建設機械のアンダーカバー構造
【課題】アンダーカバーの脱着時にボルトの締結及び締結解除を不要とすることにより作業者の負担を軽減でき、さらにボルト紛失などのトラブルを未然に防止できる建設機械のアンダーカバー構造を提供する。
【解決手段】エンジン室10の開口部10aに掛止部15bを備えた4本の支持ブラケット15を設ける一方、アンダーカバー13aの四隅に、掛止部15bが挿脱可能な挿脱部17a及び掛止部15bの離脱を規制する規制部17bからなる支持孔17をそれぞれ形成する。各支持孔17の挿脱部17aに支持ブラケット15の掛止部15bを挿入した上で、アンダーカバー13aを右方にスライドさせて各掛止部15bを規制部17b側に移動させアンダーカバー13aを仮支持し、この状態で第1及び第2金具19,20を掛止する。
【解決手段】エンジン室10の開口部10aに掛止部15bを備えた4本の支持ブラケット15を設ける一方、アンダーカバー13aの四隅に、掛止部15bが挿脱可能な挿脱部17a及び掛止部15bの離脱を規制する規制部17bからなる支持孔17をそれぞれ形成する。各支持孔17の挿脱部17aに支持ブラケット15の掛止部15bを挿入した上で、アンダーカバー13aを右方にスライドさせて各掛止部15bを規制部17b側に移動させアンダーカバー13aを仮支持し、この状態で第1及び第2金具19,20を掛止する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械のアンダーカバー構造に係り、詳しくは、走行可能な機体に機械室を設けてエンジンや油圧ポンプなどの補機類を収容し、この機械室の下面に保守用の開口部を形成して脱着可能なアンダーカバーで閉鎖した建設機械のアンダーカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の建設機械は、機体に設けた機械室内にエンジンや油圧ポンプなどの補機類を収容しており、例えば油圧ショベルでは、下部走行体上に旋回可能に配置された上部旋回体に機械室を設けて補機類を収容している。上部旋回体は人の背丈ほどの高所に位置することから、補機類を保守するための開口部は機械室の側面のみならず下面に形成する場合もあり、工事作業中に下方から障害物に突き上げられて機械室内の補機類が破損する事態を防止するために、開口部を脱着可能なアンダーカバーにより閉鎖している。
障害物の突き上げに耐え得るようにアンダーカバーは十分な肉厚の鋼板などにより製作され、必然的にかなりの重量を有する。このためアンダーカバーの脱着時には、不安定な上向き姿勢で重いアンダーカバーを作業完了まで支え続ける必要が生じ、作業者に大きな負担を強いるという問題があった。
【0003】
このようなアンダーカバーの脱着時の不具合を解消するために、種々の対策が提案されている(例えば、特許文献1参照)。当該特許文献1に記載されたアンダーカバー構造では、アンダーカバーの互いに背向する両端縁に係合溝を形成し、これらの係合溝と対応するように機械室側の開口部の周縁にそれぞれボルトを螺合させている。
例えばアンダーカバーの取付時には、その一端側の係合溝、他端側の係合溝の順に対応するボルトのねじ部に嵌め合わせた上で各ボルトを締結するが、一端側の係合溝をボルトのねじ部に嵌め合わせた時点でボルトのヘッド部によりアンダーカバーが仮支持され、これにより作業者の支持を不要として負担軽減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−144509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、ボルトを利用してアンダーカバーを仮支持することで作業者の負担を軽減しているものの、アンダーカバーを脱着する際にボルトを締結または締結解除する必要があり、この作業を上向き姿勢で行う作業者の負担は依然として大きなものであった。また、アンダーカバーの脱着時には各ボルトの締結を完全に解除する必要はないが、締結解除の際にボルトを緩め過ぎて脱落させてしまう場合もあり、このためボルトの紛失などのトラブルを引き起こすという問題もあった。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、作業者がアンダーカバーを支え続けることなく脱着作業を実施できると共に、その際にボルトの締結及び締結解除を不要とすることにより作業者の負担を軽減でき、さらにボルト紛失などのトラブルを未然に防止することができる建設機械のアンダーカバー構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、走行可能な機体に機械室を設けて補機類を収容し、機械室の下面に補機類を保守するための開口部を形成すると共に、開口部を脱着可能なアンダーカバーで閉鎖した建設機械のアンダーカバー構造において、機械室の開口部周縁の複数箇所に設けられ、開口部に配設されたアンダーカバーを支持するための掛止部を有する複数の支持ブラケットと、各支持ブラケットとそれぞれ対応するようにアンダーカバーに形成され、支持ブラケットの掛止部を挿脱可能な挿脱部、及び各挿脱部からそれぞれ同一方向に連続し掛止部の上方への離脱を規制してアンダーカバーを支持可能な規制部からなる複数の支持孔と、機械室の開口部周縁に設けられた第1の係止手段と、アンダーカバーに設けられ、各支持ブラケットの掛止部を各支持孔の規制部と対応させたときに第1の係止手段に対して係止可能となり、係止により各支持孔内での支持ブラケットの挿脱部側への移動を規制する第2の係止手段とを備えたものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、第1の係止手段が、各支持ブラケットの掛止部にそれぞれ設けられ、第2の係止手段が、各第1の係止手段とそれぞれ対応するようにアンダーカバーに設けられて、第1の係止手段との係止により支持ブラケットとアンダーカバーとを結合するものであり、各支持ブラケットの掛止部のアンダーカバーに当接する面にそれぞれ弾性部材を貼着したものである。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように請求項1の発明による建設機械のアンダーカバー構造によれば、機械室の開口部周縁に掛止部を有する複数の支持ブラケットを設ける一方、開口部に配設されるアンダーカバーに、支持ブラケットの掛止部を挿脱可能な挿脱部、及び挿脱部から連続して掛止部の上方への離脱を規制する規制部からなる複数の支持孔を形成し、各支持ブラケットの掛止部を各支持孔の規制部と対応させたときに第1の係止手段と第2の係止手段とを係止可能として、支持ブラケットの挿脱部側への移動を規制するようにした。
