説明

建築材料及びその防湿処理方法

【課題】環境汚染を引き起こさず、優れた防湿性と、他の材料に対する優れた接着性能とを備え、取り扱いが容易な建築材料及びその防湿処理方法を提供する。
【解決手段】本発明の建築材料は、無機質建材または木質建材であって、ワックスと乳化分散剤とを含む水分散液中で、(メタ)アクリル酸エステルを含む第1のモノマー成分または、スチレンもしくはその誘導体と、(メタ)アクリル酸エステルとを含む第2のモノマー成分を乳化重合して得られるアクリル樹脂系エマルジョンまたは、スチレン−アクリル樹脂系エマルジョンからなる防湿処理用樹脂組成物を、少なくとも1つの面に塗工してなり、接着剤により他の材料と接着可能である。防湿処理方法は、前記防湿処理用樹脂組成物を前記無機質建材または木質建材の少なくとも1つの面に塗工する。塗工量は、該防湿処理用樹脂組成物中の固形分として15〜35g/mであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床下地、壁下地等に用いられる無機質建材または、内外装材、フローリング材等に用いられる木質建材等の建築材料及び該建築材料の防湿処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木質材料は、軽量で容易に加工でき、比較的強度が大きい上に、表面に美観性等を備えているので、建築材料として各種用途に用いられている。一方、前記木質材料は、比較的短期間に含有水分量が変化しやすい性質を備えており、保管中、運搬中あるいは建築中等に大きな環境の変化に曝されると、膨張、収縮等の寸法の変化を起こしやすい。この結果、前記木質材料は、製品に反り、狂い、割れ等が発生し易いという問題がある。前記問題を解決するために、従来、前記木質材料に防湿処理を施すことが行われている。
【0003】
前記防湿処理の1つとして、前記木質材料に塩化ビニリデン系樹脂を含む塗料を塗布する方法が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。前記塩化ビニリデン系樹脂を含む塗料によれば、前記木質材料に優れた防湿性を付与することができる。しかし、前記塩化ビニリデン樹脂を含む塗料により十分な防湿性を得るためには、前記木質材料に該塗料を塗布した後、加熱乾燥させる必要がある。また、前記塩化ビニリデンは塩素を含有するため、前記塗料を塗布した木質材料は焼却処理時にダイオキシン等の有害物質を発生し、環境汚染の原因となるおそれがある。
【0004】
環境汚染を引き起こさない前記防湿処理として、前記木質材料にパラフィンワックスのエマルジョンを塗布する方法が知られている。前記パラフィンワックスのエマルジョンによっても前記木質材料に優れた防湿性を付与することができる。しかし、前記パラフィンワックスのエマルジョンを塗布した前記木質材料では、防湿性を発現させるために、該パラフィンワックスの融点以上の温度で乾燥しなければならず、乾燥設備を必要とする。また、前記パラフィンワックスのエマルジョンを塗布した前記木質材料は、表面にパラフィンワックス層が形成されるために、表面が滑りやすく相互に堆積したときに滑落するおそれがある。さらに、表面にパラフィンワックス層が形成されるために、接着性が著しく低下し、接着剤を介して他の材料と接着する等の二次加工が難しくなるという不都合がある。
【0005】
また、環境汚染を引き起こさない前記防湿処理として、前記木質材料にスチレンブタジエンゴム(SBR)ラテックスを塗布する方法も知られている。前記SBRラテックスを塗布する方法によれば、該SBRラテックスが前記木質材料の表面に乾燥被膜を形成することにより、該木質材料に含有される水分等の成分が大気中に揮散することを防止して、該木質材料の割れを防止することができる。しかしながら、前記乾燥被膜は、それ自体の吸湿により粘性が高くなるので、該乾燥被膜を形成した木質材料同士を堆積すると、該木質材料が相互に粘着(ブロッキング)しやすくなるという不都合がある。
【特許文献1】特開平11−269425号公報
【特許文献2】特開平11−348180号公報
【特許文献3】特開2000−248140号公報
