説明

建物基礎の載荷試験方法

【課題】杭と、地盤改良体と、直接基礎とを有する建物基礎の載荷試験方法を提供する。
【解決手段】本発明の建物基礎の載荷試験方法は、地中に構築された杭22、地盤12を改良した地盤改良体24、及び、地盤12の上に、基礎コンクリート版26を設ける第一工程と、基礎コンクリート版26に載荷荷重を付加して基礎コンクリート版26の沈下量と載荷荷重を測定する第二工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物基礎の載荷試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、杭と、直接基礎とを併用したパイルド・ラフト基礎の載荷試験方法が開示されている。この特許文献1に記載の例では、地盤にパイルド・ラフト基礎に見立てたパイルド・ラフト試験体を構築し、このパイルド・ラフト試験体に載荷荷重を付加してパイルド・ラフト試験体の支持力を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−57380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、杭と直接基礎に加えて、これらと地盤改良体とを併用した建物基礎についての載荷試験方法は見聞されない。
【0005】
そこで、本発明は、杭と、地盤改良体と、直接基礎とを有する建物基礎の支持力を実測することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の建物基礎の載荷試験方法は、地中に構築された杭、地盤を改良した地盤改良体、及び、地盤の上に、載荷版を設ける第一工程と、前記載荷版に載荷荷重を付加して前記載荷版の沈下量と載荷荷重を測定する第二工程と、を備えている。
【0007】
この載荷試験方法によれば、地中に構築された杭、地盤を改良した地盤改良体、及び、地盤の上に載荷版を設けて、これらからなる建物基礎試験体を建物基礎に見立てて原位置の地盤に構築し、この建物基礎試験体について実際に載荷試験を行う。このため、この原位置において建物基礎の支持力を実測することができる。
【0008】
また、前記課題を解決するために、請求項2に記載の建物基礎の載荷試験方法は、地中に構築された杭、地盤を改良した地盤改良体、及び、地盤の上に構築された構造物基礎の一部を一定の大きさに切断して載荷版とする第一工程と、前記載荷版に載荷荷重を付加して前記載荷版の沈下量と載荷荷重を測定する第二工程と、を備えている。
【0009】
この載荷試験方法によれば、地中に構築された杭、地盤を改良した地盤改良体、及び、地盤の上に構築された構造物基礎の一部を一定の大きさに切断して載荷版とし、これらからなる建物基礎試験体について建物基礎に見立てて原位置の地盤において実際に載荷試験を行う。このため、この原位置において建物基礎の支持力を実測することができる。
【0010】
請求項3に記載の建物基礎の載荷試験方法は、請求項1又は請求項2に記載の建物基礎の載荷試験方法における前記第一工程において、前記載荷版と地盤との間に第一土圧計を設置すると共に、前記載荷版と前記地盤改良体との間に第二土圧計を設置し、且つ、前記杭に軸力計を設置し、前記第二工程において、前記軸力計、前記第一土圧計、前記第二土圧計の各出力データに基づいて、前記杭、前記地盤改良体、及び、前記載荷版の支持力の分担率を測定する方法である。
【0011】
この載荷試験方法によれば、杭、地盤改良体、及び、載荷版の支持力の分担率を測定することにより、この原位置の地盤における杭と、地盤改良体と、直接基礎との間の所謂相互作用を把握することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、原位置において建物基礎の支持力を実測することができる。また、この原位置の地盤における杭と、地盤改良体と、直接基礎との間の所謂相互作用を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第一実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法における第二工程の実施前の状態を示す正面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法における第二工程の実施中の状態を示す正面図である。
【図3】図1に示される建物基礎試験体の平面図である。
【図4】本発明の第一実施形態に係る載荷試験方法における建物基礎試験体の変形例を示す平面図である。
【図5】本発明の第一実施形態に係る載荷試験方法における建物基礎試験体の変形例を示す平面図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法における第二工程の実施前の状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第一実施形態]
はじめに、本発明の第一実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法について説明する。