このため、機械室の開口部にアンダーカバーを配設して各支持孔の挿脱部に支持ブラケットの掛止部を挿入させ、アンダーカバーをスライドさせると各掛止部がそれぞれ規制部と対応して上方への離脱が防止され、アンダーカバーが各支持ブラケットにより支持される。そして、第1及び第2の係止手段を係止させることにより、各支持孔内での掛止部の挿脱部側への移動が規制されてアンダーカバーの取付が完了する。また、この状態から第1及び第2の係止手段の係止を解除してもアンダーカバーは支持され続け、アンダーカバーをスライドさせると各支持ブラケットの掛止部が支持孔の挿脱部から離脱可能となり、アンダーカバーを下方に移動させることにより取外が完了する。
【0009】
このように脱着作業中のアンダーカバーを支持ブラケットにより支持するため、作業完了まで作業者が不安定な上向き姿勢で重いアンダーカバーを支え続ける必要がない上に、第1及び第2の係止手段を係止・解除するだけで簡単にアンダーカバーを脱着可能なことから、アンダーカバーの脱着の際にボルトを締結・解除する必要がある先行技術(特許文献1)に比較して、作業者の負担を軽減することができ、しかも、ボルト紛失などのトラブルを未然に防止することができる。
請求項2の発明による建設機械のアンダーカバー構造によれば、請求項1に加えて、各支持ブラケットの掛止部に第1の係止手段を設けると共にアンダーカバーへの当接面に弾性部材を貼着し、アンダーカバーに第1の係止手段との係止により支持ブラケットとアンダーカバーとを結合する第2の係止手段を設けた。よって、第1及び第2の係止手段を係止させて支持ブラケットの掛止部とアンダーカバーとを結合すると、両部材間に弾性部材が挟み込まれ、作業時の振動に起因する異音の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のアンダーカバー構造が適用された油圧ショベルを示す全体構成図である。
【図2】油圧ショベルの上部旋回体を示す透視斜視図である。
【図3】油圧ショベルのエンジン室の開口部を示す底面図である。
【図4】図3に対応する姿勢でアンダーカバーを示す底面図である。
【図5】カバー取付前のエンジン室の開口部を示す図3のV−V線断面図である。
【図6】同じくカバー取付前のエンジン室の開口部を示す図3のVI−VI線断面図である。
【図7】カバー取付後のエンジン室の開口部を示す底面図である。
【図8】同じくカバー取付後のエンジン室の開口部を示す図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】同じくカバー取付後のエンジン室の開口部を示す図7のIX−IX線断面図である。
【図10】締結金具の詳細を示す部分拡大図である。
【図11】別例の支持ブラケット及び支持孔を示す図7に対応する部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を油圧ショベルのアンダーカバー構造に具体化した一実施形態を説明する。
図1は本発明のアンダーカバー構造が適用された油圧ショベルを示す全体構成図、図2は油圧ショベルの上部旋回体を示す透視斜視図である。
クローラ1を備えた下部走行体2上には上部旋回体3(機体)が旋回可能に設けられ、この上部旋回体3の前部には作業機4が設けられている。作業機4はブーム5、アーム6及び掘削バケット7などから構成され、それぞれ油圧シリンダ5a,6a,7aにより作動する。上部旋回体3は、そのフレーム8上にオペレータが搭乗する運転室9、図示しないエンジンや油圧ポンプなどの補機類を収容したエンジン室10(機械室)、燃料タンク11及びカウンタウエイト12などを設けて構成されている。エンジン駆動の油圧ポンプから供給される油圧を利用して、オペレータの操作に応じて油圧シリンダ5a,6a,7aによる作業機4の動作や下部走行体2の走行などが行われる。
【0012】
上部旋回体3のフレーム8の下面には上記運転室9やエンジン室10などに対応して複数の開口部が形成され、これらの開口部を介して内部に収容された補機類などの保守、例えばエンジン室10についてはエンジンや油圧ポンプなどの保守を実施可能となっている。各開口部は脱着可能なアンダーカバー13により閉鎖されており、これらのアンダーカバー13は十分な肉厚の鋼板などで製作され、工事作業中の障害物の突き上げによる補機類の破損を防止するようになっている。
ところで、[発明が解決しようとする課題]で述べたように、先行技術である特許文献1の技術では、アンダーカバーの脱着時に作業者の支持を不要としているものの、ボルトを用いたことにより締結及び締結解除が必要になる上に、ボルト紛失などのトラブルが生じるという問題がある。
その対策として本実施形態では、ボルトを用いないアンダーカバー構造を適用しており、以下、当該アンダーカバー構造を上記エンジン室10のアンダーカバー13aを例にとって説明する。なお、本実施形態では、他のアンダーカバー13も同様の取付構造としているが、これに限ることはなく、他のアンダーカバー13については別の取付構造を適用してもよい。
【0013】
まず、エンジン室10の開口部側の構成を述べる。
図3は油圧ショベルのエンジン室10の開口部を示す底面図、図4は図3に対応する姿勢でアンダーカバー13aを示す底面図、図5はカバー取付前のエンジン室10の開口部を示す図3のV−V線断面図、図6は同じくカバー取付前のエンジン室10の開口部を示す図3のVI−VI線断面図である。
図3に示す一対のメンバ8aは上記したフレーム8の一部を構成するものであり、車両の左右方向に所定間隔をおいた位置でそれぞれ前後方向に延設されている。両メンバ8aの間の空間がエンジン室10の開口部10aに相当し、この開口部10aを介して下方よりエンジン室10内の補機類を保守可能となっている。なお、底面図である図3では左右方向が実際の車両とは逆転して示されているが、以下の説明では、図3にならって左右方向を表現し、前後方向については車両と整合するように表現する。
開口部10aの四隅には鋼板からなる支持ブラケット15がそれぞれ配設され、特に図3,6に示すように、各支持ブラケット15の脚部15aは前後方向に面する四角板状をなして、その一側縁をメンバ8aの側面に溶接されている。
【0014】
