建設機械のキャブ構造
【課題】 スライドドアの開口幅を大きく確保することができる建設機械のキャブ構造を提供する。
【解決手段】 建設機械のキャブ構造は、フレーム体11と、スライドドア7と、上案内部17とを備える。フレーム体11は、鉛直方向に沿って設けられる第1柱部19aと、前後方向に沿って設けられ前端部が第1柱部19aの上端部と繋がっている梁部19bと、鉛直方向に沿って設けられ第1柱部19aの後方に配置された中間柱部材36とを含む複数のパイプ状部材によって構成される。スライドドア7は、第1柱部19aと中間柱部材36との間に設けられる出入口を開閉する。上案内部17は、梁部19bに沿って中間柱部材36より前側であり且つ第1柱部19aより後側の第1位置から中間柱部材36より後側の第2位置までに亘って設けられ、スライドドア7を案内する。
【解決手段】 建設機械のキャブ構造は、フレーム体11と、スライドドア7と、上案内部17とを備える。フレーム体11は、鉛直方向に沿って設けられる第1柱部19aと、前後方向に沿って設けられ前端部が第1柱部19aの上端部と繋がっている梁部19bと、鉛直方向に沿って設けられ第1柱部19aの後方に配置された中間柱部材36とを含む複数のパイプ状部材によって構成される。スライドドア7は、第1柱部19aと中間柱部材36との間に設けられる出入口を開閉する。上案内部17は、梁部19bに沿って中間柱部材36より前側であり且つ第1柱部19aより後側の第1位置から中間柱部材36より後側の第2位置までに亘って設けられ、スライドドア7を案内する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械のキャブ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建設機械におけるキャブ構造には、転倒した際にオペレータを保護しうる構造が採用されつつあり、ROPS(Roll Over Protective Structure:転倒時等保護構造)性能が重要視されている。例えば、特許文献1には、各種のパイプ状部材を籠状に組み付けてフレーム構造とした建設機械のキャブ構造が開示されている。このような構成によれば、板金部材の組合せのみによって構成されたキャブ構造と比較して、建設機械が転倒した際の変形に対する剛性を大幅に向上させることができる。
【0003】
一方、都市土木等においては、建設機械のキャブの側面に、オペレータが出入りするための出入口と、出入口を開閉するスライドドアが設けられていることが多い。このスライドドアは、出入口近傍にキャブの側面に沿って設けられたガイドレールによって案内され、キャブの側面に沿って移動可能なように構成されている。これにより、道路工事等が行われる場合のように狭いスペースで建設機械が利用される場合であっても、開かれたドアの旋回台の外側への突出を抑え、オペレータの乗り降りを容易にすることができる。
【特許文献1】特開2004−224083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のようなパイプ状部材から形成されたキャブ構造においてスライドドアが設けられる場合、鉛直方向に沿って設けられたパイプ状部材が出入口の前側に配置されており、案内部をキャブの前端部まで設けることが困難である。すなわち、パイプ状部材ではなく板金部材の組合せによって構成されたキャブでは、出入口の前側にパイプ状部材が配置されていない。このため、板金部材にプレス加工等を施すことによって、案内部を設置するための凹部を容易に形成することができる。しかし、上記のようなパイプ状部材から形成されたキャブ構造では、出入口の前側のパイプ部材に凹部を設けることが板金部材と比べて困難である。従って、パイプ状部材が障害となって案内部の前端の位置が制限されてしまう。このため、案内部の全長が短くなり、スライドドアの移動量が短くなる結果、スライドドアの開口幅が小さくなる恐れがある。
【0005】
本発明の課題は、スライドドアの開口幅を大きく確保することができる建設機械のキャブ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係る建設機械のキャブ構造は、フレーム体と、スライドドアと、案内部とを備える。フレーム体は、鉛直方向に沿って設けられる第1柱部と、前後方向に沿って設けられ前端部が第1柱部の上端部と繋がっている梁部と、鉛直方向に沿って設けられ第1柱部の後方に配置された第2柱部とを含む複数のパイプ状部材によって構成される。スライドドアは、第1柱部と第2柱部との間に設けられる出入口を開閉する。案内部は、梁部に沿って第2柱部より前側であり且つ第1柱部より後側の第1位置から第2柱部より後側の第2位置までに亘って設けられ、スライドドアを案内する。
【0007】
なお、第1柱部および第2柱部は、厳密に鉛直方向に平行に設けられる場合に限らず、多少、傾斜して設けられてもよい。また、梁部についても厳密に前後方向に平行に設けられる場合に限らず、多少、傾斜して設けられてもよい。
【0008】
この建設機械のキャブ構造では、案内部が第2柱部より前側であり且つ第1柱部より後側の第1位置から第2柱部より後側の第2位置までに亘って設けられることによって、第1柱部との干渉を回避することができると共に、案内部の全長を長く確保することができる。これにより、スライドドアの開口幅を大きく確保することができる。
【0009】
第2発明に係る建設機械のキャブ構造は、第1発明の建設機械のキャブ構造であって、案内部は、第2柱部の直上を通るように設けられる。
【0010】
この建設機械のキャブ構造では、案内部は第2柱部の直上を通るため、第2柱部との干渉を回避することができる。また、案内部が第2柱部の外側を通るように設けられる場合と比べて、キャブの外側への膨らみを抑え、キャブをコンパクトに構成することができる。
【0011】
第3発明に係る建設機械のキャブ構造は、第2発明の建設機械のキャブ構造であって、案内部は、スライドドアの水平方向の移動を規制しつつ案内する部材である。また、この建設機械のキャブ構造は、第1支持部材をさらに備える。第1支持部材は、案内部の下方に梁部に沿って設けられ、その下面に第2柱部の上端が固定され、その上面によってスライドドアを支持しつつ案内する。
【0012】
この建設機械のキャブ構造では、スライドドアを支持しつつ案内する第1支持部材の下面に第2柱部の上端が固定されるため、スライドドアによる荷重が第1支持部材を介して第2柱部に支持される。このため、スライドドアをより確実に支持することができる。
【0013】
第4発明に係る建設機械のキャブ構造は、第3発明の建設機械のキャブ構造であって、第2支持部材をさらに備える。第2支持部材は、第1支持部材の上方に第1支持部材に対向するように梁部に沿って設けられ、梁部から側方に突出する部材である。また、案内部は、第2支持部材の下面に設けられている。そして、スライドドアは、第1ガイドローラーと第2ガイドローラーとを有する。第1ガイドローラーは、第1支持部材の上面によって支持されつつ案内される部材である。第2ガイドローラーは、案内部によって水平方向の移動を規制されつつ案内される部材である。
【0014】
この建設機械のキャブ構造では、第1ガイドローラーが第1支持部材によって支持されることによって、スライドドアによる鉛直方向の荷重が支持される。また、第2ガイドローラーが案内部によって案内されることによって、スライドドアの水平方向への移動が規制され、キャブの側面に沿って移動することができる。さらに、第1支持部材および第2支持部材が梁部に沿って設けられることにより、梁部に複雑な加工を施すことなく容易にスライドドアの支持構造を設けることができる。
【0015】
第5発明に係る建設機械のキャブ構造は、第4発明の建設機械のキャブ構造であって、下部走行体上に取り付けられた上部旋回体上に配置される建設機械のキャブ構造である。そして、この建設機械のキャブ構造では、スライドドアが設けられる側面は、外側に膨らむように湾曲した形状を有する。
【0016】
この建設機械のキャブ構造では、スライドドアが設けられる側面は、外側に膨らむように湾曲した形状を有する。このため、上部旋回体が旋回するときの旋回半径を小さくすることができる。
【0017】
