎試験体20から十分に離れた位置の地盤に図示しない不動杭をそれぞれ構築し、この一対の不動杭の頭部に不動梁52を水平にした状態で結合する。また、この不動梁52と基礎コンクリート版26との間に変位計54をそれぞれ設置する。
【0025】
[第二工程]
続いて、建物基礎試験体20の支持力を測定する。つまり、この第二工程では、基礎コンクリート版26に載荷荷重を付加することにより、最終的に、基礎コンクリート版26を例えばその幅(1辺の長さ)の1/10以上沈下させる。例えば、基礎コンクリート版26の1辺の長さが4mである場合には、基礎コンクリート版26を元の位置から40cm以上沈下させる。そして、このときの建物基礎試験体20の支持力を測定する。
【0026】
具体的には、先ず、載荷段階として、複数のジャッキ48を作動(伸長)させ、上台座44に反力をとって基礎コンクリート版26に載荷荷重を付加する。
【0027】
また、建物基礎試験体20が元の位置から40cm以上沈下するまでの間に複数のジャッキ48が伸び切り状態となった場合には、除荷段階として、後に詳述する如く、複数のジャッキ48を収縮させて複数のジャッキ48の盛替えを行う。
【0028】
そして、この第二工程では、このようにして載荷段階と除荷段階とを交互に繰り返し、このときに変位計54を用いて基礎コンクリート版26の沈下量を測定すると共に、例えばジャッキ48に設けられた荷重計等を用いて基礎コンクリート版26に付加した載荷荷重を測定する。また、さらに、このときに複数の土圧計28と、軸力計32からの出力データに基づいて、杭22と、基礎コンクリート版26の各支持力の分担率を算出する。
【0029】
ところで、上述の如く、除荷段階において複数のジャッキ48の盛替えを行う際に、複数のジャッキ48を完全に収縮させ、土圧計28に付加する載荷荷重をゼロとした場合には、沈下した地盤12の方が杭22に比べて大きくリバウンドするため、杭22の方が基礎コンクリート版26よりも残留変形量が大きくなる。
【0030】
ここで、図12には、それぞれ独立した杭22、及び基礎コンクリート版26に対して載荷段階と除荷段階とを交互に繰り返した場合の測定結果を示す図が示されている。この図12において、縦軸は、沈下量を示し、横軸は、作用した荷重を示している。また、グラフG1は、独立した杭22のデータを示し、グラフG2は、独立した基礎コンクリート版26のデータを示している。この図より、杭22の方が基礎コンクリート版26よりも残留変形量が大きいことが分かる。
【0031】
従って、上述の如く、除荷段階において基礎コンクリート版26に付加する載荷荷重がゼロとされたときには、杭22の方が基礎コンクリート版26よりも残留変形量が大きくなることに起因して、杭22の上端部と基礎コンクリート版26とが離間されてしまう。このため、その後に載荷段階を再開したときには、基礎コンクリート版26が杭22の上端部と当接されるまで基礎コンクリート版26のみに対して載荷したこととなり、建物基礎の載荷試験における測定精度が低下する。
【0032】
そこで、この載荷試験方法では、上述の除荷段階において、次の要領で複数のジャッキ48の盛替えを行う。
【0033】
すなわち、杭22の頭部に設置した軸力計32や、この杭22の頭部に別途設置した図示しない荷重計等の出力データを確認しながら、複数のジャッキ48を徐々に収縮させて載荷段階よりも基礎コンクリート版26に付加する載荷荷重を軽減する。
【0034】
そして、基礎コンクリート版26が杭22の上端部と当接された状態に維持されるように、杭22の軸力(残留変形)が少し残っている状態で複数のジャッキ48を停止させる。
【0035】
続いて、図5(A)に示されるように、複数のジャッキ48のうち第一群のジャッキ48Aを停止させた状態で(第一群のジャッキ48Aによって基礎コンクリート版26を鉛直方向上側から支持した状態で)、複数のジャッキ48のうち残余の第二群のジャッキ48Bを収縮状態とさせる。次いで、図5(B)に示されるように、この収縮状態にある第二群のジャッキ48Bと上台座44との間にプレート49Bを挿入し、この第二群のジャッキ48Bの盛替えを行う。
【0036】
続いて、図5(C)に示されるように、この盛替えを行った第二群のジャッキ48Bを徐々に伸長させ、この第二群のジャッキ48Bがプレート49Bを介して上台座44に当接した段階で第二群のジャッキ48Bを停止させる。
【0037】
そして、図5(D)に示されるように、プレート49Bを介して第二群のジャッキ48Bを上台座44に当接させた状態で(第二群のジャッキ48Bによって基礎コンクリート版26を鉛直方向上側から支持した状態で)、第一群のジャッキ48Aを収縮状態とさせる。次いで、図5(E)に示されるように、この収縮状態にある第一群のジャッキ48Aと上台座44との間にプレート49Aを挿入し、この第一群のジャッキ48Aの盛替えを行う。
【0038】
続いて、図5(F)に示されるように、この盛替えを行った第一群のジャッキ48Aを徐々に伸長させ、この第一群のジャッキ48Aがプレート49Aを介して上台座44に当接した段階で第一群のジャッキ48Aを停止させる。このように、除荷段階においては、第一群のジャッキ48Aと第二群のジャッキ48Bとを交互に盛替えする。
【0039】
また、図6には、この第二工程における荷重サイクルの一例が示されている。この図6において、縦軸は、基礎コンクリート版26に作用した総荷重を示し、横軸は、経過した時間を示している。
【0040】
この図6に示されるように、除荷段階においては、基礎コンクリート版26に付加する載荷荷重を完全にゼロにするのではなく、上述の如く、杭22の軸力(残留変形)が少し残っている状態とする。そして、これにより、基礎コンクリート版26を鉛直方向上側から支持した状態として、基礎コンクリート版26を杭22の上端部と当接した状態に維持する。
【0041】
この載荷試験方法によれば、第一工程において杭22の上端部と基礎コンクリート版26とを縁切りした状態で建物基礎試験体20を構築し、この建物基礎試験体20について載荷段階と除荷段階とを交互に繰り返して基礎コンクリート版26の沈下量と載荷荷重を測定する。
【0042】
従って、除荷段階において、沈下した地盤12の方が杭22に比べて大きくリバウンドしようとしても、杭22の上端部と基礎コンクリート版26とが縁切り状態とされているので、杭22から基礎コンクリート版26に抵抗力が作用することを抑制することができる。これにより、その後に載荷段階を再開した場合でも、地盤12に圧縮力が作用した状態での載荷となることを抑制できるので、建物基礎の載荷試験における測定精度を向上させることができる。
【0043】
また、除荷段階において、基礎コンクリート版26に載荷荷重を残すことにより、基礎コンクリート版26を杭22の上端部と当接した状態に維持する。従って、その後に載荷段階を再開した場合でも、載荷段階の開始から基礎コンクリート版26と杭22の双方に対して載荷することができる。これにより、建物基礎の載荷試験における測定精度をより一層向上させることができる。
