説明

建物外観の劣化診断方法及び建物外観の劣化診断システム

【課題】上記事実を考慮して成されたもので、建物全体の見栄え耐久性の寿命を定義付けして、建物外観の劣化診断を行うことを目的とする。
【解決手段】建物外観部材を色相毎にグループ分けし、各グループのベース色の部材については、初期状態に対する経年変化後の色差を測定し、測定した色差が+6(=ΔE)以上か否かを判断することにより、ベース色の部材の劣化診断を行う。また、ベース色以外の部材については、初期状態と経年変化後の色差を算出し、算出した色差と、ベース色の部材の色差との差が+6(=ΔE)以上か否かを判断することにより劣化診断を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物外観の劣化診断方法及び建物外観の劣化診断システムにかかり、特に、建物の見栄え耐久性の定義付けを行い建物外観の劣化診断を行う建物外観の劣化診断方法及び建物外観の劣化診断システムに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅の劣化状況を診断するシステムとしては、例えば、特許文献1に記載の技術が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、アルカリ性の外壁素材の内部の状況及び変質具合、構造木材が水分を含んでいる具合、外壁のひび割れ具合、外壁塗膜表層の劣化具合、外壁塗膜の残り具合、外壁素材の浮き具合、外壁の剥落・変形具合、外壁の汚れ具合、外壁のコケ・カビの繁殖具合、外壁の変色・退色・色ムラ具合、外壁塗膜のはがれ具合、シーリング材の傷み具合、屋根の劣化具合、鉄部材の劣化具合の各項目を選定し、各項目毎に測定機を使用して得られた診断結果をコンピュータにデータ入力して個別結果表に表示することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−072868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、劣化を判断するための具体的な基準が明確化されていないため、改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して成されたもので、建物全体の見栄え耐久性の寿命を定義付けして、建物外観の劣化診断を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の建物外観の劣化診断方法は、色差を測定する測定手段によって、建物外観部材の初期状態に対する経年変化後の色差を測定し、予め定めた色差までを許容限度として、測定した色差が前記許容限度以上の場合に、建物外観部材が劣化したと判断することを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、測定手段によって、建物外観部材の初期状態(例えば、新築時の状態)に対する経年変化後の色差を測定する。
【0009】
そして、予め定めた色差までを許容限度として、測定した色差が許容限度以上の場合に、建物外観部材が劣化したと判断する。例えば、許容限度としては、米国標準局の色差の評価を用いて、色差が6以上を寿命と判断する。これによって、各建物外観部材の劣化を診断することができる。従って、建物全体の見栄え耐久性の寿命を定義付けして、建物外観の劣化診断を行うことができる。
【0010】
建物外観部材は、請求項2に記載の発明のように、所定の範疇毎に複数の集合とし、各集合毎に色差を測定して、各集合毎に予め定めた許容限度に基づいて劣化を判断するようにしてもよい。
【0011】
また、請求項3に記載の発明のように、建物外観を構成する複数の建物外観部材間の色差(色むら)が所定の色差以上の場合に、建物全体が劣化したと判断するようにしてもよい。この場合、複数の建物外観部材は、請求項4に記載の発明のように、所定の範疇毎に複数の集合とし、各集合毎に複数の建物外観部材間の色差を測定して、複数の集合毎に劣化を判断するようにしてもよい。
【0012】
なお、複数の集合は、請求項6に記載の発明のように、所定の範疇として類似する色相毎にグループ分けすることが可能である。
【0013】
