説明

建築部材の被検査板内側の充填材に生ずる空隙厚さの算出方法、並びにこの算定方法の実行に適したコンピュータプログラム及び検査装置

【課題】被検査板の裏側の硬化物に生ずる空隙の厚さを、被検査板の外側に熱中性子線子カウント装置を設置して得られる計数率比から算定する方法を提案する。
【解決手段】型枠に注入する充填材の水分量(W)を測定し、水分量から、構造体の内部状態を中性子線で探知できる検知厚さ(D)を、関数式を用いて算定する過程と、充填材を同じ含水量で空隙を生じないように型枠に注入してなる試験体を用いて、空隙のない状態で速中性子線を照射したときに試験体の外へ放出される熱中性子線のカウント量(NO)を求める過程と、構造体の被検査板の任意の場所に試験体と同量の速中性子線を照射したときに構造体の外へ放出される熱中性子線のカウント量(N)を求める過程と、(N/NO)を求め、これから空隙比率(T)を求める過程と、この空隙比率に検知厚さを乗じて空隙の厚さ(D)を求める過程とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築部材の被検査板内側の充填材に生ずる空隙厚さの算出方法、特に鋼板コンクリート構造体の鋼板内側又はベースプレート下部に生ずる空隙厚さの算出方法、並びにこの算定方法の実行に適したコンピュータプログラム及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造体の品質管理においては、コンクリートを打設する際に型枠にコンクリートが十分に充填されているか否かが重要である。一般のコンクリート構造体は型枠を外した段階でコンクリート表面の欠陥を目視により確認することが可能であるが、例えば図13に示すような鋼板コンクリート構造体(外面の少なくとも一部が鋼板で覆われた構造体)では鋼板裏の欠陥を目視で確認することができずに製品不良を看過するおそれがある。
【0003】
こうした不都合を回避するために、鋼板コンクリート構造体の一部では、鋼板に孔を空けてコンクリート等が流出することを目で見て確認する方法が行なわれている。しかし、削孔作業の手間を伴なうため確認箇所を多く取ることが出来ないという問題がある。
【0004】
また、コンクリートと空気を判別できる振動センサー(特許文献1)や静電容量を測定するセンサー(特許文献2)を内部に設置する方法があるが、設置箇所でのみ充填状態の検出が可能となり、任意箇所での測定ができない問題がある。
【0005】
これに対して、任意箇所での測定を目的として、超音波を発信しコンクリートで反射されたパルスを探触子で受信することで空隙を測定する方法(特許文献3)がある。しかしながら、鋼板境界面での反射波の影響や、打設中にコンクリート内部へ挿入する振動機の影響が大きい問題がある。
【0006】
一方、速中性子線(高エネルギー)を鋼板内部へ放射し、コンクリート中の水素原子と衝突して戻ってくる熱中性子(低エネルギー)を検知管で検知し、熱中性子量の変化に基づいて未充填部分を判別する方法(特許文献4)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2008−008707
【特許文献2】特開2004−077454
【特許文献3】特願2004−053376
【特許文献4】特開2002−221503
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献4の装置は、鋼板を透過する中性子を利用して鋼板の内側の水分の分布状況を検出することができるため、水分を含むコンクリートと水の存在しない空隙とを区別することが可能である。この方法では、鋼板の所要範囲に亘って検査を行い、特定の箇所で熱中性子線のカウント量が局部的にかつ明確に少なければ、当該箇所では周囲に比べて水分量が少ない、すなわち空隙が存在すると判定することができる。しかしながら、熱中性子線の減少量が少ない場合には空隙の存否の判定は簡単ではない。何故なら測定箇所のコンクリートの含水量によっても測定値が多少変化するからである。また鋼板の広い範囲に亘って熱中性子線のカウント量がほぼ一定である場合に、その範囲全部にコンクリートが十分に充填されているのか、或いはその範囲全部に空隙ができているのか区別しにくい。未充填部分を実質的に判別するためには、充填箇所で戻る熱中性子線の基準値が必要である。ところが特許文献4の装置自体は、一般に散乱型と呼ばれる中性子水分計と同じであり、そうした基準値を決定する機能を有しない。
【0009】
以上の考察では未充填部分(空隙)の有無だけを問題としていたが、空隙厚さ(鋼板内面から面と直交する方向に空隙が及ぶ距離)がどの程度かも大切である。コンクリート構造体では、安全のためにコンクリートの厚さを所要値に対してある程度の余裕(一般には5mm程度)をもって大きく設定することがある。そうした場合に、その余裕を空隙厚さが超えるのか否かが問題である。
【0010】
