説明

建築物区画内人数計測システム

【課題】 建築物の各区画に存在する実際の人数を随時計測することができ、かつ誤差が生じにくい計測システムを提供する。
【解決手段】 建築物の区画の出入り口床面に設置され、床面上を通過する歩行者の通過方向と人数とを検知可能に複数の感圧素子が面状に配置された感圧センサーと、区画内における人間の存在非存在を検知可能に設置された赤外線センサーと、前記感圧センサーと前記赤外線センサーとからの情報を用いて、前記区画内の人数を演算する制御手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の運用時における省エネルギー化または二酸化炭素排出量の極小化(以下、特に分けて記載しない限り、単に省エネルギー化ということがある)を図るために、建築物の各区画内に存在している人数を、随時、精度良く計測することができるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
住宅、工場、オフィスビル、商業ビル、ホテル、病院、劇場、映画館等といった建築物の運用時における省エネルギー化のためには、対象となる建築物に設けられた窓やドアの開閉状況、各部屋の利用状況、建築物内の各区画内の人数、空調機、照明設備、換気装置やボイラー等の稼働状況等を何らかの方法で管理する必要がある。
【0003】
このうち、建築物の各部屋のごとき区画内の人数は、設置された機械類を除けば、人体が建築物内の主要な発熱源の一つであると共に、空調や照明の必要性にも大きな影響を与えるため、そのリアルタイムな把握が重要な要素である。しかし、人間は自らの自由意志により随時移動するため、各区画内はもとより、建築物内に存在している合計人数でさえ精度良く把握することはなかなか困難である。
【0004】
従来、各区画内の人数を決定するための様々な発明が開示されており、室内に設けた赤外線センサーの計測値を用いて在室人数を演算しようとするもの(例えば、特許文献1参照)、建築物のカレンダー情報やイベント情報等から在室人数を予測しようとするもの(例えば、特許文献2参照)、ビル設計時に想定された在室人数をそのまま用いるとするもの(例えば、特許文献3参照)、電波を発するカード状の発信手段を各個人に携行させることにより在室人数を特定するというもの(例えば、特許文献4参照)、あらかじめ用意した曜日や季節による熱負荷の変動パターン予測と、熱負荷の実績値とから、実際の在室人数を演算するというもの(例えば、特許文献5参照)、エレベーター荷重を計測して、その増減から各階で乗り降りした人数を演算しようとするもの(例えば、特許文献6参照)、天井等の部屋全体を撮影できる箇所にカメラを取り付けて、カメラの撮像を輪郭抽出等の画像解析を行い、人物を抽出して在室人数を計数しようとするもの(例えば、特許文献7参照)、在室人数は管理者によって随時入力されるとするもの(例えば、特許文献8参照)等の発明が開示されている。
【0005】
しかし、赤外線センサーによる人数計測では計測誤差が大きく、省エネルギー化を精度よく行うことは困難である。特に在室人数が多い場合には誤差が大きくなる。また、イベント情報等から在室人数を予測したり、ビル設計時の想定在室人数を用いたりするのでは、実際の在室人数がわからないうえに、その日の天候変動や交通渋滞等が生じたような場合に生じる人数変動にまったく対応できない。また、各個人に電波を発するカード状の発信手段を携行させる方法は、事務所ビルのようなクローズドな環境を作れる建築物の事務所スペース等では有効であるが、同じ事務所ビルでも一般人が特に制限無く利用できる商店スペース等や、デパートやスーパーマーケットのごときオープンスペースを有する建築物で利用することはほとんど不可能である。また、熱負荷の変動パターン予測と熱負荷の実績値とから在室人数を演算するのは、その日の天候等による変動のために演算結果が異なってしまうし、人体の発熱量の個人差や機械類の動作状況による変動も誤差の原因となってしまい、精度良く在室人数を演算するのは困難である。
【0006】
また、エレベーター荷重の計測による方法は、各階に複数の部屋が有る場合に部屋ごとの人数を確定することはできないし、書類等を入れた段ボールや機械類等の重量物をエレベータで運搬することでも誤差を生じ、さらに性や年齢の違い等による体重の個人差に基因した誤差も生じてしまう。また、カメラの撮像から輪郭抽出等の画像解析を行い、人物を抽出して在室人数を計数する方法は、限られたスペース内で少ない人数を計測するには有効であるが、広いスペースで多くの人間が行き来するような場合には精度よい計測が困難である上に、カメラ類を初めとする設備の設置と維持に多大な費用が必要となる。また、管理者が在室人数を入力する方法は、手間を要する上に人的ミスが生じ得るし、在室人数の変動に対するリアルタイムな対応が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−331201号公報
【特許文献2】特開平8−21650号公報
【特許文献3】特開平8−145436号公報
【特許文献4】特開平9−48565号公報
【特許文献5】特開平9−60945号公報
【特許文献6】特開平9−269262号公報
【特許文献7】特開2007−133468号公報
