説明

建築物及びその施工方法

【課題】 現場での組立が容易で、使用中に柱による居住空間の狭隘化がなく、運搬コストが安く、使用後の分解が可能で移築再使用が可能な中期建築物として好適な建築物を提供する。
【解決手段】 上下の梁の間に、複数個の強化フレームを横方向に間隔を置いて前記梁に対して分離可能に取付けて、前記上下の梁の間に柱を設けることを不要にした。
基礎と、基礎に立設した柱と、柱の上端部間に架設した第1の梁と、金属製の方形枠体にタスキを固着してなる強化フレームであって、基礎の直線部分の上方に存在する第1の梁に対して少なくとも2個がボルトナットにより固着されたものと、第1の梁と同一構造を有し、強化フレームの上端部にボルトナットにより固着された第2の梁と、第1の梁と第2の梁との間に強化フレームに隣接して取り付けられたサッシ又は壁体もしくはサッシ及び壁体とを有してなり、2階の柱を不要とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しい構造の建築物及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物を、使用期間の長短で区分すると、1年未満の短期建築物と、10年以上の長期建築物に区分することができる。短期建築物は、施工期間の短縮のため、ボックスタイプのフレームを組積し、又は並置して建築していた。また、長期建築物には、木造、軽量鉄骨造、鉄骨造、コンクリート造等がある。
【特許文献1】特になし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
短期建築物は、現場での組立が不要であるが、運搬コストも高くつき、使用中は柱により居住空間が狭められて、有効空間率が小さい。また、使用後の分解も不能であるため、移築再使用に適していない。
長期建築物は、現場での組立が必要であり、使用中は柱により居住空間が狭められて、有効空間率が小さい点は短期建築物と同様であり、使用後の分解は困難又は不可能であって、移築再使用は困難又は不可能である。
【0004】
使用期間が1年以上10年未満の、いわば中期建築物は、従来の建築物の区分には無かった。しかも、現場での組立、使用後の分解が可能な、従って、移築再使用が可能な建築物は知られていない。このような建築物の需要があまり無かったからであると思われる。
【0005】
ところが、特に大都会では、新たに発生した空き地には、立地条件、地積の大小、所有者の資産状況などのために、直ちに長期建築物や永久建築物を建築することができないが、空き地のまま放置するのも不経済であるという状況がある。そこで、好機が到来するまでの間、例えば、1年以上10年未満の間に限り使用できる中期建築物をその土地に建造して、又は建造させて、家賃、地代などあるいは営業利益の獲得を図ることが考えられている。これに伴い、中期建築物に対する需要が急激に増加してきた。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、解決しようとする第1の課題は、現場での組立、使用後の分解が可能で、使用中に柱による居住空間の狭隘化がなく、従って、運搬コストが高くなく、移築再使用が可能な中期建築物として好適な建築物を提供することにある。
第2の課題は、上記建築物の施工を高能率的に行うことができる施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記第1の課題を解決するため、本発明に係る建築物は、上下の梁の間に、複数個の強化フレームを横方向に間隔を置いて前記梁に対して分離可能に取付けて、前記上下の梁の間に柱を設けることを不要にしたことを特徴としている。
そして、前記強化フレームは、方形の金属枠体に金属製タスキを溶接又は固着してなるものであることを特徴としている。
本発明に係る建築物は、また、平面多角形の各辺に沿って設けた基礎と、前記基礎に立設した1階分の高さの柱と、前記柱の上端部間に架設した第1の梁と、方形の金属製枠体に金属製のタスキを対角線状に固着してなる強化フレームであって、前記平面多角形の各辺の上方に存在する前記第1の梁に対して少なくとも2個が、その下端においてボルトナットにより固着されたものと、前記第1の梁と同一構造を有し、前記平面多角形の各辺の上方に存在する強化フレームの上端部にボルトナットにより固着された第2の梁と、前記第1の梁と前記第2の梁との間に、前記強化フレームに隣接して取り付けられたサッシ又は壁体もしくはサッシ及び壁体とを有し、2階の柱を不要とされたことを特徴としている。
【0008】