出願人らはこの問題に鋭意取り組み、測定対象とする材料の水分量(水素量)の減少に従って検知厚さが大きくなるという影響と、空隙厚さの増大によって計数率比が減少する影響とに着眼した。これらの影響を考慮して、鋼板とコンクリート等が密着した状態で測定した熱中性子計数率比を基準とした比率で整理することにより、測定対象とする材料の水分量にかかわらず一義的に求めることができるからである。
【0011】
本発明の第1の目的は、被検査板の内側の充填材に生ずる空隙厚さの算出方法であって、被検査板の外側に熱中性子線カウント装置を設置して得られる計数率比から空隙厚さを算定するものを提案することである。
【0012】
本発明の第2の目的は、上記算定方法であって硬化性充填材の物性のうち水分量(水素量)に着目して検知厚さを導き出し、空隙厚さを算定するものを提案することである。
【0013】
本発明の第3の目的は、上記方法のうち演算処理を中心とする部分をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラムを提案することである。
【0014】
本発明の第4の目的は、上記方法を効率的に実行することに適した検査装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の手段は、
枠板を兼ねる被検査板を含む型枠内にコンクリートなどの硬化性充填材を注入し、この充填材と被検査板とが合体して構造体を構築する工法に関して、被検査板の外側から速中性子線を照射し、反射する熱中性子線を解析することで被検査板の内面と充填材との間に生じ得る空隙厚さを算出する方法であって、
上記型枠に注入しようとする充填材の水分量(W)を測定して、この水分量から、構造体の内部の状態を中性子線で探知できる範囲である検知厚さ(D)を算定する第1の過程と、
上記構造体と同じ充填材を同じ含水量で空隙を生じないように型枠に注入してなる被検査板付きの標準体を用いて、空隙のない状態で一定量の速中性子線を照射したときに標準体の外へ放出される熱中性子線のカウント量(No)を求める第2の過程と、
構造体について被検査板の任意の場所に標準体と同量の速中性子線を照射したときに構造体の外へ放出される熱中性子線のカウント量(N)を求める第3の過程と、
標準体の熱中性子線のカウント量に対して構造体の熱中性子線のカウント量の比(N/No)を求める第4の過程と、
熱中性子線のカウント量の比(N/NO)から空隙比率(T)を求める第5の過程と、
この空隙比率(T)に検知厚さ(D)を乗じて空隙厚さ(D)を求める第6の過程とからなり、
第1の過程において、充填材中の水分量と検知厚さとの関係を表わす関数式又は関数式と同等の換算表を用いることを特徴としている。
【0016】
本手段では、充填材中の水分量から検知厚さを求めて、空隙厚さの算定に利用することを提案している。検知厚さに、その厚さ範囲のうち水分が存在しない部分の割合(空隙比率)を乗ずれば空隙厚さが求まるからである。検知厚さが水分量に依存する理由は、中性子線の照射箇所において水分量が少ないほど速中性子線が水素原子に邪魔されることなく遠方に到達する可能性が高いからであると推測される。しかしこうした推測だけでは、具体的にどう空隙厚さを算定すればよいのかという方法には結びつかない。出願人は、コンクリート・ペースト・モルタル・水に関して水分量と検知厚さとの関係を同じ関数式で表すことができることを実験的に確認した(図11参照)。この実験結果は、充填材の特性のうちから、水分量(より厳密には水素原子の量)だけに着目して検知厚さを算定することの可能性を示している。本発明は、こうした実験的知見に基づいて空隙厚さの算定を極めて容易に可能とする方法を提案するものである。検知厚さの算定には、本方法の実施者本人或いは他人が作成した関数式又は換算表を用いればよい。第2の過程から第6の過程の具体的手順、例えば(N/No)の導き方については発明の詳細な説明で述べる。
【0017】
本明細書において「充填材」とは、型枠内に充填できる程度の流動性があり、その後の化学変化により硬化して一定の形に整形される素材であって、一定量の水素原子(水分)を含むものをいう。本発明では、水素原子に速中性子線が衝突して熱中性子線が放射されるという現象を利用しているからである。そして充填材とは、具体的には、水硬性材料、特にコンクリートやモルタルなどのセメント系充填材を含み、かつエポキシ樹脂・ポリプロピレン樹脂などを含む。何故ならば、エポキシ樹脂等も機械系の装置において鋼板(ベースプレート等)内側に充填する場合がある。またポリプロピレン樹脂は水素を多く含んでおり、エポキシ樹脂においても水素の含有量が多いため、本発明の装置による空隙厚さ推定を実施することができる。「充填材に生ずる空隙」という用語は、充填材が硬化した後の段階での空隙と、充填材が硬化する前の段階での空隙との双方を含むものとする。
また、「被検査板」は、鋼板の如く型板としての強度を有し、中性子線を透過する性質を有する板材をいう。必ずしも鋼板に限定される訳ではないが、例えば木材のように測定位置ごとに水分の含有量が大きく変わる素材には適用しにくい。
【0018】
