説明

建築用内装材料及び建築用内装材の製造方法

【課題】
壁紙や断熱材、塗料等から発生するホルムアルデヒドやトルエン等の有害物質が室内空気中に放散されて、発生するシックハウス症候群を解消するために有効な建築用内装材を提供する。
【解決手段】
炭と、石灰と、ファイバーと、の混合を行い、さらに珪藻土と、珪砂と、白顔料と、水溶性セルロースと、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体樹脂を含む混和材と、酸化鉄からなる着色材と、を混合し、建築用内装材料を得る。当該建築用内装材料に水を混合してペースト状とした前記混合粉末体を下地材に塗工し硬化させた後、光触媒物質を表面に塗布することを特徴とする建築用内装材の製造方法によって、前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗り壁やタイル材をはじめとする壁材、天井材、その他の建築用内装材に関する技術であり、特に脱臭及び消臭機能を備えた建築用内装材に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
一般に建築用内装材としては石膏ボードや窯業系サイディング、化粧合板に代表される乾式の壁と、モルタルやプラスター代表される湿式の塗り壁が用いられる。その一例として塗り壁を挙げれば、塗り壁の材料には、塗り壁を硬化させる結合材料と骨材とを基本にして、その性質を改善するための各種の形態の混和材料、塗り壁を建築物の一部として働かせるために必要な下地材料、取付材料、及び補強材料を用いて構築される。その施工方法は、前記結合材料と混和材料に水を加えて練り、壁の下地面に塗り付けた後、乾燥、硬化させることで、塗り壁が構築されるものである。
【0003】
結合材料は硬化して塗装に必要な強度を発揮させるための材料であり、セメント、消石灰、石膏、粘土等の無機系結合材料と、エマルジョン系や溶液系の反応硬化型合成樹脂等の有機系結合材料が用いられている。
【0004】
混和材料には無機混和材料等が用いられ、近年では調湿機能を持たせるため、珪藻土を混合することが提案されている(例えば特許文献1)。珪藻土は吸放湿性に優れた材料であり、室内空間の湿度が高くなると、塗り壁に配合された珪藻土が湿気を吸収することで、室内空間の湿度を下げる。さらに室内空間が乾燥し過ぎると、珪藻土が吸収した水分を放出することで、室内空間の乾燥を抑える。このようにして室内空間の湿度は一定範囲に調整されることになる。
【0005】
さらに壁材や家具などから生じるホルムアルデヒド等から生じるシックハウス症候群が問題になっている今日において、原因物質を吸着分解する物質を用いた壁材の提供は必須になっており、消臭機能が付与された建築用内装材が注目されている。例えば特許文献2には、ホルムアルデヒド捕捉効果を得る目的で、ホルムアルデヒド捕捉剤を含浸した樹脂層の上に絵柄を印刷した壁紙が開示されている。
【0006】
また、木材、竹、繊維くず、和紙などから作製した炭をシート状にしたものをホルムアルデヒド吸着材として使用する例などが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2005−15257
【特許文献2】特開平10−100334号公報
【特許文献3】特開平11−229219号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の方法によるのみでは脱臭機能は得られないし、特許文献2に記載の方法で製造された壁紙では、樹脂層の上に設けられた絵柄印刷層によりホルムアルデヒド捕捉剤の効能が抑制され、ホルムアルデヒドの十分な除去効果が得られないという問題があり、さらに、トルエン、アンモニアなどの他のVOC成分は全く除去できないという欠点を有していた。また、特許文献3に記載の方法によれば、炭には吸着能力の限界があり、いつしかは飽和してしまうという問題点がある。
【0009】
つまり、前記炭や珪藻土はその多孔質部分に有害成分が吸着するため、その多孔質部が飽和すると、さらに有害成分を吸着することができなくなる。そこで、本発明においては、その有害物質を吸着した後に、光触媒物質を用いて分解し、半永久的に消臭能力を維持することのできる建築用内装材を提供するものである。
【0010】
