説明

建築物構造用の軽量厚物石膏パネル

【課題】壁材、天井材、屋根下地材等の建築物構造用として用いられる、耐火性、断熱性、遮音性等のほか、軽量性等の施工性にも優れた建築物構造用の軽量厚物石膏パネルを提供する。
【解決手段】軽量化された石膏硬化体に、カット性が良好な補強材を配合させたことを特徴とする石膏パネルであり、また、該補強材は、繊維状材、チップ状材、線状材、又は板状材から選ばれる少なくとも1種が好ましく、特に、石膏及び/又は補強材として、廃材又は再利用材を用いることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物構造用の軽量厚物石膏パネルに関し、さらに詳しくは、壁材、天井材、屋根下地材等の建築物構造用として用いられる、耐火性、断熱性、遮音性等のほか、軽量化等の施工性にも優れた建築物構造用の軽量厚物石膏パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の壁材、天井材、屋根下地材等の主用構造部は、耐火構造にすることが求められることがある。その際、前記構造部として、RC(鉄筋コンクリート)、ALC(軽量気泡コンクリート)、PC(プレキャストコンクリート)等のコンクリート系の材料で躯体を構築することが行われている。これにより、耐火性は満足されるが、施工コスト及び部材コストにおいて高価であるため、壁材、天井材、屋根下地材等の建築物構造用として使用される、安価で、かつ施工性にも優れた耐火性パネルが求められていた。
【0003】
ところで、安価な原料を使用することができる耐火性建材として、排煙脱硫法の副産物として大量に生成される化学石膏及び天然石膏を主原料とした、石膏ボードで代表される石膏硬化体が注目されている。すなわち、石膏硬化体を構成する二水石膏は、約21%の結晶水を持ち、火災に対しても結晶水が蒸発するまでは温度上昇を防げる消火効果があるので、難燃及び不燃材料としての優れた特性を有している。しかしながら、建築物構造用のパネルとしては、石膏硬化体は、通常、機械的強度が低く非常に脆いため、その用途が限られており、さらに、用途によって、断熱性、遮音性等のほか、軽量化、カット性、釘打ち性等の施工性においての課題が知られている。
【0004】
したがって、従来、セメント等を添加材として使用して石膏硬化体の強度を高めるとともに、上記の課題を改善する試みが種々行われている。例えば、製紙パルプスラッジと半水石膏の混練物を成形し固化することよりなる石膏ボードの製造方法では、寸法安定性に優れ、保釘性能も優れ、吸音性が高く、熱伝導性が低い高強度建材用石膏ボードが得られるとしている(例えば、特許文献1参照。)。また、古紙から得られた綿状パルプと石膏粉との混合物に加水して泥状となした後、加圧成形することよりなる繊維補強石膏材の製造方法では、強度、耐水性、釘打ち性、接合抵抗等の改善を安価に実現できるとしている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
しかしながら、これらの建築物用の石膏硬化体において、強度とともにその耐火性、断熱性、遮音性等を確保するためには、ある程度以上の板厚にすることが必要とされる。そのため、建築物構造用の石膏パネルでは、パネル重量が大きくなり、重量物のハンドリングにより施工性が非常に悪化するという問題がある。
以上の状況から、耐火性、断熱性、遮音性等のほか、軽量化等の施工性にも優れた高強度の建築物構造用石膏パネルが求められている。
【0006】
【特許文献1】特開平5−310462号公報(第1頁、第2頁)
【特許文献2】特開平6−157116号公報(第1頁、第2頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の従来技術の問題点に鑑み、壁材、天井材、屋根下地材等の建築物構造用として用いられる、耐火性、断熱性、遮音性等のほか、軽量化等の施工性にも優れた建築物構造用の軽量厚物石膏パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために、建築物構造用の石膏パネルについて、鋭意研究を重ねた結果、軽量化された石膏硬化体に、カット性が良好な補強材を配合させたところ、耐火性、断熱性、遮音性等のほか、軽量化等の施工性にも優れた、建築物構造用として好適な高強度の軽量厚物石膏パネルが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、軽量化された石膏硬化体に、カット性が良好な補強材を配合させたことを特徴とする建築物構造用の軽量厚物石膏パネルが提供される。
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記石膏硬化体は、添加材を半水石膏を用いて凝結硬化させたものであることを特徴とする建築物構造用の軽量厚物石膏パネルが提供される。
【0011】