各支持ブラケット15の脚部15aは開口部10aから下方に延設され、その下端は略直角に折曲されて掛止部15bが形成されている。各掛止部15bは上下方向に面する四角板状をなして上面にゴム板16(弾性部材)が貼着され、ゴム板16の上面はメンバ8aの下面に対して所定距離(アンダーカバー13aの板厚より若干大)だけ離間している。本実施形態では、前側の一対の掛止部15bが後方に折曲され、後側の一対の掛止部15bが前方に折曲されているが、これに限ることはなく、各掛止部15bの折曲方向を任意に変更してもよい。
次に、アンダーカバー13a側の構成を述べる。
図7はカバー取付後のエンジン室10の開口部10aを示す底面図、図8は同じくカバー取付後のエンジン室10の開口部10aを示す図7のVIII−VIII線断面図、図9は同じくカバー取付後のエンジン室10の開口部10aを示す図7のIX−IX線断面図である。
【0015】
特に図4,7に示すように、アンダーカバー13aは四角板状をなし、上記エンジン室10の開口部10aに配設した状態では開口部10aを閉鎖すると共に、その左右両端部が左右のメンバ8aの下面に重なるようになっている。アンダーカバー13aの四隅には上記支持ブラケット15の掛止部15bと対応するようにそれぞれ支持孔17が形成され、各支持孔17は挿脱部17aと規制部17bとから構成されている。各挿脱部17aは支持ブラケット15の掛止部15bよりも若干大きな四角状をなし、それぞれ掛止部15bを挿脱可能となっている。
各規制部17bは、全体として挿脱部17aから左方に向けて連続するスリット状をなしている。各規制部17bの前後幅は支持ブラケット15の脚部15aの前後寸法(板厚)よりも若干大きく設定され、各規制部17bの左右長さは脚部15aの左右寸法よりも若干大きく設定されている。また、各規制部17bの前後位置は支持ブラケット15の脚部15aと対応し、前側の一対の規制部17bは挿脱部17aの最前部に、後側の一対の規制部17bは挿脱部17aの最後部に位置している。
【0016】
このため、アンダーカバー13aの支持孔17の挿脱部17aに支持ブラケット15の掛止部15bを挿入した状態で、図7〜9に示すように、支持ブラケット15を支持孔17の規制部17b側に移動させて規制部17bと対応させることが可能となっている。このときの掛止部15b上のゴム板16はアンダーカバー13aの下面に当接し、規制部17b内から上方への掛止部15b上の離脱が規制されており、結果として各支持ブラケット15の掛止部15bによりアンダーカバー13aの四隅が支持されることになる。
一方、各支持ブラケット15及びアンダーカバー13aには締結金具18が設けられており、図10は締結金具18の詳細を示す部分拡大図である。
図6,7,10に示すように、締結金具18は支持ブラケット15側の第1金具19(第1の係止手段)、及びアンダーカバー13a側の第2金具20(第2の係止手段)から構成され、第1金具19は各支持ブラケット15の掛止部15bの下面にそれぞれ固定されている。特に図10に示すように、第1金具19は側方に向けて開口する係止溝19aを備えており、前側の一対の第1金具19は係止溝19aを前方に向け、後側の一対の第1金具19は係止溝19aを後方に向けるように配設されている。
【0017】
アンダーカバー13aには各第1金具19と対応するように第2金具20が固定され、図10に示すように、第2金具20は一側を中心として矢印方向に回動する操作レバー20b、及び操作レバー20bに連結されて第1金具19の係止溝19aに係止可能な係止バー20aを備えている。このため、各第1金具19の係止溝19aの開口方向と対応するように、前側の一対の第2金具20は係止バー20aを前方に向け、後側の一対の第2金具20は係止バー20aを後方に向けるように配設されている。
また、アンダーカバー13aに対する各第2金具20の位置は、図7に示すように各支持ブラケット15の掛止部15bを各支持孔17の規制部17bと対応させたとき、第1金具19の係止溝19aに係止バー20aを係止可能となるように設定されている。そして、図7,9に示すように、各第2金具20の係止バー20aを第1金具19の係止溝19aにそれぞれ係止させた状態では、締結金具18を介してアンダーカバー13aが各支持ブラケット15と結合され、支持ブラケット15の掛止部15bの挿脱部17a側への移動が規制されるようになっている。
【0018】
次に、以上のように構成された油圧ショベルのアンダーカバー構造による作用を述べる。
油圧ショベルの運転中などの通常時において、エンジン室10の開口部10aはアンダーカバー13aにより閉鎖されて内部の補機類が保護されている。このときには図7〜9に示すように、各支持ブラケット15の掛止部15bが各支持孔17の規制部17bとそれぞれ対応すると共に、各第2金具20の係止バー20aが第1金具19の係止溝19aにそれぞれ係止されている。この係止により支持ブラケット15の掛止部15bの挿脱部17a側への移動が規制され、各掛止部15bはゴム板16を挟み込んだ状態でアンダーカバー13aの下面に当接し、これによりアンダーカバー13aは四隅を支持ブラケット15により支持されている。
このように、鋼板からなる支持ブラケット15の掛止部15bとアンダーカバー13aとの直接的な接触がゴム板16により防止されると共に、図8,9に示すように、メンバ8aの下面とアンダーカバー13aの上面との間に常に間隙Sが形成されることで直接的な接触が防止され、これにより作業時の振動に起因する異音の発生が防止されている。
【0019】
エンジン室10内の補機類の保守は、アンダーカバー13aを取り外して実施される。まず、各締結金具18の第2金具20の操作レバー20bをそれぞれ回動操作(図10の反時計回り)して、第1金具19の係止溝19aに対する係止バー20aの係止を解除する。この時点では、各支持孔17と支持ブラケット15との位置関係は変化しないため、アンダーカバー13aは各支持ブラケット15により支持され続ける(以下、この状態を仮支持と称する)。
次いで、アンダーカバー13aを左方(図7の反矢印A方向)にスライドさせると、各支持孔17内において支持ブラケット15が規制部17bから挿脱部17a側へと移動し、それぞれの掛止部15bを挿脱部17aから上方に離脱可能となる。そして、アンダーカバー13aを下方に移動させると取外が完了し、開放された開口部10aを介してエンジン室10内の補機類に対する保守を実施することができる。
【0020】
