説明

建築物

【課題】構成簡単に、かつ、軽量に膜材の内部に所定形状の空間を形成するようにした建築物を提供する。
【解決手段】建築物1の躯体3は、水平な一方向Aに向かって所定間隔で複数立設される門形フレーム4と、一方向Aに向かって延び、各門形フレーム4の左右各側部のうち、少なくとも一方の側部同士を連結する上下方向で複数本の側部横継材6,6´とを備える。一方向Aに沿った視線で見て、各門形フレーム4の各上部外面に、一方向Aに向かって延びる膜材10を架設して屋根11を形成する。各門形フレーム4の側部の外側方がわに各側部横継材6,6´を配置し、これら各側部横継材6,6´に剛性の板材12を取り付けて側壁13を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平な一方向に向かって所定間隔で複数立設される門形フレームを備える躯体に膜材を支持させて、この膜材の内部に所定形状の空間を形成するようにした建築物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記建築物には、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、建築物の躯体は、水平な一方向に向かって所定間隔で地面上に複数立設される門形フレームと、上記一方向に向かって延び、上記各門形フレーム同士を連結する多数の横継材とを備えている。また、上記躯体に支持される膜材がテント構造として設けられる。つまり、上記躯体の支持により上記膜材の内部に所定形状の空間が形成され、この空間は、何らかの作業や物の収容などに利用可能なものとされる。
【0003】
そして、上記建築物によれば、内部に所定形状の空間を形成するテント構造の膜材は、その可撓性によって取り扱いがし易いものであることから、その分、上記建築物の組立作業が容易にできるという利点がある。また、上記膜材は、通常、透光性があるため、この膜材を通し上記空間に太陽光を導入させてやれば、この空間において、太陽光の光や熱の有効利用ができて有益である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−47807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、通常、建築物は外形寸法が大きいものであり、その一方、上記したテント構造としての膜材は強度も剛性も有するものではない。このため、上記躯体は、上記膜材の自重に加えて、この膜材に対する大きい風圧荷重をも支持することが要求される。よって、上記躯体には大きい強度が要求されることから、ステーやブレースなど、より多くの補強材により上記躯体を補強することが必要とされて、その構成が複雑になったり、質量が大きくなったりするおそれが生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、水平な一方向に向かって所定間隔で複数立設される門形フレームを備える躯体に膜材を支持させて、この膜材の内部に所定形状の空間を形成するようにした建築物に関し、この建築物を構成簡単に、かつ、軽量に形成できるようにすることである。
【0007】
請求項1の発明は、躯体3が、水平な一方向Aに向かって所定間隔で複数立設される門形フレーム4と、上記一方向Aに向かって延び、上記各門形フレーム4の左右各側部のうち、少なくとも一方の側部同士を連結する上下方向で複数本の側部横継材6,6´とを備えた建築物において、
上記一方向Aに沿った視線で見て(図3)、上記各門形フレーム4の各上部外面に、上記一方向Aに向かって延びる膜材10を架設して屋根11を形成し、上記各門形フレーム4の側部の外側方がわに上記各側部横継材6,6´を配置し、これら各側部横継材6,6´に剛性の板材12を取り付けて側壁13を形成したことを特徴とする建築物である。
【0008】
請求項2の発明は、上記各門形フレーム4の側部が、上記一方向Aに向かう視線で見て(図1、3)、それぞれ左右一対の内、外側部材31,32と、これら内、外側部材31,32を連結する連結材33,34とを備え、建築物1の平面視(図5)で、上記一方向Aに傾斜する方向に延び、上記内側部材31がわと側部横継材6とを連結するステー51を設けたことを特徴とする請求項1に記載の建築物である。
