説明

建設機械のエンジン始動制御装置

【課題】アクチュエータの急激な速度変化を防止して安全性を確保し得る建設機械のエンジン始動制御装置を提供する。
【解決手段】建設機械は、各々キースイッチ3,4の操作により始動する複数台のエンジン1,2と、この各エンジンにより駆動される複数の油圧ポンプ5,6と、この複数の油圧ポンプから供給される作動油により駆動される少なくとも1つのアクチュエータ9とを備える。この建設機械のエンジン始動制御装置30は、各エンジンの動作状態を検出するエンジン動作状態検出手段1b,2bと、このエンジン動作状態検出手段の信号を受け、1台のエンジンのキースイッチの操作が行われたとき他のエンジンが動作中であればキースイッチの操作に拘わらず当該エンジンの始動を規制する規制手段11,13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数台のエンジンにより複数の油圧ポンプ及び1つのアクチュエータを駆動する建設機械のエンジン始動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、大型の移動式クレーンや杭打機などの建設機械において、例えば特許文献1に開示されているように、複数台のエンジンを搭載し、この各エンジンによりそれぞれ1つ又は複数の油圧ポンプを駆動するとともに、これらの油圧ポンプから供給される作動油により各種複数のアクチュエータを駆動するようにしたものは知られている。
【0003】
この場合、各アクチュエータは、通常、それぞれ1台のエンジンを動力源とし、そのエンジンにより駆動される油圧ポンプからの作動油だけで駆動される構成になっている。しかし、エンジンの小型化やアクチュエータの高出力化などを図るために、複数台のエンジンを動力源とし、各エンジンにより駆動される油圧ポンプからの作動油を合流させて1つのアクチュエータに供給し、このアクチュエータを駆動するようにすることが考えられる。
【0004】
ところが、このように複数台のエンジンを動力源として1つのアクチュエータを駆動するものでは、複数台のエンジンのうち、例えば1台のエンジンが動作中でアクチュエータが作動しているときオペレータが別のエンジンを始動させるとアクチュエータの出力が急増し、急激な速度変化により実作業に影響を及ぼすという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平2−89031号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、上述の如き複数台のエンジンを動力源として1つのアクチュエータを駆動するものにおいて、1台のエンジンを始動するとき、他のエンジンの動作状態とアクチュエータの作動状態などに応じてエンジン始動を適切に制御することにより、アクチュエータの急激な速度変化を防止して安全性を確保し得る建設機械のエンジン始動制御装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、建設機械として、各々キースイッチの操作により始動する複数台のエンジンと、この各エンジンにより駆動される複数の油圧ポンプと、この複数の油圧ポンプから供給される作動油により駆動される少なくとも1つのアクチュエータとを備えることを前提とする。そして、この建設機械のエンジン始動制御装置として、上記各エンジンの動作状態を検出するエンジン動作状態検出手段と、このエンジン動作状態検出手段の信号を受け、1台のエンジンのキースイッチの操作が行われたとき他のエンジンが動作中であればキースイッチの操作に拘わらず当該エンジンの始動を規制する規制手段とを備える構成にする。
【0008】
この構成では、1台のエンジンが動作中に他のエンジンのキースイッチの操作が行われたとき、規制手段は、各エンジンの動作状態を検出するエンジン動作状態検出手段の信号に基づいてその状況を判断し、キースイッチの操作に拘わらず当該エンジンの始動を規制するため、アクチュエータの急激な速度変化を未然に防止することができる。
【0009】