また、このようにキャブの側面が外側に膨らむように湾曲した形状となると、キャブの前側ほど幅が小さくなり、案内部の前端部を設ける場所が制限されてしまう。しかし、この建設機械のキャブ構造では、案内部の全長を長く確保することができるため、スライドドアの開口幅を大きく確保することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る建設機械のキャブ構造では、案内部が第2柱部より前側であり且つ第1柱部より後側の第1位置から第2柱部より後側の第2位置までに亘って設けられることによって、第1柱部との干渉を回避することができると共に、案内部の全長を長く確保することができる。これにより、スライドドアの開口幅を大きく確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る建設機械のキャブ構造を採用した油圧ショベル1を図1および図2に示す。図1は、油圧ショベル1の側面図であり、図2は、油圧ショベル1の上面図である。なお、以下の説明において使用する「左右」「前後」「前面背面」という文言は、キャブ10内においてオペレータが椅子に座ったときに向く方向を基準とする方向を示すものとする。
【0020】
[油圧ショベル1の全体構成]
本実施形態に係る油圧ショベル1は、下部走行体2と、旋回台3と、作業機4と、カウンタウェイト5と、エンジン6と、機器室9と、キャブ10とを備えている。そして、油圧ショベル1は、作業機4を除外した機械の旋回半径R(図2参照)が所定の値以下であって、旋回時において旋回台3が下部走行体2からはみ出す量が10%以下となる後方小旋回型の油圧ショベルである。
【0021】
下部走行体2は、進行方向左右両端部分に巻き掛けられた履帯Pを回転させることで、油圧ショベル1を前進、後進させるとともに、上面側に旋回台3を旋回可能な状態で搭載している。
【0022】
旋回台3は、下部走行体2上において任意の方向に旋回可能であって、上面に作業機4と、カウンタウェイト5と、エンジン6と、キャブ10とを搭載している。
【0023】
作業機4は、ブームと、ブームの先端に取り付けられたアームと、アームの先端に取り付けられたバケットとを含むように構成されており、油圧シリンダによってアームやバケット等を上下に移動させながら、土砂や砂礫等の掘削を行う土木工事の現場において作業を行う。
【0024】
カウンタウェイト5は、例えば、鋼板を組み立てて形成した箱の中に屑鉄やコンクリート等を入れて固めたものであって、採掘時等において車体のバランスをとるために旋回台3の後部に設けられている。
【0025】
エンジン6は、下部走行体2や作業機4を駆動するための駆動源であって、カウンタウェイト5に隣接する位置に配置されている。
【0026】
機器室9は、作業機4の側方に配置されており、図示しない燃料タンク、作動油タンクおよび操作弁等を収容する。
【0027】
キャブ10は、油圧ショベル1のオペレータが乗降する運転室であって、作業機4の先端部を見通せるように、旋回台3上における作業機4の側方となる左側前部に配置されている。また、キャブ10は、図3に示すように、旋回台3の上面部分となる旋回フレーム25における左側前方に形成された4つのマウント部24上に、防振装置24aおよびフロアパネル27を、キャブ10のフロアフレーム27aに対してボルト(図示せず)で固定した状態で搭載される。このため、キャブ10は、旋回台3(旋回フレーム25)に対して4点支持された状態で固定配置される。
以下、このキャブ10のキャブ構造について詳述する。
【0028】
[キャブ10の構造]
キャブ10は、図4に示すように、内部にオペレータ用の空間が形成された箱型の構造体であり、オペレータが座るシート、操作用のハンドルやペダル等、各種の計器類が内装されている(図示せず)。
【0029】
キャブ10は、図2に示すように、キャブ10の左側の側面部の中央部Mを、旋回台3の旋回中心Oを中心とする半径Rの円の外周部分にほぼ沿わせるように外方に膨らむように湾曲した形状(以下、円弧部分と示す)を有している。これにより、旋回時においても、下部走行体2よりも外側に旋回台の部分が大きくはみ出すことを回避した後方小旋回の油圧ショベルとして、道路工事等の狭いスペースでの作業が可能になる。そして、この円弧部分には、オペレータが乗降するためのスライドドア7が取り付けられている。これにより、スライドドア7を開けた場合でもスライドドア7が旋回台3の旋回半径Rの外側へほぼ突出しないようにすることができる。この結果、キャブ10が車体外幅B(図2参照)からはみ出して隣接する構築物等に干渉することなく、キャブ10内部の容積を最大限に確保することができる。
【0030】
このキャブ10は、図4に示すように、フレーム体11(図5参照)、支持部材12(図5参照)、複数のパネル部材13−16、スライドドア7、上案内部17(図9(a)参照)、下案内部18(図9(b)参照)等を備えている。
【0031】
(フレーム体11)
フレーム体11は、図5に示すように、複数のパイプ状部材と板金部材とを組み合わせて構成されたキャブ10の骨格部分である。具体的には、フレーム体11は、左前柱部材19と、右前柱部材31と、左後柱部材32と、右後柱部材33と、後方梁部材34と、中間梁部材35と、中間柱部材36とを備えている。なお、図5は、フレーム体11の外観斜視図であり、図4におけるキャブ10から複数のパネル部材13−16やスライドドア7等を取り外した状態を示している。
【0032】
左前柱部材19は、1本のパイプ状部材を中央部分付近で折り曲げて形成されており、略鉛直方向に沿って設けられる第1柱部19aと、略水平方向に前後方向に沿って設けられ前端部が第1柱部19aの上端部と繋がっている梁部19bとを有している。第1柱部19aは、フロアフレーム27a上に立設されており、上部が後方に位置するように僅かに傾斜している。このように、1本のパイプ状部材を折り曲げて第1柱部19aと梁部19bとを形成することで、部品点数を減らしつつ、剛性の高いフレーム体11を得ることができる。なお、右前柱部材31についても同様の構造である。
【0033】
左後柱部材32は、1本の直線状のパイプ状部材によって形成されており、略鉛直方向に沿って設けられている。また、左後柱部材32は、接合相手となる後方梁部材34の形状に適合するように切り欠きが上端部に形成されており、この切り欠きの部分と後方梁部材34の側面とが接合される。さらに、左後柱部材32は、その下端部がフロアフレーム27aに取り付けられており、第1柱部19aと同様にフロアフレーム27a上に立設されている。そして、フロアフレーム27aは、上述したマウント部24のほぼ真上に位置している部分において、防振装置24aを介してフロアパネル27と共に取り付けられている(図3参照)。
【0034】
右後柱部材33も、左後柱部材32と同様に1本の直線状のパイプ状部材によって形成されており、略鉛直方向に沿って配置されている。また、接合相手となる後方梁部材34の形状に適合するように切り欠きが上端部に形成されており、この切り欠きの部分で後方梁部材34の側面と接合される点についても左後柱部材32と同様である。なお、右後柱部材33は、下端部がフロアフレーム27aのレベル(高さ位置)にまで達しておらず、下部が内側に屈曲した背面パネル15の上部に接合されている。これにより、背面パネル15の背面側にキャブ10の内側に向けて嵌入した凹部空間が形成されている。
【0035】
後方梁部材34は、断面形状が略L字型の板金部材によって形成されている。後方梁部材34は、左前柱部材19の梁部19bの後端部と、左後柱部材32の上端部とを接合する。また、後方梁部材34は、右前柱部材31の梁部31bの後端部と、右後柱部材33の上端部とを接合する。より詳細には、左前柱部材19の梁部19bの後端部は、後方梁部材34の略L字型の断面形状における鉛直方向にほぼ平行な面に接合される。一方、左後柱部材32の上端部は、後方梁部材34の略L字型の断面形状における水平方向にほぼ平行な面に接合される。右前柱部材31の梁部31bおよび右後柱部材33についても同様である。
【0036】
中間梁部材35は、1本の直線状のパイプ状部材と板金部材とによって形成されており、水平方向に沿って配置されている。中間梁部材35は、一端が左前柱部材19の梁部19bの内側の面に固定され、他端が右前柱部材31の梁部31bの内側の面に固定されている。
【0037】
中間柱部材36(第2柱部)は、略鉛直方向に沿って設けられた直線状のパイプ状部材である。中間柱部材36は、第1柱部19aの後方であって左後柱部材32の前方に配置されており、第1柱部19aと左後柱部材32との中間位置に配置されている。なお、上述したように、キャブ10の左側の側面は外側に膨らんだ形状となっているため、中間柱部材36は、図6に示すように、第1柱部19aの真後ろよりも外側に位置しており、梁部19bの直下よりも外側に位置している。なお、図6は、フレーム体11の上面図である。また、図5に示すように、中間柱部材36の下端部は、フロアフレーム27aに固定されており、中間柱部材36はフロアフレーム27a上に立設されている。中間柱部材36の上端部は、後述する第1支持部材37の下面に固定されている。この中間柱部材36によって、キャブ10全体の剛性を向上させるとともに、キャブ10の左側側面に取り付けられたスライドドア7を摺動させた場合でも、キャブ10のバランスを保持することができる。
