説明

建築パネルの施工構造

【課題】建築パネルを壁面に取り付け施工した構造において、建築パネル同士の継目からの紫外線や水、蟻等の侵入を十分に防止する。
【解決手段】芯材層2Aと、この芯材層2Aの前面に設けられた表面層2Bとを有し、少なくとも1つの端面2aには芯材層2Aが露出している建築パネル2を壁面1に取り付けた建築パネルの施工構造。複数枚の建築パネル2,2が、芯材層露出端面同士2a,2aを向き合わせて、且つ芯材層露出端面2a,2a同士の間に間隙をあけて配設されている。芯材層露出端面2a,2a同士の間にシール材3が充填され、且つこのシール材3が、芯材層露出端面2a,2aに沿う建築パネル前面縁部2bにも張り出して付着している。建築パネル同士の継目から紫外線や水、虫等が侵入することが十分に防止されるため、紫外線や水、虫等により建築パネルの端面2aに露出した芯材層2Aが劣化することがなく、芯材層2Aの劣化による取り付け強度や断熱性能等の芯材層性能の低下も防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯材層と該芯材層の前面に設けられた表面層とを有した建築パネルを壁に取り付け施工してなる建築パネルの施工構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築パネルとして、ポリウレタンフォーム等の合成樹脂発泡体よりなる断熱材層等の芯材層の表裏にアルミニウム板や鋼板等よりなる表面材と裏面材を設けたものが知られている(特開平3−241161号公報、特開平11−13252号公報)。
【0003】
前者の特開平3−241161号公報の建築パネルにあっては、向かい合う1対の側端面において芯材層が露出している(同号公報の第1図参照)。
【0004】
後者の特開平11−13252号公報にあっては、建築パネルの4端面のすべてにおいて芯材層が露出している(同号公報の図3参照)。
【0005】
このような建築パネルは、壁面に対して釘打ち等で取り付け施工される。この際、一般的には、隣接する建築パネル同士の間に熱膨張代としてわずかな間隙をあけて、取り付け施工される。
【0006】
このように、隣接する建築パネル同士の継目に間隙があいていると、この間隙から紫外線や雨水、場合においては白蟻等の虫などが侵入し、建築パネルの端面に露出した芯材層を劣化(肉痩せ)させる。芯材層が劣化すると、釘打ちによって留め付けられている建築パネルの留め付け強度が弱くなって建築パネルががた付いたり、著しい場合には建築パネルの脱落に到る。また、芯材層が断熱材層である場合、断熱材層の断熱性能が低下するなど、芯材層本来の機能性が損なわれる。
【0007】
特開平11−13252号公報には、端面を突き合わせて建築パネルを壁面に取付施工した構造において、隣り合う建築パネルの継目を跨ぐように防水テープを貼ることが記載されている(同号公報図7,第0024段落)。
【特許文献1】特開平3−241161号公報
【特許文献2】特開平11−13252号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特開平11−13252号公報のように、建築パネルの継目を跨ぐように防水テープを貼っても、紫外線や水が建築パネル同士の間に侵入することを確実に防止することはできない。一旦、建築パネル同士の継目の間隙に水が入り込むと、端面に露出した芯材層にカビが発生する等の劣化が生じる。また、建築パネル前面に防水テープを貼っただけでは、白蟻などが建築パネル同士の継目の間隙に入り込むことを十分に防止することはできず、入り込んだ白蟻が端面に露出した芯材層中で巣を作って繁殖するおそれもある。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点を解消し、建築パネルを壁面に取り付け施工した構造において、建築パネル同士の継目からの紫外線や水、蟻等の侵入を十分に防止することできる建築パネルの施工構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明(請求項1)の建築パネルの施工構造は、芯材層と、該芯材層の前面に設けられた表面層とを有し、少なくとも1つの端面には該芯材層が露出している建築パネルを壁面に取り付けた構造であって、複数枚の該建築パネルが、端面同士の間に間隙をあけて配設されている建築パネルの施工構造において、該端面同士の間にシール材が介在され、且つ該シール材が、少なくとも該芯材層露出端面に沿う建築パネル前面縁部に張り出して付着していることを特徴とする。
