説明

建設機械における開閉体の保持具

【課題】エンジンフード6を通常の開放よりも大開きする必要があるものにおいて、エンジンフード6を通常の開放姿勢に保持するためのガスダンパ7を支持ピン8から抜止め支持する抜止め具9を位置決めされた状態で組み込み、そして簡単に抜き差しできようにする。
【解決手段】抜け止め具9の操作体11の平面部11cと支持ピン8の平面部7dとが突き当たるようにして抜止め支持して抜止め具9の支持ピンに対する抜止め姿勢を一定にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンフードやキャブ天窓のように躯体に開閉自在に蝶着された建設機械における開閉体の保持具の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベルのような建設機械においては、エンジンフードやキャブ天井(天窓)のような開閉体を、躯体側に開閉自在に蝶着して構成することがあるが、このような開閉体は、ガスダンパのような保持部材を介して躯体側に支持し、通常の点検やメンテナンスの際、開放姿勢の開閉体を保持部材を介して支持するようにしている。ところがこのような開閉体において、例えばエンジンの大掛かりなメンテナンスを行うような場合に、保持部材を用いた開放支持だけでは開閉体の開放量が不足し、大開きしたい場合がある。
このようなとき、保持部材の先端部(一端部)を躯体側に設けた支持ピンから外して開閉体の大開きをすることになるが、このような場合の利便性のため、支持ピンの先端部に係合溝を形成し、前記保持部材先端部の設けた係止孔を支持ピンに貫通した状態で係合溝にスナップリテーナや止め輪(E型やC型止め輪)を強制組付けして保持部材先端部の支持ピンからの抜止めをするようにしていた。ところがこのようなスナップリテーナや止め輪の係脱作業をするには特殊な工具が必要であって、このような工具が手元にない場合、保持部材先端部を支持ピンから外して開閉体の大開きをする作業に支障を来たすことになる。
そこで支持ピンに、抜止めをするためのフランジ部が形成された座金を嵌合し、該座金を、座金に形成したスリットを通して支持ピンに形成の係合溝にコ字形をしたクリップを係脱自在に係合することで抜止めをするようにしたものが提唱されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−151132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記座金を用いたものは、フランジ部が大径な円板状になっているため、スペースが確保できない部位での使用に支障をきたす惧れがあるという問題が有る。そこで座金を長尺材として狭いスペースでの使用を可能にすることが提唱されるが、このような座金にしても、該座金は支持ピンに対して自由な位置に回動できるため、座金の取り外し方向が座金位置によって異なってしまい、迅速な取り外し作業が阻害されるだけでなく、これを例えばキャブの天窓用に使用したような場合、座金位置によってはオペレータの作業の邪魔をするというような問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、躯体と該躯体に開閉自在に蝶着した開閉体とのあいだに、開放姿勢にした開閉体を該開放姿勢に保持するための保持部材を介装すると共に、前記保持部材の端部に形成した係止孔を躯体または開閉体に設けた支持ピンに出没自在に貫通して、保持部材端部を支持ピンから取外して開閉体を前記開放姿勢よりも大開きできるように構成してなる建設機械において、前記支持ピンに貫通した保持部材端部の支持ピンからの抜止めをするため支持ピンに抜止め部材を着脱自在に組付けるにあたり、前記支持ピンの中間部に小径部を形成する一方、抜止め部材を、支持ピンが抜き差し自在に貫通する貫通孔、および該貫通孔に直交しかつ前記支持ピンを貫通孔に貫通させた状態で支持ピン小径部が位置する大きさに設定される有天状の作動孔が形成された本体と、前記作動孔に出没自在に組み込まれ、前記支持ピンが抜き差し自在に挿通する挿通孔が形成された操作体と、該操作体と作動孔とのあいだに介装されて、操作体を作動孔から抜け出る方向に付勢する弾機とを備えて構成すると共に、支持ピン小径部と操作体挿通孔とには、操作体を弾機に抗して押し込んで支持ピンに貫通孔および挿通孔を挿通した状態で操作体の押し込み解除をしたときに、弾機付勢力を受けて操作体が作動孔から抜け出る方向に移動したとき、互いに当接して抜止め部材の支持ピンに対する抜止め姿勢を一定にするための平面部がそれぞれ形成されていることを特徴とする建設機械における開閉体の保持具である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、保持部材を支持ピンから外す場合に、殊更特殊な工具を用いることなく、操作体を単純に押し操作した状態で抜止め部材を支持ピンから外した状態にできるものでありながら、支持ピン小径部と操作体挿通孔とにそれぞれ形成された平面部同士が互いに当接することになって抜止め部材の抜止め状態では支持ピンに対する姿勢が一定となり、この結果、抜止め部材が抜きづらかったり邪魔になったりすることを回避できることになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】油圧ショベルの斜視図である。