保守の終了後にアンダーカバー13aを取り付ける際には、まず、エンジン室10の開口部10aにアンダーカバー13aを配設して各支持孔17の挿脱部17aに支持ブラケット15の掛止部15bを上方より挿入させる。そして、アンダーカバー13aを右方(図7の矢印A方向)にスライドさせると、各支持ブラケット15がそれぞれ挿脱部17aから規制部17b側に移動し、掛止部15bが規制部17bと対応して上方への離脱が防止されることから、アンダーカバー13aは各支持ブラケット15により仮支持される。
この状態で各締結金具18の第2金具20は第1金具19と対応しており、第2金具20の操作レバー20bをそれぞれ回動操作(図10の時計回り)して係止バー20aを第1金具19の係止溝19aに係止させる。これにより掛止部15bの挿脱部17a側への移動が規制され、アンダーカバー13aの取付が完了する。
【0021】
以上のように、脱着作業中のアンダーカバー13aを支持ブラケット15により仮支持するため、作業完了まで作業者が不安定な上向き姿勢で重いアンダーカバー13aを支え続ける必要がなくなり、その負担を軽減することができる。しかも、先行技術として述べた特許文献1の技術では、一端側のボルトのヘッド部によりアンダーカバーを片持ちで仮支持するのに対し、本実施形態では、4本の支持ブラケット15によりアンダーカバー13aの四隅を仮支持することから、より安定してアンダーカバー13aを仮支持できるという利点もある。
そして、仮支持されたアンダーカバー13aを正規の固定状態とするために、本実施形態では締結金具18を利用していることから、ボルトを用いた特許文献1の技術と比較して以下の利点を有する。
【0022】
本実施形態と特許文献1の技術との何れにおいても、仮支持されたアンダーカバー13aを正規に固定する作業、或いは逆に正規固定されたアンダーカバー13aを仮支持とする作業は上向き姿勢で行うため、可能な限り簡単に短時間で完了することが要望される。これらの作業として、特許文献1の技術では、ボルトを締結または締結解除する必要があるのに対し、本実施形態の締結金具18では、第2金具20の操作レバー20bの回動操作だけで完了でき、その労力も所要時間も格段に軽減される。よって、本実施形態によれば、上記したアンダーカバー13aの仮支持による効果と相俟って、アンダーカバー13aの脱着時の作業者の負担を一層軽減することができる。
また、特許文献1の技術では、ボルトの締結解除の際に緩め過ぎて脱落させてしまう場合があるのに対し、本実施形態の締結金具18の第1金具19は支持ブラケット15に固定され、第2金具20はアンダーカバー13aに固定されているため、脱落の可能性は皆無である。よって、ボルト紛失などのトラブルを未然に防止できるという効果も得られる。
【0023】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、建設機械として油圧ショベルを対象としたが、機械室の下面の開口部を脱着可能なアンダーカバーで閉鎖したものであれば、これに限るものではなく、例えばクレーンや道路機械に適用してもよい。
また、上記実施形態では、四角状の掛止部15bを備えた4本の支持ブラケット15をエンジン室10の開口部10aに設ける一方、四角状の挿脱部17a及びスリット状の規制部17bからなる支持孔17をアンダーカバー13aの四隅に形成したが、これらの構成に限ることはない。例えば支持ブラケット15の数を増減させたり、支持ブラケット15や支持孔17の形状を変更したりしてもよい。
【0024】
以下、支持ブラケット及び支持孔の形状を変更した別例を図11に基づき説明する。
支持ブラケット31の脚部31aは円筒状をなし、その下端に円盤状の掛止部31bが一体的に形成されている。支持ブラケット31の掛止部31bと対応するようにアンダーカバー13aの支持孔32の挿脱部32aは円形状をなし、規制部32bは挿脱部32aから連続するスリット状をなして、前後幅を支持ブラケット31の脚部31aの径よりも若干大きく設定されている。なお、同図では締結金具18の図示を省略しているが、実際には実施形態と同様に設けられている。アンダーカバー13aの脱着時の作用は上記実施形態と相違しないため重複する説明はしないが、このように構成しても同様の作用効果を得ることができる。
また、上記実施形態では第1係止手段として係止溝19aを備えた第1金具19を用い、第2係止手段として係止バー20aを備えた第2金具20を用い、係止溝19aに係止バー20aを掛止することで支持ブラケット15とアンダーカバー13aとを結合したが、これに限るものではない。例えば第1及び第2金具19,20の形状や数を変更したり、或いは支持ブラケット15とアンダーカバー13aとを結合する代わりに、支持孔17内での支持ブラケット15の挿脱部17a側への移動を規制する構成としたりしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
3 上部旋回体(機体)
10 エンジン室(機械室)
15,31 支持ブラケット
15b,31b 掛止部
16 ゴム板(弾性部材)
17,32 支持孔
17a,32a 挿脱部
17b,32b 規制部
19 第1金具(第1の係止手段)
20 第2金具(第2の係止手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械のアンダーカバー構造に係り、詳しくは、走行可能な機体に機械室を設けてエンジンや油圧ポンプなどの補機類を収容し、この機械室の下面に保守用の開口部を形成して脱着可能なアンダーカバーで閉鎖した建設機械のアンダーカバー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の建設機械は、機体に設けた機械室内にエンジンや油圧ポンプなどの補機類を収容しており、例えば油圧ショベルでは、下部走行体上に旋回可能に配置された上部旋回体に機械室を設けて補機類を収容している。上部旋回体は人の背丈ほどの高所に位置することから、補機類を保守するための開口部は機械室の側面のみならず下面に形成する場合もあり、工事作業中に下方から障害物に突き上げられて機械室内の補機類が破損する事態を防止するために、開口部を脱着可能なアンダーカバーにより閉鎖している。
障害物の突き上げに耐え得るようにアンダーカバーは十分な肉厚の鋼板などにより製作され、必然的にかなりの重量を有する。このためアンダーカバーの脱着時には、不安定な上向き姿勢で重いアンダーカバーを作業完了まで支え続ける必要が生じ、作業者に大きな負担を強いるという問題があった。