「検知厚さ」とは、被検知体の表面から被検知体内の水分を検知することが可能な距離をいう。充填材の試料の厚さを変えて戻ってくる熱中性子線をカウントしたときに、厚さが或る程度以上となるとカウント量が一定になる(図10参照)。その理由は、熱中性子線は材料中の水分に衝突してさまざまな方向に跳ね返るので、表面から衝突点までの厚さが大となるほど検出管に戻る割合が少なくなるためであると考えられる。このときの奥行が検知厚さである。
【0019】
「標準体」とは、空隙の存在しない正常な状態で充填材が硬化してなる構造体である。例えば実験室内で空隙を生じないように振動などを加えて作製した試験体などが該当する。
【0020】
「換算表」とは水分量と検知厚さとの関係を決定することができる表であり、関数式を導出する基となるデータをプロットしたグラフや、関数式の計算の結果をまとめた数表などを含む。
【0021】
「熱中性子線のカウント量を求める」とは、熱中性子線の量そのものを測定する場合と、熱中性子計数率比(放射した速中性子線に対する熱中性子線の割合)を測定する場合との何れも含む。
【0022】
第2の手段は、第1の手段を有し、かつ
第1の過程の関数式として次式を用いることを特徴としている。
[数式1]D=a×W−a(但し、a、aは定数)
【0023】
本手段では、上記関数式を用いて水分量(W)から検知厚さ(D)を一義的に決定することを提案している。数式中の定数は実験的に決定すればよい。
【0024】
第3の手段は、第2の手段を有し、かつ
第5の過程において、熱中性子線のカウント量の比(N/NO)から空隙比率(T)を表わす次式を用いることを特徴としている。
[数式2]P=exp[−b×T] (但しP=N/NO:bは定数)
【0025】
第4の手段は、第3の手段の建築部材の被検査板内側の充填材に生ずる空隙厚さの算出方法に適したコンピュータプログラムであって、
既述数式1を用いて、充填材の水分量(W)の入力値から中性子線の検知厚さ(D)を算定するステップと、
空隙が存在しない状態での熱中性子線のカウント量(NO)と空隙が存在する状態での熱中性子線のカウント量(N)の入力値からこれら熱中性子線のカウント量の比(N/NO)を求めるステップと、
既述数式2を用いて、熱中性子線のカウント量の比(N/NO)から空隙比率(T)を求めるステップと、
この空隙比率(T)に検知厚さ(D)を乗じて空隙厚さ(D)を求めるステップと、
この空隙厚さ(D)を出力手段へ出力させるステップと、
をそれぞれコンピュータに実行させることを特徴としている。
【0026】
本手段は、先の空隙厚さ算定方法のうち演算手順だけを取り出してプログラムとしてまとめたものである。先の手段で述べたことは本手段に援用する。
【0027】
第5の手段は、第4の手段を有し、かつ
空隙比率(T)を求めるステップにおいて、
入力手段を経由して被検査板の厚さ(d)の入力値を受け取るサブステップと、
コンピュータの記憶部から次の数式3及び数式4のデータをそれぞれ取り出すサブステップと、
この数式4に上記dを代入して定数bに代わる変数(b)を算出するサブステップと、
この(b)を数式3に代入して数式3を完成させるサブステップと、
完成した数式3を用いて(T)を算出するサブステップとからなる。
[数式3]P=exp[−b×T
[数式4]b=α×d−β (但し、α、βは定数)
【0028】
本手段では、被検査板の厚さに応じて関数式を補正することを提案している。鋼板などの被検査板は中性子線を透過させるので、基本的に中性子線の強さを大きく左右しない。しかしながら被検査板の厚さが大きいほど、中性子線源からコンクリートまでの距離が大きくなるから、戻ってくる熱中性子線の量も少なくなる(図5参照)。本手段では、その点を考慮するようにしている。
【0029】
第6の手段は、第2の手段又は第3の手段の空隙厚さの算定方法の実行に使用するための検査装置であり、
速中性子線源及び被検査板から放出される熱中性子線をカウントする検出部を有するハンディ式のセンサー手段と、
このセンサー手段に接続された本体と電源とを具備し、
この本体は、空隙厚さの計算に必要な数式1などのデータを記憶する記憶部と、必要なデータや指令を入力する入力部と、この記憶部から取り出した数式を用いて空隙厚さを計算する演算部と、空隙厚さの計算値を出力する出力部とを有することを特徴とする。
【0030】
本手段では、上記空隙厚さの算定方法の実行に適した検査装置を提案している。この装置の特徴は、センサー手段をハンディ式としたこと、及びこのセンサー手段と本体とを無線または有線で接続したことである。
【発明の効果】
【0031】
第1の手段に係る発明によれば次の効果を奏する。
○水分量から構造体の内部の状態を中性子線で探知できる範囲である検知厚さを、熱中性子線のカウント量から検知厚さの範囲内での空隙比率をそれぞれ求めるから、空隙厚さを求めることができ、補修の要否を適切に判定できる。
○充填材が硬化する前でも適用できるから、充填材を攪拌するなどして構造体の完成時点での質を高めることができる。
【0032】