【特許文献8】特開2009−92267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、建築物の各区画に存在する実際の人数を随時計測することができ、かつ誤差が生じにくいシステムを提供することを課題とする。また、カメラ類のような高価な設備を必要とせず、比較的安価に構築できるシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、建築物の区画の出入り口床面に設置され、前記床面上を通過する歩行者の歩行方向と人数とを検知可能に複数の感圧素子が配置された面状の感圧センサーと、前記区画内における人間の存在と非存在を検知可能に設置された人感センサーと、前記感圧センサーと前記人感センサーとからの情報を用いて、前記区画内の人数を演算する制御手段とを備えたことを特徴とする計測システムである。
【0010】
ここで、前記人感センサーからの情報で、前記制御手段が区画内人数のゼロ点調整を行うことは好ましい。また、前記複数の感圧素子は、前記通過方向に隣接する二個以上が、靴片足分で共に踏まれる密度で配置されていることは好ましい。また、前記制御手段は、靴片足分で共に踏まれた感圧素子の信号送出時間を比較して、歩行者の歩行方向を決定することは好ましい。また、前記制御手段は、時間が重なって圧縮信号を送出した複数の感圧素子のうち、感圧センサー内位置が互いに近接しているものは同じ靴片足分により共に踏まれたものとして、通過人数をカウントすることは好ましい。
【0011】
また、前記制御手段は、時間が重なって圧縮信号を送出した複数の感圧素子のうち、前記の靴片足分により共に踏まれたものとされた第1の感圧素子群と歩行方向が同じで、前記第1の感圧素子群から感圧センサーの幅方向に基準一歩幅内で、かつ感圧センサーの通過方向に基準一歩長さ内である第2の感圧素子群が有る場合には、第2の感圧素子群は、第1の感圧素子群と同じ歩行者により踏まれたものとして、通過人数をカウントすることは好ましい。また、前記の人感センサーが赤外線センサーであることは好ましい。また、建築物の各階において、階に出入りした差し引き人数と、当該階の全区画に存在する人数の合計とを比較し、両者が合致しない場合に警告メッセージを送出することは好ましい。また、建築物に出入りした差し引き人数と、当該建築物の全区画に存在する人数の合計とを比較し、両者が合致しない場合に警告メッセージを送出することは好ましい。
【発明の効果】
【0012】
建築物内の各区画内の人数をリアルタイムに、かつ正確に計測することができ、人数に誤差が生じにくい。また、カメラ類のような高価な設備を必要としないから、比較的低コストでシステムを構築できる。また、カメラ等が有効に機能し得ないような大空間の区画に対しても有効である。計測システムから得られたデータは、建築物のリアルタイムの省エネルギー制御等に利用できるから、省エネルギー化や二酸化炭素排出量の極小化に利用でき、精度高い制御を実現できる。また、人間の不在時に区画内で無駄に動作している機器類を発見することも可能であるし、区画の利用効率等を求めることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】計測システムを配置した建築物の2階の配置例を示した平面図である。
【図2】(a)は感圧センサーの上面図である。また、(b)は感圧センサーの鉛直方向断面の一部を水平方向から概念的にみた断面図である。
【図3】計測システムの全体構成を示したブロック図である。
【図4】一つの区画に対する計測処理フローを示したフローチャートである。
【図5】赤外線センサーを用いたS10ステップの処理フローを示したフローチャートである。
【図6】(a)は感圧センサーが靴のカカトで踏まれた状態の鉛直断面を、水平方向から見た概念図である。(b)は、歩行者が床面に配置された感圧センサー上を通過している状態を概念的に示した上面図である。
【図7】(a)は靴片足分の基準靴長さを示した概念図であり、(b)は靴底で感圧センサー内の感圧素子の一部が踏まれた状態を概念的に示した平面図である。
【図8】(a)は靴両足分の基準一歩長さと基準一歩幅とを示した概念図である。(b)は感圧センサーが靴片足分を検知した場合に、もう片足分を探索する範囲を示した概念図である。
【図9】建築物全体に対する計測システムの、処理フローを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面も参照しながら、発明の実施の形態について説明する。まず、建築物とは、その内部で人間が、日中や夜間にエネルギーを消費して様々な活動を行っている一の建物または二以上の建物の集合体を言う。建築物の用途は、事務所、住宅、工場、商業ビル、ホテル、病院、劇場、映画館等のいずれでも良いし、複数の用途に使用される建物であっても良い。また、区画とは、事務室、作業室、病室、食事室、休憩室、トイレ、ホール、ロビー、階段室、機械室等の、建築物内で区分けされて他の区画から分離された独立空間を占めており、かつ人間がなんらかの目的をもって日常的にその内部に入って一定時間滞在する、建築物の部分を言う。
【0015】
図1は、計測システムを配置した建築物例の、2階の配置例を示した平面図である。この階は、大小6つの居室2、建築物平面のほぼ中央に位置する階段室4、エレベーターホール5、トイレ及び給湯室、外部壁面に設けられた非常階段室6の各区画に分かれている。図1の例では、各部屋をつなぐ廊下3や各階を移動するエレベーターにはセンサー類を設けておらず、人数を計測すべき区画に含めていないが、含めるようにしても良い。