【0038】
(支持部材12)
支持部材12は、図5に示すように、上述した円弧部分を含むキャブ10の左側面上部に左前柱部材19の梁部19bに沿って取り付けられている。支持部材12は、左前柱部材19の梁部19bと、左後柱部材32とを接合するとともに、中間柱部材36の上端に固定される。これにより、互いに位相が異なる位置にある左前柱部材19の梁部19bの後端部と、左後柱部材32の上端部とを、後方梁部材34と共により強固に接合することができる。また、支持部材12は、スライドドア7が摺動する範囲に沿ってその上方に配置されており、後述する上案内部17が設けられている。支持部材12は、第1支持部材37と第2支持部材38とが組み合わせて形成されている。
【0039】
第1支持部材37は、L字型の断面形状を有する板金部材であり、その前端部は、第1柱部19aの上部の後面に固定されており、後端部は中間柱部材36と左後柱部材32との間に位置している。第1支持部材37は、図7に示すように、水平方向に平行な第1水平面37aと鉛直方向に平行な第1垂直面37bとを有する。なお、図7は、支持部材12の構成を示す断面図である。第1水平面37aは梁部19bの下方に位置しており、梁部19bから側方に突出している。第1水平面37aの左側端部は、上面視において外側に膨出するように湾曲した外形を有しており、上述した円弧部分に沿った形状となっている。また、第1水平面37aは前側ほど幅が狭くなる先細りの形状となっている。第1水平面37aは、中間柱部材36の直上を通っており、第1水平面37aの下面に中間柱部材36の上端部が固定されている。なお、第1水平面37aの上面は、後述するスライドドア7の第1垂直ガイドローラー43を支持しつつ案内する面となっている。第1垂直面37bは、その下端部が第1水平面37aの右側端部に繋がっており、第1垂直面37bの左側面の上部が梁部19bの内側の面に固定されている。
【0040】
第2支持部材38は、第1支持部材37と同様にL字型の断面形状を有する板金部材であり、第1支持部材37の上方に設けられている。第2支持部材38の前端部は、左前柱部材19の屈曲部分より僅かに後方に位置しており、後端部は後方梁部材34に固定されている。第2支持部材38は、第2水平面38aと第2垂直面38bとを有している。第2水平面38aは、第1支持部材37の第1水平面37aに平行に第1水平面37aに対向するように梁部19bに沿って設けられている。第2水平面38aの下面の後端部には左後柱部材32の上端が固定される。また、第2水平面38aの左側端部は、梁部19bから側方に突出しており、上面視において第1水平面37aの左側端部と同様に湾曲した形状を有している。すなわち、第2水平面38aは、第1水平面37aと同様に、前側ほど幅の狭い先細りの形状となっている。なお、第2水平面38aの下面には、後述する上案内部17が取り付けられる。第2垂直面38bは、その下端部が第2水平面38aの右側端部と繋がっており、第2垂直面38bの右側面の上部が梁部19bの外側の面に固定されている。
【0041】
(パネル部材)
図4に示す複数のパネル部材13−16は、上記のフレーム体11を覆うように取り付けられており、プレス加工等の加工を施された板金部材から形成されている。複数のパネル部材13−16には、サイドパネル14,16や上面パネル13、背面パネル15等があり、各パネル部材13−16に形成された開口には、図示しないガラス窓が嵌め込まれる。
【0042】
また、キャブ10の左側の側面に取り付けられるサイドパネル16や支持部材12の外側を覆うように取り付けられたサイドフレーム39は、キャブ10の左側面に現れる円弧部分を構成するため、旋回中心Oを中心とする円の円弧に近似した形状となっている。なお、サイドパネル16の上下方向の中央部分には、中間ローラー用案内溝が設けられている。中間ローラー用案内溝は、サイドパネル16の表面からキャブ10の内側方向に凹んだ形状を有しており、前後方向に沿って設けられている。
【0043】
(スライドドア7)
スライドドア7は、第1柱部19aと中間柱部材36との間に設けられた出入口を開閉する部材であり、図8および図9に示すように、ドア本体40、第1アーム部材41、第1水平ガイドローラー42、第1垂直ガイドローラー43、第2アーム部材44、第2水平ガイドローラー45を有している。なお、図8は、スライドドアとフレーム体との取付を示すために、フレーム体11にスライドドア7を取り付けた状態を示している。また、図9は、スライドドアの支持構造近傍の断面図である。
【0044】
ドア本体40は、板金部材が組み合わされて形成されており、側面視において略長方形形状を有している。図8に示すように、ドア本体40の前後方向の長さは、左前柱部材19の第1柱部19aから中間柱部材36を後方に僅かに越える位置まで達しており、上下方向の長さは、フロアフレーム27aから梁部19bまで達している。また、ドア本体40は、キャブ10の円弧部分に沿うように湾曲した外形を有している。なお、ドア本体40の上半分には開口が設けられており、ガラス窓が嵌め込まれる。また、ドア本体40の内面には、図示しない中間ローラーが設けられており、サイドパネル16の中間ローラー用案内溝によって案内される。
【0045】
第1アーム部材41は、図8および図9(a)に示すように、ドア本体40の上端を支持するための部材であり、ドア本体40の内側の面の上部に設けられている。第1アーム部材41は、ドア本体40の内側の面から内側方向に突出して設けられており、ドア本体40の前端部よりも僅かに後方に位置している。
【0046】
第1水平ガイドローラー42(第2ガイドローラー)は、上案内部17によって水平方向の移動を規制されつつ案内される部材である。第1水平ガイドローラー42は、第1アーム部材41の上面の先端部に設けられており、鉛直方向に平行な軸を中心に回転自在に設けられている。
【0047】
第1垂直ガイドローラー43(第1ガイドローラー)は、第1支持部材37の第1水平面37aの上面によって支持されつつ案内される部材である。第1垂直ガイドローラー43は、第1アーム部材41の先端面に設けられており、水平方向に平行な軸を中心に回転自在に設けられている。第1垂直ガイドローラー43は、第1水平面37aの上面に接触して転動する。
【0048】
第2アーム部材44は、図8および図9(b)に示すように、ドア本体40の下端を支持するための部材であり、ドア本体40の内側の面の下部にドア本体40の内面から内側方向に突出して設けられている。第2アーム部材44は、ドア本体40の前端部近傍に位置しており、上面視において、第1アーム部材41よりも前方に位置している。
【0049】
第2水平ガイドローラー45は、下案内部18によって水平方向の移動を規制されつつ案内される部材である。第2アーム部材44の上面の先端部に設けられており、鉛直方向に平行な軸を中心に回転自在に設けられている。
【0050】
(上案内部17)
上案内部17(案内部)は、スライドドア7の上部を支持して案内するガイドレールであり、図9(a)および図10に示すように、第2支持部材38の第2水平面38aの下面に固定されている。上案内部17は、下方が開放された凹状の形状を有しており、下方から凹部空間内に挿入された第1水平ガイドローラー42が上案内部17に沿って転動することによって、スライドドア7の水平方向の移動を規制しつつ案内する。上案内部17は、図6に示すように、梁部19bに沿って中間柱部材36より前側であり且つ第1柱部19aより後側の第1位置から中間柱部材36より後側の第2位置までに亘って設けられている。上案内部17は、前端部が内側に屈曲した形状を有しており、第1前レール部17aと第1後レール部17bとを有している。
【0051】
第1後レール部17bは、第2水平面38aの側端部の湾曲に沿って緩やかに湾曲しながら前後方向に沿って設けられている。第1後レール部17bは、中間柱部材36の直上を通り、その後端部は中間柱部材36より後側の第2位置に位置している。第1後レール部17bの前端部は、第1前レール部17aの後端部に繋がっている。
【0052】