また、請求項1〜4の何れか1項に記載の発明は、請求項5に記載の発明のように、建物外観部材の経年変化による色差を予め実測または予測して、時間経過に対する建物外観部材の色の劣化予測線を予め定め、劣化予測線及び前記測定手段によって測定した色差に基づいて劣化時期を更に予測するようにしてもよい。すなわち、劣化する前に劣化時期を予測することができる。
【0014】
請求項7に記載の建物外観の劣化診断システムは、建物外観部材の初期状態に対する経年変化後の色差を測定する測定手段と、予め定めた色差までを許容限度として、前記測定手段によって測定した色差が前記許容限度以上の場合に、建物外観部材が劣化したと判断する判断手段と、前記判断手段の判断結果を通知する通知手段と、を備えることを特徴としている。
【0015】
請求項7に記載の発明によれば、測定手段では、建物外観部材の初期状態(例えば、新築時の状態)に対する経年変化後の色差が測定される。また、判断手段では、予め定めた色差までを許容限度として、測定手段によって測定した色差が許容限度以上の場合に、建物外観部材が劣化したと判断される。すなわち、請求項1の方法によって建物外観部材の劣化が判断され、各建物外観部材の劣化を診断することができる。従って、建物全体の見栄え耐久性の寿命を定義付けして、建物外観の劣化診断を行うことができる。
【0016】
そして、通知手段では、判断手段の判断結果が通知される。例えば、判断手段の判断結果を表示したり、プリント出力したり、メール送信等を行うことによって通知することができ、通知内容を確認することによってメンテナンス等を行うことができる。
【0017】
通知手段は、例えば、請求項8に記載の発明のように、判断手段によって建物外観部材が劣化したと判断した場合に、建物管理会社が所有する情報処理機器から顧客が所有する情報処理機器へ判断手段の判断結果を通知するようにしてもよい。
【0018】
また、請求項9に記載の発明のように、劣化した建物外観部材のメンテナンス費用を算出する算出手段を更に備えて、通知手段が、算出手段の算出結果を更に通知するようにしてもよい。
【0019】
また、請求項10に記載の発明のように、測定手段によって測定した色差に基づいて、判断手段によって劣化と判断する前の劣化進行状況を予測する予測手段を更に備えて、通知手段が、予測手段によって予測された劣化進行状況を定期的に通知すようにしてもよい。
【0020】
また、請求項11に記載の発明のように、測定手段によって測定した色差に基づいて、判断手段によって劣化と判断する前の劣化進行状況を予測する予測手段と、予測手段の予測結果に基づいて予測されるメンテナンス必要時期のメンテナンス費用及び該メンテナンス費用のための毎月の積立額を算出する費用算出手段と、を更に備えて、通知手段が、側愛知手段の測定結果に基づいて求めた、判断手段によって劣化と判断する前の劣化進行状況を定期的に通知すると共に、費用算出手段によって算出されたメンテナンス費用及び積立額を通知するようにしてもよい。
【0021】
なお、費用算出手段は、請求項12に記載の発明のように、既に積立を開始している場合には、積立残高とメンテナンス費用の差額をメンテナンス費用として算出すると共に、毎月の積立額を算出するようにしてもよい。また、通知手段は、請求項13に記載の発明のように、劣化進行状況を表す劣化予測線を通知するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、建物外観部材の初期状態に対する経年変化後の色差を測定し、予め定めた色差の許容限度以上の場合に、建物外観部材が劣化したと判断することにより、建物全体の見栄え耐久性の寿命を定義付けして、建物外観の劣化診断を行うことができる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態に係わる建物外観の劣化診断システムを示す図である。
【図2】(A)は建物外観部材の色毎のグループ分けの一例を示す図であり、(B)は米国標準局の色差の評価を示す図である。
【図3】外壁塗装、定型シールA、及び定型シールBについてそれぞれについて促進耐候性試験を実施し、試験前後の色差ΔEを測定した結果を示す図である。
【図4】建物外観劣化診断プログラムを実行した場合の処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図5】診断結果出力処理の一例の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態に係わる建物外観の劣化診断システムを示す図である。
