説明

建築物の吹き付け塗装方法

【課題】自然界に存する実際のライムストーンと同様の質感と美観を有する建築物用壁面材からなる建築物の壁面を得ることのできる建築物の吹き付け塗装方法を提供する。
【解決手段】建築物の壁面22上の樹脂モルタル23の上に、薄いベージュ色の第1の吹き付け材7を吹き付け、これにより、吹き付け塗装面を形成する。第1の吹き付け材7からなる吹き付け塗装面に、赤色の第2の吹き付け材8及び白色の第3の吹き付け材9を、それぞれ、まばらに、かつ、玉状に吹き付ける。第1〜第3の吹き付け材7、8、9が乾燥する前に、金ゴテを用いて、当該第1〜第3の吹き付け材7、8、9を、吹き付け塗装面の面内の一方向に沿って移動させることにより、第2及び第3の吹き付け材8、9をまばらに吹き付けた吹き付け塗装面の表面を均す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の吹き付け塗装方法に関する。さらに詳細には、本発明は、天然石、特にライムストーン(limestone)と同様の質感と美観を有する建築物用壁面材からなる建築物の壁面を得ることのできる建築物の吹き付け塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の壁面等の仕上げとして、その美観と耐候性から、天然の石がよく用いられている。例えば、天然石をそのまま壁面や柱に使用するか、薄い板状にして壁面等に貼り付ける方法がある。
【0003】
建築物の壁面等に模様等を付する方法としては、例えば、リシン系(骨材が含まれる配合)及び塗料系の材料を、コテ塗り法、ローラー塗装法、吹き付け塗装法等によって塗布する方法がある。コテ塗り法は、コテを用いて材料を建築物の表面に移して延ばす方法である。ローラー塗装法は、ローラーやコテを用いて材料を建築物の表面に移し、ローラーによって延ばす方法である。これらは手作業によって行われるため、大きな模様を付することはできるが、厚塗りや大面積の塗装には適していない。吹き付け塗装法は、圧縮空気の力を利用してスプレーガンから材料を噴出して塗装する方法である(例えば、特許文献1参照)。ここで、リシン系の材料を用いた吹き付け塗装法においては、材料として、セラミックス骨材、天然石骨材、焼成骨材等の粒状材料と合成樹脂とを含むため、ある程度までの厚塗りが可能となる。
【特許文献1】特公平5−9587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の吹き付け塗装方法では、自然界に存する実際のライムストーンが有する質感と美観を有する建築物用壁面材からなる建築物の壁面を得るには至っていない。
【0005】
そこで、本発明者は、かかる点に鑑み、自然界に存する実際のライムストーンにより近い建築物用壁面材からなる建築物の壁面を得るために鋭意研究を重ね、本発明をするに至った。
【0006】
本発明は、従来技術における前記課題を解決するためになされたものであり、自然界に存する実際のライムストーンと同様の質感と美観を有する建築物用壁面材からなる建築物の壁面を得ることのできる建築物の吹き付け塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明に係る建築物の吹き付け塗装方法は、建築物の壁面に、骨材と合成樹脂とを含む所定の色の吹き付け材を吹き付けて、吹き付け塗装面を形成する工程と、前記吹き付け塗装面に、骨材と合成樹脂とを含む、前記所定の色の吹き付け材と色の異なる複数種の吹き付け材をまばらに吹き付ける工程と、前記所定の色の吹き付け材及び前記複数種の吹き付け材を、前記吹き付け塗装面の面内の一方向に沿って移動させることにより、前記複数種の吹き付け材をまばらに吹き付けた前記吹き付け塗装面の表面を均す工程とを備えたことを特徴とする。
【0008】
この建築物の吹き付け塗装方法によれば、吹き付け塗装面に、当該吹き付け塗装面を形成する所定の色の吹き付け材と色の異なる複数種の吹き付け材をまばらに吹き付け、前記所定の色の吹き付け材及び前記複数種の吹き付け材を、前記吹き付け塗装面の面内の一方向に沿って移動させて、前記複数種の吹き付け材をまばらに吹き付けた前記吹き付け塗装面の表面を均すようにしたことにより、まばらに吹き付けた前記複数種の吹き付け材が前記吹き付け塗装面の表面付近で移動して、前記吹き付け塗装面の表面にライムストーン特有の淡いすじ模様が形成される。すなわち、この建築物の吹き付け塗装方法によれば、自然界に存する実際のライムストーンと同様の質感と美観を有する建築物用壁面材を得ることができる。
【0009】
天然のライムストーンは、酸性雨等に弱いため、外装材には適しておらず、主にエントランス等の内装に使用されているのが現状である。この点、本発明の建築物の吹き付け塗装方法によれば、材料として外装材に適した材質のものを使用しているので、ライムストーン調の外壁を実現することができる。
【0010】
前記本発明の建築物の吹き付け塗装方法においては、前記所定の色の吹き付け材を、小口径、高吹き圧のスプレーガンを用いて吹き付けるのが好ましい。この好ましい例によれば、吹き付け塗装面を形成する吹き付け材が建築物の壁面上で潰れ、薄い厚み(少量の吹き付け材)で平滑かつ均一な吹き付け塗装面を形成することができる。すなわち、低コストで建築物の壁面を施工することができる。また、吹き付け材として、骨材と合成樹脂とを含むものを用いており、これらは柔軟性と接着力を有しているため、吹き付けた吹き付け材が建築物の壁面から剥離・脱落する恐れはない。また、この場合には、前記スプレーガンの口径が5〜8mm、吹き圧が5〜7kg/cm2であるのが好ましい。