【0044】
さらに、除荷段階において、杭22の頭部に設置した軸力計32や、この杭22の頭部に別途設置した図示しない荷重計等の出力データを確認し、この出力データに基づいて(杭22の残留変形に基づいて)、複数のジャッキ48を制御するので、基礎コンクリート版26と杭22とが実際に当接されているか否か目視にて確認できない状況下においても、基礎コンクリート版26と杭22とを当接した状態に維持させることができる。
【0045】
なお、この載荷試験方法では、基礎コンクリート版26の代わりに、剛板等を用いても良い。
【0046】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法について説明する。
【0047】
上述の本発明の第一実施形態に係る載荷試験方法は、杭と基礎コンクリート版とを有する建物基礎試験体を構築し、これを試験対象として実施されていたが、本発明の第二実施形態に係る載荷試験方法は、基礎コンクリート版と地盤改良体とを有する建物基礎試験体を構築し、これを試験対象として実施するものである。以下、これを説明する。
【0048】
[第一工程]
先ず、図7,図8に示されるように、建物を新築する原位置の地盤12に、建物基礎に見立てた建物基礎試験体60を構築する。
【0049】
すなわち、地盤12を改良することにより平面視にて枠状の基礎体としての地盤改良体24を地中に造成する。また、地盤12上に複数の土圧計28を設置すると共に、地盤改良体24上に複数の土圧計30を設置する。
【0050】
次いで、この地盤改良体24の上方の地表に基礎コンクリート版26を形成して、建物基礎試験体60を構築する。また、この場合に、地盤改良体24の上端部と基礎コンクリート版26とを縁切り状態として互いに当接させておく。
【0051】
また、この建物基礎試験体60を構築した後、試験装置40を構築する。
【0052】
[第二工程]
続いて、上述の本発明の第一実施形態と同様に、載荷段階と除荷段階とを交互に繰り返したときの建物基礎試験体60の支持力を測定する。
【0053】
このとき、除荷段階においては、基礎コンクリート版26と地盤改良体24との間に設けた複数の土圧計30等の出力データを確認しながら、複数のジャッキ48を徐々に収縮させて載荷段階よりも基礎コンクリート版26に付加する載荷荷重を軽減する。
【0054】
そして、基礎コンクリート版26が地盤改良体24の上端部と当接された状態に維持されるように、地盤改良体24の反力(残留変形)が少し残っている状態で複数のジャッキ48を停止させる。
【0055】
この載荷試験方法によれば、第一工程において地盤改良体24の上端部と基礎コンクリート版26とを縁切りした状態で建物基礎試験体60を構築し、この建物基礎試験体60について載荷段階と除荷段階とを交互に繰り返して基礎コンクリート版26の沈下量と載荷荷重を測定する。
【0056】
従って、除荷段階において、沈下した地盤12の方が地盤改良体24に比べて大きくリバウンドしようとしても、地盤改良体24の上端部と基礎コンクリート版26とが縁切り状態とされているので、地盤改良体24から基礎コンクリート版26に抵抗力が作用することを抑制することができる。これにより、その後に載荷段階を再開した場合でも、地盤12に圧縮力が作用した状態での載荷となることを抑制できるので、建物基礎の載荷試験における測定精度を向上させることができる。
【0057】
また、除荷段階において、基礎コンクリート版26に載荷荷重を残すことにより、基礎コンクリート版26を地盤改良体24の上端部と当接した状態に維持する。従って、その後に載荷段階を再開した場合でも、載荷段階の開始から基礎コンクリート版26と地盤改良体24の双方に対して載荷することができる。これにより、建物基礎の載荷試験における測定精度をより一層向上させることができる。
【0058】
さらに、除荷段階において、基礎コンクリート版26と地盤改良体24との間に設けた複数の土圧計30等の出力データを確認し、この出力データに基づいて(地盤改良体24の残留変形に基づいて)、複数のジャッキ48を制御するので、基礎コンクリート版26と地盤改良体24とが実際に当接されているか否か目視にて確認できない状況下においても、基礎コンクリート版26と地盤改良体24とを当接した状態に維持させることができる。
【0059】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法について説明する。
【0060】
本発明の第三実施形態に係る載荷試験方法は、杭及び地盤改良体と、基礎コンクリート版とを有する建物基礎試験体を構築し、これを試験対象として実施するものである。以下、これを説明する。
【0061】
[第一工程]
先ず、図9,図10に示されるように、建物を新築する原位置の地盤12に、建物基礎に見立てた建物基礎試験体70を構築する。
【0062】
すなわち、地盤12に杭22を構築すると共に、この杭22の周囲の地盤に地盤改良杭を連続して構築することにより平面視にて枠状の地盤改良体24を地中に造成する。
【0063】
そして、地盤12上に複数の第一土圧計28を設置すると共に、地盤改良体24上に複数の第二土圧計30を設置する。また、杭22の頭部に例えば歪ゲージ等により構成された軸力計32を設置する。
【0064】
次いで、この杭22及び地盤改良体24の上方の地表に基礎コンクリート版26を形成して、建物基礎試験体70を構築する。
【0065】
また、この場合に、杭22の上端部と基礎コンクリート版26とを縁切り状態として互いに当接させておく。同様に、地盤改良体24の上端部と基礎コンクリート版26とを縁切り状態として互いに当接させておく。なお、杭22及び地盤改良体24は、本発明における基礎体に相当する。
【0066】
また、建物基礎試験体70を構築した後、試験装置40を構築する。
【0067】
[第二工程]
続いて、上述の本発明の第一実施形態と同様に、載荷段階と除荷段階とを交互に繰り返したときの建物基礎試験体70の支持力を測定する。
【0068】
このとき、除荷段階においては、杭22の頭部に設置した軸力計32や、この杭22の頭部に別途設置した図示しない荷重計や、基礎コンクリート版26と地盤改良体24との間に設けた複数の土圧計30等の出力データを確認しながら、複数のジャッキ48を徐々に収縮させて載荷段階よりも基礎コンクリート版26に付加する載荷荷重を軽減する。
【0069】
そして、基礎コンクリート版26が杭22の上端部及び地盤改良体24の上端部とそれぞれ当接された状態に維持されるように、杭22及び地盤改良体24の軸力や反力(残留変形)が少し残っている状態で複数のジャッキ48を停止させる。
【0070】
