説明

建築物の防蟻被覆構造、及び建物被覆用防蟻シート

【課題】 アメリカカンザイシロアリの侵入を効果的に阻止でき、また防蟻効果を長期間持続させることができて、しかも、製造面でも有利な建築物の防蟻被覆構造、及び建物被覆用防蟻シートを提供すること。
【解決手段】 防水性を有し、かつ、微多孔11a・11a…により透湿性を備えた合成樹脂フィルムから成る透湿フィルム層11の一方側の面上に、防蟻剤を含有し、かつ、通気孔12a・12a…が穿設された合成樹脂フィルムから成る防蟻フィルム層12、或いは防蟻剤を含浸させた防蟻不織布層15が積層される一方、前記透湿フィルム層11の他方側の面上には補強不織布層14が積層された透湿防水シート1を壁下地材2又は野地板5に張設して構成し、
前記透湿防水シート1の防蟻フィルム層12又は防蟻不織布層15の材質及び密度によって、防蟻フィルム層12又は防蟻不織布層15中から通気部への防蟻剤の気化・放出量を調節可能とした

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の防蟻被覆構造および建物被覆用シートの改良、詳しくは、アメリカカンザイシロアリの侵入を効果的に阻止でき、また防蟻効果も長期間持続し、しかも、生産性にも優れた建築物の防蟻被覆構造、及び建物被覆用防蟻シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、木材を使用した建築物はシロアリによる被害を受け易いことから、木造住宅などを設計する際には、シロアリによる食害及び屋内への侵入を防ぐための防蟻構造についてしっかりと対策を立てる必要がある。
【0003】
また、既知の防蟻構造としては、建築物の床下に防水性の防蟻シートを張設する方法が一般的であり(例えば、特許文献1参照)、このような防蟻構造を採用することによって、地中に巣を作り土台部分から木材を食害して屋内へと侵入するヤマトシロアリやイエシロアリの被害を防ぐことができる。
【0004】
ところで、最近では、上記ヤマトシロアリ等に加えて外来種であるアメリカカンザイシロアリによる被害も国内で拡がっており、このアメリカカンザイシロアリは、土台部などの湿気の多い場所にしか生息できないヤマトシロアリ等とは異なり湿気のない天井裏や家具類中でも飛来して棲みついてしまうため、一旦屋内に侵入されると食害の防止が非常に困難である。
【0005】
また、屋内への侵入経路に関しても、アメリカカンザイシロアリはヤマトシロアリ等と異なり羽根アリが飛来して壁や換気口などから侵入するため、一般的に用いられている従来の床下の防蟻構造ではアメリカカンザイシロアリの侵入を到底防ぐことはできない。
【0006】
そこで、先行技術文献(特許文献2参照)に開示されているような、透湿防水性のハウスラップ用のシートに防蟻剤を含有させたものを外壁下地や屋根下地に使用して、アメリカカンザイシロアリの侵入を阻止することも考えられる。
【0007】
しかしながら、上記<文献2>に係る防蟻剤入りハウスラップ用シートは、図10に示すようにシート内部の防蟻剤をベーパライズ(気化)させることで通気部に侵入したシロアリに対する殺虫・忌避効果を発揮するものの、従来のハウスラップ用シートは、防蟻剤の気化が大量に生じて結果的に防蟻剤の効果が早期に失われるという欠点があった。
【0008】
また、防蟻剤のベーパライズによる効果の消失速度を遅延させるために防蟻剤をマイクロカプセル化して多孔質フィルムに含有させることも考えられたが、それだと強度面で条件が課せられる多孔質フィルムの成形が困難になってシートの生産性が低下する懸念があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭59−96351号公報(第1−3頁、図1−4図)
【特許文献2】特開昭64−58739号公報(第1−7頁、図1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の如き問題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、アメリカカンザイシロアリの侵入を効果的に阻止でき、また防蟻効果を長期間持続させることができて、しかも、製造面でも有利な建築物の防蟻被覆構造、及び建物被覆用防蟻シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0012】
