説明

建築用ガラスの性能比較実演装置

【課題】 建築用ガラスの一部をカットしたサンプルを用いて実験中の状況を再現し、ユーザーに直接製品の状態及び性能を示して理解を早めることのできる建築用ガラスの性能比較実演装置を提供する。
【解決手段】 正面が開放された中空の箱体11内を複数に区画して同じ容積の小空間14を形成し、同各小空間14の正面開口部に種類の異なる複数の建築用のガラスサンプルA〜Dをそれぞれ取り付けて小空間14を密閉し、各サンプルA〜Dの室外側に同じ条件の光源16をガラスサンプルA〜Dに向けてそれぞれ配置し、各小空間14に温度センサ15をそれぞれ配置し、同各温度センサ15で計測した温度値を表示する温度表示器を箱体11に取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてガラス窓,ガラス戸に用いられる板ガラスの遮熱・断熱等の性能を実演する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築用ガラスの遮熱・断熱等の性能はカタログやパンフレットに写真及び性能値・グラフ等で示され、ユーザーがそれらデータから性能を把握して採用の可否を判断している。ところで、遮熱・断熱等の性能は数値やグラフでは一般にわかりにくく技術者向けであり、十分に伝わりにくい問題があった。
【特許文献1】特開2002−131256号公報
【特許文献2】特開2002−131259号公報
【特許文献3】実用新案登録第3090266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、建築用ガラスの一部をカットしたサンプルを用いて実験中の状況を再現し、ユーザーに直接製品の状態及び性能を示して理解を早めることのできる建築用ガラスの性能比較実演装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 正面が開放された中空の箱体内を複数に区画して同じ容積の小空間を形成し、同各小空間の正面開口部に種類の異なる複数の建築用のガラスサンプルをそれぞれ取り付けて小空間を密閉し、各サンプルの室外側に同じ条件の光源をガラスサンプルに向けてそれぞれ配置し、各小空間に温度センサをそれぞれ配置し、同各温度センサで計測した温度値を表示する温度表示器を箱体に取り付け、光源に対する各ガラスサンプルの遮熱性を実演できるようにした建築用ガラスの性能比較実演装置
2) 正面が開放された中空の箱体内奥部を複数に区画して同じ容積の小空間を形成し、同各小空間の正面開口部に種類の異なる複数の建築用のガラスサンプルをそれぞれ取り付けて小空間を密閉し、各ガラスサンプルの室外側空間に冷気を送り込む冷気供給手段を設け、箱体の正面開口部に冷気を封止するようにガラス板を取り付けて密閉し、各小空間に同じ条件の熱源及び温度センサをそれぞれ配置し、同各温度センサで計測した温度値を表示する温度表示器を箱体に取り付け、冷気に対する各ガラスサンプルの断熱性を実演できるようにした建築用ガラスの性能比較実演装置
3) 正面が開放された中空の箱体内奥部に種類の異なる複数の建築用のガラスサンプルを一面に取り付けて密閉空間を形成し、同密閉空間に常温の気体を送り込む気体供給手段を設け、各ガラスサンプルの室外側空間に冷気を送り込む冷気供給手段を設け、箱体の正面開口部に冷気を封止するようにガラス板を取り付けて密閉し、冷気による前記気体の冷却で各ガラスサンプル表面に生じる結露を実演できるようにした建築用ガラスの性能比較実演装置
4) 建築用のサッシサンプルを常温気体の空間と冷気の空間との間に取り付け、サッシ表面に生じる結露を実演できるようにした前記3)記載の建築用ガラスの性能比較実演装置
5) 冷気供給手段が、箱体内の上部に固形のドライアイスを内装し、同ドライアイスの冷気を下方の空間へ送り込むようにしたものである前記2)〜4)いずれか記載の建築用ガラスの性能比較実演装置
