説明

建築ボード用途のためのワックス組成物

低いn−パラフィン含有量を有するワックスまたは油を、より高いn−パラフィン含有量を有するワックスと混合して、少なくとも21wt%のn−パラフィンを有するワックス組成物を提供することにより、建築ボード製造に用いるのに適切なワックス組成物を調製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、建築ボード用途のためのワックス組成物に関する。より詳しくは、本発明は、なかんずく、建築ボード用途で用いるための、種々のワックスの適合性の測定方法、および適切なワックス組成物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーティクルボード、中密度ファイバーボード、配向ストランドボードなどの建築用途で用いられる複合ボード製品は、多年に亘って製造されており、またその製造方法は、工業的に周知である。
【0003】
これらの複合物質の主要成分は、天然の繊維物質である。ボード製品を形成するに際しては、繊維物質を、典型的には少量の樹脂およびワックス質組成物と混合し、シートに形成し、更に圧力および熱に付す。
【0004】
従って、建築ボード用途で用いるためのワックス組成物を選択するに際しては、油含有量、およびストリームグレードまたは粘度範囲(即ち、SUS粘度@100゜F)に焦点が置かれてきた。この粘度は、典型的には「ニュートラル」数(例えば100N、300N等)として示される。いずれにしても、先行研究(ワックスのエマルジョンおよびそのままでの(neat)適用を利用するものの両者)では、より軽質のストリームグレードのワックス(例えば、グレード30(550N)未満)、およびより低い油含有量のワックスに関して、より改良されたボード特性を示す傾向が示された。例えば、非特許文献1には、ワックス含有量0〜45%および油含有量0〜30wt%に対応するウェハーボードの膨潤が論じられ、特許文献1には、30wt%超の油含有量を有するワックスを用いる複合ボードの調製が開示される。
【0005】
複合ボードを製造するに際して、低いワックスストリームグレード(即ち、グレード30(550N)未満)を使用すると、ボードの品質および性能は、典型的には申し分ないが、高いワックスストリームグレード(即ち、約30(550N)超)を用いると、ボード品質の問題がしばしば生じることが、経験的に示されている。安全および環境上の理由から、より高いグレードのストリームワックスを用いることが望ましいことがしばしばあるので、このことは特に問題が多い。例えば、配向ストランドボードの製造においては、典型的には400゜F(205℃)超で作動する加圧に際し、揮発性を最少にするのに、重質ストリームグレードのワックスが望ましい。
【0006】
従って、複合ボード製造のためにワックスボードの適合性を予測することを可能にし、また、必要に応じて、ワックス組成をそのようなボード製造に適切であるように調整することを可能にする必要性が存在する。また、排出要件を満足するように、建築ボード用途で用いられるワックス組成物の揮発性を調整することを可能にする必要性が存在する。加えて、多数の生成物ストリームを混合して適切なワックス組成物とすることを可能にすることは、供給業者に対し、市場の要求を満足する際の柔軟性を提供する。本発明は、これらおよび他の必要性に関する。
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,183,849号明細書
【非特許文献1】フシュ(Hsu」ら著「ウェハーボードの特性に対するワックスのタイプおよび含有量の効果」国際パーティクルボード/複合物質シンポジウム、第85〜93頁、1990年4月3〜5日
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
ごく簡単には、本発明は、ワックス組成物のn−パラフィン含有量が、建築ボードに用いられるワックスの重要な組成パラメーターであり、ワックス組成物が適切であるためには、このn−パラフィン含有量は、少なくとも21wt%であるべきであるという発見に基づく。従って、建築ボード用途のためのワックスの適合性を、そのn−パラフィン含有量に基づいて決定でき、またワックスおよび油の混合物を、必要なn−パラフィン含有量を満足するように構成しうる。
【0009】
これらおよび他の特徴は、以下により詳細に記載される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
建築業で用いられる複合ボード製品(パーティクルボード、中密度ファイバーボード、ウェハーボード、配向ストランドボードなど)は、典型的には、天然の繊維質物質、樹脂およびワックス組成物から製造される。
【0011】
典型的に用いられる天然の繊維質物質には、木材チップ、ウェーハ、おがくず、木材繊維、綿および他の植物繊維、わら、竹セルロースなどが含まれる。繊維質物質は一般に、最終ボード製品の約90〜98wt%を構成する。
【0012】
製造ボード物質を製造する際に用いられる樹脂は、建築ボード製品を製造する当業者に周知であり、その選択は、製造業者の特定の組成上および経済的な必要性による。これらの樹脂の限定しない例は、ホルムアルデヒドを他の適切な化合物と重縮合することによって製造される熱硬化性樹脂である。これらの例証は、フェノールホルムアルデヒド、ユリアホルムアルデヒド、およびメラミンホルムアルデヒド樹脂である。
【0013】
複合ボード製造で用いられるワックス組成物は、一種以上の天然、合成または石油ワックス、および炭化水素質油を含む。
【0014】
合成ワックスには、フィッシャー−トロプシュプロセスによって合成ガスから製造されるワックスが含まれる。他の合成ワックスには、ポリエチレンワックス、エチレンコポリマーワックス、カーボワックスが含まれる。
【0015】
石油ワックスには、例えば、石油精製プロセスの一部であるワックス質炭化水素油ストリームの溶剤脱ロウによって回収されたワックス(スラックワックスを含む)が含まれ、また水素化分解ワックスも含まれる。他の石油ワックスには、ワックス質留出油、ラフィネート、ペトロラタム、マイクロクリスタリンワックス等などのワックス質石油材が含まれる。
【0016】
本発明においては、ワックス組成物は、全ワックス組成物の重量を基準として少なくとも21wt%(例えば、21wt%〜約90wt%、好ましくは21wt%〜30wt%)を含む。
【0017】
建築ボード用途で用いられる典型的なワックスの分析では、幅広い範囲のn−パラフィン含有量が示された。これは、ワックスの平均分子量が増大するにつれて減少する。種々のストリーム基準に対する典型的なn−パラフィン含有量の範囲を表1に示す。
【0018】
【表1】