第1前レール部17aは、第1後レール部17bの前端部と所定の角度をなすように滑らかに一体にされており、第1前レール部17aの前端部は、第1柱部19aと中間柱部材36との間であって、僅かに第1柱部19a寄りに位置している。また、第1前レール部17aの前端部は、梁部19bの直下に位置しており、上面視において梁部19bと重なる位置に配置されている。
【0053】
以上のように、上案内部17は、第1位置から外側へ向けて斜後方に延び、第2水平面38aの側端部近傍において後方へ向けて屈曲し、緩やかに湾曲しながら中間柱部材36の直上を通り、中間柱部材36の後方の第2位置まで延びた形状となっている。
【0054】
(下案内部18)
下案内部18は、図6および図9(b)に示すように、スライドドア7の下部を支持して案内するガイドレールであり、フロアフレーム27aの下面に設けられている。下案内部18は、下方が開放された凹状の形状を有しており、下方から凹部空間に挿入された第2水平ガイドローラー45が下案内部18に沿って転動することによって、スライドドア7の水平方向の移動を規制しつつ案内する。下案内部18は、図6に示すように、上面視において、梁部19bに沿って第1柱部19aの後方から中間柱部材36の僅かに前方の位置までに亘って設けられている。下案内部18は、上案内部17と同様に、前端部が内側に屈曲した形状を有しているが、その前端部は、上案内部17の前端よりも前方に位置しており、下案内部18の後端部は、上案内部17の後端部よりも前方に位置している。下案内部18は、第2後レール部18bと第2前レール部18aとを有している。
【0055】
第2後レール部18bは、上面視において第1後レール部17bと部分的に重なるように配置されており、第1後レール部17bよりも前方まで設けられている。
【0056】
第2前レール部18aは、第2後レール部18bの前端部と所定の角度をなすように滑らかに一体にされており、その前端部は、梁部19bよりも内側に位置している。
【0057】
[特徴]
(1)
この油圧ショベル1が備えるキャブ10では、上案内部17が第1柱部19aの後方の第1位置から中間柱部材36の後方の第2位置までに亘って設けられており、上案内部17の全長が長く確保されている。これにより、スライドドア7の開口幅を大きく確保することができる。
【0058】
特に、このキャブ10は、パイプ状部材の組合せによって形成されているため、キャブ10の強度が確保される一方で、上案内部17の前端部の位置が制限される。具体的には、第1柱部19aの厚み、第1柱部19aと梁部19bとの接続部分の湾曲、第1柱部19aの傾斜によって、上案内部17の前端部をキャブ10の前端部近傍まで設けることが困難である。また、旋回時のキャブ10の車体外幅Bからのはみ出しを小さくするために、キャブ10の側面に円弧部分が設けられており、支持部材12が先細りの形状となっている。この支持部材12の形状によっても上案内部17の前端部の位置が制限される。すなわち、スライドドア7は、閉状態から手前に引き出された後に後方にスライド移動することによって開状態とされる。このため、上述したような第1前レール部17aを第2水平面38aに設ける必要があるが、先端側ほど第2水平面38aの幅が狭いために、上案内部17を第2水平面38aの先端まで設けようとすると第1前レール部17aを設けることが困難になる。
【0059】
しかし、このキャブ10では、上案内部17が中間柱部材36の直上を通ってその後方まで延びている。このため、中間柱部材36に妨げられることなく上案内部17を後方に延長することができ、上案内部17の全長を長く確保することができる。また、上案内部17が中間柱部材36の外側を通るように設けられる場合と比べて、キャブ10の外側への膨らみを抑え、キャブ10をコンパクトに構成することができる。
【0060】
(2)
上案内部17は中間柱部材36の直上を通るように設けられており、第1水平面37a上を転動する第1垂直ガイドローラー43も中間柱部材36の直上を通るように移動する。そして、第1水平面37aの下面には中間柱部材36の上端が固定されている。このため、スライドドア7をより確実に支持することができる。
【0061】
特に、油圧ショベル1では、スライドドア7が開状態のまま作業が行われることもあり、このような場合においてもスライドドア7をより確実に支持することができる。
【0062】
また、支持部材12は、上案内部17をフレーム体11に設けるための部材であるが、梁部19bと後方梁部材34と左後柱部材32と接合され、各部材19b、32,34の接合を補強する補強部材としても機能している。従って、このキャブ10では、補強部材として用いられる支持部材12を上案内部17を設けるための部材としても利用しており、部品点数の増大を抑えている。
【0063】
さらに、支持部材12は、L字型断面を有する2つの板金部材の組合せによって形成されるため、パイプ状部材を加工して上案内部17を設けるための空間を形成する場合と比べて、製造が容易である。
【0064】
[他の実施形態]
(A)
上記の実施形態では、図7に示すように、L字型断面を有する第1支持部材37と第2支持部材38との2つの板金部材が互いに平行に配置されそれぞれ梁部19bに固定されることによって支持部材12が形成されているが、少なくとも第1支持部材37の第1水平面37aと第2支持部材38の第2水平面38aとが互いに平行に対向して配置されてスライドドア7の第1アーム部材41と第2アーム部材44とが挿入される空間が形成されればよく、上記の構成に限定されるものではない。例えば、図11に示すように、梁部19bに固定された第1支持部材37の第1垂直面37bに第2支持部材38の第2垂直面38bが固定されてもよい。この場合も、第1垂直面37bに対して第2水平面38aが垂直に固定され、その結果、第1水平面37aと第2水平面38aとが互いに平行に対向して配置される。
【0065】
(B)
上記の実施形態では、1本のパイプ状部材が折り曲げられることによって、第1柱部19aと梁部19bとが形成されているが、別体の第1柱部19aと梁部19bとが溶接等によって一体にされることによって左前柱部材19が形成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、スライドドアの開口幅を大きく確保することができる効果を有し、建設機械のキャブ構造として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】油圧ショベルの側面図。
【図2】油圧ショベルの上面図。
【図3】キャブのフロアパネルへの取付を示す図。
【図4】キャブの外観斜視図。
【図5】フレーム体の外観斜視図。
【図6】フレーム体の上面図。
【図7】支持部材の構成を示す断面図。
【図8】スライドドアとフレーム体との取付を示す図。
【図9】スライドドアの支持構造を示す図。
【図10】上案内部の取付を示す図。
【図11】他の実施形態に係る支持部材の構成を示す図。
【符号の説明】
【0068】
7 スライドドア
11 フレーム体
17 上案内部(案内部)
19a 第1柱部
19b 梁部
36 中間柱部材(第2柱部)
37 第1支持部材
38 第2支持部材
42 第1水平ガイドローラー(第2ガイドローラー)
43 第1垂直ガイドローラー(第1ガイドローラー)
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械のキャブ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建設機械におけるキャブ構造には、転倒した際にオペレータを保護しうる構造が採用されつつあり、ROPS(Roll Over Protective Structure:転倒時等保護構造)性能が重要視されている。例えば、特許文献1には、各種のパイプ状部材を籠状に組み付けてフレーム構造とした建設機械のキャブ構造が開示されている。このような構成によれば、板金部材の組合せのみによって構成されたキャブ構造と比較して、建設機械が転倒した際の変形に対する剛性を大幅に向上させることができる。
【0003】
一方、都市土木等においては、建設機械のキャブの側面に、オペレータが出入りするための出入口と、出入口を開閉するスライドドアが設けられていることが多い。このスライドドアは、出入口近傍にキャブの側面に沿って設けられたガイドレールによって案内され、キャブの側面に沿って移動可能なように構成されている。これにより、道路工事等が行われる場合のように狭いスペースで建設機械が利用される場合であっても、開かれたドアの旋回台の外側への突出を抑え、オペレータの乗り降りを容易にすることができる。
