説明

建設機械におけるバンダリズムガードの収納構造

【課題】 バンダリズムガードを、機体に設けた収納部から簡単に出し入れできるようにする。
【解決手段】 バンダリズムガードを収納する収納箱13を、ラジエータ室9の床面9aに、バンダリズムガードの収納時には起立姿勢となり、バンダリズムガードの出し入れ時には倒伏姿勢となるよう起倒自在に支持すると共に、上記収納箱13は、倒伏姿勢時においてバンダリズムガードの下側に位置する底面13aと、機体内方側に位置する右側面13bと、前側に位置する前側面13cとを有する一方、上側、機体外方側、後側は開口しているものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械におけるバンダリズムガードの収納構造の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、キャブを備えた建設機械のなかには、駐車中の破壊行為や窃盗行為を防止する目的で、キャブのガラス窓にバンダリズムガード(破壊行為防止板)を装着できるようにしたものがあるが、該バンダリズムガードは、建設機械の作業中には窓から取外されて機体の適宜箇所に収納されることになる。
この様なバンダリズムガードの収納構造としては、従来、キャブとエンジンとの間に立設した防音壁に沿うようにして複数のバンダリズムガードを立姿状に積層させて収納する技術(例えば、特許文献1参照。)や、旋回フレームの梁部材の内空間をバンダリズムガード収納部とし、該収納部に複数のバンダリズムガードを水平状に積層させて収納する技術(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
ところが、前記従来のものは、バンダリズムガードを縦方向あるいは横方向にスライドさせて収納部に出し入れする構成であるため、出し入れ時にバンダリズムガード同士、あるいはバンダリズムガードと収納部の壁面とが擦れて傷付きやすいという問題がある。さらに、出し入れに労力がかかる許りか、先に収納したバンダリズムガードが邪魔になって、後のバンダリズムガードが収納しづらいという問題もある。
【0003】
この改善策として、バンダリズムガード収納部に、バンダリズムガードを積層状に支持する支持部材を設け、該支持部材を収納部に対して出し入れ自在に組込んだ技術が提唱されている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】実開平7−31964号公報
【特許文献2】特開2003−268807号公報
【特許文献3】特開平7−259131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、前記特許文献3のものは、バンダリズムガードの出し入れ作業が容易になったものの、バンダリズムガードを支持する支持部材を収納部に出し入れ自在に組込むために固定レールおよび可動レールの設置が必要であって、構造が複雑であり、コストが高くなるという問題があり、ここに本発明が解決しようとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、機体に設けられた収納部に複数のバンダリズムガードを収納するにあたり、該複数のバンダリズムガードを積層状に支持するための支持部材を設け、該支持部材を、バンダリズムガード収納時には起立姿勢となり、バンダリズムガード出し入れ時には倒伏姿勢となるよう前記収納部に起倒自在に設けたことを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1において、支持部材は、倒伏姿勢時においてバンダリズムガードの下側に位置する面を有し、上側が開口した収納箱であることを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項2において、収納箱は、倒伏姿勢時においてバンダリズムガードの機体内方側に位置する面を有し、機体外方側が開口していることを特徴とするものである。
請求項4の発明は、請求項2または3において、起立姿勢時における収納箱開口側のバンダリズムガードは、収納部に立設された壁面によって支持されることを特徴とするものである。
請求項5の発明は、請求項2乃至4の何れかにおいて、収納箱は、起立姿勢時においてバンダリズムガードの下側に位置する面を有し、上側が開口していることを特徴とするものである。
請求項6の発明は、請求項1乃至5の何れかにおいて、倒伏姿勢の支持部材は、収納部の床面に対して傾斜状であることを特徴とするものである。