【0011】
請求項2の建築パネルの施工構造は、請求項1において、該芯材層露出端面にプライマーが塗布されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3の建築パネルの施工構造は、請求項1又は2において、該端面同士の間の間隙の全体に前記シール材が充填されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4の建築パネルの施工構造は、請求項1又は2において、該端面同士の間の間隙の奥部にバックアップ材が挿填され、該バックアップ材よりも前側に前記シール材が充填されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の建築パネルの施工構造にあっては、端面同士の間にシール材が介在され、且つシール材が、少なくとも芯材層露出端面に沿う建築パネル前面縁部に張り出して付着しているため、建築パネル同士の継目から紫外線や水、虫等が侵入することが確実に防止される。
【0015】
このため、紫外線や水、虫等により建築パネルの端面に露出した芯材層が劣化することがなく、芯材層の劣化による取り付け強度や断熱性能等の芯材層性能の低下も防止される。
【0016】
この芯材層露出端面にプライマーを塗布しておくことにより、芯材層露出端面へのシール材の付着性が著しく向上する。
【0017】
この端面同士の間の間隙の全体にシール材を充填することにより、芯材層内への紫外線や水、虫等の侵入が確実に防止される。
【0018】
端面同士の間の間隙の奥部にバックアップ材を挿填し、このバックアップ材よりも前側にシール材を充填した構成とした場合には、シール材の使用量を低減することができる。また、シール材の充填作業性も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に図面を参照して本発明の建築パネルの施工構造の実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
図1及び図2は本発明の建築パネルの施工構造の実施の形態を示す建築パネル同士の継目部分の断面図である。
【0021】
図1,2に示される建築パネル2は、表面材(表面層)2Bと裏面材(裏面層)2Cとの間に合成樹脂発泡体等の芯材(芯材層)2Aを介在させて一体化したものであり、その端面2aに芯材2Aが露出している。この建築パネル2は、この芯材露出端面2a,2a同士を向き合わせ、かつこの芯材露出端面2a,2a同士の間に間隙をあけて、図示しない釘等により、壁面1に取り付け施工されている。
【0022】
図1の建築パネルの施工構造にあっては、芯材露出端面2a,2a同士の間隙の全体にシール材3が充填されている。図2の建築パネルの施工構造にあっては、芯材露出端面2a,2a同士の間隙の奥部にバックアップ材4が挿填され、このバックアップ材4よりも前側にシール材3が充填されている。
【0023】
図1,2のいずれの構造にあっても、シール材3は芯材露出端面2aに沿う建築パネル前面縁部2bにも張り出して付着している。このように、シール材3或いはシール材3とバックアップ材4とが芯材露出端面2a,2a同士の間隙に充填され、かつ建築パネル前面縁部2bにもシール材3が張り出して付着していることにより、建築パネル2,2同士の間隙への紫外線や水、虫等の侵入は確実に防止される。
【0024】
シール材3としては、タイル用の接着剤を用いても良く、また、専用のシール材を用いても良い。タイル用の接着剤としては、エポキシ系、変性シリコン、エポキシウレタン、EPDM、EPM、ポリ塩化ビニル系、クロロプレン系、クロロスルホン化ポリエチレン系、エチレンプロピレン系、アスファルト含浸ポリウレタン系等の弾性を有するもの、もしくはポリブデン系、ポリプロピレン系、ブチル系、ゴムアスファルト系等の非弾性型のものを用いることができるが、接着性、耐候性、耐水性、耐熱性、耐オゾン性、耐薬品性等に優れている点からエポキシ系、変性ウレタン、エポキシウレタンが好ましい。また、シール材3としては、一般のシリコーン系(反応硬化型、湿気硬化型)、変成シリコーン系(反応硬化型)、ポリサルファイド系(反応硬化型)、ポリウレタン系(反応硬化型、湿気硬化型)、SBR系(乾燥硬化型)、アクリル系(乾燥硬化型)等よりなるコーキング材を使用しても良い。
