説明

建設工事の消費エネルギー低減支援システム

【課題】建築や土木などの建設工事において発生する温室効果ガスの排出量を有効に低減するため、省エネルギー化を支援するシステムを提供する。
【解決手段】設備区分毎に設置されて工事に使用される各機器18,19,21〜29,31〜35,41の瞬時エネルギー消費量を計測してその計測データを出力する計測手段20A,20B,20C,20D,20E,20F,70と、前記計測データを、通信ネットワーク5を介して受信して格納すると共に、前記計測データから前記各機器のエネルギー消費が適正であるかを一括して監視する管理サーバ6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築や土木などの建設工事において、電力や燃料などのエネルギーの無駄な消費を抑え、ひいては地球温暖化を来たす温室効果ガスの排出量を低減するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばシールドトンネル施工などの建設工事において、消費される電力や燃料などのエネルギーは、作業所や事務所で管理しており、その典型的な従来技術が下記の特許文献に開示されている。
【0003】
この文献に開示された技術は、重機や建設車両、運搬車両など複数の管理対象機器の駆動源の駆動履歴データを収集するデータ収集手段と、前記駆動履歴データに基づいて、前記複数の管理対象機器から排出される二酸化炭素などの管理対象排出ガスの管理データを求める処理を行う処理手段とを備え、前記処理手段が、複数の管理対象機器に対し、前記管理データを用いて、前記管理対象排出ガスの排出量を削減するための管理処理を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−227397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術によれば、管理対象機器の駆動管理がその駆動源の駆動履歴データに基づいて行われるため、リアルタイムでの管理を行うことができなかった。
【0006】
本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであって、その技術的課題とするところは、建築や土木などの建設工事において発生する温室効果ガスの排出量を有効に低減するため、省エネルギー化を支援するシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る建設工事の消費エネルギー低減支援システムは、設備区分毎に設置されて工事に使用される各機器の瞬時エネルギー消費量を計測してその計測データを出力する計測手段と、前記計測データを、通信ネットワークを介して受信して格納すると共に、前記計測データから前記各機器のエネルギー消費が適正であるかを一括して監視する管理サーバとを備えるものである。
【0008】
請求項2の発明に係る建設工事の消費エネルギー低減支援システムは、請求項1に記載のシステムにおいて、計測手段により計測される瞬時エネルギー消費量が、瞬時電力使用量、力率、瞬時燃料使用量、又は機関回転数から算出されたものである。
【0009】
請求項3の発明に係る建設工事の消費エネルギー低減支援システムは、請求項1に記載のシステムにおいて、管理サーバが、機器の燃料消費量又は燃料消費率を算出する燃費算出手段を有するものである。
【0010】
請求項4の発明に係る建設工事の消費エネルギー低減支援システムは、請求項1に記載のシステムにおいて、ヒトの存在を検知する人感センサ又は作業者出退管理システムを備え、管理サーバが、特定の設備区分における前記人感センサからの検出データと、同じ設備区分における各機器のエネルギー消費量の計測データとの比較により、エネルギー消費が適正であるかを監視するものである。
【0011】
請求項5の発明に係る建設工事の消費エネルギー低減支援システムは、請求項1に記載のシステムにおいて、管理サーバが、通信ネットワークを介して受信される各機器の計測データと、各機器の固有の属性データから算出される基準エネルギー消費量と比較することによって、作業能力が不適正でエネルギー効率の悪い機器を判定するものである。
【0012】