【0009】
請求項3の発明は、上記一方向Aに向かって延び、上記各門形フレーム4の側部の上部同士を連結する連結梁56と、この連結梁56の下方近傍に配置されて上記膜材10の側端縁部を上記各門形フレーム4がわに連結する連結具57とを設け、上記一方向Aに沿った視線で見て(図1,4)、上記各門形フレーム4の側部の上部と上記連結梁56との各外側面が互いに面一となるようにしたことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の建築物である。
【0010】
請求項4の発明は、上記複数本の側部横継材6,6´のうち、上部の側部横継材6´に上記板材12の上端部をシール材63を介し当接させると共に、上記上部の側部横継材6´と上記膜材10の側端縁部との間の隙間64を閉じる閉じ膜材65を設けたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載の建築物である。
【0011】
請求項5の発明は、上下方向で、上記膜材10の側端縁部の近傍に上記上部の側部横継材6´を位置させたことを特徴とする請求項4に記載の建築物である。
【0012】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明による効果は、次の如くである。
【0014】
請求項1の発明は、躯体が、水平な一方向に向かって所定間隔で複数立設される門形フレームと、上記一方向に向かって延び、上記各門形フレームの左右各側部のうち、少なくとも一方の側部同士を連結する上下方向で複数本の側部横継材とを備えた建築物において、
上記一方向に沿った視線で見て、上記各門形フレームの各上部外面に、上記一方向に向かって延びる膜材を架設して屋根を形成し、上記各門形フレームの側部の外側方がわに上記各側部横継材を配置し、これら各側部横継材に剛性の板材を取り付けて側壁を形成している。
【0015】
このため、上記建築物の上部は、その屋根に膜材が用いられてテント構造とされたことから、この建築物は、仮に、これを全体的に剛性材で形成することに比べ、組立作業がより容易かつ円滑にできる。また、上記側壁を剛性の板材とすることにより防犯性を得ると共に、上記膜材を透光性として、この膜材を通し建築物の内部の空間に太陽光を導入させてやれば、一般のテント構造のものと同様に、上記空間において太陽光の光や熱を利用できるなど、この空間の環境を良好なものにでき、もって、この空間における防犯性や作業性が向上するなど有益である。
【0016】
そして、上記した基本的な効果に加えて、本発明によれば、躯体の一部を構成する側部横継材が、躯体に板材を取り付けるための胴縁として利用されたことから、この利用の分、建築物の構成を、より簡単にできる。
【0017】
また、上記側部横継材に剛性のある板材を取り付けて側壁を形成したため、この板材により上記建築物の下部が補強される。よって、前記したように建築物の上部はテント構造とされていて、この建築物の上部に十分な強度と剛性とを確保することは容易ではないが、上記板材による補強により、上記躯体には全体的に所望の強度と剛性とを保持させることができる。
【0018】
請求項2の発明は、上記各門形フレームの側部が、上記一方向に向かう視線で見て、それぞれ左右一対の内、外側部材と、これら内、外側部材を連結する連結材とを備え、建築物の平面視で、上記一方向に傾斜する方向に延び、上記内側部材がわと側部横継材とを連結するステーを設けている。
【0019】
このため、建築物の平面視で、上記側部横継材、内、外側部材、連結材、およびステーの組み合わせにより三角形状の剛性体が形成される。よって、上記のようにステーを設ける、という簡単な構成により、上記躯体の全体的な強度と剛性とを、より向上させることができる。
【0020】
請求項3の発明は、上記一方向に向かって延び、上記各門形フレームの側部の上部同士を連結する連結梁と、この連結梁の下方近傍に配置されて上記膜材の側端縁部を上記各門形フレームがわに連結する連結具とを設け、上記一方向に沿った視線で見て、上記各門形フレームの側部の上部と上記連結梁との各外側面が互いに面一となるようにしている。