この載荷試験方法によれば、第一工程において杭22の上端部及び地盤改良体24の上端部と基礎コンクリート版26とを縁切りした状態で建物基礎試験体70を構築し、この建物基礎試験体70について載荷段階と除荷段階とを交互に繰り返して基礎コンクリート版26の沈下量と載荷荷重を測定する。
【0071】
従って、除荷段階において、沈下した地盤12の方が杭22及び地盤改良体24に比べて大きくリバウンドしようとしても、杭22の上端部及び地盤改良体24の上端部と基礎コンクリート版26とがそれぞれ縁切り状態とされているので、杭22及び地盤改良体24から基礎コンクリート版26に抵抗力が作用することを抑制することができる。これにより、その後に載荷段階を再開した場合でも、地盤12に圧縮力が作用した状態での載荷となることを抑制できるので、建物基礎の載荷試験における測定精度を向上させることができる。
【0072】
また、除荷段階において、基礎コンクリート版26に載荷荷重を残すことにより、基礎コンクリート版26を杭22の上端部及び地盤改良体24の上端部と当接した状態に維持する。従って、その後に載荷段階を再開した場合でも、載荷段階の開始から基礎コンクリート版26、杭22、地盤改良体24の全てに対して載荷することができる。これにより、建物基礎の載荷試験における測定精度をより一層向上させることができる。
【0073】
さらに、除荷段階において、杭22の頭部に設置した軸力計32や、この杭22の頭部に別途設置した図示しない荷重計や、基礎コンクリート版26と地盤改良体24との間に設けた複数の土圧計30等の出力データを確認し、この出力データに基づいて(杭22及び地盤改良体24の残留変形に基づいて)、複数のジャッキ48を制御するので、基礎コンクリート版26と杭22及び地盤改良体24とが実際に当接されているか否か目視にて確認できない状況下においても、基礎コンクリート版26と杭22及び地盤改良体24とを当接した状態に維持させることができる。
【0074】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法について説明する。
【0075】
上述の本発明の第一乃至第三実施形態に係る載荷試験方法は、建物を新築する際に原位置の地盤に新たに建物基礎試験体を構築し、これを試験対象として実施されていたが、本発明の第四実施形態に係る載荷試験方法は、既存の建物を建て替える際にこの建物の基礎を利用して建物基礎試験体を構築し、これを試験対象として実施するものである。以下、これを説明する。
【0076】
図6に示されるように、建て替え対象となる建物80の建物基礎84は、地盤82に構築された杭92と、地中に地盤改良を施して造成された地盤改良体94と、杭92及び地盤改良体94の上方の地表に形成された構造物基礎(直接基礎)95とを有している。
【0077】
[第一工程]
先ず、構造物基礎95のうち杭92及び地盤改良体94の周辺部を一定の大きさに切断して基礎コンクリート版96を形成すると共に、各杭92の直上に位置する建物80の柱86の下端部を所定の高さに切除して、杭92と、地盤改良体94と、基礎コンクリート版96とを有する建物基礎試験体90を構築する。なお、杭92及び地盤改良体94が本発明における基礎体に相当し、柱が本発明における反力部に相当する。
【0078】
また、この場合に、杭92の上端部と基礎コンクリート版96とを縁切り状態として互いに当接させておく。同様に、地盤改良体94の上端部と基礎コンクリート版96とを縁切り状態として互いに当接させておく。
【0079】
そして、各柱86の下端部と基礎コンクリート版96との間にジャッキ48をそれぞれ設置する。また、建物基礎試験体90を構築する適宜段階において、基礎コンクリート版96と地盤82との間に複数の土圧計28を設置すると共に、基礎コンクリート版96と地盤改良体94との間に複数の土圧計30を設置する。さらに、杭92の頭部に軸力計32を設置する。
【0080】
また、建物基礎試験体90から十分に離れた位置の地盤に図示しない不動杭をそれぞれ構築し、この一対の不動杭の頭部に不動梁52を水平にした状態で結合する。また、この不動梁52と基礎コンクリート版96との間に変位計54をそれぞれ設置する。
【0081】
[第二工程]
続いて、上述の本発明の第一実施形態と同様に、載荷段階と除荷段階とを交互に繰り返したときの建物基礎試験体90の支持力を測定する。
【0082】
つまり、載荷段階として、ジャッキ48を作動(伸長)させ、柱86に反力をとって基礎コンクリート版96に載荷荷重を付加する。
【0083】
また、除荷段階においては、杭92の頭部に設置した軸力計32や、この杭92の頭部に別途設置した図示しない荷重計や、基礎コンクリート版96と地盤改良体94との間に設けた複数の土圧計30等の出力データを確認しながら、複数のジャッキ48を徐々に収縮させて載荷段階よりも基礎コンクリート版96に付加する載荷荷重を軽減する。
【0084】
そして、基礎コンクリート版96が杭92の上端部及び地盤改良体94の上端部とそれぞれ当接された状態に維持されるように、杭92及び地盤改良体94の軸力や反力(残留変形)が少し残っている状態で複数のジャッキ48を停止させる。
【0085】
この載荷試験方法によれば、第一工程において杭92の上端部及び地盤改良体94の上端部と基礎コンクリート版96とを縁切りした状態で建物基礎試験体90を構築し、この建物基礎試験体90について載荷段階と除荷段階とを交互に繰り返して基礎コンクリート版96の沈下量と載荷荷重を測定する。
【0086】
従って、除荷段階において、沈下した地盤82の方が杭92及び地盤改良体94に比べて大きくリバウンドしようとしても、杭92の上端部及び地盤改良体94の上端部と基礎コンクリート版96とがそれぞれ縁切り状態とされているので、杭92及び地盤改良体94から基礎コンクリート版96に抵抗力が作用することを抑制することができる。これにより、その後に載荷段階を再開した場合でも、地盤12に圧縮力が作用した状態での載荷となることを抑制できるので、建物基礎の載荷試験における測定精度を向上させることができる。
【0087】
また、除荷段階において、基礎コンクリート版96に載荷荷重を残すことにより、基礎コンクリート版96を杭92の上端部及び地盤改良体94の上端部と当接した状態に維持する。従って、その後に載荷段階を再開した場合でも、載荷段階の開始から杭92、地盤改良体94、基礎コンクリート版96の全てに対して載荷することができる。これにより、建物基礎の載荷試験における測定精度をより一層向上させることができる。
【0088】
さらに、除荷段階において、杭92の頭部に設置した軸力計32や、この杭92の頭部に別途設置した図示しない荷重計や、基礎コンクリート版96と地盤改良体94との間に設けた複数の土圧計30等の出力データを確認し、この出力データに基づいて(杭92及び地盤改良体94の残留変形に基づいて)、複数のジャッキ48を制御するので、基礎コンクリート版96と杭92及び地盤改良体94とが実際に当接されているか否か目視にて確認できない状況下においても、基礎コンクリート版96と杭92及び地盤改良体94とを当接した状態に維持させることができる。