請求項6の発明に係る建設工事の消費エネルギー低減支援システムは、請求項5に記載のシステムにおいて、管理サーバが、作業能力が不適正でエネルギー効率の悪い機器が判定されたことを報知する報知手段を有するものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明に係る建設工事の消費エネルギー低減支援システムによれば、建築や土木などの建設工事において、設備区分毎に使用される各機器の瞬時エネルギー消費量が計測され、その計測データが通信ネットワークを介して管理サーバに送信され、管理サーバによって処理されて管理画面に表示されるので、リアルタイムで管理することができ、その結果、無駄なエネルギー消費を抑制して温室効果ガスの排出量を有効に低減することができる。
【0014】
請求項2の発明に係る建設工事の消費エネルギー低減支援システムによれば、消費エネルギーとして、電力消費量又は燃料消費量を管理することができる。
【0015】
請求項3の発明に係る建設工事の消費エネルギー低減支援システムによれば、管理サーバにおける燃費計測手段によって、機器の燃料消費率が計測されるので、建設機械などの燃料消費率を管理することができる。
【0016】
請求項4の発明に係る建設工事の消費エネルギー低減支援システムによれば、人感センサ又は作業者出退管理システムによって、設備区分のうち作業者の存在しない箇所すなわち設備の不使用個所を判定することができるので、当該個所への電力供給を遮断することができる。
【0017】
請求項5又は請求項6の発明に係る建設工事の消費エネルギー低減支援システムによれば、エネルギー消費量が過大な機器を特定することによって、エネルギー消費効率の向上を図ることができ、エネルギー消費量が過小な機器を特定することによって、無駄な機器を撤収し、効率の良い機器の使用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る建設工事の消費エネルギー低減支援システムを、シールド工法によるトンネル工事に適用した実施の形態を示す概略構成説明図である。
【図2】シールド掘進機の一例を示す概略構造説明図である。
【図3】図1に示される実施の形態による機能を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る建設工事の消費エネルギー低減支援システムを、シールド工法によるトンネル工事に適用した好ましい実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は、この実施の形態を示す概略構成説明図で、図1における参照符号1は、地中を掘進するシールド掘進機、参照符号2は、発進立坑3の地上開口の周囲に設けた作業ヤードを覆うように構築された防音ハウス、参照符号4は、発進立坑3から略水平方向へ発進させたシールド掘進機1によって地中に構築されたシールドトンネルである。
【0021】
シールド掘進機1は、例えば図2に示されるように、略円筒形のシールドフレーム11と、その先端で、油圧モータ13等によって回転されることにより地山Gを掘削するディスクカッタ12と、掘削面(切羽)から発生した掘削土砂を排出するスクリューコンベア15と、掘進方向への推力を得るための油圧ジャッキ16と、シールドフレーム11の後方で坑内壁に沿って一次覆工を組み立てるためのエレクタ17と、その他の動力機械などが設置されている。
【0022】
一方、防音ハウス2には、例えば図1に示されるように、掘削土砂をシールドトンネル4から地上へ搬出するためのクレーン21と、シールド掘進機1による切羽の安定のための泥水を作製して切羽へ供給する加泥設備22と、泥水掘削土砂に水や固化材等を添加して裏込材を作製する裏込設備23と、シールドトンネル4内へ送風するための送風機24と、その他の動力機械25や照明設備26、防音ハウス2内のストックヤードに一時的に堆積された掘削土砂をダンプトラックなどの搬出車両に積載するためのバックホウ27や土砂ホッパなどが設置されている。
【0023】
また、発進立坑3には、防音ハウス2内の加泥設備22からシールド掘進機1による切羽へ泥水を加圧供給する送泥ポンプ31と、シールド掘進機1の駆動により切羽で発生した掘削土砂(ズリと呼ばれる)と前記泥水との混合物(スラリー)からの分離水を排出する排水ポンプ32と、前記掘削土砂を搬出したり一次覆工用のセグメントなどを搬入したりするための鋼車やトラバーサ33と、その他の動力機械34や照明設備35などが設置され、シールドトンネル4内には照明設備41などが設置されている。
【0024】
