建設機械における空調ダクトの配置構造
【課題】エアダクトの管体をクロスバーを迂回することなく配置することができて、ルーフパネルの下面からエアダクトの接続部までの間隔を狭くすることができるようにすること。
【解決手段】キャブ11のルーフパネル13と室内パネル15との間の空間にクロスバー21を設けるとともに、同空間にエアダクト17の水平ダクト部19を通す。クロスバー21をウェブとリブ21bとを有する形鋼により構成する。リブ21bには透孔22を形成する。エアダクト17の水平ダクト部19の管体19a,19bを透孔22に対応してリブ21bに固定する。透孔22を介して水平ダクト部19の管体19a,19bを接続する。
【解決手段】キャブ11のルーフパネル13と室内パネル15との間の空間にクロスバー21を設けるとともに、同空間にエアダクト17の水平ダクト部19を通す。クロスバー21をウェブとリブ21bとを有する形鋼により構成する。リブ21bには透孔22を形成する。エアダクト17の水平ダクト部19の管体19a,19bを透孔22に対応してリブ21bに固定する。透孔22を介して水平ダクト部19の管体19a,19bを接続する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブルドーザ等の建設機械における空調ダクトの配置構造に係り、特にそのキャブの天井部におけるエアダクトの配置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の建設機械においては、キャブの後方下部に空気調和装置のエバポレータ,ヒータコア,ファン等を内蔵するメイン機構(以下、空調メイン機構という)が設置されている。そして、この空調メイン機構のエア送出側に接続されたエアダクトは、空調メイン機構の位置から上方へ延長されて、特許文献1に記載されているように、キャブのルーフパネルと室内パネルとの間に配置され、さらにそのルーフパネルと室内パネルとの間の内部において前方に延長されている。そして、エアダクトの前端部には、キャブ内の空間やフロントガラスに向かってエアを吹出すための吹出し口が設けられている。
【0003】
ところで、近年、大きな外部荷重に対して高い抗堪性を備えたキャブが要求されてきている。この要求に対して、前記ルーフパネルと室内パネルとの間において、キャブの左右のセンターピラーの上端間には、図14に示すように、補強メンバーである大型のクロスバー31が架設されている。そして、エアダクト34は、このクロスバー31の下側を迂回した状態で、室内パネル33とクロスバー31との間の空間内に配置されている。エアダクト34は複数の管体34a,34b等を接続して構成されている。そして、前記クロスバー31の部分において後側管体34aと前側管体34bとは、クロスバー31の下側でシール35を介して接続される。
【特許文献1】米国特許第6322136号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように、前記の従来の建設機械における空調ダクトの配置構造においては、クロスバー31の下側にエアダクト34が存在する。そのため、ルーフパネル32と室内パネル33との間の間隔L1が広くなり、結果として室内空間が狭くなってしまう問題があった。また、エアダクト34がクロスバー31の下面を迂回される構成は、エアダクト34内のエア流路を大きく屈曲させることになり、このため、この屈曲部において乱流が生じたり、通路断面積が小さくなったりして、エアダクト34内を流れるエアの流量低下や騒音発生等を招くものであった。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、クロスバーが存在しても、そのクロスバーを迂回することなくエアダクトを配管することができる建設機械における空調ダクトの配置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、キャブのルーフパネルと室内天井パネルとの間の空間にキャブフレームのクロスバーを設けるとともに、前記空間にエアダクトを通した建設機械において、前記クロスバーをウェブとリブとにより構成し、前記リブに透孔を形成して、その透孔が前記エアダクトの一部を構成したことを特徴としている。
【0007】
従って、キャブのルーフパネルと室内パネルとの間の空間において、エアダクトの管体をクロスバーの下側に迂回することなく、クロスバーのリブに形成した透孔を介して接続することができる。よって、ルーフパネルの下面からエアダクトの接続部までの間隔を短くすることができる。
【0008】
前記の構成において、前記エアダクトを前後方向に延長するとともに、前記クロスバーを左右のセンターピラーの上端間に架設するとよい。
さらに、前記の構成において、前記エアダクトを複数の管体により構成し、その管体を前記透孔の周縁部において前記リブに接合させるとよい。
【0009】