【0025】
シール材3としては、これらのうち、建築パネル2の熱膨張による伸縮を吸収し得る弾性接着剤が好ましく、例えば、変性シリコンやエポキシ変性ウレタンが好適である。
【0026】
バックアップ材4としても、弾性を有するものが好ましく、例えば発泡ポリエチレン、発泡EPDM材料よりなる棒状部材等を用いることができる。このバックアップ材4は、その直径(長さ方向に直交する断面が円形でない場合は、その断面における最大寸法ないし一辺の長さ)が芯材露出端面2a,2a同士の間隙と同等であるものが好ましいが、わずかに大きくても十分にその弾性により芯材露出端面2a,2a同士の間隙に充填することができ、また、わずかに小さくても、更にシール材3を充填することでこの間隙を十分に埋めることができる。
【0027】
このようなバックアップ材4を用いることにより、前述の如く、シール材3の使用量を低減すると共に、シール材3の充填作業性を高めることができる。即ち、特に芯材露出端面2a,2a同士の間隙が深い場合、シール材3をこの間隙の奥深くまで充填することは困難であるが、このように、間隙の奥部にバックアップ材4を充填しておくことにより、それよりも前側の浅い部分にのみシール材3を充填すれば良くなり、シール材3の充填を容易に行うことができるようになる。
【0028】
本発明において、シール材3が芯材露出端面2aに沿う建築パネル前面縁部2bに張り出して付着していることは極めて重要であり、このようなシール材3の張り出し部3Aを形成することにより、この間隙部分への紫外線や水、虫の侵入を確実に防止することができる。
【0029】
このシール材3の張り出し部3Aによる上記効果を確実に得るために、張り出し部3Aの幅Wは、建築パネル2の寸法や継目部分の間隙の大きさによっても異なるが、5〜30mm程度とすることが好ましい。この張り出し部3Aの幅Wが5mm未満では、紫外線や水、虫の侵入を確実に防止し得ない。張り出し部3Aの幅Wが30mmを超えても上記効果に大差はなく、一方で接着剤使用量が増大してコスト面で不利である。
【0030】
また、シール材3の張り出し部3Aの厚さdについても、建築パネル2の寸法や継目部分の間隙の大きさによっても異なるが、10μm〜1mm、特に100μm〜0.5mm程度とすることが好ましい。この張り出し部3Aの厚さdが10μm未満では、紫外線や水、虫の侵入を確実に防止し得ない。張り出し部3Aの厚さdが1mmを超えても上記効果に大差はなく、シール材使用量が増大してコスト面で不利である上に、建築パネル2の表面にシール材3による段差が形成され、この表面に更にタイル等を施工する場合、好ましくない。
【0031】
なお、芯材露出端面2a、更には、シール材3の張り出し部3Aが形成される前面縁部2bを予めプライマー処理しておくことにより、シール材3の接着性が向上し、この間隙部分の気密性をより一層高めて、紫外線や水、虫等の侵入を確実に防止することができ、好ましい。
【0032】
この場合、使用されるプライマー処理剤は、用いるシール材3及び建築パネル2との接着性に優れたものであれば良く、特に制限はないが、例えばシール材としてエポキシ系接着剤を用いる場合、プライマー処理剤としてはウレタン樹脂を酢酸エチルで希釈したもの、或いは、アクリルシリコン樹脂をトルエン、キシレンで希釈したものを用いることができ、シール材として変性シリコン、エポキシウレタン接着剤を用いる場合にも、プライマー処理剤としては上記と同様のものを用いることができる。
【0033】
