説明

建築部材取付用ビス及び建築部材の取付構造

【課題】モルタル壁の表面に建築部材を配置し、建築部材の表面から建築部材とモルタル壁とを貫通して建築部材を躯体に固定するための建築部材取付用ビスならびにこれを用いた建築部材の取付構造であって、予め下穴を設ける必要がなくて施工の手間を軽減することができ、しかもねじ込みやすい建築部材取付用ビス並びにこれを用いた建築部材の施工構造を提供する。
【解決手段】建築部材取付用ビスAは、頭部5と、ねじ部1を有する軸部2と、軸部2の先端に設けたドリル部3とを有し、頭部5とねじ部1の間には建築部材とは螺合しないねじ無し部7が形成されていて、ねじ部1の外径W1よりも大きな穴を建築部材のみに形成するためのリーマ片4をドリル部3に突設し、リーマ片4はモルタル壁に当たって切除されるように形成されていて、ドリル部3は先端に向かって先細となっていて、ドリル部先端は丸く形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築部材を取り付けるための建築部材取付用ビス並びに建築部材の取付構造に関するものであり、特に、モルタル壁の改修に好適に使用することができるものであって、新たに取り付ける外壁材の下地に使用される胴縁等の建築部材をモルタル壁の外側に配置し、モルタル壁を貫通して建築部材を建物の躯体に固定する際に好適に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
従来より、モルタル壁の改修において、新たに取り付ける外壁材の下地として使用される胴縁等の建築部材をモルタル壁の外側に配置し、モルタル壁を貫通して建物の躯体にコーススレッド等の固定具で該建築部材を固定する方法が知られている。
【0003】
上記従来の方法では、図4、図5に示すような一般的に流通しているコーススレッドBを固定具として使用することが一般的に行われている。コーススレッドBはねじ山16が高く、ねじピッチも粗いため、相手材に深く食い込み保持力が高いという特徴がある。しかしながら、コーススレッドBは軸部の先端までねじ部1が形成されていて、さらにねじ部先端1dに形成されるねじ部の先端角1eが鋭角となっているので、木質材料のような柔らかい材料からなる建築部材13にはねじ部先端1dは容易にねじ込まれて行くものの、モルタルのような硬くて脆い材料からなるモルタル壁12には、図6に示すように、ねじ部先端1dが建築部材13を貫通してモルタル壁12の表面に到達した時点で、ねじ部先端1dがモルタル壁12にくい込まれて、ねじ山16がモルタル壁12を穿孔してねじ込まれていくことは困難であった。一方、モルタル壁が柔らかく形成されている場合にあっては、ねじ部先端1dがモルタル壁12にくい込んで、ねじ山16がモルタル壁12にねじ込まれることが出来ることもあるが、モルタル壁12は建築部材13よりも硬くて脆いので、躯体10にコーススレッドBが過剰にねじ込まれることにより建築部材13がモルタル壁12から浮き上がるというトラブルが発生しやすかった。
【0004】
そこで、従来から図7(a)から図7(b)に示すように、コーススレッドBをねじ込む前に、コーススレッドBのねじ無し部の直径W3よりも細い外径のドリルで、前もって建築部材13とモルタル壁12とモルタル下地11に下穴14を形成した後に(図7(a)参照)、モルタル壁12の裏側に存在する躯体10にコーススレッドBをねじ込むことによって、建築部材13をモルタル壁12の表面に固定する方法が行われている。しかしながら、上記方法では、コーススレッドBをねじ込む前に下穴14を形成しなければならず2度手間となっており、さらに、建築部材13とモルタル壁12に形成した下穴14の位置を合わせながら、コーススレッドBをねじ込まなければならないので、手間がかかり施工性が悪かった。
【0005】
さらに、コーススレッドBと躯体10との保持力を落とさないためには、下穴14を形成するためのドリルが躯体10の表面に到達する前に、下穴14の形成を止めなければならないが(図7(a)参照)、モルタル壁の厚さL2やモルタル下地の厚さL3の記録が残されていることは少なく、作業者の感覚に頼って下穴14が躯体10の表面に到達しないようにする必要があり、作業性が悪かった。
【0006】