さらに、材料に炭を加えた場合、炭の黒色が影響を与えることによって全体が黒ずんでしまい、淡い色や鮮やかな色を表現するのは困難であったため、色彩が重要である建築用内装材に用いるには不適切であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
下記の手段を採用することにより、前記課題を解決する。
【0012】
(1)粒径が0.10〜0.70mmの炭粉粒物と、酸化カルシウム(CaO)を65.0%以上含む粒径が0.60mm以下の石灰と、二酸化ケイ素(SiO)を80%以上含む粒径が0.005〜0.015mmの珪藻土と、二酸化ケイ素(SiO)を90%以上含む粒径が0.15〜0.25mmの珪砂と、α−セルロースを75.0%以上含有する繊維長が1〜1.5mmのファイバーと、二酸化チタン(TiO)が90%以上含まれる白顔料と、水溶性セルロースと、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体樹脂を80〜90%含む混和材と、から成ることを特徴とする建築用内装材料。
【0013】
(2)酸化鉄が80%以上含有される着色材を含むことを特徴とする(1)記載の建築用内装材料。
【0014】
(3)石灰を45〜60質量部と、炭を15〜25質量部と、珪藻土を4.0〜5.0質量部と、珪砂を7.0〜13質量部と、ファイバーを2.5〜5.0質量部と、白顔料を2.0〜10質量部と、水溶性セルロースを0.1〜1.0質量部と、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体樹脂を含む混和材を0.5〜2.5質量部と、から成ることを特徴とする建築用内装材料。
【0015】
(4)酸化鉄からなる着色材を0.01〜1.0質量部加えたことを特徴とする(3)に記載の建築用内装材料。
【0016】
(5)結合材料と骨材と混和材料とからなる混合粉末体と、水と、が混合されたペースト状の混合材料を下地材に塗り付けて硬化させる建築用内装材の製造方法において、炭と、石灰と、ファイバーと、の混合を行い、さらに珪藻土と、珪砂と、白顔料と、水溶性セルロースと、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体樹脂を含む混和材と、を混合し、混合粉末体を生成した後、さらに水を混合してペースト状とした前記混合粉末体を下地材に塗工し硬化させた後、光触媒物質を表面に塗布することを特徴とする建築用内装材の製造方法。
【0017】
(6)結合材料と骨材と混和材料とからなる混合粉末体と、水と、が混合されたペースト状の混合材料を下地材に塗り付けて硬化させる建築用内装材の製造方法において、炭と、石灰と、ファイバーと、の混合を行い、さらに珪藻土と、珪砂と、白顔料と、水溶性セルロースと、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体樹脂を含む混和材と、酸化鉄からなる着色材と、を混合し、混合粉末体を生成した後、さらに水を混合してペースト状とした前記混合粉末体を下地材に塗工し硬化させた後、光触媒物質を表面に塗布することを特徴とする(5)に記載の建築用内装材の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る建築用内装材を使用することによって、シックハウス症候群の原因物質であるホルムアルデヒド、トルエンやアンモニア等のVOCを炭が吸着し、その吸着した上記悪性成分を二酸化チタンの光触媒作用によって分解することによって、壁材の吸着作用の効果を長続きさせることができ、製品寿命を延ばすことができる。
【0019】
さらに炭を含有した建築用内装材では容易に表現することのできない淡い色彩や鮮やかな色彩を本発明に係る配合によって実施することができる。
【0020】
加えて主原料として木屑の炭を利用していることから、廃材を利用することとなり、近年の循環型社会における望ましい材料の一つとなることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る建築用内装材料1は炭2と、石灰3と、珪藻土4と、珪砂5と、ファイバー6と、白顔料7と、水溶性セルロース8と、混和材9と、着色材10と、からなる混合粉末体である。混合粉末体である建築用内装材料1を水11と混合してペースト状にし、下地材24に塗布して固化させた後に建築用内装材12として用いることができる。
