建築物における無線基地局の配置支援装置
【課題】建築物に無線ネットワークを構築する際、建築物の間取りや壁、床の形状等の構造体条件や、これら構造体の材料の材料条件等も電波伝搬特性に大きな影響を与えるため、これらの情報を加味してやらないと精度の良い無線基地局の配置設計ができない課題があった。
【解決手段】建築物の建屋内に新規の無線ネットワークを構築する際に、無線ネットワークを構築した過去の建築物の構造条件から新規に構築する建築物の構造条件に類似した無線ネットワークを抽出し、この抽出された無線ネットワークに使用した無線基地局の配置位置を新規の無線ネットワークの無線基地局の配置位置とする。
【解決手段】建築物の建屋内に新規の無線ネットワークを構築する際に、無線ネットワークを構築した過去の建築物の構造条件から新規に構築する建築物の構造条件に類似した無線ネットワークを抽出し、この抽出された無線ネットワークに使用した無線基地局の配置位置を新規の無線ネットワークの無線基地局の配置位置とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建築物等の建屋内における無線ネットワークシステムに使用する無線基地局の配置設計を支援する建築物における無線基地局の配置支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
所望の無線局間で通信を行う場合に、当該無線局間に中継局として複数の無線局を設置し、マルチホップ通信によってデータの授受を行うマルチホップ無線ネットワーク通信技術がある。
【0003】
マルチホップ通信とは直接相手と無線通信するのではなく、中継局を介して無線通信を行うもので、電波障害物がある場合等に有効な通信技術である。
【0004】
特に近年では、無線LAN(Local Area Network)等の無線通信機器の低コスト化や、主にディジタル機器用の近距離無線通信規格であるBluetooth(登録商標)、主に家電向けの短距離無線通信規格であるZigBeeなどのセンサネット技術の標準化に伴い、産業分野における無線技術応用の期待が高まり、応用事例が増えつつある。
【0005】
マルチホップ無線ネットワークは、産業分野、例えば、電力・交通などの社会インフラ事業や、FA(Factory Automation)システムや、PA(Process Automation)システムなどの製造業の監視/制御ネットワークへの適用によって監視/制御用ケーブルの削減に寄与するものと期待されている。
【0006】
また、有線ケーブルを無線化することにより、ケーブルの敷設コストや定期点検時のメンテナンスコストの低減を計ることができる。
【0007】
更には、無線技術を活用することで、事業者は機器の追加や機器の構成の変更といった運用の変化に対して、より柔軟に対応することが可能となる。
【0008】
このように、無線ネットワークシステムは多くの長所を有しているが、その反面、産業分野において無線によるリアルタイム通信を適用する場合には、高い信頼性が要求され、無線ネットワークに障害が発生した場合でも迅速な対応が要求される。
【0009】
例えば、マルチホップ通信により、複数系統、たとえば2系統の通信経路を確保することで要求仕様を満たす無線ネットワークを構築する場合、片方の通信経路に障害が起きた時点で、一方の通信経路の信頼性に落ちてしまう。このため、できるだけ通信経路構築時に障害の影響を受け難い、良好な通信経路を設計することが必要となる。
【0010】
更に、産業分野においては、特に、建築物の建屋内における無線ネットワークの通信経路の構築設計が重要となる。
【0011】
建築物の建屋内における無線環境は、建築物の間取り、天井の高さや、壁、天井、床の材料特性、ドアや窓等の開口の大きさ、建築物の内部に存在する什器や機器等の影響を大きく受け、無線ネットワークを構築するサイト毎に異なる特性を示すので、これらを考慮した無線ネットワークの構築設計をしなければならない。
【0012】
この対応としては、無線ネットワークを構築しようとするサイト内において、無線局を設置可能な各所での電波の伝搬状態を実際に測定し、その測定結果に基づいて無線基地局を配置設計していくことが望ましい。
【0013】
しかしながら、建築物の建屋内の空間の隅々にわたって電波の伝搬状態の実測を行うことは費用や時間の関係から困難である。そこで、上記のような網羅的な電波の伝搬状態の測定を行う代わりに、既に無線ネットワークを構築済みの建築物における無線局の配置設計を基に、新規に導入を予定している建築物における無線基地局の配置設計を行っていくことが実際的で有効である。
【0014】
本発明はこのような既に構築済みの無線ネットワークを利用して新たな建築物の無線ネットワークを構築する技術に関するものである。
【0015】
電波伝搬推定に、さまざまな場所での実測値に基づく統計モデルを用いる手法があるが、この他に、例えば電波伝搬特性の推定方法として、特開2009−296572号公報(特許文献1)等によって電波伝搬特性の推定方法が提案がなされている。この技術は広い地域に無線基地局を開設する場合に既存の電波伝搬特性を用いて無線基地局の開設場所を類推するものである。
【0016】
しかしながら、建築物内ではサイト毎の構造上の違いが大きく、高い信頼性が必要となる無線ネットワークシステムの構築にはサイト特有の伝搬環境を考慮した無線ネットワーク設計を行うことが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2009−296572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記特許文献1に開示される電波伝搬特性推測支援システムでは、地域の属性情報とこの地域における電波伝搬特性を推定するために有用な参考情報とを対応付けて記憶し、属性情報入力部は、電波伝搬特性を推定したい地域の属性情報を入力するようになっている。
【0019】
また、出力部は、記憶部に記憶されている情報を検索して、属性情報入力部により入力された属性情報に合致する属性を有する地域を特定し、特定した地域に対応付けられている参考情報を出力する。
【0020】
このように特許文献1に記載の技術は、きわめて広域で移動体通信事業を行う場合の大規模の無線通信システムであって、開かれた大きな空間に関する電波伝搬特性推測手法である。
【0021】
しかしながら、建築物の建屋内の電波伝搬では、上述の広域の開かれた大きな空間ではなくて狭い閉じられた空間でしかも多くの付帯構造物条件があることから、上述した技術では限界があり、また実際には適用できないものであった。
【0022】
すなわち、これらの付帯構造物条件である建築物の間取りや壁、床の形状等の構造体条件や、これら構造体の材料の材料条件等も電波伝搬特性に大きな影響を与えるため、これらの情報を加味してやらないと精度の良い無線基地局の配置設計ができないという課題があった。
【0023】
本発明の目的は、新規に建築物に無線ネットワークを構築するときに信頼性の高い無線ネットワークを構築するための無線基地局の配置支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の特徴は、少なくとも既存の建築物の間取り、既存の建築物の構造物の属性及び既存の建築物内の無線基地局の配置位置等を記憶した記憶手段と、新規の建築物の間取りや新規の建築物の構造物の属性に基づき、新規の建築物を構成する空間の一部をノードとし、ノードに隣接する他のノード間で電波が伝わる伝播路をエッジ(リンク)とし、ノードとエッジ(リンク)のリンク情報を付加してグラフを生成するグラフ生成手段と、グラフ生成手段によって生成された新規の建築物に関するグラフのうちの一部である部分グラフと、グラフ生成手段によって生成されて記憶手段に記憶されている既存の建築物に関するグラフのうちの一部である部分グラフとの相関関係を評価し、相関度が高い既存の部分グラフを抽出するグラフ検出手段と、新規の建築物の間取りを表示すると共に、グラフ検出手段で抽出された既存の建築物の部分グラフから無線基地局の配置位置を抽出して表示する表示手段を備えたところにある。
【0025】
尚、ここで新規の建築物とは新規に無線ネットワークを構築する場合の建築物をさしており、既存の建築物であっても新たに無線ネットワークを構築する場合は新規の建築物を意味している。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、建築物の建屋内に新規の無線ネットワークを構築する際に、無線ネットワークを構築した過去の建築物の構造条件から、無線ネットワークを新規に構築する建築物の構造条件に類似した無線ネットワークを抽出し、この抽出された過去の無線ネットワークに使用した無線基地局の配置情報を利用して新規の無線ネットワークの無線基地局の配置に使用することができ、信頼性の高い無線ネットワークを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例になる無線基地局の配置支援装置の構成を示す構成図である。