しかも、コーススレッドBの特徴として、ねじ山16が高くねじピッチも粗いため、相手材に深く食い込み保持力が高い。そのためコーススレッドBのねじ山16が建築部材13とモルタル壁12さらにモルタル下地11に形成された下穴14を通る際に、コーススレッドBが建築部材13とモルタル壁12とモルタル下地11にねじ込まれながら躯体10に到達することになり、コーススレッドBと建築部材13やモルタル壁12やモルタル下地11との摩擦が大きくなり、ねじ込みにくいという問題があった。
【0007】
ところで、下穴を設けなくても壁面の表面に出隅役物などの建材を確実容易に取り付ける建材用ビス及び建材の留付方法(例えば特許文献1参照)や、予め下穴を設ける必要がなくて施工の手間を軽減でき、しかもねじ込みやすい建築部材取付用ビス及び建築部材の取付構造(例えば特許文献2参照)が提案されている。しかしながら、これらの先行技術によれば、下穴を開けることなく出隅役物や建築部材を外壁材や金属パネルに固定できるものの、新たに取り付ける外壁材の下地に使用される胴縁等の建築部材をモルタル壁の外側に配置し、モルタル壁を貫通して建築部材を建物の躯体に固定するというモルタル壁の改修に適用することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−306978号公報
【特許文献2】特開2008−032133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、モルタル壁の表面に建築部材を配置し、建築部材の表面から建築部材を貫通するように建築部材を躯体に固定するための建築部材取付用ビスならびにこれを用いた建築部材の取付構造であって、予め下穴を設ける必要がなくて施工の手間を軽減することができ、しかもねじ込みやすい建築部材取付用ビス並びにこれを用いた建築部材の施工構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る建築部材取付用ビスは、モルタル壁を貫通して建築部材を躯体に固定するための建築部材取付用ビスであって、頭部と、ねじ部を有する軸部と、前記軸部の先端に設けたドリル部とを有し、前記頭部と前記ねじ部の間には建築部材とは螺合しないねじ無し部が形成されていて、ねじ部の外径よりも大きな穴を建築部材のみに形成するためのリーマ片を前記ドリル部に突設し、前記リーマ片はモルタル壁に当たって切除されるように形成されていて、前記ドリル部は先端に向かって先細となっていて、前記ドリル部の先端が丸く形成されていることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項2に係る建築部材取付用ビスは、請求項1に加えて、ドリル部の先端角が鋭角であることを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項3に係る建築部材取付用ビスは、請求項1又は2に加えて、モルタル壁と建築部材の厚み寸法に応じて、ねじ無し部と頭部の長さを設定してなることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項4に係る建築部材取付用ビスは、請求項1から3に加えて、ドリル部がモルタル壁を貫通した後にねじ部が躯体に導入されるように、前記ねじ部と前記ドリル部の長さを設定してなることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項5に係る建築部材の取付構造は、モルタル壁の表面に建築部材を配置し、建築部材の表面から建築部材とモルタル壁とを貫通するように建築部材取付用ビスをねじ込んで建築部材を躯体に固定する建築部材の取付構造であって、建築部材取付用ビスは、頭部とねじ部を有する軸部と前記軸部の先端に設けたドリル部とを有し、前記ドリル部は先端に向かって先細で前記ドリル部の先端は丸く形成されていて、前記頭部と前記ねじ部の間には前記建築部材とは螺合しないねじ無し部が形成されていて、前記ねじ部の外径よりも大きな穴を前記建築部材のみに形成するためのリーマ片が前記ドリル部に突設されていて、前記建築部材を貫通した後に前記リーマ片が前記モルタル壁に当たって切除されて、前記リーマ片が切除されたドリル部によって前記モルタル壁を貫通し、前記ねじ部は前記建築部材とは螺合せずに前記躯体に螺合してなることを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項6に係る建築部材の取付構造は、請求項5に加えて、ドリル部の先端角が鋭角であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1に係るビスでは、軸部の先端に設けたドリル部が先端にむかって先細になっていて、さらにドリル部先端は丸く形成されているので、ドリル部先端が建築部材、モルタル壁、モルタル下地さらに躯体を穿孔しながらねじ込むことができる。