説明

建物支持装置

【課題】地盤沈下が生じた場合でも建物の傾斜を抑制することのできる建物支持装置を提供する。
【解決手段】上端側を建物側に連結された第1の支持部材12と、下端側を地盤側に接地された第2の支持部材13と、第2の支持部材13を第1の支持部材12に対して下方に付勢するスプリング14と、第1の支持部材12に対する第2の支持部材13の上方への移動を規制するストッパ機構15とからなる複数の支持ユニット11を建物本体側と地盤側との間に配置し、地盤沈下した位置の第2の支持部材13をスプリング14によって下方に移動させることにより、建物本体を下方から支持するようにしたので、地盤沈下による建物本体の傾斜を支持ユニット11によって抑制することができ、建物本体を水平状態に保つことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤沈下による建物の傾斜を防ぐための建物支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば地震による液状化現象で地盤沈下を生じた場合、家屋やビル等の建物の一部が地盤沈下を生じた空洞に沈下して建物が傾くといった被害を受ける場合がある。このような場合には、例えば沈下した建物の基礎を油圧ジャッキ等によって押し上げるとともに、鋼管等の支柱で支持し、沈下した地盤をコンクリート等によって埋め戻すことにより、建物を元の水平状態に戻す修復工事が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−248744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、地盤沈下により傾いた建物を修復するためには、前述のように油圧ジャッキ等を用いて建物を押し上げるなどの大掛かりな修復工事が必要となるため、修復までに長期間を要するとともに、修復に要する経済的な負担も大きくなる。また、建物を水平状態に修復した場合であっても、一旦大きく傾いた建物は、梁、柱、建具等に歪みが残る場合が多く、完全に元の状態に戻すことは困難であった。
【0005】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、地盤沈下が生じた場合でも建物の傾斜を抑制することのできる建物支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の建物支持装置は、前記目的を達成するために、上端側によって建物本体を下方から支持する第1の支持部材と、下端側を地盤側に接地された第2の支持部材と、第2の支持部材を第1の支持部材に対して下方に付勢する付勢手段と、第1の支持部材に対する第2の支持部材の上方への移動を規制する移動規制手段とを備えた複数の支持ユニットを建物本体側と地盤側との間の複数箇所に設置している。
【0007】
これにより、建物の地盤に地盤沈下が生じた場合には、地盤沈下した位置の支持ユニットの第2の支持部材が地盤沈下した分だけ第1の支持部材に対して下方に移動し、伸長した支持ユニットによって建物が下方から支持されることから、地盤沈下による建物の傾斜が抑制される。その際、第2の支持部材は付勢手段によって下方に付勢されていることから、第2の支持部材が地盤沈下に追従するように下方に移動する。また、第2の支持部材は移動規制手段によって反対方向への移動を規制されることから、下方に移動した状態に保持される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、地盤沈下に応じて伸長した支持ユニットによって建物本体を支持することにより、建物本体の傾斜を抑制することができるので、傾斜した建物を修復するための大掛かりな工事を必要とせず、しかも建物の傾斜による梁、柱、建具等の歪みを生ずることがなく、地盤沈下による建物への被害を少なくすることができる。また、沈下した地盤を修復する場合でも、建物が空気袋によって水平状態に保持されているので、従来のように建物を油圧ジャッキ等で押し上げる必要がない分、地盤の修復工事を容易に行うことができる。この場合、第2の支持部材を付勢手段によって地盤沈下に追従するように下方に移動させることができるので、支持ユニットを地盤沈下に応じて確実に伸長させることができる。地盤沈下によって第2の支持部材が下方に移動した状態を保持することができるので、伸長した支持ユニットによって建物本体を確実に支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の建物支持装置を備えた建物の一実施形態を示す斜視図
【図2】建物支持装置を備えた建物の側面図
【図3】建物の基礎部分を示す平面図
【図4】支持ユニットの側面断面図
【図5】支持ユニットの平面断面図
【図6】建物支持装置の動作を示す建物の側面図