【0003】
このようなアンダーカバーの脱着時の不具合を解消するために、種々の対策が提案されている(例えば、特許文献1参照)。当該特許文献1に記載されたアンダーカバー構造では、アンダーカバーの互いに背向する両端縁に係合溝を形成し、これらの係合溝と対応するように機械室側の開口部の周縁にそれぞれボルトを螺合させている。
例えばアンダーカバーの取付時には、その一端側の係合溝、他端側の係合溝の順に対応するボルトのねじ部に嵌め合わせた上で各ボルトを締結するが、一端側の係合溝をボルトのねじ部に嵌め合わせた時点でボルトのヘッド部によりアンダーカバーが仮支持され、これにより作業者の支持を不要として負担軽減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−144509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、ボルトを利用してアンダーカバーを仮支持することで作業者の負担を軽減しているものの、アンダーカバーを脱着する際にボルトを締結または締結解除する必要があり、この作業を上向き姿勢で行う作業者の負担は依然として大きなものであった。また、アンダーカバーの脱着時には各ボルトの締結を完全に解除する必要はないが、締結解除の際にボルトを緩め過ぎて脱落させてしまう場合もあり、このためボルトの紛失などのトラブルを引き起こすという問題もあった。
本発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、作業者がアンダーカバーを支え続けることなく脱着作業を実施できると共に、その際にボルトの締結及び締結解除を不要とすることにより作業者の負担を軽減でき、さらにボルト紛失などのトラブルを未然に防止することができる建設機械のアンダーカバー構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、走行可能な機体に機械室を設けて補機類を収容し、機械室の下面に補機類を保守するための開口部を形成すると共に、開口部を脱着可能なアンダーカバーで閉鎖した建設機械のアンダーカバー構造において、機械室の開口部周縁の複数箇所に設けられ、開口部に配設されたアンダーカバーを支持するための掛止部を有する複数の支持ブラケットと、各支持ブラケットとそれぞれ対応するようにアンダーカバーに形成され、支持ブラケットの掛止部を挿脱可能な挿脱部、及び各挿脱部からそれぞれ同一方向に連続し掛止部の上方への離脱を規制してアンダーカバーを支持可能な規制部からなる複数の支持孔と、機械室の開口部周縁に設けられた第1の係止手段と、アンダーカバーに設けられ、各支持ブラケットの掛止部を各支持孔の規制部と対応させたときに第1の係止手段に対して係止可能となり、係止により各支持孔内での支持ブラケットの挿脱部側への移動を規制する第2の係止手段とを備えたものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、第1の係止手段が、各支持ブラケットの掛止部にそれぞれ設けられ、第2の係止手段が、各第1の係止手段とそれぞれ対応するようにアンダーカバーに設けられて、第1の係止手段との係止により支持ブラケットとアンダーカバーとを結合するものであり、各支持ブラケットの掛止部のアンダーカバーに当接する面にそれぞれ弾性部材を貼着したものである。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように請求項1の発明による建設機械のアンダーカバー構造によれば、機械室の開口部周縁に掛止部を有する複数の支持ブラケットを設ける一方、開口部に配設されるアンダーカバーに、支持ブラケットの掛止部を挿脱可能な挿脱部、及び挿脱部から連続して掛止部の上方への離脱を規制する規制部からなる複数の支持孔を形成し、各支持ブラケットの掛止部を各支持孔の規制部と対応させたときに第1の係止手段と第2の係止手段とを係止可能として、支持ブラケットの挿脱部側への移動を規制するようにした。
このため、機械室の開口部にアンダーカバーを配設して各支持孔の挿脱部に支持ブラケットの掛止部を挿入させ、アンダーカバーをスライドさせると各掛止部がそれぞれ規制部と対応して上方への離脱が防止され、アンダーカバーが各支持ブラケットにより支持される。そして、第1及び第2の係止手段を係止させることにより、各支持孔内での掛止部の挿脱部側への移動が規制されてアンダーカバーの取付が完了する。また、この状態から第1及び第2の係止手段の係止を解除してもアンダーカバーは支持され続け、アンダーカバーをスライドさせると各支持ブラケットの掛止部が支持孔の挿脱部から離脱可能となり、アンダーカバーを下方に移動させることにより取外が完了する。
【0009】
このように脱着作業中のアンダーカバーを支持ブラケットにより支持するため、作業完了まで作業者が不安定な上向き姿勢で重いアンダーカバーを支え続ける必要がない上に、第1及び第2の係止手段を係止・解除するだけで簡単にアンダーカバーを脱着可能なことから、アンダーカバーの脱着の際にボルトを締結・解除する必要がある先行技術(特許文献1)に比較して、作業者の負担を軽減することができ、しかも、ボルト紛失などのトラブルを未然に防止することができる。
請求項2の発明による建設機械のアンダーカバー構造によれば、請求項1に加えて、各支持ブラケットの掛止部に第1の係止手段を設けると共にアンダーカバーへの当接面に弾性部材を貼着し、アンダーカバーに第1の係止手段との係止により支持ブラケットとアンダーカバーとを結合する第2の係止手段を設けた。よって、第1及び第2の係止手段を係止させて支持ブラケットの掛止部とアンダーカバーとを結合すると、両部材間に弾性部材が挟み込まれ、作業時の振動に起因する異音の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のアンダーカバー構造が適用された油圧ショベルを示す全体構成図である。
【図2】油圧ショベルの上部旋回体を示す透視斜視図である。
【図3】油圧ショベルのエンジン室の開口部を示す底面図である。
【図4】図3に対応する姿勢でアンダーカバーを示す底面図である。
【図5】カバー取付前のエンジン室の開口部を示す図3のV−V線断面図である。
【図6】同じくカバー取付前のエンジン室の開口部を示す図3のVI−VI線断面図である。
【図7】カバー取付後のエンジン室の開口部を示す底面図である。