【特許文献1】特開2004−224083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のようなパイプ状部材から形成されたキャブ構造においてスライドドアが設けられる場合、鉛直方向に沿って設けられたパイプ状部材が出入口の前側に配置されており、案内部をキャブの前端部まで設けることが困難である。すなわち、パイプ状部材ではなく板金部材の組合せによって構成されたキャブでは、出入口の前側にパイプ状部材が配置されていない。このため、板金部材にプレス加工等を施すことによって、案内部を設置するための凹部を容易に形成することができる。しかし、上記のようなパイプ状部材から形成されたキャブ構造では、出入口の前側のパイプ部材に凹部を設けることが板金部材と比べて困難である。従って、パイプ状部材が障害となって案内部の前端の位置が制限されてしまう。このため、案内部の全長が短くなり、スライドドアの移動量が短くなる結果、スライドドアの開口幅が小さくなる恐れがある。
【0005】
本発明の課題は、スライドドアの開口幅を大きく確保することができる建設機械のキャブ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明に係る建設機械のキャブ構造は、フレーム体と、スライドドアと、案内部とを備える。フレーム体は、鉛直方向に沿って設けられる第1柱部と、前後方向に沿って設けられ前端部が第1柱部の上端部と繋がっている梁部と、鉛直方向に沿って設けられ第1柱部の後方に配置された第2柱部とを含む複数のパイプ状部材によって構成される。スライドドアは、第1柱部と第2柱部との間に設けられる出入口を開閉する。案内部は、梁部に沿って第2柱部より前側であり且つ第1柱部より後側の第1位置から第2柱部より後側の第2位置までに亘って設けられ、スライドドアを案内する。
【0007】
なお、第1柱部および第2柱部は、厳密に鉛直方向に平行に設けられる場合に限らず、多少、傾斜して設けられてもよい。また、梁部についても厳密に前後方向に平行に設けられる場合に限らず、多少、傾斜して設けられてもよい。
【0008】
この建設機械のキャブ構造では、案内部が第2柱部より前側であり且つ第1柱部より後側の第1位置から第2柱部より後側の第2位置までに亘って設けられることによって、第1柱部との干渉を回避することができると共に、案内部の全長を長く確保することができる。これにより、スライドドアの開口幅を大きく確保することができる。
【0009】
第2発明に係る建設機械のキャブ構造は、第1発明の建設機械のキャブ構造であって、案内部は、第2柱部の直上を通るように設けられる。
【0010】
この建設機械のキャブ構造では、案内部は第2柱部の直上を通るため、第2柱部との干渉を回避することができる。また、案内部が第2柱部の外側を通るように設けられる場合と比べて、キャブの外側への膨らみを抑え、キャブをコンパクトに構成することができる。
【0011】
第3発明に係る建設機械のキャブ構造は、第2発明の建設機械のキャブ構造であって、案内部は、スライドドアの水平方向の移動を規制しつつ案内する部材である。また、この建設機械のキャブ構造は、第1支持部材をさらに備える。第1支持部材は、案内部の下方に梁部に沿って設けられ、その下面に第2柱部の上端が固定され、その上面によってスライドドアを支持しつつ案内する。
【0012】
この建設機械のキャブ構造では、スライドドアを支持しつつ案内する第1支持部材の下面に第2柱部の上端が固定されるため、スライドドアによる荷重が第1支持部材を介して第2柱部に支持される。このため、スライドドアをより確実に支持することができる。
【0013】
第4発明に係る建設機械のキャブ構造は、第3発明の建設機械のキャブ構造であって、第2支持部材をさらに備える。第2支持部材は、第1支持部材の上方に第1支持部材に対向するように梁部に沿って設けられ、梁部から側方に突出する部材である。また、案内部は、第2支持部材の下面に設けられている。そして、スライドドアは、第1ガイドローラーと第2ガイドローラーとを有する。第1ガイドローラーは、第1支持部材の上面によって支持されつつ案内される部材である。第2ガイドローラーは、案内部によって水平方向の移動を規制されつつ案内される部材である。
【0014】
この建設機械のキャブ構造では、第1ガイドローラーが第1支持部材によって支持されることによって、スライドドアによる鉛直方向の荷重が支持される。また、第2ガイドローラーが案内部によって案内されることによって、スライドドアの水平方向への移動が規制され、キャブの側面に沿って移動することができる。さらに、第1支持部材および第2支持部材が梁部に沿って設けられることにより、梁部に複雑な加工を施すことなく容易にスライドドアの支持構造を設けることができる。
【0015】
第5発明に係る建設機械のキャブ構造は、第4発明の建設機械のキャブ構造であって、下部走行体上に取り付けられた上部旋回体上に配置される建設機械のキャブ構造である。そして、この建設機械のキャブ構造では、スライドドアが設けられる側面は、外側に膨らむように湾曲した形状を有する。
【0016】
この建設機械のキャブ構造では、スライドドアが設けられる側面は、外側に膨らむように湾曲した形状を有する。このため、上部旋回体が旋回するときの旋回半径を小さくすることができる。
【0017】
また、このようにキャブの側面が外側に膨らむように湾曲した形状となると、キャブの前側ほど幅が小さくなり、案内部の前端部を設ける場所が制限されてしまう。しかし、この建設機械のキャブ構造では、案内部の全長を長く確保することができるため、スライドドアの開口幅を大きく確保することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る建設機械のキャブ構造では、案内部が第2柱部より前側であり且つ第1柱部より後側の第1位置から第2柱部より後側の第2位置までに亘って設けられることによって、第1柱部との干渉を回避することができると共に、案内部の全長を長く確保することができる。これにより、スライドドアの開口幅を大きく確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施形態に係る建設機械のキャブ構造を採用した油圧ショベル1を図1および図2に示す。図1は、油圧ショベル1の側面図であり、図2は、油圧ショベル1の上面図である。なお、以下の説明において使用する「左右」「前後」「前面背面」という文言は、キャブ10内においてオペレータが椅子に座ったときに向く方向を基準とする方向を示すものとする。
【0020】
[油圧ショベル1の全体構成]
本実施形態に係る油圧ショベル1は、下部走行体2と、旋回台3と、作業機4と、カウンタウェイト5と、エンジン6と、機器室9と、キャブ10とを備えている。そして、油圧ショベル1は、作業機4を除外した機械の旋回半径R(図2参照)が所定の値以下であって、旋回時において旋回台3が下部走行体2からはみ出す量が10%以下となる後方小旋回型の油圧ショベルである。
【0021】
下部走行体2は、進行方向左右両端部分に巻き掛けられた履帯Pを回転させることで、油圧ショベル1を前進、後進させるとともに、上面側に旋回台3を旋回可能な状態で搭載している。
【0022】
旋回台3は、下部走行体2上において任意の方向に旋回可能であって、上面に作業機4と、カウンタウェイト5と、エンジン6と、キャブ10とを搭載している。
【0023】
作業機4は、ブームと、ブームの先端に取り付けられたアームと、アームの先端に取り付けられたバケットとを含むように構成されており、油圧シリンダによってアームやバケット等を上下に移動させながら、土砂や砂礫等の掘削を行う土木工事の現場において作業を行う。
【0024】
カウンタウェイト5は、例えば、鋼板を組み立てて形成した箱の中に屑鉄やコンクリート等を入れて固めたものであって、採掘時等において車体のバランスをとるために旋回台3の後部に設けられている。
【0025】
エンジン6は、下部走行体2や作業機4を駆動するための駆動源であって、カウンタウェイト5に隣接する位置に配置されている。
【0026】
機器室9は、作業機4の側方に配置されており、図示しない燃料タンク、作動油タンクおよび操作弁等を収容する。
【0027】
キャブ10は、油圧ショベル1のオペレータが乗降する運転室であって、作業機4の先端部を見通せるように、旋回台3上における作業機4の側方となる左側前部に配置されている。また、キャブ10は、図3に示すように、旋回台3の上面部分となる旋回フレーム25における左側前方に形成された4つのマウント部24上に、防振装置24aおよびフロアパネル27を、キャブ10のフロアフレーム27aに対してボルト(図示せず)で固定した状態で搭載される。このため、キャブ10は、旋回台3(旋回フレーム25)に対して4点支持された状態で固定配置される。