【0019】
ブライトストックスラックワックスおよびマイクロクリスタリンワックスは、典型的には、ノルマルパラフィンを有意量で含まない。
【0020】
従って、ワックスのn−パラフィン含有量の分析によって、建築ボード用途の、グレード約30超のグレードのワックス組成物の適合性が決定され、少なくとも21wt%のn−パラフィン含有量を有するものが、適切と考えられる。
【0021】
適合性の要件を満足するワックス組成物を、同じか、または異なる粘度グレードのワックス組成物と混合すると、最小n−パラフィン含有量21wt%が依然として満足される限り、適切なボード性能を満足しうる。従って、必要に応じて揮発性を調整でき、また経済性にまで影響が及ぶこともありうる。混合パラメーターの計画、およびそれらのワックス組成物への影響を表2に示す。
【0022】
【表2】

【0023】
20wt%超の油を有する600Nスラックワックスは恐らく、21wt%未満のn−パラフィン含有量を有するという、前記の考察を更に説明するため、n−パラフィン60〜80wt%を含む完全精製された250〜300N石油ワックス、または典型的にはn−パラフィン90wt%超を含む非異性化フィッシャー−トロプシュワックスを、スラックワックスと混合して、ワックス組成物のn−パラフィン含有量が、少なくとも21wt%、好ましくは21wt%〜30wt%の範囲にすることができる。
【0024】
或いは、脱ロウ油(100〜850Nの範囲の基油など)を、充分な石油ワックスまたは非異性化フィッシャー−トロプシュワックスと混合して、少なくとも21wt%のn−パラフィンを含むワックス組成物を提供する。
【実施例】
【0025】
一連のワックス混合物を、n−パラフィンおよび油含有量を変化させて調製した。次いでこれらの混合物を、建築ボードの製造で用いるために、水吸収および内部結合力に関して評価した。実施例のワックス組成物および試験結果を表3に示す。
【0026】
【表3】