【図2】建築物の特定床面における間取り図の例を示す間取り図である。
【図3】建築物の特定床面の構造体毎の属性を記述した図である。
【図4】建築物の特定床面の無線基地局の属性を記述した図である。
【図5】建築物の特定床面の受信アンテナの属性を記述した図である。
【図6】建築物の特定床面の間取りの一例を示した間取り図である。
【図7】図6に示した間取りにおいてのノードの存在状況をしめす間取り図である。
【図8】図6に示したノードの属性を記述した図である。
【図9】図6に示した各ノードを結ぶエッジ(リンク)の存在状況を示す間取り図である。
【図10】図9に示したエッジ(リンク)の属性を記述した図である。
【図11】建築物の特定床面のノードとエッジ(リンク)を求めるためのグラフ生成方法を示すフローチャートである。
【図12】図11で示すフローチャートによって得られたノードとエッジ(リンク)の関係を表すトポロジーの一例を示す図である。
【図13】新規と既存の建築物の相関を求め、相関性が高い既存の建築物のグラフを抽出する方法を示すフローチャートである。
【図14】図13で求められた相関性の高いグラフを新規建築物の間取り図上に配置して表示した一例を示す図である。
【図15】図13で求められた相関性の高いグラフを新規建築物の間取り図上に配置して無線基地局を表示した一例を示す図である。
【図16】本発明の他の一実施例になる無線基地局の配置支援装置の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0028】
以下、本発明の一実施例を図面に従い詳細に説明すると、図1は本発明の第一の実施例に係る無線環境検索装置100の構成例を示した図である。
【0029】
無線環境検索装置100は入力部101、グラフ生成部102、記憶部103、グラフ検索部104及び表示部105により構成され、夫々は信号ライン106により結ばれ、信号の受け渡しが行なわれる構成となっている。
【0030】
入力部101は無線ネットワークを構築しようとしている新規の建築物の3次元構造物、また既に無線ネットワークを構築済みで、無線伝搬環境が既知の建築物の3次元構造物、及び無線基地局のアンテナ配置並びに無線基地局からの無線電波の送信電力分布の入力等の諸々の入力を受け付ける。
【0031】
図2に典型的な建築物の3次元構造物の一例を示しており、図2の例はビル等の特定階の床構造部であり、この特定階の床構造部に無線ネットワークを構築しようとしている。この床構造部は無線ネットワークの構築のために各構造物に座標が割り付けられている。
【0032】
例えば、この建築物の床構造部は、付帯構造物である壁面W1〜W4、床F、天井(図示せず)、窓(図示せず)及び柱P1〜Pn等の構造物で構成され、更にこの床構造部には壁やパーティションによって区切られた室内に設置される機器装置Mや什器(図示せず)などの付帯構造物も存在する。
【0033】
無線ネットワークを構築しようとしている特定階の床構造部は予め定義する3次元座標系(X,Y,Z)によって、床構造部を形成する上記壁面W、窓、柱P等の基本構造物や、場合によっては機器装置Mや什器、アンテナAP1、AP2及び受信局ST1〜STn等の配置位置が記述されるようになっている。
【0034】
ここで、X成分は床の長さ方向の座標を表し、Y成分は床の幅方向の座標を表し、Z成分は床の高さ方向の座標を表している。
【0035】
例えば左下角を3次元座標系(X,Y,Z)の基点とし、壁面W、床F、天井、窓、柱P、室内に設置される装置M、什器、基地局アンテナAP及び受信アンテナST等の構造物の座標位置が予め定義されるようになっている。
【0036】
図3は上述した図2に示す構造物等を座標で表現した3次元構造情報の一例であり、例えば(1)構造物の種類、(2)構造物の名称、(3)3次元座標系(X,Y,Z)、及び(4)形状が3次元情報として記憶されている。これは無線環境検索装置100の記憶部103を利用して記憶される。
【0037】
尚、ここでは壁、柱等のように形状が直方体の構造物については対角の2点の座標位置を特定する形で3次元構造情報が表現されている。図3において、例えば図2の下側の壁W1は始点の座標が(0 0 0)にあり、その終点を(16 0.5 3)とする、長さが16m、厚さ(幅)が0.5m、高さが3mの直方体構造であることを示している。同様に図2の右側の壁W2、上側の壁W3及び左側の壁W4も上記のように定義されている。
【0038】
また、床構造部の床の基点部分の柱P1は、始点の座標が(0 0 0)にあり、その終点を(1 1 3)とする、長さが1m、厚さ(幅)が1m、及び高さが3mの直方体構造を示している。
【0039】
同様に柱P1に隣接する柱P2は、始点の座標が(3 0 0)にあり、その終点を(4 1 3)とする長さが1m、厚さが1m、及び高さが3mの直方体構造である。他の柱Pnについても同様の定義がなされている。
【0040】
機器装置Mや什器(図示せず)についても、上記したものと同様に3次元座標と形状について記述されている
ここで、図3には3次元構造情報の例を示しているが、これらの構造物毎に、その電気的特性である(5)誘電率、透磁率、導電率等の少なくとも1つが併せ記憶されている。これは、特許文献1のような広い空間を対象とする場合と異なるところであり、建築物内部の電波伝搬特性を推定するために重要なパラメータである。
【0041】
つまり、構造物が壁Wである場合に、その材料の電気的特性である誘電率、透磁率、導電率等が記憶されている。もちろん、その他の構造物が柱である場合にも同様に記憶されている。
【0042】
また、図2に示すAP1及びAP2は基地局アンテナの配置位置を示しており、これらの基地局アンテナAP1及びAP2から放射される無線電波により、この特定床構造部の無線ネットワークが構築される。
【0043】
基地局アンテナAP1及びAP2の3次元情報は、例えば図4にあるようにダイポールアンテナや、平面アンテナ等の(1)アンテナの種類、(2)名称や、(3)送信電力、(4)3次元座標値(X,Y,Z)、(5)チルト角、(6)アジマス角等のアンテナの設置角度が記述されている。
【0044】
例えば、図4において図2の右上にある基地局アンテナAP1はダイポールアンテナを使用し、送信電力が13dBm、座標が(10 15 2.7)の位置に、チルト角、アジマス角ともに0度で設置されることを示している。
【0045】
同様に、図2の左下にある基地局アンテナAP2は平面アンテナを使用し、送信電力が13dBm、座標が(1 3 2.7)の位置に、チルト角が0度、アジマス角が90度で設置されることを示している。
【0046】
また図2に白丸で示す受信アンテナSTは受信アンテナの位置を表しており、各受信アンテナST1〜STnにより、基地局アンテナAP1及びAP2からの受信電力を測定したポイントを示している。
【0047】
図5は、受信アンテナSTによる電波伝搬特性の測定値を表す一例であり、各受信アンテナにおける(1)名称、(2)受信アンテナSTの3次元座標値(X,Y,Z)、(3)各基地局アンテナAP1、AP2からの受信電力値を表している。
【0048】
したがって、これらの情報は上述したように無線環境検索装置100の記憶部103を利用して記憶される。
【0049】
ここで、図3、図4及び図5に示すような付帯構造物、基地局アンテナAP、受信アンテナST等の3次元情報は入力装置101を利用して入力される。
【0050】
入力部101はキーボード等から作業員が手入力するものや別の記憶メディア(DVD、CD、フラッシュメモリ等)から転送入力されるものであっても良く、その他の装置に接続されてこれらの情報を自動的に得られるものであってもよい。
【0051】
例えばCAD(Computer Aided Design)装置に接続して、CAD図面を3次元構造情報として利用してもよい。また、レーザーレンジスキャナ、3次元認識カメラなどに接続して、空間情報の入力装置として利用することも可能である。
【0052】
グラフ生成部102は3次元構造物によって形成される空間に対してノードを定義し、更にこの定義されたノード間を結ぶエッジ(リンク)を定義することにより、グラフ情報を生成するように機能付けされている。
【0053】
グラフ生成部102の機能について図6に示す建築物の間取り図をもとに説明する。図6は入力部101によって入力されて記憶部103に記憶されている3次元構造物を上面から見た間取り図を示しており、2次元で図示しているが3次元構造物により構成されるものである。(ただし、本実施例は3次元データに限定するものではなく、2次元データにおいても本発明の有効性は変わらない。)