【0011】
また、前記本発明の建築物の吹き付け塗装方法においては、前記複数種の吹き付け材の球相当径が2〜3mm、吹き付け密度が500〜12000個/m2であるのが好ましい。
【0012】
また、前記本発明の建築物の吹き付け塗装方法においては、前記所定の色の吹き付け材として淡い色の吹き付け材を用いるのが好ましい。また、この場合には、前記淡い色が薄いベージュ色であるのが好ましい。この場合にはさらに、前記複数種の吹き付け材として、赤色の吹き付け材と白色の吹き付け材を用いるのが好ましい。
【0013】
また、前記本発明の建築物の吹き付け塗装方法においては、均した前記吹き付け塗装面の表面を研磨する工程をさらに備えているのが好ましい。この好ましい例によれば、凹凸の少ない、天然のライムストーンに迫る質感と美観を有する建築物用壁面材を得ることができる。
【0014】
また、前記本発明の建築物の吹き付け塗装方法においては、前記各吹き付け材として、骨材5〜90重量部と合成樹脂10〜95重量部とを含む吹き付け材を用いるのが好ましい。
【0015】
また、前記本発明の建築物の吹き付け塗装方法においては、前記骨材として、セラミックス骨材、天然石骨材及び焼き付け骨材からなる群から選ばれる少なくとも1つを用いるのが好ましい。
【0016】
また、前記本発明の建築物の吹き付け塗装方法においては、前記合成樹脂としてアクリル樹脂エマルジョンを用いるのが好ましい。
【0017】
また、前記本発明の建築物の吹き付け塗装方法においては、均した前記吹き付け塗装面の表面に、透明な樹脂によってトップコートを施すのが好ましい。この好ましい例によれば、建築物用壁面材の耐久性及び耐候性を向上させることができると共に、汚染を防止することもできる。この場合にはさらに、前記透明な樹脂として、アクリル−シリコン系塗料又はフッ素系塗料を用いるのが好ましい。尚、このように、トップコートとして親水性の材質のものを使用すれば、塵埃が付着し難く、一旦付着した塵埃も雨水等によって容易に洗い流すことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、自然界に存する実際のライムストーンと同様の質感と美観を有する建築物用壁面材からなる建築物の壁面を得ることのできる建築物の吹き付け塗装方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、実施の形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
【0020】
吹き付け材としては、次の成分に調合したものを用いた。すなわち、
(1)セラミックス骨材 61.60重量部
(2)アクリル樹脂エマルジョン(固形分50%) 25.20重量部
(3)増粘剤(ヒドロキシメチルセルロース) 11.35重量部
(4)pH調整剤(アンモニア水) 0.17重量部
(5)消泡剤(アルコール系) 0.03重量部
(6)造膜助剤(アルコール系) 0.39重量部
(7)水 1.26重量部
作業性や貯蔵の便のために、増粘剤、pH調整剤、消泡剤、造膜助剤等を混入しているが、本発明の必須の構成要素ではない。すなわち、本発明で用いる吹き付け材は、骨材と合成樹脂とを含むものであればよく、骨材5〜90重量部と合成樹脂10〜95重量部とを含むものであるのが好ましい。尚、造膜助剤とは、エマルジョンの透明造膜の温度を下げるためのものである。
【0021】
合成樹脂としては、アクリル樹脂エマルジョンのほかに、その他のエマルジョン系や、エポキシ系、ウレタン系のものを使用することもできる。
【0022】
ここでは、骨材としてセラミックス骨材を使用しているが、セラミックス骨材のほかに、天然石骨材や焼成骨材を使用することもできる。
【0023】
セラミックス骨材は、粘土に適当な色を有する無機顔料、例えば、酸化鉄、酸化亜鉛等を混合し、1200〜1400℃で焼成してセラミックスとし、それを粉砕したものである。天然石骨材は、天然石を破砕して分級したものを、そのまま使用するものであり、白色では珪砂、大理石の顆粒、寒水石等が使用され、黒色では美濃黒等が使用される。焼成骨材は、天然石の顆粒(通常は、珪砂が多く使用されている)に、無機顔料(通常は金属の酸化物が使用され、白色として酸化チタン、黄色としてチタンイエロー、青色としてコバルト、緑色としてクロム、黒色としてカーボン等が使用されている)を混合して、天然石の表面に800〜1000℃で焼き付けて作られる。実際に使用されている骨材の多くはこの焼き付け骨材である。尚、100〜300℃の温度で作る場合には、寒水石が使用される場合もある。
【0024】
骨材の粒度分布としては、吹き付け材を建築物の壁面に吹き付けて得られる建築物用壁面材の強度や美観から、次のようなものを採用した。すなわち、
メッシュ 分布
3〜 20 30重量%
20〜200 40重量%
200〜350 30重量%
メッシュとは、1インチ(25.4mm)当たりの篩目の数をいう。
【0025】
本実施の形態においては、吹き付け塗装面を形成する吹き付け材(吹き付け塗装面形成用の吹き付け材)として、上記のような成分を有し、淡い色のセラミックス骨材を用いた第1の吹き付け材が使用される。ここで、第1の吹き付け材のセラミックス骨材としては、薄いベージュ色のものを用いた。また、吹き付け塗装面にまばらに吹き付ける複数種の吹き付け材として、上記のような成分を有し、第1の吹き付け材のセラミックス骨材と色の異なるセラミックス骨材を用いた第2及び第3の吹き付け材が使用される。ここで、第2の吹き付け材のセラミックス骨材としては、赤色のものを用いた。また、第3の吹き付け材のセラミックス骨材としては、白色のものを用いた。