【0022】
本発明の好ましい製造方法について述べる。粒径が0.10〜0.70mmの炭粉粒物を15〜25質量部と、酸化カルシウム(CaO)を65%以上含む粒径が0.60mm以下の石灰を45〜60質量部と、二酸化ケイ素(SiO)を80%以上含む粒径が0.005〜0.015mmの珪藻土を4.0〜5.0質量部と、二酸化ケイ素(SiO)を90%以上含む粒径が0.15〜0.25mmの珪砂を7.0〜13質量部と、α−セルロースを75.0%以上含有する繊維長が1mm〜1.5mmのファイバーを2.5〜5.0質量部と、二酸化チタン(TiO)が90%以上含まれる白顔料2.0〜10質量部と、水溶性セルロースを0.1〜1.0質量部と、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体樹脂を80〜90%含む混和材を0.5〜2.5質量部と、建築用内装材を着色する場合には酸化鉄が80%以上の割合で含有される着色材を0.01〜1.0質量部と、から成る混合粉末体と、水と、が混合されたペースト状の混合材料を下地材に塗り付けて硬化させ、しかる後、固化した前記混合材料の表面に光触媒物質を塗布することが望ましい。
【0023】
各材料について詳述する。まず炭2は、従来から消臭作用があることが知られており、炭の多孔質部分が有害成分を吸着することによって室内等の脱臭を図るものである。本発明に係る塗り壁に十分な吸着能力を持たせるためには、広葉樹からなるものであることが好ましい。さらにその焼成温度は800℃から900℃の高温にて焼成され、その冷却には、水を用いず、自然冷却をさせたものとする。これにより含水率の低い炭(含水率7%)を得ることが出来る。かかる炭の粒度は、0.1mmから0.7mmの範囲に収まることが好ましい。このように微粉砕することによって、石灰等の他の混和材と十分に混練し、建築用内装材の強度の向上を図るためである。また、この粒度の炭を用いることにより、製品の仕上げの段階において、鏝作業をする際、鏝の微細な振動により、ゲル状の材料に粒度分布の適正化現象を起こし、安定した製品の完成に対して寄与することが出来る。
【0024】
石灰3は、結合材として圧縮強度を高めるために用いられるものである。左官用消石灰を使用し、酸化カルシュウム(CaO)65%以上のものを用いる。粒度については、0.6mm残分が全通であるような細かな均一の粉状のものを用いる。また15℃における粘度係数が、7.0以上の材質であることが好ましい。尚、石灰のみならず石膏、ポルトランドセメント、高炉セメントなどのセメント類、漆喰、マグネシウムなどを用いることもでき、これらの複数の材料を組み合わせて使用することもできる。
【0025】
珪藻土4は二酸化ケイ素(SiO2)が85%以上含有するものが好ましい。粒度については、平均粒径0.01mmとすることが望ましい。珪藻土を利用する目的は、炭による有害ガス吸着能力の不足分を補うためである。尚、珪藻土は炭粉と同様、多孔質構造であるので、保温や断熱、調湿、脱臭等の機能を持つ。石膏等の結合材が過剰に存在すると、前記多孔質部分を結合材の粒子で塞いでしまうので、配合が過剰にならないよう、割合を適宜設定できる。
【0026】
珪砂5は二酸化ケイ素(SiO2)が95.7%以上含有するものが好ましい。粒度については、平均粒径0.2mmとする。珪砂を利用する目的は、粒径の大きなものとして粗骨材の効能を果たすべく用いる。すなわち建築用内装材料の強度の増強を期待するものである。
【0027】
ファイバー6はα−セルロースを75%以上含有するものが望ましい。一般性状としてその平均繊維長は1.1ミリとする。この使用により、材料全体のせん断力に対する抵抗値を向上させることが出来る。
【0028】
白顔料7は炭2を配合することのよって材料全体が黒くなるため、材料全体を白化させるために使用する。二酸化チタン(TiO)94.2%の含有率とし、光触媒作用を持たない性質、つまり光に反応しない性質のものを使用する。
【0029】
水溶性セルロース8は下記の化学式によるものを使用する。
【0030】
【化1】