また、前記の構成において、前記クロスバーを、平板よりなるウェブと、同じく平板よりなるリブとにより全体として断面T形に形成するとよい。
さらに、前記の構成において、前記透孔を横長形状にするとよい。
【0010】
さらに、前記の構成において、前記透孔をリブの上縁部に配置するとよい。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、この発明によれば、クロスバーを迂回することなくエアダクトを配置することができて、ルーフパネルと室内パネルとの間の間隔を狭くできるとともに、エアダクト内のエア流路の屈曲を抑制できるという効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下に、この発明の第1実施形態を、図1〜図10に基づいて説明する。
図1〜図4に示すように、この実施形態の建設機械におけるキャブ11は、フレーム12を備えている。床パネル14は、フレーム12の床部を形成している。フレーム12はそれぞれ左右各一対のフロントピラー12a,センターピラー12b及びリヤピラー12cを備えている。ルーフパネル13は、前記各ピラー12a〜12cの上端間に架設され、フレーム12のルーフを形成している。図7及び図8に鎖線で示すように、室内天井パネル(以下、室内パネルという)15は、ルーフパネル13の下方に所定の間隔L1をおいて配置されている。同じく図7〜図9に示すように、前記左右のセンターピラー12bの上端間には左右方向に延びるクロスバー21が架設固定され、このクロスバー21は前記ルーフパネル13と室内パネル15との間に配置されている。
【0013】
図1〜図3及び図5に破線で示すように、空気調和装置のメイン機構16は、前記キャブ11内の下部後方に設置されている。エアダクト17は空調メイン機構16におけるエバポレータ(図示しない)のエア送出口(図示しない)に接続されている。図2及び図4に示すように、このエアダクト17は、キャブ11のフレーム12の右リヤピラー12cの内側面に沿って上方に延びる垂直ダクト部18と、垂直ダクト部18の上端からルーフパネル13と室内パネル15との間の空間を経て前方に延びる水平ダクト部19とを備えている。前記垂直ダクト部18は、複数の管体18a〜18cを接続して構成されている。
【0014】
図5,図7及び図8に示すように、エアダクト17の水平ダクト部19は、後側管体19aと前側管体19bとを互いに接続することによって構成されている。複数のエア吹出し口20はキャブ11内に向かってエアを噴出するように、水平ダクト部19における前側管体19bの先端部の下側に形成されている。なお、前記水平ダクト部19は、前記ルーフパネル13の下面に固定されている。
【0015】
そこで、前記クロスバー21の構成と、前記エアダクト17における水平ダクト部19の後側管体19aと前側管体19bとの接続構成とについて詳細に説明する。
図9及び図10に示すように、前記クロスバー21は、左右方向に沿って延びる平板よりなるウェブ21aと、そのウェブ21aの下面に対して直角をなす平板よりなるリブ21bとにより、全体として断面T形をなすように形鋼によって構成されている。前記ウェブ21aとリブ21bとは一体であっても、別体を溶接によって固着したものであっても、いずれでもよい。正面横長四角形状の透孔22は、前記リブ21bの左右方向の中央部において同リブ21bの上縁部側に片寄せて形成されている。この透孔22の上下幅はリブ21bの全幅(上下幅)に対して3分の2以下であり、透孔22の左右幅はリブ21bの全長に対して3分の1以下であることが好ましい。
【0016】
図5〜図8に示すように、下辺及び左右両側辺にフランジ23aを有する後側接続口23は、前記水平ダクト部19の後側管体19aの前端に形成されている。後側接続口23と同様に下辺及び左右両側辺にフランジ24aを有する前側接続口24は、水平ダクト部19の前側管体19bの後端に形成されている。そして、後側管体19a及び前側管体19bの後側接続口23及び前側接続口24がそれぞれクロスバー21のリブ21bの後面側及び前面側において、透孔22と対応して配置される。
【0017】
ゴムやエラストマー等よりなる後側シール25及び前側シール26は、それぞれ後側管体19aの後側接続口23及び前側管体19bの前側接続口24と、リブ21bの後面側及び前面側における透孔22の開口周縁との間に介装されている。すなわち、後側シール25及び前側シール26は、それぞれ前記後側のフランジ23aの前面と後側接続口23の上壁の外側面、前記前側のフランジ24aの前面と前側接続口24の上壁側の外側面に接着により固定されている。そして、後側シール25及び前側シール26は、それぞれ透孔22の周縁におけるリブ21bの後面及び前面と、ウェブ21aの下面とに圧接されている。なお、後側シール25及び前側シール26は、それぞれ透孔22の周縁におけるリブ21bの後面及び前面と、ウェブ21aの下面とに接着によって固定されてもよい。