図6において、参照番号201、202は壁面を示し、壁面201,202の途中には柱203が配置され、この柱203とは別に床面にも柱204が配置されている。ここで、壁201,202や柱203、204はこれ以外にも多く配置されているが、図面上では参照番号は省略しており、これらの壁や柱等は代表して参照番号を付している。
【0054】
床面には室内を区切るパーティション205、206,207が配置され、これらの部屋には什器の一部である机208、209が配置されている。この場合もパーティションや什器はこれ以外にも多く配置されているが、図面上では参照番号は省略している。
【0055】
このような間取り図に対して、グラフ生成部102は電波が遮られることなく、或いは遮られても影響がそれほど大きくなく伝わる空間を抽出する。ここで、電波が遮られることがないということは構造物がないということである。ただし、対象とする無線周波数の波長の2〜5倍程度の物体は無視することも可能である。
【0056】
グラフ生成部102によって得られる、電波が遮られることなく、或いは遮られても影響がそれほど大きくなく伝わる空間の例を図7に示している。
【0057】
図7において上記した空間は破線で囲まれた領域で示してあり、参照番号を付した空間210〜空間217はその代表例を示している。このような空間を抽出する方法として、空間を均一に細かく分割するボクセル分割法や、構造物を構成する各面の境界に注目して、空間を分割する手法、例えばkD−tree分割法等を用いることにより空間の特徴を調べることが可能である。尚、参照番号210は建築物の外部空間を示している。
【0058】
そして、グラフ生成部102はこのような各空間をノードとして定義しており、図8に各ノードの属性を示している。各ノードに対して、ノード内の空間における(1)始点の3次元空間座標値(m)、及び(2)各軸方向(3次元方向)の長さ(m)を示している。
【0059】
また、(3)什器等と示した値は、各ノードの空間内に含まれる什器等の体積を示しており、(4)重みは、たとえば、各ノードの空間内の体積から什器等の体積を除き、空間内の電波伝搬のしやすさを表す値を定めている。また、この重みは什器の材料等によっても電波伝播のしやすさが異なるので、材料によっても重みを修正することも考慮される。
【0060】
また、グラフ生成部102は各ノードをつなぐエッジ(リンク)を演算する機能を有しており、各ノードにおける各境界面の方向について、ノード間に存在する構造物を調べ、この構造物を間にして配置するノードに対してエッジ(リンク)を演算して生成する。これらのエッジ(リンク)の演算に際しては、図3等に記述されている構造物の夫々の属性を利用して演算されるものである。
【0061】
尚、この演算においては図3に示す属性をすべて利用するものではなくても良く、要はエッジ(リンク)を適切に求められるものであれば良いものである。
【0062】
各ノードにおける各境界面について、構造物で覆われる部分が境界面をすべて覆っていなければ残りの面積は開口面積とみなし、開口部を挟んで配置するノードに対してこれらを結ぶエッジ(リンク)を生成する。
【0063】
例えば、図7にあるノード212に着目すると、ノード212とノード211の間、ノード212とノード213の間、ノード212とノード214の間、ノード212とノード215の間、ノード212とノード216の間、及びノード212とノード217の間にエッジ(リンク)が確立できる。
【0064】
すなわち、図7及び図9においてノード212の上側の境界面に対しては壁202の部分と、柱203の部分を介してノード210と隣接するため、これらにはそれぞれエッジ(リンク)220及びエッジ(リンク)221が生成される。
【0065】
同様に、ノード212の右側の境界面に対しては、パーティション205を介してノード211、ノード214及びノード215と隣接するため、これらにはそれぞれエッジ(リンク)222、223及び224が生成される。
【0066】
また、ノード212の下側の境界面に対しては、ノード216との間にパーティション207が存在するため、ノード216との間にエッジ(リンク)225が生成される。
【0067】
ここで、ノード212の下側の境界面は、パーティション207の面積によってすべてが覆われることなくノード217と繋がっているので、ノード212に直接的駅に隣接する開口部分としてノード217との間にエッジ(リンク)226が生成される。また、たとえば、壁202に窓が設けられていたり、パーティション206にドアがあったりする場合は、この部分にたいしてもエッジ(リンク)が生成される。
【0068】
同様にノード212とノード213に対してエッジ(リンク)227〜エッジ(リンク)229が生成される。
【0069】
図10は図9に示した各エッジの記述状態を示してり、(1)エッジの名称、(2)ノードの始点と終点、(3)始点の境界面方向(4)遮蔽か開口しているかの遮蔽種別、(5)遮蔽している構造物の種類、(6)エッジの重み等が各エッジに対して定義されている。
【0070】
次のこのようなエッジ(リンク)を作成するための工程を図11に示すフローチャートに基づき説明する。図11において、ステップS230ではグラフ生成のために図6に示すような間取り図を記憶部103から読み出しグラフ生成部102に展開する。
【0071】
次に、ステップS231に進んで空間解析処理を実行するが、これは上述したよう読み出された間取り図から電波が遮られることなく、或いは遮られても影響がそれほど大きくなく伝わる空間を抽出する。
【0072】
空間が抽出されるとステップS232に進んで、抽出された空間に対応する各ノードを生成する。
ノードが生成されるとステップS233に進んでそのノードの属性を定義する。この属性は図8にあるようにノード毎にそのノードの位置、大きさ、什器の存在及び重みが記述されている。
【0073】
次に、ステップS232、ステップS233でノードkが生成され、その属性が決定されるとステップS234に進んで基準となるノードkの各境界面方向を決定し、更にステップS235に進んで存在する構造物に関して図3に記述してあるような属性を用いて解析を行なう。
【0074】
その結果に基づいて、ステップS236では基準となるノードに対する構造物jの方向にあるノードを決定し、ステップS237でエッジ(リンク)を生成する。
【0075】
一方、ステップS238において各境界面方向に窓やドア等の開口があると判断されると、ステップS239でこの開口を通るノードとのエッジ(リンク)を生成する。
【0076】
このようにして、図10に示されるようなエッジ(リンク)の定義が完成されるとステップS240に進んでグラフの保存処理を行なう。
【0077】
また、図12にはこれらのノードとエッジ(リンク)の関係をグラフとして表したトポロジーを示しており、各ノードは、3次元構造の場合は各6方向の境界面に対してそれぞれ一つ以上のエッジ(リンク)を持ち、ノード間の電波が遮蔽されるか否かの情報を持つものである。
【0078】
以上のようにして、図6にあるような3次元(もしくは2次元)の構造物が与えられるとグラフ生成部102は空間解析を行ってグラフを生成する。
【0079】
生成されたグラフは、既に無線ネットワークを構築済みの建築物であれば、図4に示したような建築物内の基地局アンテナ配置データ及び図5に示した受信アンテナの伝搬環境測定値と共に記憶部103にデータベースとして保持する。これらは後述するグラフ検索部104の既知のグラフとして使用される。
【0080】
そして、これらのデータベースは無線ネットワークを構築するたび毎に更新されて蓄積されていくものである。したがって、このデータベースを拡充すればする程より精度の高いデータが蓄積されていき、後述するようなグラフ検索での相関度を高くできるものである。
【0081】
次に、グラフ検索部104の処理を説明するために、図13にグラフ検索部104のフローチャートの一例を示している。
【0082】
新規の無線ネットワークを構築する場合はステップS241で新規の建築物を表すグラフGsを検索する。そして、この場合は図11に示したような処理によって各ノードに対応したエッジ(リンク)を生成する。
【0083】
次に、ステップS242ではグラフGs内の各ノードkについて以下に述べる処理を実行する。
【0084】
すなわち、ステップS243では各ノードkに関して、n個のエッジ(リンク)まで許した部分グラフGs(k,n)を抽出する処理を実行する。ここで、部分グラフGs(k,n)は、各ノードkを中心として、ノードkからn個のエッジ(リンク)を隔てたノードまでを含むグラフGsの部分グラフを示すものである。
【0085】
このような部分グラフは図12に示すような関係を表現している。尚、nは予め定めた値であっても、1から最大のNまで繰り返し実施してもよい。
【0086】