即ち、本発明は、防水性を有し、かつ、微多孔11a・11a…により透湿性を備えた合成樹脂フィルムから成る透湿フィルム層11の一方側の面上に、防蟻剤を含有し、かつ、通気孔12a・12a…が穿設された合成樹脂フィルムから成る防蟻フィルム層12、或いは防蟻剤を含浸させた防蟻不織布層15が積層される一方、前記透湿フィルム層11の他方側の面上には補強不織布層14が積層された透湿防水シート1と;この透湿防水シート1が張設される壁下地材2と;前記透湿防水シート1を挟んで壁下地材2の外側に立設された外壁材3と;前記透湿防水シート1が張設される野地板5と;この野地板5上に敷設された屋根材6と;前記透湿防水シート1と外壁材3の間、及び前記透湿防水シート1と屋根材6の間に形成された通気部4とを含んで建築物の防蟻被覆構造を構成し、
前記透湿防水シート1の防蟻フィルム層12又は防蟻不織布層15の材質及び密度によって、防蟻フィルム層12又は防蟻不織布層15中から前記通気部4への防蟻剤の気化・放出量を調節可能とした点に特徴がある。
【0013】
また、本発明は、上記課題を解決するために上記手段に加えて、透湿防水シート1の防蟻フィルム層12或いは防蟻不織布15上に、少なくとも前記微多孔11a・11a…を開放せしめる箇所に小穿孔13a・13a…が設けられたラミネートフィルム或いはコーティング被膜から成る表面保護層13を積層することにより、当該表面保護層13に設けられた小穿孔13a・13a…の数及び大きさによって、防蟻フィルム層12中から前記通気部4への防蟻剤の気化・放出量を調節可能とすることもできる。
【0014】
そしてまた、本発明は、必要に応じて上記手段に加え、屋内へと通じる換気口7に金属製または防蟻剤を含有した合成樹脂製のメッシュ材71を張設するという技術的手段を採用することもできる。
【0015】
また更に、本発明は、必要に応じて上記手段に加え、床下の土台部8に防蟻剤を含有した防湿性シート材81を張設するという技術的手段を採用することもできる。
【0016】
他方また、本発明は、必要に応じて上記手段に加え、上記透湿防水シート1において、透湿フィルム層11と防蟻フィルム層12との間にアルミ薄膜層16を介装して防蟻剤への熱的影響を軽減するという技術的手段を採用することもできる。なお、上記「アルミ薄膜層」には、アルミ蒸着層も含まれるものとする。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、微多孔を備えた透湿フィルムの一方の面上に、防蟻剤を含有させた防蟻フィルム或いは防蟻不織布を積層して成る透湿防水シートを、外壁下地や屋根下地として使用したことにより、外壁材や屋根材の内側に形成された通気部にアメリカカンザイシロアリが侵入した場合でも、前記透湿防水シートの防蟻フィルムや防蟻不織布からベーパライズした防蟻剤が通気部内に放出されるため、通気部内でシロアリを殺虫・忌避することが可能となる。
【0018】
また、上記防蟻剤のベーパライズに関しては、防蟻フィルムや防蟻不織布の材質・密度を工夫したり、任意の数及び大きさの穿孔を有する表面保護層を設けたりすることで、防蟻剤の気化・放出量を調節することができるため、防蟻効果を従来よりも長期間持続させることができる。
【0019】
そしてまた、上記透湿防水シートに使用する防蟻フィルムに関しては、透湿フィルムと異なり強度面を特に考慮する必要はないため、防蟻剤を含んだ状態で成形が容易な材料を選択して製造効率を向上することも可能となる。
【0020】
したがって、本発明によれば、アメリカカンザイシロアリに対して優れた防蟻効果を発揮するだけでなく、防蟻効果の持続性や生産性にも優れた防蟻シート及び当該防蟻シートを用いた建築物の防蟻被覆構造を提供できることから、本発明の実用的利用価値は頗る高い。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1における透湿防水シートの積層構造を表わす拡大斜視図である。
【図2】本発明の実施例1における透湿防水シートの断面構造を表わす部分断面図である。
【図3】本発明の実施例1における透湿防水シートの断面構造を表わす部分断面図である。
【図4】本発明の実施例1における透湿防水シートを張設した外壁部及び小屋根部の構造を表わす構造断面図である。
【図5】本発明の実施例1における透湿防水シートの防蟻機能を表わす状態説明図である。
【図6】本発明の実施例2における透湿防水シートの積層構造を表わす拡大斜視図である。
【図7】本発明の実施例2における透湿防水シートの断面構造を表わす部分断面図である。
【図8】本発明の実施例3における透湿防水シートの積層構造を表わす拡大斜視図である。
【図9】本発明の実施例4における建築物のハウスラップ構造を表わす構造断面図である。