【0026】
以下、上記のような第1〜第3の吹き付け材を建築物の壁面に吹き付けて建築物用壁面材を得る方法について説明する。図1は、本発明の一実施の形態における建築物の吹き付け塗装方法を示す水平断面工程図、図2は、本発明の一実施の形態における建築物の吹き付け塗装方法を示すフローチャート、図3は、本発明の一実施の形態における建築物の吹き付け塗装方法を用いて得られた建築物用壁面材を示す平面図、図4は、当該方法において吹き付け塗装面形成用の吹き付け材(第1の吹き付け材)を吹き付けるために用いられる3頭式スプレーガンを示す斜視図、図5は、当該方法において吹き付け塗装面にまばらに吹き付ける吹き付け材(第2及び第3の吹き付け材)をそれぞれ吹き付けるために用いられる装置を示す概略構成図である。
【0027】
図4に示すように、3頭式スプレーガンには、3つのタンク1、2、3が設けられており、各タンク1、2、3に同じ色の第1の吹き付け材7をそれぞれ別々に収容しておくことができるようにされている。また、タンク1、2、3には、それぞれ別個に噴出ノズル4、5、6が設けられており、タンク1、2、3内の第1の吹き付け材7を圧縮空気によって噴出ノズル4、5、6からそれぞれ噴出させることができるようにされている。ここで、噴出ノズル4、5、6の口径は5〜8mmであり、吹き圧は5〜7kg/cm2に設定されている。また、噴出ノズル4、5、6は、ほぼ一点に集中するようにその角度が調整されている。
【0028】
尚、第1の吹き付け材7を吹き付けるに際しては、必ずしも以上のような3頭式スプレーガンを使用する必要はなく、例えば、手持ち式の単頭ガン等を使用することもできる。
【0029】
図5において、11はスプレーガンであり、スプレーガン11には、吹き付け塗装面にまばらに吹き付ける吹き付け材(第2又は第3の吹き付け材)を供給するための装置12からホッパー13で調合された第2又は第3の吹き付け材が導管14を介して圧送される。第2又は第3の吹き付け材は、エアーコンプレッサー(図示せず)を用いて発生させた吹き圧2〜3kg/cm2の圧縮空気によって吹き付け塗装面に吹き付けられる。
【0030】
スプレーガン11は、塗装ノズル15の口径が5〜7mmに形成されており、エアーノズル(図示せず)の後退又は前進によって塗装ノズル15が開閉するように構成されている(いわゆる、ニードル弁方式)。すなわち、ピストン(図示せず)には二重構造のエアーノズルが取り付けられており、切換弁16を切り換えることによってピストンが後退又は前進し、圧縮空気及び第2又は第3の吹き付け材が噴射又は遮断される。
【0031】
フロースイッチ(図示せず)によって切換弁16を作動させて、圧縮空気を流路17に流すと、スプレーガン11内のピストンが図5の右方向に後退し、ピストンに取り付けられたエアーノズルが連動して後退する。これにより、塗装ノズル15が開口する。そして、塗装ノズル15が開口すると同時に、流路17を流れていた圧縮空気が流路18を流れ、この圧縮空気が遮断弁19の作動部に供給されて遮断弁19が開く。その結果、圧縮空気供給路20とエアーノズルへの圧縮空気供給路21とが導通し、圧縮空気が圧縮空気供給路21からエアーノズルを経て塗装ノズル15から噴出する。このとき、塗装ノズル15は開口しているので、第2又は第3の吹き付け材が塗装ノズル15へ供給され、第2又は第3の吹き付け材はエアーノズルから供給される圧縮空気によって塗装ノズル15から噴射される。
【0032】
尚、第2又は第3の吹き付け材を吹き付けるに際しては、必ずしも以上のようなスプレーガン11を使用する必要はなく、例えば、手持ち式の単頭ガン等を使用することもできる。
【0033】
まず、図1(a)に示すように、建築物の壁面(躯体)22上に、金ゴテを用いて樹脂モルタル23を約1mmの厚みで塗布することにより、建築物の壁面22を平坦化して下地調整を行った(図2のステップ1)。次いで、樹脂モルタル23の上に、エアースプレーを用いてシーラー(図示せず)を吹き付けた(図2のステップ2)。シーラーとしては、神東塗料(株)製のシントーコンクリートGシーラーを用いた。次いで、シーラーを吹き付けた樹脂モルタル23の上に目地色を塗布した(図2のステップ3)。
【0034】
次に、図1(b)に示すように、シーラーを吹き付け、かつ、目地色を塗布した樹脂モルタル23の上に、発泡樹脂からなる目地棒10を貼り付けた(図2のステップ4)。ここで、目地棒10には、その裏面及び表面に粘着材が塗布されており、裏面及び表面にはさらに粘着防止用の離型紙が貼られている。このため、樹脂モルタル23の上に目地棒10を貼り付ける際には、目地棒の裏面側の離型紙が剥がされる。
【0035】
次に、図1(c)に示すように、目地棒10を貼り付けた樹脂モルタル23の上に、図4に示す3頭式スプレーガンを用いて、薄いベージュ色の第1の吹き付け材7を吹き付け、これにより、吹き付け塗装面を形成した(図2のステップ5)。この場合、噴出ノズル4、5、6の口径は5〜8mmであり、吹き圧は5〜7kg/cm2に設定されているので(小口径、高吹き圧)、第1の吹き付け材7が樹脂モルタル23上で潰れ、薄い厚み(少量の吹き付け材)で平滑かつ均一な吹き付け塗装面を形成することができる。すなわち、低コストで建築物の壁面を施工することができる。第1の吹き付け材7の吹き付け量は、