【0089】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0090】
20,60,70,90 建物基礎試験体
22,92 杭
24,94 地盤改良体
26,96 基礎コンクリート版
44 上台座(反力部)
48 ジャッキ
86 柱(反力部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物基礎の載荷試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、杭と、直接基礎とを併用したパイルド・ラフト基礎の載荷試験方法が開示されている。この特許文献1に記載の例では、地盤にパイルド・ラフト基礎に見立てたパイルド・ラフト試験体を構築し、このパイルド・ラフト試験体の直接基礎試験盤に載荷荷重を付加してパイルド・ラフト試験体の支持力を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−57380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の例では、杭の頭部と直接基礎試験盤とが構造的に一体化(結合)されている。従って、直接基礎試験盤が沈下されるように直接基礎試験盤に載荷荷重を付加する載荷段階と、直接基礎試験盤から載荷荷重を取り除く除荷段階とを交互に繰り返してこのパイルド・ラフト試験体の支持力を測定する載荷試験を行った場合、次の問題がある。
【0005】
すなわち、杭と地盤の剛性の違いにより、除荷段階においては、沈下した地盤の方が杭に比べてリバウンド量が大きくなるため、杭の抵抗力が引張力となり、直接基礎試験盤に作用し地盤に圧縮力が作用した状態となる。そのため、基礎試験盤が面外に変形し、変位一定とした載荷試験の実施が困難となる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、建物基礎の載荷試験における測定精度を向上できる載荷試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の建物基礎の載荷試験方法は、地中に構築された基礎体の上に当接且つ縁を切った状態で載荷版を設ける第一工程と、前記載荷版が沈下されるように前記載荷版に載荷荷重を付加する載荷段階と、前記載荷段階よりも前記載荷版に付加する載荷荷重を軽減する除荷段階とを交互に行って前記載荷版の沈下量と載荷荷重を測定する第二工程と、を備えている。
【0008】
この載荷試験方法によれば、第一工程において基礎体の上端部と載荷版とを縁切りした状態で建物基礎試験体を構築し、この建物基礎試験体について載荷段階と除荷段階とを交互に繰り返して載荷版の沈下量と載荷荷重を測定する。
【0009】
従って、除荷段階において、沈下した地盤の方が基礎体に比べて大きくリバウンドしようとしても、基礎体の上端部と載荷版とが縁切り状態とされているので、基礎体から載荷版に抵抗力が作用することを抑制することができる。これにより、その後に載荷段階を再開した場合でも、地盤に圧縮力が作用した状態での載荷となることを抑制できるので、載荷版の面外変形を抑制し、建物基礎の載荷試験における測定精度を向上させることができる。
【0010】
請求項2に記載の建物基礎の載荷試験方法は、請求項1に記載の建物基礎の載荷試験方法における前記除荷段階において、前記載荷版が前記基礎体の上端部と当接した状態に維持されるように前記載荷版に載荷荷重を残す方法である。
【0011】
基礎体の上端部と載荷版とが縁切り状態とされている場合に、例えば、除荷段階において載荷版に付加する載荷荷重がゼロとされたときには、沈下した地盤の方が基礎体に比べて大きくリバウンドするため、基礎体の方が載荷版よりも残留変形量が大きくなる。従って、基礎体や載荷版に残留応力が発生し、基礎体の上端部と載荷版とが離間されてしまう。このため、その後に載荷段階を再開したときには、載荷版が基礎体の上端部と当接されるまで載荷版のみに対して載荷したこととなり、建物基礎の載荷試験における測定精度が低下する。
【0012】
これに対し、本発明の載荷試験方法によれば、除荷段階において、載荷版に載荷荷重を残すことにより、載荷版を基礎体の上端部と当接した状態に維持する。従って、その後に載荷段階を再開した場合でも、載荷段階の開始から載荷版と基礎体の双方に対して載荷することができる。これにより、建物基礎の載荷試験における測定精度をより一層向上させることができる。
【0013】
請求項3に記載の建物基礎の載荷試験方法は、請求項2に記載の建物基礎の載荷試験方法における前記載荷段階において、前記載荷版の上方に設置された反力部に反力をとり、前記載荷版の上に設置された複数のジャッキにより、前記載荷版に前記載荷荷重を加え、前記除荷段階において、前記複数のジャッキのうち少なくとも一つのジャッキによって前記載荷荷重を残した状態で、前記複数のジャッキのうち残余のジャッキの盛替えを行い、次いで、前記残余のジャッキによって前記載荷荷重を残した状態で、前記少なくとも一つのジャッキの盛替えを行う方法である。
【0014】
この載荷試験方法によれば、除荷段階において、複数のジャッキのうち少なくとも一つのジャッキと、残余のジャッキとについて交互に盛替えを行うので、載荷版を基礎体の上端部と当接した状態に維持したまま、複数のジャッキの盛替えを行うことができる。
【0015】
請求項4に記載の建物基礎の載荷試験方法は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の建物基礎の載荷試験方法における前記除荷段階において、前記基礎体の残留変形に基づき前記載荷版と前記基礎体を当接した状態に維持させる方法である。
【0016】
この載荷試験方法によれば、基礎体の残留変形に基づくことにより、載荷版と基礎体とが実際に当接されているか否か目視にて確認できない状況下においても、載荷版と基礎体とを当接した状態に維持させることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上詳述したように、本発明によれば、建物基礎の載荷試験における測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第一実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法における載荷段階の実施前の状態を示す正面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法における載荷段階の実施中の状態を示す正面図である。
【図3】図1に示される建物基礎試験体の平面図である。