【0015】
[第一工程]
先ず、図1,図3に示されるように、建物を新築する原位置の地盤12に、建物基礎に見立てた建物基礎試験体20を構築する。
【0016】
すなわち、地盤12に杭22を構築すると共に、この杭22の周囲の地盤に地盤改良杭を連続して構築することにより平面視にて枠状の地盤改良体24を地中に造成する。
【0017】
そして、地盤12上に複数の第一土圧計28を設置すると共に、地盤改良体24上に複数の第二土圧計30を設置する。また、杭22の頭部に例えば歪ゲージ等により構成された軸力計32を設置する。
【0018】
次いで、この杭22及び地盤改良体24の上方の地表に載荷版としての基礎コンクリート版26を形成して、建物基礎試験体20を構築する。
【0019】
なお、この場合に、杭22の頭部と基礎コンクリート版26とを縁切りしても良く、構造的に一体化しても良い。同様に、地盤改良体24の上部と基礎コンクリート版26とを縁切りしても良く、構造的に一体化しても良い。
【0020】
また、建物基礎試験体20を構築した後、この載荷試験方法を実施するための試験装置40を構築する。つまり、下台座46を基礎コンクリート版26の上に配置し、複数のジャッキ48をこの下台座46の上に縦横にマトリックス状に並べた状態で設置する。また、各反力杭42を地盤12に構築すると共に、上台座44を複数のジャッキ48の上に配置し、この上台座44と複数の反力杭42の頭部とを超張力鋼45により結合する。
【0021】
さらに、建物基礎試験体20から十分に離れた位置の地盤に図示しない不動杭をそれぞれ構築し、この一対の不動杭の頭部に不動梁52を水平にした状態で結合する。また、この不動梁52と基礎コンクリート版26との間に変位計54をそれぞれ設置する。
【0022】
[第二工程]
続いて、建物基礎試験体20の支持力を測定する。すなわち、複数のジャッキ48を作動(伸長)させ、上台座44に反力をとって基礎コンクリート版26に載荷荷重を付加する。
【0023】
そして、このときに変位計54を用いて基礎コンクリート版26の沈下量を測定すると共に、例えばジャッキ48に設けられた荷重計等を用いて基礎コンクリート版26に付加した載荷荷重を測定する。また、さらに、このときに複数の第一土圧計28及び第二土圧計30と、軸力計32からの出力データに基づいて、杭22と、地盤改良体24と、基礎コンクリート版26の各支持力の分担率を算出する。
【0024】
なお、この載荷試験では、基礎コンクリート版26に載荷荷重を付加することにより、最終的に、基礎コンクリート版26を例えばその幅(1辺の長さ)の1/10程度まで沈下させる。
【0025】
つまり、例えば、基礎コンクリート版26の1辺の長さが4mである場合には、基礎コンクリート版26を元の位置から40cm沈下させる。そして、このときの各出力データを測定する。
【0026】
また、基礎コンクリート版26が元の位置から40cm沈下するまでの間に複数のジャッキ48が伸び切り状態となった場合には、この複数のジャッキ48と上台座44との間にプレートを入れ、この複数のジャッキ48の盛替えを行う。
【0027】
この載荷試験方法によれば、既存の建物を建て替える原位置の地盤12に建物基礎に見立てた建物基礎試験体20を構築し、この建物基礎試験体20について実際に載荷試験を行う。このため、この原位置において建物基礎の支持力を実測することができる。
【0028】
また、杭22、地盤改良体24、及び、基礎コンクリート版26の支持力の分担率を測定することにより、この原位置の地盤12における杭と、地盤改良体と、直接基礎との間の所謂相互作用を把握することができる。
【0029】
従って、この試験によって得られたデータを利用して建物基礎の設計を行えば、この建物基礎について無駄の無い経済的な設計を行うことができる。
【0030】
なお、この載荷試験方法では、図3に示されるように、基礎コンクリート版26と、この基礎コンクリート版26の中心部に構築された杭22と、この杭22の周囲を囲う平面視枠状に構成された地盤改良体24とを有する建物基礎試験体20を構築し、これを試験対象としていたが、その他にも、種々の形態の建物基礎試験体を構築し、これを試験対象とすることが可能である。
【0031】
例えば、図4に示されるように、基礎コンクリート版66と、この基礎コンクリート版66の四隅に構築された複数の杭62と、基礎コンクリート版66の中心部にて交差する十字状に構成された地盤改良体64とを有する建物基礎試験体60を構築し、これを試験対象としても良い。
【0032】
また、図5に示されるように、基礎コンクリート版76と、格子状に構成された地盤改良体74と、この地盤改良体74の隙間に構築された複数の杭72とを有する建物基礎試験体70を構築し、これを試験対象としても良い。
【0033】
また、この載荷試験方法では、基礎コンクリート版26の代わりに、剛板等を用いても良い。
【0034】
また、この載荷試験方法では、ジャッキ48を用いて建物基礎試験体20に載荷荷重を加えていたが、その他の方式により建物基礎試験体20に載荷荷重を加えても良い。
【0035】
[第二実施形態]
