説明

建物用のドア装置

【課題】建物内の通路に沿って複数の居室を設け、これら居室を識別する表示部をドア装置に設けるにあたり、表示部を遠方からも視認できるように構成する。
【解決手段】複数の客室4の出入り口部5aを開閉するドア装置7を、各客室4の出入り口部5aに固定されるドア枠8と、該ドア枠8に開閉揺動自在に支持されるドア体9とにより構成するにあたり、ドア枠8を、ドア体9の通路3側のドア面より通路3側に突出して設け、ドア枠8の通路の進行方向先側に位置する縦枠材8aまたは8bの通路3側に突出して露出する延出片部8f、8gの見込み面に、客室4を識別する表示部13を設ける構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホテルや病院等のように、通路に沿って複数の居室が設けられるような建築物における建物用のドア装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ホテルや病院の入院病棟等の建物のなかには、通路に沿って客室、または、病室となる居室が複数設けられていることがあり、この場合に、これら複数の居室出入り口部には同様のドア装置が設けられており、各居室に表示部を設けることにより各居室を識別するようにしている。ところで、前記表示部は、ドア装置を構成するドア体の通路側のドア面や、ドア装置の側部となる躯体壁面に設けられるのが一般であり、利用者は、居室を探す場合にドア体の前まで行かないと居室を識別することはできない。このため、例えばホテルのエレベータホールから複数の通路が分岐して設けられ、各通路に複数の客室が配置されているような場合では、利用者が通路を見渡しただけでは部屋番号を確認することはできず、目的の客室を見つけるためには、いちいちエレベータホールに設けられる見取り図を見る等の手間が必要となって煩わしいという問題がある。
ところで、寝台列車等の車両において、車両の幅方向一側に通路を形成し、該通路に沿って複数の客室が設けられたような場合に、隣り合う客室の隣接部に、該隣接部を溝奥とし、通路側の壁面から所定の角度を存して傾斜する溝側面を有した凹状部を形成し、前記傾斜する溝側面(斜行壁面)を各居室への出入り口部とするとともに、前記斜行壁面に部屋番号(表示部)を設ける構成として、客室を探して通路を歩行した場合に、客室の前に立つ以前の段階で表示部を確認できるようにしたものが提唱されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−139299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来のものは、ドア装置を傾斜状に設けるために客室側に向けて凹部を形成しているので、客室の有効面積が小さくなってしまうという問題がある。さらに、このものでは、ドア装置が通路に対して傾斜状に設けられているために、ドア体を開放した場合では、客室の前の通路を歩行する人だけでなく、客室から離れた位置の通路を歩行する人からも室内が見えてしまうことがあるという別の問題もあり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、建物内の通路に沿って設けられる複数の居室の出入り口部を開閉するドア装置であって、各居室のドア装置を、出入り口部に固定されるドア枠と、該ドア枠に開閉自在に設けられるドア体とにより構成するにあたり、ドア枠に、ドア体の通路側のドア面より通路側に突出する通路側突出部を設け、ドア枠の通路の進行方向先側に位置する縦枠の通路側突出部における見込み面に、居室を識別する表示部を設ける構成としたことを特徴とする建物用のドア装置である。
請求項2の発明は、建物内の通路に沿って設けられる複数の居室の出入り口部を開閉するドア装置であって、各居室のドア装置を、出入り口部に固定されるドア枠と、該ドア枠に開閉自在に設けられるドア体とにより構成するにあたり、ドア枠に、ドア体の通路側のドア面より通路側に突出する通路側突出部を設け、ドア枠の進行方向先側に位置する縦枠の通路側突出部を、居室を識別する表示部を設けるための見込み面にしたことを特徴とする建物用のドア装置である。
請求項3の発明において、表示部は、照明手段により直接、または、間接照射される構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載の建物用のドア装置である。
請求項4の発明において、照明手段は、ドア枠を構成する上枠に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の建物用のドア装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1、2の発明とすることにより、容易に目的とする居室を見つけることが可能なうえ、ドア枠の縦枠材に設けることで、表示部用の部材を格別設けることなく、しかも、居室の有効面積を損なうことがないようにできる。