ここで、1台のエンジンが動作中でもそのエンジンがアイドリング状態のときやアクチュエータの作動量を調整する操作レバーの操作量が小さいときなどアクチュエータが非作動状態のときには、他のエンジンのキースイッチの操作によって当該エンジンを始動させたとしてもアクチュエータの急激な速度変化が発生することはない。このことに鑑み、請求項2に係る発明は、請求項1記載の建設機械のエンジン始動制御装置において、更に、上記アクチュエータの作動状態を検出するアクチュエータ作動状態検出手段を備える一方、上記規制手段を、このアクチュエータ作動状態検出手段の信号も受け、1台のエンジンのキースイッチの操作が行われたとき他のエンジンが動作中でもアクチュエータが非作動状態であればエンジンの始動を規制しないように設ける構成にする。
【0010】
この構成では、1台のエンジンが動作中に他のエンジンのキースイッチの操作が行われたとき、規制手段は、各エンジンの動作状態を検出するエンジン動作状態検出手段の信号だけでなく、アクチュエータの作動状態を検出するアクチュエータ作動状態検出手段の信号をも受けて状況を判断し、アクチュエータが作動状態であればキースイッチの操作に拘わらず当該エンジンの始動を規制する一方、アクチュエータが非作動状態であればエンジンの始動を規制しないようになっている。このため、アクチュエータの急激な速度変化を防止することができるとともに、不要なエンジン始動の規制を回避することができる。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の建設機械のエンジン始動制御装置において、更に、オペレータが上記規制手段によるエンジン始動の規制を解除するためのスイッチを備える一方、上記規制手段を、このスイッチが操作されているときエンジンの始動を規制しないように設ける構成にする。この構成では、オペレータが規制手段によるエンジン始動の規制を解除するためにスイッチを操作しているとき、規制手段は、エンジンの始動を規制しないようになっているため、オペレータの意思に基づいてエンジン始動が適切に制御されることになり、使い勝手が良くなる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明における建設機械のエンジン始動制御装置によれば、1台のエンジンが動作中に他のエンジンのキースイッチの操作が行われたときにはそのキースイッチの操作に拘わらず当該エンジンの始動が規制されるようになっているため、アクチュエータの急激な速度変化を未然に防止することができ、安全性を確保することができる。
【0013】
特に、請求項2に係る発明では、1台のエンジンが動作中に他のエンジンのキースイッチの操作が行われたとき、アクチュエータが作動状態であればキースイッチの操作に拘わらず当該エンジンの始動が規制される一方、アクチュエータが非作動状態であればエンジンの始動が規制されないようになっているため、アクチュエータの急激な速度変化を防止することができるとともに、不要なエンジン始動の規制を回避することができ、信頼性の向上に寄与することができる。
【0014】
また、請求項3に係る発明では、オペレータがエンジン始動の規制を解除するためにスイッチを操作しているときにはエンジン始動が規制されないようになっているため、オペレータの使い勝手が良くなり、実用化を図る上で有効なものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は本発明の実施形態に係る建設機械のブロック構成図である。
【図2】図2はエンジン始動時の制御内容を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態である実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1は本発明の一実施形態に係るエンジン始動制御装置を備えた建設機械のブロック構成を示し、1及び2は建設機械の適宜箇所に搭載された2台のエンジンである第1エンジン及び第2エンジンであり、この両エンジン1,2は、共に付属品としてスタータ1a,2a及びエンジン制御部(ECU)1b,2bを有している。
【0018】