次に、本発明の第二実施形態に係る建物基礎の載荷試験方法について説明する。
【0036】
上述の本発明の第一実施形態に係る載荷試験方法は、建物を新築する際に原位置の地盤に新たに建物基礎試験体を構築し、これを試験対象として実施されていたが、本発明の第二実施形態に係る載荷試験方法は、既存の建物を建て替える際にこの建物の建物基礎を利用して建物基礎試験体を構築し、これを試験対象として実施するものである。以下、これを説明する。
【0037】
なお、図6に示されるように、建て替え対象となる建物80の建物基礎84は、地盤82に構築された複数の杭92と、地中に地盤改良を施して造成された地盤改良体94と、杭92及び地盤改良体94の上方の地表に形成された構造物基礎(直接基礎)95とを有している。
【0038】
[第一工程]
先ず、構造物基礎95のうち杭92及び地盤改良体94の周辺部を一定の大きさに切断して載荷版としての基礎コンクリート版96を形成すると共に、杭92の直上に位置する建物80の柱86の下端部を所定の高さに切除して、杭92と、地盤改良体94と、基礎コンクリート版96とを有する建物基礎試験体90を構築する。
【0039】
そして、柱86の下端部と基礎コンクリート版96との間にジャッキ48を設置する。また、建物基礎試験体90を構築する適宜段階において、基礎コンクリート版96と地盤82との間に複数の第一土圧計28を設置すると共に、基礎コンクリート版96と地盤改良体94との間に複数の第二土圧計30を設置する。さらに、杭92の頭部に軸力計32を設置する。
【0040】
また、建物基礎試験体90から十分に離れた位置の地盤に図示しない不動杭をそれぞれ構築し、この一対の不動杭の頭部に不動梁52を水平にした状態で結合する。また、この不動梁52と基礎コンクリート版96との間に変位計54をそれぞれ設置する。
【0041】
[第二工程]
続いて、ジャッキ48を作動(伸長)させ、柱86に反力をとって基礎コンクリート版96に載荷荷重を付加する。
【0042】
そして、このときに変位計54に基づいて基礎コンクリート版96の沈下量を測定すると共に、例えばジャッキ48に設けられた荷重計等に基づいて基礎コンクリート版96に付加した載荷荷重を測定する。また、さらに、このときに複数の第一土圧計28及び第二土圧計30と、軸力計32からの出力データに基づいて、杭92と、地盤改良体94と、基礎コンクリート版96の各支持力の分担率を算出する。
【0043】
この載荷試験方法によれば、既存の建物80を建て替える原位置の地盤82に建物基礎に見立てた建物基礎試験体90を建物基礎84を利用して構築し、この建物基礎試験体90について実際に載荷試験を行う。このため、この原位置において建物基礎の支持力を実測することができる。
【0044】
また、杭92、地盤改良体94、及び、基礎コンクリート版96の支持力の分担率を測定することにより、この原位置の地盤82における杭と、地盤改良体と、直接基礎との間の所謂相互作用を把握することができる。
【0045】
従って、この試験によって得られたデータを利用して建物基礎の設計を行えば、この建物基礎について無駄の無い経済的な設計を行うことができる。
【0046】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
20,60,70,90 建物基礎試験体
22,62,72,92 杭
24,64,74,94 地盤改良体
26,66,76,96 基礎コンクリート版
28 第一土圧計
30 第二土圧計
32 軸力計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に構築された杭、地盤を改良した地盤改良体、及び、地盤の上に、載荷版を設ける第一工程と、
前記載荷版に載荷荷重を付加して前記載荷版の沈下量と載荷荷重を測定する第二工程と、
を備えた建物基礎の載荷試験方法。
【請求項2】
地中に構築された杭、地盤を改良した地盤改良体、及び、地盤の上に構築された構造物基礎の一部を一定の大きさに切断して載荷版とする第一工程と、
前記載荷版に載荷荷重を付加して前記載荷版の沈下量と載荷荷重を測定する第二工程と、
を備えた建物基礎の載荷試験方法。
【請求項3】
前記第一工程において、前記載荷版と地盤との間に第一土圧計を設置すると共に、前記載荷版と前記地盤改良体との間に第二土圧計を設置し、且つ、前記杭に軸力計を設置し、
前記第二工程において、前記軸力計、前記第一土圧計、前記第二土圧計の各出力データに基づいて、前記杭、前記地盤改良体、及び、前記載荷版の支持力の分担率を測定する、
請求項1又は請求項2に記載の建物基礎の載荷試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−17234(P2011−17234A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164246(P2009−164246)
【出願日】平成21年7月10日(2009.7.10)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】