請求項3、4の発明とすることにより、表示部が一層明確に表示されて視認度を向上できるうえ、通路の照明を補助することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】ホテルの客室フロアの概略平面図である。
【図2】ホテルの客室フロアの斜視図である。
【図3】図3(A)、(B)はそれぞれドア装置の正面図、背面図である。
【図4】図4(A)、(B)はそれぞれドア装置の一部を切欠いた平面断面図、側面断面図である。
【図5】図5(A)、(B)、(C)はそれぞれドア装置の照明手段を説明する側面断面図、正面断面図、底面断面図である。
【図6】第二の実施の形態におけるドア装置の平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の第一の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は、ホテルの上階(本実施の形態では5階)に設けられる客室フロアの平面図であって、該図面において、1はロビーやフロントにアクセスするためのエレベータ装置であり、該エレベータ装置1の昇降口前方には、エレベータホール(踊り場)2が設けられている。前記エレベータホール2には、右方へ向けて延出する通路3が形成されており、該通路3の両側には複数の客室4が設けられている。
尚、本実施の形態では、通路3の両側にそれぞれ客室4が設けられており、これら各客室4には、図1に示すように、「501」から始まる部屋番号がそれぞれ付与されて、それぞれを識別するように構成されいる。
【0009】
前記各客室4は、通路3に平行な第一壁体5と、該通路3の延出方向に直交する第二壁体6とにより区画形成されており、通路3に面した第一壁体5には、各客室4への出入りをするための四角形状の出入り口部5aが形成されており、これら出入り口部5aに、本発明が実施されたドア装置7がそれぞれ設けられている。
尚、隣り合う二つの客室4の出入り口部5aは隣接して形成されており、これら隣接する出入り口部5aには、それぞれ左右方向勝手違いに構成されたドア装置7が設けられている。
【0010】
ここで、客室4に設けられるドア装置7は全て同様の基本構成を有しており、ドア装置7を詳細に説明するにあたり、図1において「502」として図示されている502号の客室4のドア装置7について、図3、4、5の図面基づいて説明する。
前記ドア装置7は、第一壁体5に開設された四角形状の出入り口部5aを囲繞するように固定されるドア枠8と、該ドア枠8に開閉揺動自在に支持されるドア体9とにより構成されている。
前記ドア枠8は、ドア装置7を通路3側(室外側)から目視したときを基準として、左右一対の左、右縦枠材(本発明の縦枠に相当する)8a、8bと、これら左、右縦枠材8c、8bの上下端部同士をそれぞれ連結する上、下横枠材8c、8dとにより構成されている。そして、ドア体9は、図3(B)、図4(A)に示すように、左縦枠材8aの室内側部位とドア体9の左側端部の室内側面との間に設けられる上下一対のピボットヒンジ10により開閉揺動自在に支持されており、出入り口部5aを閉鎖する全閉姿勢と、室内側に向けて揺動して出入り口部5aを開放する開放姿勢との間を揺動変姿するように構成されている。
【0011】
前記ドア枠8は、図4に示すように、下横枠材8dは、全閉姿勢のドア体9のドア厚と略同様の枠幅に形成されているが、左、右縦枠材8a、8bと上横枠材8cとは、それぞれドア体9のドア厚よりも長い枠幅を有して形成されており、全閉姿勢のドア体9は、各枠材8a、8b、8cの室内側部位に偏寄して納まるように構成されている。そして、前記各枠材8a、8b、8cのドア厚方向(室内外方向)中間部には、全閉姿勢のドア体9の外側面(通路3側の面)9aの左、右、および、上の各端部に当接する緩衝部材11が設けられる戸当たり部8eが形成され、これら戸当たり部8eよりも外側(通路側)に突出し、全閉姿勢のドア体9の外側面(通路側面)9aよりも通路3側(室外側)に位置する部位は、通路3の進行方向に対して直交状に突出する延出片部(本発明の通路側突出部に相当する)8f、8g、8hに構成されている。そして、前記各延出片部8f、8g、8hの外側端部と、第一壁体5の通路側面とは、ほぼ面一状となる仕上げ状態となっている。
これによって、全閉姿勢のドア体9は、第一壁体5の通路側面よりも僅かに客室側に偏寄して位置しており、全閉姿勢のドア体9に対し通路3側に直交状に突出する各延出片部8f、8g、8hの見込み面が、通路3側に向けて露出するように設定されている。