【図10】従来技術における透湿防水シートの防蟻機能を表わす状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態を具体的に図示した図面に基づいて更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0023】
『実施例1』
本発明の実施例1は、図1から図5に示される。同図において、符号1で指示するものは透湿防水シートであり、符号2で指示するものは壁下地材である。符号3で指示するものは外壁材であり、符号4で指示するものは通気部である。符号5で指示するものは屋根材であり、符号6で指示するものは野地板である。
【0024】
まず実施例1で使用する透湿防水シート1の構成について説明すると、透湿フィルム層11に、防水性を有し、かつ、面上に微小(孔径:5μm以下)な微多孔11a・11a…を備えた合成樹脂フィルムを使用し、更にこの透湿フィルム層11の表面側には、所定大きさ(本実施例では、孔径4mm)の通気孔12a・12a…が形成された、防蟻剤を含有する合成樹脂フィルムを接着して防蟻フィルム層12を形成している(図1、図2参照)。
【0025】
なお、上記透湿防水シート1の防蟻フィルム層12の通気孔11a・11a…は、透湿作用が得られる範囲で孔径を自由に変更することができるが、穿設加工により通気孔12a・12a…を設ける際には、実用上における最低限度の透湿性を確保するために通気孔12a・12a…を50〜100万個/mの密度で設け、開口率が10〜15%となるようにする。
【0026】
また更に、上記透湿防水シート1の防蟻フィルム層12上には、通気孔12a・12a…を開放せしめる箇所及びその他所定の箇所に小穿孔13a・13a…(本実施例では、孔径4mm)が設けられた合成樹脂フィルム(厚み:12μm)をラミネートして表面保護層13を設ける一方、上記透湿フィルム層11の裏面側には不織布シートを接着して補強不織布層14を設けている。
【0027】
ちなみに実施例1では、上記透湿防水シート1の透湿フィルム層11に、ポリプロピレン製の2軸延伸フィルムを使用すると共に、防蟻フィルム層12には、成形が容易なEVA樹脂フィルムを使用している。また、表面保護層13には熱式ラミネートが可能なポリエチレンシートを使用し、補強不織布層14には、適当な密度のPET不織布を使用している。
【0028】
また、上記透湿防水シート1の表面保護層13の小穿孔13a・13a…は、少なくとも通気孔12a・12a…を開放せしめる箇所に設けられていればよく、例えば、図3に示すように通気孔12a・12a…よりも口径の大きい小穿孔13aを通気孔12a・12a…の位置に合わせて設けることもできる。
【0029】
そしてまた、実施例1では、透湿防水シート1を作製する際に、予め小穿孔13a・13a…を設けたフィルム材をラミネートして表面保護層13を形成しているが、小穿孔13a・13a…はフィルム材をラミネートした後に穿設加工により設けることもでき、特に表面保護層13をフィルム材でなくコーティング被膜とする場合には、コーティング後に穿設加工を行って小穿孔13a・13a…を設ける必要がある。
【0030】
また実施例1では、上記透湿防水シート1の防蟻フィルム層12に含有させる防蟻剤として、ピレスロイド系殺虫剤を使用しているが、これ以外にもネオニコチノイド系やカーバメイト系、フェニルピラゾール系、クロルフェノール系、オキジアンジン系、フェニルピロール系などの殺虫剤を使用でき、またヒバ油やヒノキチオール、ピレトリン、カプリン酸等の天然系防蟻剤を使用することも可能である。
【0031】
次に、上記透湿防水シート1を用いた外壁通気工法について説明する。まず内壁材の外側に配設した壁下地材2(本実施例では、「断熱材」)の外側面に、補強不織布層14を向けて透湿防水シート1を張設した後、この透湿防水シート1の更に外側に所定の間隔を空けて外壁材3を立設して外壁部を構築する(図4参照)。
【0032】
また、上記外壁材3と透湿防水シート1の間に形成された隙間については、下側の開口部41から流入させた外気を上側の開口部41から排出可能とすることで通気部4として利用できるようにする。
【0033】
そして上記のように構築した外壁部では、図5に示すように、開口部41からアメリカカンザイシロアリが通気部4に侵入した場合でも、透湿防水シート1の表面保護層13の小穿孔13a・13a…からベーパライズした防蟻剤によってシロアリを殺虫・忌避することができるため、シロアリの屋内への侵入を未然に防止することができる。
【0034】