【0021】
このため、前記膜材で形成された屋根の外面を全体的に段差なく滑らかに形成でき、よって、建築物の外観上の見栄えが向上すると共に、屋根の外面の水切り性能が向上する。
【0022】
また、上記建築物の組立作業時に、上記各門形フレームの側部の上部の外側面に沿って何らかの物体が昇降するとき、この物体が上記連結梁や連結具に接触や衝突することは、上記連結梁の外側面と面一とされた上記各門形フレームの側部の上部の外側面によって防止される。よって、その分、上記建築物の組立作業がより容易かつ円滑にできる。
【0023】
請求項4の発明は、上記複数本の側部横継材のうち、上部の側部横継材に上記板材の上端部をシール材を介し当接させると共に、上記上部の側部横継材と上記膜材の側端縁部との間の隙間を閉じる閉じ膜材を設けている。
【0024】
このため、上記上部の側部横継材と板材の上端部との間、および上記上部の側部横継材と上記膜材の側端縁部との間の隙間を通り、建築物の外部から内部の空間に雨水、塵埃、および虫などの異物や、騒音などが侵入することは防止される。よって、建築物内部の空間の環境が良好に維持される。
【0025】
請求項5の発明は、上下方向で、上記膜材の側端縁部の近傍に上記上部の側部横継材を位置させている。
【0026】
このため、上記上部の側部横継材と膜材の側端縁部との間の隙間を閉じる上記閉じ膜材の幅寸法を短くできて、この閉じ膜材の取り扱いが容易にできる。よって、建築物の組立作業時における上記閉じ膜材の組み付け作業は高所作業ではあるが、この作業は容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図3の部分拡大詳細図である。
【図2】建築物の斜視展開図である。
【図3】建築物の部分正面図である。
【図4】図1の部分拡大部分断面詳細図である。
【図5】図1のV−V線矢視断面部分破断図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の建築物に関し、水平な一方向に向かって所定間隔で複数立設される門形フレームを備える躯体に膜材を支持させて、この膜材の内部に所定形状の空間を形成するようにした建築物に関し、この建築物を構成簡単に、かつ、軽量に形成できるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0029】
即ち、建築物の躯体が、水平な一方向に向かって所定間隔で複数立設される門形フレームと、上記一方向に向かって延び、上記各門形フレームの左右各側部のうち、少なくとも一方の側部同士を連結する上下方向で複数本の側部横継材とを備える。上記一方向に沿った視線で見て、上記各門形フレームの各上部外面に、上記一方向に向かって延びる膜材が架設されて屋根が形成される。また、上記各門形フレームの側部の外側方がわに上記各側部横継材が配置され、これら各側部横継材に剛性の板材が取り付けられて側壁が形成される。
【実施例】
【0030】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0031】
図において、符号1は建築物で、この建築物1は、地面の一部としてこの地面上に打設されたコンクリート製基礎2上に構築されている。また、矢印Aは、水平な一方向を示し、下記する左右とは、上記一方向Aに向かって、この一方向Aに直交する各側方をいうものとする。
【0032】
上記建築物1の躯体3は、上記一方向Aに向かって所定の等間隔で上記基礎2上に複数立設される互いに同形同大の門形フレーム4と、上記一方向Aに向かって延び、上記各門形フレーム4の上部同士を連結する左右方向で複数本(13本)の屋根部横継材5と、上記一方向Aに向かって延び、上記各門形フレーム4の左右各側部同士をそれぞれ連結するよう上下方向で所定間隔をあけて配置される複数本(8本)の側部横継材6,6´とを備えている。これら側部横継材6,6´のうち、最上部の側部横継材6´以外の側部横継材6は下方に向かって開く断面C型鋼板製とされ,最上部の側部横継材6´は強度と剛性とが大きい角パイプ製とされている。
【0033】