【0018】
従って、エアダクト17における水平ダクト部19の後側管体19aと前側管体19bとを、クロスバー21の下側に迂回することなく、そのクロスバー21のリブ21bに形成した透孔22を介して接続することができる。すなわち、前記透孔22は、エアダクト17の一部を構成する。
【0019】
よって、この実施形態においては、エアダクト17はクロスバー21の下面を迂回されることなく、ルーフパネル13の下面に沿って延長される。このため、図8に示すように、ルーフパネル13の下面から室内パネル15までの間隔L1を、図14に示す従来構成の場合と比較して短くすることができる。このため、キャブ11内において広い室内空間を確保できる。また、この実施形態においては、図14に示す従来構成と比較して、エアダクト17内の屈曲度合いを抑制でき、乱流の発生を少なくすることができる。また、ルーフパネル13の下面から室内パネル15までの間隔L1が広くなることを防止できるため、エアダクト17の通路断面積を小さくする必要はない。このため、空調エアの流量が低下したり、騒音が発生したりすることを抑えることができる。
【0020】
さらに、透孔22はリブ21bの上縁部に横長形状をもって形成されているため、クロスバー21は充分な強度を維持できる。
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。なお、この第2実施形態以降の各実施形態及び変形例においては、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0021】
この第2実施形態においては、図11に示すように、クロスバー21を第1実施形態に対して上下反転して架設したものである。従って、後側管体19a及び前側管体19bの接続口23,24のフランジ23a,24a及びシール25,25も上下反転した構成である。
【0022】
この第2実施形態は、前述のように第1実施形態に対してクロスバー21等の上下の向きが異なるのみなので、第1実施形態と同様な作用を得ることができる。
(第3実施形態)
次に、この発明の第3実施形態を説明する。
【0023】
この第3実施形態においては、図12に示すように、クロスバー21が、下側のウェブ21aと一対の前後両側のリブ21bとにより、全体として断面チャンネル形をなすように形成されている。透孔22は、両リブ21bに形成されている。エア流路を形成する接続筒28は、両リブ21bの透孔22間に嵌合されている。後側のフランジ23a及び前側のフランジ24aは、それぞれ後側接続口23及び前側接続口24の全周に形成されている。後側シール25及び前側シール26は、それぞれ両フランジ23a,24aの外面に接着固定されている。そして、これらのシール25,26がリブ21bの前後両面側における透孔22の開口周縁において前記接続筒28の両端面及びリブ21bの前後両側面に接合されることにより、両接続口23,24が透孔22を介して接続されている。前記接続筒28は、エアダクト17内を流れるエアがクロスバー21の両端方向に漏洩することを防止している。
【0024】
従って、この第3実施形態においても、前記第1実施形態に記載の効果と同様な作用を得ることができる。さらに、この第3実施形態においては、クロスバー21のリブ21bが2箇所に形成されているため、透孔22の上下幅を狭くすることなく、リブ21bの上下幅を狭くしてもリブ21bの強度を維持できる。従って、ルーフパネル13と室内パネル15との間の間隔を狭くでき、キャブ11の室内空間の広闊化に寄与できる。
【0025】
(第4実施形態)
次に、この発明の第4実施形態を説明する。
この第4実施形態においては、図13に示すように、クロスバー21を第3実施形態に対して上下反転して架設したものである。従って、この第4実施形態においては、第3実施形態と同様な作用を得ることができる。
【0026】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ クロスバー21をウェブとリブとよりなる断面L型の形状に形成すること。
【0027】
・ クロスバー21をウェブとリブとよりなる断面角パイプ型の形状に形成すること。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明を具体化した空調ダクトの配置構造が備えられた建設機械の側面図。
【図2】第1実施形態の建設機械における空調ダクトの配置構造のキャブを示す斜視図。
【図3】図2の建設機械における空調ダクトの配置構造のキャブを別の方向から示す斜視図。
【図4】図2の建設機械における空調ダクトの配置構造のキャブをさらに別の方向から示す斜視図。
【図5】同建設機械における空調ダクトの配置構造のキャブの部分破断平面図。
【図6】空調ダクトの配置構造におけるエアダクトの接続部分を示す分解斜視図。
【図7】図5の7−7線における断面図。
【図8】図7の一部をさらに拡大して示す部分断面図。
