説明

建設機械における空調装置

【課題】フロア下方に空調装置本体の取り付けスペースを確保するにあたり、空調装置本体に土、泥、塵や水が浸入し難くすることで空調装置本体が故障することを防止し、しかもフロアの前部に備えられるコントロールバルブ等の配設スペースを確保することができる空調装置を提供する。
【解決手段】空調装置本体9を、フロア7の後側に配置された操縦席5の略下位置に、フロア7の下側から凹陥状のトレイ12を介してフロア7に埋設状に配設しており、フロア7の前側に配置されるコントロールバルブや走行レバーの配置スペースを確保することができる上、従来の空調装置本体9のメンテナンスのための開閉式のフロア7を、オペレータの足の置かれ難い操縦席5の底板5aと兼用することができる構成にしており、このため、フロア7に溜まった土、泥、塵や水の侵入を少なくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械における空調装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種建設機械においては操縦席全体を覆うべくキャブを備えたものがあり、このようなキャブを備えたものは、キャブ内温度の調整をするため空調装置を設けたものがある。このような空調装置は、建設機械が大型であってキャブ自体も大きいものである場合、キャブ天井部や操縦席背面に取り付けスペースを確保して取り付けることができるが、建設機械が小型になってキャブが小さくなると前記天井部等に取り付けスペースを確保することができず、そこで従来、運転席の前方に確保される床面(フロア)の下方に取り付けスペースを確保し、ここに空調装置本体を配設するようにしたものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−2479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで前記フロア下方に空調装置本体の取り付けスペースを確保したものでは、空調装置本体のメンテナンスのためフロアを開閉式にする必要があり、そうした場合に、フロアの開閉部分に隙間が形成されやすく、この隙間からフロアに溜まった土、泥、塵や水が浸入するおそれがある。この結果、空調装置本体の故障を招き易いといった問題がある。
また、一般に、運転席前方のフロアの下側には、各種油圧アクチュエータを制御するためのコントロールバルブを備えるが、このものでは、このスペースに空調装置本体を配設するので、コントロールバルブの配置位置を別途検討する必要があるといった問題があり、ここに解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、オペレータが着座して操縦するための操縦席と、該操縦席を覆うためのキャブと、該キャブの床板であるフロアと、前記キャブの室内に備えられると共に、室内の空気を調整するための空調装置本体とを備えて構成された建設機械において、空調装置は、キャブの室内に配設される空調装置本体を、操縦席の下位置に位置してフロアに埋設状に配設したことを特徴とする建設機械における空調装置である。
請求項2の発明は、操縦席は、後方支点として、空調装置本体を隠蔽して着座可能な着座姿勢と、前側が上方に揺動して空調装置本体を露出する露出姿勢とに変姿することができることを特徴とする請求項1記載の建設機械における空調装置である。
請求項3の発明は、空調装置は、内外気を空調装置本体に導入するための内外気導入部を、操縦席の左右方向外側に備えて構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の建設機械における空調装置である。
請求項4の発明は、空調装置本体は、キャブフロアに凹陥状に設けたトレイに収容されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の空調装置である。
請求項5の発明は、トレイには、トレイに浸入した水を排出するための水抜き孔と、空調装置本体から排出される水を排出するための水抜き孔とが設けられると共に、これら水抜き孔にはホースが設けられ、該ホースの下側部には、外部からの水の浸入を防止するための逆止弁が設けられていることを特徴とする請求項4記載の空調装置である。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明とすることにより、足の置き場から離れ土や水等が溜まり難い位置に空調装置本体を配設することができる。この結果、この結果、空調装置本体に土、水等が入り込み難くものとすることができる。また、空調装置本体を運転席前方のフロア下側を除いて配設しており、このため、コントロールバルブの配置位置を十分に確保することができる。
請求項2の発明とすることにより、空調装置本体のメンテナンスを、操縦席を露出姿勢に変姿させるだけでなされるため、従来のように、フロアを開閉する必要がないだけでなく、コンソールや操縦席などの装置を取り外す必要がなくなるため、面倒かつ汚れる心配の無いものとすることができる。
請求項3の発明とすることにより、内外気導入部を、操縦席を備えるに邪魔にならない位置で、かつ、キャブの側壁に近い位置に備えることができるので、キャブの側壁を介して給気ダクトを備えることで空気を外から吸引し易いものとすることができる。
請求項4の発明とすることにより、フロア下側に空調装置を容易に配設することができる。