上記一方向Aに沿った視線で見て(図3)、上記各門形フレーム4の各上部はアーチ形状をなし、この上部外面に上記一方向Aに向かって延びる膜材10が架設されて断面半円形状の屋根11が形成されている。この屋根11は、上記各門形フレーム4の各上部および各屋根部横継材5をその上方から覆っている。一方、上記各側部横継材6は、上記各門形フレーム4の各側部の外側方がわに配置されている。そして、上記各側部横継材6に対し、上記躯体3の左右各外側方から剛性の板材12が不図示の締結具により取り付けられて側壁13が形成されている。
【0034】
上記一方向Aを前方としたとき、上記各門形フレーム4のうち、前、後端部の各門形フレーム4には、左右方向に延び、上下方向で所定間隔をあけて配置される複数本(8本)の胴縁15が取り付けられ、これら胴縁15に前記板材12と同構成の他の板材16が取り付けられて前、後壁17が形成されている。
【0035】
上記屋根11、各側壁13、および前、後壁17で囲まれた空間19は、何らかの作業および行動や物の収容などに利用可能とされる。また、上記後壁17には上記空間19への出入口20が形成され、各側壁13や前壁17には、図示しないが、窓や給気口の開口が形成される。上記出入口20、窓、開口を除き、上記建築物1の躯体3、屋根11、側壁13、および前、後壁17は、左右方向の中心線21を基準としてほぼ左右対称形とされる。
【0036】
上記膜材10は、透光性を有するものであって、基材として天然繊維、合成繊維、無機繊維等による織物と、この織物の外面に施される塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、フッ素樹脂などの合成樹脂からなるコーティング材とを備えているが、上記合成樹脂のみからなるシート材であってもよい。
【0037】
一方、上記板材12,16は、厚さが0.5mm程度の板金製の波板製とされている。
【0038】
上記各門形フレーム4は、その左右各側部の下部側を構成しアンカーボルト25により上記基礎2上に立設される左右柱部26,26と、これら左右柱部26,26の各上端部に架設されるアーチ形状の屋根梁部27と、上記各柱部26の上端部に上記屋根梁部27の各側端部をそれぞれ固着する固着具28とを備えている。この場合、上記各門形フレーム4の側部は上記柱部26と、この柱部26に固着具28により固着される上記屋根梁部27の側端部とで構成される。
【0039】
上記各柱部26は、上記一方向Aに向かう視線で見て(図1,3)、左右に少し離れて並設され、鉛直方向に向かって互いに平行に延びる一対の内、外側部材31,32と、これら内、外側部材31,32をトラス構造となるよう連結する上下方向で複数本の斜め連結材33と、左右方向で水平に延びて上記内、外側部材31,32を連結する上下方向で複数本の横向き連結材34とを備えている。
【0040】
上記各柱部26の内、外側部材31,32と斜め連結材33とはいずれも断面円形のパイプ材製とされ、上記斜め連結材33、内側部材31、および外側部材32の順で、径寸法(強度と剛性)が、より大きくされている。上記横向き連結材34はフラットバー製とされている。ここで、前記各側部横継材6は、上記各門形フレーム4の柱部26の外側部材32の外側面に締結具35により取り付けられている。
【0041】
前記各屋根梁部27は、上記一方向Aに向かう視線で見て(図1,3)、互いにほぼ平行に延びる上下一対の内、外側部材38,39と、これら内、外側部材38,39をトラス構造となるよう連結する左右方向で複数本の斜め連結材40と、縦方向に延びて上記内、外側部材38,39を連結する左右方向で複数本の縦向き連結材41とを備えている。上記各屋根梁部27はその長手方向で三分割されて、互いに締結具42により結合されている。
【0042】
上記各屋根梁部27の内、外側部材38,39と斜め連結材40とはいずれも断面円形のパイプ材製とされ、上記斜め連結材40、内側部材38、および外側部材39の順で径寸法(強度と剛性)が、より大きくされている。上記縦向き連結材41はフラットバー製とされている。ここで、前記側部横継材6,6´のうち、最上部の側部横継材6´は、上記各門形フレーム4の屋根梁部27の側端部における外側部材39の外側面に締結具43により取り付けられている。また、前記各屋根部横継材5は、上記各門形フレーム4の屋根梁部27の縦向き連結材41の下部側面に取り付けられている。