次に、ステップS244では既存のデータベース内の各グラフGjについてステップS243に示す処理と同様の処理を実行することを示している。
【0087】
次にステップS245はデータベース内の或るグラフGj含まれる各ノードiについて、このノードiを中心とした部分グラフGj(i,n)を抽出する処理を実行する。この処理はステップS243で求めた部分グラフGS(k,n)と類似の部分グラフGj(i,n)を抽出するものである。
【0088】
したがって、データベースの充足度が高いほどより類似した部分グラフGj(i,n)が得られるものである。この場合、データベース内の部分グラフGj(i,n)は一個の場合もあるし、場合によっては複数の部分グラフGj(i,n)が抽出されてくるものである。
【0089】
上記した処理によって新規の建築物の部分グラフGS(k,n)とデータベース内の類似の部分グラフGj(i,n)が求まると、ステップ246において両グラフの相関値を算出する処理を実行する。ここで両部分グラフ間の相関値とは、例えば、ノードの重み、接続する等距離の各エッジ(リンク)の重みの値等をベクトル化し、ベクトル同士の内積を算出することで得られるものである。ただ、相関値の決め方はこれに限らずに建築物によっても適切な方法が選ばれて使用されるものである。
【0090】
両グラフの相関値を算出する処理を実行して相関値が求まると、ステップS247では新規の建築物のグラフGsの各ノード毎に相関値が規定以上、例えば最も相関値が大きいデータベース内の部分グラフGk(k,j,n)を抽出する。
【0091】
例えば、最も相関値が大きいデータベース内の部分グラフG(k,j,n)が抽出されると、ステップS248では新規の建築物のグラフGsの各ノードkに対する部分グラフGk(k,j,n)を合成する処理を実行する。一つの方法として、ノードkを中心に部分グラフGk(k,j,n)を配置し、重複するノードは、相関値の高い部分グラフG(k,j,n)に含まれるノードとエッジ(リンク)を優先する等の方法が有利である。
【0092】
以上のような処理を実行することにより、グラフ検索部104は既存のデータベースに含まれる部分グラフのうちで相関値の大きいものを抽出することができるものである。
【0093】
図14は表示部105において、これらの相関値の高い部分グラフを合成して表示した一例を示す図である。参照番号250は新規に基地局の配置を実施したい建築物の間取りを示している。そしてこの間取り図に重畳されてデータベースから抽出された相関値の高い部分グラフによって構成される構造物データ(例えば3次元構造物データ)の範囲と各相関値を示している。
【0094】
参照番号251はデータベース内に記憶されている建築物Aの一部に対応する部分グラフであり、その相関値は90%である。
【0095】
また、参照番号252はデータベース内に記憶されている建築物Bの一部に対応する部分グラフであり、その相関値は80%であり、参照番号253はデータベース内に記憶されている建築物Bの一部に対応する部分グラフであり、その相関値は50%であり、参照番号254はデータベース内に記憶されている建築物Cの一部に対応する部分グラフであり、その相関値は50%であることを示している。
【0096】
そして、各部分グラフに配置されている無線基地局を新規の建築物に配置すべき無線基地局とみなして無線ネットワークを構築するものである。
【0097】
そのことを図15は説明しており、建築物Aにおける基地局アンテナ255、建築物Bにおける基地局アンテナ256、及び建築物Cにおける基地局アンテナ257を表示した例である。尚、図15中で薄いハッチングした領域と濃いハッチングした領域は相関性を視覚的に表現したものであり、濃い領域の方が相関性が高いことを示しているが、ハッチングした領域は異なった色によって相関性の高低を表現するようにしても良い。
【0098】
以上のように、本発明の第一の実施例によれば、建屋内の無線ネットワークシステムの構築において、過去に配置済みの建築物の構造条件から、新規に配置したい建築物の構造条件に類似した条件を検索することにより、過去の基地局の配置情報を利用して新規の建築物への基地局の配置を容易に得ることができるものである。
【0099】
尚、本実施例においては単独の装置について説明したが、データセンターにデータベースを構築して多くの業者からのデータを蓄積しておき、ネットワークを用いてデータベースに接続して上述したような処理を実行するようにしても良いものである。この場合は多くのデータが蓄積されるのでより類似度の高い部分グラフが得られるようになる。
【実施例2】
【0100】
図16は図1に示す第一の実施例に加えて伝搬情報合成部106を持つことが特徴となっている。伝搬情報合成部107は既設の建築物に関するグラフと、伝搬環境の測定値をデータベースに登録する際に次のような処理を実施する。
【0101】
既にデータベースに登録されているおけるグラフから、相関値の高い部分グラフと、伝搬環境の測定値を取得する。
【0102】
次に、相関値の高い部分グラフと、既設の建築物における部分グラフをノードとエッジ(リンク)毎に比較して規定値以上に異なるノードもしくはエッジ(リンク)を抽出する。
【0103】
次に、データベースから得られた伝搬環境測定値と、今回登録する伝搬環境測定値を比較し、その差異が規定値以下であれば、相互の部分グラフ同士を統合して、相違部分として抽出されたノード、エッジ(リンク)は、影響の少ない誤差要因としてデータベースに登録する。
【0104】
逆に、前記伝搬環境測定値の差異が規定値以上となる場合は、影響の大きい誤差要因としてデータベースに登録する。
【0105】
以上のように行なうことにより、データベースの誤差要因等について、ロバストネス性を高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0106】
1…無線環境検索装置、101…入力部、102…グラフ生成部、103…記憶部、104…グラフ検索部、105…表示部、106…伝搬情報合成部、107…伝搬推定部。
【技術分野】
【0001】
本発明は建築物等の建屋内における無線ネットワークシステムに使用する無線基地局の配置設計を支援する建築物における無線基地局の配置支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
所望の無線局間で通信を行う場合に、当該無線局間に中継局として複数の無線局を設置し、マルチホップ通信によってデータの授受を行うマルチホップ無線ネットワーク通信技術がある。
【0003】
マルチホップ通信とは直接相手と無線通信するのではなく、中継局を介して無線通信を行うもので、電波障害物がある場合等に有効な通信技術である。
【0004】
特に近年では、無線LAN(Local Area Network)等の無線通信機器の低コスト化や、主にディジタル機器用の近距離無線通信規格であるBluetooth(登録商標)、主に家電向けの短距離無線通信規格であるZigBeeなどのセンサネット技術の標準化に伴い、産業分野における無線技術応用の期待が高まり、応用事例が増えつつある。
【0005】
マルチホップ無線ネットワークは、産業分野、例えば、電力・交通などの社会インフラ事業や、FA(Factory Automation)システムや、PA(Process Automation)システムなどの製造業の監視/制御ネットワークへの適用によって監視/制御用ケーブルの削減に寄与するものと期待されている。
【0006】
また、有線ケーブルを無線化することにより、ケーブルの敷設コストや定期点検時のメンテナンスコストの低減を計ることができる。
【0007】
更には、無線技術を活用することで、事業者は機器の追加や機器の構成の変更といった運用の変化に対して、より柔軟に対応することが可能となる。
【0008】
このように、無線ネットワークシステムは多くの長所を有しているが、その反面、産業分野において無線によるリアルタイム通信を適用する場合には、高い信頼性が要求され、無線ネットワークに障害が発生した場合でも迅速な対応が要求される。
【0009】
例えば、マルチホップ通信により、複数系統、たとえば2系統の通信経路を確保することで要求仕様を満たす無線ネットワークを構築する場合、片方の通信経路に障害が起きた時点で、一方の通信経路の信頼性に落ちてしまう。このため、できるだけ通信経路構築時に障害の影響を受け難い、良好な通信経路を設計することが必要となる。
【0010】
更に、産業分野においては、特に、建築物の建屋内における無線ネットワークの通信経路の構築設計が重要となる。
【0011】
建築物の建屋内における無線環境は、建築物の間取り、天井の高さや、壁、天井、床の材料特性、ドアや窓等の開口の大きさ、建築物の内部に存在する什器や機器等の影響を大きく受け、無線ネットワークを構築するサイト毎に異なる特性を示すので、これらを考慮した無線ネットワークの構築設計をしなければならない。