本発明の建築パネルの施工構造に適用される建築パネルとしては、端面に芯材層が露出した従来公知の建築パネルが挙げられ、芯材層露出端面は、建築パネルの一端面のみであっても良く、向かい合う2端面であっても良く、また、4端面すべてに芯材層が露出しているものであっても良い。向かい合う2端面に芯材層が露出している建築パネルは、一般に、この芯材層露出端面が鉛直方向となるように隣接する建築パネル同士の芯材層露出端面を向き合わせて壁面に施工される。このため、シール材は、左右に隣接する建築パネル同士の継目部分に形成された鉛直方向の間隙に充填されるが、この芯材層露出端面が水平方向となるように建築パネルが壁面に施工される場合には、シール材は、上下に隣接する建築パネル同士の継目部分に形成される鉛直方向の間隙に充填される。また、4端面すべてに芯材層が露出している建築パネルを施工する場合には、シール材は、左右に隣接する建築パネル同士の継目部分に形成された鉛直方向の間隙と、上下に隣接する建築パネル同士の継目部分に形成される鉛直方向の間隙とに充填される。
【0034】
本発明において、用いる建築パネル2は、従来、一般的に提供されているもので良く、建築パネル2を構成する表面材2Bとしては、金属薄板、例えば鉄、アルミニウム、銅、ステンレス、チタン、アルミ・亜鉛合金メッキ鋼板、ホーロー鋼板、クラッド鋼板、ラミネート鋼板(塩ビ鋼板等)、サンドイッチ鋼板(制振鋼板等)等をロール成形、プレス成形、押出成形等によって各種形状に成形したものなどが挙げられる。これらは必要に応じて塗装などの表面処理が施されていても良い。
【0035】
裏面材2Cとしては、上記表面材2Bの素材の他に、アスベスト紙、クラフト紙、アスファルトフェルト、金属箔(Al、Fe、Pb、Cu)、合成樹脂シート、ゴムシート、布シート、石膏紙、水酸化アルミ紙、ガラス繊維不織布等の1種、又は2種以上をラミネートしたもの、又は防水処理、難燃処理されたシート状物等が挙げられる。
【0036】
芯材2Aとしては、ポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌレートフォーム、フェノールフォーム、塩化ビニルフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリスチレンフォーム、ユリアフォーム等の合成樹脂発泡体からなるものが挙げられる。また、芯材2A中には各種難燃材として軽量骨材(パーライト粒、ガラスビーズ、石膏スラグ、タルク石、シラスバルーン等)、繊維状物(グラスウール、ロックウール、カーボン繊維、グラファイト等)を混在させ、耐火性、防火性を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の建築パネルの施工構造の実施の形態を示す断面図である。
【図2】本発明の建築パネルの施工構造の別の実施の形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 壁
2 建築パネル
2A 芯材
2B 表面材
2C 裏面材
3 シール材
3A 張り出し部
4 バックアップ材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材層と、該芯材層の前面に設けられた表面層とを有し、少なくとも1つの端面には該芯材層が露出している建築パネルを壁面に取り付けた構造であって、
複数枚の該建築パネルが、端面同士の間に間隙をあけて配設されている建築パネルの施工構造において、
該端面同士の間にシール材が介在され、且つ該シール材が、少なくとも該芯材層露出端面に沿う建築パネル前面縁部に張り出して付着していることを特徴とする建築パネルの施工構造。
【請求項2】
請求項1において、該芯材層露出端面にプライマーが塗布されていることを特徴とする建築パネルの施工構造。
【請求項3】
請求項1又は2において、該端面同士の間の間隙の全体に前記シール材が充填されていることを特徴とする建築パネルの施工構造。
【請求項4】
請求項1又は2において、該端面同士の間の間隙の奥部にバックアップ材が挿填され、該バックアップ材よりも前側に前記シール材が充填されていることを特徴とする建築パネルの施工構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2006−45824(P2006−45824A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225740(P2004−225740)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】