水溶性セルロース8の成分は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)でメトロキシル基の置換度1.4、ヒドロキシプロポキシル基の置換モル数0.2であり、粘度グレードは4000を実現するものを用いることが望ましい。本来のセルロースは、植物由来の繊維質であり、その性質改善能力は優れているといわれてきたが、その水酸基の持つ強い水素結合により親水性がないことから利用できない状態であった。そこで、その水酸基をメトキシル基、ヒドロキシプロポキシル基等で置換することにより生成された水溶性のセルロースを使用することとした。この水溶性セルロース8を加えることにより、ワーカビリティを向上させることが出来る。具体的には、増粘性、保形性、空気連行性、可塑性の向上により、ドライアウト現象、ブリーディング現象の改善をもたらし、均一で緻密な状態を実現することが出来る。
【0031】
混和材9はアクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体樹脂を80〜90%含むものである。本材の目的は、各材料間の結合力を増加させ、収縮亀裂を減少させる効果を持つ。そして、施工時に適度なコンシステンシーを維持し、良好な作業性を確保することにある。
【0032】
着色材10は有害物質を放出しない酸化鉄、特に酸化第二鉄(Fe2)や水酸化鉄(FeO(OH))、四酸化三鉄(Fe)、からなり、それぞれ所定の濃度の酸化鉄を使用することによって様々な色彩を表現することができる。例えば赤の顔料としては酸化第二鉄(Fe2)を用い、黄色の顔料としては水酸化鉄(FeO(OH))を用いる。そして黒の顔料としては水酸化鉄(Fe)を用い、これらの結晶の異なる酸化鉄を用いることによって様々な色を表現することができる。
【0033】
さらに、酸化鉄の濃度も重要であり、80%以上の濃度のものを使用する。例えば98.0%は赤を、86.3%はグリーンを、88.1%は茶色をおのおの現出することが出来る。尚、着色剤10を加えるのは、本発明に係る塗り壁の視覚性を良くするためであって、無論、着色を要しない場合は混合しなくてもよい。また、用いられる色毎に配合量は適宜変更される。
【0034】
次に建築用内装材12を得るまでの工程の概略を説明する。前記建築用内装材料1と水11とを混合してペースト状にし、下地材24に塗布後、乾燥させる。さらに、光触媒物質14を前記建築用内装材料12の表面に塗布することによって、光触媒機能を備えた建築用内装材料を得ることができる。
【0035】
以下に図1乃至3を用いて建築用内装材料1を3.3m製造する工程を説明する。図1は本発明に係る建築用内装材料の製造方法を示すブロック図である。また、図2は本発明の建築用内装材料1を生成する装置を示している。図3は本発明に係る建築用内装材料1の構造を表す。
【0036】
(1)炭粉粒物2と、石灰3と、ファイバー6と、を混合して空練を行なう。空練に用いられるミキサーの回転速度にして185rpm〜195rpm、好ましくは191.2rpmで30〜120秒、最も好ましくは60秒、振動撹拌する。振動撹拌には、攪拌羽根がなく、揺動盤上に可撓自在のゴムボールを取付けた装置で、混練物を加速しランダム方向に揺動させながら短時間で混練を行うことのできる、拡散混練方式のオムニミキサー20が使用できる。本撹拌方法によれば、回転羽を有さないので、比重の異なる脆弱な材料や、比重が極端に軽く飛散しやすい粉粒体をも混合できる。さらに後述する各種添加剤の混合においても、混合物にダメージを与えずに撹拌することができる点でも振動撹拌は有効である。又、混練材料にせん断力を加えないので、混合による温度上昇を抑えることができ、もって物性変化を与えることが少ない。
【0037】
(2)次に前記石灰3と炭粉粒物2の混合粉末物の中に、珪藻土4と、珪砂5と、白顔料7と、水溶性セルロース8と、混和材9と、着色材10と、を前記オムニミキサー20に投入し、混合する。前記ミキサーの回転速度にして115rpm〜125rpm、好ましくは120.3rpmで30〜120秒、最も好ましくは60秒、振動撹拌する。
【0038】
(3)混合された建築用内装材料1はベルトコンベアー21でホッパー22に供給され、袋23に封入され、施工場所へ搬入される。施工場所において、上記混合された建築用内装材料1の体積3.3mに対し、主成分をメチルセルロースとする混和材を35〜40g混入する。メチルセルロースを混合することにより、組成物の粘性を増加させて材料を粘っこくする特性を発揮させる。この混合物に対する加入水量は3.5〜4.5lに設定され、好ましくは3.8〜4.2l加えられる。水を加えるにあたり、前記加入水量の8割にあたる3.2lを前記混合物と混練する。十分混練した後には、下地にあわせて残りの水を加え、よく練り上げ、建築用内装材料1をペースト状とする。