【0012】
この対応としては、無線ネットワークを構築しようとするサイト内において、無線局を設置可能な各所での電波の伝搬状態を実際に測定し、その測定結果に基づいて無線基地局を配置設計していくことが望ましい。
【0013】
しかしながら、建築物の建屋内の空間の隅々にわたって電波の伝搬状態の実測を行うことは費用や時間の関係から困難である。そこで、上記のような網羅的な電波の伝搬状態の測定を行う代わりに、既に無線ネットワークを構築済みの建築物における無線局の配置設計を基に、新規に導入を予定している建築物における無線基地局の配置設計を行っていくことが実際的で有効である。
【0014】
本発明はこのような既に構築済みの無線ネットワークを利用して新たな建築物の無線ネットワークを構築する技術に関するものである。
【0015】
電波伝搬推定に、さまざまな場所での実測値に基づく統計モデルを用いる手法があるが、この他に、例えば電波伝搬特性の推定方法として、特開2009−296572号公報(特許文献1)等によって電波伝搬特性の推定方法が提案がなされている。この技術は広い地域に無線基地局を開設する場合に既存の電波伝搬特性を用いて無線基地局の開設場所を類推するものである。
【0016】
しかしながら、建築物内ではサイト毎の構造上の違いが大きく、高い信頼性が必要となる無線ネットワークシステムの構築にはサイト特有の伝搬環境を考慮した無線ネットワーク設計を行うことが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2009−296572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上記特許文献1に開示される電波伝搬特性推測支援システムでは、地域の属性情報とこの地域における電波伝搬特性を推定するために有用な参考情報とを対応付けて記憶し、属性情報入力部は、電波伝搬特性を推定したい地域の属性情報を入力するようになっている。
【0019】
また、出力部は、記憶部に記憶されている情報を検索して、属性情報入力部により入力された属性情報に合致する属性を有する地域を特定し、特定した地域に対応付けられている参考情報を出力する。
【0020】
このように特許文献1に記載の技術は、きわめて広域で移動体通信事業を行う場合の大規模の無線通信システムであって、開かれた大きな空間に関する電波伝搬特性推測手法である。
【0021】
しかしながら、建築物の建屋内の電波伝搬では、上述の広域の開かれた大きな空間ではなくて狭い閉じられた空間でしかも多くの付帯構造物条件があることから、上述した技術では限界があり、また実際には適用できないものであった。
【0022】
すなわち、これらの付帯構造物条件である建築物の間取りや壁、床の形状等の構造体条件や、これら構造体の材料の材料条件等も電波伝搬特性に大きな影響を与えるため、これらの情報を加味してやらないと精度の良い無線基地局の配置設計ができないという課題があった。
【0023】
本発明の目的は、新規に建築物に無線ネットワークを構築するときに信頼性の高い無線ネットワークを構築するための無線基地局の配置支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の特徴は、少なくとも既存の建築物の間取り、既存の建築物の構造物の属性及び既存の建築物内の無線基地局の配置位置等を記憶した記憶手段と、新規の建築物の間取りや新規の建築物の構造物の属性に基づき、新規の建築物を構成する空間の一部をノードとし、ノードに隣接する他のノード間で電波が伝わる伝播路をエッジ(リンク)とし、ノードとエッジ(リンク)のリンク情報を付加してグラフを生成するグラフ生成手段と、グラフ生成手段によって生成された新規の建築物に関するグラフのうちの一部である部分グラフと、グラフ生成手段によって生成されて記憶手段に記憶されている既存の建築物に関するグラフのうちの一部である部分グラフとの相関関係を評価し、相関度が高い既存の部分グラフを抽出するグラフ検出手段と、新規の建築物の間取りを表示すると共に、グラフ検出手段で抽出された既存の建築物の部分グラフから無線基地局の配置位置を抽出して表示する表示手段を備えたところにある。
【0025】
尚、ここで新規の建築物とは新規に無線ネットワークを構築する場合の建築物をさしており、既存の建築物であっても新たに無線ネットワークを構築する場合は新規の建築物を意味している。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、建築物の建屋内に新規の無線ネットワークを構築する際に、無線ネットワークを構築した過去の建築物の構造条件から、無線ネットワークを新規に構築する建築物の構造条件に類似した無線ネットワークを抽出し、この抽出された過去の無線ネットワークに使用した無線基地局の配置情報を利用して新規の無線ネットワークの無線基地局の配置に使用することができ、信頼性の高い無線ネットワークを構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例になる無線基地局の配置支援装置の構成を示す構成図である。
【図2】建築物の特定床面における間取り図の例を示す間取り図である。
【図3】建築物の特定床面の構造体毎の属性を記述した図である。
【図4】建築物の特定床面の無線基地局の属性を記述した図である。
【図5】建築物の特定床面の受信アンテナの属性を記述した図である。
【図6】建築物の特定床面の間取りの一例を示した間取り図である。
【図7】図6に示した間取りにおいてのノードの存在状況をしめす間取り図である。
【図8】図6に示したノードの属性を記述した図である。
【図9】図6に示した各ノードを結ぶエッジ(リンク)の存在状況を示す間取り図である。
【図10】図9に示したエッジ(リンク)の属性を記述した図である。
【図11】建築物の特定床面のノードとエッジ(リンク)を求めるためのグラフ生成方法を示すフローチャートである。
【図12】図11で示すフローチャートによって得られたノードとエッジ(リンク)の関係を表すトポロジーの一例を示す図である。
【図13】新規と既存の建築物の相関を求め、相関性が高い既存の建築物のグラフを抽出する方法を示すフローチャートである。
【図14】図13で求められた相関性の高いグラフを新規建築物の間取り図上に配置して表示した一例を示す図である。
【図15】図13で求められた相関性の高いグラフを新規建築物の間取り図上に配置して無線基地局を表示した一例を示す図である。
【図16】本発明の他の一実施例になる無線基地局の配置支援装置の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0028】
以下、本発明の一実施例を図面に従い詳細に説明すると、図1は本発明の第一の実施例に係る無線環境検索装置100の構成例を示した図である。
【0029】
無線環境検索装置100は入力部101、グラフ生成部102、記憶部103、グラフ検索部104及び表示部105により構成され、夫々は信号ライン106により結ばれ、信号の受け渡しが行なわれる構成となっている。
【0030】
入力部101は無線ネットワークを構築しようとしている新規の建築物の3次元構造物、また既に無線ネットワークを構築済みで、無線伝搬環境が既知の建築物の3次元構造物、及び無線基地局のアンテナ配置並びに無線基地局からの無線電波の送信電力分布の入力等の諸々の入力を受け付ける。
【0031】
図2に典型的な建築物の3次元構造物の一例を示しており、図2の例はビル等の特定階の床構造部であり、この特定階の床構造部に無線ネットワークを構築しようとしている。この床構造部は無線ネットワークの構築のために各構造物に座標が割り付けられている。
【0032】
例えば、この建築物の床構造部は、付帯構造物である壁面W1〜W4、床F、天井(図示せず)、窓(図示せず)及び柱P1〜Pn等の構造物で構成され、更にこの床構造部には壁やパーティションによって区切られた室内に設置される機器装置Mや什器(図示せず)などの付帯構造物も存在する。
【0033】
無線ネットワークを構築しようとしている特定階の床構造部は予め定義する3次元座標系(X,Y,Z)によって、床構造部を形成する上記壁面W、窓、柱P等の基本構造物や、場合によっては機器装置Mや什器、アンテナAP1、AP2及び受信局ST1〜STn等の配置位置が記述されるようになっている。
【0034】
ここで、X成分は床の長さ方向の座標を表し、Y成分は床の幅方向の座標を表し、Z成分は床の高さ方向の座標を表している。
【0035】
例えば左下角を3次元座標系(X,Y,Z)の基点とし、壁面W、床F、天井、窓、柱P、室内に設置される装置M、什器、基地局アンテナAP及び受信アンテナST等の構造物の座標位置が予め定義されるようになっている。
【0036】