【0043】
上記各内側部材31,38同士、各外側部材32,39同士、および各斜め連結材33,40同士はそれぞれ互いに同じ径寸法とされている。上記柱部26の上端部における上記内、外側部材31,32と、上記屋根梁部27の側端部における上記内、外側部材38,39とはそれぞれ互いに同一軸心上に位置するよう突き合されている。
【0044】
前記固着具28は、上記柱部26の上端部における上記内、外側部材31,32同士を連結する連結板46と、上記屋根梁部27の側端部における上記内、外側部材38,39同士を連結する連結板47と、これら両連結板46,47に重ね合わされてこれら連結板46,47同士を締結具48により固着させる固着板49とを備えている。
【0045】
上記躯体3は、建築物1の平面視(図5)で、上記一方向Aに傾斜(45°)する方向に延び、上記柱部26の内側部材31がわである上記横向き連結材34の上記内側部材31がわの端部と側部横継材6とを連結するステー51を備えている。このステー51はアングル材製であって、その各端部が上記横向き連結材34の端部と側部横継材6とにそれぞれ締結具52により結合されている。
【0046】
上記一方向Aに向かって延び、上記各門形フレーム4の左右各側部の上部同士を連結する連結梁56と、この連結梁56の下方近傍に配置されて前記膜材10の側端縁部を上記各門形フレーム4がわに連結する連結具57とが設けられる。具体的には、上記連結梁56と連結具57とは、それぞれ上記各屋根梁部27の側端部における外側部材39に取り付けられている。上記一方向Aに沿った視線で見て(図1,4)、上記各門形フレーム4の各側部の上部と上記連結梁56との各外側面は互いに面一とされ、上記連結具57は上記各門形フレーム4の各側部の上部外側面よりも躯体3の内方がわに配置されている。
【0047】
上記連結具57は、上記一方向Aに向かって延び、上記各門形フレーム4の各側部の上部に架設される連結梁58と、この連結梁58に上記膜材10の側端縁部を連結する連結体59とを備え、この連結体59はロープ、クリップ、フックなどで構成される。
【0048】
上記複数本の側部横継材6,6´のうち、最上部の側部横継材6´の外側面に前記板材12の上端部がスポンジ形状のシール材63を介し当接させられている。また、上記一方向Aに向かって延び、上記上部の側部横継材6´と上記膜材10の側端縁部との間の隙間64を閉じる帯形状の閉じ膜材65が設けられている。この閉じ膜材65は、その幅方向の一端縁部が上記膜材10の側端縁部の外面に溶着や縫着などにより固着され、他端縁部が上記最上部の側部横継材6´の上面に両面テープ66により接着されている。なお、図示しないが、このシール材63や閉じ膜材65に関する構成は、上記建築物1の前、後面部にも適用されている。
【0049】
上記最上部の側部横継材6´の外側方に配置され、この側部横継材6´に沿って上記一方向Aに向かって延びる板金製雨樋69が設けられ、この雨樋69は、上記側部横継材6´に支持されている。上記側部横継材6´、シール材63、隙間64、および閉じ膜材65の上方近傍に配置されて上記一方向Aに向かって延びる帯形状の雨水案内用のガイド膜材70が設けられる。
【0050】
上記ガイド膜材70は、その幅方向の一端縁部が上記膜材10の側端縁部の外面に溶着や縫着などにより固着され、他端縁部が上記雨樋69の内面に両面テープ71により接着されている。上記ガイド膜材70は、その幅方向の一端部側から他端部側に向かうに従い下傾し、前記屋根11の上面から流下してきた雨水を上記雨樋69内に案内する。
【0051】
上記閉じ膜材65とガイド膜材70とは、上記膜材10について前記した材質のいずれかを選択可能であるが、互いに同じ材質としてもよい。
【0052】
なお、図1中二点鎖線で示すように、上記建築物1の内部の空間19を全体的に覆うよう、上記膜材10と各板材12,16の内面に沿って延びる断熱材74を設けてもよく、この場合、この断熱材74は、上記躯体3の内面側に支持される。