第2の手段に係る発明によれば、充填材の水分量から検知厚さを求める手段として関数式を用いたから、その演算をコンピュータに実行させるのに好適であり、検査を効率的に行うことができる。
【0033】
第3の手段に係る発明によれば、熱中性子線のカウント量の比から空隙比率を求める手段として関数式を用いたから、その演算をコンピュータに実行させるのに好適であり、検査を効率的に行うことができる。
【0034】
第4の手段に係る発明によれば、空隙厚さの検出方法をプログラム化したから、このプログラムを読み込んだコンピュータに、現場毎のコンクリートの固有の情報を入力することで、適確に空隙厚さを検査することができる。
【0035】
第5の手段に係る発明によれば、被検査板の厚さに応じて関数式の補正をするから、算出精度が高まる。
【0036】
第6の手段に係る発明によれば、次の効果を奏する。
○センサー手段と本体とを接続したから、リアルタイムで検知結果が判る。
○センサー手段をハンディ式としたから、このセンサー手段を被検査板に沿って移動することで一定以上の厚さを有する空隙が存する範囲を容易に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の空隙厚さの算出方法に使用する検査装置の構成例である。
【図2】同方法の手順を示すフローチャートである。
【図3】同方法の一の行程に使用する検知厚さと水分量との関係を表すグラフである。
【図4】同方法の他の一の行程に使用するカウント比と空隙比率との関係を表すグラフである。
【図5】図4の関係が鋼板の厚さに依存する様子を示すグラフである。
【図6】図5に示す鋼板の厚さ依存性を補正するために使用する式を表すグラフである。
【図7】実験に用いた試験装置の斜視図である。
【図8】図7の試験装置の使用状態の一部断面図である。
【図9】図7の試験装置の鋼板と被検体との間に多孔体を設置した状態の説明図である。
【図10】被検体の厚さとカウント数との関係を示すグラフである。
【図11】水分量に対応した検知厚さの関係を示すグラフである。
【図12】カウント比に対応した空隙比率の関係を示すグラフである。
【図13】本発明方法の一つの適用対象の斜視図である。
【図14】本発明方法の他の一つの適用対象の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下図面に従って本発明の空隙厚さ測定方法、この方法の実施に適したプログラム、及びこの方法の実施に適した検査装置について説明する。
【0039】
説明の都合上、本発明方法が適用される対象であるコンクリート構造体について説明する。図13は、本発明方法の適用対象の一つである鋼板コンクリート構造体を、コンクリートの一部を切り欠いて示している。この鋼板コンクリート構造体は、平行な2枚の鋼板(被検査板)PLの間にコンクリートCをはさんだ構造物である。2つの鋼板PLはタイバーTにより連結されており、さらに各鋼板PLの内面からコンクリートC内部へスタッドSが突入している。図14は、他の適用対象である免震装置の基礎構造体である。この基礎体は、コンクリートCの内部に埋め込まれた金属製の台板(被検査板)PLを有し、この台板の下面からスタッドSがコンクリート内に突入している。これらの例はそれぞれ好適な一例である。
【0040】
検査装置2は、センサー手段4と、本体6と、電源18とからなる。
【0041】
センサー手段4は、中性子線源4aと中性子線の検出部(検出菅)4bとを有する。センサー手段4の前面には中性子線源4aの放射面と、検出部4bの受面とが形成されている。検出部4bは熱中性子線により生じた電圧の変化を本体に伝える。センサー手段4は手で持てる程度の大きさのハンディタイプとするとよい。
【0042】
本体6は、検出部4bで検出された電圧の変動回数等から熱中性子線のカウント量を計算するカウンタ部8と、カウントされた熱中性子線のカウント量から空隙厚さを計算する演算部10と、計算に必要な関数式などを記憶する記憶部12と、必要なデータや指令を入力するための入力部14と、計算結果などを出力するための出力部16とからなる。演算部10は、空隙厚さの測定値と、予め入力された空隙厚さの許容値とを比較して前者が後者を超えたときに作業員に出力部16を通じて警告を発するようにしてもよい。出力部16は計算結果を数値で出力するだけでなく、警告音を発するようにしてもよい。上記本体6はコンピュータ及びコンピュータ用ディスプレイとして構成することができる。
【0043】
電源18は、センサー手段4に電力を供給している。
【0044】
なお、好適な変形例として、作業員がセンサー手段を操作しながら結果が判るように、上記本体6自体も携帯可能なものとしてもよい。さまざまな分野で使用されているような、マイクロコンピュータ及び入出力用のディスプレイを備えた、作業員の首に掛けるためのストラップ付きの機器としても構わない。
【0045】