以下、このキャブ10のキャブ構造について詳述する。
【0028】
[キャブ10の構造]
キャブ10は、図4に示すように、内部にオペレータ用の空間が形成された箱型の構造体であり、オペレータが座るシート、操作用のハンドルやペダル等、各種の計器類が内装されている(図示せず)。
【0029】
キャブ10は、図2に示すように、キャブ10の左側の側面部の中央部Mを、旋回台3の旋回中心Oを中心とする半径Rの円の外周部分にほぼ沿わせるように外方に膨らむように湾曲した形状(以下、円弧部分と示す)を有している。これにより、旋回時においても、下部走行体2よりも外側に旋回台の部分が大きくはみ出すことを回避した後方小旋回の油圧ショベルとして、道路工事等の狭いスペースでの作業が可能になる。そして、この円弧部分には、オペレータが乗降するためのスライドドア7が取り付けられている。これにより、スライドドア7を開けた場合でもスライドドア7が旋回台3の旋回半径Rの外側へほぼ突出しないようにすることができる。この結果、キャブ10が車体外幅B(図2参照)からはみ出して隣接する構築物等に干渉することなく、キャブ10内部の容積を最大限に確保することができる。
【0030】
このキャブ10は、図4に示すように、フレーム体11(図5参照)、支持部材12(図5参照)、複数のパネル部材13−16、スライドドア7、上案内部17(図9(a)参照)、下案内部18(図9(b)参照)等を備えている。
【0031】
(フレーム体11)
フレーム体11は、図5に示すように、複数のパイプ状部材と板金部材とを組み合わせて構成されたキャブ10の骨格部分である。具体的には、フレーム体11は、左前柱部材19と、右前柱部材31と、左後柱部材32と、右後柱部材33と、後方梁部材34と、中間梁部材35と、中間柱部材36とを備えている。なお、図5は、フレーム体11の外観斜視図であり、図4におけるキャブ10から複数のパネル部材13−16やスライドドア7等を取り外した状態を示している。
【0032】
左前柱部材19は、1本のパイプ状部材を中央部分付近で折り曲げて形成されており、略鉛直方向に沿って設けられる第1柱部19aと、略水平方向に前後方向に沿って設けられ前端部が第1柱部19aの上端部と繋がっている梁部19bとを有している。第1柱部19aは、フロアフレーム27a上に立設されており、上部が後方に位置するように僅かに傾斜している。このように、1本のパイプ状部材を折り曲げて第1柱部19aと梁部19bとを形成することで、部品点数を減らしつつ、剛性の高いフレーム体11を得ることができる。なお、右前柱部材31についても同様の構造である。
【0033】
左後柱部材32は、1本の直線状のパイプ状部材によって形成されており、略鉛直方向に沿って設けられている。また、左後柱部材32は、接合相手となる後方梁部材34の形状に適合するように切り欠きが上端部に形成されており、この切り欠きの部分と後方梁部材34の側面とが接合される。さらに、左後柱部材32は、その下端部がフロアフレーム27aに取り付けられており、第1柱部19aと同様にフロアフレーム27a上に立設されている。そして、フロアフレーム27aは、上述したマウント部24のほぼ真上に位置している部分において、防振装置24aを介してフロアパネル27と共に取り付けられている(図3参照)。
【0034】
右後柱部材33も、左後柱部材32と同様に1本の直線状のパイプ状部材によって形成されており、略鉛直方向に沿って配置されている。また、接合相手となる後方梁部材34の形状に適合するように切り欠きが上端部に形成されており、この切り欠きの部分で後方梁部材34の側面と接合される点についても左後柱部材32と同様である。なお、右後柱部材33は、下端部がフロアフレーム27aのレベル(高さ位置)にまで達しておらず、下部が内側に屈曲した背面パネル15の上部に接合されている。これにより、背面パネル15の背面側にキャブ10の内側に向けて嵌入した凹部空間が形成されている。
【0035】
後方梁部材34は、断面形状が略L字型の板金部材によって形成されている。後方梁部材34は、左前柱部材19の梁部19bの後端部と、左後柱部材32の上端部とを接合する。また、後方梁部材34は、右前柱部材31の梁部31bの後端部と、右後柱部材33の上端部とを接合する。より詳細には、左前柱部材19の梁部19bの後端部は、後方梁部材34の略L字型の断面形状における鉛直方向にほぼ平行な面に接合される。一方、左後柱部材32の上端部は、後方梁部材34の略L字型の断面形状における水平方向にほぼ平行な面に接合される。右前柱部材31の梁部31bおよび右後柱部材33についても同様である。
【0036】
中間梁部材35は、1本の直線状のパイプ状部材と板金部材とによって形成されており、水平方向に沿って配置されている。中間梁部材35は、一端が左前柱部材19の梁部19bの内側の面に固定され、他端が右前柱部材31の梁部31bの内側の面に固定されている。
【0037】
中間柱部材36(第2柱部)は、略鉛直方向に沿って設けられた直線状のパイプ状部材である。中間柱部材36は、第1柱部19aの後方であって左後柱部材32の前方に配置されており、第1柱部19aと左後柱部材32との中間位置に配置されている。なお、上述したように、キャブ10の左側の側面は外側に膨らんだ形状となっているため、中間柱部材36は、図6に示すように、第1柱部19aの真後ろよりも外側に位置しており、梁部19bの直下よりも外側に位置している。なお、図6は、フレーム体11の上面図である。また、図5に示すように、中間柱部材36の下端部は、フロアフレーム27aに固定されており、中間柱部材36はフロアフレーム27a上に立設されている。中間柱部材36の上端部は、後述する第1支持部材37の下面に固定されている。この中間柱部材36によって、キャブ10全体の剛性を向上させるとともに、キャブ10の左側側面に取り付けられたスライドドア7を摺動させた場合でも、キャブ10のバランスを保持することができる。
【0038】
(支持部材12)
支持部材12は、図5に示すように、上述した円弧部分を含むキャブ10の左側面上部に左前柱部材19の梁部19bに沿って取り付けられている。支持部材12は、左前柱部材19の梁部19bと、左後柱部材32とを接合するとともに、中間柱部材36の上端に固定される。これにより、互いに位相が異なる位置にある左前柱部材19の梁部19bの後端部と、左後柱部材32の上端部とを、後方梁部材34と共により強固に接合することができる。また、支持部材12は、スライドドア7が摺動する範囲に沿ってその上方に配置されており、後述する上案内部17が設けられている。支持部材12は、第1支持部材37と第2支持部材38とが組み合わせて形成されている。
【0039】
第1支持部材37は、L字型の断面形状を有する板金部材であり、その前端部は、第1柱部19aの上部の後面に固定されており、後端部は中間柱部材36と左後柱部材32との間に位置している。第1支持部材37は、図7に示すように、水平方向に平行な第1水平面37aと鉛直方向に平行な第1垂直面37bとを有する。なお、図7は、支持部材12の構成を示す断面図である。第1水平面37aは梁部19bの下方に位置しており、梁部19bから側方に突出している。第1水平面37aの左側端部は、上面視において外側に膨出するように湾曲した外形を有しており、上述した円弧部分に沿った形状となっている。また、第1水平面37aは前側ほど幅が狭くなる先細りの形状となっている。第1水平面37aは、中間柱部材36の直上を通っており、第1水平面37aの下面に中間柱部材36の上端部が固定されている。なお、第1水平面37aの上面は、後述するスライドドア7の第1垂直ガイドローラー43を支持しつつ案内する面となっている。第1垂直面37bは、その下端部が第1水平面37aの右側端部に繋がっており、第1垂直面37bの左側面の上部が梁部19bの内側の面に固定されている。
【0040】