にある。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、実験中の製品の状況を直接ユーザーに見せることで、その製品の状態及び性能をより客観的に理解させることができる。特に写真ではわかりにくい結露の状態などは実際と同様に再現されるから非常にわかり易いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の性能比較実演器具は、建築用ガラスと並行して窓,戸用のサッシのサンプルも取り付けて同時に実演してもよい。サッシにはアルミ,木製,プラスチックを単体又はそれらの組み合わせた種々のものがあり、断面方向に切断した小サンプルを同時に取り付けて各サッシサンプルの断面がわかるようにしてもよい。冷気供給手段としては固形のドライアイスが安価で手軽に用いることができ、ドライアイスを上方に配設してその冷気を下方の空間へ送り込んでおよそ−10℃の冬季の外気温を再現する。以下、本発明の各実施例を図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例1】
【0007】
図1〜5に示す実施例1は、住宅の開口に用いる4種類の板ガラスの夏季における遮断性を実演する性能比較実演装置の例である。図1は実施例1の性能比較実演装置の正面図、図2は図1のA−A断面図、図3は図2のA−A断面図、図4は実施例1に用いる各サンプルの断面図、図5は実施例1の実験データを示すグラフである。
【0008】
実施例1の性能比較実演装置10は、図1〜3に示すように開口部12を有する中空の箱体11内に3枚の仕切板13を等間隔で立設して同じ容積の小空間14を形成し、開口部12の内周及び仕切板13の片辺にサンプルの板端を挿入するガイド12aを形成し、左右両側の各仕切板13の両側面に温度センサ15を空間側へそれぞれ突設し、各小空間14の正面側に同じ条件のスポットランプからなる光源16を空間に向けてそれぞれ配設し、各温度センサ15で検出した温度値をデジタル表示する温度表示器17を箱体11正面の各小空間14の位置にそれぞれ付設している。
【0009】
各小空間14のガイド12aに挿入されるサンプルは図4(a)〜(d)に示している。図4(a)に示すサンプルAは一枚の透明な板ガラスである。図4(b)に示すサンプルBは透明な2枚の板ガラスを所定間隔おいて配置し、板ガラス間の空間に乾燥空気を充填したペアガラスである。図4(c)に示すサンプルCは透明な2枚の板ガラスを所定間隔おいて配置し、板ガラス間の空間にアルゴンガスCaを充填したペアガラスである。図4(d)に示すサンプルDは透明な2枚の板ガラスを所定間隔おいて配置し、板ガラス間の空間を真空にしたペアガラスである。
【0010】
これらの各サンプルA〜Dを各小空間14のガイド12aにそれぞれ挿入して装着するとともに、各光源16をONにして西日を再現する。密閉された各小空間14の空温は時間の経過とともに温度が徐々に上昇していき、各サンプルA〜Dに対応した温度表示器17の数値がリアルタイムで変化する。
【0011】
ここで、各サンプルA〜Dの構成上の違いにより温度に変化が生じる。図5に実施例1で実演した結果をグラフに示しているが、サンプルA,Bは10分後で30℃以上に上昇し、60分後には40℃を超えている。サンプルC,Dは10分後では25℃以下であり、60分後でも30℃以下に抑えられている。このように、サンプル毎の遮熱性能をリアルタイムに変化する数値で直接ユーザーに見せることができ、サンプルに対応する製品の性能の客観的な理解に供することができる。
【実施例2】
【0012】
図6〜9に示す実施例2は、住宅の開口に用いる4種類の板ガラスの冬季における断熱性を実演する性能比較実演装置の例である。図6は実施例2の性能比較実演装置の正面図、図7は図6のA−A断面図、図8は図7のA−A断面図、図9は実施例2の実験データを示すグラフである。
【0013】
実施例2の性能比較実演装置20は、図6〜8に示すように開口部22を有する箱体21内奥部に3枚の仕切板23を等間隔で立設して同じ容積の小空間24を形成し、箱体21の内周及び仕切板23の片辺にサンプルの板端及びガラス22bを挿入するガイド22aを形成し、各小空間24の底面に温度センサ25をそれぞれ突設し、各小空間24の天面に同じ条件のスポットランプからなる熱源26をそれぞれ配設し、開口部22の正面側のガイド22aにガラス22bを挿着して密閉された冷気空間28を形成し、同冷気空間28の上方に固形のドライアイスからなる冷却材29を配置してネット29aを介して冷気が下方へ送り込まれるようにし、各温度センサ25で検出した温度値をデジタル表示する温度表示器27を箱体21正面の各小空間24の位置にそれぞれ付設している。