【図4】図1に示される複数のジャッキと建物基礎試験体との相対的な位置関係を示す平面図である。
【図5】本発明の第一実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法においてジャッキの盛替えを行う順序を説明する図である。
【図6】本発明の第一実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法における載荷段階での荷重サイクルを示す図である。
【図7】本発明の第二実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法における載荷段階の実施前の状態を示す正面図である。
【図8】図7に示される建物基礎試験体の平面図である。
【図9】本発明の第三実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法における載荷段階の実施前の状態を示す正面図である。
【図10】図9に示される建物基礎試験体の平面図である。
【図11】本発明の第四実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法における載荷段階の実施前の状態を示す正面図である。
【図12】縁切り状態とされた杭及び基礎コンクリート版に対して載荷段階と除荷段階とを交互に繰り返した場合の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第一実施形態]
はじめに、本発明の第一実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法について説明する。
【0020】
[第一工程]
先ず、図1に示されるように、建物を新築する原位置の地盤12に、建物基礎(パイルド・ラフト基礎)に見立てた建物基礎試験体20を構築する。
【0021】
すなわち、地中に基礎体としての杭22を構築する。また、地盤12上に複数の土圧計28を設置すると共に、杭22の頭部に例えば歪ゲージ等により構成された軸力計32を設置する。
【0022】
次いで、この杭22の上方の地表に載荷版としての基礎コンクリート版26を形成して、建物基礎試験体20を構築する。また、この場合に、杭22の上端部と基礎コンクリート版26とを縁切り状態として互いに当接させておく。
【0023】
また、建物基礎試験体20を構築した後、この載荷試験方法を実施するための試験装置40を構築する。つまり、下台座46を基礎コンクリート版26の上に配置する。また、図1,図4に示されるように、複数のジャッキ48をこの下台座46の上に縦横にマトリックス状に並べた状態で設置する。また、図1に示されるように、各反力杭42を地盤12に構築すると共に、上台座44を複数のジャッキ48の上に配置し、この上台座44と複数の反力杭42の頭部とを超張力鋼45により結合する。
【0024】
さらに、建物基礎試験体20から十分に離れた位置の地盤に図示しない不動杭をそれぞれ構築し、この一対の不動杭の頭部に不動梁52を水平にした状態で結合する。また、この不動梁52と基礎コンクリート版26との間に変位計54をそれぞれ設置する。
【0025】
[第二工程]
続いて、建物基礎試験体20の支持力を測定する。つまり、この第二工程では、基礎コンクリート版26に載荷荷重を付加することにより、最終的に、基礎コンクリート版26を例えばその幅(1辺の長さ)の1/10以上沈下させる。例えば、基礎コンクリート版26の1辺の長さが4mである場合には、基礎コンクリート版26を元の位置から40cm以上沈下させる。そして、このときの建物基礎試験体20の支持力を測定する。
【0026】
具体的には、先ず、載荷段階として、複数のジャッキ48を作動(伸長)させ、上台座44に反力をとって基礎コンクリート版26に載荷荷重を付加する。
【0027】
また、建物基礎試験体20が元の位置から40cm以上沈下するまでの間に複数のジャッキ48が伸び切り状態となった場合には、除荷段階として、後に詳述する如く、複数のジャッキ48を収縮させて複数のジャッキ48の盛替えを行う。
【0028】
そして、この第二工程では、このようにして載荷段階と除荷段階とを交互に繰り返し、このときに変位計54を用いて基礎コンクリート版26の沈下量を測定すると共に、例えばジャッキ48に設けられた荷重計等を用いて基礎コンクリート版26に付加した載荷荷重を測定する。また、さらに、このときに複数の土圧計28と、軸力計32からの出力データに基づいて、杭22と、基礎コンクリート版26の各支持力の分担率を算出する。
【0029】
ところで、上述の如く、除荷段階において複数のジャッキ48の盛替えを行う際に、複数のジャッキ48を完全に収縮させ、土圧計28に付加する載荷荷重をゼロとした場合には、沈下した地盤12の方が杭22に比べて大きくリバウンドするため、杭22の方が基礎コンクリート版26よりも残留変形量が大きくなる。
【0030】
ここで、図12には、それぞれ独立した杭22、及び基礎コンクリート版26に対して載荷段階と除荷段階とを交互に繰り返した場合の測定結果を示す図が示されている。この図12において、縦軸は、沈下量を示し、横軸は、作用した荷重を示している。また、グラフG1は、独立した杭22のデータを示し、グラフG2は、独立した基礎コンクリート版26のデータを示している。この図より、杭22の方が基礎コンクリート版26よりも残留変形量が大きいことが分かる。
【0031】
従って、上述の如く、除荷段階において基礎コンクリート版26に付加する載荷荷重がゼロとされたときには、杭22の方が基礎コンクリート版26よりも残留変形量が大きくなることに起因して、杭22の上端部と基礎コンクリート版26とが離間されてしまう。このため、その後に載荷段階を再開したときには、基礎コンクリート版26が杭22の上端部と当接されるまで基礎コンクリート版26のみに対して載荷したこととなり、建物基礎の載荷試験における測定精度が低下する。
【0032】
そこで、この載荷試験方法では、上述の除荷段階において、次の要領で複数のジャッキ48の盛替えを行う。
【0033】
すなわち、杭22の頭部に設置した軸力計32や、この杭22の頭部に別途設置した図示しない荷重計等の出力データを確認しながら、複数のジャッキ48を徐々に収縮させて載荷段階よりも基礎コンクリート版26に付加する載荷荷重を軽減する。
【0034】
そして、基礎コンクリート版26が杭22の上端部と当接された状態に維持されるように、杭22の軸力(残留変形)が少し残っている状態で複数のジャッキ48を停止させる。
【0035】
続いて、図5(A)に示されるように、複数のジャッキ48のうち第一群のジャッキ48Aを停止させた状態で(第一群のジャッキ48Aによって基礎コンクリート版26を鉛直方向上側から支持した状態で)、複数のジャッキ48のうち残余の第二群のジャッキ48Bを収縮状態とさせる。次いで、図5(B)に示されるように、この収縮状態にある第二群のジャッキ48Bと上台座44との間にプレート49Bを挿入し、この第二群のジャッキ48Bの盛替えを行う。