【0053】
上記構成によれば、上記一方向Aに沿った視線で見て(図3)、上記各門形フレーム4の各上部外面に、上記一方向Aに向かって延びる膜材10を架設して屋根11を形成し、上記各門形フレーム4の側部の外側方がわに上記各側部横継材6,6´を配置し、これら各側部横継材6,6´に剛性の板材12を取り付けて側壁13を形成している。
【0054】
このため、上記建築物1の上部は、その屋根11に膜材10が用いられてテント構造とされたことから、この建築物1は、仮に、これを全体的に剛性材で形成することに比べ、組立作業がより容易かつ円滑にできる。また、上記側壁13を剛性の板材12とすることにより防犯性を得ると共に、上記膜材10を透光性として、この膜材10を通し建築物1の内部の空間19に太陽光を導入させてやれば、一般のテント構造のものと同様に、上記空間19において太陽光の光や熱を利用できるなど、この空間19の環境を良好なものにでき、もって、この空間19における防犯性や作業性が向上するなど有益である。
【0055】
そして、上記した基本的な効果に加えて上記構成によれば、躯体3の一部を構成する側部横継材6,6´が、上記躯体3に板材12を取り付けるための胴縁として利用されたことから、この利用の分、建築物1の構成を、より簡単にできる。
【0056】
また、上記側部横継材6,6´に剛性のある板材12を取り付けて側壁13を形成したため、この板材12により上記建築物1の下部が補強される。よって、前記したように建築物1の上部はテント構造とされていて、この建築物1の上部に十分な強度と剛性とを確保することは容易ではないが、上記板材12による補強により、上記躯体3には全体的に所望の強度と剛性とを保持させることができる。
【0057】
また、前記したように、各門形フレーム4の側部が、上記一方向Aに向かう視線で見て(図1、3)、それぞれ左右一対の内、外側部材31,32と、これら内、外側部材31,32を連結する連結材33,34とを備え、建築物1の平面視(図5)で、上記一方向Aに傾斜する方向に延び、上記内側部材31がわと側部横継材6とを連結するステー51を設けている。
【0058】
このため、建築物1の平面視(図5)で、上記側部横継材6、内、外側部材31,32、斜め連結材33、横向き連結材34、およびステー51の組み合わせにより三角形状の剛性体が形成される。よって、上記のようにステー51を設ける、という簡単な構成により、上記躯体3の全体的な強度と剛性とを、より向上させることができる。
【0059】
また、前記したように、一方向Aに向かって延び、上記各門形フレーム4の側部の上部同士を連結する連結梁56と、この連結梁56の下方近傍に配置されて上記膜材10の側端縁部を上記各門形フレーム4がわに連結する連結具57とを設け、上記一方向Aに沿った視線で見て(図1,4)、上記各門形フレーム4の側部の上部と上記連結梁56との各外側面が互いに面一となるようにしている。
【0060】
このため、前記膜材10で形成された屋根11の外面を全体的に段差なく滑らかに形成でき、よって、建築物1の外観上の見栄えが向上すると共に、屋根11の外面の水切り性能が向上する。
【0061】
また、上記建築物1の組立作業時に、上記各門形フレーム4の側部の上部の外側面に沿って何らかの物体が昇降するとき、この物体が上記連結梁56や連結具57に接触や衝突することは、上記連結梁56の外側面と面一とされた上記各門形フレーム4の側部の上部の外側面によって防止される。よって、その分、上記建築物1の組立作業がより容易かつ円滑にできる。
【0062】
また、前記したように、複数本の側部横継材6,6´のうち、上部の側部横継材6´に上記板材12の上端部をシール材63を介し当接させると共に、上記上部の側部横継材6´と上記膜材10の側端縁部との間の隙間64を閉じる閉じ膜材65を設けている。
【0063】
このため、上記上部の側部横継材6´と板材12の上端部との間、および上記上部の側部横継材6´と上記膜材10の側端縁部との間の隙間64を通り、建築物1の外部から内部の空間19に雨水、塵埃、および虫などの異物や、騒音などが侵入することは防止される。よって、建築物1内部の空間19の環境が良好に維持される。