【0016】
感圧センサー10は、人間の動線に沿って、各居室の出入り口、各階段室の出入り口、エレベーターホールへの出入り口等の、人間の移動を捕捉できる場所のそれぞれの床面に設けられている。また、感圧センサー10は、各区画に出入りする歩行者が必ず踏むように、その大きさと位置があらかじめ定められている。感圧センサー10をこのように配置することにより、各階や各居室への出入り人数を計測することが可能になる。つまり、感圧センサー10により、各区画出入り口の人間の移動方向及び移動頻度を把握することができるようになるから、結果的に各区画内に存在している差し引き人数を演算することが可能になる。
【0017】
人感センサーは、区画内の人数を精度よく計測するには必ずしも適さないが、人間の存在と非存在は精度よく区別できる機能を有するセンサーであり、例えば、赤外線センサー、二酸化炭素濃度センサー、区画内照明スイッチ等を上げることができる。赤外線センサーは、区画内の人間の存在・非存在を精度良く検知することができるが、人数の計測には人数が多いほど計測誤差が大きくなる。また、二酸化炭素濃度センサーも同様の特性を有していて本システムに用いることができるが、区画境界のドアや窓の開閉状況、換気扇や空調機の動作状況によっても測定値が左右される特性があるので、他の人感センサーと併用することが望ましい。また、区画内照明スイッチのON−OFFセンサーは、区画に入りうる外光が少ないか若しくは無いような区画であれば、それのみを人感センサーとして用いても良い。しかし、窓が多くて外光が多く入る可能性がある区画では、他の人感センサーと併用した方が良い。図1は、人感センサーとして赤外線センサーを用いた例であり、赤外線センサー30は、居室、階段室、ホールの人間の存在を検知できるように、各区画の天井中央付近(階段室は踊り場天井の中央付近)に、各一台が取り付けられている。ここでは赤外線センサーを各区画内に設けて人数がゼロである場合だけを正確に捉える目的に使用する、すなわち、区画内人数のゼロ点調整に用いることで、感圧センサーだけでは生じる可能性がある人数の計測誤差を、赤外線センサーにより随時修正するようにしている。
【0018】
このように、区画の出入り口ごとに特定構成の感圧センサーを設けて移動する人数と移動方向とを計測し、合わせて区画ごとに人間の存在・非存在を確定できる台数の人感センサーを設けて、区画内人数をゼロ点調整しながら計測することにより、誤差の発生を極力防止して、リアルタイムで精度高く区画内人数を計測することが可能になる。
【0019】
図2(a)は、感圧センサー10を上から見た上面図である。感圧センサー10は、その大部分を占める感圧シート11と、感圧シート11の図面右隅に設けられた感圧測定部12とからなる。感圧シート11の内部に図示された多数の黒い点は、それぞれが独立した感圧素子であり、素子に人間の体重がかかることによって変型し、圧縮信号を感圧測定部12に送出する。感圧シート11の大きさ(縦横長さ)は、その上を歩行する人間の靴の長さや一歩で進む長さに合わせて、感圧シート11が配置された床面上を通過する歩行者が、感圧シート11を踏まずに跨いでしまうことが無いように、少なくとも片足分では感圧シート11を踏むようにサイズ調整されている。つまり、感圧シート11のサイズは、幅方向には出入り口の横幅に近い幅であり、歩行者の通過方向には、統計的に歩行者が靴片足分で感圧シート11を少なくとも一回踏むであろう長さである。
【0020】
また、感圧素子は、人間が靴で踏むことで圧縮信号を送出しうるものであればよく特に制限されないが、ここでは、ゴムに金属微粒子等を混合して成型した物をシート状に配置して用いている。この物は、通常は不導体であるが、人間が踏むことで変型し、金属微粒子どうしが接触して回路を形成して導体に変化する。この感圧素子は、導通特性を維持したまま容易にシート状に加工できる上、設置費用も低く抑えることができる利点がある。
【0021】
感圧測定部12は、各感圧素子からの圧縮信号を受信し、圧縮信号を発した感圧素子のシート内位置と感圧素子が圧縮信号を発した時間とのデータに変換し、さらに、この変換されたデータに感圧センサー10を特定するコードを付して、後述の感圧測定部通信手段15に送信する。このようにすることで、建築物内に多数設置されている感圧センサーからのデータが問題なく処理できる。
【0022】
図2(b)は、感圧センサー10の鉛直方向断面の一部を水平方向からみた概念的断面図であり、感圧シート11の断面には、感圧素子13が一定間隔を空けて規則的に配置されていることがわかる。また、感圧素子13の各々から感圧測定部12に圧縮信号を送信できる配線が設けられており、いずれかの感圧素子13が靴に踏まれると、圧縮信号がこの配線を通じて感圧測定部12に送出される。なお、この図では、感圧測定部12は、感圧素子13との配線の存在をわかりやすくするために、感圧シート11から分離して示した。
【0023】