【0036】
続いて、図5(C)に示されるように、この盛替えを行った第二群のジャッキ48Bを徐々に伸長させ、この第二群のジャッキ48Bがプレート49Bを介して上台座44に当接した段階で第二群のジャッキ48Bを停止させる。
【0037】
そして、図5(D)に示されるように、プレート49Bを介して第二群のジャッキ48Bを上台座44に当接させた状態で(第二群のジャッキ48Bによって基礎コンクリート版26を鉛直方向上側から支持した状態で)、第一群のジャッキ48Aを収縮状態とさせる。次いで、図5(E)に示されるように、この収縮状態にある第一群のジャッキ48Aと上台座44との間にプレート49Aを挿入し、この第一群のジャッキ48Aの盛替えを行う。
【0038】
続いて、図5(F)に示されるように、この盛替えを行った第一群のジャッキ48Aを徐々に伸長させ、この第一群のジャッキ48Aがプレート49Aを介して上台座44に当接した段階で第一群のジャッキ48Aを停止させる。このように、除荷段階においては、第一群のジャッキ48Aと第二群のジャッキ48Bとを交互に盛替えする。
【0039】
また、図6には、この第二工程における荷重サイクルの一例が示されている。この図6において、縦軸は、基礎コンクリート版26に作用した総荷重を示し、横軸は、経過した時間を示している。
【0040】
この図6に示されるように、除荷段階においては、基礎コンクリート版26に付加する載荷荷重を完全にゼロにするのではなく、上述の如く、杭22の軸力(残留変形)が少し残っている状態とする。そして、これにより、基礎コンクリート版26を鉛直方向上側から支持した状態として、基礎コンクリート版26を杭22の上端部と当接した状態に維持する。
【0041】
この載荷試験方法によれば、第一工程において杭22の上端部と基礎コンクリート版26とを縁切りした状態で建物基礎試験体20を構築し、この建物基礎試験体20について載荷段階と除荷段階とを交互に繰り返して基礎コンクリート版26の沈下量と載荷荷重を測定する。
【0042】
従って、除荷段階において、沈下した地盤12の方が杭22に比べて大きくリバウンドしようとしても、杭22の上端部と基礎コンクリート版26とが縁切り状態とされているので、杭22から基礎コンクリート版26に抵抗力が作用することを抑制することができる。これにより、その後に載荷段階を再開した場合でも、地盤12に圧縮力が作用した状態での載荷となることを抑制できるので、建物基礎の載荷試験における測定精度を向上させることができる。
【0043】
また、除荷段階において、基礎コンクリート版26に載荷荷重を残すことにより、基礎コンクリート版26を杭22の上端部と当接した状態に維持する。従って、その後に載荷段階を再開した場合でも、載荷段階の開始から基礎コンクリート版26と杭22の双方に対して載荷することができる。これにより、建物基礎の載荷試験における測定精度をより一層向上させることができる。
【0044】
さらに、除荷段階において、杭22の頭部に設置した軸力計32や、この杭22の頭部に別途設置した図示しない荷重計等の出力データを確認し、この出力データに基づいて(杭22の残留変形に基づいて)、複数のジャッキ48を制御するので、基礎コンクリート版26と杭22とが実際に当接されているか否か目視にて確認できない状況下においても、基礎コンクリート版26と杭22とを当接した状態に維持させることができる。
【0045】
なお、この載荷試験方法では、基礎コンクリート版26の代わりに、剛板等を用いても良い。
【0046】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法について説明する。
【0047】
上述の本発明の第一実施形態に係る載荷試験方法は、杭と基礎コンクリート版とを有する建物基礎試験体を構築し、これを試験対象として実施されていたが、本発明の第二実施形態に係る載荷試験方法は、基礎コンクリート版と地盤改良体とを有する建物基礎試験体を構築し、これを試験対象として実施するものである。以下、これを説明する。
【0048】
[第一工程]
先ず、図7,図8に示されるように、建物を新築する原位置の地盤12に、建物基礎に見立てた建物基礎試験体60を構築する。
【0049】
すなわち、地盤12を改良することにより平面視にて枠状の基礎体としての地盤改良体24を地中に造成する。また、地盤12上に複数の土圧計28を設置すると共に、地盤改良体24上に複数の土圧計30を設置する。
【0050】
次いで、この地盤改良体24の上方の地表に基礎コンクリート版26を形成して、建物基礎試験体60を構築する。また、この場合に、地盤改良体24の上端部と基礎コンクリート版26とを縁切り状態として互いに当接させておく。
【0051】
また、この建物基礎試験体60を構築した後、試験装置40を構築する。
【0052】
[第二工程]
続いて、上述の本発明の第一実施形態と同様に、載荷段階と除荷段階とを交互に繰り返したときの建物基礎試験体60の支持力を測定する。
【0053】
このとき、除荷段階においては、基礎コンクリート版26と地盤改良体24との間に設けた複数の土圧計30等の出力データを確認しながら、複数のジャッキ48を徐々に収縮させて載荷段階よりも基礎コンクリート版26に付加する載荷荷重を軽減する。
【0054】
そして、基礎コンクリート版26が地盤改良体24の上端部と当接された状態に維持されるように、地盤改良体24の反力(残留変形)が少し残っている状態で複数のジャッキ48を停止させる。
【0055】
この載荷試験方法によれば、第一工程において地盤改良体24の上端部と基礎コンクリート版26とを縁切りした状態で建物基礎試験体60を構築し、この建物基礎試験体60について載荷段階と除荷段階とを交互に繰り返して基礎コンクリート版26の沈下量と載荷荷重を測定する。
【0056】
従って、除荷段階において、沈下した地盤12の方が地盤改良体24に比べて大きくリバウンドしようとしても、地盤改良体24の上端部と基礎コンクリート版26とが縁切り状態とされているので、地盤改良体24から基礎コンクリート版26に抵抗力が作用することを抑制することができる。これにより、その後に載荷段階を再開した場合でも、地盤12に圧縮力が作用した状態での載荷となることを抑制できるので、建物基礎の載荷試験における測定精度を向上させることができる。
【0057】
また、除荷段階において、基礎コンクリート版26に載荷荷重を残すことにより、基礎コンクリート版26を地盤改良体24の上端部と当接した状態に維持する。従って、その後に載荷段階を再開した場合でも、載荷段階の開始から基礎コンクリート版26と地盤改良体24の双方に対して載荷することができる。これにより、建物基礎の載荷試験における測定精度をより一層向上させることができる。
【0058】
