説明

建物用換気装置およびその取付方法

【課題】 本発明の課題は、外壁面に凹凸のある、特に合成樹脂サイディングを使用した建物用の換気装置およびその取付方法を提供する。
【解決手段】 本発明の建物用換気装置は、下地材に直接取り付けられる基台1と、この基台1に着脱自在に取り付けられる屋外フード2とからなり、基台1は、その中央に通気パイプ受入孔3を有するもので、基台1の高さが、サイディング材の見掛けの厚みとほぼ同じである。本発明の建物用換気装置の取付方法は、前記換気装置を使用し、基台1の通気パイプ受入孔3を建物から突出した通気パイプの開口部に嵌め入れ、基台の下地材取付板部を、建物の下地材に当接させて固定する工程と、基台1の上面部6の四隅近傍に立設した係止棒14を利用して、網体および/または方向板を基台1に取付ける工程と、屋外フード2の基台取付枠板部8を基台1の立上り部5に合わせて嵌入する工程とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物用の換気装置、特には合成樹脂サイディングを外装材に使用した建物用換気装置およびその取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物用の換気装置として、建物の外壁面に固定する基台と屋外フードが一体に構成された換気装置(特許文献1、特許文献2参照)や、基台(フランジ)と屋外フードが別体に構成され、建物の外壁面に固定した基台から屋外フードを着脱できる換気装置(特許文献3参照)が知られている。
【0003】
上記従来の換気装置は、いずれも基台を建物の外壁面に取り付け固定するタイプであるため、建物の外壁面が硬質でフラットである場合には、基台と建物の外壁面との間に隙間が生じることなく、防水性および設置の安定性に優れ、見栄えよく取り付け固定できるが、建物の外壁面に凹凸がある場合には、基台と建物の外壁面との間に隙間が生じて防水性が損なわれ、見栄えも悪い。
【0004】
近年、一般住宅用の外壁材には、図5に示すような合成樹脂サイディング21を使用した外壁が多用されるようになってきている。
このような合成樹脂サイディングは、耐久性に優れ、塩害による錆や凍結融解によるひび割れもなく、また、目地にコーキングを必要とせず、撥水性、耐衝撃性に優れ、軽量で施工性も良好であることから、一般住宅の長寿命の外装化粧材として、新築もしくは既存壁のリフォームに使用されるようになってきている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特許3135208号公報
【特許文献2】特開2005−291547号公報
【特許文献3】特開2003−202143号公報
【特許文献4】特開2000−240256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、建物の外壁面に、図5に示す断面形状を有する合成樹脂サイディング21を使用した場合において、この外壁面上に前記した従来の換気装置を取り付けて固定しようとすると、換気装置の基台と合成樹脂サイディング表面との間に部分的に大きな隙間ができてしまい、防水性が損なわれ、かつ見栄えが悪い。
また、前記隙間を埋めるためにコーキング処理を行なうと手間とコストがかかる上に、数年もたたないうちにコーキングがやせてひびが入ったり、埃や塵で汚れたりして補修が必要となり、さらには、コーキング処理をしてあると、メンテナンスのための着脱ができないという難点がある。
【0006】
さらにまた、合成樹脂サイディングが軽量で弾力性があるため、サイディング上への設置の安定性が悪く、取り付け固定後、強風等による風圧で、合成樹脂サイディングが振れたりした場合には、固定された通気パイプとの取り付け部で摺れて、通気パイプと基台との接合部分を破損するなどして、通気パイプと基台との密封性を損なう事態も想定される。
【0007】
本発明の課題は、前記した問題を解消できる、外壁面に凹凸のある、特に合成樹脂サイディングを使用した建築物用の換気装置およびその取付方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の建物用換気装置は、下地材に直接取り付けられる基台と、この基台に着脱自在に取り付けられる屋外フードとからなり、基台は、その中央に通気パイプ受入孔を有する構成である。本発明の建物用換気装置は、基台の高さが、サイディング材の見掛けの厚みとほぼ同じであるのが好ましい。