また、3及び4は建設機械の運転室内に設けられた第1キースイッチ及び第2キースイッチであり、この両キースイッチ3,4は、共に操作位置としてOFF位置、ACC位置、ON位置及びスタート位置を有し、キーを挿入して回すことでOFF位置から、ACC位置、ON位置又はスタート位置に切り換えられるようになっている。第1キースイッチ3は、第1エンジン1のスタータ1aに電気回路を介して接続されており、この第1キースイッチ3にキーを挿入してスタート位置に切り換えるとスタータ1aが作動して第1エンジン1が始動するようになっている。また、第2キースイッチ4は、第2エンジン2のスタータ2aに電気回路を介して接続されており、この第2キースイッチ4にキーを挿入してスタート位置に切り換えるとスタータ2aが作動して第2エンジン2が始動するようになっている。
【0019】
上記第1エンジン1にはその出力により駆動させる第1油圧ポンプ5が連結されているとともに、上記第2エンジン2には同じくその出力により駆動される第2油圧ポンプ6が連結されている。この第1油圧ポンプ5及び第2油圧ポンプ6は、それぞれ切換バルブ7,8を介して、少なくとも1つのアクチュエータ9に接続されており、第1油圧ポンプ5及び第2油圧ポンプ6から供給される作動油を合流させてアクチュエータ9を駆動するようになっている。ここで、アクチュエータ9は、具体的には建設機械の走行、旋回又は巻上などのいずれかの動作、特に高出力が必要な動作に関与する油圧シリンダ又は油圧モータである。
【0020】
上記第1エンジン1のECU1bには第1コントローラ11が信号授受可能に接続されており、この第1コントローラ11は、第1エンジン1の動作状態などに応じて第1油圧ポンプ5の作動制御及び切換バルブ7の切換制御を行うとともに、第2キースイッチ4の操作により第2エンジン2を始動させる際にその操作に拘わらず第2エンジン2の始動を規制するために第2キースイッチ4のスタータ回路に設けられた第1リレースイッチ12のリレー接点12aの開閉をリレーコイル12bへの通電・遮断により制御するようになっている。第1リレースイッチ12は、b接点のリレースイッチであって、通常はリレー接点12aが閉じていてリレーコイル12bに通電した時リレー接点12aが開くものである。
【0021】
上記第2エンジン2のECU2bには第2コントローラ13が信号授受可能に接続されており、この第2コントローラ13は、第2エンジン2の動作状態などに応じて第2油圧ポンプ6の作動制御及び切換バルブ8の切換制御を行うとともに、第1キースイッチ3の操作により第1エンジン1を始動させる際にその操作に拘わらず第1エンジン1の始動を規制するために第1キースイッチ3のスタータ回路に設けられた第2リレースイッチ14のリレー接点14aの開閉をリレーコイル14bへの通電・遮断により制御するようになっている。第2リレースイッチ14は、第1リレースイッチ12と同じくb接点のリレースイッチであって、通常はリレー接点14aが閉じていてリレーコイル14bに通電した時リレー接点14aが開くものである。
【0022】
上記第1コントローラ11及び第2コントローラ13にはこの両コントローラ11,13との間で相互に情報を共有するための制御を実行する第3コントローラ16が信号授受可能に接続されている。この第3コントローラ16には、建設機械の運転室内に設けられたアクセルレバーの操作量を検出する操作量検出手段17の信号と、アクチュエータ9が関与する建設機械の動作(走行、起伏又は巻上など)用の操作レバーの操作量を検出する操作量検出手段18の信号と、オペレータが後述する規制手段としての第1コントローラ11及び第2コントローラ13によるエンジン始動の規制を解除するために建設機械の運転室内に設けられた規制解除スイッチ19の信号と、アクチュエータ9の作動状態を直接的に検出するアクチュエータ動作状態検出手段としての接触センサや光センサなどからなる動作検出センサ20の信号とが入力するようになっており、これらの入力信号は、第3コントローラ16から第1コントローラ11及び第2コントローラ13に対し出力することにより情報の共有化が実行される。
【0023】
さらに、21は第1油圧ポンプ5の下流側の油圧を検出する第1油圧センサ、22は切換バルブ7の下流側の作動油の流量を検出する第1流量センサ、23は第2油圧ポンプ6の下流側の油圧を検出する第2油圧センサ、24は切換バルブ8の下流側の作動油の流量を検出する第2流量センサであり、これら4つのセンサ21〜24の検出信号は、第1〜第3コントローラ11,13,16のいずれかに入力した後、第1〜第3コントローラ11,13,16間で情報の共有化に利用される。