尚、下横枠材8dは、床部表面を構成する仕上げ材12から突出することがないよう仕上げ材12に埋設状に配設されている。
【0012】
このように構成された客室フロアにおいて、エレベータホール2に降り立った宿泊客は、通路3を客室4側に向かって見渡しながら客室4側に進行し、目的とする客室4を探すことになるが、この場合に、各客室4のドア装置7において、枠材8を構成する左、右縦枠材8a、8bのうち、通路3の進行方向先側に位置する縦枠材8aまたは8bであって、502号室においては右縦枠材8bの通路3側に突出(露出)する延出片部8gの見込み面における上方部位に、各居室を識別するための部屋番号からなる表示部13が設けられている。尚、502号室に対し、通路3を挟んで向かい側に設けられる客室4のドア装置7については、通路3側からドア枠8を目視したとき、左縦枠材8aの通路3側に突出する延出片部8fの上方部位に表示部13が設けられている。
ここで、本実施の形態の縦枠材8aまたは8bは、表面黒色塗装されて構成される一方、表示部13は表面白色塗装された薄板材を所望の数字に打ち抜き形成することにより構成されている。そして、各客室4の表示部13は、ドア枠8において通路3の進行方向先側に位置する縦枠材8aまたは8bの通路3側に対して直交状に突出して通路3側に露出する延出片部8fまたは8gの見込み面上方に貼着等の手段により固定されている。
これによって、宿泊客がエレベータホール2から通路3側を向いた場合に、図2に示すように、通路3に沿って配置されている複数の客室4の表示部13を通路の奥側のものまで見渡すことができて、宿泊客が目的とする客室番号を見つけるのが容易になるように構成されている。
【0013】
さらに、本実施の形態では、表示部13を照明手段14により直接、または、間接的に照射するように構成されており、これによって、表示部13が一層際立って、遠方からも容易に識別することができるように構成されている。
本実施の形態の照明手段14は、図5に示すように、上横枠材8cの通路3側に突出する延出片部8hに埋設される構成となっている。つまり、上横枠材延出片部8hには、表示部13が設けられる縦枠材延出片部8fまたは8g側に偏寄して貫通孔8iが開設される一方、該貫通孔8iには、第一壁体5と上横枠材延出片部8hとのあいだに内装されるボックス形状のケース体14aの開口端が対向するように設けられている。そして、ケース体14aに燈体14bが支持されているが、本実施の形態の燈体14bは、指向性の強いLEDを用いて構成されているため、燈体14bの照射方向が表示部13に向けて支持されており、これによって、燈体14bが点灯した場合に、表示部13が燈体14bにより直接的に照射されて、表示部13の視認度が高められるように構成されている。尚、燈体14bを、従来の電球のように指向性の弱いものとして、表示部13を間接的に照射するように構成してもよく、このような場合でも、表示部13の視認度を高めることができる。
また、14cは上横枠材延出片部8hに開設された貫通孔8iを覆蓋する透光性樹脂材で形成されたプレート体である。
【0014】
叙述の如く構成された本形態において、通路3に沿って複数設けられる客室4には、これら客室4を個別に識別するための部屋番号が表示部13として設けられるが、該表示部13は、各客室4に設けられるドア装置7を構成し、第一側壁5の壁厚内に配されるドア枠8の、通路3の進行方向先側に位置する縦枠材8aまたは8bから、通路3に対して直交状に延出する延出片部8fまたは8gであって、通路3に対して直交状に突出して露出する見込み面部位に設けられているので、宿泊客は、通路3手前側から先側を見渡したときに、手前側の客室4の表示部13から奥側の客室4の表示部13までをも視認することができて、エレベータホール2に設けられる見取り図等をわざわざ確認するまでもなく、エレベータホール2から通路3先側を見渡すことで部屋番号を確認することができ、容易に目的とする客室4を見つけることが可能となる。しかも、このものでは、表示部13をドア枠8の縦枠材8aまたは8bの延出片部8f、8gに設ける構成としたので、遠方の表示部まで視認するのが容易なうえ、ドア枠8の縦枠材8aまたは8bに設けられているので、表示部13を設けるための部材を各別に設ける必要がなく、しかも、各客室4の有効面積を損なうことがない。そのうえ、ドア装置7は通路3に沿って平行な状態であるので、通路の歩行者から覗かれる惧れも低減できるという利点もある。
【0015】
さらに、このものでは、表示部13を上横枠材8cに内装した照明手段14である燈体14bにより直接的に照射するようにしたので、表示部13が一層明確に表示されて確認が容易になる。また、通路3に採光がないような建築物である場合に、これら照明手段14が通路3の照明を補助することができ、照明手段14を間接照明としたような場合も含めて、通路3を照明するための照明手段を少なくできるという利点もある。