この検査装置を使用するときには、センサー手段4の前面を例えば図13の鋼板コンクリート構造体の被検査板(鋼板)PLの表面に位置させ、表面に沿って移動させていけばよい。好適な実施例として、チョークなどの筆記具を用いて、被検査面を、一度に測定できる大きさに区画し、各区画ごとに検査をすると、被検査板の全てを確実に測定することができる。それにより、被検査板面のうちの特定箇所のみを取り出して検査する従来の技術(例えば穿孔法)に比べて検査の信頼度が向上する。センサー手段4で検出した結果は直ちに本体6に送られ、リアルタイムで空隙厚さを計算する。一つの区画で空隙が検出されないか、あるいは厚さが許容値以下であるときには、そのまま次の区画に移る。許容値を超える空隙を発見したときには、当該区画に印などを付けて次の区画に移る。このようにすることで、補修を必要とする範囲がどの程度であるかが容易に判る。単に中性子水分計を空隙の検出装置に転用しただけの従来技術に比べて、補修が必要か否かを迷う必要がなく、さらに補修が必要な範囲に応じて適当な措置を選ぶことができる。
【0046】
なお、本発明の装置では、コンクリートが硬化する前の段階でも空隙の存在及び厚さの程度を知ることができる。何故ならば、硬化中でも硬化後でも、水分量から検知厚さを導き出し、空隙厚さを算出するという本発明のアイディアは同じように適用できるからである。これを確認するために、出願人は、水分量の異なるさまざまな充填材を使って実験を行った(表3及び図10参照)。充填材は未硬化の段階であれば外部から振動を与えたり、攪拌手段でコンクリートを攪拌などして空隙を解消することができるので、低コストでコンクリート不良を改善することができる。
【0047】
次に本発明の空隙厚さの算出方法に関して説明する。本発明のアイディアにおいて重要な事柄の一つは、算出方法に使用する関数式などを導き出すことである。しかしながら、これらの関数式を導き出すことを、空隙厚さの算定を行う作業員が行う必要はない。本方法の発明者が導き出した関数式を記憶した装置を利用することが実用上好適である。そこで、本明細書では、上記アイディアを実現するためのプロセスのうち算定者が行うべき手順(図2参照)を本発明に不可欠の段階とし、関数式を導くための手順を予備的手順とし、本発明の方法を実行するために必要な関数式を導く行程を、予備的段階としている。この予備的段階を図3〜図5を用いて説明する。
【0048】
図3は、y軸に検知厚さ(Ds)を、またx軸に充填材の水分量(単位容積あたりの水量)Wを表している。これらの量はy=a×x−bの形で表わされる(数式1)。後述の実験により図3のようなデータを採り、これを既知の方法(最小2乗法)などで解析して関数式を決定する。実験で使用した試料に関しては、a=2772.5(m/kg)及びb=0.4569(無次元量)という数値が得られている。こうした関数式に代えて、これと同等の機能をする換算表(三角関数における三角関数表のようなもの)としてまとめてもよい。
【0049】
図4は、y軸にカウント比(P)を、x軸に空隙比率(T)をとっている。この量はy=exp(−bx)のような形で表わされる(数式2)。図4は、図3に示すカウント比と空隙比率との関係が鋼板の厚さ(d)によってどのように依存するかを表したものである。鋼板の厚さ(d)が小さくなるにつれてカウント比と空隙比率との関係式y=exp(−bx)におけるbが増大することが判る。後述の実験では、b=0.0296(無次元量)という数値が得られている。図5は、y軸に定数bを、x軸に鋼板厚さ(d)をとったグラフであり、厚さdに対する定数bに対する依存性を示している。この式は、y=α×x−β(数式4)となる。但しα、βは定数である。各式の定数を実験的に決定し、それぞれ検査装置2の記憶部に記憶しておく。
【0050】
次に本発明の空隙厚さの算出方法の必須手順を図2に基づいて説明する。
【0051】
第1に、鋼板の内部に充填しようとするコンクリートやモルタルなどの充填材の水分量(単位容積あたりの水量)Wを事前に測定する。測定した水分量により、水分量と検知厚さの関係をあらかじめ設定した式(D=a×W−a)を用いて、検知厚さを算定する。例えば図3の場合には水分量が250kg/mであれば検知厚さは200mmとなる。
【0052】
第2に、試験体(標準体)としての被検査板付きの型枠に充填材を充填し、熱中性子計数率比(P0=NO/Nstd)を測定する。なお、硬化する前の充填材について測定した水分量は、硬化期間中又はその後の材料の水分量として用いることが可能である。図13及び図14に示す本発明の適用対象では、コンクリートが露出していないため、硬化期間中に水分が蒸発することが殆どないからである。
【0053】
実際に鋼板の内部にコンクリート等を充填してなる試験体を用いて、空隙のない状態とした部分(空隙厚さゼロcm)の部分の熱中性子計数率比Pを計算する。試験体は、少なくとも被検査板の一部で空隙のない状態を確実に実現したものとする。空隙のない状態を確実に実現することができるのであれば、試験専用のモデルではなく、実際に工事に使用するもの(実物)を援用しても構わない。試験専用モデルを使うのであれば、被検査板の材質・厚さ・充填材の組成などは実物と同じであって、被検査体の内側に空隙を作らないための処置(振動を加えるなど)を講ずるのに適した大きさとすればよい。熱中性子計数率比は、速中性子線源のもつ測定時点での速中性子線放出量(Nstd)に対する、測定した熱中性子量(NO)を示す無次元量である。