図3は、計測システム50の全体構成を示したブロック図である。計測システム50は、各区画の出入り口の床面に設置された複数の感圧センサー10、各区画内に設置された人感センサー(赤外線センサー)30、これらセンサーからの信号を受信する通信手段15、35、計測された区画内人数を、図示されない設備制御装置に随時送信する通信手段40を備え、さらに、各通信手段と、CPUとコンピュータプログラムとにより制御を行う制御手段100と、ハードディスク等に各種コンピュータプログラムとデータ類を格納した記憶手段200とが共通バスで接続されたコンピュータを備えてなる。通信手段15,35と、感圧センサー10または人感センサー30との間の通信接続は、有線でも無線でもよく、有線LAN、無線LAN、携帯電話やPHS等を利用したデータ通信接続であっても良い。特に感圧センサーは、通常では有線通信のための接続口が近くに設けられないことが多い場所の床面に設置するため、無線通信で接続することが望ましい。
【0024】
まず、記憶手段100について説明する。記憶手段100には、コンピュータを動作させる基本プログラムに加え、建築物内区画テーブル210、感圧センサー特定テーブル220、赤外線センサー特定テーブル230、感圧情報テーブル240、判定基準値テーブル250、区画内人数テーブル260が格納されている。
【0025】
建築物内区画テーブル210は、建築物の各階に設けられた区画を特定する情報を格納したテーブルであり、区画ごとに付されたコードと、区画の名称及び区画が存在する階数とを結びつけて格納している。このテーブルは、計測システムが設置される際に用意され、その後の改築や模様替えに伴って更新される。
【0026】
感圧センサー特定テーブル220は、各感圧センサーがどの区画のどの出入り口に設置されているかを特定するためのテーブルであり、感圧センサーごとに付されたコードと、各感圧センサーが設置された区画コードとを結びつけて格納している。このテーブルは、計測システム設置の際に用意され、その後は、新たな感圧センサーの設置や、いずれかの区画の用途変更やドア移動等によって人間の動線が変化することにより更新される。
【0027】
赤外線センサー特定テーブル230は、赤外線センサーがどの区画に設置されているかを特定するためのテーブルであり、赤外線センサーごとに付されたコードと、各赤外線センサーが設置された区画コードとを結びつけて格納している。このテーブルは、計測システム設置の際に用意され、その後は、区画を分けるパーティションの増設や移動等のように、設置済み感圧センサーでは人間を検知できない空間が発生した場合における、感圧センサーの移動や増設に伴い更新される。
【0028】
感圧情報テーブル240は、感圧センサー10の感圧測定部12から感圧測定部通信手段15を介して受信したデータを格納するテーブルであり、圧縮信号を発した感圧センサー10のコード、圧縮信号を送出した感圧素子の感圧シート内の位置情報、感圧素子が圧縮信号を送出した時刻のデータを累積的に格納している。このテーブルは、計測システムのスタート時には空のテーブルであり、その後の感圧センサーからの圧縮信号の送出に伴い、累積的にデータを格納する。このテーブルのデータは、あらかじめ定めた一定日数の経過後に順次上書き消去される。
【0029】
判定基準値テーブル250は、感圧素子が歩行者に踏まれて送出される複数の圧縮信号から、歩行者の移動方向や移動人数等の各種の判定を行うために必要な、あらかじめ統計的に定められた各種の基準数値が格納されたテーブルであり、基準靴長さ、基準靴幅、基準一歩長さ、基準一歩幅等が格納されている。それぞれの基準値の具体的な内容は後述する。このようなテーブルを備えることにより、感圧センサー上を通過する人間の移動方向やそれぞれの方向に移動する人数を、複数の感圧素子からの圧縮信号に基づいて判定することが可能になる。
【0030】
区画内人数テーブル260は、建築物において、それぞれの内部に存在している人数を計測している区画の全部について、区画への出入り人数、出入り時刻及び区画内部に存在している差し引き人数のデータを格納しているテーブルである。このテーブルは、感圧センサーや赤外線センサーからの信号により随時更新される。このテーブルを備えることにより、各区画内に滞留している人数が精度良くリアルタイムに把握できるから、空調機や窓開閉装置等の動作を精密に制御して、最適な省エネルギー化や二酸化炭素排出量低減化を実現することが可能になる。
【0031】
次に、制御手段100について説明する。制御手段100は、感圧センサーと赤外線センサーからの信号を処理して、各区画内に存在する人数を演算し、それらのデータを建築物のエネルギー管理を行う設備制御装置(図示していない)に、設備制御装置通信手段40を介して送信する。制御手段100には、感圧情報処理部110、赤外情報処理部120、外部通信部130、その他、これらを制御するための図示されない基本制御部が備えられている。
【0032】
感圧情報処理部110は、建築物内に多数設置されている感圧センサー10からのデータを随時受け取って、各感圧センサー上を通過した歩行者の移動方向と移動人数とを演算し、各区画内に存在する人数をリアルタイムに演算する。赤外情報処理部120は、建築物内に多数設置されている赤外線センサー30からのデータを受けとって、担当区画内の人間の存在・非存在を判定し、その結果に基づいて、随時、ゼロ点調整を行う。外部通信部130は、各区画の空調機等を制御する設備制御装置に、区画内人数の計測結果を随時送信する。
【0033】