【図2】抜止め部材を支持ピンから取外した状態を示す斜視図である。
【図3】(A)(B)は抜止め部材の正面図、側面図である。
【図4】(A)(B)は図3のX−X断面図、Y−Y断面図である。
【図5】(A)(B)は抜止め部材を支持ピンに抜き差しするときの姿勢を示す正面図、抜止め部材を支持ピンに抜止め支持している姿勢を示す正面図である。
【図6】(A)(B)は図5のX−X断面図、Y−Y断面図である。
【図7】(A)(B)は図6のX−X断面図、Y−Y断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。1は建設機械の一つである油圧ショベルであって、該油圧ショベル1は、クローラ型の下部走行体2、該下部走行体2に旋回自在に設けられる上部旋回体3とを用いて構成され、上部旋回体3にはバケット式のフロントアタッチメント5が装着されていること等は何れも従来通りである。
【0009】
前記上部旋回体3の後部には、搭載するエンジン(図示せず)を開閉するためのエンジンフード(本発明の「開閉体」に相当する)6が設けられるが、該エンジンフード6は、正面視で逆L字形になっており、その上端内側縁が丁番6aによって開閉自在に蝶着されたものが採用されている。
【0010】
7はエンジンフード6を開放姿勢に支持するためのガスダンパ(本発明の「保持部材」に相当する)であって、該ガスダンパ7は、シリンダ7aの基端部が上部旋回体3側に揺動自在に軸支され、ロッド先端部7bに設けた係止孔7cがエンジンフード6に固着のブラケット6aから貫通状に突出した支持ピン8に抜き差し自在に貫通支持されるようになっている。そしてガスダンパ7によって図1に1点鎖線で示す開放姿勢に保持できるようになっている。またエンジンフード6は、支持ピン8から係止孔7cを抜き取ることで図1の2点鎖線で示すように開放姿勢を越えた大開きができるようになっている。
【0011】
前記支持ピン8は、係止孔7cの内径よりも大きい外径を有していて係止孔7cに遊嵌状に貫通するように形成されているが、先端側半部には先端部8aを残す状態で小径になった小径部8bが形成され、これによって支持ピン8は、中間部となる小径部8bをあいだに挟む状態で何れも大径の基端部8c、先端部8aとが形成され、さらに小径部8bの外周面(図2以降で上面)に平面部8dが形成されている。
【0012】
9は支持ピン8に貫通支持されるロッド係止孔7cの支持ピン8からの抜止めをするための抜止め具であって、該抜止め具9は、本体10、操作体11、そして弾機12を用いて構成されている。
【0013】
本体10は、下端が開口する有天円筒形をした作動孔10aが上下方向に向けて形成されると共に、該作動孔10aを直交する(横切る)状態で貫通孔10bが左右両側面部10c、10d間を貫通するよう形成されている。貫通孔10bの内径は、支持ピン8の外径(大径部外径)よりも大きくなっていて支持ピン8が遊嵌状に貫通するようになっている。そして支持ピン先端部8aの先端面が左右一側面部10cの外面と面一状になるよう支持ピン8を貫通孔10bに貫通させた状態(図6参照)では、支持ピン8は、先端部8a、基端部8cが左右両側面部10c、10d位置に位置すると共に、小径部8bが左右両側面部10c、10dの内面よりも内側に位置する寸法設定になっている。
【0014】
操作体11は、作動孔10aに対して出没自在に遊嵌するよう円柱状に形成されているが、操作体11の上半部には前記支持ピン8が遊嵌するための挿通孔11aが開設されている。挿通孔11aの内径は前記貫通孔10bの内径と同径になっているが、挿通孔11aの上面11bには前記小径部8bと対向する状態で平面部11cとなって孔径を小さくしている。
さらに操作体11の上部外周には一対の係止突起11dが外径方向に突出形成されるが、係止突起11dは作動孔10aに外径よりも少し大径に形成されている。そして操作体11は、係止突起11dを作動孔10aに無理嵌めして貫通孔10b位置にまで至らしめることで抜止め状に組み込まれるようになっている。
【0015】
一方、前記弾機12は作動孔10aの天面部10eと操作体11の上面11eにそれぞれ形成した凹部10fと11fとのあいだに介装されていて、操作体11を作動孔10aから押出す方向に付勢している。そして操作体11を押し込むことのない自由状態にした場合、操作体11は弾機12の付勢力を受けて下動しているが、この状態では係止突起11dが貫通孔10bの内周下端に係止した姿勢になっている。
【0016】
この姿勢から操作体11の下面11gを弾機12の付勢力に抗して押し込むと、操作体11は本体10内に没入していくことになるが、操作体11を最も押し込んだ状態では、係止突起11dが貫通孔10bの内周上面に形成した係止溝10gに没入係止し、この押し込み状態では、貫通孔10bと挿通孔11aとの軸心が一致(同心)し、これによって支持ピン8が同心の貫通孔10b、挿通孔11aを貫通できるようになっている。そして支持ピン8が両孔10b、11aを貫通した状態で操作体11の押し込みを解除すると、操作体11は弾機付勢力を受けて本体10から突出する方向に移動しようとするが、支持ピン平面部8dに操作体平面部11cが当接することになって操作体11のこれ以上の突出が停止すると同時に、操作体平面部11cが支持ピン先端部8aと小径部8bとのあいだの段差に係止することになって支持ピン8の操作体11からの抜止めがなされ、これによって支持ピン8に対する抜止め具9の位置決めがなされると共に、ガスダンパ先端部7bは支持ピン8に抜止め支持されるようになっている。因みに、支持ピン8に対して抜止め具9が位置ズレした状態で抜止めされた場合、抜止め具9を支持ピン8の軸芯回りに回して前記平面部8d、11c同士が当接させることで位置決めセットがなされることになる。