【特許文献4】特開2000−119528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる不都合を解消して、環境汚染を引き起こすことなく、優れた防湿性を備えると共に、他の材料に対して優れた接着性能を備え、しかも取り扱いが容易な建築材料を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明の目的は、前記建築材料を得る防湿処理方法を提供することにもある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明の建築材料は、無機質建材または木質建材であって、ワックスと乳化分散剤とを含む水分散液中で、アクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルを含む第1のモノマー成分を乳化重合して得られるアクリル樹脂系エマルジョン、または、ワックスと乳化分散剤とを含む水分散液中で、スチレンもしくはその誘導体と、アクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルとを含む第2のモノマー成分を乳化重合して得られるスチレン−アクリル樹脂系エマルジョンからなる防湿処理用樹脂組成物を、少なくとも1つの面に塗工してなり、接着剤により他の材料と接着可能であることを特徴とする。
【0009】
本発明の建築材料に用いる前記防湿処理用樹脂組成物は、前記第1のモノマー成分または前記第2のモノマー成分を前記ワックスと乳化分散剤とを含む水分散液中で乳化重合することにより得られる。前記防湿処理用樹脂組成物は、前記第1のモノマー成分用いた場合には前記アクリル樹脂系エマルジョンとなり、前記第2のモノマー成分用いた場合には前記スチレン−アクリル樹脂系エマルジョンとなる。前記エマルジョンは、いずれも前記ワックスの粒子が均一に微分散されている。
【0010】
本発明の建築材料は、前記アクリル樹脂系エマルジョンまたはスチレン−アクリル樹脂系エマルジョンからなる防湿処理用樹脂組成物が塗工されることにより、その表面に前記いずれかのエマルジョンの乾燥被膜が形成されている。前記エマルジョンの乾燥被膜は、いずれも樹脂のマトリックス中に前記ワックスの粒子が均一に微分散されており、該ワックスの粒子により、優れた防湿性を得ることができる。この結果、大気中の水分が前記建築材料に吸収されることを防止することができると共に、前記建築材料に含まれる水分、揮発性有機化合物(VOC)等の成分が大気中に揮散することを防止することができる。
【0011】
この結果、本発明の建築材料が無機質建材である場合には、大気中の水分が該無機質建材に吸収されることによる割れ、亀裂の発生を防止することができ、該無機質建材に含有されるVOC等の成分が大気中に揮散されることによる環境汚染を防止することができる。また、本発明の建築材料が木質建材である場合には、該木質建材が大気中の水分を吸収して膨張することによる変形、寸法の狂いを防止することができ、該木質建材に含有される水分が大気中に揮散されることによる反り、割れ等の発生を防止することができる。さらに、本発明の建築材料が木質建材である場合には、該木質建材に含有されるVOC等の成分が大気中に揮散されることによる環境汚染を防止することができる。
【0012】
また、前記エマルジョンの乾燥被膜は、いずれも樹脂のマトリックス中に前記ワックスの粒子が取り込まれているので、該ワックスが他の材料に転移することがない。従って、前記防湿処理用樹脂組成物が塗工されている本発明の建築材料によれば、他の材料に対する接着性が阻害されることが無く、他の材料に対して優れた接着性能を得ることができる。
【0013】
また、前記エマルジョンの乾燥被膜は、いずれも前記ワックスの粒子が樹脂のマトリックス中に取り込まれており、該乾燥被膜の表面に出ることがない。従って、前記防湿処理用樹脂組成物が塗工されている本発明の建築材料は、相互に堆積しても滑落したり、粘着したりすることがなく、容易に取り扱うことができる。
【0014】
また、前記防湿処理用樹脂組成物は塩素を含まないので、本発明の建築材料は焼却処理されてもダイオキシン等の有害物質を発生することが無く、環境汚染の原因となることがない。さらに、前記防湿処理用樹脂組成物によれば、塗工面に優れた対汚染性を付与することができ、本発明の建築材料は、該塗工面における表面汚染を低減することができる。
【0015】
本発明の建築材料の防湿処理方法は、前記いずれかの防湿処理用樹脂組成物を、無機質建材または木質建材の少なくとも1つの面に塗工することにより実施することができる。
【0016】
本発明の建築材料の防湿処理方法においては、前記防湿処理用樹脂組成物を、前記無機質建材または前記木質建材の少なくとも1つの面に、該防湿処理用樹脂組成物中の固形分として15〜35g/mの範囲の量で塗工することが好ましい。前記防湿処理用樹脂組成物の塗工量が、該防湿処理用樹脂組成物中の固形分として15g/m未満の量であるときには、前記建築材料に十分な防湿性を付与することができないことがある。一方、前記防湿処理用樹脂組成物の塗工量が、該防湿処理用樹脂組成物中の固形分として35g/mを超える量であるときには、前記建築材料に他の材料に対する十分な接着性能を付与することができないことがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0018】