制御手段100の処理フローの例として、一つの区画に対する処理フロー例を図4に示す。制御手段100は、建築物内の多数の区画に対して図4の処理フローを並列的に繰り返す機能を有するので、以下では図4を用いて制御手段100の処理フローを説明する。
【0034】
図4の処理フローがスタートすると、赤外線センサーによる検知処理が、赤外情報処理部120により実行される(S10ステップ)。このS10ステップを図5を用いて詳しく説明する。赤外線センサーにより担当空間内の人間の存在を検知する(S11ステップ)。得られた検知結果により、担当区域内に人間が居たか否かを判断する(S12ステップ)。人間が居た場合には、フローは右に移動して処理を終了する。
【0035】
一方、人間が居ない場合には、フローはS12ステップから下に移動して、記憶手段200の区画内人数テーブル260の担当区画内に存在する人数のデータを読み出す(S13ステップ)。そして、読み出した人数のデータがゼロであるか否かを判定する(S14ステップ)。このようにするのは、感圧センサーの検知結果に誤差が生じている場合に、その誤差を赤外線センサーの検知結果でゼロ点調整して誤差を無くすためである。S14ステップでゼロである場合には、赤外線センサーと感圧センサーのデータに不一致がないので、フローは右に分岐してフローを終了する。
【0036】
一方、テーブルから読み出した人数のデータがゼロでなかった場合には、赤外線センサーと感圧センサーのデータに不一致が生じているので、フローはS14ステップから下に分岐して、不一致が生じたこと及び不一致のずれ人数と不一致が発生した区画を特定するデータとを含む警告メッセージを送出する(S15ステップ)。不一致が生じる区画のセンサーや設置状況に何らかの問題がある可能性が有るからである。続いて、区画内人数テーブル260の該当データをゼロに修正して(S16ステップ)、図5のフローを終了する。区画内人数テーブル260のデータを修正するのは、ゼロ点調整に限れば感圧センサーより赤外線センサーの方が誤差が生じにくいと考えられるし、センサーの経年劣化も赤外線センサーの方が生じにくいと考えられるからである。
【0037】
図5のフローが終了すると、続いて図4のS20ステップに移行し、S20ステップからS90ステップまでを感圧情報処理部110が実行する。S20ステップでは、感圧センサー10からの圧縮信号の受信待ち状態となり、圧縮信号を受信するまで、赤外線センサーによる検知処理と圧縮信号の受信待ち状態とを繰り返す。このようにすることで、夜間等の無人の状態でのセキュリティを担保することが可能になる。S20ステップで圧縮信号を受信すると、フローは下に移行して、S30ステップ〜S80ステップで圧縮信号から歩行者の移動方向と移動人数とを演算する。
【0038】
まず、S30ステップでは、感圧シートを踏んだ靴片足分に相当する感圧素子を特定してグループ化する処理を行う。図6〜7を用いて、この処理を説明する。図6(a)は、感圧シート11が靴20に踏まれた状態の鉛直断面を、概念的に示した断面図である。図面に向かって右側に移動しようとする歩行者の靴20のカカト21が、感圧シート11の中の感圧素子の複数個を圧縮している状態が示されている。このように歩行者の進行に伴って、次々に異なる感圧素子がわずかに時間差をつけて弾性的に圧縮されるから、感圧素子ごとに圧縮信号の送出開始時刻が少しずつ異なることになる。
【0039】
図6(b)は、複数の歩行者(靴底22で示す)が、区画出入り口の床面に配置された感圧シート11上を、異なる方向に通過している状態を示した概念図である。左側の歩行者は図面に向かって上側に、右側の歩行者は図面に向かって下側に移動中の場合が図示されている。なお、区画の出入り口は、図面に向かって左右方向(幅方向)に出入り口の横幅があり、上下方向(通過方向)に歩行者が移動することで区画に出入りする。このように、区画出入り口の横幅が広いと、同時に複数の歩行者が出入り口を通過することがあり得るので、これらを区別してカウントしなければならない。また、同一人が通過時に感圧シート11を複数回、すなわち右足と左足とで交互に踏む場合もあるし、片足で一回だけ感圧シートを踏んで通過してしまう場合もあり、これらも区別して人数をカウントする必要がある。
【0040】
上記を前提として、図7は、感圧シートを踏む靴片足分に関する図である。靴片足分で感圧シートが踏まれると、靴片足分の範囲内で近接する複数の感圧素子が共に踏まれ、圧縮信号が送出されることになる。このとき、これらが靴片足分のデータであるか否かを判定する必要がある。図7(a)は、歩行者の片足分の靴底22を概念的に示した図であり、この片足分で感圧シート11を踏んだ場合を想定する。靴には、靴底が比較的平らなスニーカーや、靴底に土踏まず部分があるビジネスシューズ、設置面積がほぼつま先部分だけに限られるハイヒール等があるが、いずれの片足分で踏まれても、片足分と認識することが必要である。そのため、統計的にほぼ全部(例えば、3σで99.7%)の靴の最大長さと定義される基準靴長さと、同様にほぼ全部の靴の最大幅と定義される基準靴幅とをあらかじめ用意して判定基準値テーブル250に格納している。そして、圧縮信号を時間的に重なって送出した感圧素子のうち、互いに基準靴幅と基準靴長さの範囲内に感圧シート中で位置している感圧素子は、靴片足分の範囲内で近接していて共に踏まれたものと判定して、それらの感圧素子をグループ化する。これにより、複数人が同時に感圧シートを踏んだり、または同一人が両足で感圧シートを踏んだりした場合でも、靴片足分で共に踏まれた感圧素子を高い精度で特定することが可能になる。