【図8】同じくカバー取付後のエンジン室の開口部を示す図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】同じくカバー取付後のエンジン室の開口部を示す図7のIX−IX線断面図である。
【図10】締結金具の詳細を示す部分拡大図である。
【図11】別例の支持ブラケット及び支持孔を示す図7に対応する部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を油圧ショベルのアンダーカバー構造に具体化した一実施形態を説明する。
図1は本発明のアンダーカバー構造が適用された油圧ショベルを示す全体構成図、図2は油圧ショベルの上部旋回体を示す透視斜視図である。
クローラ1を備えた下部走行体2上には上部旋回体3(機体)が旋回可能に設けられ、この上部旋回体3の前部には作業機4が設けられている。作業機4はブーム5、アーム6及び掘削バケット7などから構成され、それぞれ油圧シリンダ5a,6a,7aにより作動する。上部旋回体3は、そのフレーム8上にオペレータが搭乗する運転室9、図示しないエンジンや油圧ポンプなどの補機類を収容したエンジン室10(機械室)、燃料タンク11及びカウンタウエイト12などを設けて構成されている。エンジン駆動の油圧ポンプから供給される油圧を利用して、オペレータの操作に応じて油圧シリンダ5a,6a,7aによる作業機4の動作や下部走行体2の走行などが行われる。
【0012】
上部旋回体3のフレーム8の下面には上記運転室9やエンジン室10などに対応して複数の開口部が形成され、これらの開口部を介して内部に収容された補機類などの保守、例えばエンジン室10についてはエンジンや油圧ポンプなどの保守を実施可能となっている。各開口部は脱着可能なアンダーカバー13により閉鎖されており、これらのアンダーカバー13は十分な肉厚の鋼板などで製作され、工事作業中の障害物の突き上げによる補機類の破損を防止するようになっている。
ところで、[発明が解決しようとする課題]で述べたように、先行技術である特許文献1の技術では、アンダーカバーの脱着時に作業者の支持を不要としているものの、ボルトを用いたことにより締結及び締結解除が必要になる上に、ボルト紛失などのトラブルが生じるという問題がある。
その対策として本実施形態では、ボルトを用いないアンダーカバー構造を適用しており、以下、当該アンダーカバー構造を上記エンジン室10のアンダーカバー13aを例にとって説明する。なお、本実施形態では、他のアンダーカバー13も同様の取付構造としているが、これに限ることはなく、他のアンダーカバー13については別の取付構造を適用してもよい。
【0013】
まず、エンジン室10の開口部側の構成を述べる。
図3は油圧ショベルのエンジン室10の開口部を示す底面図、図4は図3に対応する姿勢でアンダーカバー13aを示す底面図、図5はカバー取付前のエンジン室10の開口部を示す図3のV−V線断面図、図6は同じくカバー取付前のエンジン室10の開口部を示す図3のVI−VI線断面図である。
図3に示す一対のメンバ8aは上記したフレーム8の一部を構成するものであり、車両の左右方向に所定間隔をおいた位置でそれぞれ前後方向に延設されている。両メンバ8aの間の空間がエンジン室10の開口部10aに相当し、この開口部10aを介して下方よりエンジン室10内の補機類を保守可能となっている。なお、底面図である図3では左右方向が実際の車両とは逆転して示されているが、以下の説明では、図3にならって左右方向を表現し、前後方向については車両と整合するように表現する。
開口部10aの四隅には鋼板からなる支持ブラケット15がそれぞれ配設され、特に図3,6に示すように、各支持ブラケット15の脚部15aは前後方向に面する四角板状をなして、その一側縁をメンバ8aの側面に溶接されている。
【0014】
各支持ブラケット15の脚部15aは開口部10aから下方に延設され、その下端は略直角に折曲されて掛止部15bが形成されている。各掛止部15bは上下方向に面する四角板状をなして上面にゴム板16(弾性部材)が貼着され、ゴム板16の上面はメンバ8aの下面に対して所定距離(アンダーカバー13aの板厚より若干大)だけ離間している。本実施形態では、前側の一対の掛止部15bが後方に折曲され、後側の一対の掛止部15bが前方に折曲されているが、これに限ることはなく、各掛止部15bの折曲方向を任意に変更してもよい。
次に、アンダーカバー13a側の構成を述べる。
図7はカバー取付後のエンジン室10の開口部10aを示す底面図、図8は同じくカバー取付後のエンジン室10の開口部10aを示す図7のVIII−VIII線断面図、図9は同じくカバー取付後のエンジン室10の開口部10aを示す図7のIX−IX線断面図である。
【0015】
特に図4,7に示すように、アンダーカバー13aは四角板状をなし、上記エンジン室10の開口部10aに配設した状態では開口部10aを閉鎖すると共に、その左右両端部が左右のメンバ8aの下面に重なるようになっている。アンダーカバー13aの四隅には上記支持ブラケット15の掛止部15bと対応するようにそれぞれ支持孔17が形成され、各支持孔17は挿脱部17aと規制部17bとから構成されている。各挿脱部17aは支持ブラケット15の掛止部15bよりも若干大きな四角状をなし、それぞれ掛止部15bを挿脱可能となっている。
各規制部17bは、全体として挿脱部17aから左方に向けて連続するスリット状をなしている。各規制部17bの前後幅は支持ブラケット15の脚部15aの前後寸法(板厚)よりも若干大きく設定され、各規制部17bの左右長さは脚部15aの左右寸法よりも若干大きく設定されている。また、各規制部17bの前後位置は支持ブラケット15の脚部15aと対応し、前側の一対の規制部17bは挿脱部17aの最前部に、後側の一対の規制部17bは挿脱部17aの最後部に位置している。
【0016】
このため、アンダーカバー13aの支持孔17の挿脱部17aに支持ブラケット15の掛止部15bを挿入した状態で、図7〜9に示すように、支持ブラケット15を支持孔17の規制部17b側に移動させて規制部17bと対応させることが可能となっている。このときの掛止部15b上のゴム板16はアンダーカバー13aの下面に当接し、規制部17b内から上方への掛止部15b上の離脱が規制されており、結果として各支持ブラケット15の掛止部15bによりアンダーカバー13aの四隅が支持されることになる。