【0017】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、エンジンフード6は、ガスダンパ7によって前述した通常の開放姿勢に保持されることになるが、大掛かりなメンテナンス等を行うような場合、エンジンフード6を開放姿勢にしただけでは邪魔になることがあり、その場合には、ガスダンパ先端部をエンジンフード6から取り外してエンジンフード6を大開きすることになる。この場合、前述したように支持ピン8に組み付けた抜止め具9を取外せばよく、それには、操作体下面11gを押し操作して係止突起11dが係止溝10gに没入係止するまで操作体11を上動させると、貫通孔10bと挿通孔11aとが同心となり、これによって抜止め具9は支持ピン8から抜き出すことができ、その後、ガスダンパ7の先端部を支持ピン8の先端方向にずらして係止孔7cを支持ピン8から外す。これによってエンジンフード6はガスダンパによる保持のない状態となって大開きができることになり、この大開きした状態で大掛かりなメンテナンスができる。
【0018】
このように本発明が実施されたものにおいては、エンジンフード6を通常の開放よりも大きく開くことができるが、この場合に支持ピン8からのロッド7bの抜止めをするための抜止め具9は、操作体11の押し操作によって簡単に支持ピン8に対する抜き差し作業ができ、特殊な工具が必要になることはない。
【0019】
しかも抜止め具9は、支持ピン8に対して平面部8d、11c同士が当接することで回り止めがなされたものとなって、抜止め具9の支持ピン8に対する姿勢が一定となり、抜止め具9の抜き差し操作がしづらくなったり、オペレータの邪魔になったりすることがない。
【0020】
なお、本発明を実施するにあたり、抜止め具の具体的形状や支持ピン側平面部の位置は特に限定されるものではなく、必要において適宜変更できるものであることはいうまでもない。また、前記実施の形態ではエンジンフードとガスダンパ先端部の支持を解除するようにしたが、エンジンフードと躯体側との支持を解除するようにしても実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、建設機械のエンジンフードやキャブ天窓のような開閉体について、通常の開放よりもさらに大開きする必要がある場合、開閉体を通常の開放姿勢に保持する保持部材を抜止めする抜止め部材の技術分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0022】
6 エンジンフード
7 ガスダンパ
8 支持ピン
8a 先端部
8d 平面部
9 抜止め具
10 本体
10a 作動孔
10b 貫通孔
11 操作体
11a 挿通孔
11c 平面部
12 弾機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体と該躯体に開閉自在に蝶着した開閉体とのあいだに、開放姿勢にした開閉体を該開放姿勢に保持するための保持部材を介装すると共に、前記保持部材の端部に形成した係止孔を躯体または開閉体に設けた支持ピンに出没自在に貫通して、保持部材端部を支持ピンから取外して開閉体を前記開放姿勢よりも大開きできるように構成してなる建設機械において、
前記支持ピンに貫通した保持部材端部の支持ピンからの抜止めをするため支持ピンに抜止め部材を着脱自在に組付けるにあたり、
前記支持ピンの中間部に小径部を形成する一方、
抜止め部材を、支持ピンが抜き差し自在に貫通する貫通孔、および該貫通孔に直交しかつ前記支持ピンを貫通孔に貫通させた状態で支持ピン小径部が位置する大きさに設定される有天状の作動孔が形成された本体と、
前記作動孔に出没自在に組み込まれ、前記支持ピンが抜き差し自在に挿通する挿通孔が形成された操作体と、
該操作体と作動孔とのあいだに介装されて、操作体を作動孔から抜け出る方向に付勢する弾機とを備えて構成すると共に、
支持ピン小径部と操作体挿通孔とには、操作体を弾機に抗して押し込んで支持ピンに貫通孔および挿通孔を挿通した状態で操作体の押し込み解除をしたときに、弾機付勢力を受けて操作体が作動孔から抜け出る方向に移動したとき、互いに当接して抜止め部材の支持ピンに対する抜止め姿勢を一定にするための平面部がそれぞれ形成されていることを特徴とする建設機械における開閉体の保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−185508(P2010−185508A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−29508(P2009−29508)
【出願日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【出願人】(390001579)プレス工業株式会社 (173)
【Fターム(参考)】