【図7】支持ユニットの動作を示す側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至図7は本発明の一実施形態を示すもので、地盤沈下による建物の傾斜を抑制するための建物支持装置を示すものである。
【0011】
同図に示す建物1は、例えば木造建築物からなる建物本体2を鉄筋コンクリート構造の耐圧盤3の上方に設置してなり、耐圧盤3は地盤側の地中に設けられている。建物本体2の土台2aは補強フレーム4上に固定されており、補強フレーム4は土台2aに沿って延びる鋼材からなる。
【0012】
本実施形態の建物支持装置10は、補強フレーム4と耐圧盤3との間に配置される複数の支持ユニット11を備え、図3に示すように、各支持ユニット11は建物1の前後方向及び幅方向に複数ずつ設置されている。
【0013】
支持ユニット11は、上端側を建物側に連結された第1の支持部材12と、下端側を地盤側に接地された第2の支持部材13と、第2の支持部材13を第1の支持部材12に対して下方に付勢する付勢手段としてのコイル状のスプリング14と、第1の支持部材12に対する第2の支持部材13の上方への移動を規制する移動規制手段としてのストッパ機構15とから構成されている。
【0014】
第1の支持部材12は上下方向に延びるピストン状の部材からなり、その上端には補強フレーム4を支持する第1の台座12aが設けられている。第1の台座12aの下端には第1の支持部材12に螺合するネジ部12bが設けられ、第1の台座12aを回動すると、ネジ部12bによって第1の台座12aが第1の支持部材12に対して上下動するようになっている。
【0015】
第2の支持部材13は上端を開口したシリンダ状の部材からなり、その内部には第1の支持部材12が上下方向に移動自在に挿入されている。第2の支持部材13の下端側には耐圧盤3に固定される第2の台座13aが設けられ、第2の台座13aは、球体と球面を係合してなる自在継ぎ手13bを介して第2の支持部材13の下端に揺動自在に連結されている。
【0016】
スプリング14は第2の支持部材13内に設けられ、第2の支持部材13の底面と第2の支持部材13の下端面との間に圧縮状態で配置されている。
【0017】
ストッパ機構15は、第1の支持部材12側に設けられた係止歯15aと、第2の支持部材13側に設けられた係止爪15bとからなり、係止爪15bは第2の支持部材13の周方向複数箇所に設けられている。係止歯15aは第1の支持部材12の外周面に上下方向に配列されるとともに、第1の支持部材12の全周に亘るように形成されている。係止爪15bは第2の支持部材13の周面を第2の支持部材13の径方向に移動自在に貫通しており、その先端が係止歯15aに係止するようになっている。この場合、係止爪15bの先端は係止歯15aに向かって上り傾斜をなし、係止歯15aは係止爪15bに向かって下り傾斜をなしている。これにより、係止爪15bは係止歯15aによって上方への移動を規制され、下方への移動は係止爪15bが前記傾斜により係止歯15aから後退することにより許容されるようになっている。この場合、係止爪15bはスプリング15cによって係止歯15a側に付勢されており、スプリング15cは第2の支持部材13の外面に取り付けられたケース15d内に収納されている。
【0018】
以上のように構成された支持ユニット11は、第1の台座12aを補強フレーム4に固定されるとともに、第2の台座13aを耐圧盤3に固定されることにより、建物本体2側と地盤側との間に設置される。その際、第1の台座12aを回動してネジ部12bにより上下動させることにより、フレーム5に対する第1の台座12aの高さ位置を調整することができる。
【0019】
前記建物支持装置10においては、例えば地震による液状化現象で地盤沈下が発生すると、図6に示すように地盤沈下によって耐圧盤3が傾斜する。これにより、地盤沈下が生じた位置の支持ユニット11では、図7に示すように地盤沈下により耐圧盤3が沈下した分だけ第2の支持部材13が第1の支持部材12に対して下方に移動する。その際、第2の支持部材13はスプリング14によって下方に付勢されていることから、第2の支持部材13が耐圧盤3の沈下に追従するように下方に移動する。また、第2の支持部材13はストッパ機構15によって反対方向への移動を規制されることから、下方に移動した状態に保持される。即ち、地盤沈下が生じた位置の支持ユニット11が地盤の沈下量に応じて上下方向に伸長することにより、建物本体2が水平状態に保持され、地盤沈下による建物本体2の傾斜が抑制される。この後、地盤沈下が進行した場合でも、地盤沈下の進行に応じて第2の支持部材13が更に下方に移動して建物本体2の傾斜が抑制される。
【0020】