【0054】
第3に、実際に建造物の一部として用いる構造体(実物)の被検査板表面の任意の箇所において、熱中性子計数率比(Pp=N/Nstd)を測定する。
【0055】
第4に、空隙厚さゼロcmの部分の熱中性子計数率比に対する、任意測定箇所の熱中性子計数率比の比率を計算する。P=Pp/P0=(N/Nstd)/(NO/Nstd)=N/NO。なお、Pを求めるには、空隙厚さゼロcmの部分の熱中性子量(NO)と任意測定箇所の熱中性子量(N)を測定してもよい。
【0056】
第5に、求めたPにより、空隙比率とカウント比の関係をあらかじめ設定した指数関数式P=exp[−b×T]から、空隙比率(T)を求める。例えば図4の場合には、カウント比が0.8であるから空隙比率は8%である。
【0057】
なお、前述の通り、空隙比率とカウント比の関係を示す指数関数の感度は、鋼板厚さが大きいほど低下する関係があり、使用する鋼板厚さをあらかじめ定めて設定しておくことにより、指数関数の補正を行なうことができる。
第6に、第5の行程で得られた空隙比率に第1の行程で求めた検知厚さを乗じると、空隙厚さが算出できる。例えば、空隙厚さDs=200mm×8%=16mmの如くである。
【0058】
次に、この空隙厚さの算出方法を発明するために出願人が行った基礎実験について説明する。
【0059】
第1の実験は、被検体中の水分量と検知厚さとの関係を調べることを目的とする。実験の方法は、図7に示す如く脚付きの長方形の枠の上に鋼板(被検査板)PLを交換可能にのせてなるテーブル31を用意し、その鋼板の上に、被検体30を入れた容器32を載置した。鋼板は750mm×700mmの長方形であり、厚さは6mmとする。容器は、塩化ビニール製の上面開口の箱型容器である。この容器の内寸は、650mm(縦)×650mm(横)×450mm(深さ)とする。塩化ビニール製の箱型容器は、底部において鋼板(被検査板)PLと接合させ、内側の四周をシールして目止めした。図8に示すように検査装置2のセンサー手段4を、鋼板PLの下側に上向きに設置する。この実験手段の構成により、任意の厚さの被検体に対する熱中性子線のカウント量を観測することができる。
【0060】
実験条件は次の通りである。被検体としては、充填材としてペースト、モルタル及びコンクリート、そして比較例として水の4種類を用いた。そして被検体の厚さを0〜200mmまでは20mm間隔で、また200〜300mmまでは50mm間隔で変えていった(表1参照)。但し、被検体の種類毎にカウント量が一定値に収束した後には適宜実験を打ち切った。収束以降の範囲ではその被検体の厚さが検知厚さを超えており、変化が期待できないからである。
【表1】

【0061】
また表2に材料の明細を記載する。同表中のセメントと水を混合したものが上述のペーストであり、またセメントと水と細骨材と混和剤を混合したものが上述のモルタルであり、またセメントと、水と、粗骨材、細骨材、及び混和剤を混合したものが上述のコンクリートである。
【表2】

【0062】
さらに上記各材料の調合を表3に示す。この表の質量調合の水の欄によれば、各被検体の水分量は、水→ペースト→モルタル→コンクリートの順序で小となることに留意すべきである。
【表3】

【0063】
実験結果を図10に示す。材料の種類によらず、被検体の厚さを増加させていくと、熱中性子線のカウント量はまず増加し、そして材料毎のある厚さ(検知厚さ)を超えると、一定のカウント量に収束するという傾向がある。そしてその検知厚さは、水で12cm、ペーストで16cm、モルタルで20cm、コンクリートで25cmである。これより、単位容積当りの水分量が大きくなるほど検知厚さが短くなるという傾向が、全ての材料を通じて観察される。その理由は、単位容積当りの水分量が大きいほど単位長当りで速中性子線が水分に衝突する回数が増加し、材料の表面から深い場所に到達する粒子の割合が少なくなると推察される。速中性子線が衝突して減衰される粒子は原子量の小さい水素原子であるので、上記の傾向は今回実験を行った3種類の材料に限らず、広く一般的な素材に成立するものと解釈すると考えられる。従って図3のグラフに示す水分量と検知厚さとの関係が一般的に成り立つと解釈することが合理的である。
【0064】
図11は、y軸に水分量(W)を、かつx軸に検知厚さ(Ds)をとり、各材料に関する表3の水分量と細骨材及び粗骨材中の水分量とを合算して、総水分量(W)と図10の検知厚さ(Ds)との関係をまとめてグラフとしたものである。このグラフから2つの変数を最小2乗法を用いて関数化すると、y=2772.5×x−0.4569となる。ここで決定係数はR=0.9918であり、良い相関性が得られていることが判る。なお、同図は、水分量と検知厚さとの関係を示しているが、水素原子の量と検知厚さとの関係についても同じ傾向が現れるものと推測される。
【0065】