【0024】
以上の構成のうち、第1〜第3コントローラ11,13,16、第1及び第2リレースイッチ12,14、各種の検出手段17,18、切換解除スイッチ19及び各種のセンサ20〜24などによりエンジン始動制御装置30が構成されている。
【0025】
次に、上記第1コントローラ11の制御内容のうち、特に、第2キースイッチ4の操作により第2エンジン2を始動させる際に第1リレースイッチ12のリレー接点12aの開閉を制御するときの制御内容について、図2に示すフローチャートに従って説明する。
【0026】
すなわち、図2において、スタートした後、先ず、ステップS1で第2キースイッチ4の位置情報を読み込む。この第2キースイッチ4の位置情報は、第2エンジン2のECU2bから第2コントローラ13を介して第1コントローラ11に入手される。
【0027】
続いて、ステップS2で第2キースイッチ4がオペレータによってOFF位置からON位置に変更操作されるのを待った後、ステップS3で第1エンジン1が停止しているか否かを判定する。第1エンジン1が停止中か動作中かという第1エンジン1の動作状態の情報は、第1エンジン1のECU1bから第1コントローラ1に入手される。よって、第1エンジン1のECU1bは、本願の請求項1に係る発明にいう、各エンジン1,2の動作状態を検出するエンジン動作状態検出手段に相当するものである。尚、第2コントローラ13の制御の中で、第1キースイッチ3の操作により第1エンジン1を始動させる際に第2リレースイッチ14のリレー接点14aの開閉を制御するときには、第2エンジン2のECU2bから第2エンジン2の動作情報が入手されることから、第2エンジン2のECU2bも、第1エンジン1のECU1bと同じく、本願の請求項1に係る発明にいうエンジン動作状態検出手段に相当するものである。
【0028】
そして、上記ステップS3の判定がYESの第1エンジン1が停止中のときには、ステップS4で第1リレースイッチ12のリレー接点12aを通常の閉じ状態を維持する。これにより、第2エンジン2が始動することになり(ステップS5)、制御を終了する。
【0029】
一方、上記ステップS3の判定がNOの第1エンジン1が動作中のときには、ステップS6で各種情報を読み込む。この各種情報としては、第1エンジン1のECU1bから入手する動作中の第1エンジン1の回転数情報、アクセルレバーの操作量検出手段17から入手するアクセルレバーの操作量情報、操作レバーの操作量検出手段18から入手する操作レバーの操作量情報、規制解除スイッチ19の信号、動作検出センサ20から入手するアクチュエータ9の作動情報、第1油圧センサ21から入手する油圧情報、及び第1流量センサ22から入手する流量情報が含まれる。
【0030】
続いて、ステップS7でアクチュエータ9が非作動状態にあるか否かを判定する。この判定は、単に動作検出センサ20から入手したアクチュエータ9の作動情報に基づいて行うだけでなく、(1)第1エンジン1のECU1bから入手した第1エンジン1の回転数が所定値以下という条件、(2)アクセルレバーの操作量検出手段17から入手したアクセルレバーの操作量が所定値以下という条件、(3)操作レバーの操作量検出手段18から入手した操作レバーの操作量が所定値以下という条件、(4)第1油圧センサ21から入手した第1油圧ポンプ5からアクチュエータ9に供給される作動油の油圧が所定値以下という条件、(5)第1流量センサ22から入手した第1油圧ポンプ5からアクチュエータ9に供給される作動油の流量が所定値以下という条件のうち、1つ又は複数の条件を満たしたときアクチュエータ9が非作動状態であると判定するものである。よって、第1エンジン1のECU1b、アクセルレバーの操作量検出手段17、操作レバーの操作量検出手段18、第1油圧センサ21及び第1流量センサ22は、いずれも動作検出センサ20と同じく、アクチュエータ9の作動状態を直接的又は間接的に検出するアクチュエータ作動状態検出手段に相当するものである。尚、第2コントローラ13の制御の中で、第1キースイッチ3の操作により第1エンジン1を始動させる際に第2リレースイッチ14のリレー接点14aの開閉を制御するときには、第2エンジン2のECU2bから第2エンジン2の回転数情報が、第2油圧センサ23から作動油の油圧情報が、第2流量センサ24から作動油の流量情報がそれぞれ入手されることから、第2エンジン2のECU2b、第2油圧センサ23及び第2流量センサ24も同じくアクチュエータ作動状態検出手段に相当するものである。