【0027】
厚さ膨潤および水吸収に対するn−パラフィン含有量の効果を図1に図示し、厚さ膨潤に対する油含有量の効果を図2に図示する。
【0028】
グラフおよびデータは、少なくとも21wt%のn−パラフィンレベルが、良好なボード性能に必要であること、および油含有量は、それが、n−パラフィン含有量を21wt%未満に低減するのに充分なほど高くない限り、全く影響しないことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の特徴を説明するグラフである。
【図2】本発明の特徴を説明するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築ボード製造に用いるのに適切なワックス組成物の調製方法であって、
21wt%未満のn−パラフィン含有量を有するワックスストリームまたは油を、21wt%超のn−パラフィン含有量を有する充分量のワックスと混合して、少なくとも21wt%のn−パラフィンを有するワックス組成物を提供する工程
を含むことを特徴とするワックス組成物の調製方法。
【請求項2】
前記ワックスストリームは、グレード30以上のワックスストリームであることを特徴とする請求項1に記載のワックス組成物の調製方法。
【請求項3】
油は、潤滑油基油であることを特徴とする請求項1に記載のワックス組成物の調製方法。
【請求項4】
前記ワックスは、非異性化フィッシャー−トロプシュワックスであることを特徴とする請求項2または3に記載のワックス組成物の調製方法。
【請求項5】
天然の繊維質物質、並びに少量の樹脂およびワックス質組成物を含み、前記ワックス質組成物は、潤滑油基油および少なくとも21wt%のn−パラフィンワックスを含むことを特徴とする複合ボード製品。
【請求項6】
複合ボード製造に用いるのに適切であり、かつ特定の選択された揮発性を有する混合ワックス組成物の形成方法であって、
(a)グレード30以上の第一のワックスを得る工程;
(b)前記第一のワックスのn−パラフィン含有量を測定する工程;および
(i)前記n−パラフィン含有量が21wt%未満である場合には、前記第一のワックスを、21wt%超のn−パラフィンを有し、かつ粘性を有する充分な第二のワックスと混合し、それにより前記混合物は、少なくとも21wt%のn−パラフィンおよび選択された揮発性を有する工程;
(ii)前記n−パラフィン含有量が21wt%以上である場合には、前記第一のワックスを、選択された揮発性を有し、かつ少なくとも21wt%のn−パラフィン含有量を有する混合物を提供するのに充分な量の第二のワックスまたは油と混合する工程
を含むことを特徴とする混合ワックス組成物の形成方法。
【請求項7】
前記第一のワックスは、スラックワックスであることを特徴とする請求項6に記載の混合ワックス組成物の形成方法。
【請求項8】
前記第一のワックスは、非異性化フィッシャー−トロプシュワックスであり、また前記第一のワックスを脱ロウ油と混合することを特徴とする請求項6に記載の混合ワックス組成物の形成方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築ボード製造に用いるのに適切なワックス組成物の調製方法であって、
21wt%未満のn−パラフィン含有量を有する第1のワックスストリームを、21wt%超のn−パラフィン含有量を有する充分量の第2のワックスと混合して、少なくとも21wt%のn−パラフィンを有するワックス組成物を提供する工程であって、前記第1のワックスストリームは、本質的にスラックワックス、スラックワックスと脱ロウ油の組み合わせおよび非異性化フィッシャー−トロプシュワックスと脱ロウ油の組み合わせよりなる群から選択される工程
を含むことを特徴とするワックス組成物の調製方法。
【請求項2】
前記第1のワックスストリームは、グレード30以上のワックスストリームであることを特徴とする請求項1に記載のワックス組成物の調製方法。
【請求項3】
前記脱ロウ油は、潤滑油基油であることを特徴とする請求項1に記載のワックス組成物の調製方法。
【請求項4】
前記第2のワックスは、非異性化フィッシャー−トロプシュワックスであることを特徴とする請求項2または3に記載のワックス組成物の調製方法。
【請求項5】
天然の繊維質物質、並びに少量の樹脂およびワックス質組成物を含む建築ボード製品であって前記繊維質物質は、前記建築ボード製品の総重量を基準として90〜98wt%を構成し、前記ワックス質組成物は、潤滑油基油および少なくとも21wt%のn−パラフィンワックスを含むことを特徴とする建築ボード製品。
【請求項6】
複合ボード製造に用いるのに適切であり、かつ特定の選択された揮発性を有する混合ワックス組成物の形成方法であって、
(a)グレード30以上の第一のワックスを得る工程;
(b)前記第一のワックスのn−パラフィン含有量を測定する工程;および
(i)前記n−パラフィン含有量が21wt%未満である場合には、前記第一のワックスを、21wt%超のn−パラフィンを有し、かつ粘性を有する充分な第二のワックスと混合し、それにより前記混合物は、少なくとも21wt%のn−パラフィンおよび選択された揮発性を有する工程;
(ii)前記n−パラフィン含有量が21wt%以上である場合には、前記第一のワックスを、選択された揮発性を有し、かつ少なくとも21wt%のn−パラフィン含有量を有する混合物を提供するのに充分な量の第二のワックスまたは油と混合する工程
を含むことを特徴とする混合ワックス組成物の形成方法。
【請求項7】
前記第一のワックスは、スラックワックスであることを特徴とする請求項6に記載の混合ワックス組成物の形成方法。
【請求項8】
前記第一のワックスは、非異性化フィッシャー−トロプシュワックスであり、また前記第一のワックスを脱ロウ油と混合することを特徴とする請求項6に記載の混合ワックス組成物の形成方法。
【請求項9】
前記油は、潤滑油基油であることを特徴とする請求項5に記載の建築ボード製品。
【請求項10】
天然の繊維質物質、並びに少量の樹脂およびワックス質組成物を含む建築ボード製品であって
前記繊維質物質は、前記建築ボード製品の総重量を基準として90〜98wt%を構成し、
前記ワックス質組成物は、21wt%未満のn−パラフィン含有量を有する第1のワックスストリームと、21wt%超のn−パラフィン含有量を有する充分量の第2のワックスの、少なくとも21wt%のn−パラフィンを有するワックス質組成物を提供する混合物よりなる
ことを特徴とする建築ボード製品。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−517601(P2006−517601A)
【公表日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501038(P2006−501038)
【出願日】平成16年1月20日(2004.1.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/001388
【国際公開番号】WO2004/065488
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】