一方、各支持ブラケット15及びアンダーカバー13aには締結金具18が設けられており、図10は締結金具18の詳細を示す部分拡大図である。
図6,7,10に示すように、締結金具18は支持ブラケット15側の第1金具19(第1の係止手段)、及びアンダーカバー13a側の第2金具20(第2の係止手段)から構成され、第1金具19は各支持ブラケット15の掛止部15bの下面にそれぞれ固定されている。特に図10に示すように、第1金具19は側方に向けて開口する係止溝19aを備えており、前側の一対の第1金具19は係止溝19aを前方に向け、後側の一対の第1金具19は係止溝19aを後方に向けるように配設されている。
【0017】
アンダーカバー13aには各第1金具19と対応するように第2金具20が固定され、図10に示すように、第2金具20は一側を中心として矢印方向に回動する操作レバー20b、及び操作レバー20bに連結されて第1金具19の係止溝19aに係止可能な係止バー20aを備えている。このため、各第1金具19の係止溝19aの開口方向と対応するように、前側の一対の第2金具20は係止バー20aを前方に向け、後側の一対の第2金具20は係止バー20aを後方に向けるように配設されている。
また、アンダーカバー13aに対する各第2金具20の位置は、図7に示すように各支持ブラケット15の掛止部15bを各支持孔17の規制部17bと対応させたとき、第1金具19の係止溝19aに係止バー20aを係止可能となるように設定されている。そして、図7,9に示すように、各第2金具20の係止バー20aを第1金具19の係止溝19aにそれぞれ係止させた状態では、締結金具18を介してアンダーカバー13aが各支持ブラケット15と結合され、支持ブラケット15の掛止部15bの挿脱部17a側への移動が規制されるようになっている。
【0018】
次に、以上のように構成された油圧ショベルのアンダーカバー構造による作用を述べる。
油圧ショベルの運転中などの通常時において、エンジン室10の開口部10aはアンダーカバー13aにより閉鎖されて内部の補機類が保護されている。このときには図7〜9に示すように、各支持ブラケット15の掛止部15bが各支持孔17の規制部17bとそれぞれ対応すると共に、各第2金具20の係止バー20aが第1金具19の係止溝19aにそれぞれ係止されている。この係止により支持ブラケット15の掛止部15bの挿脱部17a側への移動が規制され、各掛止部15bはゴム板16を挟み込んだ状態でアンダーカバー13aの下面に当接し、これによりアンダーカバー13aは四隅を支持ブラケット15により支持されている。
このように、鋼板からなる支持ブラケット15の掛止部15bとアンダーカバー13aとの直接的な接触がゴム板16により防止されると共に、図8,9に示すように、メンバ8aの下面とアンダーカバー13aの上面との間に常に間隙Sが形成されることで直接的な接触が防止され、これにより作業時の振動に起因する異音の発生が防止されている。
【0019】
エンジン室10内の補機類の保守は、アンダーカバー13aを取り外して実施される。まず、各締結金具18の第2金具20の操作レバー20bをそれぞれ回動操作(図10の反時計回り)して、第1金具19の係止溝19aに対する係止バー20aの係止を解除する。この時点では、各支持孔17と支持ブラケット15との位置関係は変化しないため、アンダーカバー13aは各支持ブラケット15により支持され続ける(以下、この状態を仮支持と称する)。
次いで、アンダーカバー13aを左方(図7の反矢印A方向)にスライドさせると、各支持孔17内において支持ブラケット15が規制部17bから挿脱部17a側へと移動し、それぞれの掛止部15bを挿脱部17aから上方に離脱可能となる。そして、アンダーカバー13aを下方に移動させると取外が完了し、開放された開口部10aを介してエンジン室10内の補機類に対する保守を実施することができる。
【0020】
保守の終了後にアンダーカバー13aを取り付ける際には、まず、エンジン室10の開口部10aにアンダーカバー13aを配設して各支持孔17の挿脱部17aに支持ブラケット15の掛止部15bを上方より挿入させる。そして、アンダーカバー13aを右方(図7の矢印A方向)にスライドさせると、各支持ブラケット15がそれぞれ挿脱部17aから規制部17b側に移動し、掛止部15bが規制部17bと対応して上方への離脱が防止されることから、アンダーカバー13aは各支持ブラケット15により仮支持される。
この状態で各締結金具18の第2金具20は第1金具19と対応しており、第2金具20の操作レバー20bをそれぞれ回動操作(図10の時計回り)して係止バー20aを第1金具19の係止溝19aに係止させる。これにより掛止部15bの挿脱部17a側への移動が規制され、アンダーカバー13aの取付が完了する。
【0021】
以上のように、脱着作業中のアンダーカバー13aを支持ブラケット15により仮支持するため、作業完了まで作業者が不安定な上向き姿勢で重いアンダーカバー13aを支え続ける必要がなくなり、その負担を軽減することができる。しかも、先行技術として述べた特許文献1の技術では、一端側のボルトのヘッド部によりアンダーカバーを片持ちで仮支持するのに対し、本実施形態では、4本の支持ブラケット15によりアンダーカバー13aの四隅を仮支持することから、より安定してアンダーカバー13aを仮支持できるという利点もある。
そして、仮支持されたアンダーカバー13aを正規の固定状態とするために、本実施形態では締結金具18を利用していることから、ボルトを用いた特許文献1の技術と比較して以下の利点を有する。
【0022】
本実施形態と特許文献1の技術との何れにおいても、仮支持されたアンダーカバー13aを正規に固定する作業、或いは逆に正規固定されたアンダーカバー13aを仮支持とする作業は上向き姿勢で行うため、可能な限り簡単に短時間で完了することが要望される。これらの作業として、特許文献1の技術では、ボルトを締結または締結解除する必要があるのに対し、本実施形態の締結金具18では、第2金具20の操作レバー20bの回動操作だけで完了でき、その労力も所要時間も格段に軽減される。よって、本実施形態によれば、上記したアンダーカバー13aの仮支持による効果と相俟って、アンダーカバー13aの脱着時の作業者の負担を一層軽減することができる。
また、特許文献1の技術では、ボルトの締結解除の際に緩め過ぎて脱落させてしまう場合があるのに対し、本実施形態の締結金具18の第1金具19は支持ブラケット15に固定され、第2金具20はアンダーカバー13aに固定されているため、脱落の可能性は皆無である。よって、ボルト紛失などのトラブルを未然に防止できるという効果も得られる。