【0014】
サンプルは実施例1と同じものを用い、各サンプルA〜Dを箱体21の各小空間24のガイド22aにそれぞれ挿入して装着するとともに、各熱源26をONにして室内暖房を再現する。冷気空間28には冷却材29の冷気が充満しておよそ−10℃の外気温が再現される。密閉された各小空間24の空温は冷却材29の冷気により時間の経過とともに温度が徐々に下降していき、温度表示器27の数値がリアルタイムで変化する。
【0015】
ここで、各サンプルA〜Dの構成上の違いにより温度に変化が生じる。図9に実施例2で実演した結果をグラフに示しているが、サンプルB〜Dは10分後で20℃程に上昇し、60分後には25〜30℃に達している。サンプルAは10分後では逆に12℃に下降し、60分後でも15℃程度の回復に抑えられている。このように、サンプル毎の断熱性能をリアルタイムに変化する数値で直接ユーザーに見せることができ、サンプルに対応する製品の性能の客観的な理解に供することができる。
【実施例3】
【0016】
図10〜14に示す実施例3は、住宅の開口に用いるサッシ,板ガラスの結露を実演する性能比較実演装置の例である。図10は実施例3の性能比較実演装置の正面図、図11は図10のA−A断面図、図12は図11のA−A断面図、図13,14は実施例3に用いる各サンプルの断面図である。
【0017】
実施例3の性能比較実演装置30は、図10〜12に示すように箱体31の正面及び背面に形成した開口にガラス32を装着し、箱体31の内面にガイド31aを形成し、同ガイド31aに各サンプルE〜Jを取り付ける基板34aを挿入し、基板34aの隣接位置にはその他のサンプルKをガイド31aに挿入し、対向側のガイド31aには実施例1,2で用いたサンプルA〜Dをそれぞれ挿入し、各サンプルA〜Kで形成された中央の冷気空間38の上部に固形のドライアイスからなる冷却材39を敷設してその冷気をネット39aを介して下方へ送り込むようにし、箱体31の側壁に小空間34に常温の水蒸気を送る蒸気供給装置40の供給チューブ41を接続している。35は各サンプルE〜Jの表面温度を検出する温度センサ、37は温度表示器である。
【0018】
各サンプルE〜Jは図13,14に示している。図13(a)に示すサンプルEはアルミサッシである。図13(b)に示すサンプルFはアルミサッシfの間に熱遮断部材faを介装したアルミ熱遮断構造サッシである。図13(c)に示すサンプルGはアルミサッシgの室内側に合成樹脂製のサッシgaを組み合わせたアルミ樹脂複合サッシである。図14(a)に示すサンプルHはアルミサッシhの室内側に木製のサッシhaを組み合わせたアルミ木複合サッシである。図14(b)に示すサンプルIは木製サッシである。図14(c)に示すサンプルJは樹脂製サッシである。
【0019】
これら各サンプルE〜Jをそれぞれガラス32へ向けて基板34aに取り付け、基板34aの各サンプルE〜J後面を開口し、各サンプルE〜Jの上方にサンプルの断面形状を示すカット片を参考に取り付け、蒸気供給装置40で常温の水蒸気を小空間34に送り込んで所定湿度の室温を再現する。冷気空間38は冷却材39の冷気により冷却されて−10℃程の外気温を再現し、その温度差により各サンプルA〜Kの室内側表面に徐々に結露が生じる(実際にはサンプルの性能差により結露の生じ具合が異なり、生じないものもある。)。このように、各サンプルA〜Kに生じる結露を直接ユーザーに見せることができ、サンプルに対応する製品の性能の客観的な理解に供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の建築用ガラスの性能比較実演装置は、ユーザーが来所するショールーム,展示会等におけるデモンストレーションに使用される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1の性能比較実演装置の正面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】実施例1に用いる各サンプルの断面図である。