図3は上述した図2に示す構造物等を座標で表現した3次元構造情報の一例であり、例えば(1)構造物の種類、(2)構造物の名称、(3)3次元座標系(X,Y,Z)、及び(4)形状が3次元情報として記憶されている。これは無線環境検索装置100の記憶部103を利用して記憶される。
【0037】
尚、ここでは壁、柱等のように形状が直方体の構造物については対角の2点の座標位置を特定する形で3次元構造情報が表現されている。図3において、例えば図2の下側の壁W1は始点の座標が(0 0 0)にあり、その終点を(16 0.5 3)とする、長さが16m、厚さ(幅)が0.5m、高さが3mの直方体構造であることを示している。同様に図2の右側の壁W2、上側の壁W3及び左側の壁W4も上記のように定義されている。
【0038】
また、床構造部の床の基点部分の柱P1は、始点の座標が(0 0 0)にあり、その終点を(1 1 3)とする、長さが1m、厚さ(幅)が1m、及び高さが3mの直方体構造を示している。
【0039】
同様に柱P1に隣接する柱P2は、始点の座標が(3 0 0)にあり、その終点を(4 1 3)とする長さが1m、厚さが1m、及び高さが3mの直方体構造である。他の柱Pnについても同様の定義がなされている。
【0040】
機器装置Mや什器(図示せず)についても、上記したものと同様に3次元座標と形状について記述されている
ここで、図3には3次元構造情報の例を示しているが、これらの構造物毎に、その電気的特性である(5)誘電率、透磁率、導電率等の少なくとも1つが併せ記憶されている。これは、特許文献1のような広い空間を対象とする場合と異なるところであり、建築物内部の電波伝搬特性を推定するために重要なパラメータである。
【0041】
つまり、構造物が壁Wである場合に、その材料の電気的特性である誘電率、透磁率、導電率等が記憶されている。もちろん、その他の構造物が柱である場合にも同様に記憶されている。
【0042】
また、図2に示すAP1及びAP2は基地局アンテナの配置位置を示しており、これらの基地局アンテナAP1及びAP2から放射される無線電波により、この特定床構造部の無線ネットワークが構築される。
【0043】
基地局アンテナAP1及びAP2の3次元情報は、例えば図4にあるようにダイポールアンテナや、平面アンテナ等の(1)アンテナの種類、(2)名称や、(3)送信電力、(4)3次元座標値(X,Y,Z)、(5)チルト角、(6)アジマス角等のアンテナの設置角度が記述されている。
【0044】
例えば、図4において図2の右上にある基地局アンテナAP1はダイポールアンテナを使用し、送信電力が13dBm、座標が(10 15 2.7)の位置に、チルト角、アジマス角ともに0度で設置されることを示している。
【0045】
同様に、図2の左下にある基地局アンテナAP2は平面アンテナを使用し、送信電力が13dBm、座標が(1 3 2.7)の位置に、チルト角が0度、アジマス角が90度で設置されることを示している。
【0046】
また図2に白丸で示す受信アンテナSTは受信アンテナの位置を表しており、各受信アンテナST1〜STnにより、基地局アンテナAP1及びAP2からの受信電力を測定したポイントを示している。
【0047】
図5は、受信アンテナSTによる電波伝搬特性の測定値を表す一例であり、各受信アンテナにおける(1)名称、(2)受信アンテナSTの3次元座標値(X,Y,Z)、(3)各基地局アンテナAP1、AP2からの受信電力値を表している。
【0048】
したがって、これらの情報は上述したように無線環境検索装置100の記憶部103を利用して記憶される。
【0049】
ここで、図3、図4及び図5に示すような付帯構造物、基地局アンテナAP、受信アンテナST等の3次元情報は入力装置101を利用して入力される。
【0050】
入力部101はキーボード等から作業員が手入力するものや別の記憶メディア(DVD、CD、フラッシュメモリ等)から転送入力されるものであっても良く、その他の装置に接続されてこれらの情報を自動的に得られるものであってもよい。
【0051】
例えばCAD(Computer Aided Design)装置に接続して、CAD図面を3次元構造情報として利用してもよい。また、レーザーレンジスキャナ、3次元認識カメラなどに接続して、空間情報の入力装置として利用することも可能である。
【0052】
グラフ生成部102は3次元構造物によって形成される空間に対してノードを定義し、更にこの定義されたノード間を結ぶエッジ(リンク)を定義することにより、グラフ情報を生成するように機能付けされている。
【0053】
グラフ生成部102の機能について図6に示す建築物の間取り図をもとに説明する。図6は入力部101によって入力されて記憶部103に記憶されている3次元構造物を上面から見た間取り図を示しており、2次元で図示しているが3次元構造物により構成されるものである。(ただし、本実施例は3次元データに限定するものではなく、2次元データにおいても本発明の有効性は変わらない。)
図6において、参照番号201、202は壁面を示し、壁面201,202の途中には柱203が配置され、この柱203とは別に床面にも柱204が配置されている。ここで、壁201,202や柱203、204はこれ以外にも多く配置されているが、図面上では参照番号は省略しており、これらの壁や柱等は代表して参照番号を付している。
【0054】
床面には室内を区切るパーティション205、206,207が配置され、これらの部屋には什器の一部である机208、209が配置されている。この場合もパーティションや什器はこれ以外にも多く配置されているが、図面上では参照番号は省略している。
【0055】
このような間取り図に対して、グラフ生成部102は電波が遮られることなく、或いは遮られても影響がそれほど大きくなく伝わる空間を抽出する。ここで、電波が遮られることがないということは構造物がないということである。ただし、対象とする無線周波数の波長の2〜5倍程度の物体は無視することも可能である。
【0056】
グラフ生成部102によって得られる、電波が遮られることなく、或いは遮られても影響がそれほど大きくなく伝わる空間の例を図7に示している。
【0057】
図7において上記した空間は破線で囲まれた領域で示してあり、参照番号を付した空間210〜空間217はその代表例を示している。このような空間を抽出する方法として、空間を均一に細かく分割するボクセル分割法や、構造物を構成する各面の境界に注目して、空間を分割する手法、例えばkD−tree分割法等を用いることにより空間の特徴を調べることが可能である。尚、参照番号210は建築物の外部空間を示している。
【0058】
そして、グラフ生成部102はこのような各空間をノードとして定義しており、図8に各ノードの属性を示している。各ノードに対して、ノード内の空間における(1)始点の3次元空間座標値(m)、及び(2)各軸方向(3次元方向)の長さ(m)を示している。
【0059】
また、(3)什器等と示した値は、各ノードの空間内に含まれる什器等の体積を示しており、(4)重みは、たとえば、各ノードの空間内の体積から什器等の体積を除き、空間内の電波伝搬のしやすさを表す値を定めている。また、この重みは什器の材料等によっても電波伝播のしやすさが異なるので、材料によっても重みを修正することも考慮される。
【0060】
また、グラフ生成部102は各ノードをつなぐエッジ(リンク)を演算する機能を有しており、各ノードにおける各境界面の方向について、ノード間に存在する構造物を調べ、この構造物を間にして配置するノードに対してエッジ(リンク)を演算して生成する。これらのエッジ(リンク)の演算に際しては、図3等に記述されている構造物の夫々の属性を利用して演算されるものである。
【0061】
尚、この演算においては図3に示す属性をすべて利用するものではなくても良く、要はエッジ(リンク)を適切に求められるものであれば良いものである。
【0062】
各ノードにおける各境界面について、構造物で覆われる部分が境界面をすべて覆っていなければ残りの面積は開口面積とみなし、開口部を挟んで配置するノードに対してこれらを結ぶエッジ(リンク)を生成する。
【0063】
例えば、図7にあるノード212に着目すると、ノード212とノード211の間、ノード212とノード213の間、ノード212とノード214の間、ノード212とノード215の間、ノード212とノード216の間、及びノード212とノード217の間にエッジ(リンク)が確立できる。
【0064】
すなわち、図7及び図9においてノード212の上側の境界面に対しては壁202の部分と、柱203の部分を介してノード210と隣接するため、これらにはそれぞれエッジ(リンク)220及びエッジ(リンク)221が生成される。
【0065】
同様に、ノード212の右側の境界面に対しては、パーティション205を介してノード211、ノード214及びノード215と隣接するため、これらにはそれぞれエッジ(リンク)222、223及び224が生成される。
【0066】