参照符号10Aはシールド掘進機1に設けられた機内分電盤である。この機内分電盤10Aは、外部電源40から電力ケーブル401及び坑内変電設備50Aを介して油圧モータ13及び油圧ジャッキ16等の油圧駆動装置18や他の動力機械19へ電力を分岐供給する複数の電力ケーブル402に設けられて電圧を検出するプローブ102及び電流を検出するプローブ103と、このプローブ103で異常電流が検出された場合に自動的に回路を遮断する開閉器101とを備える。
【0025】
参照符号20Aは機内電力計測盤である。この機内電力計測盤20Aは、プローブ102,103から一定の時間間隔で取り込まれる電圧及び電流の計測データにより、油圧モータ13及び油圧ジャッキ16等の油圧駆動装置18や他の動力機械19の瞬時電力消費を算出する算出部201と、この算出部201に接続されると共にLANケーブル203を介して坑内通信盤(xDSLモデム)30Aと接続されたハブ202とを備え、算出された瞬時電力消費データを、前記油圧駆動装置18あるいは他の動力機械19の固有の識別子データと共に送信するものである。
【0026】
参照符号10Bはシールドトンネル4内に設けられた第一の坑内分電盤である。この第一の坑内分電盤10Bは、外部電源40からの電力ケーブル401から坑内変電設備50Bを介して分岐し坑内照明設備41へ電力を供給する電力ケーブル403に設けられた電圧を検出するプローブ105及び電流を検出するプローブ106と、このプローブ106で異常電流が検出された場合に自動的に回路を遮断する開閉器104とを備える。
【0027】
参照符号20Bはシールドトンネル4内に設けられた第一の坑内電力計測盤である。この第一の坑内電力計測盤20Bは、第一の坑内分電盤10Bにおけるプローブ105,106と共に請求項1に記載された計測手段を構成するものであって、プローブ105,106から一定の時間間隔で取り込まれる電圧及び電流の計測データにより、坑内照明設備41等の瞬時電力消費を算出する算出部204と、この算出部204に接続されると共にLANケーブル206,207を介して坑内通信盤(xDSLモデム)30B,30Cに接続されたハブ205とを備え、算出された瞬時電力消費データを、前記坑内照明設備41等の固有の識別子データと共に送信するものである。
【0028】
また、機内電力計測盤20A側の坑内通信盤30Aと第一の坑内電力計測盤20B側の坑内通信盤30Bは、通信線208を介して接続されている。
【0029】
参照符号10Cは発進立坑3の下部あるいはその付近に設けられた第二の坑内分電盤である。この第二の坑内分電盤10Cは、外部電源40からの電力ケーブル401から後述のキュービクル装置60における三相変圧器601を介して、送泥ポンプ31、排水ポンプ32、鋼車やトラバーサ33、その他の動力機械34や照明設備35等へ電力を分岐供給する電力ケーブル404にそれぞれ設けられた電圧を検出するプローブ108及び電流を検出するプローブ109と、このプローブ109で異常電流が検出された場合に自動的に回路を遮断する開閉器107とを備える。
【0030】
参照符号20Cは発進立坑3の下部あるいはその付近に設けられた第二の坑内電力計測盤である。この第二の坑内電力計測盤20Cは、プローブ108,109から一定の時間間隔で取り込まれる電圧及び電流の計測データにより、送泥ポンプ31、排水ポンプ32、鋼車やトラバーサ33、その他の動力機械34や照明設備35等の瞬時電力消費を算出する算出部209と、この算出部209に接続されると共にLANケーブル211を介して坑内通信盤(xDSLモデム)30Dに接続されたハブ210とを備え、算出された瞬時電力消費データを、前記送泥ポンプ31、排水ポンプ32、鋼車やトラバーサ33、その他の動力機械34や照明設備35等の固有の識別子データと共に送信するものである。
【0031】
また、第一の坑内電力計測盤20B側の坑内通信盤30Cと第二の坑内電力計測盤20C側の坑内通信盤30Dは、通信線213を介して接続されている。
【0032】
参照符号10Dは防音ハウス2内に設けられた第一の地上分電盤である。この第一の地上分電盤10Dは、外部電源40からの電力ケーブル401から後述のキュービクル装置60における三相変圧器601を介して、クレーン21、加泥設備22、裏込設備23、送風機24やその他の動力機械25等へ電力を分岐供給する電力ケーブル405にそれぞれ設けられた電圧を検出するプローブ111及び電流を検出するプローブ112と、このプローブ112で異常電流が検出された場合に自動的に回路を遮断する開閉器110とを備える。
【0033】