【0031】
そして、上記ステップS7の判定がYESのアクチュエータ9が非作動状態のときには、ステップS4へ移行し、第1リレースイッチ12のリレー接点12aを閉じる。一方、ステップS7の判定がNOのときには、ステップS8で更に規制解除スイッチ19がON操作されているか否かを判定し、この判定がYESのときにもステップS4へ移行し、第1リレースイッチ12のリレー接点12aを閉じるが、判定がNOのときには、ステップ9で第1リレースイッチ12のリレー接点12bを開き、ステップS6に戻る。これにより、第2キースイッチ4の始動操作に拘わらず第2エンジン2の始動が規制されることになる。
【0032】
以上説明した制御によって、第2キースイッチ4の始動操作が行われたとき他のエンジンである第1エンジン1の動作状態、アクチュエータ9の作動状態及び規制解除スイッチ19の操作状態に応じて第1エンジン1の始動を規制するようになっており、この制御を実行する第1コントローラ11は、本願の請求項1に係る発明にいう規制手段に相当するものである。
【0033】
尚、第2コントローラ13の制御内容であって、第1キースイッチ3の操作により第1エンジン1を始動させる際に第2リレースイッチ14のリレー接点14aの開閉を制御するときの制御内容については、特に図を用いて説明しないが、上述した第1コントローラ11の制御内容であって、第2キースイッチ4の操作により第2エンジン2を始動させる際に第1リレースイッチ12のリレー接点12aの開閉を制御するときの制御内容と略同じである。また、第2コントローラ13も、第1コントローラ11と同じく、本願の請求項1に係る発明にいう規制手段に相当するものである。
【0034】
従って、上記エンジン始動制御装置30においては、2台のエンジン1,2のうち、一方のキースイッチ3,4の始動操作が行われたとき、他方のエンジンが停止中であればエンジンの始動を許容する(S5)一方、他方のエンジンが動作中であれば原則的にエンジンの始動を規制するようになっている(S9)ため、アクチュエータ9の急激な速度変化を未然に防止することができ、安全性を確保することができる。
【0035】
特に、本実施形態の場合、一方のキースイッチ3,4の始動操作が行われたとき他方のエンジン1,2が動作中でもアクチュエータ9が非作動状態であればエンジンの始動を規制しないようになっている(S7→S4→S5)ため、アクチュエータ9の急激な速度変化を防止することができるとともに、不要なエンジン始動の規制を回避することができ、信頼性の向上に寄与することができる。
【0036】
また、オペレータがエンジン始動の規制を解除するために規制解除スイッチ19をON操作しているときにはエンジン始動が規制されないようになっている(S8→S4→S5)ため、オペレータの使い勝手が良くなり、実用化を図る上で有効なものである。
【0037】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の形態を包含するものである。例えば上記実施形態では、アクチュエータ9の作動状態を検出するアクチュエータ作動状態検出手段として、アクチュエータ9の作動状態を直接的に検出する動作検出センサ20の外、各エンジン1,2のECU1b,2b、アクセルレバーの操作量検出手段17、操作レバーの操作量検出手段18、油圧センサ21,23及び流量センサ24を用いる構成にしたが、本発明は、これらを全て用いる必要はなく、その中の1つ又は複数のものを用いるだけでも良い。
【0038】