また、上記透湿防水シート1の防蟻フィルム層12の表面は表面保護層13で覆われているため、防蟻フィルム層13の表面全体から防蟻剤が大量に気化して防蟻効果が早期消失する心配もなく、しかも、表面保護層13の小穿孔13a・13a…の数や大きさを変更すれば、防蟻剤の放出量を調節することも可能となる。そしてまた、上記透湿防水シート1の防蟻フィルム層12の厚みを変更することにより防蟻剤の含有量の調整も容易となる。
【0035】
他方また、上記透湿防水シート1は、合成樹脂フィルムから成る透湿フィルム層11や防蟻フィルム層12、表面保護層13、及び補強不織布層14をラミネート加工するだけで簡単に作製することができ、特に防蟻フィルム層12については防蟻剤を含んだ状態であっても成形が容易な材料を選択することができるため、製造効率の向上も図れる。
【0036】
次に、上記透湿防水シート1を用いた屋根通気工法についても説明する。まず外壁通気工法と同様、補強不織布層14側を向けて透湿防水シート1を野地板5に張設した後、この透湿防水シート1上に屋根材6を敷設すると共に、この屋根材6と透湿防水シート1の間には外気が出入り可能な通気部4を設けて小屋根部を構築する。
【0037】
これにより、外壁部と同じようにアメリカカンザイシロアリが開口部分から通気部4に侵入した場合であっても、透湿防水シート1の表面保護層13の小穿孔13a・13a…から放出される防蟻剤によりシロアリを撃退することができる。
【0038】
ちなみに、上記屋根通気工法において使用する屋根材6については、野地板5との間に通気可能な隙間が形成されるものであれば瓦材以外の例えばスレートや金属板などであっても使用することが可能である。
【0039】
『実施例2』
次に、本発明の実施例2を図6及び図7に基づいて説明する。実施例2では、透湿防水シート1の防蟻フィルム層12の代わりに防蟻剤を含浸させた防蟻不織布層15を透湿フィルム層11に積層して構成している(図6、図7参照)。
【0040】
これにより、上記透湿防水シート1では、防蟻不織布層15の表面で起こる防蟻剤の気化放出を表面保護層13の小穿孔13a・13a…で適正量に抑えつつ、防蟻フィルム層12よりも防蟻剤の含有量を増やすことが容易となる。ちなみに、透湿防水シート1に防蟻不織布層15を設ける場合には、防蟻フィルム層12よりも格段に防蟻剤の気化量が多くなるため、表面保護層13の役割が非常に大きくなる。
【0041】
『実施例3』
次に、本発明の実施例3を図8に基づいて説明する。実施例3では、透湿防水シート1の透湿フィルム層11と防蟻フィルム層12との間にアルミ薄膜層16を介装すると共に、このアルミ薄膜層16には、表面保護層13の小穿孔13a・13a…に連通する連通孔16a・16a…を設けている(図8参照)。
【0042】
これにより、外壁材3及び屋根材6から放射される輻射熱を透湿防水シート1のアルミ薄膜層16で遮断して屋内への熱侵入を防ぐことができるだけでなく、防蟻剤への熱的影響を軽減して余計な気化や熱変性を防止することもできる。
【0043】
なお実施例3では、防蟻フィルム層12にアルミを蒸着して厚み45nmのアルミ薄膜層16を形成した後、このアルミ薄膜層16上に表面保護層13を設けて全体に穿設加工を行い、その後、前記防蟻フィルム層12と透湿フィルム層11とを接着して透湿防水シート1を作製している。
【0044】
『実施例4』
次に、本発明の実施例4を図9に基づいて説明する。図中、符号7で指示するものは、換気口であり、符号8で指示するものは、土台部である。実施例4では、透湿防水シート1を張設できない換気口7に対し防蟻剤含有の合成樹脂製メッシュ材71を付設しており、これによって、飛来したアメリカンザイシロアリが換気口7から直接屋内へ侵入することを防止することができる(図9参照)。
【0045】
ちなみに、上記換気口7には、屋内への出入口となる建物の土台部分や屋根部分に設けられた通風口や、外壁部分に設けられた換気扇の給排気口などが含まれる。
【0046】
また実施例4では、外壁部における通気部4の開口部41・41にもメッシュ材41a・41aを付設しており、これによってシロアリの通気部4への侵入も防止して、防蟻効果を一層向上できる。
【0047】
なお、上記換気口7や通気部4の開口部41に付設するメッシュ材は、アメリカカンザイシロアリが通過しない程度の目の大きさ(具体的には最低でも2.0mm以下、好ましくは1.5mm以下)とする必要があり、また材料に関しては食い破られなければよいため、金網などを使用することもできる。
【0048】
また実施例4では、床下の土台部8に防蟻剤を含有した防湿性シート材81を張設することにより土中に生息するヤマトシロアリやイエシロアリによる食害も同時に防止できるようにしている。