参照符号10Eは防音ハウス2内に設けられた第二の地上分電盤である。この第二の地上分電盤10Eは、外部電源40からの電力ケーブル401から後述のキュービクル装置60における単相変圧器602を介して、防音ハウス2内の照明設備26等へ電力を供給する電力ケーブル406に設けられた開閉器113と、電圧を検出するプローブ114及び電流を検出するプローブ115とを備える。
【0034】
参照符号20Dは防音ハウス2内に設けられた第一の地上電力計測盤である。この第一の地上電力計測盤20Dは、第一の地上分電盤10Dにおけるプローブ111,112から一定の時間間隔で取り込まれる電圧及び電流の計測データにより、クレーン21、加泥設備22、裏込設備23、送風機24やその他の動力機械25等の瞬時電力消費を計測すると共に、第二の地上分電盤10Eにおけるプローブ114,115から一定の時間間隔で取り込まれる電圧及び電流の計測データにより、照明設備26等の瞬時電力消費を算出する算出部214と、この算出部214に接続されたハブ215とを備え、算出された瞬時電力消費データを、前記クレーン21、加泥設備22、裏込設備23、送風機24やその他の動力機械25等の固有の識別子データと共に送信するものである。
【0035】
参照符号10Fは地上(例えば防音ハウス2)に設けられた第三の地上分電盤である。この第三の地上分電盤10Fは、外部電源40からの電力ケーブル401から後述のキュービクル装置60における三相変圧器601を介して、防音ハウス2内の加泥設備22へ給水するための給水設備28や、加泥に使用されない余剰泥水などを処理して放流するための濁水処理設備29等へ電力を供給する電力ケーブル407に設けられた電圧を検出するプローブ117及び電流を検出するプローブ118と、このプローブ118で異常電流が検出された場合に自動的に回路を遮断する開閉器116とを備える。
【0036】
参照符号20Eは地上(例えば防音ハウス2)に設けられた第二の地上電力計測盤である。この第二の地上電力計測盤20Eは、プローブ117,118から一定の時間間隔で取り込まれる電圧及び電流の計測データにより、給水設備28や濁水処理設備29等の瞬時電力消費を算出する算出部216と、この算出部216に接続されたハブ217とを備え、算出された瞬時電力消費データを、前記給水設備28や濁水処理設備29等の固有の識別子データと共に送信するものである。
【0037】
参照符号60は地上(例えば防音ハウス2の外部)に設けられたキュービクル装置である。このキュービクル装置60は、外部からの例えば6,000Vの電圧を三相200Vの低電圧に降圧する三相変圧器601と、前記6,000Vの電圧を単相200Vの低電圧に降圧する単相変圧器602と、電圧を検出するプローブ603及び電流を検出するプローブ604とを備え、機内分電盤10A、第一及び第二の坑内分電盤10B,10C、第一及び第二の地上分電盤10D,10E、第三の地上分電盤10Fへ、降圧させた電力を供給するものである。
【0038】
参照符号20Fはキュービクル装置60に付属の受電元電力計測盤である。この受電元電力計測盤20Fは、プローブ603,604から一定の時間間隔で取り込まれる電圧及び電流の計測データにより、受電元の電力を算出する算出部218と、この算出部218に接続されたハブ219とを備え、算出された受電元の電力データを、前記キュービクル装置60の固有の識別子データと共に送信するものである。
【0039】
参照符号70は防音ハウス2内で作業するバックホウ27等の機械に設けられた燃費計測盤で、例えば回転数計測手段701と、ZE通信部702を備え、回転数計測手段701により計測された内燃機関の回転数データから求められた燃料消費データを、前記バックホウ27等の固有の識別子データと共に送信するものである。
【0040】
参照符号80は人感センサで、所定のエリアへのヒトの出入りを管理するために、赤外線や超音波によってヒトの有無や動きを検知するものである。図1では、この人感センサ80は一個所のみ示されているが、防音ハウス2内の各室や、発進立坑3、シールドトンネル4内などに設定された複数のエリアに設けられ、検出データを、固有の識別子データと共に送信するものである。
【0041】
参照符号90は地上(例えば防音ハウス2)に設けられた上位通信盤である。上位通信盤90は、バックホウ27等の燃費計測盤70からの瞬時燃料消費データを受信可能であると共に、各電力計測盤20A〜20Fで計測された瞬時電力消費データや、前記瞬時燃料消費データ、人感センサ80による検出データを、計測対象の識別子データと共に、パケット通信網5を介して管理サーバ6へ送信するもので、互いに接続されたハブ901、ルータ902、記憶部903及びZC通信部904を備えている。なお、パケット通信網5は請求項1に記載された通信ネットワークに相当するものであって、上位通信盤90と管理サーバ6を常時接続しておくことができ、しかも通信料金を低減することができるといったメリットがある。