本発明は、第1の梁の上方に第1の梁と同一構造の複数の梁を等間隔を持って設けるとともに、各梁の間に強化フレームと壁体又はサッシもしくは壁体及びサッシを設けて、2階以上の柱を不要とされた構造とすることができる。
【0009】
本発明の好ましい例では、上記建築物において、いずれの梁も横転H形鋼で作られているとともに、強化フレームの金属製枠体はアングル材を方形に溶接してなり、上下のアングル材の水平辺を前記梁のフランジ部に重ね合わせ、その重ね合わせ部分においてボルトナットにより前記梁に固着されていることを特徴としている。
【0010】
本発明に係る施工方法は、平面多角形の各辺に沿って設けた基礎に柱を立設し、前記柱の上端部間に第1の梁を架設し、前記平面多角形の各辺の上方に存在する第1の梁に、方形の金属枠体に金属製のタスキを対角線状に固着してなる複数個の強化フレームを、その下端において前記第1の梁にボルトナットにより固着し、前記平面多角形の各辺の上方に存在する強化フレームの上端部に前記第1の梁と同一構造を有する第2の梁をボルトナットにより固着し、前記第1の梁と前記第2の梁にサッシ又は壁体もしくはサッシ及び壁体の上下端部を固定することを特徴としている。
【0011】
3階以上の建築物の場合は、上記第2の梁に、上記第1の梁に対する強化フレームの下端部の固着、その強化フレームの上端部に対する第2の梁の固着及び前記第1の梁と前記第2の梁に対するサッシ又は壁体もしくはサッシ及び壁体の上下端部の固定を、第2の梁及びその上方に設けられる梁に対して繰り返すことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、上下の梁の間に複数個の強化フレームを横方向に間隔をおいで分離可能に取付けて建築物が構成されるから、建築要素の運搬コストの削減、現場での組立容易化が可能であり、上下の梁の間に柱がないので、従来の建築物よりも室内空間の有効容積を拡大することが可能である。さらに、使用後は建築物の分解が容易であるから、移築再使用に好適である。
請求項2の発明によれば、柱の不要化を実現できる強度を有する強化フレームを容易に得ることができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、第1の梁と第2の梁の間には、強化フレームがボルトナットにより固着して取り付けられ、サッシ又は壁体もしくはサッシ及び壁体が設けられるので、建築要素の運搬コストが削減され、現場での組立が容易であり、建築物の使用中は2階に柱がないので広い居住空間が得られる。また、使用後は分解が容易であるから、移築再使用に好適である。
請求項4の発明によれば、2階以上おいても柱のない広い居住空間を有する建築物の提供が可能である。
【0014】
請求項5の発明によれば、梁と強化フレームの接続が容易にできるとともに、同じ梁にサッシ、壁体のほか、床材を容易に取り付けることができる。
【0015】
請求項6の発明によれば、構成要素を下側から順次設置して、柱の無い建築物を能率的に建造することができる。
【0016】
請求項7の発明によれば、上下の梁に対する構成要素の取付施工の繰り返しにより、2階以上に柱の無い3階以上の建築物を能率的に建造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、本発明の実施の形態について、図面に示す実施例に基づいて説明する。
図1は本発明を3階建て建築物に適用した場合の正面図、図2は同じく側面図、図3は図1の1階部分の横断面図である。図4は本発明に係る建築物の施工方法の工程を示す説明図である。なお、これらの図面には、図面の簡明化のため、階段が省略されている。図5は図1におけるX−X線断面図、図6は図5の矢A視方向の側面図、図7は強化フレーム及び壁壁の取付構造の一例を示す縦断面図、図8は図7のY−Y線断面図、図9は外壁の他の縦断面図である。
【0018】
図において、1は地面Gに既知の方法により打設されたコンクリート基礎である。基礎1は、図3に例示するように、通常は平面方形に形成されるが、建築敷地の地形によっては、三角形、台形、その他の任意の多角形でも良い。円弧その他の曲線部分を有する基礎でも構わないが、直線部分を有する基礎にすることが好ましい。
【0019】
基礎1には、角部及びその角部から一例として900mmなどの所望の距離を隔てた位置に柱2C,2R,2Lが立設されている。柱は、建築物の階数を問わず、1階分の長さのみ有する。基礎1の一つの直線部分当たり少なくとも2本の柱が左右に隔てて立設されれば良いが、所要の耐震、耐荷重強度を備えるために、図示の例のように、角部とその角部から所定距離離れた位置とに柱2C,2R,2Lを立設し、隣り合う柱に筋交い3を設けることが望ましい。また、1階の床面を駐車場等として使用する場合は、柱間に車両用出入り口4を形成すればよい。また、出入り口の間口が大きすぎる場合は、補強用の中間柱2Mを設ける場合もある。上記の基礎の打設及び柱の立設は、既知の施工方法により行うことができる{図4(a)(b)参照}。