【0023】
以上で実施形態の説明を終えるが、本発明の態様はこの実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、建設機械として油圧ショベルを対象としたが、機械室の下面の開口部を脱着可能なアンダーカバーで閉鎖したものであれば、これに限るものではなく、例えばクレーンや道路機械に適用してもよい。
また、上記実施形態では、四角状の掛止部15bを備えた4本の支持ブラケット15をエンジン室10の開口部10aに設ける一方、四角状の挿脱部17a及びスリット状の規制部17bからなる支持孔17をアンダーカバー13aの四隅に形成したが、これらの構成に限ることはない。例えば支持ブラケット15の数を増減させたり、支持ブラケット15や支持孔17の形状を変更したりしてもよい。
【0024】
以下、支持ブラケット及び支持孔の形状を変更した別例を図11に基づき説明する。
支持ブラケット31の脚部31aは円筒状をなし、その下端に円盤状の掛止部31bが一体的に形成されている。支持ブラケット31の掛止部31bと対応するようにアンダーカバー13aの支持孔32の挿脱部32aは円形状をなし、規制部32bは挿脱部32aから連続するスリット状をなして、前後幅を支持ブラケット31の脚部31aの径よりも若干大きく設定されている。なお、同図では締結金具18の図示を省略しているが、実際には実施形態と同様に設けられている。アンダーカバー13aの脱着時の作用は上記実施形態と相違しないため重複する説明はしないが、このように構成しても同様の作用効果を得ることができる。
また、上記実施形態では第1係止手段として係止溝19aを備えた第1金具19を用い、第2係止手段として係止バー20aを備えた第2金具20を用い、係止溝19aに係止バー20aを掛止することで支持ブラケット15とアンダーカバー13aとを結合したが、これに限るものではない。例えば第1及び第2金具19,20の形状や数を変更したり、或いは支持ブラケット15とアンダーカバー13aとを結合する代わりに、支持孔17内での支持ブラケット15の挿脱部17a側への移動を規制する構成としたりしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
3 上部旋回体(機体)
10 エンジン室(機械室)
15,31 支持ブラケット
15b,31b 掛止部
16 ゴム板(弾性部材)
17,32 支持孔
17a,32a 挿脱部
17b,32b 規制部
19 第1金具(第1の係止手段)
20 第2金具(第2の係止手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な機体に機械室を設けて補機類を収容し、該機械室の下面に前記補機類を保守するための開口部を形成すると共に、該開口部を脱着可能なアンダーカバーで閉鎖した建設機械のアンダーカバー構造において、
前記機械室の開口部周縁の複数箇所に設けられ、該開口部に配設された前記アンダーカバーを支持するための掛止部を有する複数の支持ブラケットと、
前記各支持ブラケットとそれぞれ対応するように前記アンダーカバーに形成され、該支持ブラケットの掛止部を挿脱可能な挿脱部、及び各挿脱部からそれぞれ同一方向に連続し前記掛止部の上方への離脱を規制して前記アンダーカバーを支持可能な規制部からなる複数の支持孔と、
前記機械室の開口部周縁に設けられた第1の係止手段と、
前記アンダーカバーに設けられ、前記各支持ブラケットの掛止部を前記各支持孔の規制部と対応させたときに前記第1の係止手段に対して係止可能となり、該係止により各支持孔内での前記支持ブラケットの前記挿脱部側への移動を規制する第2の係止手段と
を備えたことを特徴とする建設機械のアンダーカバー構造。
【請求項2】
前記第1の係止手段は、前記各支持ブラケットの掛止部にそれぞれ設けられ、
前記第2の係止手段は、前記各第1の係止手段とそれぞれ対応するように前記アンダーカバーに設けられて、該第1の係止手段との係止により前記支持ブラケットと前記アンダーカバーとを結合するものであり、
前記各支持ブラケットの掛止部の前記アンダーカバーに当接する面にそれぞれ弾性部材を貼着したことを特徴とする請求項1記載の建設機械のアンダーカバー構造。
【請求項1】
走行可能な機体に機械室を設けて補機類を収容し、該機械室の下面に前記補機類を保守するための開口部を形成すると共に、該開口部を脱着可能なアンダーカバーで閉鎖した建設機械のアンダーカバー構造において、
前記機械室の開口部周縁の複数箇所に設けられ、該開口部に配設された前記アンダーカバーを支持するための掛止部を有する複数の支持ブラケットと、
前記各支持ブラケットとそれぞれ対応するように前記アンダーカバーに形成され、該支持ブラケットの掛止部を挿脱可能な挿脱部、及び各挿脱部からそれぞれ同一方向に連続し前記掛止部の上方への離脱を規制して前記アンダーカバーを支持可能な規制部からなる複数の支持孔と、
前記機械室の開口部周縁に設けられた第1の係止手段と、
前記アンダーカバーに設けられ、前記各支持ブラケットの掛止部を前記各支持孔の規制部と対応させたときに前記第1の係止手段に対して係止可能となり、該係止により各支持孔内での前記支持ブラケットの前記挿脱部側への移動を規制する第2の係止手段と
を備えたことを特徴とする建設機械のアンダーカバー構造。
【請求項2】
前記第1の係止手段は、前記各支持ブラケットの掛止部にそれぞれ設けられ、
前記第2の係止手段は、前記各第1の係止手段とそれぞれ対応するように前記アンダーカバーに設けられて、該第1の係止手段との係止により前記支持ブラケットと前記アンダーカバーとを結合するものであり、
前記各支持ブラケットの掛止部の前記アンダーカバーに当接する面にそれぞれ弾性部材を貼着したことを特徴とする請求項1記載の建設機械のアンダーカバー構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−172299(P2012−172299A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31909(P2011−31909)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】
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