【0042】
第二の坑内電力計測盤20Cのハブ210と第一の地上電力計測盤20Dのハブ215、第一の地上電力計測盤20Dのハブ215と受電元電力計測盤20Fのハブ219、受電元電力計測盤20Fのハブ219と第二の地上電力計測盤20Eのハブ217、及び第一の地上電力計測盤20Dのハブ215と上位通信盤90のハブ901は、それぞれLANケーブル212,220,221,222を介して互いに接続されている。
【0043】
管理サーバ6は、上述した各電力計測盤20A〜20Fからの瞬時電力消費データや、燃費計測盤70からの瞬時燃料消費データを、上位通信盤90及びパケット通信網5を介して受信してデータベース63に格納すると共に、これらの計測データから、シールド掘進機1、シールドトンネル4、発進立坑3及び防音ハウス2などの各設備区分の各機器の電力消費や燃料消費が適正であるかを一括して監視するもので、インターネット7を介して本社や事務所に設置されたクライアントパソコン8や作業者が携帯する携帯通信端末9からアクセスしてユーザ認証を受けることによって、管理データなどを閲覧することができるようになっている。
【0044】
すなわちこの管理サーバ6は、図3のシステムフローに示されるように、パケット通信網5あるいはインターネット7を介してデータの送受信を行う送受信部61と、認証部62と、受信したデータが格納されるデータベース63と、設定部64と、前記データを各種グラフや帳票形式で出力するWEB出力部65と、判定部66とを有する。
【0045】
詳しくは、管理サーバ6における認証部62は、クライアントパソコン8や携帯通信端末9からインターネット7を介して閲覧要求を受けたときに、送受信部61を介して受信されたパスワードなどの認証データを、予め登録された認証データと一致するかを判定し、接続又は接続拒否を行うものである。
【0046】
管理サーバ6におけるデータベース63は、受信されたデータを識別子データによってシールド掘進機1、シールドトンネル4、発進立坑3及び防音ハウス2などの各設備区分別又は各計測対象別に格納するものである。また、このデータベース63には、計測対象の各設備の固有の属性データ(例えば給水設備28や濁水処理設備29等の固有の設備名、配電方式、電動機の容量、稼動期間、あるいはバックホウ27の内燃機関の搭載機器名、排気量、気筒数、標準燃料消費など)や、それに基づいて算出された各設備の適正な電力消費量の範囲や適正な力率、適正な燃料消費量の範囲、あるいは積算基準書や損料表に記載された燃料消費量の基準値や、運搬系の建設機械における走行距離当たりの燃料消費率の基準値や、あるいは掘削又は積み込みに使用される建設機械における掘削又は積み込み土量当たりの燃料消費率の基準値などの種々の判定基準データや、警告メッセージなどが、設定部64を介して、あるいは現場の事務所や本社などに設置されたクライアントパソコン8などからインターネット7を介して入力され、記憶されている。
【0047】
管理サーバ6におけるWEB出力部65は、受信されたデータやデータベース63に蓄積されたデータを、WEBページに一定時間毎の瞬時電力消費量や瞬時燃料消費量の履歴を各種グラフや帳票形式で出力するものである。
【0048】
管理サーバ6における判定部66は、受信された瞬時電力消費データが予めデータベース63に記憶された電力消費量の基準範囲を超えている場合にその旨の警告データを出力し、あるいは力率の監視によりエネルギー効率の悪い電気設備を抽出してその旨の警告データを出力し、あるいは電流値、電圧値の監視により、容量の不適正な電動機(能力過大または不足)を抽出してその旨の警告データを出力し、あるいは供給先の各設備の消費電力の和を、キュービクル装置60における受電元の電力と比較することにより、電源系統での電力ロスを監視して、その旨の警告データを出力するか、推奨配線サイズを表示し、あるいはデマンド計測と電力使用量上限設定値オーバーが予想される場合の警報データと電源切断場所の推奨データを出力し、あるいは人感センサ80によってヒトの存在が確認されないエリアで照明設備26、35、41などの電力消費が確認された場合などに、当該個所の電源切断を促すデータを出力するものである。