請求項5の発明とすることにより、トレイに水の溜まり難い構成とすることができるうえ、ホースの排出端側から水が浸入しようとする場合に、水の浸入を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。図中、1は油圧ショベルであって、該油圧ショベル1は、クローラ式の下部旋回体2と、該下部旋回体に旋回自在に支持される上部旋回体3と、該上部旋回体3に上下揺動自在に設けられるフロントアタッチメント4とを備えて構成されている。さらに、油圧ショベル1は、オペレータが着座して操縦するための操縦席5と、上部旋回体3に備えられ前記操縦席5の全体を覆うためのキャブ6とを備えている等の基本的な構成は、従来どおりである。
【0007】
キャブ6には、前記操縦席5以外に、床板であるフロア7、キャブ6の室内の空気を調整するための空調装置のうちキャブ6に内装される部分(後述する内外気導入部8、空調装置本体9、分配器10等)、図示しない走行レバー、コンソールボックス等が備えられている。因みに、空調装置のうちキャブ6の室外に装着される部分としては、エンジン収納部に配置されるコンプレッサー、コンデンサ、減圧器(何れも図示せず)等がある。
【0008】
前記フロア7には、前部上(表面)方に前記走行レバーが、前側の下方(背面側)に油圧ショベル1の各種油圧アクチュエータへの圧油供給制御を行うためのコントロールバルブ(何れも図示せず)等が備えられると共に、後部上方に操縦席5が配置されることになるが、該操縦席5を配置させるフロア7位置に、表裏面(上下面)を貫通した開口部7aが形成されている。
【0009】
ところで、操縦席5は、板状の底板5aに座席部5bを備えた構成になっており、底板5aは、前記開口部7aを上側から覆う状態で、後端が蝶番11を介してフロア7に揺動自在に蝶着されており、これによって、開口部7aの開閉が自在にできるようになっている。つまり、操縦席5は、図2(A)に示すように、オペレータが座席部5bに着座可能な着座姿勢で開口部7aの上側を覆蓋(隠蔽)しているが、この着座姿勢から、前記後方の蝶番11を支点として座席部5bの前方が上方後方に揺動して開口部7aを前方から臨むことができるように露出させた露出姿勢に変姿できるようになっている。因みに、キャブ6の後面部6aは、着座姿勢の座席部5bの背もたれと適宜間隔を存するようになっており、これによって操縦席5が後方に倒れて露出姿勢への変姿ができるようになっている。さらに、操縦席5は、リクライニング自在な構成にすることが好ましく、このようにした場合には、背もたれを前方に倒した状態で操縦席5の上動すれば、その上動範囲を大きくできて開口部7aの開口面積を大きくしてより露出させることができる。因みに、操縦席5は、着座姿勢、露出姿勢でロック保持(固定)することができるように配慮されている。
【0010】
前記フロア開口部7aの下面部位には、上方が開口した凹陥状のトレイ12の上端フランジ部12hが取り付けられ、トレイ12に前記空調装置本体9が組み込まれているが、空調装置本体9は、前記内外気導入部8で導入された室内または室外からの空気を冷却するためのエバポレータ、暖めるためのヒータ装置からなっている。つまり空調装置本体9は、上側が開口した箱状のトレイ12に支持された状態でフロア7に取り付けられるが、トレイ12は、開口側が前記フロア7の下側から開口部7aを塞ぐようにして取り付けられており、これによって空調装置本体9は、操縦席5の略下位置であってフロア7に埋設状に配設され、開口部7aと略対向して備えられている。
【0011】
また、空調装置本体9は、トレイ12の底面から起立状に形成された支持片12aに支持されており、トレイ12の底面に接触しない状態で支持されているため、トレイ12に多少の水が溜まっても浸漬しにくいようになっている。しかも、トレイ12には、ドレインホース12b、12cが備えられているが、一方のドレインホース12bは、トレイ12の底面の水抜き孔12kを貫通した開口端が前記底面と略面一状になるように備えられており、これによって、トレイ12内に浸入した水を排出することができるが、併せてトレイ12の底面に溜まった水を排出し易いように前記底面を、ドレインホース12bの開口端が最も下位置になるように傾斜させたり、溝穴を形成することができる。また他方のドレインホース12cは、トレイ12の底面に形成の水抜き孔12lを貫通して空調装置本体9に直接備えられており、エバポレータに付く水滴等、空調装置本体9内の水の排水ができるようになっている。因みに、ドレインホース12b、12cは、トレイ12の貫通孔とのあいだにシール材(図示せず)が施されており、例えば、河川で作業をしたような場合に貫通孔から水が浸入することを防止している。さらに図4に示すように、ドレインホース12b、12cは、径が上側部12i、12jよりも太く形成された下側部12d、12eに、上側部12i、12jの孔径よりも径が大きくかつ水よりも比重が小さく浮く性質のあるスマートボール(フロート)13を遊嵌させた状態に構成され、そして下側部12d、12eの開口している下端からスマートボール13が落下しないようにメッシュ状の網部12f、12gを備えており、このため、水がドレインホース12b、12cの下端から浸入しようとした場合、スマートボール13が浸入しようとする水から浮力を受けて上昇して下側部12d、12eの上端に至り、これによって上側部12i、12jの孔を塞いでこれ以上の水の浸入を防ぐことができるようになっていて、スマートボール13は外部からの水の浸入を防止するための逆止弁になっている。
【0012】
さらに、空調装置本体9は、冷媒をエバポレータに給排するための冷媒ホース14を空調装置本体9の前方から連結されており、これによって、操縦席5を露出姿勢にして開口部7aからメンテナンスを行う際に、冷媒ホース14の着脱を容易にできるようになっている。尚、冷却ホース14は、トレイ12を貫通しているが、該貫通する部分はシール材(図示せず)が施されていて、トレイ12内に水が浸入しないようになっている。