請求項7の発明は、請求項6において、倒伏姿勢の支持部材を保持する保持部材を設けたことを特徴とするものである。
請求項8の発明は、請求項1乃至7の何れかにおいて、起立姿勢の支持部材を固定する固定具を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、バンダリズムガードが支持される支持部材は、バンダリズムガード収納時には起立姿勢となって収納部にコンパクトに納まるものでありながら、バンダリズムガード出し入れ時には支持部材を倒伏姿勢にすることにより、バンダリズムガードの出し入れを簡単に行うことができる。
請求項2の発明とすることにより、収納箱へのバンダリズムガードの出し入れを簡単に行えると共に、出し入れの際にバンダリズムガード同士やバンダリズムガードと収納箱とが擦れて傷付いてしまうことを回避できる。
請求項3の発明とすることにより、収納箱へのバンダリズムガードの出し入れを、より簡単に行うことができる。
請求項4の発明とすることにより、バンダリズムガードを起立姿勢の収納箱に確実に納めることができる。
請求項5の発明とすることにより、収納箱へのバンダリズムガードの出し入れを、より簡単に行うことができる。
請求項6の発明とすることにより、収納部に他の部材装置が配されているような場合であっても、該他の部材装置との干渉を避けるようにして支持部材を倒伏姿勢とすることができる。
請求項7の発明とすることにより、傾斜状の倒伏姿勢の支持部材を安定して保持することができる。
請求項8の発明とすることにより、起立姿勢の支持部材が、機体振動等によって不用意に倒れてしまうことを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1は油圧ショベルであって、該油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2、該下部走行体2に旋回自在に支持される上部旋回体3、該上部旋回体3に装着されるフロントアタッチメント4等の各部から構成されている。さらに、前記上部旋回体3には、オペレータの運転スペースを覆うキャブ5、カウンタウエイト6等が設けられていると共に、図示しないエンジンや油圧機器類等の各種機器装置が搭載されていること等の基本的構成は何れも従来通りである。
【0008】
前記キャブ5は、正面、背面、左右の側面、および左側面に設けられる乗降用ドア5aに、ガラスが嵌め込まれた窓7を備えているが、作業終了時に、これら窓7をバンダリズムガード(破壊行為防止板)8で覆うことで、破壊行為や窃盗行為を防止する構成になっている。
【0009】
前記バンダリズムガード8は、本実施の形態では、矩形状の二枚の鉄板をヒンジ8aで折畳み自在に連結して形成されるものであって、該バンダリズムガード8は、その四隅部に穿設された係止孔8bを、各窓7の窓枠に突設されたピン7aの先端部に係止すると共に、適宜箇所をボルト止め7bすることにより、窓7の外側に着脱自在に装着されるように構成されている。
【0010】
一方、上部旋回体3の左側部には、カウンタウエイト6の前方にラジエータ室9(本発明の収納部に相当する)が形成されているが、該ラジエータ室9は、機体内方側に、ラジエータやオイルクーラー、冷却ファン等からなるクーリングユニット10が配される一方、該クーリングユニット10の外機体外方側は、後部側に背低の燃料フィルタ11が配されている以外は殆ど空きスペースになっていて、クーリングユニット10を冷却する冷却風の通路を確保できるようになっている。尚、本実施の形態の説明において、前後左右の方向は、上部旋回体3の前後左右を基準にしており、而して、ラジエータ室9の機体内方側は右、機体外方側は左、キャブ5側は前、カウンタウエイト6側は後としている。
【0011】
12は前記ラジエータ室9の前部に左右方向を向く状態で垂直状に立設される壁面であって、該壁面12には、壁面12の左縁部から後方に向けて延設された前後方向を向く第一側辺12aと、該第一側辺12aの後縁部から左方に向けて延設された左右方向を向く第二側辺12bと、これら第一、第二側辺12a、12bを補強する補強辺12cとが一体的に形成されている。さらに、この壁面12の適宜部位には、後述する収納箱13に収納されたバンダリズムガード8に当接する複数のバンパー14が取り付けられている。
【0012】