【0049】
また、この判定部は、バックホウ27等の機械の内燃機関に対しては、その固有の属性データ(搭載機器名、排気量、気筒数、標準燃料消費など)から予め標準燃料消費量を設定し、受信された瞬時燃料消費データから、前記標準燃料消費量を超えるものを抽出してその旨の警告データを出力し、あるいは車両系建設機械の場合、重機の姿勢を計測する装置と連動させることにより、作業パターンと瞬時燃料消費を判断し、作業当りの燃料消費状況、アイドリングストップの実施・不実施などの把握とアイドリングストップの推奨のためのデータ出力するものである。
【0050】
そしてこれらの出力データは、アドレスが登録されたクライアントパソコン8や携帯通信端末9から、インターネット7を介してアクセスしてユーザ認証を受けることにより閲覧することができる。
【0051】
以上の構成を備える実施の形態において、発進立坑3の下部あるいはシールドトンネル4における送泥ポンプ31、排水ポンプ32、鋼車やトラバーサ33、その他の動力機械34や照明設備35、防音ハウス2内のクレーン21、加泥設備22、裏込設備23、送風機24やその他の動力機械25、照明設備26、防音ハウス2の外部の給水設備28、濁水処理設備29等へは、キュービクル装置60によって例えば6000Vから200Vに降圧された電力が、第二の坑内分電盤10C、第一及び第二の地上分電盤10D,10E、第三の地上分電盤10Fを介して供給される。また、シールド掘進機1における油圧モータ13及び油圧ジャッキ16等の油圧駆動装置18や他の動力機械19、及びシールドトンネル4内の坑内照明設備41等へは、坑内変電設備50A,50Bによって例えば6000Vから200Vに降圧された電力が、機内分電盤10A、第一の坑内分電盤10Bを介して供給される。
【0052】
泥水加圧式のシールド掘進機1は、図2に示されるように、シールドフレーム11の先端で、ディスクカッタ12を、油圧モータ13によって回転させ、これによって地山Gを掘削し、切羽で発生した掘削土砂を、ディスクカッタ12に形成されたスリットからその背面に形成されたチャンバ14に取り込むと共に、このチャンバ14に地上の加泥設備22から送泥ポンプ31を含む送泥システムを介して泥水を加圧供給して掘削土砂と攪拌混合し、これによってディスクカッタ12の背圧を、地山Gの地下水圧とバランスする加圧状態に保持して前面の泥土の噴発を防止する。チャンバ14内の掘削土砂と泥水との混合物は、前記チャンバ14への掘削土砂の取り込みに伴い、スクリューコンベア15によってシールドフレーム11の後方へ連続的に排出される。
【0053】
シールドフレーム11の後方では、掘削された坑内壁に、エレクタ17によって円弧状の複数のセグメントを環状に組み立てて、地山Gの土圧に耐えるための一次覆工4aを施すと共に、既に組み立てられた一次覆工4aの先端に推進用油圧ジャッキ16を当てて後方へ押し出し、その反力でシールド掘進機1を推進させる、といった作業が行われる。
【0054】
また、シールド掘進機1による掘削坑の内壁と、この内壁に沿ってセグメントにより組み立てられた一次覆工4aとの間には、テールボイドと呼ばれる間隙が生じるため、この間隙による地盤沈下を防止すると共に、推進用油圧ジャッキ16による推力を地山Gに伝達するために、前記間隙には、地上の防音ハウス2内に設置した裏込設備23から凝固性の裏込材を送って注入する。
【0055】
一方、シールド掘進機1のチャンバ14からスクリューコンベア15によって排出された掘削土砂は、鋼車等によって発進立坑3の下まで搬送され、ここで、例えばクレーン21で吊り上げられるバケット等で地上へ搬出され、防音ハウス2内のストックヤードに一時的に堆積させてバックホウ27などでダンプトラックなどに積み込むか、あるいは土砂ホッパを介してダンプトラックなどに積み込み、外部へ搬出する。
【0056】