また、ノード212の下側の境界面に対しては、ノード216との間にパーティション207が存在するため、ノード216との間にエッジ(リンク)225が生成される。
【0067】
ここで、ノード212の下側の境界面は、パーティション207の面積によってすべてが覆われることなくノード217と繋がっているので、ノード212に直接的駅に隣接する開口部分としてノード217との間にエッジ(リンク)226が生成される。また、たとえば、壁202に窓が設けられていたり、パーティション206にドアがあったりする場合は、この部分にたいしてもエッジ(リンク)が生成される。
【0068】
同様にノード212とノード213に対してエッジ(リンク)227〜エッジ(リンク)229が生成される。
【0069】
図10は図9に示した各エッジの記述状態を示してり、(1)エッジの名称、(2)ノードの始点と終点、(3)始点の境界面方向(4)遮蔽か開口しているかの遮蔽種別、(5)遮蔽している構造物の種類、(6)エッジの重み等が各エッジに対して定義されている。
【0070】
次のこのようなエッジ(リンク)を作成するための工程を図11に示すフローチャートに基づき説明する。図11において、ステップS230ではグラフ生成のために図6に示すような間取り図を記憶部103から読み出しグラフ生成部102に展開する。
【0071】
次に、ステップS231に進んで空間解析処理を実行するが、これは上述したよう読み出された間取り図から電波が遮られることなく、或いは遮られても影響がそれほど大きくなく伝わる空間を抽出する。
【0072】
空間が抽出されるとステップS232に進んで、抽出された空間に対応する各ノードを生成する。
ノードが生成されるとステップS233に進んでそのノードの属性を定義する。この属性は図8にあるようにノード毎にそのノードの位置、大きさ、什器の存在及び重みが記述されている。
【0073】
次に、ステップS232、ステップS233でノードkが生成され、その属性が決定されるとステップS234に進んで基準となるノードkの各境界面方向を決定し、更にステップS235に進んで存在する構造物に関して図3に記述してあるような属性を用いて解析を行なう。
【0074】
その結果に基づいて、ステップS236では基準となるノードに対する構造物jの方向にあるノードを決定し、ステップS237でエッジ(リンク)を生成する。
【0075】
一方、ステップS238において各境界面方向に窓やドア等の開口があると判断されると、ステップS239でこの開口を通るノードとのエッジ(リンク)を生成する。
【0076】
このようにして、図10に示されるようなエッジ(リンク)の定義が完成されるとステップS240に進んでグラフの保存処理を行なう。
【0077】
また、図12にはこれらのノードとエッジ(リンク)の関係をグラフとして表したトポロジーを示しており、各ノードは、3次元構造の場合は各6方向の境界面に対してそれぞれ一つ以上のエッジ(リンク)を持ち、ノード間の電波が遮蔽されるか否かの情報を持つものである。
【0078】
以上のようにして、図6にあるような3次元(もしくは2次元)の構造物が与えられるとグラフ生成部102は空間解析を行ってグラフを生成する。
【0079】
生成されたグラフは、既に無線ネットワークを構築済みの建築物であれば、図4に示したような建築物内の基地局アンテナ配置データ及び図5に示した受信アンテナの伝搬環境測定値と共に記憶部103にデータベースとして保持する。これらは後述するグラフ検索部104の既知のグラフとして使用される。
【0080】
そして、これらのデータベースは無線ネットワークを構築するたび毎に更新されて蓄積されていくものである。したがって、このデータベースを拡充すればする程より精度の高いデータが蓄積されていき、後述するようなグラフ検索での相関度を高くできるものである。
【0081】
次に、グラフ検索部104の処理を説明するために、図13にグラフ検索部104のフローチャートの一例を示している。
【0082】
新規の無線ネットワークを構築する場合はステップS241で新規の建築物を表すグラフGsを検索する。そして、この場合は図11に示したような処理によって各ノードに対応したエッジ(リンク)を生成する。
【0083】
次に、ステップS242ではグラフGs内の各ノードkについて以下に述べる処理を実行する。
【0084】
すなわち、ステップS243では各ノードkに関して、n個のエッジ(リンク)まで許した部分グラフGs(k,n)を抽出する処理を実行する。ここで、部分グラフGs(k,n)は、各ノードkを中心として、ノードkからn個のエッジ(リンク)を隔てたノードまでを含むグラフGsの部分グラフを示すものである。
【0085】
このような部分グラフは図12に示すような関係を表現している。尚、nは予め定めた値であっても、1から最大のNまで繰り返し実施してもよい。
【0086】
次に、ステップS244では既存のデータベース内の各グラフGjについてステップS243に示す処理と同様の処理を実行することを示している。
【0087】
次にステップS245はデータベース内の或るグラフGj含まれる各ノードiについて、このノードiを中心とした部分グラフGj(i,n)を抽出する処理を実行する。この処理はステップS243で求めた部分グラフGS(k,n)と類似の部分グラフGj(i,n)を抽出するものである。
【0088】
したがって、データベースの充足度が高いほどより類似した部分グラフGj(i,n)が得られるものである。この場合、データベース内の部分グラフGj(i,n)は一個の場合もあるし、場合によっては複数の部分グラフGj(i,n)が抽出されてくるものである。
【0089】
上記した処理によって新規の建築物の部分グラフGS(k,n)とデータベース内の類似の部分グラフGj(i,n)が求まると、ステップ246において両グラフの相関値を算出する処理を実行する。ここで両部分グラフ間の相関値とは、例えば、ノードの重み、接続する等距離の各エッジ(リンク)の重みの値等をベクトル化し、ベクトル同士の内積を算出することで得られるものである。ただ、相関値の決め方はこれに限らずに建築物によっても適切な方法が選ばれて使用されるものである。
【0090】
両グラフの相関値を算出する処理を実行して相関値が求まると、ステップS247では新規の建築物のグラフGsの各ノード毎に相関値が規定以上、例えば最も相関値が大きいデータベース内の部分グラフGk(k,j,n)を抽出する。
【0091】
例えば、最も相関値が大きいデータベース内の部分グラフG(k,j,n)が抽出されると、ステップS248では新規の建築物のグラフGsの各ノードkに対する部分グラフGk(k,j,n)を合成する処理を実行する。一つの方法として、ノードkを中心に部分グラフGk(k,j,n)を配置し、重複するノードは、相関値の高い部分グラフG(k,j,n)に含まれるノードとエッジ(リンク)を優先する等の方法が有利である。
【0092】
以上のような処理を実行することにより、グラフ検索部104は既存のデータベースに含まれる部分グラフのうちで相関値の大きいものを抽出することができるものである。
【0093】
図14は表示部105において、これらの相関値の高い部分グラフを合成して表示した一例を示す図である。参照番号250は新規に基地局の配置を実施したい建築物の間取りを示している。そしてこの間取り図に重畳されてデータベースから抽出された相関値の高い部分グラフによって構成される構造物データ(例えば3次元構造物データ)の範囲と各相関値を示している。
【0094】
参照番号251はデータベース内に記憶されている建築物Aの一部に対応する部分グラフであり、その相関値は90%である。
【0095】
また、参照番号252はデータベース内に記憶されている建築物Bの一部に対応する部分グラフであり、その相関値は80%であり、参照番号253はデータベース内に記憶されている建築物Bの一部に対応する部分グラフであり、その相関値は50%であり、参照番号254はデータベース内に記憶されている建築物Cの一部に対応する部分グラフであり、その相関値は50%であることを示している。
【0096】
そして、各部分グラフに配置されている無線基地局を新規の建築物に配置すべき無線基地局とみなして無線ネットワークを構築するものである。
【0097】
そのことを図15は説明しており、建築物Aにおける基地局アンテナ255、建築物Bにおける基地局アンテナ256、及び建築物Cにおける基地局アンテナ257を表示した例である。尚、図15中で薄いハッチングした領域と濃いハッチングした領域は相関性を視覚的に表現したものであり、濃い領域の方が相関性が高いことを示しているが、ハッチングした領域は異なった色によって相関性の高低を表現するようにしても良い。
【0098】