前記収納箱13は、窓7から取外した複数のバンダリズムガード8を積層して収納できる大きさを有した矩形箱状のものであって、該収納箱13は、後述する倒伏姿勢で、収納箱13に収納されたバンダリズムガード8の下側に位置する底面13aと、右側(機体内方側)に位置する右側面13bと、前側に位置する前側面13c(該前側面13cは、後述する収納箱13の起立姿勢では、バンダリズムガード8の下側に位置する。)とを有する一方、上側に位置する天井面と、左側(機体外方側)に位置する左側面と、後側に位置する後側面とを備えておらず、これらの部分は開口した状態になっている。また、前記右側面13bおよび前側面13cの先端縁部には、適宜箇所に複数の係止突片13dが取り付けられており、後述するようにバンダリズムガード8を収納箱13に収納した状態で収納箱13を起倒させるときに、前記係止突片13dがバンダリズムガード8に係止することによりバンダリズムガード8が収納箱13から抜け出ることがないように構成されている。
【0013】
そして、収納箱13は、前述した壁面12の後側のラジエータ室9の床面9aに、底面13aと前側面13cとのコーナー部分がヒンジ15を介して揺動自在に取り付けられている。これにより収納箱13は、底面13aがラジエータ室9の床面に対して略垂直状となる起立姿勢(図3参照)と、該起立姿勢からヒンジ15を支点として後方側に揺動することにより底面13aがラジエータ室9の床面9aに対して前低後高の傾斜状となる倒伏姿勢(図4参照)とに起倒自在に構成されている。
【0014】
前記倒伏姿勢の収納箱13は、前述したように、底面13aがラジエータ室9の床面9aに対して前低後高の傾斜状となっており、ここに複数のバンダリズムガード8を積層状に載置できるようになっているが、この場合に収納箱13は、傾斜した倒伏姿勢になっていると共に、右側面13bおよび前側面13cを備え、且つ上側、左側、後側が開口しているため、収納箱13へのバンダリズムガード8の出し入れ作業、つまり、バンダリズムガード8を底面13a上に積層状に積んだり、あるいは底面13a上に積まれたバンダリズムガード8を収納箱13から出したりする作業を、容易に行えるようになっている。
【0015】
さらに、16は収納箱13が倒伏姿勢となったときに底面13aが当接するストッパであって、該ストッパ16に当接することにより、収納箱13がさらに倒れて燃料フィルタ11に干渉してしまうことを回避できるようになっているが、このストッパ16は、燃料フィルタ11が取付けられる燃料フィルタブラケット17に一体的に形成されている。つまり、倒伏姿勢となった収納箱13の下方に位置する燃料フィルタブラケット17を有効利用して、ストッパ16が設けられている。
【0016】
ここで、本実施の形態では、ラジエータ室9の後部に燃料フィルタ11が設置されているため、倒伏姿勢の収納箱13を前低後高の傾斜状として、収納箱13と燃料フィルタ11との干渉を回避したが、ラジエータ室9のスペースに余裕がある場合には、ラジエータ室9の床面9aに接触するまで、つまり水平状となるまで収納箱13を倒すように構成することもできる。
【0017】
一方、前記倒伏姿勢の収納箱13は、ヒンジ15を支点として後部側を上方に揺動せしめることにより起立姿勢となるが、該起立姿勢の収納箱13は、垂直状となった底面13aが壁面12に対して間隔を存する状態で略平行となる。このとき、収納箱13の前側面13cは、先端縁が壁面12に略達する状態でラジエータ室9の床面9aに面接触する。また、右側面13bの先端縁も、壁面12に略達する。一方、収納箱13の左側の開口は、壁面12から延設された第一側辺12aによって覆蓋された状態となる。而して、倒伏姿勢の収納箱13に積層状に載置されたバンダリズムガード8は、収納箱13を起立姿勢にすることによって、壁面12と収納箱13とによって形成される空間部に立姿状態で収納されるように構成されている。さらにこのとき、バンダリズムガード8は、壁面12に取り付けられたバンパー14に弾圧状に当接することによって、ガタのない状態で収納されるようになっている。
【0018】
また、18は前記起立姿勢の収納箱13を固定するための固定具であって、該固定具18は、収納箱13の底面13aに取付けられた係止バンド19と、壁面12の第二側辺12bに取付けられた係止受ブラケット20とから構成されている。そして、係止バンド19の先端側に取り付けられた係止片19aを、係止受ブラケット20の先端部の突起20aに係止せしめることにより、収納箱13を起立姿勢に固定できるようになっている。
尚、収納箱13を起立姿勢に固定する固定具としては、上記バンド式のものに限定されることなく、汎用のラッチ式の錠等を用いて構成することもできる。
【0019】