そしてこのようなシールド工法によるトンネル工事において、まず、図1に示されるキュービクル装置60からの電力の供給等によってシールド工事のための各設備が運転されると、各プローブ102,103,105,106,・・・から一定の時間間隔で取り込まれる電圧及び電流の計測データによって、機内電力計測盤20Aによるシールド掘進機1の油圧駆動装置18や他の動力機械19の瞬時電力消費の算出、第一の坑内電力計測盤20Bによるシールドトンネル4内の坑内照明設備41の瞬時電力消費の計測、第二の坑内電力計測盤20Cによる送泥ポンプ31、排水ポンプ32、鋼車やトラバーサ33、その他の動力機械34や照明設備35等の瞬時電力消費の算出、第一の地上電力計測盤20Dによる防音ハウス2内のクレーン21、加泥設備22、裏込設備23、送風機24やその他の動力機械25、照明設備26等の瞬時電力消費の算出、第二の地上電力計測盤20Eによる地上の給水設備28、濁水処理設備29等の瞬時電力消費の算出、受電元電力計測盤20Fによるキュービクル装置60の受電元電力の算出が行われる。一方、防音ハウス2内で作業するバックホウ27などの内燃機関の瞬時燃料消費量は、燃費計測盤70によって算出される。また、人感センサ80からは、一定の時間間隔で各エリアの作業者の有無が検出される。
【0057】
電力計測盤20A〜20Fで算出(計測)された各設備の瞬時電力消費データや、人感センサ80により検出された作業者有無データは、識別子データと共にLANケーブル212,220,221,222を介して上位通信盤90に送信され、燃費計測盤70で算出(計測)された瞬時燃料消費データは、識別子データと共に無線通信により上位通信盤90に送信され、上位通信盤90の記憶部903にいったん保存され、予め設定された適当な送信タイミングで、パケット通信網5を介して管理サーバ6へ送信される。
【0058】
また、分電盤10A,10B,10C,・・・のいずれかで、電流を検出するプローブ103,106,109,・・・によって異常電流が検出された場合は、その下流側の機器への電力供給が、開閉器101,104,107,・・・によって直ちに遮断される。そしてそのデータは、遮断された分電盤の固有の識別子データと共にLANケーブル212,220,221,222を介して上位通信盤90に送信され、予め設定された適当な送信タイミングで、パケット通信網5を介して管理サーバ6へ送信される。
【0059】
管理サーバ6は、上位通信盤90からのデータを、パケット通信網5を介して受信すると、判定部66において、計測データが予め設定されデータベース63に記憶された適正な電力消費量あるいは燃料消費量の範囲にあるかを判定すると共に、適正な範囲に対して過大又は過小であった場合は警告データ又は電源切断や内燃機関のアイドリングストップを促すデータなどを出力する。
【0060】
車両系建設機械の場合、重機の姿勢を計測する装置と連動させることにより、作業パターンと燃費を判断し、作業当りの燃費状況、アイドリングストップの実施などの把握と警告を行うことが可能となる。
【0061】
また判定部66では、次のような処理も行われる。例えば、各エリアに設置された人感センサ80からの検出データ及び識別子データと、電力計測盤20B,20C,20Dなどからの計測データ及び識別子データを比較し、ヒトの存在が確認されないエリアでの電力消費が確認された場合は、当該個所の電源切断を促すデータや警告データを出力する。
【0062】
また、計測データに基づいて力率を監視し、投入された電力に対して力率の低い電気設備を抽出し、その旨の警告データを出力する。
【0063】
また、各設備の電力消費量の合計を、キュービクル装置60による配電系統の受電元電力と比較することによって、抵抗発熱や漏電などによる系統ロスを監視し、警告、推奨配線サイズの表示などを行う。
【0064】
また、デマンド計測と電力使用量上限設定値オーバーが予想される場合の警報と電源切断場所の推奨を行う。
【0065】
また、工程表を入力した場合、燃費を連動表示可能となり、作業量と燃費の関連の把握が容易になる。
【0066】
これらの警告データ等は、送受信部61からインターネット7を介して、アドレスが登録されたクライアントパソコン8や携帯通信端末9へ送信される。
【0067】
また、これらの計測データや警報データは、データベース63へ識別子データによって計測対象の設備毎に分類され電力消費あるいは燃料消費の履歴データなどとして蓄積される。
【0068】
そして、システムの管理担当者が、例えば現場の事務所や本社などに設置されたクライアントパソコン8などからインターネット7を介して管理サーバ6にアクセスし、パスワードなどの認証データを入力して閲覧要求を行うと、管理サーバ6における認証部62は、認証データを、予め登録された認証データと一致するかを判定し、一致した場合は、要求された電力消費などの監視データをデータベース63から検索し、WEB出力部65を介して各種グラフや帳票形式で出力する。このためシステムの管理担当者は、クライアントパソコン8などのディスプレイ画面に表示された監視データを閲覧し、シールド工事に使用されている各設備の電力消費状況や燃料消費状況を確認することができる。
