説明

建築板

【課題】矩形木質板材を積層してなる建築板において、山反りの建築板を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の建築板11は、基材12が5層の矩形板材(1層目12a、2層目12b、3層目12c、4層目12d、5層目12e)を積層して形成され、建築板形成時に1層目12aから数えて偶数層の矩形板材の含水率が他の奇数層の矩形板材の含水率よりも高めに形成される。さらに、建築板11の裏面側13から第2層の矩形板材12bに亘る裏溝14が形成される。奇数層の矩形板材の木質繊維は長手方向に長くなるように並んでおり、偶数層の矩形板材の木質繊維は横手方向に長くなるように並んでいる。2層目の木質繊維は長手方向よりも短手方向により大きく縮むため、1層目12aに対して短手方向よりも長手方向により大きく縮む力を与えることができる。裏溝加工後に2層目・4層目が乾燥して収縮し山反りとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は住宅等の床等に直貼使用される建築板に関するものであり、詳しくは反りの発生が極めて少ない建築板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特にコンクリート建物においては、床騒音を防止するため木質系の建築板が求められている。このような建築板は防音性能を得るために、矩形木質板材を積層してなる建築板の裏面側から裏溝を加工して空隙を形成したり、建築板の裏側面にクッション材を貼り合わせる等の構成が知られている。
【0003】
ところが、建築板の木質材の含水率の変化、建築板の裏面側のクッション材や表面側の化粧板を積層する際の接着剤の含水率の変化、さらに、化粧板や塗料膜の伸縮等により、最終製品において建築板が反るという問題があった。反りは、表面凹形状の谷反りと表面凸形状の山反りの2種類があり、これらの複合によるネジレが発生することもある。
【0004】
ここで、建築板が山反り及び反りがない状態の場合は特に問題が生じないが、谷反りの場合には後工程の加工時における切削加工の作業性や生産性が著しく低下し、さらに、床施工を行う際に各建築板のジョイント部分が周囲よりも浮き上がる波打ち現象により、水平に配置できないため仕上がり外観が悪く品質上の問題が生じていた。
【0005】
これらの問題を解決する建築板の構成が特許文献1に開示されている。図4に示すように、特許文献1の直貼床材4Aは、矩形木質材2と化粧板1からなる建築板3の下面側3aにクッション材5を備えている。そして、建築板3には裏面側から裏溝6が成形され、裏溝6の少なくとも開口部分6aに弾性接着剤7が充填される。
【0006】
このように、弾性接着剤7によって建築板3の開口部分の周囲が物理的に拘束されるので、建築板3が反る方向に応力が加わっても裏溝6が開く方向に建築板3が変形することを防止できる。このため、建築板3に反りが発生しにくくなり施工が容易にできる。
【特許文献1】登録実用新案第3025757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、弾性接着剤によって建築板の開口部分の周囲を物理的に拘束しても、時間経過による含水率変動で建築板の表面側と裏面側の収縮バランスがくずれて谷反りが発生するという問題があった。
【0008】
そこで、本発明はかかる従来技術の問題に鑑みなされたものであって、矩形木質材を積層してなる建築板において、最終製品において山反り(反りがない状態も含む)の建築板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、複数の矩形木質材を積層してなる建築板であって、表面層から数えて偶数層の前記矩形木質材の含水率が他の奇数層の矩形木質材の含水率よりも高めに形成されることを特徴としている。
【0010】
請求項2の発明は、請求項1に記載の建築板であって、前記建築板の裏面側から、表面層から数えて第二層の前記矩形木質材に亘る裏溝が形成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、複数の矩形木質材を積層してなる建築板であって、表面層から数えて偶数層の前記矩形木質材の含水率が他の奇数層の矩形木質材の含水率よりも高めに形成されるので、時間経過とともに水分蒸発により各矩形木質材の含水率が低下し各矩形木質材は収縮するが、このとき偶数層の前記矩形木質材の含水率が他の奇数層の矩形木質材の含水率よりも高い分だけ含水率の低下する比率が高い(蒸発水分量が多い)ので、偶数層は奇数層よりも大きく収縮するため山反りの建築板が形成できる。
【0012】
山反りの建築板が形成されるので、後工程における生産性や加工精度が向上し、床施工時の仕上がり品質が向上する。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、前記建築板の裏面側から、表面層から数えて第二層の前記矩形木質材に亘る裏溝が形成されるので、各矩形木質材からの蒸発水分は裏溝を経由して容易に外部に放出される。
【0014】
このため、各矩形木質材の含水率低下に必要な時間が加速されて各矩形木質材が通常状態まで収縮する時間を短縮することができるので、請求項1記載の発明の効果と同じ効果をより早く得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<本発明の第1の実施形態>
以下に、本発明の第1の実施形態を図1、図2に基づいて説明する。なお、以下の説明において「山反り」は反りがない状態も含む。
【0016】
<建築板の構成>
図1に示すように、本発明の直貼床材としての建築板11は、基材12としての5層の矩形板材(1層目12a、2層目12b、3層目12c、4層目12d、5層目12e)を積層して形成され、建築板11の形成時に表面層の1層目12aから数えて偶数層の矩形板材12b、12dの含水率が他の奇数層の矩形板材12a、12c、12eの含水率よりも高めに形成される。
【0017】
そして、防音やクッション効果を得るために建築板11の裏面側13から矩形板材12bに亘る裏溝14が設けられる。
【0018】
基材12は厚さS=9mm、5プライ(5層)であり、裏溝は幅T=6mm〜6.5mm、深さS1=6mmで、2層目12bに亘って形成される。
【0019】
さらに、建築板11の裏面側13にクッション材15が厚さS2=1.5〜5mmで積層される。