【0020】
基礎の直線部分に立設された柱2C,2R,2L,2C;2C,2R,2M,2L,2Cの上端部間には、梁(特許請求の範囲における第1の梁に相当)5Aが架設されている。柱と梁との接続は、その一方又は双方に溶接した接続金具6同士を面接触させ、それらの接続金具に貫通したボルトにナット7,8をねじ込む方法により行われ(図5には柱2Rと梁5Aとの接続例が示されている。)、建築物の使用終了後には、そのボルトナット7,8を取り外すことにより、分離可能とされている。
【0021】
梁5Aは、好ましい実施例においては、断面H字形の鋼材(H形鋼)を横転させて構成してあり、図5に示すように、下側のフランジ51に柱2R,2L又は2Mの上端部に溶接した接続金具6を当接し、ボルトにナット7,8により固着されている。
【0022】
上述のようにして、基礎1の直線部分に立設された各柱の上端部に梁5Aを架設し、見掛け上、基礎の平面形状と同一形状に連続された後は、各梁5Aの上側のフランジ52に、後に詳述する強化フレーム9の下端部が、別のボルトナット7,8により固着される。
【0023】
強化フレーム9は、図1及び図2に示すように、鉄などの金属製枠体90に金属製タスキ91を接続してなるものである。枠体90は、図5及び図6に示すように、断面L字形のアングル材を方形に溶接し、帯板状のタスキ材を対角線状に配置し、両端を接続片92を介して枠体90に溶接してタスキ91を形成してある。従って、強化フレーム9は、非常に大きな強度を備えている。もちろん、強化フレームの外表面には法規に適合する既知の耐火剤が備えられている。
【0024】
強化フレーム9は、図5に示すように、枠体90を構成するアングル材の水平辺90aを梁5Aの上側のフランジ52に当接し、これらの水平辺90aとフランジ52に貫通したボルト7にナット8を螺合することにより固着されている。従って、強化フレームの梁5Aに対する固着作業を迅速容易に行うことができる。
【0025】
一つの梁5Aに対して少なくとも二つの強化フレーム9を梁5Aの長手方向に間隔をおいて固着する作業を、全ての梁5Aに対して終了した後、それぞれ共通の垂直面に存在する強化フレームの上端部に梁(特許請求の範囲における第2の梁に相当)5Bが固着されている。この梁5Bは、梁5Aと同じH形鋼で構成され、梁5Bの各強化フレーム9に対する固着構造は、図5の梁5Aの上半部分を上下反転した構造に等しい。すなわち、強化フレーム9の下端部を下側の梁5Aの上側フランジ52に対してボルトナット7,8により固着したのと全く同じ要領で、強化フレーム9の上端部を上側の梁5Bの下側フランジに対して固着することができる。従って、強化フレーム及び梁の取付の施工能率が向上する。
【0026】
建築物を2階建てとして完成する場合は、図7に例示するように、下側の梁5Aに既知の床材10を既知の方法により取付け、上側の梁5Bに既知の屋根材11を既知の方法により取り付ける。すなわち、梁5A,5Bは、横転H形鋼を用いているから、上下のフランジ51,52あるいは両フランジ及びウェブ53の間の溝54を用いて、かつ、既知の図示されない接続具を用いて床材10又は屋根材11を取り付けることができる。11aは屋根材に設けられた断熱材である。
【0027】
上下の梁5A,5Bの間に固定された各強化フレーム9の屋外側面には、図7及び図8に例示するように、断熱性、耐熱性、耐候性などを備えたプレート12を強化フレーム9に溶接された接続金具13と、ボルトナット14,15などにより付加されている。
【0028】
さらに、強化フレーム9を介して固定された上下の梁5A,5Bの間には、図9に例示するように、強化フレームの存在しない位置において、既知のサッシ16、カーテンウォール又はガラス板その他の壁体(図示せず)、もしくはサッシと壁体が、上下の梁5A,5Bを用いて取り付けられ、上下の梁間の垂直面が遮蔽されて、垂直面間に室内空間が形成されている。
【0029】
図1,2には、上下の梁の間に強化フレーム9のみが取り付けられた状態を示してあり、強化フレーム9に付着される外装材、強化フレーム9の間に取付けられるサッシや壁体が省略されている。図7、9において、17は梁5Bの屋外側の溝54を塞ぐ外装材であり、18は屋根材11の端部と外装材17の上端部との間に設けられた水密材である。
【0030】