【0025】
本実施の形態に係わる建物外観の劣化診断システム10は、建物外観の経年変化に対する色差を測定して、建物外観の劣化診断を行う。
【0026】
建物外観の劣化診断システム10は、建物外観の劣化による色差を測定するための色差計12を有すると共に、パーソナルコンピュータ20を含んで構成されている。パーソナルコンピュータ20は、CPU22、ROM24、RAM26、及び入出力ポート28を備えており、これらがアドレスバス、データバス、及び制御バス等のバス30を介して互いに接続されている。
【0027】
入出力ポート28には、各種の入出力機器として、ディスプレイ32、マウス34、キーボード36、ハードディスク(HDD)38、及び各種ディスク42からの情報の読み出しを行うためのディスクドライブ40が各々接続されている。
【0028】
また、上述の色差計12が、入出力ポート28に接続可能とされており、色差計12の測定結果がパーソナルコンピュータ20に入力可能とされている。なお、本実施の形態では、色差計12をパーソナルコンピュータ20に接続可能として、色差計12の測定結果をパーソナルコンピュータ20に直接入力可能としたが、色差計12の測定結果をキーボード36やマウス34等を介して入力するようにしてもよい。
【0029】
また、入出力ポート28には、ネットワーク44が接続されており、ネットワーク44に接続されたデータベース(DB)46や他のコンピュータ14(例えば、顧客が所有するコンピュータ)等との情報の授受が可能とされている。
【0030】
DB46には、初期(新築時)の建物外観の各部材を色差計12によって測定した測定値や、各部材を補修するために必要なメンテナンス費用、顧客情報、各顧客の建物を補修するための積立に関する情報(例えば、積立の有無や、現在の積立額等)などの各種情報が予め記憶されている。なお、各部材を色差計12によって建物外観の各部材を測定した初期の測定値は、後述する建物劣化診断プログラムのパーソナルコンピュータ20へのインストール時にHDD38に記憶するようにしてもよい。
【0031】
また、パーソナルコンピュータ20のHDD38には、建物外観劣化診断プログラムがインストールされている。建物外観劣化診断プログラムは、色差計12によって測定した建物外観部材の経年劣化による色差を用いて建物外観部材の劣化を診断する。
【0032】
なお、建物外観劣化診断プログラムをパーソナルコンピュータ20にインストールするには幾つかの方法があるが、例えば、建物外観劣化診断プログラムをセットアッププログラムと共に各種ディスク42に記録しておき、ディスク42をパーソナルコンピュータ20のディスクドライブ40にセットし、CPU22に対してセットアッププログラムの実行を指示すれば、ディスク42から建物外観劣化診断プログラムが順に読み出され、HDD38に書き込まれることによりインストールが行われる。また、建物外観劣化診断プログラムが、公衆電話回線やネットワーク(例えば、LAN、インターネット、及び無線通信ネットワーク等)44を介してパーソナルコンピュータ20と接続される他の情報処理機器(例えば、ネットワークサーバ等)の記憶装置に記憶され、パーソナルコンピュータ20が情報処理機器と通信することで、情報処理機器からパーソナルコンピュータ20へ建物外観劣化診断プログラムが伝送されてHDD38にインストールされる構成を採用するようにしてもよいし、ネットワーク44に接続された情報処理機器に記憶された建物外観劣化診断プログラムをパーソナルコンピュータ20で実行可能とする構成を採用するようにしてもよい。
【0033】
ここで、建物外観劣化診断プログラムで利用される建物外観の劣化診断方法について説明する。
【0034】
本実施の形態では、建物外観の見栄え耐久性は、建物の同一面内で各部材間に色むらが生じた場合を寿命と考える。本実施の形態では、予め定めたベース色に対する相対差で寿命を定義付けを行って判断するが、各部材について予め定めた許容限度を定めて判断するようにしてもよい。
【0035】
本実施の形態では、具体的には、建物外観部材を色相毎にグループ分けして劣化診断を行う。例えば、図2(A)に示すように、ベース色となる部材を予め定めて色相毎にグループ分けを行って各部材の劣化を診断する。