また、本発明の第3の発明によれば、第2の発明において、前記添加材は、セメント、スラグ、二水石膏、生石灰から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする建築物構造用の軽量厚物石膏パネルが提供される。
【0012】
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、前記石膏硬化体は、気泡の形成及び/又は軽量骨材の添加により軽量化されたものであることを特徴とする建築物構造用の軽量厚物石膏パネルが提供される。
【0013】
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、前記補強材は、繊維状材、チップ状材、線状材、又は板状材から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする建築物構造用の軽量厚物石膏パネルが提供される。
【0014】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5いずれかの発明において、半水石膏の原料及び/又は補強材として廃材又は再利用材を用いることを特徴とする建築物構造用の軽量厚物石膏パネルが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の建築物構造用の石膏パネルによれば、第1の発明においては、軽量化された石膏硬化体により、耐火性、断熱性、遮音性等のほか、軽量化に伴なう施工性にも優れた石膏パネルが得られるとともに、カット性が良好な補強材により、建築物構造用として好適な曲げ強度が得られるとともに、パネルの切断が容易であり、その生産性及び施工性が向上するので、その経済的価値は極めて大きい。
【0016】
また、第2又は3の発明によれば、セメント、スラグ、二水石膏、生石灰から選ばれる少なくとも1種の添加材を半水石膏で凝結硬化させたものであるので、半水石膏の即硬性により良好な生産性が得られる。
【0017】
また、第4の発明によれば、気泡の形成及び/又は軽量骨材の添加の手段により軽量化することで、石膏硬化体の製造に際して、石膏硬化体の比重制御を容易に行なうことができるので、用途に応じた安定した特性を有する建築物構造用の石膏パネルが得られる。
【0018】
また、第5の発明によれば、前記補強材としては、入手しやすい市販の繊維状材、チップ状材、線状材、又は板状材の中から用途に応じて用いることができるので、コスト的に有利であるとともに、種々の特性を有する建築物構造用の石膏パネルが得られる。
【0019】
さらに、第6の発明によれば、半水石膏の原料及び/又は補強材として、廃材又は再利用材を用いれば、原料コストが低下するとともに資源の循環が行なえるので、その経済的価値はさらに大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の建築物構造用の石膏パネルを詳細に説明する。
本発明の建築物構造用の石膏パネルは、軽量化された石膏硬化体に、カット性が良好な補強材を配合させたことを特徴とする。また、本発明の石膏パネルにおいて、半水石膏の原料及び補強材として廃材又は再利用材を用いることが、安価な石膏パネルを得るため、特に好ましい。
【0021】
本発明において、石膏パネルの基材として軽量化された石膏硬化体を用いることと、該硬化体はカット性が良好な補強材を含有することとの2つの要件を満たすことが重要である。第一の軽量化された石膏硬化体により、耐火性、断熱性、遮音性等のほか、軽量化等に伴ない施工性にも優れた石膏パネルが得られる。
また、第二のカット性が良好な補強材により、建築物構造用として好適な曲げ強度が得られるとともに、パネルの切断が容易であるので、その製造工程の生産性、及び切断加工等の施工性を向上させることができる。
【0022】
すなわち、石膏の硬化体を用いることにより、パネルの耐火性が得られる。パネルの耐火性は、二水石膏の結晶水による消火効果によって付与される。その消火効果は、軽量化された石膏硬化体の結晶水量に依存する。ここで、パネルを所定の厚さに調製することにより、耐火性能を調整することができる。例えば、その厚さとして、50mm以上のものを用いることにより、60分耐火が得られる。なお、耐火性の評価方法としては、建築基準法2条7号(耐火構造)の規定に基づく認定にかかわる性能評価であり、建築試験センターの業務方法書「耐火性能試験・評価方法」に準じて行なう。また、軽量化された石膏硬化体は、熱変形及び耐火変形が少ない。
【0023】
上記石膏パネルに用いる石膏硬化体としては、特に限定されるものではなく、半水石膏のみを凝結硬化させ二水石膏としたもののほか、基材としてセメント、スラグ、二水石膏、石灰から選ばれる少なくとも1種の添加材を半水石膏に対して40重量%程度にまで含有し、半水石膏を凝結硬化させて得られる二水石膏との混合物からなるもの挙げられる。なお、半水石膏の使用により、軽量化された石膏硬化体の製造に際して連続成形又は型成形において半水石膏の即硬性によって早期に成形することができ収縮が生じないので良好な生産性が得られる。