【0069】
またこのため、適切な容量の機種が選択できているかを判断することが可能となり、工事に使用されている設備が適切な容量ではないと判断された場合には、過去の蓄積データからより良い効率の機種を選択し、例えば電動機、照明設備、配電線、車両系建設機械、発電機など作業所導入既存機器に対して、省CO効果の高い代替機種の提示と、その代替機種を導入した場合の効果を推定して提示することができる。
【0070】
以上説明したように、この消費エネルギー低減支援システムによれば、建設工事中の瞬時電気使用量、力率、瞬時燃料使用量、エンジン回転数などが設備区分別に詳細に計測され、計測されたデータは、直接インターネットを経由して管理サーバに送信され、一括処理されて、WEB上の管理画面に表示され、この画面は、パスワードなどで管理され通信ネットワーク環境があればパソコンで見ることができ、しかも設備運転者の手元に、携帯端末等を利用して当該設備の計測データをリアルタイムで掲示することができるので、意識向上による省エネ運転の動機付け効果を期待することができる。
【0071】
なお、上述の実施の形態では、本発明に係る建設工事の消費エネルギー低減支援システムを、シールド工法によるトンネル工事に適用した場合について説明したが、本発明は、他の土木工事や建築工事にも適用することができる。
【符号の説明】
【0072】
1 シールド掘進機
2 防音ハウス
3 発進立坑
4 シールドトンネル
5 パケット通信網(通信ネットワーク)
6 管理サーバ
7 インターネット
8 クライアントパソコン
9 携帯通信端末
10A 機内分電盤
10B 第一の坑内分電盤
10C 第二の坑内分電盤
10D 第一の地上分電盤
10E 第二の地上分電盤
10F 第三の地上分電盤
20A 機内電力計測盤(電力計測手段)
20B 第一の坑内電力計測盤(電力計測手段)
20C 第二の坑内電力計測盤(電力計測手段)
20D 第一の地上電力計測盤(電力計測手段)
20E 第二の地上電力計測盤(電力計測手段)
20F 受電元電力計測盤(電力計測手段)
60 キュービクル装置
70 燃費計測盤(計測手段)
80 人感センサ
90 上位通信盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備区分毎に設置されて工事に使用される各機器の瞬時エネルギー消費量を計測してその計測データを出力する計測手段と、前記計測データを、通信ネットワークを介して受信して格納すると共に、前記計測データから前記各機器のエネルギー消費が適正であるかを一括して監視する管理サーバとを備えることを特徴とする建設工事の消費エネルギー低減支援システム。
【請求項2】
計測手段により計測される瞬時エネルギー消費量が、瞬時電力使用量、力率、瞬時燃料使用量、又は機関回転数から算出されたことを特徴とする請求項1に記載の建設工事の消費エネルギー低減支援システム。
【請求項3】
管理サーバが、機器の燃料消費量又は燃料消費率を算出する燃費算出手段を有することを特徴とする請求項1に記載の建設工事の消費エネルギー低減支援システム。
【請求項4】
ヒトの存在を検知する人感センサ又は作業者出退管理システムを備え、管理サーバが、特定の設備区分における前記人感センサからの検出データと、同じ設備区分における各機器のエネルギー消費量の計測データとの比較により、エネルギー消費が適正であるかを監視することを特徴とする請求項1に記載の建設工事の消費エネルギー低減支援システム。
【請求項5】
管理サーバが、通信ネットワークを介して受信される各機器の計測データと、各機器の固有の属性データから算出される基準エネルギー消費量と比較することによって、作業能力が不適正でエネルギー効率の悪い機器を判定するものであることを特徴とする請求項1に記載の建設工事の消費エネルギー低減支援システム。
【請求項6】
管理サーバが、作業能力が不適正でエネルギー効率の悪い機器が判定されたことを報知する報知手段を有することを特徴とする請求項5に記載の建設工事の消費エネルギー低減支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−59105(P2012−59105A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202855(P2010−202855)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)