第2の実験は、人工的に空隙を作り、空隙を作った場合の、空隙がない場合に対するカウント比と、空隙比率との相関性を調べることを目的とする。
【0066】
そのために図9に示すように、図7及び図8の実験装置の鋼板(6mm)と被検体30との間に所定の厚さの空隙形成用の多孔体(発泡スチロール)33を介在させる。多孔体は、その容量の殆どを空気が占めており、かつ水分を殆ど含まないために空隙と等価とみなすことができる。多孔体33を設けた点を除いて実験装置は、第1の実験のものと同じであり、また被検体の調合・組成も第1の実験のものと同じとする。
【0067】
実験方法としては、水・ペースト・モルタル・コンクリートの4種類のそれぞれに関して空隙厚さを0mm、5mm、15mm、20mm、40mmとしてそれぞれ熱中性子係数率比P及びPpを計算する。そして空隙厚さが5mm、15mm、20mm、40mmのそれぞれの熱中性子係数率比Ppと、空隙が無い場合の熱中性子係数率比Pとの比Pを計算してプロットしたものを図12に描いた。このグラフを最小2乗法により関数化すると、y=exp(−0.0296x)となる。決定係数はR=0.9883となり、これも良い相関性が得られている。
【0068】
次に本発明の空隙厚さの算定方法に適したコンピュータプログラムについて説明する。このコンピュータ・プログラムは上記算定方法のうちの手順を抽出して整理したものであり、算定方法に関する事項のうちプログラムに適用可能な事項は本実施形態に援用する。このプログラムは、少なくとも既述数式1〜4などの情報を含んでおり、検査装置2の本体に搭載するコンピュータにダウンロードされることで、それらの情報も本体6の記憶部12に記憶されるものとする。そしてこのプログラムは、コンピュータに次のステップを起こさせることを内容とする。
【0069】
(1)充填材の水分量Wの入力値から中性子線の検知厚さ(D)を算定するステップ。この演算を実行するに先立ち、記憶部12から演算部10へ数式1を取り出すようにプログラムするものとする。また計算した検知厚さは、例えば一時的に記憶することができるメモリーに書き込むようにプログラムするとよい。
【0070】
(2)空隙が存在しない状態での熱中性子線のカウント量(NO)と空隙が存在する状態での熱中性子線のカウント量(N)の入力値からこれら熱中性子線のカウント量の比(N/NO)を求めるステップ。前述の通り空隙が存在する状態での熱中性子線のカウント量(N)は、工事現場のコンクリート打ち込み現場で測定するものであるのに対して、コンクリート空隙が存在しない状態での熱中性子線のカウント量(NO)は、予備的な実験で得られる数値である。そこでコンクリート空隙が存しない状態での熱中性子線のカウント量は、プログラムの作成者が実験を行って、予め数式1〜4などとともに記憶部12しておくとよい。そして空隙が存在する状態での熱中性子線のカウント量が入力部14を経て入力があったときに、演算部が記憶部12からコンクリート空隙が存在しない状態での熱中性子線のカウント量を取り出し、演算(割り算)を実行するようにプログラムするとよい。
【0071】
(3)既述数式2を用いて、熱中性子線のカウント量の比(N/NO)から空隙比率(T)を求めるステップ。最低限の行程としては、さきに求めたカウント量の比P=(N/NO)を、数式2であるP=exp[−b×T]に代入するようにすればよいが、図4から判るように空隙比率は鋼板の厚さへの依存が大きい。従って鋼板厚さに応じた補正を行うことが望ましい。補正を行う際には、利用者に対して補正を行うか否かコンピュータに確認させるようにプログラムすることもできる。この補正は、コンピュータに次のサブステップを実行させることにより行う。第1のサブステップは、入力手段を経由して鋼板(被検査板)の厚さ(d)の入力値を受け取ることである。第2のサブステップは、コンピュータの記憶部12から数式3(P=exp[−b×T])及び数式4(b=α×d−β)のデータをそれぞれ取り出すことである。第3のサブステップは、この数式4に上記dを代入して(b)を算出することである。第4のサブステップは、この(b)を数式3に代入して数式3を完成させることである。第5のステップは、完成した数式3を用いて(T)を算出することである。
【0072】
(4)この空隙比率(T)に検知厚さ(D)を乗じて空隙厚さ(D)を求めるステップ。検知厚さは上記のメモリーから取り出せばよい。
【0073】
(5)この空隙厚さ(D)を出力手段へ出力させるステップ。
以上、本発明の空隙厚さの算出方法、この方法の実施に適した検査装置、及びコンピュータプログラムに関して実施の形態を説明したが、これらは好適な一つの実施形態に過ぎないものである。例えば本発明の方法が適用される充填材としてはコンクリート・ペースト・モルタルの3例、被検査板としては鋼板の例しか挙げていないが、これらは本発明の分野における代表例として挙げたに過ぎない。本発明の特徴の一つは、中性子線の性質に鑑み、充填材の水分量と検知厚さとの間の因果関係に着目して空隙厚さの算出方法を実用化したことにある。こうした発明の性質に反しない限り、本願明細書に実質的に開示されたいかなる実施の態様も本発明の技術的範囲に包含されるものである。