【0020】
ここで、奇数層の矩形板材12a、12c、12eの長手方向に沿って木質繊維が長くなるように並び、偶数層の矩形板材12b、12dの木質繊維は短手方向に木質繊維が長くなるように並んでいる。このように、奇数層と偶数層の木質繊維は90度交差して積層される。
【0021】
建築板形成時には、1層目12a、3層目12c、5層目12eは通常の乾かした状態(含水率が約7%)であるが、2層目12b・4層目12dは含水率を15%〜30%程度に設定した接着剤を介して積層される。そして、通常の建築板と同じようにカット・加工・仕上工程が実施される。
【0022】
<建築板の作用>
建築板11は時間経過とともに、2層目12bから蒸発した水分が裏溝14を経由して外部に放出されるので、2層目12bは乾燥(含水率が低下)するため、2層目12bは長手方向及び短手方向に縮む。
【0023】
ここで、木質繊維は繊維の長手方向よりも短手方向により大きく収縮する性質がある。このため、2層目12bが短手方向に大きく収縮する力は1層目12aを長手方向により大きく収縮させる力として影響を与えることになる。
【0024】
このため、図2に示すように、建築板11は矢印Mの方向に山反りとなる。ここで、4層目12dも2層目12bと同様に含水率が高い状態で加工されているので他の奇数層よりも収縮力が高くなるが、4層目12dは裏溝14によって長手方向が縁切状態のため、建築板11の長手方向に対する山反り効果は2層目12bよりは少ない。
【0025】
なお、4層目12dは建築板11の短手方向に対しては裏溝14の影響はないが、この場合、上記のように木質繊維は繊維の長手方向よりも短手方向により大きく収縮する性質があるため、4層目12dの建築板11の短手方向に対しての効果は存在するが微小である。
【0026】
このように、5層の矩形板材(1層目12a、2層目12b、3層目12c、4層目12d、5層目12e)で形成される基材12は、2層目12b・4層目12dの含水率を高めの状態で積層すると、裏溝14の加工後に2層目・4層目が乾燥して収縮するので建築板11を容易に山反りにできる。
【0027】
このように、建築板11が製造工程において山反り(ほぼ平らな状態)なので、通常建築板と同じ様に加工、塗装できるため、生産性および加工精度が向上する。そして、最終製品状態において建築板11は山反りなので現場での施工性が向上する。
【0028】
裏溝14が到達する2層目12bの含水率を微調整するだけで容易に山反りに調整できる。
【0029】
なお、上記のように、本実施形態における「山反り」は「反りがない状態」も含むが、全く反りがない状態を実現することは困難のため、実際上「反りがない状態」にできるだけ近い「山反り」の状態に調整される。
【0030】
<本発明の第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態を図3を用いて説明するが、図1に示す建築板の構成と同構成部分については、図面に同符号を付して重複した説明を省略する。
【0031】
図3に示すように、建築板11aの構造は、基材12が5層の矩形板材(1層目12a、2層目12b、3層目12c、4層目12d、5層目12e)を積層して形成され、建築板形成時に表面層12aから数えて偶数層の矩形板材12b、12dの含水率が他の奇数層の矩形板材12a、12c、12eの含水率よりも高めに形成される。(図1に示す裏溝14が形成されない状態である。)
【0032】
建築板11aは図1における裏溝14が形成されない状態なので即効的ではないが、時間の経過と共に2層目・4層目が1層目・3層目・5層目よりも水分が多く蒸発(乾燥)してより大きく収縮するので、建築板11aは矢印Nの方向に山反りとなる。
【0033】
以上、本発明の実施形態を図面に基づいて説明したが、上記の実施例はいずれも本発明の一例を示したものであり、本発明はこれらに限定されるべきでないということは言うまでもない。
【0034】
たとえば、基材12の5層の構成が、奇数層の矩形板材12a、12c、12eの短手方向に木質繊維が長く、偶数層の矩形板材12b、12dの長手方向に木質繊維が長い場合でも同様である。この場合は2層目・4層目が乾燥して収縮すると建築板11、11aは短手方向に山反りに形成される。
【0035】
建築板11の構成は、3フライ、7フライ、クロス合板等、或いは、基材12の表面側に化粧板を貼着したり、基材12と化粧板の間にMDF材を挿入して複合する場合等の様々な構造にも同様に実施できる。裏溝14の断面形状や深さはV字状、U字状等様々な形に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施形態における、建築板11の構成状態を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における、建築板が山反りの状態を示す断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態における、建築板11aの構成状態を示す断面図である。
【図4】従来例における、建築板3の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0037】
11 建築板
12 基材
12a 矩形板材(1層目)
12b 矩形板材(2層目)
12c 矩形板材(3層目)
12d 矩形板材(4層目)
12e 矩形板材(5層目)
13 裏面側
14 裏溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の矩形木質材を積層してなる建築板であって、
表面層から数えて偶数層の前記矩形木質材の含水率が他の奇数層の矩形木質材の含水率よりも高めに形成されることを特徴とする建築板。
【請求項2】
請求項1に記載の建築板であって、前記建築板の裏面側から、表面層から数えて第二層の前記矩形木質材に亘る裏溝が形成されることを特徴とする建築板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−146449(P2007−146449A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−341167(P2005−341167)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】