さらに、除荷段階において、基礎コンクリート版26と地盤改良体24との間に設けた複数の土圧計30等の出力データを確認し、この出力データに基づいて(地盤改良体24の残留変形に基づいて)、複数のジャッキ48を制御するので、基礎コンクリート版26と地盤改良体24とが実際に当接されているか否か目視にて確認できない状況下においても、基礎コンクリート版26と地盤改良体24とを当接した状態に維持させることができる。
【0059】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法について説明する。
【0060】
本発明の第三実施形態に係る載荷試験方法は、杭及び地盤改良体と、基礎コンクリート版とを有する建物基礎試験体を構築し、これを試験対象として実施するものである。以下、これを説明する。
【0061】
[第一工程]
先ず、図9,図10に示されるように、建物を新築する原位置の地盤12に、建物基礎に見立てた建物基礎試験体70を構築する。
【0062】
すなわち、地盤12に杭22を構築すると共に、この杭22の周囲の地盤に地盤改良杭を連続して構築することにより平面視にて枠状の地盤改良体24を地中に造成する。
【0063】
そして、地盤12上に複数の第一土圧計28を設置すると共に、地盤改良体24上に複数の第二土圧計30を設置する。また、杭22の頭部に例えば歪ゲージ等により構成された軸力計32を設置する。
【0064】
次いで、この杭22及び地盤改良体24の上方の地表に基礎コンクリート版26を形成して、建物基礎試験体70を構築する。
【0065】
また、この場合に、杭22の上端部と基礎コンクリート版26とを縁切り状態として互いに当接させておく。同様に、地盤改良体24の上端部と基礎コンクリート版26とを縁切り状態として互いに当接させておく。なお、杭22及び地盤改良体24は、本発明における基礎体に相当する。
【0066】
また、建物基礎試験体70を構築した後、試験装置40を構築する。
【0067】
[第二工程]
続いて、上述の本発明の第一実施形態と同様に、載荷段階と除荷段階とを交互に繰り返したときの建物基礎試験体70の支持力を測定する。
【0068】
このとき、除荷段階においては、杭22の頭部に設置した軸力計32や、この杭22の頭部に別途設置した図示しない荷重計や、基礎コンクリート版26と地盤改良体24との間に設けた複数の土圧計30等の出力データを確認しながら、複数のジャッキ48を徐々に収縮させて載荷段階よりも基礎コンクリート版26に付加する載荷荷重を軽減する。
【0069】
そして、基礎コンクリート版26が杭22の上端部及び地盤改良体24の上端部とそれぞれ当接された状態に維持されるように、杭22及び地盤改良体24の軸力や反力(残留変形)が少し残っている状態で複数のジャッキ48を停止させる。
【0070】
この載荷試験方法によれば、第一工程において杭22の上端部及び地盤改良体24の上端部と基礎コンクリート版26とを縁切りした状態で建物基礎試験体70を構築し、この建物基礎試験体70について載荷段階と除荷段階とを交互に繰り返して基礎コンクリート版26の沈下量と載荷荷重を測定する。
【0071】
従って、除荷段階において、沈下した地盤12の方が杭22及び地盤改良体24に比べて大きくリバウンドしようとしても、杭22の上端部及び地盤改良体24の上端部と基礎コンクリート版26とがそれぞれ縁切り状態とされているので、杭22及び地盤改良体24から基礎コンクリート版26に抵抗力が作用することを抑制することができる。これにより、その後に載荷段階を再開した場合でも、地盤12に圧縮力が作用した状態での載荷となることを抑制できるので、建物基礎の載荷試験における測定精度を向上させることができる。
【0072】
また、除荷段階において、基礎コンクリート版26に載荷荷重を残すことにより、基礎コンクリート版26を杭22の上端部及び地盤改良体24の上端部と当接した状態に維持する。従って、その後に載荷段階を再開した場合でも、載荷段階の開始から基礎コンクリート版26、杭22、地盤改良体24の全てに対して載荷することができる。これにより、建物基礎の載荷試験における測定精度をより一層向上させることができる。
【0073】
さらに、除荷段階において、杭22の頭部に設置した軸力計32や、この杭22の頭部に別途設置した図示しない荷重計や、基礎コンクリート版26と地盤改良体24との間に設けた複数の土圧計30等の出力データを確認し、この出力データに基づいて(杭22及び地盤改良体24の残留変形に基づいて)、複数のジャッキ48を制御するので、基礎コンクリート版26と杭22及び地盤改良体24とが実際に当接されているか否か目視にて確認できない状況下においても、基礎コンクリート版26と杭22及び地盤改良体24とを当接した状態に維持させることができる。
【0074】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法について説明する。
【0075】
上述の本発明の第一乃至第三実施形態に係る載荷試験方法は、建物を新築する際に原位置の地盤に新たに建物基礎試験体を構築し、これを試験対象として実施されていたが、本発明の第四実施形態に係る載荷試験方法は、既存の建物を建て替える際にこの建物の基礎を利用して建物基礎試験体を構築し、これを試験対象として実施するものである。以下、これを説明する。
【0076】
図6に示されるように、建て替え対象となる建物80の建物基礎84は、地盤82に構築された杭92と、地中に地盤改良を施して造成された地盤改良体94と、杭92及び地盤改良体94の上方の地表に形成された構造物基礎(直接基礎)95とを有している。
【0077】
[第一工程]
先ず、構造物基礎95のうち杭92及び地盤改良体94の周辺部を一定の大きさに切断して基礎コンクリート版96を形成すると共に、各杭92の直上に位置する建物80の柱86の下端部を所定の高さに切除して、杭92と、地盤改良体94と、基礎コンクリート版96とを有する建物基礎試験体90を構築する。なお、杭92及び地盤改良体94が本発明における基礎体に相当し、柱が本発明における反力部に相当する。
【0078】
また、この場合に、杭92の上端部と基礎コンクリート版96とを縁切り状態として互いに当接させておく。同様に、地盤改良体94の上端部と基礎コンクリート版96とを縁切り状態として互いに当接させておく。
【0079】
そして、各柱86の下端部と基礎コンクリート版96との間にジャッキ48をそれぞれ設置する。また、建物基礎試験体90を構築する適宜段階において、基礎コンクリート版96と地盤82との間に複数の土圧計28を設置すると共に、基礎コンクリート版96と地盤改良体94との間に複数の土圧計30を設置する。さらに、杭92の頭部に軸力計32を設置する。
【0080】
また、建物基礎試験体90から十分に離れた位置の地盤に図示しない不動杭をそれぞれ構築し、この一対の不動杭の頭部に不動梁52を水平にした状態で結合する。また、この不動梁52と基礎コンクリート版96との間に変位計54をそれぞれ設置する。