【0041】
なお、図7(b)は、靴片足分で感圧シートが踏まれた場合に、複数の感圧素子が共に踏まれている状態を示した概念図である。靴の移動方向を判定するためには、靴片足分のうちで、歩行方向に並んだ二個以上の感圧素子が共に踏まれる必要があるため、感圧シートの感圧素子の配置密度は、靴の中で接地面積が最も小さいと考えられるハイヒールで踏まれた場合にも、歩行方向に対して二個以上の感圧素子が共に踏まれるように定めている。
【0042】
次のS40ステップでは、グループ化された感圧素子の圧縮信号送出開始時間を比較して、靴の移動方向(歩行方向)を判定する。判定にあたっては、同じグループのうちで感圧シートの通過方向に並んでおり、かつもっとも位置が離れた感圧素子を二つ選択し、それらの圧縮信号送出開始時間を比較する。送出開始時間がより早い感圧素子が位置する方から、送出開始時間がより遅い感圧素子が位置する方へ靴が移動していると判定する。これで片足分のグループごとに歩行方向が判定される。なお、この判定方法では、靴が感圧シートの通過方向の1列めまたは最後列めの感圧素子だけを踏んだ場合には、歩行方向を判定できないので、そのような圧縮信号は無視して処理を行うことにしている。
【0043】
このように靴片足分で歩行方向を判定しているので、感圧シートの大きさは、歩行者が跨ぐことなく、少なくとも片足で必ず踏む程度の大きさであればよい。また、信号送出開始時間を比較しているから、仮に歩行者が感圧シート上で一時的に立ち止まったりしたような場合でも、歩行方向を判定できる。また、片足だけで歩行方向を判定するので、複数の歩行者が同時に感圧シート上を通過したりした場合でも、それぞれの移動方向を特定することができる。カメラ等の高価な設備が必要ないので、比較的低コストでシステムを構築することができる。
【0044】
続くS50ステップでは、同一歩行者が感圧シート11を片足で踏むだけで通過する場合も有れば、両足で踏んで通過する場合もあることから、これらを区別して、圧縮信号から通過人数を精度良く判定するための処理を行う。具体的には、同一人が左足と右足で順次感圧シートを踏んだ場合には、それぞれの片足分のグループをまとめて一つのグループとする。これにより、左足と右足とで2人というような人数のダブルカウントを防止する。これを図8を用いて説明する。図8(a)は、人間が一歩歩いた場合における、歩行方向の基準一歩長さと幅方向の基準一歩幅とを示した図であり、図に向かって右下側の靴底が右足分、左上側の靴底が左足分である。基準一歩長さとは、一歩歩いた場合に統計的にほぼ全ての人が含まれる歩行方向の最大長さであって、軸となった足(図8(a)では右足)の歩行方向に最後端の感圧素子から、前へ動いた足(図8(a)では左足)の歩行方向に最先端の感圧素子までの、歩行方向長さを言う。また、基準一歩幅とは、一歩歩いた場合に統計的にほぼ全ての人が含まれる幅方向の最大長さであって、軸となった足(図8(a)では右足)の幅方向に最右端の感圧素子から、前へ動いた足(図8(a)では左足)の歩行方向に最左端の感圧素子までの、幅方向長さを言う。
【0045】
図8(b)は、上記の基準一歩長さと基準一歩幅とを用いて、同一人が歩行方向に片足で感圧シートを踏んだ場合に、もう一方の足でも感圧シートを踏んでいるかどうかを判定する範囲を示した図である。斜線を付した部分は、片足分のグループの感圧素子から圧縮信号が送出されている場合に、同一人のもう片足分のグループを探索する範囲を図示したものである。ここで、斜線が付された探索範囲が、片足分の靴底22の左右の両側に同等に設けられているのは、探索の基点となる靴底22が、左足で踏まれたものか右足で踏まれたものかの区別が難しいためである。
【0046】
通常の歩行状態で右足と左足で感圧シートを順次踏む場合には、片方の足が感圧シートを踏んで圧縮信号が送出されている間に、もう片方の足が感圧シートを踏んで圧縮信号が送出開始される。つまり、圧縮信号が送出される時間は、両方のグループで重なる時間帯があることになる。そこで、S50ステップでは、時間が重なって圧縮信号を送出している複数の感圧素子のグループのうち、圧縮信号の送出開始時間がより早いあるグループA(第1の感圧素子群)に着目し(図8(b)の靴底22で示す)、そのグループAと歩行方向が同じで、圧縮信号の送出開始時間がより遅く、かつそのグループAに対して、図8(b)の斜線範囲内に全部の感圧素子が含まれる他のグループB(第2の感圧素子群)が有るか無いかを判断する。同様の判断を圧縮信号送出時間が重なる全部のグループに対して行う。
【0047】
S50ステップでそのようなグループBが無いと判定された場合には、歩行者はいずれも片足だけで感圧シートを踏んでいるので、フローは右に分岐してS70ステップに移行する。一方、S50ステップでそのようなグループBが有ると判定された場合には、そのようなグループBは同一人が両足で感圧シートを順次踏んでいる場合と考えられるので、対応するグループAと再グループ化することで一つのグループとする(S60ステップ)。これにより、通過人数のダブルカウントを防止することができる。
【0048】