したがって、予め下穴を建築部材とモルタル壁とモルタル下地とに設ける必要が無い。しかも、ドリル部に突設されたリーマ片によりねじ部の外径よりも大きなリーマ穴を建築部材のみに形成した後に、リーマ片がモルタル壁の表面に当たってリーマ片がドリル部より切除されるので、ねじ部とねじ無し部は建築部材に形成されたリーマ穴と接触することがない、したがって、ドリル部がモルタル壁、モルタル下地、躯体を穿孔してねじ込まれて行く時も建築部材がモルタル壁の表面から浮き上がることがなく、施工にかかる手間を低減させる。
【0017】
本発明の請求項2に係る建築部材取付用ビスでは、特に、木質からなる建築部材、硬くて脆いモルタル壁、木質からなる躯体のように、柔らかい材質と硬い材質が交互に配置された壁において、ドリル部先端が建築部材、モルタル壁、モルタル下地さらに躯体を穿孔しながら容易にねじ込まれる。
【0018】
本発明の請求項3に係る建築部材取付用ビスでは、躯体にねじ込まれた後、必要以上にねじ込み続ける必要性がない。
【0019】
本発明の請求項4に係る建築部材取付用ビスでは、ねじ部が建築部材とモルタル壁に螺合せずに躯体に螺合する。
【0020】
本発明の請求項5に係る建築部材の取付構造では、建築部材取付用ビスの全長が長いにも拘わらずドリル部の先端が建築部材に入り込む時にぐらつくことが無い。さらにドリル部の先端がモルタル壁に入り込む時点で、ドリル部の先端がモルタル壁にくい込まずに空回りすることも発生しない。したがって軸部の先端に設けたドリル部で建築部材とモルタル壁と躯体を穿孔しながらねじ込むことができ、予め下穴を建築部材とモルタル壁と躯体に設ける必要が無くなり、施工にかかる手間を軽減することができる。しかも、リーマ片がモルタル壁にあたることにより切除されるので、リーマ片が建築部材に形成したリーマ穴にねじ部を通過させることによって、ねじ部と建築部材との摩擦を小さくすることができ、ねじ込みやすくなる。さらにねじ部が躯体にねじ込まれる段階で建築部材が浮き上がることも発生しない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の建築部材取付用ビスを示す正面図。
【図2】図1のドリル部の拡大図であって、(a)は正面図、(b)はビスの先端から見たP−P断面図、(c)は図(b)のリーマ片が除去された後の状態を示す図。
【図3】本発明の建築部材用取付ビスによる建築部材の取付構造の実施の形態の一例を示す断面図。(a)ドリル部の先端が建築部材を穿孔し始めた状態を示す図。(b)リーマ片が建築部材を穿孔する状態を示す図。(c)ドリル部の先端がモルタル壁に到達し、モルタル壁を穿孔し始めた状態を示す図。(d)リーマ片がモルタル壁に到達してリーマ片が切除された状態を示す図。(e)ドリル部の先端が躯体に到達し、躯体を穿孔し始めた状態を示す図。(f)ねじ部が躯体と螺合して、頭部が建築部材に嵌入した状態を示す図。
【図4】従来例のコーススレッドを示す正面図。
【図5】図4のコーススレッドの先端の拡大図。
【図6】従来例のコーススレッドによる建築部材の取付構造の実施の形態を示す断面図。
【図7】従来例のコーススレッドによる建築部材の取付構造の実施の形態の他の例を示す断面図。(a)下穴を建築部材とモルタル壁に穿孔した状態を示す図。(b)下穴にコーススレッドのねじ部の先端を合わせて、ねじ部の先端が建築部材を穿孔し始めた状態を示す図。(c)ねじ部が下穴を介して建築部材と螺合する状態を示す図。(d)ねじ部が下穴を介してモルタル壁と螺合する状態を示す図。(e)ねじ部の先端が躯体に到達し、躯体を穿孔し始めた状態を示す図。(f)ねじ部が躯体と螺合して、頭部が建築部材に嵌入した状態を示す図。
【図8】比較例の建築部材取付用ビスを示す正面図。
【図9】図8の比較例の建築部材取付用ビスの先端部の拡大図。
【図10】比較例の建築部材取付用ビスによる建築部材の取付構造の実施の形態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0023】