【0039】
下地材24として好ましいのは、合板、石膏ボードやボード用石膏プラスター、下地との接触が良好なビニールクロスなどの壁紙、砂壁や繊維壁等の古壁、中塗り壁を用い、ペースト状の前記建築用内装材料1を、壁面の下地材24の表面に塗工する。またその下処理として、下地材24が石膏ボードの場合はテープやパテにより継ぎ目部やビス打部を補修した後に建築用内装材料1を塗工することができ、ラスボードの場合は石膏プラスターによる下塗りをした後に建築用内装材料1を塗工することができる。また、ビニールクロスの場合は下地の剥がれや継ぎ目等を補修し、吸収調整剤や接着増強剤等を塗布した後に建築用内装材料1を塗工することができる。さらに古壁である場合は吸収調整剤や接着増強剤等を塗布した後に建築用内装材料1を塗工することができる。
【0040】
建築用内装材1の塗工に用いる装置や工具、施工手順は、通常の塗り壁施工等に用いる同様の技術が適用できるが、下地材24の表面に塗工された建築用内装材1は、水との接触によって硬化する石灰の結合作用によって、結合一体化し、所定の厚みを有する壁体となって、建築用内装材12を構成する。通常は、自然養生によって硬化させる。加熱養生も採用できる。
【0041】
建築用内装材1の塗工量は、建築用内装材12の組成配合や施工条件によっても異なるが、通常、乾燥硬化後の建築用内装材12の厚みとして、厚み0.01〜3cmに設定できる。好ましくは、1.0〜2.5mmである。
【0042】
(4)硬化した(3)の壁面に対し、光触媒作用を持つ物質14を、当該壁面に塗布し、光触媒層を形成する。好ましくはフッ化アパタイト被覆二酸化チタンを、当該壁面に塗布する。フッ化アパタイト被覆二酸化チタンを使用するならば、太陽光や蛍光灯だけでなく、発光ダイオードや白熱灯等の弱い光であっても分解が進むため、遮光されていても吸着能力があるからである。さらに、アパタイトが被覆されているため、当該アパタイトの結晶が塗膜に食い込ませることによりチョーキングを抑えることができる。
【0043】
尚、塗布とは表面に光触媒物質を付する行為をいい、刷毛等で塗工する他、スプレー等によって散布することも含む。
【0044】
このように光触媒物質14が塗布されることによって、炭2や珪藻土4が吸着した有害物質を光触媒作用により分解し、炭2の吸着能力を半永久的に持続せしめることができる。
【0045】
尚、本発明に係る建築用内装材の元素定性分析を行なった結果、含まれる元素は、C、Si、Ca、Naであり、重金属等の有害元素は含まれていなかった。
【0046】
次に上記の方法によって製造された建築用内装材としての塗り壁を用いて消臭実験を行なった場合の結果を図4乃至図7に示す。図4はアンモニアの消臭試験結果を、図5はメチルメルカプタンの消臭試験結果を、図6はトルエンの消臭試験結果を、図7はホルムアルデヒドの消臭試験結果を表している。
【0047】
図4は活性炭、備長炭と本発明に係る塗り壁について、アンモニアの消臭能力の試験を行なった結果を示している。この結果より、本塗り壁にアンモニアの吸着能力があることが判明した。
【0048】
図5は活性炭、備長炭と本発明に係る塗り壁について、メチルメルカプタンの消臭能力の試験を行なった結果を示している。この結果より、本発明に係る塗り壁がメチルメルカプタンを最終的にすべて吸着し処理することができることが判明し、高い吸着性を示すことが分かる。
【0049】
図6は活性炭、備長炭と本発明に係る塗り壁について、トルエンの消臭能力の試験を行なった結果を示している。この結果より、備長炭ではトルエンを完全に吸着できなかったが、本発明に係る塗り壁は最終的に活性炭と同様に、完全にトルエンを吸着して処理できることが判明した。
【0050】
図7は活性炭、備長炭と本発明に係る塗り壁について、ホルムアルデヒドの消臭能力の試験を行なった結果を示している。この結果より、本発明に係る塗り壁は急速にホルムアルデヒドを吸着することができることが判明した。また、備長炭よりも高いホルムアルデヒドの吸着能力があり、また活性炭と同程度の吸着能力を示すことが判明した。
【実施例1】
【0051】