また、上記実施形態では、第1コントローラ11が、第2キースイッチ4のスタータ回路に設けた第1リレースイッチ12のリレー接点12aの開閉を制御し、第2コントローラ13が、第1キースイッチ3のスタータ回路に設けた第2リレースイッチ14のリレー接点14aの開閉を制御するように構成したが、本発明は、場合によっては、第1コントローラ11が、第1キースイッチ4のスタータ回路に設けたリレースイッチのリレー接点の開閉を制御し、第2コントローラ13が、第2キースイッチ4のスタータ回路に設けたリレースイッチのリレー接点の開閉を制御するように構成したり、あるいは第3コントローラ16が、第1キースイッチ3のスタータ回路に設けたリレースイッチのリレー接点の開閉と第2キースイッチ4のスタータ回路に設けたリレースイッチのリレー接点の開閉を共に制御するように構成したりしても良い。
【0039】
さらに、上記実施形態では、各エンジン1,2のキースイッチ3,4のスタータ回路にリレースイッチ12,14のリレー接点12a,14aを設け、このリレー接点12a,14aの開閉制御により各エンジン1,2の始動を規制ないし制御するように構成したが、本発明は、このリレースイッチ12,14を設けることなく、各エンジン1,2のECU1b,2bを制御することで各エンジン1,2の始動を規制ないし制御したり、あるいはスタータモータの破損を防ぐためのセーフティリレーを備えたエンジンの場合そのセーフティリレーを用いて各エンジンの始動を規制ないし制御したりしても良い。
【符号の説明】
【0040】
1 第1エンジン
2 第2エンジン
1b,2b エンジン制御部(ECU、エンジン動作状態検出手段、アクチュエータ作動状態検出手段)
3 第1キースイッチ
4 第2キースイッチ
5 第1油圧ポンプ
6 第2油圧ポンプ
9 アクチュエータ
11 第1コントローラ(規制手段)
12 第2リレースイッチ
12a リレー接点
12b リレーコイル
13 第2コントローラ(規制手段)
14 第2リレースイッチ
14a リレー接点
14b リレーコイル
16 第3コントローラ
17 アクセルレバーの操作量検出手段(アクチュエータ作動状態検出手段)
18 操作レバーの操作量検出手段(アクチュエータ作動状態検出手段)
19 規制解除スイッチ
20 動作検出センサ(アクチュエータ作動状態検出手段)
21 第1油圧センサ(アクチュエータ作動状態検出手段)
22 第1流量センサ(アクチュエータ作動状態検出手段)
23 第2油圧センサ(アクチュエータ作動状態検出手段)
24 第2流量センサ(アクチュエータ作動状態検出手段)
30 エンジン始動制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々キースイッチの操作により始動する複数台のエンジンと、この各エンジンにより駆動される複数の油圧ポンプと、この複数の油圧ポンプから供給される作動油により駆動される少なくとも1つのアクチュエータとを備えた建設機械のエンジン始動制御装置であって、
上記各エンジンの動作状態を検出するエンジン動作状態検出手段と、
このエンジン動作状態検出手段の信号を受け、1台のエンジンのキースイッチの操作が行われたとき他のエンジンが動作中であればキースイッチの操作に拘わらず当該エンジンの始動を規制する規制手段とを備えたことを特徴とする建設機械のエンジン始動制御装置。
【請求項2】
上記アクチュエータの作動状態を検出するアクチュエータ作動状態検出手段を更に備えており、
上記規制手段は、このアクチュエータ作動状態検出手段の信号も受け、1台のエンジンのキースイッチの操作が行われたとき他のエンジンが動作中でもアクチュエータが非作動状態であればエンジンの始動を規制しないように設けられている請求項1記載の建設機械のエンジン始動制御装置。
【請求項3】
オペレータが上記規制手段によるエンジン始動の規制を解除するためのスイッチを更に備えており、
上記規制手段は、このスイッチが操作されているときエンジンの始動を規制しないように設けられている請求項1又は2記載の建設機械のエンジン始動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−82548(P2013−82548A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224909(P2011−224909)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(304020362)コベルコクレーン株式会社 (296)
【Fターム(参考)】