図1に本発明のビスとして建築部材取付用ビスAを示す。この建築部材取付用ビスAはステンレス鋼などの金属材料で形成されるものであって、頭部5と、ねじ部1を有する軸部と軸部2の先端に突設したドリル部3とを備えている。そして頭部5とねじ部1の間には建築部材13とは螺合しないねじ無し部7が形成されている。軸部2は丸棒状に形成されており、その周面(外周面)の一部にねじ部1として雄ねじが形成されている。さらに、ドリル部3とねじ部1との境界のドリル部3の周面には一対の薄片のリーマ片4が突設されている。また、頭部5は逆円錐台の形状に形成されており、その最も広い部分の直径W2は一対のリーマ片4、4の先端間の距離であるリーマ片4の外径W4よりも大きく形成されている。なお、頭部5にフレキ部6が形成されていると頭部5が建築部材13に入り込み易くなるので、頭部5が建築部材13の表面から出っ張ることがなくなるので好ましい。なお、ねじ部1およびねじ無し部7の位置や長さは後述のモルタル壁12の厚さや建築部材13の厚さなどに応じて設定されている。
【0024】
図2に本発明の建築部材取付用ビスAのドリル部3の拡大図を示す。ここで、(a)は正面図、(b)はビスの先端から見たP−P断面図、(c)は図(b)のリーマ片4が除去された後の状態を示すP−P断面図である。
【0025】
ドリル部3は建築部材取付用ビスAの先端に向かって先細となっていて、さらに、ドリル部先端3dは丸く形成されている。ドリル部の外径W6はねじ無し部の直径W3とは略同じ長さであって、ドリル部3の周面(外周面)には切削面3cが設けられている。切削面3cはリーマ片4の付け根に形成されていて、建築部材取付用ビスAの先端から見て軸部2の中心を基点にしてドリル部A3aとドリル部B3bは点対称となっている。このドリル部A3aとドリル部B3bからなるズレによって、切削面の幅W5からなる切削面3cが構成されている。リーマ片の外径W4は、ねじ部の外径W1及びドリル部の外径W6、ねじ無し部の直径W3よりも大きい。
【0026】
図3(a)〜図3(f)に上記の建築部材取付用ビスAを用いて建築部材13をモルタル壁12の表面(屋外側の面)に取り付ける構造を、建築部材取付用ビスAがねじ込まれていく順序にしたがって示す。ここで、モルタル壁12は建物の躯体10に固定されたモルタル下地11の表面に施工されている。本実施例のモルタル壁12はセメントと細骨材と水を練り混ぜたモルタルをモルタル下地11の表面に形成されている。図3ではモルタル下地11としてモルタル下地用のボードを用いている例を示しているが、これらに限定されるものではなく、木材にラスを張り上げたモルタル下地等、他のモルタル下地を使用することができる。モルタル壁12の態様としては、スノコ状に打ち付けた板の上に「ラス紙」とよばれる防水シートを張って,その上から「タッカー」とよばれる大きなホチキスのような釘で「ラス網」とよばれる金網を止めたモルタル下地や、スノコ状に打ち付けた板の代わりに大判の合板を張ったモルタル下地、あるいは、表面がギザギザに防水加工されている「ラスカット」といわれる板のような「ラス網」が無いモルタル下地などのモルタル下地を使用することができる。このモルタル下地11の表面にモルタルを2〜3回コテで撫で付け,その上に吹付塗装を施してモルタル壁12が形成される。
【0027】
建築部材13は既存のモルタル壁12の改修のために新たに張り上げる外壁材の下地として使用される胴縁として用いるものであって、木製の角材などから形成されている。前記建築部材13は木材以外でも、例えば樹脂胴縁のように釘、ビスの保持力のある材料であればどのような材料でも使用することが出来る。躯体10は建物の構造部材であって、木製の角材で形成されている。
【0028】
モルタル壁12の表面に建築部材13を取り付けるにあたっては、まず、躯体10と対向する位置において、建築部材13をモルタル壁12の表面(屋外側の面)に接触させて配置し、建築部材13の表面(屋外側の面)から上記の建築部材取付用ビスAをねじ込んで螺入していく。このとき、建築部材取付用ビスAは、そのドリル部3で建築部材13、モルタル壁12、モルタル下地11および躯体10を穿孔しながら螺進していく。
【0029】
本実施例で建築部材取付用ビスAは、図3(a)に示すように例えば木材のような材料からなる建築部材13の表面を穿孔し、続いて図3(c)に示すように硬くて脆い材料であるモルタルからなるモルタル壁12の表面を穿孔し、そして図3(e)に示すように木製の角材からなる躯体10の表面を穿孔していくのであるが、図2で示すように、建築部材取付用ビスAのドリル部3は先端に向かって先細となっていて、さらに、ドリル部先端3dは丸く形成されているので、材質が大きく異なる材料からなる建築部材13と既存のモルタル壁12と躯体10の組合せであっても容易に穿孔することができる。さらにドリル部の先端角3eが鋭角であれば、回転に打撃構造が加わった振動ドリルを使用しても、ドリル部先端3dが木材のような材料からなる建築部材の表面を容易に穿孔し始めるので、建築部材取付用ビスAの頭部5とドリル部先端3dまでの距離が長くても、打撃の衝撃によってドリル部先端3dを支点にして建築部材取付ビスが倒れてしまうようなことが発生せず好ましい。