各強化フレーム9は、非常に大きな強度を有するので、従来の建築物の柱を代替する機能を有する。従って、比較的大きな断面積を有する柱の使用が不要であるため、同じ建築面積の従来の建築物よりも室内空間の有効容積を大きくすることができる。
【0031】
図4(c)に破線で示すように、上側の梁5Bの上側にさらに別の強化フレーム9の下端部を上述した場合と同じ要領で固着し、それらの強化フレームの上端部にさらに別の梁5Cを固着し、その梁5Cに既知の屋根材をボルトナットにより固着することにより、図1,2に示されているような3階建ての建築物、あるいはさらに、同様の施工の繰り返しにより、3階以上の建築物とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を3階建て建築物に適用した場合の正面図。
【図2】同じく側面図。
【図3】図1の1階部分の横断面図。
【図4】本発明に係る建築物の施工方法の工程を示す説明図。
【図5】図1におけるX−X線断面図。
【図6】図5の矢A視方向の側面図。
【図7】強化フレーム及び壁壁の取付構造の一例を示す縦断面図。
【図8】図7のY−Y線断面図。
【図9】外壁の他の縦断面図。
【符号の説明】
【0033】
1 基礎
2C,2R,2L,2M 柱
5A,5B,5C 梁
5A 第1の梁
5B 第2の梁
7,8 ボルトナット
9 強化フレーム
90 枠体
91 タスキ
10 床材
11 屋根材
12 外装材
16 サッシ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下の梁の間に、複数個の強化フレームを横方向に間隔を置いて前記梁に対して分離可能に取付けて、前記上下の梁の間に柱を設けることを不要にしたことを特徴とする建築物。
【請求項2】
強化フレームは、方形の金属枠体に金属製タスキを溶接又は固着してなることを特徴とする請求項1に記載の建築物。
【請求項3】
平面多角形の各辺に沿って設けた基礎と、
前記基礎に立設した1階分の高さの柱と、
前記柱の上端部間に架設した第1の梁と、
方形の金属製枠体に金属製のタスキを対角線状に固着してなる強化フレームであって、前記平面多角形の各辺の上方に存在する前記第1の梁に対して少なくとも2個が、その下端においてボルトナットにより固着されたものと、
前記第1の梁と同一構造を有し、前記平面多角形の各辺の上方に存在する強化フレームの上端部にボルトナットにより固着された第2の梁と、
前記第1の梁と前記第2の梁との間に、前記強化フレームに隣接して取り付けられたサッシ又は壁体もしくはサッシ及び壁体と、
を有し、2階の柱を不要とされたことを特徴とする建築物。
【請求項4】
第1の梁の上方に第1の梁と同一構造の複数の梁を等間隔を持って設けるとともに、各梁の間に強化フレームとサッシ又は壁体もしくはサッシ及び壁体を設けて、2階以上の柱を不要とされたことを特徴とする請求項3に記載の建築物。
【請求項5】
いずれの梁も横転H形鋼で作られているとともに、強化フレームの金属製枠体はアングル材を方形に溶接してなり、上下のアングル材の水平辺を前記梁のフランジ部に重ね合わせ、その重ね合わせ部分においてボルトナットにより前記梁に固着されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の建築物。
【請求項6】
平面多角形の各辺に沿って設けた基礎に柱を立設し、前記柱の上端部間に第1の梁を架設し、前記平面多角形の各辺の上方に存在する第1の梁に、方形の金属枠体に金属製のタスキを対角線状に固着してなる複数個の強化フレームを、その下端において前記第1の梁にボルトナットにより固着し、前記平面多角形の各辺の上方に存在する強化フレームの上端部に前記第1の梁と同一構造を有する第2の梁をボルトナットにより固着し、前記第1の梁と前記第2の梁に、サッシ又は壁体もしくはサッシ及び壁体の上下端部を固定することを特徴とする建築物の施工方法。
【請求項7】
請求項6に記載の第2の梁に、第1の梁に対する強化フレームの下端部の固着、その強化フレームの上端部に対する第2の梁の固着及び前記第1の梁と前記第2の梁に対するサッシ又は壁体もしくはサッシ及び壁体の上下端部の固定を、第2の梁及びその上方に設けられる梁に対して繰り返すことを特徴とする建築物の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−74240(P2009−74240A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−241237(P2007−241237)
【出願日】平成19年9月18日(2007.9.18)
【出願人】(505307013)株式会社フィル・カンパニー (1)