2.0〜6.0kg/m2であり、吹き付け塗装面の厚みは約2mmであった。
【0036】
次に、図1(d)に示すように、第1の吹き付け材7からなる吹き付け塗装面に、図5に示す装置を2つ用いて、赤色の第2の吹き付け材8及び白色の第3の吹き付け材9を、それぞれ、まばらに、かつ、玉状に吹き付けた(まばら吹き)(図2のステップ6)。この場合、玉状に吹き付けた第2及び第3の吹き付け材8、9の球相当径は、2〜3mmであった。また、玉状の第2及び第3の吹き付け材8、9の吹き付け密度は500〜12000個/m2である。
【0037】
次に、図1(d)、(e)に示すように、第1〜第3の吹き付け材7、8、9が乾燥する前に、金ゴテ(図示せず)を用いて、当該第1〜第3の吹き付け材7、8、9を、吹き付け塗装面の面内で左側から右側に向かう方向(図1(d)の矢印A方向)に沿って移動させることにより(コテ引っ張り)、第2及び第3の吹き付け材8、9をまばらに吹き付けた吹き付け塗装面の表面を均した(図2のステップ7)。コテ引っ張りは、同じ場所で2回行った。これにより、まばらに吹き付けた第2及び第3の吹き付け材8、9が吹き付け塗装面の表面付近で移動して、薄いベージュ色の第1の吹き付け材7からなる吹き付け塗装面の表面に、淡い茶色からなるライムストーン特有のすじ模様24が形成された。ここで、すじ模様24が淡い茶色になったのは、薄いベージュ色の第1の吹き付け材7と赤色の第2の吹き付け材8と白色の第3の吹き付け材9とが混じり合ったためである。尚、コテ引っ張りは、作業し易いように、隣接する目地棒10間で行われる。
【0038】
すなわち、以上の建築物の吹き付け塗装方法によれば、自然界に存する実際のライムストーンと同様の質感と美観を有する建築物用壁面材を得ることができる。また、材料として外装材に適した材質のものを使用しているので、ライムストーン調の外壁を実現することができる。
【0039】
次に、図1(e)、(f)に示すように、目地棒10の表面側の離型紙を剥がし、第1〜第3の吹き付け材7〜9が完全に乾燥した後、目地棒10を除去した(図2のステップ8)。これにより、目地25が形成された。
【0040】
次に、ディスクサンダー(図示せず)を用いて、コテ引っ張り(均し)を行った後の吹き付け塗装面の表面を研磨した(図2のステップ9)。これにより、凹凸の少ない、天然のライムストーンに迫る質感と美観を有する建築物用壁面材が得られた。
【0041】
最後に、コテ引っ張り(均し)を行った後の吹き付け塗装面の表面に、透明なアクリル−シリコン系塗料を用いて全体に100μmの膜厚で超耐候性トップコート(図示せず)を塗布した(図2のステップ10)。アクリル−シリコン系塗料としては、神東塗料(株)製のハイテントップ半艶クリヤーを用いた。このように、仕上げ塗装の表面を超耐候性トップコート仕上げによって被覆したことにより、建築物用壁面材の耐久性及び耐候性を向上させることができると共に、汚染を防止することもできる。尚、トップコートとしてアクリル−シリコン系塗料を用いているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、透明な樹脂であればよい。例えば、トップコートとしてフッ素系塗料を用いることもできる。このように、トップコートとして親水性の材質のものを使用すれば、塵埃が付着し難く、一旦付着した塵埃も雨水等によって容易に洗い流すことができる。
【0042】
以上の工程により、建築物の吹き付け塗装が完了し、ライムストーン調の建築物用壁面材が得られた。得られた建築物用壁面材の外観の一部を図3に示す。本実施の形態で使用している第1〜第3の吹き付け材7、8、9は柔軟性と接着力を有しているので、吹き付けた第1〜第3の吹き付け材7、8、9が建築物の壁面から剥離・脱落する恐れはない。
【0043】
尚、本実施の形態においては、第1〜第3の吹き付け材7、8、9として、それぞれ、薄いベージュ色、赤色、白色のものを用いている(ベージュ色を基調としている)が、かかる色の組み合わせに限定されるものではない。色の組み合わせを変えることにより、吹き付け塗装面の表面の模様として何百種類ものパターンを作ることができ、建築物の壁面の表現が豊かになる。すなわち、例えば、緑色を基調としたり、青色、紫色、ピンクを基調としたりすることにより、環境に順応した建築物用壁面材を得ることができる。
【0044】
また、本実施の形態においては、まばら吹きされる吹き付け材として、色の異なる2種類の吹き付け材を用いているが、まばら吹きされる吹き付け材の種類の数は特に限定されるものではない。例えば、3種類の吹き付け材を用いても、4種類以上の吹き付け材を用いてもよい。
【0045】
また、本実施の形態においては、目地棒10を用いて目地25を形成しているが、必ずしも目地を形成する必要はない。但し、コテ引っ張りの作業性を上げるためには、目印としての目地棒があるのが好ましい。
【0046】
また、本実施の形態においては、建築物の壁面に直接塗装又は塗布する場合を例に挙げて説明したが、パネル状に形成し、それを建築物の壁面に貼り付けるようにしてもよい。本発明の『建築物』には、構築された物だけでなく、パネル、ボード等の建築物に使用される建材も含まれる。
【0047】
〈トップコートの具体例〉
以下に、本発明に好適なトップコートのより具体的な例を挙げ、その塗布方法についても説明する。
【0048】