【0030】
したがって、建築部材取付用ビスAをねじ込む前に、予め建築部材13、モルタル壁12、モルタル下地11に対して下穴14をあけておく必要が無く、さらに、下穴14の位置合わせをする必要もないので施工にかかる手間を軽減することができる。
【0031】
本実施例の建築部材取付用ビスAのドリル部3にはリーマ片4が形成されている。図3(b)に示すように、リーマ片4は建築部材13に対してのみにねじ部の外径W1よりも大きいリーマ穴15を形成する。ところで、リーマ片4の材質と強度はモルタル壁12に当たると切除されるようになっているので、図3(c)図3(d)に示すようにモルタル壁12にリーマ片4が当たった段階でリーマ片4はドリル部3から切除される。しかしながらリーマ片4が切除された後であってもドリル部3の切削面3cは残っている。(図2(b)、図2(c)参照)
建築部材取付用ビスAの頭部5とねじ部1の間には、建築部材13とは螺合しないねじ無し部7が形成されている。建築部材13に形成されたリーマ穴の径D2はねじ無し部の直径W3よりも大きいので、図3(e)から図3(f)に示すように、建築部材取付用ビスAがモルタル壁12とモルタル下地11さらに躯体10にねじ込まれていく段階で、ねじ無し部7と建築部材13との間に隙間ができているので余分な抵抗がなく容易に建築部材取付用ビスAをねじこむことが出来る。さらに、建築部材取付用ビスAが躯体10にねじ込まれた後に、惰性でさらに建築部材取付用ビスAが躯体10にねじ込まれていったとしても、ねじ無し部7と建築部材13との間に隙間があるので、建築部材13がモルタル壁12の表面から浮き上がることが防止される。
【0032】
頭部の長さL6とねじ無し部の長さL4を合わせた長さは、建築部材の厚さL1とモルタル壁の厚さL2を合わせた長さよりも長い方が好ましい。またねじ無し部の直径W3はねじ部の外径W1よりも小さい。したがって建築部材取付用ビスAが躯体10にねじ込まれていく段階でねじ無し部7とモルタル壁12との間が密着することがないので余分な抵抗がなく容易に建築部材取付用ビスAを躯体10にねじこむことが出来る。さらに、建築部材取付用ビスAが躯体10に過剰にねじ込まれた場合でも、ねじ無し部7と建築部材13との間に隙間があり、さらにねじ無し部7とモルタル壁12の間が密着していないので、建築部材13がモルタル壁12から浮き上がることをさらに防止する。
【0033】
ねじ部1は、建築部材取付用ビスAを躯体10に螺合した際に、躯体10と螺合している部分に形成されている。そして、新たに張り上げる外壁板の下地として使用される建築部材13を躯体10に固定するための保持力を維持するために、新たに張り上げる外壁板の厚さが16mmで建築部材13の厚さL1が15mm以上の場合、ねじ部の長さL5は25mm以上であることが好ましい。したがって、本発明の建築部材取付用ビスAの好ましい全長L0は、ねじ部の長さL5とドリル部の長さL7と建築部材の厚さL1とモルタル壁の厚さL2を合算した長さよりも大きく、ねじ部の長さL5は25mm以上となる。
【0034】
L0>L5+L7+L1+L2、L5≧25
【0035】
図8から図10は比較例の建築部材取付用ビスCを示す図であって、本発明の建築部材取付用ビスAとはドリル部先端3dの形状とドリル部の先端角3eが本発明とは異なっている。図8,図9に示すように、比較例の建築部材取付用ビスCは、ドリル部先端3dが先細ではなく、さらに丸くなっていない。さらに、ドリル部3の先端角3eは鈍角となっている。
【0036】
ところで、モルタル壁12のような表面が硬くて脆い材料に対してドリルビスのようなビスをねじ込むために使用される電気ドリルは、回転ドリルではなく回転に打撃構造が加わった振動ドリル、あるいはインパクトドリルを使用することが一般的である。
【0037】