本実施形態の建築材料は、床下地、壁下地等に用いられる無機質建材または、内外装材、フローリング材等に用いられる木質建材であり、防湿処理用樹脂組成物を、少なくとも1つの面に塗工したものである。
【0019】
前記無機質建材としては、スレート板、石膏ボード、石綿ボード等を挙げることができる。また、前記木質建材としては、中密度繊維板(MDF)、パーティクルボード、合板等を挙げることができる。
【0020】
前記防湿処理用樹脂組成物としては、ワックスと乳化分散剤とを含む水分散液中で、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを含む第1のモノマー成分を乳化重合して得られるアクリル樹脂系エマルジョンを挙げることができる。また、前記防湿処理用樹脂組成物は、ワックスと乳化分散剤とを含む水分散液中で、スチレンまたはその誘導体と、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとを含む第2のモノマー成分を乳化重合して得られるスチレン−アクリル樹脂系エマルジョンであってもよい。
【0021】
前記エマルジョンは、いずれもいずれも前記ワックスの粒子が均一に微分散されている。この結果、前記エマルジョンを乾燥させて得られる乾燥被膜では、いずれも前記ワックスの粒子が樹脂のマトリックス中に微分散されて取り込まれた構成となっており、該ワックスの粒子が該乾燥被膜の表面に出ることがない。
【0022】
前記防湿処理用樹脂組成物となるアクリル樹脂系エマルジョンまたはスチレン−アクリル樹脂系エマルジョンは、それ自体公知であり、通常は防湿紙の製造に用いられる(特許文献3、特許文献4参照)。前記防湿処理用樹脂組成物は、必要に応じて、ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール、カゼイン等の水溶性樹脂、増粘剤、増強剤、保水剤、消泡剤、スライムコントロール剤等が添加されてもよい。
【0023】
本実施形態の建築材料では、前記無機質建材または木質建材の防湿処理を必要とする少なくとも1つの面に、前記防湿処理用樹脂組成物を塗工する。前記防湿処理を必要とする面としては、例えば、床下地、壁下地では大気に接する面であり、内外装材では表となる面であり、フローリング材では表裏両面である。また、木質建材の場合、種類によっては、表裏両面に加えて、側面、木口面等に塗工しても差し支えない。
【0024】
前記防湿処理用樹脂組成物の塗工は、ディッピング等により含浸させてもよく、ロールコーター、バーコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ゲートローズコーター、サイズプレス等の各種塗工設備または刷毛等により塗工してもよい。
【0025】
前記防湿処理用樹脂組成物の塗工量は、優れた防湿効果が得られると共に、他の材料に対して優れた接着性能が得られることから、該防湿処理用樹脂組成物中の固形分として、15〜35g/mの範囲の量とすることが好ましい。但し、他の材料に対する接着を顧慮する必要の無い場合は、前記範囲を超える量であってもよく、例えば、木口面等のように表面が荒い部分に塗工する場合には、前記防湿処理用樹脂組成物中の固形分として80〜300g/mの範囲の量であってもよい。
【0026】
前記防湿処理用樹脂組成物は、前記塗工後、乾燥されることにより、塗工された面に防湿性を付与することができる。前記防湿処理用樹脂組成物の乾燥は、例えば、0〜150℃の温度で行うことができる。
【0027】
次に、実施例及び比較例を示す。
【実施例1】
【0028】
本実施例では、ワックスと乳化分散剤とを含む水分散液中で、スチレンまたはその誘導体と、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとを含むモノマー成分を乳化重合して得られるスチレン−アクリル樹脂系エマルジョン(星光PMC株式会社製紙用塗工剤、商品名:T−XP118)を、固形分が37重量%となるように水で稀釈して、防湿処理用樹脂組成物を調製した。
【0029】
次に、本実施例で得られた防湿処理用樹脂組成物を、3mm×70mm×70mmの中密度繊維板(MDF)の一方の表面に、それぞれの塗工量が該防湿処理用樹脂組成物中の固形分として9.25g/m、18.5g/m、29.6g/m、37g/m、となるように刷毛で塗工し、20℃で1日以上乾燥させて、4種類の透湿度測定用の試料を調製した。
【0030】
次に、前記透湿度測定用の試料を用い、JIS Z 0208、B法(カップ法)に準じて、防湿層側(本実施例で得られた防湿処理用樹脂組成物を塗工した面の側)を外側として、前記各試料の透湿度を測定した。結果を表1に示す。
【0031】