【0024】
上記石膏硬化体の製造に用いる半水石膏としては、特に限定されるものでなく、β半水石膏、α半水石膏等が用いられるが、安価に入手することができるβ半水石膏が主成分である焼石膏が好ましい。
また、焼石膏の原料としては、特に限定されるものでなく、天然石膏、化学石膏等の種々の石膏が用いられるが、この中で、特に、各所から大量に産出される廃石膏を再利用することが、コスト上好ましい。廃石膏としては、石膏の合成工程からの中間物、石膏ボード、パネル等の石膏加工品製造工程からの中間物及び廃材、使用済み石膏製品の廃棄物等が挙げられる。
【0025】
上記石膏パネルに用いる補強材としては、カット性に優れる補強材であれば、とくに制限なく用いることができるが、低線膨張率であることが好ましく、さらに、カット性に優れ、低線膨張率のものであれば、可燃性の材料であっても、不燃性の材料であっても良い。可燃性の補強材は、概して線膨張率が低くカット性が良好であり、特に好ましい。すなわち、カット性が良好な補強材を用いると、得られたパネルの切断が容易であり、その製造工程の生産性、及び切断加工等の施工性を向上させることができる。
一方、金属線など線膨張率が高く、カット性が劣る補強材は、熱変形が大きく耐火性能上不適である。
【0026】
上記補強材としては、例えば、繊維状材、チップ状材、線状材、又は板状材から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。この中で、特に軽量な補強材を用いれば、石膏パネルの軽量化のためより好ましい。
上記繊維状材としては、特に限定されるものではないが、紙繊維、布繊維、木繊維、竹繊維、プラスチック繊維等の可燃性材料、グラスウール、ロックウール(廃材を含む。)等の不燃性であるがカット性が良好な材料が挙げられる。
【0027】
上記チップ状材としては、木片、紙片、樹脂チップ(発泡樹脂破材など含む。)等の可燃性材料が挙げられる。
上記線状材としては、竹、ベニヤ、間伐材(端材を含む。)、紐、樹脂、糸等の可燃性材料が挙げられる。
上記板材としては、合板(孔あきのものを含む。)、不織布、段ボール、紙(折紙を含む。)等の可燃性材料が挙げられる。
【0028】
また、これらの中で、特に、上記に挙げられた繊維状材、チップ状材、線状材、又は板状材等の廃棄物、端材等を再利用又は有効活用することが、コスト上より好ましい。
上記の廃材、再利用材を補強材として用いる場合の具体的な材料としては、次の(A)〜(D)を挙げることができる。
【0029】
(A)繊維補強
(1)グラスウール:安価な端材及び解体廃材を再利用する。
(2)古着繊維:古着繊維を再利用する。
(3)植物繊維:藁、葦、蔓、古畳などを再利用する。
【0030】
(B)チップ補強
(1)木片、紙片:再生木材、古紙(雑誌系)のチップを乱混入する。
(2)樹脂チップ:古タイヤ、発泡トレーなどの破砕材を乱混入する。
【0031】
(C)線材補強
(1)木材線材:割竹、間伐材の細線材を背筋する。
(2)板状線材:合板やパーチクルボードの端材を背筋する。
(3)紐状線材:スプリットヤーンなどの高強度紐及びロープ材を背筋する。テンションをかけておくと、プレストレスの効果がある。
【0032】
(D)板材補強(内蔵〉
(1)合板類:石膏硬化体の中央部に、又は中央部から離して2層に配置する。内蔵することにより、合板の反りの問題は起きない。また、内蔵の合板に釘、ビスが打てるので、釘打ち性が改善される。孔あきにすることで定着強度が向上する。
(2)布類:石膏の含浸しやすい布(不織布など)を中央部から離して2層に配置する。
【0033】
本発明の石膏パネルにおいて、補強材の配合量は、基材100重量部に対して、1〜50重量部が好ましく、より好ましくは1〜15重量部である。すなわち、補強材が50重量部を超えると混練が困難であり、1重量部未満であると補強材の効果が得られない。
【0034】
上記のような補強材を石膏硬化体に配合した本発明の石膏パネルの構造を図面を用いて説明する。
図1は、本発明の石膏パネルの内部断面構造の一例を表す模倣図である。図1において、石膏パネルの基材である石膏硬化体1には、気泡あるいは軽量骨材2と補強材3が内蔵されている。
【0035】
図2(a)は、補強材として、繊維状材を用いた一例の断面図である。繊維状材4は、主に基材である石膏硬化体1のパネル中心部に配置されるようにすることが好ましい。図2(b)は、補強材として、チップ状材を用いた一例の断面図である。チップ状材5は、主に基材である石膏硬化体1中に分散するようにすることが好ましい。図2(c)は、補強材として、線状材を用いた一例の断面図である。線状材6は、主に基材である石膏硬化体1中の厚さ方向の両端に配置されるようにすることが好ましい。図2(d)は、補強材として、板状材を用いた一例の断面図である。板状材7は、主に基材である石膏硬化体1中の厚さ方向の中心部、又は中心部から離して2層に配置されるようにすることが好ましい。