【0036】
図2(A)の例では、外壁塗装をベース色として、定型シールや不定型シール等を含むグループをグループAとし、サッシ色をベース色として、換気扇フード、シャッターケース、庇、外部コンセント、樋等を含むグループをグループBとした例を示す。
【0037】
また、各部材の劣化診断の寿命の基準としては、図2(B)に示す米国標準局の色差の評価を用いて、本実施の形態では、ΔEが6以上を寿命と判断するが、許容限度の値としては他の値を適用するようにしてもよい。
【0038】
また、本実施の形態では、建物外観部材に対して促進耐候性試験(SWOM)を実施し、実施結果から見栄え耐久性の予測を行う。図3は、外壁塗装、定型シールA、及び定型シールBについてそれぞれについて促進耐候性試験を実施し、試験前後の色差ΔEを測定した結果を示す。また、実棟の調査結果を黒丸で示す。なお、図3中の試験時間1000時間近傍の実棟の調査結果は、築後2〜3年の建物の結果を示し、2000時間近傍の実棟の調査結果は、築後5〜7年の建物の結果を示し、4000時間近傍の実棟の調査結果は、築後11〜12年の建物の結果を示す。
【0039】
図3に示すように、実棟の調査結果と、促進耐候性試験の結果とで相関性があることがわかる。すなわち、各部材の促進耐候性試験の結果を各部材の経年変化の劣化予測線とすることができ、当該劣化予測線から劣化時期を予測することができる。
【0040】
また、本実施の形態では、上述したように色差ΔEが6以上を寿命と判断するので、図3の例では、ベース色(外装塗装)の劣化予測線に対して、+6(=ΔE)を各部材の寿命ライン(図3の点線)としてベース色の部材に対する相対的な色差で寿命を予測することができる。
【0041】
本実施の形態における建物外観の劣化診断の具体的な方法としては、各部材の初期状態(例えば、新築時)の色差計12による測定値をネットワーク44等に接続されたDB46に記憶、あるいは建物外観劣化診断プログラムのインストール時にパーソナルコンピュータ20のHDD38に記憶しておき、経年変化後に色差計12によって各部材を測定し、ベース色の部材の初期状態と経年変化後の測定値から算出した色差が+6(=ΔE)以上か否かを判断することにより、ベース色の部材の劣化診断を行う。
【0042】
また、ベース色以外の部材については、初期状態と経年変化後の色差を算出し、算出した色差と、ベース色の部材の色差との差が+6(=ΔE)以上か否かを判断することにより劣化診断を行う。すなわち、図3の点線で示す寿命ラインを超えるか否かを判断することにより劣化診断を行う。
【0043】
なお、本実施の形態では、ベース部材の色差と、ベース部材以外の色差の差が許容限度(色差ΔE=6)以上か否かを判断することによって劣化診断を行うが、各グループ毎に各部材の初期状態に対する経年変化後の色差が+6(=ΔE)以上か否かを判断することによって劣化診断を行うようにしてもよい。また、このとき、許容限度とする色差の値をグループ毎に異なる値を適用するようにしてもよい。
【0044】
続いて、建物外観劣化診断プログラムを実行した場合の処理の流れについて説明する。図4は、建物外観劣化診断プログラムを実行した場合の処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、建物外観劣化診断プログラムは、キーボード36やマウス34の操作によって実行を指示した場合に開始する場合を例に挙げて説明するが、定期点検(例えば、5年などの所定期間毎の定期点検)等で測定した色差計12の測定値をDB46等に記憶しておいて、建物外観の劣化診断を行って診断結果を定期的に通知するようにしてもよい。
【0045】
建物外観劣化診断プログラムの実行がされると、ステップ100では、ベース色の元の色差測定値が取得されてステップ102へ移行する。ベース色の元の色差測定値は、例えば、初期状態(例えば、新築時)のベース色の部材を色差計12を用いて予め測定してネットワーク44に接続されたDB46に測定値を記憶しておき、当該測定値を取得する。なお、建物外観劣化診断プログラムのインストール時にHDD38に記憶している場合には、HDD38から取得する。
【0046】