【図9】クロスバーの部分を示す図5の9−9線における断面図。
【図10】クロスバーを示す断面図。
【図11】第2実施形態の空調ダクトの配置構造におけるエアダクトの接続構成を示す部分断面図。
【図12】第3実施形態の空調ダクトの配置構造におけるエアダクトの接続構成を示す部分断面図。
【図13】第4実施形態の空調ダクトの配置構造におけるエアダクトの接続構成を示す部分断面図。
【図14】従来の建設機械における空調ダクトの配置構造におけるエアダクトの接続構成を示す部分断面図。
【符号の説明】
【0029】
11…キャブ、12…フレーム、12b…センターピラー、13…ルーフパネル、15…室内天井パネル、16…空気調和装置、17…エアダクト、18…垂直ダクト部、18a…管体、18b…管体、18c…管体、19…水平ダクト部、19a…後側管体、19b…前側管体、21…クロスバー、21a…ウェブ、21b…リブ、22…透孔、23…後側接続口、24…前側接続口、25…後側シール、26…前側シール。
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブルドーザ等の建設機械における空調ダクトの配置構造に係り、特にそのキャブの天井部におけるエアダクトの配置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の建設機械においては、キャブの後方下部に空気調和装置のエバポレータ,ヒータコア,ファン等を内蔵するメイン機構(以下、空調メイン機構という)が設置されている。そして、この空調メイン機構のエア送出側に接続されたエアダクトは、空調メイン機構の位置から上方へ延長されて、特許文献1に記載されているように、キャブのルーフパネルと室内パネルとの間に配置され、さらにそのルーフパネルと室内パネルとの間の内部において前方に延長されている。そして、エアダクトの前端部には、キャブ内の空間やフロントガラスに向かってエアを吹出すための吹出し口が設けられている。
【0003】
ところで、近年、大きな外部荷重に対して高い抗堪性を備えたキャブが要求されてきている。この要求に対して、前記ルーフパネルと室内パネルとの間において、キャブの左右のセンターピラーの上端間には、図14に示すように、補強メンバーである大型のクロスバー31が架設されている。そして、エアダクト34は、このクロスバー31の下側を迂回した状態で、室内パネル33とクロスバー31との間の空間内に配置されている。エアダクト34は複数の管体34a,34b等を接続して構成されている。そして、前記クロスバー31の部分において後側管体34aと前側管体34bとは、クロスバー31の下側でシール35を介して接続される。
【特許文献1】米国特許第6322136号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のように、前記の従来の建設機械における空調ダクトの配置構造においては、クロスバー31の下側にエアダクト34が存在する。そのため、ルーフパネル32と室内パネル33との間の間隔L1が広くなり、結果として室内空間が狭くなってしまう問題があった。また、エアダクト34がクロスバー31の下面を迂回される構成は、エアダクト34内のエア流路を大きく屈曲させることになり、このため、この屈曲部において乱流が生じたり、通路断面積が小さくなったりして、エアダクト34内を流れるエアの流量低下や騒音発生等を招くものであった。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、クロスバーが存在しても、そのクロスバーを迂回することなくエアダクトを配管することができる建設機械における空調ダクトの配置構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、キャブのルーフパネルと室内天井パネルとの間の空間にキャブフレームのクロスバーを設けるとともに、前記空間にエアダクトを通した建設機械において、前記クロスバーをウェブとリブとにより構成し、前記リブに透孔を形成して、その透孔が前記エアダクトの一部を構成したことを特徴としている。
【0007】
従って、キャブのルーフパネルと室内パネルとの間の空間において、エアダクトの管体をクロスバーの下側に迂回することなく、クロスバーのリブに形成した透孔を介して接続することができる。よって、ルーフパネルの下面からエアダクトの接続部までの間隔を短くすることができる。
【0008】
前記の構成において、前記エアダクトを前後方向に延長するとともに、前記クロスバーを左右のセンターピラーの上端間に架設するとよい。
さらに、前記の構成において、前記エアダクトを複数の管体により構成し、その管体を前記透孔の周縁部において前記リブに接合させるとよい。
【0009】
また、前記の構成において、前記クロスバーを、平板よりなるウェブと、同じく平板よりなるリブとにより全体として断面T形に形成するとよい。