叙述の如く構成された本形態において、防犯を図るべく窓7に装着されたバンダリズムガード8は、作業開始時には窓7から取外して収納箱13に収納することになるが、該収納箱13は、ラジエータ室9の床面9aに、バンダリズムガード8の収納時には起立姿勢となり、バンダリズムガード8の出し入れ時には倒伏姿勢となるよう起倒自在に設けられている。この結果、起立姿勢となった状態では、ラジエータ室9にコンパクトに納まることになって、ラジエータ室9に配されたクーリングユニット10の機体外方側の空きスペースを塞ぐことなく、クーリングユニット10を冷却する冷却風の流れを妨げないものでありながら、前記空きスペースを利用して収納箱13を倒伏姿勢にすることにより、収納箱13へのバンダリズムガード8の出し入れを容易に行うことができる。
【0020】
しかも、前記倒伏姿勢の収納箱13は、上側、左側(機体外方側)および後側が開口しているため、収納箱13へのバンダリズムガード8の出し入れが極めて容易であると共に、出し入れの際にバンダリズムガード8をスライドさせる必要がなく、而して、バンダリズムガード8同士やバンダリズムガード8と収納箱13とが擦れて傷付いてしまうことを回避できる。
【0021】
さらに、収納箱13が起立姿勢となった状態では、前記倒伏姿勢のときに開口している箇所は、立姿状態のバンダリズムガード8の上側部分を除き、壁面12および該壁面12に一体形成される第一側辺12aによって塞がれた状態となるため、バンダリズムガード8は収納箱13内に確実に納まることになる。
【0022】
しかも前記起立姿勢の収納箱13は、固定具18によって固定されることになるため、起立姿勢の収納箱13が機体振動等によって不用意に倒れてしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】油圧ショベルの側面図である。
【図2】(A)はバンダリズムガードをキャブの正面の窓に装着した状態を示す図、(B)はバンダリズムガードを乗降用ドアの窓に装着した状態を示す図である。
【図3】収納箱が起立姿勢のときのラジエータ室を示す図である。
【図4】収納箱が倒伏姿勢のときのラジエータ室を示す図である。
【図5】固定具を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
8 バンダリズムガード
9 ラジエータ室
12 壁面
13 収納箱
13a 底面
13b 右側面
13c 前側面
15 ヒンジ
16 ストッパ
18 固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体に設けられた収納部に複数のバンダリズムガードを収納するにあたり、該複数のバンダリズムガードを積層状に支持するための支持部材を設け、該支持部材を、バンダリズムガード収納時には起立姿勢となり、バンダリズムガード出し入れ時には倒伏姿勢となるよう前記収納部に起倒自在に設けたことを特徴とする建設機械におけるバンダリズムガードの収納構造。
【請求項2】
請求項1において、支持部材は、倒伏姿勢時においてバンダリズムガードの下側に位置する面を有し、上側が開口した収納箱であることを特徴とする建設機械におけるバンダリズムガードの収納構造。
【請求項3】
請求項2において、収納箱は、倒伏姿勢時においてバンダリズムガードの機体内方側に位置する面を有し、機体外方側が開口していることを特徴とする建設機械におけるバンダリズムガードの収納構造。
【請求項4】
請求項2または3において、起立姿勢時における収納箱開口側のバンダリズムガードは、収納部に立設された壁面によって支持されることを特徴とする建設機械におけるバンダリズムガードの収納構造。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れかにおいて、収納箱は、起立姿勢時においてバンダリズムガードの下側に位置する面を有し、上側が開口していることを特徴とする建設機械におけるバンダリズムガードの収納構造。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかにおいて、倒伏姿勢の支持部材は、収納部の床面に対して傾斜状であることを特徴とする建設機械におけるバンダリズムガードの収納構造。
【請求項7】
請求項6において、倒伏姿勢の支持部材を保持する保持部材を設けたことを特徴とする建設機械におけるバンダリズムガードの収納構造。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れかにおいて、起立姿勢の支持部材を固定する固定具を設けたことを特徴とする建設機械におけるバンダリズムガードの収納構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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