比較例の建築部材取付用ビスCの場合、最初に建築部材13を穿孔し始める時点で、建築部材13が木材のような材料であったとしても、ドリル部先端3dが鈍角であるがために建築部材13を穿孔し始めることが容易ではない。そのため建築部材13の表面に対して垂直に比較例の建築部材取付ビスをセットしても(図10のC1)、頭部5とドリル部先端3dまでの距離が長いので、回転に打撃構造が加わった振動ドリルでは打撃の衝撃でドリル部先端3dを支点にして比較例の建築部材取付用ビスCは倒れてしまい非常に危険である(図10のC2)。したがって、比較例の建築部材取付用ビスCの場合も下穴14を開ける、あるいはポンチ等で位置決めの凹みを形成する必要がある。あるいは最初は回転ドリルを使用し、その後モルタル壁12の表面にドリル部先端3dが到達した時点で振動ドリルに変更するなどの工夫が必要であり、施工性が悪い。
【0038】
この出願の発明は、以上述べた実施例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 ねじ部
1d ねじ部先端
1e ねじ部の先端角
2 軸部
3 ドリル部
3a ドリル部a
3b ドリル部b
3c 切削面
3d ドリル部先端
3e ドリル部の先端角
4 リーマ片
5 頭部
6 フレキ部
7 ねじ無し部
9 穴
10 躯体
11 モルタル下地
12 モルタル壁
13 建築部材
14 下穴
15 リーマ穴
16 ねじ山
W1 ねじ部の外径
W2 頭部の直径
W3 ねじ無し部の直径
W4 リーマ片の外径
W5 切削面の幅
W6 ドリル部の外径
D1 下穴の径
D2 リーマ穴の径
L0 ビスの全長
L1 建築部材の厚さ
L2 モルタル壁の厚さ
L3 モルタル下地の厚さ
L4 ねじ無し部の長さ
L5 ねじ部の長さ
L6 頭部の長さ
L7 ドリル部の長さ
A 建築部材取付用ビス
B コーススレッド
C 比較例の建築部材取付用ビス
C1 切削開始前の比較例の建築部材取付用ビス
C2 切削開始後の比較例の建築部材取付用ビス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モルタル壁を貫通して建築部材を躯体に固定するための建築部材取付用ビスであって、
頭部と、ねじ部を有する軸部と、前記軸部の先端に設けたドリル部とを有し、
前記頭部と前記ねじ部の間には建築部材とは螺合しないねじ無し部が形成されていて、
ねじ部の外径よりも大きな穴を建築部材のみに形成するためのリーマ片を前記ドリル部に突設し、前記リーマ片はモルタル壁に当たって切除されるように形成されていて、
前記ドリル部は先端に向かって先細となっていて、前記ドリル部の先端が丸く形成されていることを特徴とする建築部材取付用ビス。
【請求項2】
ドリル部の先端角が鋭角であることを特徴とする請求項1に記載の建築部材取付用ビス。
【請求項3】
モルタル壁と建築部材の厚み寸法に応じて、ねじ無し部と頭部の長さを設定してなることを特徴とする請求項1又は2に記載の建築部材取付用ビス。
【請求項4】
ドリル部がモルタル壁を貫通した後にねじ部が躯体に導入されるように、前記ねじ部と前記ドリル部の長さを設定してなることを特徴とする請求項1から3に記載の建築部材取付用ビス。
【請求項5】
モルタル壁の表面に建築部材を配置し、建築部材の表面から建築部材とモルタル壁とを貫通するように建築部材取付用ビスをねじ込んで建築部材を躯体に固定する建築部材の取付構造であって、
建築部材取付用ビスは、頭部とねじ部を有する軸部と前記軸部の先端に設けたドリル部とを有し、前記ドリル部は先端に向かって先細で前記ドリル部の先端は丸く形成されていて、前記頭部と前記ねじ部の間には前記建築部材とは螺合しないねじ無し部が形成されていて、前記ねじ部の外径よりも大きな穴を前記建築部材のみに形成するためのリーマ片が前記ドリル部に突設されていて、前記建築部材を貫通した後に前記リーマ片が前記モルタル壁に当たって切除されて、前記リーマ片が切除されたドリル部によって前記モルタル壁を貫通し、前記ねじ部は前記建築部材とは螺合せずに前記躯体に螺合してなることを特徴とする建築部材の取付構造。
【請求項6】
ドリル部の先端角が鋭角であることを特徴とする請求項5に記載の建築部材の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−68271(P2013−68271A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206786(P2011−206786)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000110860)ニチハ株式会社 (182)
【Fターム(参考)】