【符号の説明】
【0074】
2…検査装置 4…センサー手段 4a…中性子線源 4b…検出部
6…本体 8…カウンタ部 10…演算部 12…記憶部 14…入力部
16…出力部 18…電源
30…被検体 31…テーブル 32…容器 33…多孔体
C…コンクリート PL…被検査板 T…タイバー S…スタッド
…空隙厚さ D…検知厚さ T…空隙比率
I…免震装置 d…被検査板の厚さ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠板を兼ねる被検査板を含む型枠内にコンクリートなどの硬化性充填材を注入し、この充填材と被検査板とが合体して構造体を構築する工法に関して、被検査板の外側から速中性子線を照射し、反射する熱中性子線を解析することで被検査板の内面と充填材との間に生じ得る空隙厚さを算出する方法であって、
上記型枠に注入しようとする充填材の水分量(W)を測定して、この水分量から、構造体の内部の状態を中性子線で探知できる範囲である検知厚さ(D)を算定する第1の過程と、
上記構造体と同じ充填材を同じ含水量で空隙を生じないように型枠に注入してなる被検査板付きの標準体を用いて、空隙のない状態で一定量の速中性子線を照射したときに標準体の外へ放出される熱中性子線のカウント量(NO)を求める第2の過程と、
構造体について被検査板の任意の場所に標準体と同量の速中性子線を照射したときに構造体の外へ放出される熱中性子線のカウント量(N)を求める第3の過程と、
標準体の熱中性子線のカウント量に対して構造体の熱中性子線のカウント量の比(N/NO)を求める第4の過程と、
熱中性子線のカウント量の比(N/NO)から空隙比率(T)を求める第5の過程と、
この空隙比率(T)に検知厚さ(D)を乗じて空隙厚さ(D)を求める第6の過程とからなり、
第1の過程において、充填材中の水分量と検知厚さとの関係を表わす関数式又は関数式と同等の換算表を用いることを特徴とする、建築部材の被検査板内側の充填材に生ずる空隙厚さの算出方法。
【請求項2】
第1の過程の関数式として次式を用いることを特徴とする請求項1記載の建築部材の被検査板内側の充填材に生ずる空隙厚さの算出方法。
[数式1]D=a×W−a(但し、a、aは定数)
【請求項3】
第5の過程において、熱中性子線のカウント量の比(N/NO)から空隙比率(T)を表わす次式を用いることを特徴とする、請求項2記載の建築部材の被検査板内側の充填材に生ずる空隙厚さの算出方法。
[数式2]P=exp[−b×T] (但しP=N/NO:bは定数)
【請求項4】
請求項3の建築部材の被検査板内側の充填材に生ずる空隙厚さの算出方法に適したコンピュータプログラムであって、
既述数式1を用いて、充填材の水分量Wの入力値から中性子線の検知厚さ(D)を算定するステップと、
空隙が存在しない状態での熱中性子線のカウント量(NO)と空隙が存在する状態での熱中性子線のカウント量(N)の入力値からこれら熱中性子線のカウント量の比(N/NO)を求めるステップと、
既述数式2を用いて、熱中性子線のカウント量の比(N/NO)から空隙比率(T)を求めるステップと、
この空隙比率(T)に検知厚さ(D)を乗じて空隙厚さ(D)を求めるステップと、
この空隙厚さ(D)を出力手段へ出力させるステップと、
をそれぞれコンピュータに実行させることを特徴とする、コンピュータプログラム。
【請求項5】
空隙比率(T)を求めるステップにおいて、
入力手段を経由して被検査板の厚さ(d)の入力値を受け取るサブステップと、
コンピュータの記憶部から次の数式3及び数式4のデータをそれぞれ取り出すサブステップと、
この数式4に上記dを代入して(b)を算出するサブステップと、
この(b)を数式3に代入して数式3を完成させるサブステップと、
完成した数式3を用いて(T)を算出するサブステップとからなる、請求項4に記載のコンピュータプログラム。
[数式3]P=exp[−b×T
[数式4]b=α×d−β (但し、α、βは定数)
【請求項6】
請求項2又は請求項3の空隙厚さの算定方法の実行に使用するための検査装置であり、
速中性子線源及び被検査板から放出される熱中性子線をカウントする検出部を有するハンディ式のセンサー手段と、
このセンサー手段に接続された本体と電源とを具備し、
この本体は、空隙厚さの計算に必要な数式1などのデータを記憶する記憶部と、必要なデータや指令を入力する入力部と、この記憶部から取り出した数式を用いて空隙厚さを計算する演算部と、空隙厚さの計算値を出力する出力部とを有することを特徴とする、空隙厚さの検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−21944(P2011−21944A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165878(P2009−165878)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【Fターム(参考)】