【0049】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、本発明は図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、透湿防水シート1の透湿フィルム層11に使用する合成樹脂フィルムの材料は、ポリプロピレン以外にもポリエチレンやポリウレタンなどを採用することができ、また防蟻フィルム層12の材料に、EVAよりも防蟻剤がベーパライズし難いポリプロピレンやポリエチレン等を使用することもできる。
【0050】
また、透湿防水シート1の透湿フィルム層11に含有する防蟻剤には、マイクロカプセル化したものを使用することもでき、これによりマイクロカプセルの被覆材(殻)が防蟻剤のベーパライズを抑えて気化・放出量を抑制することができる。
【0051】
そしてまた、透湿防水シート1は、透湿フィルム層11と防蟻フィルム層又は防蟻不織布層15、表面保護層13、補強不織布層14が含まれていれば5層以上から構成されていてもよく、また、壁下地材2は、断熱材の他、胴縁や木ずり或いは合板等であってもよく、上記何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0052】
近年、木造建築のシロアリ対策は、建物の寿命に直結する事項であるためその重要性は非常に高く、また最近では、アメリカカンザイシロアリによる被害の報告も急増していることから、アメリカカンザイシロアリに対する早急な防蟻対策が求められている。
【0053】
そのような中で、本発明の建築物の防蟻被覆構造、及び建物被覆用防蟻シートは、防蟻剤の効果を長期間持続させてアメリカカンザイシロアリの屋内への侵入を防ぐことのできる有用な技術であることから、市場における需要は大きく、その産業上の利用価値は非常に高い。
【符号の説明】
【0054】
1 透湿防水シート
11 透湿フィルム層
11a 微多孔
12 防蟻フィルム層
12a 通気孔
13 表面保護層
13a 小穿孔
14 補強不織布層
15 防蟻不織布層
16 アルミ薄膜層
16a 連通孔
2 壁下地材
3 外壁材
4 通気部
41 開口部
41a メッシュ材
5 野地板
6 屋根材
7 換気口
71 メッシュ材
8 土台部
81 防湿性シート材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水性を有し、かつ、微多孔11a・11a…により透湿性を備えた合成樹脂フィルムから成る透湿フィルム層11の一方側の面上に、防蟻剤を含有し、かつ、通気孔12a・12a…が穿設された合成樹脂フィルムから成る防蟻フィルム層12、或いは防蟻剤を含浸させた防蟻不織布層15が積層される一方、前記透湿フィルム層11の他方側の面上には補強不織布層14が積層された透湿防水シート1と;この透湿防水シート1が張設される壁下地材2と;前記透湿防水シート1を挟んで壁下地材2の外側に立設された外壁材3と;前記透湿防水シート1が張設される野地板5と;この野地板5上に敷設された屋根材6と;前記透湿防水シート1と外壁材3の間、及び前記透湿防水シート1と屋根材6の間に形成された通気部4とを含んで構成され、
前記透湿防水シート1の防蟻フィルム層12又は防蟻不織布層15の材質及び密度によって、防蟻フィルム層12又は防蟻不織布層15中から前記通気部4への防蟻剤の気化・放出量が調節されることを特徴とする建築物の防蟻被覆構造。
【請求項2】
防水性を有し、かつ、微多孔11a・11a…により透湿性を備えた合成樹脂フィルムから成る透湿フィルム層11の一方側の面上に、防蟻剤を含有し、かつ、通気孔12a・12a…が穿設された合成樹脂フィルムから成る防蟻フィルム層12が積層され、更にこの防蟻フィルム層12上には、少なくとも前記通気孔12a・12a…を開放せしめる箇所に小穿孔13a・13a…が設けられたラミネートフィルム或いはコーティング被膜から成る表面保護層13が積層される一方、前記透湿フィルム層11の他方側の面上には補強不織布層14が積層された透湿防水シート1と;この透湿防水シート1が張設される壁下地材2と;前記透湿防水シート1を挟んで壁下地材2の外側に立設された外壁材3と;前記透湿防水シート1が張設される野地板5と;この野地板5上に敷設された屋根材6と;前記透湿防水シート1と外壁材3の間、及び前記透湿防水シート1と屋根材6の間に形成された通気部4とを含んで構成され、
前記透湿防水シート1の表面保護層13に設けられた小穿孔13a・13a…の数及び大きさによって、防蟻フィルム層12中から前記通気部4への防蟻剤の気化・放出量が調節されることを特徴とする建築物の防蟻被覆構造。