次に実際の配合条件の実施例を説明する。赤色の建築用内装材を得るための配合条件は表1の通りである。つまり、粒径が0.10〜0.70mmの炭粉粒物を1000gと、酸化カルシウム(CaO)を72%程度含む粒径が0.60mm以下の石灰を2000gと、二酸化ケイ素(SiO)を85%程度含む平均粒径が0.01mmの珪藻土を200gと、二酸化ケイ素(SiO)を95%程度含む平均粒径が0.2mmの珪砂を500g部と、α−セルロースを75.0%以上含有する平均繊維長が1.1mmのファイバーを133gと、二酸化チタン(TiO)が94%程度含まれる白顔料100gと、水溶性セルロースを20gと、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体樹脂を80〜90%含む混和材を60gと、酸化鉄が98.0%程度の割合で含有される着色材を20gと、から成る建築用内装材料を得、水を混合してペースト状の混合材料を下地材に塗り付けて硬化させ、しかる後、固化した前記混合材料の表面に光触媒物質を塗布すると、赤の建築用内装材を得ることができる。
【0052】
【表1】

【実施例2】
【0053】
緑色の建築用内装材を得るための配合条件は表2の通りである。つまり、粒径が0.10〜0.70mmの炭粉粒物を1000gと、酸化カルシウム(CaO)を72%程度含む粒径が0.60mm以下の石灰を2000gと、二酸化ケイ素(SiO)を85%程度含む平均粒径が0.01mmの珪藻土を200gと、二酸化ケイ素(SiO)を95%程度含む平均粒径が0.2mmの珪砂を500g部と、α−セルロースを75.0%以上含有する平均繊維長が1.1mmのファイバーを133gと、二酸化チタン(TiO)が94%程度含まれる白顔料100gと、水溶性セルロースを20gと、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体樹脂を80〜90%含む混和材を60gと、酸化鉄が86.3%程度の割合で含有される着色材を42gと、から成る建築用内装材料を得、水を混合してペースト状の混合材料を下地材に塗り付けて硬化させ、しかる後、固化した前記混合材料の表面に光触媒物質を塗布すると、緑色の建築用内装材を得ることができる。
【0054】
【表2】

【実施例3】
【0055】
茶色の建築用内装材を得るための配合条件は表3の通りである。つまり、粒径が0.10〜0.70mmの炭粉粒物を1000gと、酸化カルシウム(CaO)を72%程度含む粒径が0.60mm以下の石灰を2000gと、二酸化ケイ素(SiO)を85%程度含む平均粒径が0.01mmの珪藻土を200gと、二酸化ケイ素(SiO)を95%程度含む平均粒径が0.2mmの珪砂を500g部と、α−セルロースを75.0%以上含有する平均繊維長が1.1mmのファイバーを133gと、二酸化チタン(TiO)が94%程度含まれる白顔料100gと、水溶性セルロースを20gと、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体樹脂を80〜90%含む混和材を60gと、酸化鉄が88.1%程度の割合で含有される着色材を20gと、から成る建築用内装材料を得、水を混合してペースト状の混合材料を下地材に塗り付けて硬化させ、しかる後、固化した前記混合材料の表面に光触媒物質を塗布すると、茶色の建築用内装材を得ることができる。
【0056】
【表3】

【実施例4】
【0057】
グレーの建築用内装材を得るための配合条件は表4の通りである。つまり、粒径が0.10〜0.70mmの炭粉粒物を1000gと、酸化カルシウム(CaO)を72%程度含む粒径が0.60mm以下の石灰を2000gと、二酸化ケイ素(SiO)を85%程度含む平均粒径が0.01mmの珪藻土を200gと、二酸化ケイ素(SiO)を95%程度含む平均粒径が0.2mmの珪砂を500g部と、α−セルロースを75.0%以上含有する平均繊維長が1.1mmのファイバーを133gと、二酸化チタン(TiO)が94%程度含まれる白顔料100gと、水溶性セルロースを20gと、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体樹脂を80〜90%含む混和材を60gと、から成る建築用内装材料を得、水を混合してペースト状の混合材料を下地材に塗り付けて硬化させ、しかる後、固化した前記混合材料の表面に光触媒物質を塗布すると、グレーの建築用内装材を得ることができる。つまり実施例1乃至3で述べた配合は本実施例を基本とするものである。