【0036】
本発明の石膏パネルの密度としては、特に限定されるものではないが、用途に応じて、パネルの耐火性、断熱性、遮音性等の特性に良好な影響をもたらすような密度を有する硬化体であることが好ましい。すなわち、石膏硬化体の耐火性としては、結晶水量が多いほど好ましいが、密度との兼ね合いから選ばれる。例えば、密度が0.4及び石膏硬化体の厚さが89mmの材料を用いた場合、耐火1時間程度の耐火性能が得られる。また、断熱性としては、石膏硬化体の密度と水分量によるが、ALCと同程度が得られる。
【0037】
また、上記パネルの軽量化の度合は、凝結硬化が行なわれる際に、軽量化手段の制御により調整される。このとき、パネルの耐火性、剛性、遮音性等を考慮して、所望の密度に調整されるが、0.7以下が好ましく、0.5以下がより好ましい。例えば、代表的なALCの密度である0.65程度より、さらに軽量化することができる。
【0038】
上記石膏パネルに用いる軽量化の手段としては、特に限定されるものではないが、石膏硬化体中に気泡を形成する手段、又は石膏硬化体に軽量骨材を添加する手段が好ましい。なお、上記補強材として軽量物を用いることは、一層有効な手段である。
気泡を形成する手段としては、例えば、半水石膏、混練水、必要により補強材、添加材等からなる混練物に、発泡剤を含む水を起泡させて得た気泡を混入させた調合物を型内部で硬化させる。また、半水石膏、混練水、必要により補強材、添加材等からなる調合物に発泡剤を添加して得た混練物を型内部で硬化させる。これによって、気泡を包含した石膏硬化体を生成することができる。
また、石膏硬化体に軽量骨材を添加する手段としては、半水石膏、軽量骨材、混練水、必要により補強材、添加材等からなる混練物を型材内部で硬化させる。
【0039】
上記発泡剤としては、例えば、界面活性剤と、必要に応じて、気泡安定剤を用いる。また、上記軽量骨材としては、シラスバルーン、パーライト、バーミキュライト等の無機系軽量骨材、及びスチレンビーズ等の発泡樹脂等が用いられる。また、混練物には、必要に応じて、凝結調整剤、増粘剤等を用いることができる。
【0040】
本発明の石膏パネルの製造方法としては、特に限定されるものではなく、上記軽量化の手段を用いて得られた混練物又は調合物を、型成形機又は連続成形機に注入し凝結させた後、余剰水を乾燥して除去する方法が好ましい。ここで、補強材として、線状材又は板状材を用いるときは、これらを型成形機又は連続成形機に設置した後に、混練物又は調合物を注入する。
【0041】
ここで、混練水としては、半水石膏100重量部に対して90〜110重量部の所定量が用いられる。また、必要に応じて、半水石膏100重量部に対して市販の石膏用凝結調整剤0.01〜1.0重量部を添加する。
【0042】
本発明の石膏パネルのサイズとしては、特に限定されるものではなく、壁材、天井材、屋根下地材等の建築物構造用として用いられる所望のサイズが選ばれるが、ALCパネルの施工性に準じたサイズ、例えば、幅が300、450、600、900又は1200mm、高さが1800、2400、2700mm、及び厚さが50mm以上、107、158、202mm等が用いられる。
【0043】
本発明の石膏パネルの仕様としては、用途ごとに適切なものが用いられる。これらの仕様の具体例として、石膏及び補強材として廃材又は再利用材を用いた「戸境壁パネル」は、以下のサイズが好ましい。
戸境壁パネルのサイズとしては、ALCパネルの施工性に準じたサイズ、例えば、幅が300、450、600、900又は1200mm、高さが2400、2700mm、及び厚さは耐火性能により50mm以上、例えば100mmである。
【0044】
上記パネルの防火性としては、厚さ50mm以上で60分耐火である。
また、上記パネルの断熱性及び遮音性は、それぞれ、軽量化された石膏硬化体の密度と水分量、及び該石膏硬化体の質量と該石膏硬化体内での音の減衰性等で付与される。ここで、遮音性としては、建築基準法で定められた戸境壁パネルの遮音特性を満足する。
【0045】
また、上記パネルの曲げ強度は、軽量化された石膏硬化体に添加されたパネル補強材で付与される。ここで、可燃性補強材及び/又は不燃性であるがカット性が良好な補強材を用いることにより、例えば、厚さ100mmで6kg/cm以上の曲げ強度が得られる。また、カット性に優れたパネル補強材を用いるので、パネルの切断が容易であり、その製造工程の生産性、及び切断加工等の施工性が向上する。
【0046】
本発明の建築物構造用の軽量厚物石膏パネルは、耐火性のほか、断熱性、遮音性等にも優れ、かつ十分な強度が得られるので、各種建築物分野で利用される構造物用の耐火性パネル、例えば、壁材、天井材、屋根下地材等の主用構造部材として好適に用いることができる。