このように、本実施形態によれば、上端側を建物側に連結された第1の支持部材12と、下端側を地盤側に接地された第2の支持部材13と、第2の支持部材13を第1の支持部材12に対して下方に付勢するスプリング14と、第1の支持部材12に対する第2の支持部材13の上方への移動を規制するストッパ機構15とからなる複数の支持ユニット11を建物本体2側と地盤側との間に配置し、地盤沈下した位置の第2の支持部材13をスプリング14によって下方に移動させることにより、建物本体2を下方から支持するようにしたので、地盤沈下による建物本体2の傾斜を支持ユニット11によって抑制することができ、建物本体2を水平状態に保つことができる。これにより、傾斜した建物を修復するための大掛かりな工事を必要とせず、しかも地盤沈下によって建物が大きく傾くことがないので、建物の傾斜による梁、柱、建具等の歪みを生ずることがなく、地盤沈下による建物への被害を少なくすることができる。また、沈下した地盤を修復する場合でも、建物本体2が支持ユニット11によって水平状態に保持されているので、従来のように建物を油圧ジャッキ等で押し上げる必要がない分、地盤の修復工事を容易に行うことができる。
【0021】
この場合、第2の支持部材13をスプリング14によって下方に付勢するようにしているので、第2の支持部材13を地盤沈下に追従するように下方に移動させることができ、支持ユニット11を地盤沈下に応じて確実に伸長させることができる。
【0022】
また、第2の支持部材13の反対方向への移動をストッパ機構15によって規制するようにしたので、地盤沈下によって第2の支持部材13が下方に移動した状態を確実に保つことができ、伸長した支持ユニット11によって建物本体2を確実に支持することができる。
【0023】
更に、第1の支持部材12及び第2の支持部材13を互いに上下方向に摺動自在に係合するシリンダ状の部材及びピストン状の部材によって形成するとともに、スプリング14を第1の支持部材12と第2の支持部材13との間に圧縮状態で配置したので、第1の支持部材12、第2の支持部材13及びスプリング14を同軸状に配置することができ、支持ユニット11を幅方向に小型化することができる。
【0024】
また、ストッパ機構15を、第1の支持部材12側に上下方向に配列された係止歯15aに第2の支持部材13側に設けられた係止爪15bを係止するように構成したので、第2の支持部材13の反対方向への移動を第2の支持部材13が移動した位置で確実に規制することができ、建物本体2を地盤の沈下量に応じて的確に支持することができる。
【0025】
更に、各支持ユニット11を、建物本体2の底面側に設けられた補強フレーム4と地盤側に設けられた耐圧盤3との間に設置し、建物本体2に対して耐圧盤3が地盤沈下によって傾斜するようにしたので、一部の支持ユニット11の設置位置のみが過度に沈下することがなく、沈下量を各支持ユニット11に分散させることができる。これにより、第2の支持部材13の移動量を大きくする必要がなく、支持ユニット11を上下方向に小型化することができる。
【0026】
この場合、各支持ユニット11は建物本体2の補強フレーム4を支持しているので、補強フレーム4によって地盤沈下時の建物本体2の歪みを抑制することができる。
【符号の説明】
【0027】
1…建物、2…建物本体、3…耐圧盤、4…補強フレーム、10…建物支持装置、11…支持ユニット、12…第1の支持部材、13…第2の支持部材、14…スプリング、15…ストッパ機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端側によって建物本体を下方から支持する第1の支持部材と、下端側を地盤側に接地された第2の支持部材と、第2の支持部材を第1の支持部材に対して下方に付勢する付勢手段と、第1の支持部材に対する第2の支持部材の上方への移動を規制する移動規制手段とを備えた複数の支持ユニットを建物本体側と地盤側との間の複数箇所に設置した
ことを特徴とする建物支持装置。
【請求項2】
前記第1の支持部材及び第2の支持部材を互いに上下方向に摺動自在に係合するシリンダ状部材及びピストン状部材によって形成し、
前記付勢手段を第1の支持部材と第2の支持部材との間に圧縮状態で配置されたスプリングによって形成した
ことを特徴とする請求項1記載の建物支持装置。
【請求項3】
前記移動規制手段を、第1の支持部材及び第2の支持部材の一方に上下方向に配列された係止歯に第1の支持部材及び第2の支持部材の他方に設けられた係止爪を係止させるように構成した
ことを特徴とする請求項1または2記載の建物支持装置。
【請求項4】
前記各支持ユニットを、建物本体に対して地盤沈下により傾斜する耐圧盤上に設置した
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の建物支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−40519(P2013−40519A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179146(P2011−179146)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(506378360)
【Fターム(参考)】