【0058】
【表4】

【実施例5】
【0059】
薄い赤の建築用内装材を得るための配合条件は表5の通りである。つまり、粒径が0.10〜0.70mmの炭粉粒物を720gと、酸化カルシウム(CaO)を72%程度含む粒径が0.60mm以下の石灰を2300gと、二酸化ケイ素(SiO)を85%程度含む平均粒径が0.01mmの珪藻土を170gと、二酸化ケイ素(SiO)を95%程度含む平均粒径が0.2mmの珪砂を300g部と、α−セルロースを75.0%以上含有する平均繊維長が1.1mmのファイバーを133gと、二酸化チタン(TiO)が94%程度含まれる白顔料400gと、水溶性セルロースを20gと、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体樹脂を80〜90%含む混和材を60gと、酸化鉄が98.0%程度の割合で含有される着色材を6gと、から成る建築用内装材料を得、水を混合してペースト状の混合材料を下地材に塗り付けて硬化させ、しかる後、固化した前記混合材料の表面に光触媒物質を塗布すると、薄い赤の建築用内装材を得ることができる。
【0060】
【表5】

【実施例6】
【0061】
薄い緑の建築用内装材を得るための配合条件は表6の通りである。つまり、粒径が0.10〜0.70mmの炭粉粒物を720gと、酸化カルシウム(CaO)を72%程度含む粒径が0.60mm以下の石灰を2300gと、二酸化ケイ素(SiO)を85%程度含む平均粒径が0.01mmの珪藻土を170gと、二酸化ケイ素(SiO)を95%程度含む平均粒径が0.2mmの珪砂を300g部と、α−セルロースを75.0%以上含有する平均繊維長が1.1mmのファイバーを133gと、二酸化チタン(TiO)が94%程度含まれる白顔料400gと、水溶性セルロースを20gと、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体樹脂を80〜90%含む混和材を60gと、酸化鉄が86.3%程度の割合で含有される着色材を17gと、から成る建築用内装材料を得、水を混合してペースト状の混合材料を下地材に塗り付けて硬化させ、しかる後、固化した前記混合材料の表面に光触媒物質を塗布すると、薄い緑の建築用内装材を得ることができる。
【0062】
【表6】

【実施例7】
【0063】
薄い茶色の建築用内装材を得るための配合条件は表7の通りである。つまり、粒径が0.10〜0.70mmの炭粉粒物を720gと、酸化カルシウム(CaO)を72%程度含む粒径が0.60mm以下の石灰を2300gと、二酸化ケイ素(SiO)を85%程度含む平均粒径が0.01mmの珪藻土を170gと、二酸化ケイ素(SiO)を95%程度含む平均粒径が0.2mmの珪砂を300g部と、α−セルロースを75.0%以上含有する平均繊維長が1.1mmのファイバーを133gと、二酸化チタン(TiO)が94%程度含まれる白顔料400gと、水溶性セルロースを20gと、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体樹脂を80〜90%含む混和材を60gと、酸化鉄が88.1%程度の割合で含有される着色材を15gと、から成る建築用内装材料を得、水を混合してペースト状の混合材料を下地材に塗り付けて硬化させ、しかる後、固化した前記混合材料の表面に光触媒物質を塗布すると、薄い茶色の建築用内装材を得ることができる。
【0064】
【表7】

【実施例8】
【0065】
薄いグレーの建築用内装材を得るための配合条件は表8の通りである。つまり、粒径が0.10〜0.70mmの炭粉粒物を720gと、酸化カルシウム(CaO)を72%程度含む粒径が0.60mm以下の石灰を2300gと、二酸化ケイ素(SiO)を85%程度含む平均粒径が0.01mmの珪藻土を170gと、二酸化ケイ素(SiO)を95%程度含む平均粒径が0.2mmの珪砂を300g部と、α−セルロースを75.0%以上含有する平均繊維長が1.1mmのファイバーを133gと、二酸化チタン(TiO)が94%程度含まれる白顔料400gと、水溶性セルロースを20gと、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体樹脂を80〜90%含む混和材を60gと、から成る建築用内装材料を得、水を混合してペースト状の混合材料を下地材に塗り付けて硬化させ、しかる後、固化した前記混合材料の表面に光触媒物質を塗布すると、薄いグレーの建築用内装材を得ることができる。つまり実施例5乃至7で述べた配合は本実施例を基本とするものである。