また、本発明の建物用換気装置の取付方法は、前記した建物用換気装置の基台の通気パイプ受入孔を、建物から突出した通気パイプの開口部に嵌め入れ、基台の下地材取付板部を、建物の下地材に当接させて固定する工程と、基台の上面部の四隅近傍に立設した係止棒を利用して、網体および/または方向板を基台に取付ける工程と、屋外フードの基台取付枠板部を基台の立上り部に合わせて嵌入する工程とからなる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の建物用換気装置は、その基台を建物の下地材に直接取り付ける構成であるため設置の安定性に優れ、また、基台の底部が外観から見えず、屋外フード部が外壁面から一体状に突出した外観となるので、見栄えが良く、凹凸のある外壁面、特に合成樹脂サイディング材を利用した外壁面用の換気装置として最適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態を、図に基づいて説明する。
図1は、本発明の建物用換気装置の基台と屋外フードの組み合わせを示す模式的斜視図であり、図2は、本発明の建物用換気装置の基台の一部を示す模式的な概略拡大断面図である。
図3は、本発明の建物用換気装置の基台に屋外フードを取り付ける前の状態を示す模式的な側面図であり、図4は、本発明の建物用換気装置の使用状態を示す模式的な概略断面図である。図5は、合成樹脂製サイディング材の一例を示す斜視図である。
【0011】
図1に示すように、本発明の建物用換気装置は、基台1と、この基台1に着脱自在に取り付けられる屋外フード2とから構成されている。
基台1は、ほぼ正方形状の下地材取付板部4と、この下地材取付板部4の中心と中心を同じくする断面がほぼ正方形状の立上り部5と、この立上り部5の上面を覆う上面部6とからなり、上面部6の中央には、通気パイプを受け入れる通気パイプ受入孔3が形成されている。
【0012】
屋外フード2は、ほぼ正方形状の枠板状カバー部7と、この枠板状カバー材7の中心と中心を同じくし基台側に立上り状に延びる、断面がほぼ正方形状の基台取付枠板部8(図3参照)と、枠板状カバー材7から反基台側に、換気の方向を横方向から下方向に変えるフード部9とからなる。
【0013】
基台1の下地材取付板部4は、基台1を建物の柱や間柱、構造用合板,不燃材等の板、胴縁等の下地材に直接当接させて固定するためのもので、下地材取付板部4の四隅および一辺の中央部に設けられた取付孔10、10を利用して、基台1を下地材にネジ止め等で固定する。その際、基台1と下地材との間には、予め下地材を雨水から防水する防水シートや防水テープにて防水処理を施しておく。
【0014】
基台1の上面部6の中央に設けられた通気パイプ受入孔3は、円筒状の通気パイプ保持部3'が下方に一体に延設されており、それらの内周面部が、建物の外壁を貫通する通気パイプ12(図2参照)の端部外周面に密着できる大きさに成形され、建物の外壁に突出した通気パイプ12の開口部に基台1の通気パイプ受入孔3を嵌め入れて、基台1の下地材取付板部4を下地材に当接させ、取付孔10を利用してネジ止めすることにより、基台1と通気パイプ12と下地材とが固定される。
【0015】
通気パイプ受入孔3の開口端内周縁には、図1、2に示すように、断面が逆L字形の切欠部11が周回状に形成されており、通気パイプ12の開口端部に通気パイプ保持部3'およびこれに続く通気パイプ受入孔3を嵌入して、通気パイプ12の開口端部外周面と切欠部11との間に出来た溝13に接着剤やシーリング剤等の接着材を充填することにより、基台1と通気パイプ12が密着状に強固に固定することができる。
【0016】
基台1の上面部6の四隅近傍には、係止棒14がそれぞれ立設している。
この係止棒14は、虫除け用に使用される網体や、空気の流れの方向を誘導する方向板を取り付けるためのもので、網体や方向板の四隅に設けた係止孔を、係止棒14にそれぞれ差込み、基台1の通気パイプ受入孔3側に寄せて、屋外フード2を基台1に取り付けることにより、網体と方向板を通気パイプ12の開口部に容易にセットすることができる。
【0017】
基台1は、その高さが、合成樹脂サイディング21(図4参照)の見掛けの厚みとほぼ同じに形成されているため、基台1を下地材22に取り付け、合成樹脂サイディング21を基台1の回りに配置した際、合成樹脂サイディング21が基台1の高さよりも上方に突出することがない。
そのため、下地材22に固定された基台1に屋外フード2を取り付けると、屋外フード2の枠板状カバー部7が、合成樹脂サイディング21と基台1との境界部を覆うので、この境界部からの雨水の侵入を防ぐとともに見栄えを良くし、さらには、前記境界部における合成樹脂サイディング21の端縁部を固定する効果も得られる。
【0018】
基台1の立上り部5には、図1に示すように、屋外フード2の係着用の凸部15が設けられるとともに、屋外フード2の基台取付枠板部8には、前記凸部15の嵌入孔16が設けられており、基台1への屋外フード2の取り付けは、屋外フード2の嵌入孔16を基台1の係着用の凸部15に嵌入するだけで、基台取付枠板部8の嵌入孔16が基台1の立上り部5の凸部15に係着されてロックされるので、取付けが容易に行なえる。
なお、図では、基台1の立上り部5に凸部15を、屋外フード2の基台取付枠板部8に嵌入孔16を設けたものを示したが、反対に屋外フード2の基台取付枠板部8に凸部を、基台1の立上り部5に嵌入孔を設けるようにしてもよい。
【0019】