さらに、前記の構成において、前記透孔を横長形状にするとよい。
【0010】
さらに、前記の構成において、前記透孔をリブの上縁部に配置するとよい。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、この発明によれば、クロスバーを迂回することなくエアダクトを配置することができて、ルーフパネルと室内パネルとの間の間隔を狭くできるとともに、エアダクト内のエア流路の屈曲を抑制できるという効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下に、この発明の第1実施形態を、図1〜図10に基づいて説明する。
図1〜図4に示すように、この実施形態の建設機械におけるキャブ11は、フレーム12を備えている。床パネル14は、フレーム12の床部を形成している。フレーム12はそれぞれ左右各一対のフロントピラー12a,センターピラー12b及びリヤピラー12cを備えている。ルーフパネル13は、前記各ピラー12a〜12cの上端間に架設され、フレーム12のルーフを形成している。図7及び図8に鎖線で示すように、室内天井パネル(以下、室内パネルという)15は、ルーフパネル13の下方に所定の間隔L1をおいて配置されている。同じく図7〜図9に示すように、前記左右のセンターピラー12bの上端間には左右方向に延びるクロスバー21が架設固定され、このクロスバー21は前記ルーフパネル13と室内パネル15との間に配置されている。
【0013】
図1〜図3及び図5に破線で示すように、空気調和装置のメイン機構16は、前記キャブ11内の下部後方に設置されている。エアダクト17は空調メイン機構16におけるエバポレータ(図示しない)のエア送出口(図示しない)に接続されている。図2及び図4に示すように、このエアダクト17は、キャブ11のフレーム12の右リヤピラー12cの内側面に沿って上方に延びる垂直ダクト部18と、垂直ダクト部18の上端からルーフパネル13と室内パネル15との間の空間を経て前方に延びる水平ダクト部19とを備えている。前記垂直ダクト部18は、複数の管体18a〜18cを接続して構成されている。
【0014】
図5,図7及び図8に示すように、エアダクト17の水平ダクト部19は、後側管体19aと前側管体19bとを互いに接続することによって構成されている。複数のエア吹出し口20はキャブ11内に向かってエアを噴出するように、水平ダクト部19における前側管体19bの先端部の下側に形成されている。なお、前記水平ダクト部19は、前記ルーフパネル13の下面に固定されている。
【0015】
そこで、前記クロスバー21の構成と、前記エアダクト17における水平ダクト部19の後側管体19aと前側管体19bとの接続構成とについて詳細に説明する。
図9及び図10に示すように、前記クロスバー21は、左右方向に沿って延びる平板よりなるウェブ21aと、そのウェブ21aの下面に対して直角をなす平板よりなるリブ21bとにより、全体として断面T形をなすように形鋼によって構成されている。前記ウェブ21aとリブ21bとは一体であっても、別体を溶接によって固着したものであっても、いずれでもよい。正面横長四角形状の透孔22は、前記リブ21bの左右方向の中央部において同リブ21bの上縁部側に片寄せて形成されている。この透孔22の上下幅はリブ21bの全幅(上下幅)に対して3分の2以下であり、透孔22の左右幅はリブ21bの全長に対して3分の1以下であることが好ましい。
【0016】
図5〜図8に示すように、下辺及び左右両側辺にフランジ23aを有する後側接続口23は、前記水平ダクト部19の後側管体19aの前端に形成されている。後側接続口23と同様に下辺及び左右両側辺にフランジ24aを有する前側接続口24は、水平ダクト部19の前側管体19bの後端に形成されている。そして、後側管体19a及び前側管体19bの後側接続口23及び前側接続口24がそれぞれクロスバー21のリブ21bの後面側及び前面側において、透孔22と対応して配置される。
【0017】
ゴムやエラストマー等よりなる後側シール25及び前側シール26は、それぞれ後側管体19aの後側接続口23及び前側管体19bの前側接続口24と、リブ21bの後面側及び前面側における透孔22の開口周縁との間に介装されている。すなわち、後側シール25及び前側シール26は、それぞれ前記後側のフランジ23aの前面と後側接続口23の上壁の外側面、前記前側のフランジ24aの前面と前側接続口24の上壁側の外側面に接着により固定されている。そして、後側シール25及び前側シール26は、それぞれ透孔22の周縁におけるリブ21bの後面及び前面と、ウェブ21aの下面とに圧接されている。なお、後側シール25及び前側シール26は、それぞれ透孔22の周縁におけるリブ21bの後面及び前面と、ウェブ21aの下面とに接着によって固定されてもよい。
【0018】