ステップ102では、ベース色の色差測定値が取得されてステップ104へ移行する。例えば、色差計12によってベース色の部材の現在の測定を行った測定値を取得する。なお、測定値の取得は、色差計12とパーソナルコンピュータ20を接続して測定値を取得するようにしてもよいし、色差計12の測定値をキーボード36やマウス34等を介して入力することによって取得するようにしてもよい。また、定期点検等で色差計12によって測定した測定値をDB46等に記憶しておいて取得するようにしてもよい。
【0047】
ステップ104では、ベース色の色差が算出されてステップ106へ移行する。すなわち、ステップ100、102の各測定値からベース色の部材の色差を算出する。
【0048】
ステップ106では、算出された色差ΔEが6以上か否かが判定され、該判定が肯定された場合にはステップ108へ移行し、否定された場合にはステップ110へ移行する。
【0049】
ステップ108では、ベース色の部材がNG(寿命)であると判断されてステップ112へ移行する。
【0050】
一方、ステップ110では、ベース色部材がOKであると判断されてステップ112へ移行する。
【0051】
ステップ112では、ベース色の部材と同グループの各部材の元の色差測定値が取得されてステップ114へ移行する。各部材の元の色差測定値は、例えば、初期状態(例えば、新築時)の各部材を色差計12を用いて予め測定してネットワーク44に接続されたDB46に測定値を記憶しておき、当該測定値を取得する。なお、建物外観劣化診断プログラムのインストール時にHDD38に記憶している場合には、HDD38から取得する。
【0052】
ステップ114では、ベース色の部材と同グループの各部材の色差測定値が取得されてステップ116へ移行する。なお、測定値の取得は、色差計12とパーソナルコンピュータ20を接続して測定値を取得するようにしてもよいし、色差計12の測定値をキーボード36やマウス34等を介して入力することによって取得するようにしてもよい。また、定期点検等で色差計12によって測定した測定値をDB46等に記憶しておいて取得するようにしてもよい。
【0053】
ステップ116では、各部材の色差が算出されてステップ118へ移行する。すなわち、ステップ112、114の各測定値から各部材の色差を算出する。
【0054】
ステップ118では、ベース色の部材の色差と各部材の色差との差が+6以上か否かが判定される。すなわち、ステップ104で算出したベース色部材の色差と、ステップ116で算出した各部材の色差との差が+6(=ΔE)の閾値を超えたかを判定し、該判定が肯定された場合にはステップ120へ移行し、否定された場合にはステップ122へ移行する。
【0055】
ステップ120では、測定した部材がNG(寿命)であると判断されてステップ124へ移行する。また、このとき、ベース色の部材に対する色差が寿命レベルと判断するので、建物外観全体が劣化したと判断するようにしてもよい。
【0056】
一方、ステップ122では、測定した部材がOKであると判断されてステップ124へ移行する。
【0057】
ステップ124では、他のグループがあるか否かが判定される。例えば、ベース色が外壁塗装以外の他のベース色(例えば、ベース色がサッシ色)のグループについて診断を行うか否かを判定する。判定としては、他のグループがある旨の入力がキーボード36やマウス34等によって行われたか否かを判定し、該判定が否定された場合には、ステップ100に戻って上述の処理が繰り返され、ステップ124の判定が肯定されたところでステップ126へ移行する。
【0058】
ステップ126では、診断結果出力処理が行われて一連の処理を終了する。診断結果出力処理としては、例えば、図3に示す各部材の劣化予測線と、現在の測定結果と、をディスプレイ32に表示すると共に、ステップ116やステップ118の判断結果を表示するようにしてもよいし、プリンタ等によって出力するようにしてもよいし、あるいは、ネットワーク44接続された顧客のコンピュータ14にメール送信するようにしてもよい。また、診断結果出力処理として図5に示す処理を行うようにしてもよい。
【0059】
また、診断結果出力処理は、補修費用や積立額等を更に出力するようにしてもよい。ここで、補修費用や積立額等を出力する場合の診断結果出力処理について説明する。図5は、診断結果出力処理の一例の流れを示すフローチャートである。
【0060】