次に、本実施例で得られた防湿処理用樹脂組成物を、15mm×50mm×300mmの針葉樹合板の一方の表面に、それぞれの塗工量が該防湿処理用樹脂組成物中の固形分として23.1g/m、33.5g/m、36.4g/m、57.3g/mとなるように刷毛で塗工し、20℃で1日以上乾燥させて、4種類の接着性能測定用の試料を調製した。
【0032】
次に、前記各接着性能測定用の試料を、1種類について2枚ずつ、その前記防湿層側に、それぞれウレタン樹脂系接着剤(株式会社オーシカ製、商品名:セレクティUR−70)を塗布して貼り合わせ、室温にて1週間養生した。養生後、JIS A 5550の圧縮せん断試験に準じて圧縮せん断力及び材料破断率を測定し、接着性能の指標とした。結果を表1に示す。
〔比較例1〕
本比較例では、パラフィンワックスとアクリル樹脂とを含むエマルジョン(株式会社オーシカ製木質材料用撥水剤、商品名:ディアコート200)を、固形分が37重量%となるように水で稀釈して、防湿処理用樹脂組成物を調製した。本比較例で得られた防湿処理用樹脂組成物は、前記パラフィンワックスとアクリル樹脂とが単に混合されているだけである。
【0033】
次に、本比較例で得られた防湿処理用樹脂組成物を、実施例1と同一のMDFの一方の表面に塗工量が該防湿処理用樹脂組成物中の固形分として37g/mとなるように刷毛で塗工し、20℃で1日以上乾燥させて、透湿度測定用の試料を調製した。次に、前記透湿度測定用の試料を用いた以外は、実施例1と全く同一にして、該試料の透湿度を測定した。結果を表1に示す。
【0034】
【表1】

【0035】
表1から、ワックスが微分散されている防湿処理用樹脂組成物を用いて処理された実施例1のMDFによれば、パラフィンワックスとアクリル樹脂とが単に混合されているだけの防湿処理用樹脂組成物を用いて処理された比較例1のMDFに比較して、透湿度が低く、格段に優れた防湿性を備えていることが明らかである。
【0036】
また、実施例1の針葉樹合板によれば、他の材料(ここではもう一方の針葉樹合板)に対する接着性能が格段に優れていることが明らかである。
【0037】
さらに、実施例1の防湿処理用樹脂組成物は、塗工量が15g/m以上の範囲の量であることにより、前記MDFにさらに優れた防湿性を付与することができ、35g/m以下の範囲の量であることにより、前記針葉樹合板の他の材料に対する接着性能をさらに優れたものとすることができることが明らかである。
【実施例2】
【0038】
本実施例では、実施例1と同一のスチレン−アクリル樹脂系エマルジョンを固形分が37重量%となるように水で稀釈して、防湿処理用樹脂組成物を調製した。
【0039】
次に、本実施例で得られた防湿処理用樹脂組成物を、20mm×150mm×300mmのパーティクルボード(PB)の表裏両面及び四方の木口面に刷毛で塗工し、20℃で1日以上乾燥させて、試料を調製した。前記防湿処理用樹脂組成物は、前記PBの表裏両面には該防湿処理用樹脂組成物中の固形分として22.2g/mとなるように塗工し、前記PBの各木口面には該防湿処理用樹脂組成物中の固形分として61.9g/mとなるように塗工した。
【0040】
次に、前記試料の重量及び寸法を測定した後、40℃・90%RH環境下にて7日間放置した。7日後に前記試料を取り出し、20℃環境下にて室温に戻し、該試料の重量及び寸法を測定した。前後の重量の変化から吸湿量(g/m)を算出すると共に、前後の寸法の変化から寸法変化率を算出した。結果を表2に示す。
〔比較例2〕
本比較例では、比較例1と同一のパラフィンワックスとアクリル樹脂とを含むエマルジョンを、固形分が37重量%となるように水で稀釈して、防湿処理用樹脂組成物を調製した。
【0041】
次に、本比較例で得られた防湿処理用樹脂組成物を用いた以外は、実施例2と全く同一にして試料を調製し、該試料の吸湿量(g/m)及び寸法変化率を算出した。結果を表2に示す。
【0042】
【表2】

【0043】
表2からワックスが微分散されている防湿処理用樹脂組成物を用いて処理された実施例2のPBによれば、パラフィンワックスとアクリル樹脂とが単に混合されているだけの防湿処理用樹脂組成物を用いて処理された比較例2のPBに比較して、吸湿量、寸法変化率共に低く、格段に優れた防湿性を備えていることが明らかである。
【実施例3】
【0044】
本実施例では、実施例1と同一のスチレン−アクリル樹脂系エマルジョンを、固形分が37重量%となるように水で稀釈して、防湿処理用樹脂組成物を調製した。
【0045】
次に、本実施例で得られた防湿処理用樹脂組成物を、2.8mm×53.6mm×140mmのラワン合板の表裏両面及び四方の木口面に刷毛で塗工し、20〜25℃で1日以上乾燥させて、試料を調製した。前記防湿処理用樹脂組成物は、前記ラワン合板の表裏両面には該防湿処理用樹脂組成物中の固形分として34.3g/mとなるように塗工し、前記ラワン合板の各木口面には該防湿処理用樹脂組成物中の固形分として73.7g/mとなるように塗工した。