コテ引っ張り(均し)を行った後の吹き付け塗装面の表面に、まず、艶消し剤を加えないシロキサン架橋型アクリル−シリコン(珪素)重合体を含む下塗りコーティング剤を塗布して、下塗りコーティング層を形成する。この下塗りコーティング剤を塗布すると、下塗りコーティング剤の一部は吹き付け層に浸入するが、浸入しても塗料組成及び塗膜組成の均一性は保たれ、耐久性の高いコーティング層となる。加えて、下塗りコーティング層は吹き付け層とシロキサン結合によって化学結合するため、強固な密着となり、長期間美装状態を保ち、かつ、メンテナンスが不要で耐久性の高いコーティング層となる。
【0049】
下塗りコーティング剤が艶消し剤を含むと、下塗りコーティング剤の一部が吹き付け層に浸入する際に、艶消し剤は下塗りコーティング層に残されてしまい、艶消し剤の濃度が高い部分が生じるために、長期間経過したときに剥離し易くなる。また、研磨された吹き付け塗装面は、そのマトリックス樹脂成分が除去されて、骨材が露出しているので、下塗りコーティング剤が浸み込み易くなっている。従って、下塗りコーティング剤が艶消し剤を含むと、艶消し剤が偏在して白色の色むらが出てしまい、美観を損ねてしまう。
【0050】
次に、下塗りコーティング層の上に、艶消し剤を加えたシロキサン架橋型アクリル−シリコン重合体を含む上塗りコーティング剤を塗布して、上塗りコーティング層を形成する。この場合、隣り合うコーティング層同士もシロキサン結合によって化学結合するため、強固な密着となり、耐久性の高いコーティング層となる。また、塗膜は親水性であるため、塵埃が付着し難く、一旦付着した塵埃も雨水等によって容易に洗い流すことができる。その結果、長期間美装状態を保ち、かつ、メンテナンスが不要で耐久性の高い建築物用壁面材が得られる。すなわち、20年を越え、好ましくは30年を越え、さらに好ましくは40年を越える耐久性の高い非汚染仕上げ面が得られる。
【0051】
下塗りコーティング層の上に、上塗りコーティング層よりも相対的に少ない量の艶消し剤を加えたシロキサン架橋型アクリル−シリコン重合体を含む中塗りコーティング剤を塗布して、中塗りコーティング層をさらに形成するのも好ましい。この場合、下塗りコーティング層と中塗りコーティング層、及び、中塗りコーティング層と上塗りコーティング層とが、シロキサン結合によって化学結合するため、強固な密着となり、耐久性の高いコーティング層となる。また、塗膜は親水性であるため、塵埃が付着し難く、一旦付着した塵埃も雨水等によって容易に洗い流すことができる。その結果、長期間美装状態を保ち、かつ、メンテナンスが不要で耐久性の高い建築物用壁面材が得られる。すなわち、20年を越え、好ましくは30年を越え、さらに好ましくは40年を越える耐久性の高い非汚染仕上げ面が得られる。
【0052】
以下においては、下塗りコーティング層を「クリヤー」、中塗りコーティング層を「半艶」、上塗りコーティング層を「艶消し」という場合がある。クリヤーはコーティング剤に艶消し剤を含まず、半艶はコーティング剤100重量部に0を越え6重量部以下の艶消し剤を含み、艶消しはコーティング剤100重量部に6重量部を越え10重量部以下の艶消し剤を含むのが好ましい。
【0053】
コーティング剤に含まれるシロキサン架橋型アクリル−シリコン重合体は、好適には、下記(化1)で示されるモノマーを必須成分として重合して得られる、アルコキシシリル基含有のビニル重合体である。
【0054】
【化1】

【0055】
上記(化1)において、R1は水素原子、メチル基、炭素数6〜25のアリール基及び炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の有機基、R2は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜25のアリール基及び炭素数7〜12のアラルキル基から選ばれた1価の有機基、R3は炭素数1〜3のアルキル基、aは0〜2の整数、mは1〜10の整数を示す。
【0056】
一例として、下記のモノマーを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
(1)CH2=CHCOO(CH23Si(OCH33
(2)CH2=C(CH3)COO(CH23Si(OCH33
(3)CH2=C(CH3)COO(CH23Si(CH3)(OCH32
(4)CH2=CHCOO(CH23Si(OC253
(5)CH2=CHCOO(CH23Si(CH3)(OC252
(6)CH2=C(CH3)COO(CH23Si(OC253
(7)CH2=C(CH3)COO(CH23Si(CH3)(OC252
前記モノマーは1種でもよいし、2種以上を混合して使用することもできる。
【0057】
また、前記モノマーと共重合可能なモノマーとしては、アクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、あるいは他のビニルモノマー及びアミド系モノマーを用いることができる。具体的な化合物としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ヘプチルアクリレート、ヘプチルメタクリレート等のアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルモノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、メチロールメタクリルアミド、メトキシメチルアクリルアミド、n−ブトキシメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド等のアミド系モノマーを挙げることができる。これらは1種でもよいし、2種以上を混合して使用することもできる。