【0066】
【表8】

【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係る建築用内装材の製造方法のブロック図
【図2】本発明の建築用内装材料を生成する装置
【図3】実施形態を表す建築用内装材の施工状態を示す断面図
【図4】アンモニアの消臭能力の試験結果
【図5】メチルメルカプタンの消臭試験結果
【図6】トルエンの消臭試験結果
【図7】ホルムアルデヒドの消臭試験結果
【符号の説明】
【0068】
1 建築用内装材料
2 炭
3 石膏
4 珪藻土
5 珪砂
6 ファイバー
7 白顔料
8 水溶性セルロース
9 混和材
10 着色材
12 建築用内装材
14 光触媒物質
24 下地材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒径が0.10〜0.70mmの炭粉粒物と、酸化カルシウム(CaO)を65.0%以上含む粒径が0.60mm以下の石灰と、二酸化ケイ素(SiO)を80%以上含む粒径が0.005〜0.015mmの珪藻土と、二酸化ケイ素(SiO)を90%以上含む粒径が0.15〜0.25mmの珪砂と、α−セルロースを75.0%以上含有する繊維長が1〜1.5mmのファイバーと、二酸化チタン(TiO)が90%以上含まれる白顔料と、水溶性セルロースと、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体樹脂を80〜90%含む混和材と、から成ることを特徴とする建築用内装材料。
【請求項2】
酸化鉄が80%以上含有される着色材を含むことを特徴とする請求項1記載の建築用内装材料。
【請求項3】
石灰を45〜60質量部と、炭を15〜25質量部と、珪藻土を4.0〜5.0質量部と、珪砂を7.0〜13質量部と、ファイバーを2.5〜5.0質量部と、白顔料を2.0〜10質量部と、水溶性セルロースを0.1〜1.0質量部と、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体樹脂を含む混和材を0.5〜2.5質量部と、から成ることを特徴とする建築用内装材料。
【請求項4】
酸化鉄からなる着色材を0.01〜1.0質量部加えたことを特徴とする請求項3に記載の建築用内装材料。
【請求項5】
結合材料と骨材と混和材料とからなる混合粉末体と、水と、が混合されたペースト状の混合材料を下地材に塗り付けて硬化させる建築用内装材の製造方法において、
炭と、石灰と、ファイバーと、の混合を行い、さらに珪藻土と、珪砂と、白顔料と、水溶性セルロースと、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体樹脂を含む混和材と、を混合し、混合粉末体を生成した後、さらに水を混合してペースト状とした前記混合粉末体を下地材に塗工し硬化させた後、光触媒物質を表面に塗布することを特徴とする建築用内装材の製造方法。
【請求項6】
結合材料と骨材と混和材料とからなる混合粉末体と、水と、が混合されたペースト状の混合材料を下地材に塗り付けて硬化させる建築用内装材の製造方法において、
炭と、石灰と、ファイバーと、の混合を行い、さらに珪藻土と、珪砂と、白顔料と、水溶性セルロースと、アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル共重合体樹脂を含む混和材と、酸化鉄からなる着色材と、を混合し、混合粉末体を生成した後、さらに水を混合してペースト状とした前記混合粉末体を下地材に塗工し硬化させた後、光触媒物質を表面に塗布することを特徴とする請求項5に記載の建築用内装材の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−291692(P2006−291692A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−252070(P2005−252070)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(503244479)藤岡生コン株式会社 (2)