続くS70ステップでは、歩行方向ごとに独立したグループの数をカウントし、これを歩行方向ごとの歩行者数とする。そして、S80ステップでは、区画内人数テーブル260に、上記でカウントした歩行方向ごとの歩行者数と通過時間とを格納する。通過時間としては、圧縮信号が送出されている時間のどの時間を選んでも良いが、この例では、送出開始時間を選んでいる。さらに、この出入り人数を用いて、担当区画の差し引き滞在人数をカウントして区画内人数テーブル260に格納する。これで感圧情報処理部110による処理が終了する。
【0049】
そして、S90ステップでは、外部通信部130が、あらかじめ定めた一定時間ごとか、又は区画内人数テーブル260が更新されるたびごとに、建築物内部の空調機器や照明機器などのエネルギー消費を制御する設備制御装置に対し、区画内人数テーブル260のデータを読み出して通信手段40を介して送信し、これで図4のフローが終了する。
【0050】
なお、S90ステップにより計測システムからのデータを受信した設備制御装置は、そのデータに基づいて、各区画の空調機等の各種設備類を制御する。これにより、省エネルギーの観点または二酸化炭素排出量の低減化の観点から最適な、精度の高い制御を行うことが可能になる。具体的には、窓の開閉制御による自然換気制御や換気扇の動作制御による外気量制御等の人数負荷変動に合わせた換気量制御、各区画の不在時消灯や減灯という人数負荷変動に合わせた照明制御、空調設備の人数負荷変動に合わせたON−OFF制御やインバーター制御の空調制御、その他関連機器の人員負荷変動に合わせたON−OFF制御もしくは最小動作制御を行うことができる。また、後述のように、建築物内にいる人数がリアルタイムに把握できるから、建築物のセキュリティー確保のために用いることもできる。
【0051】
図9は、建築物全体に対する計測システムの処理フローを示したフローチャートである。処理がスタートすると、各区画に対して図4、図5のフローチャートの処理を並列的に行い、各区画内に存在する人数を演算する(S100ステップ)。次いで、各階において、階への出入り人数と階に含まれる区画に存在する人数の合計とを比較し、両者が整合するかどうかを判断する(S110ステップ)。いずれかの階で人数の不整合があった場合は、フローは右に分岐してS130ステップを実行する。一方、いずれの階でも人数の不整合が無かった場合は、フローはS110ステップから下に分岐してS120ステップを実行し、各階に存在する人数の合計と、建築物に出入りした差し引き人数とを比較し、両者が整合するか否かを判断する。整合している場合は、特に問題がないので、フローはS100ステップに戻る。一方、S120ステップで両者が整合しなかった場合は、フローは右に分岐してS130ステップを実行する。S130ステップでは、人数のずれが生じた階と、ズレ人数とを特定した警告メッセージを送信して、S100ステップに戻り、以下、処理フローがブレークされるまでフローを繰り返す。
【0052】
これにより、リアルタイムに建築物内及び各階に出入りする人数を確認できるから、いずれかのセンサーで問題が生じた場合でも、問題の発生を迅速に把握できる。また、いずれかの人数に不整合が生じた場合に、予期せぬ侵入者によりセキュリティ上の問題が生じている可能性も把握できるから、速やかな対処が可能になる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について具体的に説明してきたが、本発明は上記の実施形態の具体的態様に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、図1に示した例では、事務所ビルの例なので、エレベーター内部や廊下を歩行中の人数は比較的少なく、エレベーター内部や廊下にはセンサー類を設けていない。そのため、計測時にエレベーターや廊下を歩行していた人数はカウントされず、S110ステップやS120ステップでの不一致の原因となる。しかし、このような場合でも不一致となる人数は比較的小さく、かつ時系列的に散発的に不一致となるだけであるから、特に大きな不都合はない。しかし、この種の不一致が特に問題となる場合は、エレベーター内部や廊下にもセンサー類を設ければ良い。また、デパートやスーパーマーケットのようなオープンスペースが大きな建築物では、オープンスペースの出入り口や通路の途中に感圧センサーを設けて人間の移動を把握できるようにし、かつ赤外線センサーでゼロ点調整をするようにすればよい。また、一つの区画に複数の出入り口がある場合には、各出入り口における出入り人数を合計してその区画内の人数を演算すればよい。劇場や映画館のホール内にいる人数も同様にして計測することができる。また、上記では、感圧センサーの通過方向に対して隣接する二個以上の感圧素子が、通過方向に直線的に配置された例で説明したが、これらは通過方向に直線的に配置される必要はなく、同じ靴で共に踏まれ、かつ通過方向に異なる位置となるように配置されていればよい。
【0054】
また、上記では、靴片足分で歩行者の歩行方向を検知するようにしているが、一度に一人ずつしか通過できない居室の通常の出入り口では、出入り口の前後に一枚ずつの感圧シートを備え、いずれかの感圧シートが踏まれてから基準歩行時間内に、もう一枚の感圧シートが踏まれた場合に、歩行者が一名、最初に踏まれた感圧シート部分からもう一枚の感圧シート部分に移動したと判定して、出入りをカウントするようにしても良い。
【0055】