【図5】実施例1の実験データを示すグラフである。
【図6】実施例2の性能比較実演装置の正面図である。
【図7】図6のA−A断面図である。
【図8】図7のA−A断面図である。
【図9】実施例2の実験データを示すグラフである。
【図10】実施例3の性能比較実演装置の正面図である。
【図11】図10のA−A断面図である。
【図12】図11のA−A断面図である。
【図13】実施例3に用いる各サンプルの断面図である。
【図14】実施例3に用いる各サンプルの断面図である。
【符号の説明】
【0022】
10 性能比較実演装置
11 箱体
12 開口部
12a ガイド
13 仕切板
14 小空間
15 温度センサ
16 光源
17 温度表示器
20 性能比較実演装置
21 箱体
22 開口部
22a ガイド
22b ガラス
23 仕切板
24 小空間
25 温度センサ
26 熱源
27 温度表示器
28 冷気空間
29 冷却材
29a ネット
30 性能比較実演装置
31 箱体
31a ガイド
32 ガラス
34 小空間
34a 基板
35 温度センサ
37 温度表示器
38 冷気空間
39 冷却材
39a ネット
40 蒸気供給装置
41 供給チューブ
A〜K サンプル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面が開放された中空の箱体内を複数に区画して同じ容積の小空間を形成し、同各小空間の正面開口部に種類の異なる複数の建築用のガラスサンプルをそれぞれ取り付けて小空間を密閉し、各サンプルの室外側に同じ条件の光源をガラスサンプルに向けてそれぞれ配置し、各小空間に温度センサをそれぞれ配置し、同各温度センサで計測した温度値を表示する温度表示器を箱体に取り付け、光源に対する各ガラスサンプルの遮熱性を実演できるようにした建築用ガラスの性能比較実演装置。
【請求項2】
正面が開放された中空の箱体内奥部を複数に区画して同じ容積の小空間を形成し、同各小空間の正面開口部に種類の異なる複数の建築用のガラスサンプルをそれぞれ取り付けて小空間を密閉し、各ガラスサンプルの室外側空間に冷気を送り込む冷気供給手段を設け、箱体の正面開口部に冷気を封止するようにガラス板を取り付けて密閉し、各小空間に同じ条件の熱源及び温度センサをそれぞれ配置し、同各温度センサで計測した温度値を表示する温度表示器を箱体に取り付け、冷気に対する各ガラスサンプルの断熱性を実演できるようにした建築用ガラスの性能比較実演装置。
【請求項3】
正面が開放された中空の箱体内奥部に種類の異なる複数の建築用のガラスサンプルを一面に取り付けて密閉空間を形成し、同密閉空間に常温の気体を送り込む気体供給手段を設け、各ガラスサンプルの室外側空間に冷気を送り込む冷気供給手段を設け、箱体の正面開口部に冷気を封止するようにガラス板を取り付けて密閉し、冷気による前記気体の冷却で各ガラスサンプル表面に生じる結露を実演できるようにした建築用ガラスの性能比較実演装置。
【請求項4】
建築用のサッシサンプルを常温気体の空間と冷気の空間との間に取り付け、サッシ表面に生じる結露を実演できるようにした請求項3記載の建築用ガラスの性能比較実演装置。
【請求項5】
冷気供給手段が、箱体内の上部に固形のドライアイスを内装し、同ドライアイスの冷気を下方の空間へ送り込むようにしたものである請求項2〜4いずれか記載の建築用ガラスの性能比較実演装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−64553(P2006−64553A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−247825(P2004−247825)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(591241110)株式会社渡辺藤吉本店 (2)
【Fターム(参考)】