【0081】
[第二工程]
続いて、上述の本発明の第一実施形態と同様に、載荷段階と除荷段階とを交互に繰り返したときの建物基礎試験体90の支持力を測定する。
【0082】
つまり、載荷段階として、ジャッキ48を作動(伸長)させ、柱86に反力をとって基礎コンクリート版96に載荷荷重を付加する。
【0083】
また、除荷段階においては、杭92の頭部に設置した軸力計32や、この杭92の頭部に別途設置した図示しない荷重計や、基礎コンクリート版96と地盤改良体94との間に設けた複数の土圧計30等の出力データを確認しながら、複数のジャッキ48を徐々に収縮させて載荷段階よりも基礎コンクリート版96に付加する載荷荷重を軽減する。
【0084】
そして、基礎コンクリート版96が杭92の上端部及び地盤改良体94の上端部とそれぞれ当接された状態に維持されるように、杭92及び地盤改良体94の軸力や反力(残留変形)が少し残っている状態で複数のジャッキ48を停止させる。
【0085】
この載荷試験方法によれば、第一工程において杭92の上端部及び地盤改良体94の上端部と基礎コンクリート版96とを縁切りした状態で建物基礎試験体90を構築し、この建物基礎試験体90について載荷段階と除荷段階とを交互に繰り返して基礎コンクリート版96の沈下量と載荷荷重を測定する。
【0086】
従って、除荷段階において、沈下した地盤82の方が杭92及び地盤改良体94に比べて大きくリバウンドしようとしても、杭92の上端部及び地盤改良体94の上端部と基礎コンクリート版96とがそれぞれ縁切り状態とされているので、杭92及び地盤改良体94から基礎コンクリート版96に抵抗力が作用することを抑制することができる。これにより、その後に載荷段階を再開した場合でも、地盤12に圧縮力が作用した状態での載荷となることを抑制できるので、建物基礎の載荷試験における測定精度を向上させることができる。
【0087】
また、除荷段階において、基礎コンクリート版96に載荷荷重を残すことにより、基礎コンクリート版96を杭92の上端部及び地盤改良体94の上端部と当接した状態に維持する。従って、その後に載荷段階を再開した場合でも、載荷段階の開始から杭92、地盤改良体94、基礎コンクリート版96の全てに対して載荷することができる。これにより、建物基礎の載荷試験における測定精度をより一層向上させることができる。
【0088】
さらに、除荷段階において、杭92の頭部に設置した軸力計32や、この杭92の頭部に別途設置した図示しない荷重計や、基礎コンクリート版96と地盤改良体94との間に設けた複数の土圧計30等の出力データを確認し、この出力データに基づいて(杭92及び地盤改良体94の残留変形に基づいて)、複数のジャッキ48を制御するので、基礎コンクリート版96と杭92及び地盤改良体94とが実際に当接されているか否か目視にて確認できない状況下においても、基礎コンクリート版96と杭92及び地盤改良体94とを当接した状態に維持させることができる。
【0089】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0090】
20,60,70,90 建物基礎試験体
22,92 杭
24,94 地盤改良体
26,96 基礎コンクリート版
44 上台座(反力部)
48 ジャッキ
86 柱(反力部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に構築された基礎体の上に当接且つ縁を切った状態で載荷版を設ける第一工程と、
前記載荷版が沈下されるように前記載荷版に載荷荷重を付加する載荷段階と、前記載荷段階よりも前記載荷版に付加する載荷荷重を軽減する除荷段階とを交互に行って前記載荷版の沈下量と載荷荷重を測定する第二工程と、
を備えた建物基礎の載荷試験方法。
【請求項2】
前記除荷段階において、前記載荷版が前記基礎体の上端部と当接した状態に維持されるように前記載荷版に載荷荷重を残す、
請求項1に記載の建物基礎の載荷試験方法。
【請求項3】
前記載荷段階において、前記載荷版の上方に設置された反力部に反力をとり、前記載荷版の上に設置された複数のジャッキにより、前記載荷版に前記載荷荷重を加え、
前記除荷段階において、前記複数のジャッキのうち少なくとも一つのジャッキによって前記載荷荷重を残した状態で、前記複数のジャッキのうち残余のジャッキの盛替えを行い、次いで、前記残余のジャッキによって前記載荷荷重を残した状態で、前記少なくとも一つのジャッキの盛替えを行う、
請求項2に記載の建物基礎の載荷試験方法。
【請求項4】
前記除荷段階において、前記基礎体の残留変形に基づき前記載荷版と前記基礎体を当接した状態に維持させる、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の建物基礎の載荷試験方法。
【請求項1】
地中に構築された基礎体の上に当接且つ縁を切った状態で載荷版を設ける第一工程と、
前記載荷版が沈下されるように前記載荷版に載荷荷重を付加する載荷段階と、前記載荷段階よりも前記載荷版に付加する載荷荷重を軽減する除荷段階とを交互に行って前記載荷版の沈下量と載荷荷重を測定する第二工程と、
を備えた建物基礎の載荷試験方法。
【請求項2】
前記除荷段階において、前記載荷版が前記基礎体の上端部と当接した状態に維持されるように前記載荷版に載荷荷重を残す、
請求項1に記載の建物基礎の載荷試験方法。
【請求項3】
前記載荷段階において、前記載荷版の上方に設置された反力部に反力をとり、前記載荷版の上に設置された複数のジャッキにより、前記載荷版に前記載荷荷重を加え、
前記除荷段階において、前記複数のジャッキのうち少なくとも一つのジャッキによって前記載荷荷重を残した状態で、前記複数のジャッキのうち残余のジャッキの盛替えを行い、次いで、前記残余のジャッキによって前記載荷荷重を残した状態で、前記少なくとも一つのジャッキの盛替えを行う、
請求項2に記載の建物基礎の載荷試験方法。
【請求項4】
前記除荷段階において、前記基礎体の残留変形に基づき前記載荷版と前記基礎体を当接した状態に維持させる、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の建物基礎の載荷試験方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−17233(P2011−17233A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164245(P2009−164245)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】
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