また、上記では、感圧素子として、ゴムに金属微粒子等を分散させた成形品を用いるようにしたが、人間が踏むことで圧縮信号を送出できてコスト的にも許容できるものであればよく、特に制限されない。例えば、ゴムシート上に多数の電極を配置し、これら2枚をスペーサーを介して電極が対抗するように重ね合わせ、圧縮により上下の電極が導通するもの等を使用することもできる。つまり、適切な感度を有する感圧素子であればよく、圧電型、振動型、ブルドン管型、ベローズ型、半導体ダイヤフラム型、静電容量型、弾性体ダイヤフラム型素子のいずれでもよい。
【0056】
また、上記では、圧縮信号の送出開始時間を比較して、歩行者の通過方向を判定している例で説明したが、送出終了時間を比較するようにしても良い。このようにすると、歩行者が感圧シートをいったん踏んでから、すぐに引き返したような場合にも移動方向を正確に判定することが可能になる。また、送出開始時間と送出終了時間の両方を用いて、より精度の高い判定を行うようにしても良い。
【0057】
また、上記では、靴が感圧シートの通過方向の1列めまたは最後列めの感圧素子だけを踏んだ場合には、そのような圧縮信号は無視して処理を行う例で説明したが、時間が重なった他の圧縮信号が無い場合には、歩行者が感圧シートを飛び越えたことが想定されるので、その旨及び感圧シートの位置を特定した警告メッセージを管理者に送信するようにしても良い。
【0058】
また、上記の計測システムは、システムに格納されたソフトウェアとしてのコンピュータプログラムとハードウェアとが協動して動作する例で説明したが、ソフトウェアに代えて、ソフトウェア部分の各動作を行う専門のハードウェアを用いて構成してもよい。システムには、上記以外に周辺機器としてキーボード、マウスなどの入力装置、ディスプレイ、プリンタ等が接続されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
計測システムにより建築物の区画内人数をリアルタイムに把握することで、建築物及びそれに備えられた設備類について、省エネルギー化や二酸化炭素排出量の低減化を、人数負荷の変動に合わせて精度よく実行することが可能になる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の区画の出入り口床面に設置され、前記床面上を通過する歩行者の歩行方向と人数とを検知可能に複数の感圧素子が配置された面状の感圧センサーと、前記区画内における人間の存在と非存在を検知可能に設置された人感センサーと、前記感圧センサーと前記人感センサーとからの情報を用いて、前記区画内の人数を演算する制御手段とを備えたことを特徴とする計測システム。
【請求項2】
前記人感センサーからの情報で、前記制御手段が区画内人数のゼロ点調整を行うことを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
【請求項3】
前記複数の感圧素子は、前記通過方向に隣接する二個以上が、靴片足分で共に踏まれる密度で配置されていることを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
【請求項4】
前記制御手段は、靴片足分で共に踏まれた感圧素子の信号送出時間を比較して、歩行者の歩行方向を決定することを特徴とする請求項3に記載の計測システム。
【請求項5】
前記制御手段は、時間が重なって圧縮信号を送出した複数の感圧素子のうち、感圧センサー内位置が互いに近接しているものは同じ靴片足分により共に踏まれたものとして、通過人数をカウントすることを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
【請求項6】
前記制御手段は、時間が重なって圧縮信号を送出した複数の感圧素子のうち、前記の靴片足分により共に踏まれたものとされた第1の感圧素子群と歩行方向が同じで、前記第1の感圧素子群から感圧センサーの幅方向に基準一歩幅内で、かつ感圧センサーの通過方向に基準一歩長さ内である第2の感圧素子群が有る場合には、第2の感圧素子群は、第1の感圧素子群と同じ歩行者により踏まれたものとして、通過人数をカウントすることを特徴とする請求項5に記載の計測システム。
【請求項7】
前記の人感センサーが、赤外線センサーであることを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
【請求項8】
建築物の各階において、階に出入りした差し引き人数と、当該階の全区画に存在する人数の合計とを比較し、両者が合致しない場合に警告メッセージを送出することを特徴とする請求項1に記載の計測システム。
【請求項9】
建築物に出入りした差し引き人数と、当該建築物の全区画に存在する人数の合計とを比較し、両者が合致しない場合に警告メッセージを送出することを特徴とする請求項1に記載の計測システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−79140(P2012−79140A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224585(P2010−224585)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(509227562)