説明

建築材料及び建築構造体

【課題】水を分解して水素や酸素を発生させることができる建築材料を提供する。
【解決手段】多孔質のタイル1の前面に凸部分2と凹部分3とが設けられている。凹部分3は、独立した凹穴であってもよく、連続した溝であってもよい。凸部分2の前面にPtWO及び/又はPtSrTiOなどの光触媒が設けられ、凹部分3の前面と側面とに藍藻類が保持されている。凸部分2の光触媒がPtWOである場合、この光触媒で発生した酸素が凹部分3の藍藻類の呼吸に利用される。藍藻類が光合成を行うことにより、大気中のCO濃度が低減される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築材料及び建築構造体に係り、特に表面に水を分解する光触媒が設けられた建築材料と、この建築材料を用いた建築構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化防止等の見地から、COの分解あるいは吸収機能を有した建築材料が種々提案されている。
【0003】
特開2000−92978号には、多孔質のセラミックブロックに播種又は挿し木したり、直接に芝張りすることが記載されている。
【0004】
特開2004−344720号には、光触媒として酸化チタンを担持させたセラミックスに水とCOとを接触させて光合成を行わせることが記載されている。
【0005】
特開2005−40775号には、微生物、酸化チタン、陶土及び珪藻土を混合、成形し、800℃以上で還元焼成した、光合成用セラミックタイル・ボールの製造法が記載されている。
【0006】
特開平7−24329号には、LaFeOなどの水分解用光触媒が記載されている。
【0007】
特開平5−220454号には、表面に藻類を付着させた外壁が記載されている。
【特許文献1】特開2000−92978号
【特許文献2】特開2004−344720号
【特許文献3】特開2005−40775号
【特許文献4】特開平7−24329号
【特許文献5】特開平5−220454号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、水を分解して水素や酸素を発生させることができる建築材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の建築材料は、表面に、水を分解する光触媒を有した多孔質のものである。
【0010】
請求項2の建築材料は、請求項1において、光触媒はPtWO及び/又はPtSrTiOであることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3の建築材料は、請求項1において、該光触媒は水を分解して酸素を発生させるものであり、該建築材料の表面に葉緑体を有することを特徴とするものである。
【0012】
請求項4の建築材料は、請求項3において、建築材料の表面に凸部分と凹部分とが設けられており、該凸部分に該光触媒が設けられ、該凹部分に該葉緑体が設けられていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項5の建築構造体は、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の建築材料を有するものである。
【0014】
請求項6の建築構造体は、請求項5において、前記建築材料と、表面に葉緑体を有した建築材料とが設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の建築材料及びこの建築材料を備えてなる建築構造体にあっては、多孔質部分が保水し、光エネルギーを受け、光触媒の作用によって水を分解し、水素及び/又は酸素を発生させる。
【0016】
この光触媒としては、PtWO及び/又はPtSrTiOが好適である。
【0017】
この建築材料の表面に葉緑体を設けておくと、水の分解により発生した酸素が葉緑体の呼吸に用いられる。葉緑体により炭酸ガスが固定される。
【0018】
建築材料の表面に凸部分と凹部分とを設け、凸部分に光触媒を設け、凹部分に葉緑体を設けておくと、凸部分の光触媒が光を受け易い。凹部分は葉緑体の固定が容易である。凹部分において植物等が成育しても、凸部分の光触媒を遮光するおそれが小さい。
【0019】
光触媒を有した建築材料と、葉緑体を有した建築材料とを設けた建築材料においても、葉緑体を有した建築材料において植物等が成育しても、触媒を有した建築材料が遮光されにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の建築材料は、多孔質のタイル、ブロック、瓦等に適用するのに好適である。この建築材料は、水を十分に保水できる程度の多孔性を有するものである。
【0021】