【0064】
また、前記したように、上下方向で、上記膜材10の側端縁部の近傍に上記上部の側部横継材6´を位置させている。
【0065】
このため、上記上部の側部横継材6´と膜材10の側端縁部との間の隙間64を閉じる上記閉じ膜材65の幅寸法を短くできて、この閉じ膜材65の取り扱いが容易にできる。よって、建築物1の組立作業時における上記閉じ膜材65の組み付け作業は高所作業ではあるが、この作業は容易にできる。
【0066】
なお、以上は図示の例によるが、上記側部横継材6,6´のうちの最上部の側部横継材6´も他の側部横継材6と同じ構成としてもよい。また、上記各側部横継材6,6´と板材12とは、上記各門形フレーム4の左右各側部のうち、一方の側部がわにのみ設けてもよい。また、上記各側部横継材6,6´のうち、最上部の側部横継材6´にも上記板材12を取り付けてもよい。また、上記シール材63と閉じ膜材65とに関連する側部横継材6,6´は、これら6,6´のうちの上部に位置する側部横継材6のいずれかであれば足り、最上部の側部横継材6´に限定されるものではない。
【0067】
また、上記膜材10は透光性でなくてもよい。また、上記膜材10、閉じ膜材65、およびガイド膜材70が大気側に露出する各外面に対し、それぞれ汚れ防止のための光触媒層を設けてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 建築物
2 基礎
3 躯体
4 門形フレーム
5 屋根部横継材
6 側部横継材
6´ 側部横継材
10 膜材
11 屋根
12 板材
13 側壁
19 空間
26 柱部
27 屋根梁部
28 固着具
31 内側部材
32 外側部材
33 斜め連結材
34 横向き連結材
38 内側部材
39 外側部材
40 斜め連結材
46 連結板
47 連結板
48 締結具
49 固着板
51 ステー
56 連結梁
57 連結具
63 シール材
64 隙間
65 閉じ膜材
69 雨樋
70 ガイド膜材
A 一方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体が、水平な一方向に向かって所定間隔で複数立設される門形フレームと、上記一方向に向かって延び、上記各門形フレームの左右各側部のうち、少なくとも一方の側部同士を連結する上下方向で複数本の側部横継材とを備えた建築物において、
上記一方向に沿った視線で見て、上記各門形フレームの各上部外面に、上記一方向に向かって延びる膜材を架設して屋根を形成し、上記各門形フレームの側部の外側方がわに上記各側部横継材を配置し、これら各側部横継材に剛性の板材を取り付けて側壁を形成したことを特徴とする建築物。
【請求項2】
上記各門形フレームの側部が、上記一方向に向かう視線で見て、それぞれ左右一対の内、外側部材と、これら内、外側部材を連結する連結材とを備え、建築物の平面視で、上記一方向に傾斜する方向に延び、上記内側部材がわと側部横継材とを連結するステーを設けたことを特徴とする請求項1に記載の建築物。
【請求項3】
上記一方向に向かって延び、上記各門形フレームの側部の上部同士を連結する連結梁と、この連結梁の下方近傍に配置されて上記膜材の側端縁部を上記各門形フレームがわに連結する連結具とを設け、上記一方向に沿った視線で見て、上記各門形フレームの側部の上部と上記連結梁との各外側面が互いに面一となるようにしたことを特徴とする請求項1、もしくは2に記載の建築物。
【請求項4】
上記複数本の側部横継材のうち、上部の側部横継材に上記板材の上端部をシール材を介し当接させると共に、上記上部の側部横継材と上記膜材の側端縁部との間の隙間を閉じる閉じ膜材を設けたことを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1つに記載の建築物。
【請求項5】
上下方向で、上記膜材の側端縁部の近傍に上記上部の側部横継材を位置させたことを特徴とする請求項4に記載の建築物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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