【請求項3】
防水性を有し、かつ、微多孔11a・11a…により透湿性を備えた合成樹脂フィルムから成る透湿フィルム層11の一方側の面上に、防蟻剤を含浸させた防蟻不織布層15が積層され、更にこの防蟻不織布層15上には、複数の小穿孔13a・13a…が設けられたラミネートフィルム或いはコーティング被膜から成る表面保護層13が積層される一方、前記透湿フィルム層11の他方側の面上には補強不織布層14が積層された透湿防水シート1と;この透湿防水シート1が張設される壁下地材2と;前記透湿防水シート1を挟んで壁下地材2の外側に立設された外壁材3と;前記透湿防水シート1が張設される野地板5と;この野地板5上に敷設された屋根材6と;前記透湿防水シート1と外壁材3の間、及び前記透湿防水シート1と屋根材6の間に形成された通気部4とを含んで構成され、
前記透湿防水シート1の表面保護層13に設けられた小穿孔13a・13a…の数及び大きさによって、防蟻不織布層15中から前記通気部4への防蟻剤の気化・放出量が調節されることを特徴とする建築物の防蟻被覆構造。
【請求項4】
屋内へと通じる換気口7に金属製または防蟻剤を含有した合成樹脂製のメッシュ材71が張設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載の建築物の防蟻被覆構造。
【請求項5】
床下の土台部8に防蟻剤を含有した防湿性シート材81が張設されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載の建築物の防蟻被覆構造。
【請求項6】
防水性を有し、かつ、微多孔11a・11a…により透湿性を備えた合成樹脂フィルムから成る透湿フィルム層11と;この透湿フィルム層11の一方側の面上に積層され、防蟻剤を含有し、かつ、通気孔12a・12a…が穿設された合成樹脂フィルムから成る防蟻フィルム層12、或いは防蟻剤を含浸させた防蟻不織布層15と;前記透湿フィルム層11の他方側の面上に積層された補強不織布層14とを含んで構成され、
前記透湿防水シート1の防蟻フィルム層12又は防蟻不織布層15の材質及び密度によって、防蟻フィルム層12又は防蟻不織布層15中から外部への防蟻剤の気化・放出量が調節されることを特徴とする建物被覆用防蟻シート。
【請求項7】
透湿フィルム層11と防蟻フィルム層12、又は透湿フィルム層11と防蟻不織布層15との間に連通孔16a・16a…を備えたアルミ薄膜層16が介装されていることを特徴とする請求項6記載の建物被覆用防蟻シート。
【請求項8】
防水性を有し、かつ、微多孔11a・11a…により透湿性を備えた合成樹脂フィルムから成る透湿フィルム層11と;この透湿フィルム層11の一方側の面上に積層され、防蟻剤を含有し、かつ、通気孔12a・12a…が穿設された合成樹脂フィルムから成る防蟻フィルム層12と;この防蟻フィルム層12上に積層され、少なくとも前記微多孔11a・11a…を開放せしめる箇所に小穿孔13a・13aが設けられたラミネートフィルム或いはコーティング被膜から成る表面保護層13と;前記透湿フィルム層11の他方側の面上に積層された補強不織布層14とを含んで構成され、
前記表面保護層13に設けられた小穿孔13a・13aの数及び大きさにより、防蟻フィルム層12中から外部への防蟻剤の気化・放出量が調節されることを特徴とする建物被覆用防蟻シート。
【請求項9】
防水性を有し、かつ、微多孔11a・11a…を備えた合成樹脂フィルムから成る透湿フィルム層11と;この透湿フィルム層11の一方側の面上に積層され、内部に防蟻剤を含浸した防蟻不織布層15と;この防蟻不織布層15上に積層された複数の小穿孔13a・13aが設けられたラミネートフィルム或いはコーティング被膜から成る表面保護層13と;前記透湿フィルム層11の他方側の面上に積層された補強不織布層14とを含んで構成され、
前記表面保護層13に設けられた小穿孔13a・13aの数及び大きさにより、防蟻不織布層15中から外部への防蟻剤の気化・放出量を調節可能としたことを特徴とする建物被覆用防蟻シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−117218(P2011−117218A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276541(P2009−276541)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【出願人】(509334723)
【Fターム(参考)】