第2支持部材38は、第1支持部材37と同様にL字型の断面形状を有する板金部材であり、第1支持部材37の上方に設けられている。第2支持部材38の前端部は、左前柱部材19の屈曲部分より僅かに後方に位置しており、後端部は後方梁部材34に固定されている。第2支持部材38は、第2水平面38aと第2垂直面38bとを有している。第2水平面38aは、第1支持部材37の第1水平面37aに平行に第1水平面37aに対向するように梁部19bに沿って設けられている。第2水平面38aの下面の後端部には左後柱部材32の上端が固定される。また、第2水平面38aの左側端部は、梁部19bから側方に突出しており、上面視において第1水平面37aの左側端部と同様に湾曲した形状を有している。すなわち、第2水平面38aは、第1水平面37aと同様に、前側ほど幅の狭い先細りの形状となっている。なお、第2水平面38aの下面には、後述する上案内部17が取り付けられる。第2垂直面38bは、その下端部が第2水平面38aの右側端部と繋がっており、第2垂直面38bの右側面の上部が梁部19bの外側の面に固定されている。
【0041】
(パネル部材)
図4に示す複数のパネル部材13−16は、上記のフレーム体11を覆うように取り付けられており、プレス加工等の加工を施された板金部材から形成されている。複数のパネル部材13−16には、サイドパネル14,16や上面パネル13、背面パネル15等があり、各パネル部材13−16に形成された開口には、図示しないガラス窓が嵌め込まれる。
【0042】
また、キャブ10の左側の側面に取り付けられるサイドパネル16や支持部材12の外側を覆うように取り付けられたサイドフレーム39は、キャブ10の左側面に現れる円弧部分を構成するため、旋回中心Oを中心とする円の円弧に近似した形状となっている。なお、サイドパネル16の上下方向の中央部分には、中間ローラー用案内溝が設けられている。中間ローラー用案内溝は、サイドパネル16の表面からキャブ10の内側方向に凹んだ形状を有しており、前後方向に沿って設けられている。
【0043】
(スライドドア7)
スライドドア7は、第1柱部19aと中間柱部材36との間に設けられた出入口を開閉する部材であり、図8および図9に示すように、ドア本体40、第1アーム部材41、第1水平ガイドローラー42、第1垂直ガイドローラー43、第2アーム部材44、第2水平ガイドローラー45を有している。なお、図8は、スライドドアとフレーム体との取付を示すために、フレーム体11にスライドドア7を取り付けた状態を示している。また、図9は、スライドドアの支持構造近傍の断面図である。
【0044】
ドア本体40は、板金部材が組み合わされて形成されており、側面視において略長方形形状を有している。図8に示すように、ドア本体40の前後方向の長さは、左前柱部材19の第1柱部19aから中間柱部材36を後方に僅かに越える位置まで達しており、上下方向の長さは、フロアフレーム27aから梁部19bまで達している。また、ドア本体40は、キャブ10の円弧部分に沿うように湾曲した外形を有している。なお、ドア本体40の上半分には開口が設けられており、ガラス窓が嵌め込まれる。また、ドア本体40の内面には、図示しない中間ローラーが設けられており、サイドパネル16の中間ローラー用案内溝によって案内される。
【0045】
第1アーム部材41は、図8および図9(a)に示すように、ドア本体40の上端を支持するための部材であり、ドア本体40の内側の面の上部に設けられている。第1アーム部材41は、ドア本体40の内側の面から内側方向に突出して設けられており、ドア本体40の前端部よりも僅かに後方に位置している。
【0046】
第1水平ガイドローラー42(第2ガイドローラー)は、上案内部17によって水平方向の移動を規制されつつ案内される部材である。第1水平ガイドローラー42は、第1アーム部材41の上面の先端部に設けられており、鉛直方向に平行な軸を中心に回転自在に設けられている。
【0047】
第1垂直ガイドローラー43(第1ガイドローラー)は、第1支持部材37の第1水平面37aの上面によって支持されつつ案内される部材である。第1垂直ガイドローラー43は、第1アーム部材41の先端面に設けられており、水平方向に平行な軸を中心に回転自在に設けられている。第1垂直ガイドローラー43は、第1水平面37aの上面に接触して転動する。
【0048】
第2アーム部材44は、図8および図9(b)に示すように、ドア本体40の下端を支持するための部材であり、ドア本体40の内側の面の下部にドア本体40の内面から内側方向に突出して設けられている。第2アーム部材44は、ドア本体40の前端部近傍に位置しており、上面視において、第1アーム部材41よりも前方に位置している。
【0049】
第2水平ガイドローラー45は、下案内部18によって水平方向の移動を規制されつつ案内される部材である。第2アーム部材44の上面の先端部に設けられており、鉛直方向に平行な軸を中心に回転自在に設けられている。
【0050】
(上案内部17)
上案内部17(案内部)は、スライドドア7の上部を支持して案内するガイドレールであり、図9(a)および図10に示すように、第2支持部材38の第2水平面38aの下面に固定されている。上案内部17は、下方が開放された凹状の形状を有しており、下方から凹部空間内に挿入された第1水平ガイドローラー42が上案内部17に沿って転動することによって、スライドドア7の水平方向の移動を規制しつつ案内する。上案内部17は、図6に示すように、梁部19bに沿って中間柱部材36より前側であり且つ第1柱部19aより後側の第1位置から中間柱部材36より後側の第2位置までに亘って設けられている。上案内部17は、前端部が内側に屈曲した形状を有しており、第1前レール部17aと第1後レール部17bとを有している。
【0051】
第1後レール部17bは、第2水平面38aの側端部の湾曲に沿って緩やかに湾曲しながら前後方向に沿って設けられている。第1後レール部17bは、中間柱部材36の直上を通り、その後端部は中間柱部材36より後側の第2位置に位置している。第1後レール部17bの前端部は、第1前レール部17aの後端部に繋がっている。
【0052】
第1前レール部17aは、第1後レール部17bの前端部と所定の角度をなすように滑らかに一体にされており、第1前レール部17aの前端部は、第1柱部19aと中間柱部材36との間であって、僅かに第1柱部19a寄りに位置している。また、第1前レール部17aの前端部は、梁部19bの直下に位置しており、上面視において梁部19bと重なる位置に配置されている。
【0053】
以上のように、上案内部17は、第1位置から外側へ向けて斜後方に延び、第2水平面38aの側端部近傍において後方へ向けて屈曲し、緩やかに湾曲しながら中間柱部材36の直上を通り、中間柱部材36の後方の第2位置まで延びた形状となっている。
【0054】
(下案内部18)
下案内部18は、図6および図9(b)に示すように、スライドドア7の下部を支持して案内するガイドレールであり、フロアフレーム27aの下面に設けられている。下案内部18は、下方が開放された凹状の形状を有しており、下方から凹部空間に挿入された第2水平ガイドローラー45が下案内部18に沿って転動することによって、スライドドア7の水平方向の移動を規制しつつ案内する。下案内部18は、図6に示すように、上面視において、梁部19bに沿って第1柱部19aの後方から中間柱部材36の僅かに前方の位置までに亘って設けられている。下案内部18は、上案内部17と同様に、前端部が内側に屈曲した形状を有しているが、その前端部は、上案内部17の前端よりも前方に位置しており、下案内部18の後端部は、上案内部17の後端部よりも前方に位置している。下案内部18は、第2後レール部18bと第2前レール部18aとを有している。
【0055】
第2後レール部18bは、上面視において第1後レール部17bと部分的に重なるように配置されており、第1後レール部17bよりも前方まで設けられている。
【0056】
第2前レール部18aは、第2後レール部18bの前端部と所定の角度をなすように滑らかに一体にされており、その前端部は、梁部19bよりも内側に位置している。
【0057】
[特徴]
(1)
この油圧ショベル1が備えるキャブ10では、上案内部17が第1柱部19aの後方の第1位置から中間柱部材36の後方の第2位置までに亘って設けられており、上案内部17の全長が長く確保されている。これにより、スライドドア7の開口幅を大きく確保することができる。
【0058】
特に、このキャブ10は、パイプ状部材の組合せによって形成されているため、キャブ10の強度が確保される一方で、上案内部17の前端部の位置が制限される。具体的には、第1柱部19aの厚み、第1柱部19aと梁部19bとの接続部分の湾曲、第1柱部19aの傾斜によって、上案内部17の前端部をキャブ10の前端部近傍まで設けることが困難である。また、旋回時のキャブ10の車体外幅Bからのはみ出しを小さくするために、キャブ10の側面に円弧部分が設けられており、支持部材12が先細りの形状となっている。この支持部材12の形状によっても上案内部17の前端部の位置が制限される。すなわち、スライドドア7は、閉状態から手前に引き出された後に後方にスライド移動することによって開状態とされる。このため、上述したような第1前レール部17aを第2水平面38aに設ける必要があるが、先端側ほど第2水平面38aの幅が狭いために、上案内部17を第2水平面38aの先端まで設けようとすると第1前レール部17aを設けることが困難になる。