この建築材料の表面に、水を分解する光触媒が設けられている。光触媒としては、PtWO及び/又はPtSrTiOが好適である。この光触媒を建築材料の表面に設けるには、光触媒の粉末の懸濁液を建築材料にスプレーし、乾燥後、焼成するのが好ましい。光触媒の粉末を建築材料表面に固着させるために、光触媒の粉末又は上記懸濁液に少量のガラスフリットの粉末や水ガラス等を添加しておくのが好ましい。
【0022】
酸素を発生させるための光触媒としてはPtWOが好適であり、水素発生用光触媒としてはPtSrTiOが好適である。発生した水素を燃料電池に利用してもよい。
【0023】
この建築材料の表面は、光触媒のみを有していてもよく、光触媒と葉緑体とを有していてもよい。
【0024】
葉緑体としては植物が好適であり、具体的には次のものが例示される。
セダム類:メキシコマンネングサ、モリムラマンネングサ、コーラルカーペット、タ
イトゴメ、ヒメマンネングサ、オオバマルマンネングサ、コマルバマンネ
ングサ、ツルマンネングサなど
コケ類:スナゴケ、ハイゴケなど
その他:リシマキア(サクラソウ科)、白ツメ草、ヘデラ類などツル性植物
葉緑体としては、緑色細菌、紅食細菌、高度高塩菌などを用いてもよい。
【0025】
植物を建築材料に保持させるには、建築材料の表面に凹部分を設け、この凹部分に土を填めて植栽するのが好適である。
【0026】
本発明では、建築材料の表面に凸部分と凹部分とを設け、凸部分に光触媒を設け、凹部分に植物などの葉緑体を設けるのが好適である。この凹部分に植物を設けることにより、凸部分の光触媒が遮光されにくいものとなる。
【0027】
凸部分からの凹部分の深さは数mm前後〜数cm前後程度が好適である。本発明では、1個の建築材料の表面に凸部分と凹部分とを設け、凸部分に光触媒を設け、凹部分に葉緑体を設けるようにしてもよいが、複数個の建築材料からなる建築構造体(建物の壁、屋根、塀など)にあっては、一部の建築材料の前面を他の建築材料(例えば隣接する建築材料)の前面よりも突出させ、この突出した建築材料の前面に光触媒を設け、後退した建築材料の前面に葉緑体を設けてもよい。
【0028】
図1は本発明の建築材料の表面形状の一例を示すものであり、タイル1の前面に凸部分2と凹部分3とが設けられている。凹部分3は、独立した凹穴であってもよく、連続した溝であってもよい。溝は1条であってもよく、複数条設けられてもよい。複数の溝が略平行に設けられてもよく、交叉状に設けられてもよい。
【0029】
タイル1は多孔質である。この凸部分2の前面にPtWO及び/又はPtSrTiOなどの光触媒が設けられ、凹部分3の前面と側面とに藍藻類が保持されている。なお、藍藻類を保持させる代りに、凹部分3に土やスポンジ等を填め、植物を保持させてもよい。
【0030】
セダムを成育させる基盤は、1mm程度の径の穴が基盤上に存在することが好ましい。穴の深さは2mm以上あることが好ましい。コケ類は、表面にもう少し小さな穴を有した基盤でも仮根の定着が可能である。表面がざらざらしていればよく、表面粗さRa=10μm以上であることが好ましい。
【0031】
この凸部分2の光触媒がPtWOである場合、この光触媒で発生した酸素が凹部分3の呼吸に利用される。藍藻類が光合成を行うことにより、大気中のCO濃度が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施の形態に係るタイル表面の模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 タイル
2 凸部分
3 凹部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に、水を分解する光触媒を有した多孔質の建築材料。
【請求項2】
請求項1において、光触媒はPtWO及び/又はPtSrTiOであることを特徴とする建築材料。
【請求項3】
請求項1において、該光触媒は水を分解して酸素を発生させるものであり、該建築材料の表面に葉緑体を有することを特徴とする建築材料。
【請求項4】
請求項3において、建築材料の表面に凸部分と凹部分とが設けられており、該凸部分に該光触媒が設けられ、該凹部分に該葉緑体が設けられていることを特徴とする建築材料。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の建築材料を有する建築構造体。
【請求項6】
請求項5において、前記建築材料と、表面に葉緑体を有した建築材料とが設けられていることを特徴とする建築構造体。

【図1】
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【公開番号】特開2007−31967(P2007−31967A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213012(P2005−213012)
【出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】