従って、エアダクト17における水平ダクト部19の後側管体19aと前側管体19bとを、クロスバー21の下側に迂回することなく、そのクロスバー21のリブ21bに形成した透孔22を介して接続することができる。すなわち、前記透孔22は、エアダクト17の一部を構成する。
【0019】
よって、この実施形態においては、エアダクト17はクロスバー21の下面を迂回されることなく、ルーフパネル13の下面に沿って延長される。このため、図8に示すように、ルーフパネル13の下面から室内パネル15までの間隔L1を、図14に示す従来構成の場合と比較して短くすることができる。このため、キャブ11内において広い室内空間を確保できる。また、この実施形態においては、図14に示す従来構成と比較して、エアダクト17内の屈曲度合いを抑制でき、乱流の発生を少なくすることができる。また、ルーフパネル13の下面から室内パネル15までの間隔L1が広くなることを防止できるため、エアダクト17の通路断面積を小さくする必要はない。このため、空調エアの流量が低下したり、騒音が発生したりすることを抑えることができる。
【0020】
さらに、透孔22はリブ21bの上縁部に横長形状をもって形成されているため、クロスバー21は充分な強度を維持できる。
(第2実施形態)
次に、この発明の第2実施形態を、前記第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。なお、この第2実施形態以降の各実施形態及び変形例においては、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0021】
この第2実施形態においては、図11に示すように、クロスバー21を第1実施形態に対して上下反転して架設したものである。従って、後側管体19a及び前側管体19bの接続口23,24のフランジ23a,24a及びシール25,25も上下反転した構成である。
【0022】
この第2実施形態は、前述のように第1実施形態に対してクロスバー21等の上下の向きが異なるのみなので、第1実施形態と同様な作用を得ることができる。
(第3実施形態)
次に、この発明の第3実施形態を説明する。
【0023】
この第3実施形態においては、図12に示すように、クロスバー21が、下側のウェブ21aと一対の前後両側のリブ21bとにより、全体として断面チャンネル形をなすように形成されている。透孔22は、両リブ21bに形成されている。エア流路を形成する接続筒28は、両リブ21bの透孔22間に嵌合されている。後側のフランジ23a及び前側のフランジ24aは、それぞれ後側接続口23及び前側接続口24の全周に形成されている。後側シール25及び前側シール26は、それぞれ両フランジ23a,24aの外面に接着固定されている。そして、これらのシール25,26がリブ21bの前後両面側における透孔22の開口周縁において前記接続筒28の両端面及びリブ21bの前後両側面に接合されることにより、両接続口23,24が透孔22を介して接続されている。前記接続筒28は、エアダクト17内を流れるエアがクロスバー21の両端方向に漏洩することを防止している。
【0024】
従って、この第3実施形態においても、前記第1実施形態に記載の効果と同様な作用を得ることができる。さらに、この第3実施形態においては、クロスバー21のリブ21bが2箇所に形成されているため、透孔22の上下幅を狭くすることなく、リブ21bの上下幅を狭くしてもリブ21bの強度を維持できる。従って、ルーフパネル13と室内パネル15との間の間隔を狭くでき、キャブ11の室内空間の広闊化に寄与できる。
【0025】
(第4実施形態)
次に、この発明の第4実施形態を説明する。
この第4実施形態においては、図13に示すように、クロスバー21を第3実施形態に対して上下反転して架設したものである。従って、この第4実施形態においては、第3実施形態と同様な作用を得ることができる。
【0026】
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ クロスバー21をウェブとリブとよりなる断面L型の形状に形成すること。
【0027】
・ クロスバー21をウェブとリブとよりなる断面角パイプ型の形状に形成すること。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明を具体化した空調ダクトの配置構造が備えられた建設機械の側面図。
【図2】第1実施形態の建設機械における空調ダクトの配置構造のキャブを示す斜視図。
【図3】図2の建設機械における空調ダクトの配置構造のキャブを別の方向から示す斜視図。
【図4】図2の建設機械における空調ダクトの配置構造のキャブをさらに別の方向から示す斜視図。
【図5】同建設機械における空調ダクトの配置構造のキャブの部分破断平面図。
【図6】空調ダクトの配置構造におけるエアダクトの接続部分を示す分解斜視図。
【図7】図5の7−7線における断面図。
【図8】図7の一部をさらに拡大して示す部分断面図。