ステップ200では、NGがあるか否かが判定される。すなわち、上述のステップ106やステップ118で肯定判定がされた部材があるか否かを判定し、該判定が否定された場合にはステップ202へ移行し、肯定された場合にはステップ216へ移行する。
【0061】
ステップ202では、劣化進行状況が算出されてステップ204へ移行する。劣化進行状況の算出は、各部材の色差の測定値が劣化予測線のどの位置かを算出する。
【0062】
ステップ204では、NG時期が算出されてステップ206へ移行する。すなわち、劣化予測線と現在の色差の測定値から寿命となる時期を予測することによって劣化と判断する前の劣化進行状況を予測してNG時期を算出する。
【0063】
ステップ206では、メンテナンス時期のメンテナンス費用が算出されてステップ208へ移行する。すなわち、建物外観部材がNGとなる時期をメンテナンス時期として求めると共に、NGとなる建物部材のメンテナンス費用が算出される。メンテナンス時期のメンテナンス費用は、例えば、ネットワーク44に接続されたDB46等に各部材を補修するために必要なメンテナンス費用を予め記憶しておき、メンテナンス時期に補修が必要な部材のメンテナンス費用をDB46から取得することにより算出することができる。
【0064】
ステップ208では、メンテナンスのための積立が既に行われているか否かが判定される。該判定は、例えば、DB46に積立に関する情報を予め記憶しておき、当該情報を取得することによって既に積立を行っているか否かを判定し、該判定が肯定された場合にはステップ210へ移行し、否定された場合にはステップ212へ移行する。
【0065】
ステップ210では、ステップ206で算出されたメンテナンス時期のメンテナンス費用から既に積み立てられた積立額の差額が算出されてステップ212へ移行する。
【0066】
ステップ212では、毎月の積立額が算出されてステップ214へ移行する。毎月の積立額は、既に積立が行われている場合には、ステップ210で算出した差額からステップ206で算出したメンテナンス費用を差し引いた額とメンテナンス時期までの期間とに基づいて毎月の積立額を算出し、積立が行われていない場合には、ステップ206で算出したメンテナンス費用とメンテナンス時期までの期間とに基づいて毎月の積立額を算出する。
【0067】
ステップ214では、メンテナンス時期、メンテナンス費用、及び積立額が出力されて一連の処理を終了する。例えば、劣化予測線を含むメンテナンス時期、メンテナンス費用、及び積立額等をディスプレイ32に表示出力したり、プリンタ等から出力したり、顧客のコンピュータ14にメール送信する。
【0068】
一方、ステップ216では、メンテナンス費用が算出されてステップ218へ移行する。メンテナンス費用は、例えば、ネットワーク44に接続されたDB46等に各部材を補修するために必要なメンテナンスを予め記憶しておき、NGとなった部材のメンテナンス費用をDB46から取得することにより算出することができる。
【0069】
ステップ218では、診断結果とメンテナンス費用が出力されて一連の処理を終了する。例えば、図3に示す劣化予測線と共に、現在の色差の測定結果を診断結果として出力すると共に、最もNG時期が近い部材のメンテナンス費用を出力する。出力方法としては、ディスプレイ32に表示するようにしてもよいし、プリント出力するようにしてもよいし、メール送信等を行うようにしてもよい。
【0070】
なお、上記の実施の形態では、ベース色以外の部材の寿命を判断する際に、当該部材の初期状態に対する経年変化後の色差と、ベース色部材の色差と、の差が+6(=ΔE)以上の場合に寿命と判断するようにしたが、ベース色の部材と同様に、初期状態に対する経年変化後の色差が+6(=ΔE)以上の場合に寿命と判断するようにしてもよい。
【0071】
また、上記の実施の形態では、キーボード36やマウス34の操作によって建物外観劣化診断プログラムを開始する場合を例に挙げて説明したが、定期点検(例えば、5年などの所定期間毎の定期点検)等で測定した色差計12の測定値をDB46等に記憶しておいて、定期的に建物外観の劣化診断を行って診断結果を定期的に通知するようにしてもよい。この場合には、建物や顧客を識別するための情報と共に、色差計12の測定値や顧客データ等を記憶しておいて、上述の診断結果出力処理の際に、対応する顧客に対して診断結果を通知するようにすればよい。
【符号の説明】
【0072】