【0058】
これらのモノマーをラジカル重合させると、ビニル基が壊裂して重合し、これが主鎖を形成し、好適なアルコキシシリル基含有のビニル重合体を得ることができる。この重合体の好ましい数平均分子量は3000〜100000である。
【0059】
好適なビニル重合体は側鎖にアルコキシシリル基を有するため、触媒によって常温(室温)でも反応が進む。すなわち、脱アルコール反応により、シラノール基同士又は他の水酸基(−OH基)と反応してシロキサン結合(−SiO−、Siは4価であるが2価を省略。以下も同様。)が形成される。あるいは、アルコキシシリル基が加水分解され、シラノール基(−SiOH基)となり、シラノール基同士又は他の水酸基(−OH基)と反応してシロキサン結合(−SiO−)が形成される。このシロキサン結合によって架橋構造となる。このことから、「シロキサン架橋型」という。また、このようにして形成された塗膜は親水性であるため、塵埃が付着し難く、一旦付着した塵埃も雨水等によって容易に洗い流すことができる。
【0060】
中塗り及び/又は上塗りコーティング剤に含まれる艶消し剤は、平均粒子径が1〜20μmの範囲の無機粉体であるのが好ましい。前記平均粒子径は、市販の粒度分布計によって測定することができる。例えば、堀場製作所製のレーザ回折粒度測定器(LA920)、島津製作所製のレーザ回折粒度測定器(SALD2100)などを用いて測定することができる。艶消し剤は、例えば、シリカ、タルク、クレイ、アルミナなどの無機粉体から選択することができる。
【0061】
本発明方法においては、下塗りコーティング剤を塗布して硬化させ(下塗りコーティング層の形成)、その上に上塗りコーティング剤を塗装して硬化させる(上塗りコーティング層の形成)。好ましくは、下塗りコーティング層と上塗りコーティング層との間に中塗りコーティング剤を塗布して硬化させる(中塗りコーティング層の形成)。前記下塗り、中塗り、上塗りの各コーティング剤には、シロキサン架橋型アクリル−シリコン重合体と共に、触媒、溶剤、その他の添加剤を加えることもできる。触媒としては、酸、塩基、有機金属を使用することができる。中でも有機錫が好ましく、有機錫としては、ジオクチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレ−ト)、ジオクチル錫オキサイド又はジブチル錫オキサイドとシリケ−トとの縮合物、ジブチル錫ジオクトエ−ト、ジブチル錫ジラウレ−ト、ジブチル錫ジステアレ−ト、ジブチル錫ジアセチルアセトナ−ト、ジブチル錫ビス(エチルマレ−ト)、ジブチル錫ビス(ブチルマレ−ト)、ジブチル錫ビス(2−エチルヘキシルマレ−ト)、ジブチル錫ビス(オレイルマレ−ト)、スタナスオクトエ−ト、ステアリン酸錫、ジ−n−ブチル錫ラルレ−トオキサイド等が挙げられる。また、分子内にS原子を有する錫化合物としては、ジブチル錫ビスイソノニル−3―メルカプトプロピオネ−ト、ジオクチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネ−ト、オクチルブチル錫ビスイソノニル−3−メルカプトプロピオネ−ト、ジブチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ−ト、ジオクチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ−ト、オクチルブチル錫ビスイソオクチルチオグルコレ−ト等が挙げられる。触媒は単独でもよく、また、2種類以上併用してもよい。有機錫を使用する場合、触媒の使用量は、シロキサン架橋型アクリル−シリコン重合体成分100重量部に対して0.01重量部以上1重量部以下であるのが好ましく、さらに好ましくは0.1重量部以上0.2重量部以下である。
【0062】
溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール等のアルコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のエーテル類;メチルエチルケトン、アセト酢酸エチル、アセチルアセトン、ジアセトンアルコール、メチルイソブチルケトン、アセトン等のケトン類等が挙げられる。これらの溶剤のうち特に好ましい溶剤は、安全性の観点から、キシレンである。溶剤の使用量は、シロキサン架橋型アクリル−シリコン重合体成分100重量部に対して50重量部以上200重量部以下、好ましくは70重量部以上150重量部以下、さらに好ましくは80重量部以上120重量部以下である。
【0063】
添加剤としては、シリコーンオイル等の消泡剤、ヒンダードフェノール等の紫外線吸収剤、光安定剤、アマイドワックス等のタレ防止剤、レベリング剤等が挙げられる。
【0064】
本発明方法においては、さらに耐久性を上げるために、中塗りコーティング剤を2回塗りするのが好ましい。
【0065】
以下、実施例を用いて、トップコートについてさらに詳細に説明する。尚、下記の実施例に限定されるものではない。
【0066】
(各特性の測定試験方法)
(1)サンシャインウェザーメーターによる促進試験
試験機:スガ試験機社製、型番“WE−SUN−HC−DC”
光源:1灯式・セリウム入り有芯カーボンを上下各4本組み合わせ