【0016】
尚、本発明は前記実施の形態に限定されないことは勿論であって、表示部を照明する照明手段としては、ドア枠に内装、外装の何れの状態であってもよく、また、表示部が設けられる縦枠材に対向する縦枠材側に設けることも可能であり、要は、表示部を直接的、または、間接的に照射できる照明手段を何れかの箇所に設ければよい。また、表示部を透光性部材で形成し、該表示部が設けられる縦枠材に照明手段を内装し、表示部を背後から照射するように構成してもよい。
また、表示部自体を発光手段を用いて形成するようにしてもよく、照明手段としては、表示部が直接、または、間接照射されたり、あるいは、発光等して、視認度が向上される構成であれば何れの手段であっても採用することができる。
【0017】
さらに、図6に示す第二の実施の形態のように構成することもできる。
前記第二の実施の形態において、通路に沿って配置される複数の客室に設けられるドア装置15は、壁体16に形成される出入り口部16aに固定されるドア枠17と、該ドア枠17に対してスライド移動するドア体18とにより構成されている。そして、ドア体18は、ドア枠17に囲繞される開口を閉鎖する全閉姿勢から、壁体16の内側面(室内側面)に沿ってスライド移動してドア枠17により囲繞される開口を開放する開放姿勢とに変姿するように構成されている。このものにおいて、ドア枠17の左、右縦枠材17a、17bには、それぞれドア体18の通路側面よりも通路側に突出する通路側突出片部17c、17dが形成されており、通路の進行方向先側に位置する縦枠材であって、本実施の形態では右縦枠材17bの通路側突出片部17dの通路側に露出する見込み面上方に表示部13が設けられている。これによって、前記第一の実施の形態と同様に、各部屋の表示部13を通路の手前側から視認することができて、目的の客室を容易に見つけることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、建物内の通路に沿って複数の客室が設けられるホテルや病院等の建築物に対して利用することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 エレベータ装置
2 エレベータホール
3 通路
4 客室
5 第一壁体
5a 出入り口部
7 ドア装置
8 ドア枠
8a 左縦枠材
8b 右縦枠材
8c 上横枠材
8f 延出片部
9 ドア体
10 ピボットヒンジ
13 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の通路に沿って設けられる複数の居室の出入り口部を開閉するドア装置であって、各居室のドア装置を、出入り口部に固定されるドア枠と、該ドア枠に開閉自在に設けられるドア体とにより構成するにあたり、ドア枠に、ドア体の通路側のドア面より通路側に突出する通路側突出部を設け、ドア枠の通路の進行方向先側に位置する縦枠の通路側突出部における見込み面に、居室を識別する表示部を設ける構成としたことを特徴とする建物用のドア装置。
【請求項2】
建物内の通路に沿って設けられる複数の居室の出入り口部を開閉するドア装置であって、各居室のドア装置を、出入り口部に固定されるドア枠と、該ドア枠に開閉自在に設けられるドア体とにより構成するにあたり、ドア枠に、ドア体の通路側のドア面より通路側に突出する通路側突出部を設け、ドア枠の進行方向先側に位置する縦枠の通路側突出部を、居室を識別する表示部を設けるための見込み面にしたことを特徴とする建物用のドア装置。
【請求項3】
表示部は、照明手段により直接、または、間接照射される構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載の建物用のドア装置。
【請求項4】
照明手段は、ドア枠を構成する上枠に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の建物用のドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−74562(P2011−74562A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223564(P2009−223564)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(594128647)株式会社ジェイアール東日本建築設計事務所 (6)
【出願人】(307038540)三和シヤッター工業株式会社 (273)
【Fターム(参考)】