【0059】
しかし、このキャブ10では、上案内部17が中間柱部材36の直上を通ってその後方まで延びている。このため、中間柱部材36に妨げられることなく上案内部17を後方に延長することができ、上案内部17の全長を長く確保することができる。また、上案内部17が中間柱部材36の外側を通るように設けられる場合と比べて、キャブ10の外側への膨らみを抑え、キャブ10をコンパクトに構成することができる。
【0060】
(2)
上案内部17は中間柱部材36の直上を通るように設けられており、第1水平面37a上を転動する第1垂直ガイドローラー43も中間柱部材36の直上を通るように移動する。そして、第1水平面37aの下面には中間柱部材36の上端が固定されている。このため、スライドドア7をより確実に支持することができる。
【0061】
特に、油圧ショベル1では、スライドドア7が開状態のまま作業が行われることもあり、このような場合においてもスライドドア7をより確実に支持することができる。
【0062】
また、支持部材12は、上案内部17をフレーム体11に設けるための部材であるが、梁部19bと後方梁部材34と左後柱部材32と接合され、各部材19b、32,34の接合を補強する補強部材としても機能している。従って、このキャブ10では、補強部材として用いられる支持部材12を上案内部17を設けるための部材としても利用しており、部品点数の増大を抑えている。
【0063】
さらに、支持部材12は、L字型断面を有する2つの板金部材の組合せによって形成されるため、パイプ状部材を加工して上案内部17を設けるための空間を形成する場合と比べて、製造が容易である。
【0064】
[他の実施形態]
(A)
上記の実施形態では、図7に示すように、L字型断面を有する第1支持部材37と第2支持部材38との2つの板金部材が互いに平行に配置されそれぞれ梁部19bに固定されることによって支持部材12が形成されているが、少なくとも第1支持部材37の第1水平面37aと第2支持部材38の第2水平面38aとが互いに平行に対向して配置されてスライドドア7の第1アーム部材41と第2アーム部材44とが挿入される空間が形成されればよく、上記の構成に限定されるものではない。例えば、図11に示すように、梁部19bに固定された第1支持部材37の第1垂直面37bに第2支持部材38の第2垂直面38bが固定されてもよい。この場合も、第1垂直面37bに対して第2水平面38aが垂直に固定され、その結果、第1水平面37aと第2水平面38aとが互いに平行に対向して配置される。
【0065】
(B)
上記の実施形態では、1本のパイプ状部材が折り曲げられることによって、第1柱部19aと梁部19bとが形成されているが、別体の第1柱部19aと梁部19bとが溶接等によって一体にされることによって左前柱部材19が形成されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、スライドドアの開口幅を大きく確保することができる効果を有し、建設機械のキャブ構造として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】油圧ショベルの側面図。
【図2】油圧ショベルの上面図。
【図3】キャブのフロアパネルへの取付を示す図。
【図4】キャブの外観斜視図。
【図5】フレーム体の外観斜視図。
【図6】フレーム体の上面図。
【図7】支持部材の構成を示す断面図。
【図8】スライドドアとフレーム体との取付を示す図。
【図9】スライドドアの支持構造を示す図。
【図10】上案内部の取付を示す図。
【図11】他の実施形態に係る支持部材の構成を示す図。
【符号の説明】
【0068】
7 スライドドア
11 フレーム体
17 上案内部(案内部)
19a 第1柱部
19b 梁部
36 中間柱部材(第2柱部)
37 第1支持部材
38 第2支持部材
42 第1水平ガイドローラー(第2ガイドローラー)
43 第1垂直ガイドローラー(第1ガイドローラー)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に沿って設けられる第1柱部と、前後方向に沿って設けられ前端部が前記第1柱部の上端部と繋がっている梁部と、鉛直方向に沿って設けられ前記第1柱部の後方に配置された第2柱部とを含む複数のパイプ状部材によって構成されるフレーム体と、
前記第1柱部と前記第2柱部との間に設けられる出入口を開閉するスライドドアと、
前記梁部に沿って前記第2柱部より前側であり且つ前記第1柱部より後側の第1位置から前記第2柱部より後側の第2位置までに亘って設けられ前記スライドドアを案内する案内部と、
を備える建設機械のキャブ構造。
【請求項2】
前記案内部は、前記第2柱部の直上を通るように設けられる、
請求項1に記載の建設機械のキャブ構造。
【請求項3】
前記案内部は、前記スライドドアの水平方向の移動を規制しつつ案内する部材であり、
前記案内部の下方に前記梁部に沿って設けられ、下面に前記第2柱部の上端が固定され、上面によって前記スライドドアを支持しつつ案内する第1支持部材をさらに備える、
請求項2に記載の建設機械のキャブ構造。
【請求項4】
前記第1支持部材の上方に前記第1支持部材に対向するように前記梁部に沿って設けられ前記梁部から側方に突出する第2支持部材をさらに備え、
前記案内部は、前記第2支持部材の下面に設けられており、
前記スライドドアは、
前記第1支持部材の上面によって支持されつつ案内される第1ガイドローラーと、
前記案内部によって水平方向の移動を規制されつつ案内される第2ガイドローラーと、
を有する、
請求項3に記載の建設機械のキャブ構造。
【請求項5】
下部走行体上に取り付けられた上部旋回体上に配置される建設機械のキャブ構造であって、
前記スライドドアが設けられる側面は、外側に膨らむように湾曲した形状を有する、
請求項4に記載の建設機械のキャブ構造。
【請求項1】
鉛直方向に沿って設けられる第1柱部と、前後方向に沿って設けられ前端部が前記第1柱部の上端部と繋がっている梁部と、鉛直方向に沿って設けられ前記第1柱部の後方に配置された第2柱部とを含む複数のパイプ状部材によって構成されるフレーム体と、
前記第1柱部と前記第2柱部との間に設けられる出入口を開閉するスライドドアと、
前記梁部に沿って前記第2柱部より前側であり且つ前記第1柱部より後側の第1位置から前記第2柱部より後側の第2位置までに亘って設けられ前記スライドドアを案内する案内部と、
を備える建設機械のキャブ構造。
【請求項2】
前記案内部は、前記第2柱部の直上を通るように設けられる、
請求項1に記載の建設機械のキャブ構造。
【請求項3】
前記案内部は、前記スライドドアの水平方向の移動を規制しつつ案内する部材であり、
前記案内部の下方に前記梁部に沿って設けられ、下面に前記第2柱部の上端が固定され、上面によって前記スライドドアを支持しつつ案内する第1支持部材をさらに備える、
請求項2に記載の建設機械のキャブ構造。
【請求項4】
前記第1支持部材の上方に前記第1支持部材に対向するように前記梁部に沿って設けられ前記梁部から側方に突出する第2支持部材をさらに備え、
前記案内部は、前記第2支持部材の下面に設けられており、
前記スライドドアは、
前記第1支持部材の上面によって支持されつつ案内される第1ガイドローラーと、
前記案内部によって水平方向の移動を規制されつつ案内される第2ガイドローラーと、
を有する、
請求項3に記載の建設機械のキャブ構造。
【請求項5】
下部走行体上に取り付けられた上部旋回体上に配置される建設機械のキャブ構造であって、
前記スライドドアが設けられる側面は、外側に膨らむように湾曲した形状を有する、
請求項4に記載の建設機械のキャブ構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−69723(P2007−69723A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−258522(P2005−258522)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】
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