以上のように、本発明の第一の実施例によれば、建屋内の無線ネットワークシステムの構築において、過去に配置済みの建築物の構造条件から、新規に配置したい建築物の構造条件に類似した条件を検索することにより、過去の基地局の配置情報を利用して新規の建築物への基地局の配置を容易に得ることができるものである。
【0099】
尚、本実施例においては単独の装置について説明したが、データセンターにデータベースを構築して多くの業者からのデータを蓄積しておき、ネットワークを用いてデータベースに接続して上述したような処理を実行するようにしても良いものである。この場合は多くのデータが蓄積されるのでより類似度の高い部分グラフが得られるようになる。
【実施例2】
【0100】
図16は図1に示す第一の実施例に加えて伝搬情報合成部106を持つことが特徴となっている。伝搬情報合成部107は既設の建築物に関するグラフと、伝搬環境の測定値をデータベースに登録する際に次のような処理を実施する。
【0101】
既にデータベースに登録されているおけるグラフから、相関値の高い部分グラフと、伝搬環境の測定値を取得する。
【0102】
次に、相関値の高い部分グラフと、既設の建築物における部分グラフをノードとエッジ(リンク)毎に比較して規定値以上に異なるノードもしくはエッジ(リンク)を抽出する。
【0103】
次に、データベースから得られた伝搬環境測定値と、今回登録する伝搬環境測定値を比較し、その差異が規定値以下であれば、相互の部分グラフ同士を統合して、相違部分として抽出されたノード、エッジ(リンク)は、影響の少ない誤差要因としてデータベースに登録する。
【0104】
逆に、前記伝搬環境測定値の差異が規定値以上となる場合は、影響の大きい誤差要因としてデータベースに登録する。
【0105】
以上のように行なうことにより、データベースの誤差要因等について、ロバストネス性を高めることが可能となる。
【符号の説明】
【0106】
1…無線環境検索装置、101…入力部、102…グラフ生成部、103…記憶部、104…グラフ検索部、105…表示部、106…伝搬情報合成部、107…伝搬推定部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも既存の建築物の間取り、前記既存の建築物の構造物の属性及び前記既存の建築物内の無線基地局の配置位置等を記憶した記憶手段と、
新規の建築物の間取りや前記新規の建築物の構造物の属性に基づき、前記新規の建築物を構成する空間の一部をノードとし、前記ノードに隣接する他のノード間で電波が伝わる伝播路をエッジ(リンク)とし、前記ノードと前記エッジ(リンク)のリンク情報を付加してグラフを生成するグラフ生成手段と、
前記グラフ生成手段によって生成された前記新規の建築物に関するグラフのうちの一部である部分グラフと、前記グラフ生成手段によって生成されて前記記憶手段に記憶されている既存の建築物に関するグラフのうちの一部である部分グラフとの相関関係を評価し、相関度が高い既存の部分グラフを抽出するグラフ検出手段と、
前記新規の建築物の間取りを表示すると共に、前記グラフ検出手段で抽出された既存の建築物の部分グラフから前記無線基地局の配置位置を抽出して表示する表示手段とを備えたことを特徴とする建築物における無線基地局の配置支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建築物における無線基地局の配置支援装置において、
前記グラフ生成手段は、前記新規の建築物の間取り、ノード、エッジ(リンク)及び前記ノードと前記エッジ(リンク)のリンク情報を前記記憶手段に記憶させることを特徴とする建築物における無線基地局の配置支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の建築物における無線基地局の配置支援装置において、
前記グラフ検出手段は前記新規の建築物及び前記既存の建築物の間取りに関する複数の部分グラフを抽出し、
前期表示手段は前記新規の建築物の間取りを表示すると共に、前記既存の建築物の複数の部分グラフから複数の無線基地局の配置位置を抽出して前記間取り上に表示することを特徴とする建築物における無線基地局の配置支援装置。
【請求項4】
請求項2に記載の建築物における無線基地局の配置支援装置において、
前記記憶手段に記憶されている建築物の構造物の属性は、構造物毎に誘電率、透磁率、導電率等の少なくとも1つである電気的特性が併せ記憶されていることを特徴とする建築物における無線基地局の配置支援装置。
【請求項5】
請求項1に記載の建築物における無線基地局の配置支援装置において、
前期表示手段は相関性の高さを色の濃さ、或いは色の種類によって表現することを特徴とする建築物における無線基地局の配置支援装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記グラフ生成手段によって得られたグラフを前記記憶手段に登録する際に、新規に登録するグラフと、既に登録されているグラフの全体もしくはグラフの一部との相違点を抽出し、前記無線局配置の違いが規定値より小さい場合は、誤差要因の小さい相違点として登録し、規定値より大きい場合は、誤差要因の大きい相違点として登録する伝搬情報合成部を備えていることを特徴とする建築物における無線基地局の配置支援装置。
【請求項1】
少なくとも既存の建築物の間取り、前記既存の建築物の構造物の属性及び前記既存の建築物内の無線基地局の配置位置等を記憶した記憶手段と、
新規の建築物の間取りや前記新規の建築物の構造物の属性に基づき、前記新規の建築物を構成する空間の一部をノードとし、前記ノードに隣接する他のノード間で電波が伝わる伝播路をエッジ(リンク)とし、前記ノードと前記エッジ(リンク)のリンク情報を付加してグラフを生成するグラフ生成手段と、
前記グラフ生成手段によって生成された前記新規の建築物に関するグラフのうちの一部である部分グラフと、前記グラフ生成手段によって生成されて前記記憶手段に記憶されている既存の建築物に関するグラフのうちの一部である部分グラフとの相関関係を評価し、相関度が高い既存の部分グラフを抽出するグラフ検出手段と、
前記新規の建築物の間取りを表示すると共に、前記グラフ検出手段で抽出された既存の建築物の部分グラフから前記無線基地局の配置位置を抽出して表示する表示手段とを備えたことを特徴とする建築物における無線基地局の配置支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建築物における無線基地局の配置支援装置において、
前記グラフ生成手段は、前記新規の建築物の間取り、ノード、エッジ(リンク)及び前記ノードと前記エッジ(リンク)のリンク情報を前記記憶手段に記憶させることを特徴とする建築物における無線基地局の配置支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の建築物における無線基地局の配置支援装置において、
前記グラフ検出手段は前記新規の建築物及び前記既存の建築物の間取りに関する複数の部分グラフを抽出し、
前期表示手段は前記新規の建築物の間取りを表示すると共に、前記既存の建築物の複数の部分グラフから複数の無線基地局の配置位置を抽出して前記間取り上に表示することを特徴とする建築物における無線基地局の配置支援装置。
【請求項4】
請求項2に記載の建築物における無線基地局の配置支援装置において、
前記記憶手段に記憶されている建築物の構造物の属性は、構造物毎に誘電率、透磁率、導電率等の少なくとも1つである電気的特性が併せ記憶されていることを特徴とする建築物における無線基地局の配置支援装置。
【請求項5】
請求項1に記載の建築物における無線基地局の配置支援装置において、
前期表示手段は相関性の高さを色の濃さ、或いは色の種類によって表現することを特徴とする建築物における無線基地局の配置支援装置。
【請求項6】
請求項1において、
前記グラフ生成手段によって得られたグラフを前記記憶手段に登録する際に、新規に登録するグラフと、既に登録されているグラフの全体もしくはグラフの一部との相違点を抽出し、前記無線局配置の違いが規定値より小さい場合は、誤差要因の小さい相違点として登録し、規定値より大きい場合は、誤差要因の大きい相違点として登録する伝搬情報合成部を備えていることを特徴とする建築物における無線基地局の配置支援装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−110496(P2013−110496A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−252416(P2011−252416)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ZIGBEE
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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