【0013】
ここで、前記内外気導入部8は、キャブ6の室内または室外から空調装置本体9に空気を導入するものであるが、空調装置本体9の略左方(キャブ6のドア6b側後方位置)であって、かつ、フロア7の上側であってコンソールボックス(図示せず)の下位置に備えられている。つまり、内外気導入部8は、操縦席5の左側に隣接して備えられており、これによって他の部材の配置の邪魔にならない位置に配置させることができる上、キャブ6の外側から空気を導入するための導入口15をキャブ6の側面に備えることができて図1に破線で示すようにフィルタ16を交換のし易い位置に配置させることができる。
【0014】
また、分配器10は、空調装置本体9から排出された空気を、キャブ6の室内に複数箇所から吹き出させるために前記空気を分配するのものであり、空調装置本体9の略右方、かつ、フロア7の上側であって、コンソールボックス(図示せず)の下側に備えられている。因みに、図3(A)において、17は空調装置本体9と内外気導入部8とのあいだにフロア7を貫通して備えられる配管であり、18gは空調装置本体9と分配器10とのあいだにフロア7を貫通して備えられる配管である。
【0015】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、空調装置本体9は、フロア7の後側に配置された操縦席5の略下位置であって、フロア7の下側に埋設状に配設されており、フロア7の前側に配置されるコントロールバルブや走行レバーの配置スペースを確保することができる上、従来の空調装置本体9のメンテナンスのための開閉式のフロア7を、オペレータの足の置かれ難い操縦席5の底板5aと兼用することができる構成にしており、このため、フロア7に溜まった土、泥、塵や水の浸入を少なくすることができる。この結果、空調装置本体9の故障を防止することができると共に、コントロールバルブを従来どおりフロア7の前側に備えることができる。
【0016】
またこのものにおいて、フロア7には、空調装置本体9と操縦席5とのあいだに開口部7aが形成されていると共に、底板5aは、後端を、蝶番11を介してフロア7に備えられており、これによって操縦席5の前側を上方に揺動させた露出姿勢では、開口部7aから露出した空調装置本体9を臨むことができるので、空調装置本体9のメンテナンスをするまでの手間を簡易にできるようになっている。しかも冷媒ホース14を、空調装置本体9の前方から連結しているため、これによってもメンテナンスが容易になっている。また、メンテナンスの際、コンソールや操縦席5などの装置を取り外す必要がなくなるため、面倒かつ汚れる心配の無いものとすることができる。
【0017】
さらに、内外気導入部8は、空調装置本体9の略左方、さらにフロア7の上側であってコンソールボックスの下位置、かつ、操縦席5の左側に備えられており、他の部材、例えば、昇降作動する操縦席5の邪魔にならない位置に配置させることができる上、キャブ6の外側から空気を導入するための導入口15をキャブ6の側面に備えることで図1に破線で示すようにフィルタ16を交換容易な位置に配置させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】建設機械の右側面図である。
【図2】(A)は操縦席の露出姿勢を示した右側面図、(B)は操縦席の底板、空調装置本体、内外気導入部、分配器をフロアに配置した状態を示す概略図である。
【図3】(A)、(B)はそれぞれ空調装置の配設状態を示す正面から見たキャブの部分縦断面図、右側面から見たキャブの部分縦断面図である。
【図4】(A)、(B)はそれぞれドレンホースの下端部付近を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 油圧ショベル
5 操縦席
5a 底板
5b 座席部
6 キャブ
7 フロア
7a 開口部
8 内外気導入部
9 空調装置本体
10 分配器
11 蝶番
12 トレイ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
オペレータが着座して操縦するための操縦席と、該操縦席を覆うためのキャブと、該キャブの床板であるフロアと、前記キャブの室内に備えられると共に、室内の空気を調整するための空調装置本体とを備えて構成された建設機械において、
空調装置は、キャブの室内に配設される空調装置本体を、操縦席の下位置に位置してフロアに埋設状に配設したことを特徴とする建設機械における空調装置。
【請求項2】
操縦席は、後方支点として、空調装置本体を隠蔽して着座可能な着座姿勢と、前側が上方に揺動して空調装置本体を露出する露出姿勢とに変姿することができることを特徴とする請求項1記載の建設機械における空調装置。
【請求項3】
空調装置は、内外気を空調装置本体に導入するための内外気導入部を、操縦席の左右方向外側に備えて構成したことを特徴とする請求項1または2に記載の建設機械における空調装置。
【請求項4】
空調装置本体は、キャブフロアに凹陥状に設けたトレイに収容されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の空調装置
【請求項5】
トレイには、トレイに浸入した水を排出するための水抜き孔と、空調装置本体から排出される水を排出するための水抜き孔とが設けられると共に、これら水抜き孔にはホースが設けられ、該ホースの下側部には、外部からの水の浸入を防止するための逆止弁が設けられていることを特徴とする請求項4記載の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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