【実施例】
【0047】
以下に、本発明の実施例によって本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0048】
(実施例1)
軽量化された石膏硬化体の基材中に、補強材を配合した石膏パネルを製造し、戸境壁パネルとしての評価を行った。
焼石膏80重量部にセメント20重量部、及び水60重量部、補強材としてビニロン繊維1重量部を高速混練し、混練物を作成後、事前に発泡機を用いて起泡させて得た気泡を該混練物に0.3重量部加えてさらに混練し、その後形枠に混練物を注入した。その後、石膏の凝結が終了後に、乾燥機を用いてパネル中に含まれる余剰水を除去して、製品パネルを得た。得られた製品パネルの石膏硬化体の密度は、0.4であった。
次いで、製品パネルの曲げ強度及び耐火性の評価を行った。その結果、厚さ100mmで曲げ強度は7kg/cmであった。また、非耐力壁1時間耐火構造の耐火性が得られ、戸境壁パネルとして十分な性能であった。また、断熱性及び遮音性も十分な性能が得られた。
【0049】
(実施例2)
軽量化された石膏硬化体の基材中に、補強材を配合した石膏パネルを製造し、戸境壁パネルとしての評価を行った。
焼石膏70重量部にセメント30重量部、石膏用凝結調整剤として高分子凝結剤0.005重量部、スチレンビーズ2重量部及び水70重量部を高速混練し、混練物を作成後、形枠に補強材としてロープ材10重量部を背筋した後、混練物を注入した。その後、石膏の凝結が終了後に、乾燥機を用いてパネル中に含まれる余剰水を除去して、製品パネルを得た。得られた製品パネルの石膏硬化体の密度は、0.5であった。
次いで、製品パネルの曲げ強度及び耐火性の評価を行った。その結果、厚さ100mmで曲げ強度は、15kg/cmであった。また、非耐力壁1時間耐火構造の耐火性が得られ、戸境壁パネルとして十分な性能であった。また、断熱性及び遮音性も十分な性能が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上より明らかなように、本発明の建築物構造用の石膏パネルは、十分な強度が得られるので、各種建築物分野で利用される構造物用の耐火性パネルとして好適である。また、本発明の石膏パネルは、耐火性のほか、断熱性、遮音性等にも優れているので、壁材、天井材、屋根下地材等の主用構造部に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の石膏パネルの内部断面の構造の一例を表す模倣図である。
【図2】本発明のパネル断面での補強材の配置状態を表す断面図である。ここで、(a)は繊維状材補強、(b)はチップ状材補強、(c)は線状材補強、(d)は板状材補強の代表例を表す。
【符号の説明】
【0052】
1 石膏硬化体
2 気泡あるいは軽量骨材
3 補強材
4 繊維状材
5 チップ状材
6 線状材
7 板状材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軽量化された石膏硬化体に、カット性が良好な補強材を配合させたことを特徴とする建築物構造用の軽量厚物石膏パネル。
【請求項2】
前記石膏硬化体は、添加材を半水石膏を用いて凝結硬化させたものであることを特徴とする請求項1に記載の建築物構造用の軽量厚物石膏パネル。
【請求項3】
前記添加材は、セメント、スラグ、二水石膏、生石灰から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項2に記載の建築物構造用の軽量厚物石膏パネル。
【請求項4】
前記石膏硬化体は、気泡の形成及び/又は軽量骨材の添加により軽量化されたものであることを特徴とする請求項1に記載の建築物構造用の軽量厚物石膏パネル。
【請求項5】
前記補強材は、繊維状材、チップ状材、線状材、又は板状材から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の建築物構造用の軽量厚物石膏パネル。
【請求項6】
半水石膏の原料及び/又は補強材として廃材又は再利用材を用いることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の建築物構造用の軽量厚物石膏パネル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−257637(P2006−257637A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−72189(P2005−72189)
【出願日】平成17年3月15日(2005.3.15)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(593001473)有限会社アドセラミックス研究所 (5)
【Fターム(参考)】