光線波長:280〜400nm
放射照度:フィルター付き255±45W/m2、フィルターなし285±50W/m2
光フィルター:耐熱性光学ガラス板使用・8枚1組、255nm以下の短波長成分をカット、355nmまでの成分を10〜50%透過
放出電力:50V、60A(3000W)
雰囲気温度:63±3℃
シャワー:120分中18分間降雨先降り運転
スプレー水量:2100±100ml/min(pH6.0〜8.0、水温16±5℃)試料枚数:70×150mm、76枚
運転サイクル:60Hr
(2)光沢
目視により観察し、次のように評価した。
【0067】
A:天然石に近似する光沢
B:やや艶が目立つ
(3)ひび割れ有無
サンシャインウェザーメーターによる促進試験後の試料表面を目視により観察し、次のように評価した。
【0068】
A:ひび割れなし
B:僅かにひび割れあり、補修必要
C:大きなひび割れあり、補修必要
(4)変色
サンシャインウェザーメーターによる促進試験後の試料表面を目視により観察し、次のように評価した。
【0069】
A:変色なし
B:変色あるが実用的に問題ない程度で目立たない、補修不要
C:やや目立つ変色、補修必要
D:明らかに変色しており、補修必要
(実施例1)
吹き付け塗装面の表面に、コーティング剤用のスプレーノズルを用いて、下塗りコーティング剤と上塗りコーティング剤を順番に塗布した。
(1)下塗りコーティング剤(クリヤー)
ハマトップFCクリヤー(基剤)
アルコキシシリル基含有ビニル重合体(数平均分子量15000) 43重量部
添加剤(消泡剤+光安定剤+顔料分散剤) 1重量部
溶剤(酢酸エチル) 2重量部
溶剤(酢酸ブチル) 2重量部
溶剤(キシレン) 45重量部
基剤 計93重量部
ハマトップFCクリヤー(硬化剤)
有機錫(ジブチル錫ジラウレ−ト)の混合物 1重量部(有機錫は0.1重量部)
溶剤(キシレン) 6重量部
硬化剤 計7重量部
合計100重量部
塗布量100g/m2(乾燥重量(固形分)で50g/m2)1回塗り
(2)上塗りコーティング剤(艶消し)
ハマトップFC艶消しクリヤー(基剤)
アルコキシシリル基含有ビニル重合体(数平均分子量15000) 40重量部
添加剤(消泡剤+光安定剤+顔料分散剤) 1重量部
溶剤(酢酸エチル) 2重量部
溶剤(酢酸ブチル) 2重量部
溶剤(キシレン) 41重量部
艶消し剤(平均粒子径8μmのシリカ)7重量部
基剤 計93重量部
ハマトップFC艶消しクリヤー(硬化剤)
有機錫(ジブチル錫ジラウレ−ト)の混合物 2重量部(有機錫は0.2重量部)
溶剤(キシレン) 5重量部
硬化剤 計7重量部
合計100重量部
塗布量100g/m2(乾燥重量(固形分)で50g/m2)1回塗り
得られた美装仕上げの建築物用壁面材に対してサンシャインウェザーメーターによる促進試験を行ったところ、8000時間後(40年に相当)でもひび割れやクラック、及び変色は無く、耐久性のあることが確認できた。
【0070】
(実施例2)
実施例1において、下塗りコーティング剤を1回塗りして硬化させ、その上に中塗りコーティング剤を2回塗りした以外は、実施例1と同様にスプレー塗装した。
(3)中塗りコーティング剤(半艶)
ハマトップFC半艶クリヤー(基剤)
アルコキシシリル基含有ビニル重合体(数平均分子量15000) 41重量部
添加剤(消泡剤+光安定剤+顔料分散剤) 1重量部
溶剤(酢酸エチル) 2重量部
溶剤(酢酸ブチル) 2重量部
溶剤(キシレン) 42重量部
艶消し剤(平均粒子径8μmのシリカ)5重量部
基剤 計93重量部
ハマトップFC半艶クリヤー(硬化剤)
有機錫(ジブチル錫ジラウレ−ト)の混合物 2重量部(有機錫は0.2重量部)
溶剤(キシレン) 5重量部
硬化剤 計7重量部
合計100重量部
塗布量100g/m2(乾燥重量(固形分)で50g/m2)2回塗り
得られた美装仕上げの建築物用壁面材に対してサンシャインウェザーメーターによる促進試験を行ったところ、7000時間(35年に相当)までは、ひび割れやクラック、及び変色は無く、耐久性のあることが確認できた。
【0071】
(実施例3)
実施例1において、下塗りコーティング剤を1回塗りして硬化させ、その上に中塗りコーティング剤を1回塗りした以外は、実施例1と同様にスプレー塗装した。
【0072】
得られた美装仕上げの建築物用壁面材に対してサンシャインウェザーメーターによる促進試験を行ったところ、7000時間(35年に相当)までは、ひび割れやクラック、及び変色は無く、耐久性のあることが確認できた。
【0073】
(実施例4)
実施例1において、下塗りコーティング剤を塗布しなかった以外は、実施例1と同様にスプレー塗装した。
【0074】
得られた美装仕上げの建築物用壁面材に対してサンシャインウェザーメーターによる促進試験を行ったところ、4000時間(20年に相当)までは、ひび割れやクラック、及び変色は無く、耐久性のあることが確認できた。
【0075】
(実施例5)
実施例2において、下塗りコーティング剤を塗布しなかった以外は、実施例2と同様にスプレー塗装した。
【0076】
得られた美装仕上げの建築物用壁面材に対してサンシャインウェザーメーターによる促進試験を行ったところ、4000時間(20年に相当)までは、ひび割れやクラック、及び変色は無く、耐久性のあることが確認できた。
【0077】
(実施例6)
実施例2において、下塗り及び中塗りコーティング剤を塗布せず、上塗りコーティング剤を2回塗りした以外は、実施例2と同様にスプレー塗装した。