屋外フード2を基台1から外す場合には、屋外フード2の基台取付枠板部8にある嵌入孔16の近傍を、外方に膨らませるようにして基台1の凸部15から外して行なう。
屋外フード2の基台取付枠板部8には、嵌入孔16の両側近傍に切欠孔17が設けられ、基台1の凸部15と屋外フード2の嵌入孔16の着脱が容易に行なえるようになっている。
【0020】
基台1の立上り部5の一辺には、中央に基台1の高さ方向に突条部18が一体に設けられ、この突条部18の頂面には、屋外フード2固定用のビス止め穴19が設けられている。
基台1への屋外フード2の取り付けは、前記したように、屋外フード2にある嵌入孔16を基台1の係着用の凸部15に嵌入して行なうが、さらに、強固な取り付けを要する場合には、屋外フード2の対応する枠板状カバー部7の部位に孔をあけ、ビスをこの孔からビス止め孔19にあてがい螺着させる。
なお、前記した屋外フード2の対応する枠板状カバー部7の部位には、予め孔を設けておいもよく、また枠板状カバー部7の部位の基台1側に、孔あけを容易にできる薄肉部を設けるようにしてもよい。
【0021】
屋外フード2の下向きの開口部側にある枠板状カバー部7には、辺縁に沿って、下方に立上り状に傾斜する傾斜板20が一体に形成されている。
この傾斜板20は、屋外フード2の枠板状カバー部7の表面を伝わって流れ落ちてきた雨水や、フード部9内に吹き込んだ雨水あるいは通気パイプ、網体等に生じた結露水が、枠板状カバー部7の下辺縁から建物の外壁面に直接かからないようにするためのものであり、これにより、従来、換気装置直下の建物の外壁面に生じていた筋状汚れの発生を防止することができる。
【0022】
なお、前記した本発明の一実施の形態では、基台1の下地材取付板部4および立上り部5、並びに屋外フード2の枠板状カバー部7および基台取付枠板部8は、それぞれ、ほぼ正方形状のものを示したが、これらに限定されるものではなく、円形、楕円形等、各種の形状のものやそれらの組み合わせた形状のものが採用できる。
【0023】
本発明の換気装置を構成する基台1および屋外フード2は、合成樹脂製のものが一般に用いられるが、金属製等のものであってもよい。
また、基台1および屋外フード2は、建物の外壁色に合わせて選択できるように各種色合いに着色される。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によれば、外壁面に凹凸のある外装材、特に合成樹脂サイディングに最適な建物用換気装置およびその取付方法を提供できるため、その産業上の利用可能性は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の建物用換気装置の基台と屋外フードの組み合わせを示す模式的斜視図である。
【図2】本発明の建物用換気装置の基台の一部を示す模式的な拡大概略断面図である。
【図3】本発明の建物用換気装置の基台への屋外フードの取付け前の状態を示す模式的な側面図である。
【図4】本発明の建物用換気装置の使用状態を示す模式的な概略断面図である。
【図5】合成樹脂製サイディングの一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 基台
2 屋外フード
3 通気パイプ受入孔
3' 通気パイプ保持部
4 下地材取付板部
5 立上り部
6 上面部
7 枠板状カバー部
8 基台取付枠板部
9 フード部
10 取付孔
11 切欠部
12 通気パイプ
13 溝
14 係止棒
15 凸部
16 嵌入孔
17 切欠孔
18 突条部
19 ビス止め孔
20 傾斜板
21 合成樹脂サイディング
22 下地材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地材に直接取り付けられる基台と、この基台に着脱自在に取り付けられる屋外フードとからなり、基台は、その中央に通気パイプ受入孔を有することを特徴とする建物用換気装置。
【請求項2】
基台の高さが、サイディングの見掛けの厚みとほぼ同じである請求項1に記載の建物用換気装置。
【請求項3】
基台の通気パイプ受入孔を建物から突出した通気パイプの開口部に嵌め入れ、基台の下地材取付板部を、建物の下地材に当接させて固定する工程と、基台の上面部の四隅近傍に立設した係止棒を利用して、網体および/または方向板を基台に取付ける工程と、屋外フードの基台取付枠板部を基台の立上り部に合わせて嵌入する工程とからなる請求項1または請求項2記載の建物用換気装置の取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−292369(P2007−292369A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−119688(P2006−119688)
【出願日】平成18年4月24日(2006.4.24)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】