【0046】
次に、前記試料を用い、合板のJASの放散ホルムアルデヒド量測定方法(デシケーター法)に従って、該試料のホルムアルデヒド放散量を測定した。結果を表3に示す。
〔比較例3〕
本比較例では、比較例1と同一のパラフィンワックスとアクリル樹脂とを含むエマルジョンを、固形分が37重量%となるように水で稀釈して、防湿処理用樹脂組成物を調製した。
【0047】
次に、本比較例で得られた防湿処理用樹脂組成物を用いた以外は、実施例3と全く同一にして試料を調製し、該試料のホルムアルデヒド放散量を測定した。前記防湿処理用樹脂組成物は、前記ラワン合板の表裏両面には該防湿処理用樹脂組成物中の固形分として33.0g/mとなるように塗工し、前記ラワン合板の各木口面には該防湿処理用樹脂組成物中の固形分として64.5g/mとなるように塗工した。結果を表3に示す。
【0048】
【表3】

【0049】
表3から、ワックスが微分散されている防湿処理用樹脂組成物を用いて処理された実施例3のラワン合板によれば、パラフィンワックスとアクリル樹脂とが単に混合されているだけの防湿処理用樹脂組成物を用いて処理された比較例3のラワン合板に比較して、ホルムアルデヒド放散量が低く、格段に優れた防湿性を備えていることが明らかである。
【実施例4】
【0050】
本実施例では、実施例2で得られた試料に、赤色の水溶性インクを数滴滴下し、15分間放置後、ウエスで軽く拭き取って表面を目視で観察し、該試料の防汚性を評価した。結果を表4に示す。
〔比較例4〕
本比較例では、比較例2で得られた試料を用いた以外は実施例4と全く同一にして、該試料の防汚性を評価した。結果を表4に示す。
【0051】
【表4】

【0052】
表4から、ワックスが微分散されている防湿処理用樹脂組成物を用いて処理された実施例4のPBによれば、パラフィンワックスとアクリル樹脂とが単に混合されているだけの防湿処理用樹脂組成物を用いて処理された比較例4のPBに比較して、赤色の水溶性インクの痕跡が薄く、優れた防汚性を備えていることが明らかである。
【0053】
尚、表4において、「○」は赤色の水溶性インクの痕跡が認められないことを示し、「△」は赤色の水溶性インクの痕跡が薄いことを示す。また、「○△」は、前記「○」と前記「△」との中間の状態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機質建材または木質建材からなる建築材料であって、
ワックスと乳化分散剤とを含む水分散液中で、アクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルを含む第1のモノマー成分を乳化重合して得られるアクリル樹脂系エマルジョン、または、
ワックスと乳化分散剤とを含む水分散液中で、スチレンもしくはその誘導体と、アクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルとを含む第2のモノマー成分を乳化重合して得られるスチレン−アクリル樹脂系エマルジョンからなる防湿処理用樹脂組成物を、少なくとも1つの面に塗工してなり、
接着剤により他の材料と接着可能であることを特徴とする建築材料。
【請求項2】
ワックスと乳化分散剤とを含む水分散液中で、アクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルを含む第1のモノマー成分を乳化重合して得られるアクリル樹脂系エマルジョン、または、
ワックスと乳化分散剤とを含む水分散液中で、スチレンもしくはその誘導体と、アクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルとを含む第2のモノマー成分を乳化重合して得られるスチレン−アクリル樹脂系エマルジョンからなる防湿処理用樹脂組成物を、
無機質建材または木質建材の少なくとも1つの面に塗工することを特徴とする建築材料の防湿処理方法。
【請求項3】
前記防湿処理用樹脂組成物を、前記無機質建材または前記木質建材の少なくとも1つの面に、該防湿処理用樹脂組成物中の固形分として15〜35g/mの範囲の量で塗工することを特徴とする請求項2記載の建築材料の防湿処理方法。

【公開番号】特開2009−96131(P2009−96131A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271849(P2007−271849)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000205742)株式会社オーシカ (40)
【Fターム(参考)】