【0078】
得られた美装仕上げの建築物用壁面材に対してサンシャインウェザーメーターによる促進試験を行ったところ、2000時間(10年に相当)までは、ひび割れやクラック、及び変色は無く、耐久性のあることが確認できた。
【0079】
以上の結果を下記(表1)にまとめて示す。
【0080】
【表1】

【0081】
上記(表1)から明らかな通り、実施例1〜3においては、下塗りコーティング剤として艶消し剤を加えないシロキサン架橋型アクリル−シリコン重合体を含むものを塗布したため、耐久性が高くなっている。また、最外層に半艶ないしは艶消し層を形成したため、天然石に近い落ち着いた光沢を有していた。
【0082】
また、実施例4〜6においては、吹き付け層の上に直接半艶ないしは艶消し層を形成したため、耐久性は多少低く、光沢も強すぎるという傾向があった。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明は、自然界に存する実際のライムストーンと同様の質感と美観を有する建築物用壁面材からなる建築物の壁面を得ることができるので、建築物の外壁面の仕上げに対して有用である。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の一実施の形態における建築物の吹き付け塗装方法を示す水平断面工程図
【図2】本発明の一実施の形態における建築物の吹き付け塗装方法を示すフローチャート
【図3】本発明の一実施の形態における建築物の吹き付け塗装方法を用いて得られた建築物用壁面材を示す平面図
【図4】本発明の一実施の形態における建築物の吹き付け塗装方法において吹き付け塗装面形成用の吹き付け材を吹き付けるために用いられる3頭式スプレーガンを示す斜視図
【図5】本発明の一実施の形態における建築物の吹き付け塗装方法において吹き付け塗装面にまばらに吹き付ける吹き付け材をそれぞれ吹き付けるために用いられる装置を示す概略構成図
【符号の説明】
【0085】
1、2、3 タンク
4、5、6 噴出ノズル
7 第1の吹き付け材
8 第2の吹き付け材
9 第3の吹き付け材
10 目地棒
11 スプレーガン
12 装置
13 ホッパー
14 導管
15 塗装ノズル
16 切換弁
17、18 流路
19 遮断弁
20、21 圧縮空気供給路
22 建築物の壁面(躯体)
23 樹脂モルタル
24 すじ模様
25 目地

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の壁面に、骨材と合成樹脂とを含む所定の色の吹き付け材を吹き付けて、吹き付け塗装面を形成する工程と、
前記吹き付け塗装面に、骨材と合成樹脂とを含む、前記所定の色の吹き付け材と色の異なる複数種の吹き付け材をまばらに吹き付ける工程と、
前記所定の色の吹き付け材及び前記複数種の吹き付け材を、前記吹き付け塗装面の面内の一方向に沿って移動させることにより、前記複数種の吹き付け材をまばらに吹き付けた前記吹き付け塗装面の表面を均す工程とを備えた建築物の吹き付け塗装方法。
【請求項2】
前記所定の色の吹き付け材を、小口径、高吹き圧のスプレーガンを用いて吹き付ける、請求項1に記載の建築物の吹き付け塗装方法。
【請求項3】
前記スプレーガンの口径が5〜8mm、吹き圧が5〜7kg/cm2である、請求項2に記載の建築物の吹き付け塗装方法。
【請求項4】
前記複数種の吹き付け材の球相当径が2〜3mm、吹き付け密度が500〜12000個/m2である、請求項1に記載の建築物の吹き付け塗装方法。
【請求項5】
前記所定の色の吹き付け材として淡い色の吹き付け材を用いる、請求項1〜4のいずれかに記載の建築物の吹き付け塗装方法。
【請求項6】
前記淡い色が薄いベージュ色である、請求項5に記載の建築物の吹き付け塗装方法。
【請求項7】
前記複数種の吹き付け材として、赤色の吹き付け材と白色の吹き付け材を用いる、請求項6に記載の建築物の吹き付け塗装方法。
【請求項8】
均した前記吹き付け塗装面の表面を研磨する工程をさらに備えた、請求項1〜7のいずれかに記載の建築物の吹き付け塗装方法。
【請求項9】
前記各吹き付け材として、骨材5〜90重量部と合成樹脂10〜95重量部とを含む吹き付け材を用いる、請求項1〜8のいずれかに記載の建築物の吹き付け塗装方法。
【請求項10】
前記骨材として、セラミックス骨材、天然石骨材及び焼き付け骨材からなる群から選ばれる少なくとも1つを用いる、請求項1〜9のいずれかに記載の建築物の吹き付け塗装方法。
【請求項11】
前記合成樹脂としてアクリル樹脂エマルジョンを用いる、請求項1〜10のいずれかに記載の建築物の吹き付け塗装方法。
【請求項12】
均した前記吹き付け塗装面の表面に、透明な樹脂によってトップコートを施す、請求項1〜11のいずれかに記載の建築物の吹き付け塗装方法。
【請求項13】
前記透明な樹脂として、アクリル−シリコン系塗料又はフッ素系塗料を用いる、請求項12に記載の建築物の吹き付け塗装方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−221149(P2010−221149A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72126(P2009−72126)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(310007553)株式会社ハマキャスト (7)
【Fターム(参考)】