【図9】クロスバーの部分を示す図5の9−9線における断面図。
【図10】クロスバーを示す断面図。
【図11】第2実施形態の空調ダクトの配置構造におけるエアダクトの接続構成を示す部分断面図。
【図12】第3実施形態の空調ダクトの配置構造におけるエアダクトの接続構成を示す部分断面図。
【図13】第4実施形態の空調ダクトの配置構造におけるエアダクトの接続構成を示す部分断面図。
【図14】従来の建設機械における空調ダクトの配置構造におけるエアダクトの接続構成を示す部分断面図。
【符号の説明】
【0029】
11…キャブ、12…フレーム、12b…センターピラー、13…ルーフパネル、15…室内天井パネル、16…空気調和装置、17…エアダクト、18…垂直ダクト部、18a…管体、18b…管体、18c…管体、19…水平ダクト部、19a…後側管体、19b…前側管体、21…クロスバー、21a…ウェブ、21b…リブ、22…透孔、23…後側接続口、24…前側接続口、25…後側シール、26…前側シール。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャブのルーフパネルと室内天井パネルとの間の空間にキャブフレームのクロスバーを設けるとともに、前記空間にエアダクトを通した建設機械において、
前記クロスバーをウェブとリブとにより構成し、前記リブに透孔を形成して、その透孔が前記エアダクトの一部を構成したことを特徴とする建設機械における空調ダクトの配置構造。
【請求項2】
前記エアダクトを前後方向に延長するとともに、前記クロスバーを左右のセンターピラーの上端間に架設したことを特徴とする請求項1に記載の建設機械における空調ダクトの配置構造。
【請求項3】
前記エアダクトを複数の管体により構成し、その管体を前記透孔の周縁部において前記リブに接合させたことを特徴とする請求項1または2に記載の建設機械における空調ダクトの配置構造。
【請求項4】
前記クロスバーを、平板よりなるウェブと、同じく平板よりなるリブとにより全体として断面T形に形成したことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の建設機械における空調ダクトの配置構造。
【請求項5】
前記透孔を横長形状にしたことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の建設機械における空調ダクトの配置構造。
【請求項6】
前記透孔をリブの上縁部に配置したことを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の建設機械における空調ダクトの配置構造。
【請求項1】
キャブのルーフパネルと室内天井パネルとの間の空間にキャブフレームのクロスバーを設けるとともに、前記空間にエアダクトを通した建設機械において、
前記クロスバーをウェブとリブとにより構成し、前記リブに透孔を形成して、その透孔が前記エアダクトの一部を構成したことを特徴とする建設機械における空調ダクトの配置構造。
【請求項2】
前記エアダクトを前後方向に延長するとともに、前記クロスバーを左右のセンターピラーの上端間に架設したことを特徴とする請求項1に記載の建設機械における空調ダクトの配置構造。
【請求項3】
前記エアダクトを複数の管体により構成し、その管体を前記透孔の周縁部において前記リブに接合させたことを特徴とする請求項1または2に記載の建設機械における空調ダクトの配置構造。
【請求項4】
前記クロスバーを、平板よりなるウェブと、同じく平板よりなるリブとにより全体として断面T形に形成したことを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の建設機械における空調ダクトの配置構造。
【請求項5】
前記透孔を横長形状にしたことを特徴とする請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の建設機械における空調ダクトの配置構造。
【請求項6】
前記透孔をリブの上縁部に配置したことを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の建設機械における空調ダクトの配置構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2008−265604(P2008−265604A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−113050(P2007−113050)
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月23日(2007.4.23)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
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