10 建物外観の劣化診断システム
12 色差計
14 コンピュータ
20 パーソナルコンピュータ
32 ディスプレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色差を測定する測定手段によって、建物外観部材の初期状態に対する経年変化後の色差を測定し、
予め定めた色差までを許容限度として、測定した色差が前記許容限度以上の場合に、建物外観部材が劣化したと判断する建物外観の劣化診断方法。
【請求項2】
建物外観部材は、所定の範疇毎に複数の集合とし、各集合毎に前記色差を測定して、各集合毎に予め定めた前記許容限度に基づいて劣化を判断する請求項1に記載の建物外観の劣化診断方法。
【請求項3】
建物外観を構成する複数の建物外観部材間の色差が所定の色差以上の場合に、建物外観全体が劣化したと判断する請求項1に記載の建物外観の劣化診断方法。
【請求項4】
前記複数の建物外観部材は、所定の範疇毎に複数の集合とし、各集合毎に前記複数の建物外観部材間の色差を測定して、複数の集合毎に劣化を判断する請求項3に記載の建物外観の劣化診断方法。
【請求項5】
建物外観部材の経年変化による色差を予め実測または予測して、時間経過に対する建物外観部材の色の劣化予測線を予め定め、前記劣化予測線及び前記測定手段によって測定した前記色差に基づいて劣化時期を更に予測する請求項1〜4の何れか1項に記載の建物外観の劣化診断方法。
【請求項6】
複数の集合は、前記所定の範疇として類似する色相毎にグループ分けする請求項2又は請求項4に記載の建物外観の劣化診断方法。
【請求項7】
建物外観部材の初期状態に対する経年変化後の色差を測定する測定手段と、
予め定めた色差までを許容限度として、前記測定手段によって測定した色差が前記許容限度以上の場合に、建物外観部材が劣化したと判断する判断手段と、
前記判断手段の判断結果を通知する通知手段と、
を備えた建物外観の劣化診断システム。
【請求項8】
前記通知手段は、前記判断手段によって建物外観部材が劣化したと判断した場合に、建物管理会社が所有する情報処理機器から顧客が所有する情報処理機器へ前記判断手段の判断結果を通知する請求項7に記載の建物外観の劣化診断システム。
【請求項9】
劣化した建物外観部材のメンテナンス費用を算出する算出手段を更に備え、
前記通知手段が、前記算出手段の算出結果を更に通知する請求項7または請求項8に記載の建物外観の劣化診断システム。
【請求項10】
前記測定手段によって測定した色差に基づいて、前記判断手段によって劣化と判断する前の劣化進行状況を予測する予測手段を更に備え、
前記通知手段が、前記予測手段によって予測された前記劣化進行状況を定期的に通知する請求項7〜9の何れか1項に記載の建物外観の劣化診断システム。
【請求項11】
前記測定手段によって測定した色差に基づいて、前記判断手段によって劣化と判断する前の劣化進行状況を予測する予測手段と、
前記予測手段の予測結果に基づいて予測されるメンテナンス必要時期のメンテナンス費用及び該メンテナンス必要費用のための毎月の積立額を算出する費用算出手段と、
を更に備え、
前記通知手段が、前記測定手段の測定結果に基づいて求めた、前記判断手段によって劣化と判断する前の劣化進行状況を定期的に通知すると共に、前記費用算出手段によって算出された前記メンテナンス費用及び積立額を通知する請求項7〜10の何れか1項に記載の建物外観の劣化診断システム。
【請求項12】
前記費用算出手段は、既に積立を開始している場合には、積立残高とメンテナンス費用の差額をメンテナンス費用として算出すると共に、毎月の積立額を算出する請求項11に記載の建物外観の劣化診断システム。
【請求項13】
前記通知手段は、前記劣化進行状況を表す劣化予測線を通知する請求項11又は請求項12に記載の建物外観の劣化診断システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−99709(P2011−99709A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−253306(P2009−253306)
【出願日】平成21年11月4日(2009.11.4)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【Fターム(参考)】