説明

建設機械のキャブ

【課題】形状が異なるキャブごとに共通の乗降用ドアを取り付けた場合でも、正面視における外観性を損なうことを回避することが可能な建設機械のキャブを提供する。
【解決手段】油圧ショベル1に搭載されたキャブ10は、前面部10aと、側面部10bと、スライドドアSDと、を備えている。前面部10aは、後方へ傾斜した状態で取り付けられている。側面部10bは、上部旋回台3上において旋回するキャブ10の外側の面を構成しており、前後方向においてキャブ幅が広くなるラウンド形状を有している。スライドドアSDは、側面部10bに沿って移動可能な状態で、キャブ10の内側へ傾斜した状態で取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に搭載されるキャブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、土砂や砂礫等の掘削を行う土木工事の現場において作業を行う際に、油圧ショベルやホイルローダ、ブルドーザ等のような建設機械が使用されている。
このような建設機械には、一般的に主要な構成として、下部走行体と、下部走行体上に取り付けられたオペレータが搭乗するための運転室(キャブ)と、が設けられている。
ここで、建設機械に搭載されるキャブには、オペレータが乗降するドアとしてスライド式のドアが取り付けられたものがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、キャブの側面にスライド式のドアを備えた油圧ショベルにおいて、キャブ前面から見たときの見栄えが良く、ストッパの突出がなく、かつ製作の容易な建設機械のキャブの構成について開示されている。
【特許文献1】特開平8−326103号公報(平成8年12月10日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の建設機械のキャブでは、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示された建設機械のキャブでは、キャブの前面が前傾しており、かつ一方の側面にラウンド形状を有しているため、正面視においてキャブ前面側のドアの端面が斜めに見えてしまうおそれがある。つまり、キャブ前面の傾斜によって、スライドドアにおける下部が上部よりも幅が広い形状となっている。このため、このスライドドアをキャブ側面に対して直立させた状態で取り付けた場合には、正面視においてスライドドアとキャブとの境目の下部のラインが、キャブの内側へ入り込んでいるように見えてしまう(特許文献1の図7参照)。この場合、キャブの正面からの外観性を損なってしまうことから、キャブの形状に応じて専用のドアを取り付ける必要がある。
【0005】
本発明の課題は、形状が異なるキャブごとに共通の乗降用ドアを取り付けた場合でも、正面視における外観性を損なうことを回避することが可能な建設機械のキャブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る建設機械のキャブは、前面部と、側面部と、乗降用ドアと、を備えている。前面部は、後方へ傾斜した状態で取り付けられる。側面部は、前面部よりも幅方向における距離が大きい膨らんだ部分を含んでいる。乗降用ドアは、正面視において基準線が略鉛直方向に沿って配置されるように、所定の傾斜角度だけ内側に傾けられた状態で側面部に対して取り付けられている。
【0007】
ここでは、例えば、油圧ショベル等の建設機械に含まれる旋回台上に搭載され、後方へ傾斜した状態で取り付けられる前面部を含んでおり、かつ一方の側面が外側に向かって広がるラウンド形状の側面部等を有するキャブにおいて、乗降用ドアを側面部に対して所定の傾斜角度を設けて取り付けている。
すなわち、本発明では、キャブを正面から見た際に、乗降用ドアが外側に傾いて見えることがないように、乗降用ドアにおけるキャブの基準線を内側に傾けて取り付けている。
【0008】
ここで、上記乗降用ドアの基準線とは、キャブの正面視において、閉状態にある乗降用ドアの手前側(キャブ正面側)の端面のラインを意味している。また、前面部は、キャブ内に着座したオペレータの正面に配置された前窓を含む面である。そして、乗降用ドアとしては、例えば、スライド式ドアであってもよいし、ヒンジ開閉式ドアであってもよい。また、上記前面部よりも幅方向における距離が大きい膨らんだ部分を含む側面部とは、前面部の幅に対して、キャブを構成する側面部とこれに対向する反対側の側面との間の距離が大きい部分を含むことを意味する。なお、本発明において、前後方向とは、キャブ内に着座したオペレータから見た前後方向を意味しており、幅方向とは、この前後方向に直交する方向を意味している。
【0009】
これにより、前面部が後方傾斜しており、前後方向において幅寸法が変化するキャブであっても、前面部の傾斜角度や幅寸法の変化率等の諸条件に応じて適切な傾斜角度を設定することで、正面視において乗降用ドアが傾いて見えることを回避することができる。よって、形状が異なるキャブごとに専用の乗降用ドアを用いる必要がなくなり、共通の乗降用ドアを使用した場合でも、正面視における外観性が損われることを回避することができる。
【0010】
第2の発明に係る建設機械のキャブは、第1の発明に係る建設機械のキャブであって、所定の傾斜角度をθとすると、傾斜角度θは以下の関係式(1)に基づいて算出される。
θ=tan-1(sinβ/tanα) ・・・・・(1)
(ただし、αはキャブ前面部の傾斜角度、βはキャブの平面視における側面部の傾斜角度とする。)
ここでは、正面視における乗降用ドアの基準線が傾斜して見える錯覚を解消するための傾斜角度として、上記計算式(1)を用いて算出される傾斜角度θを用いている。
【0011】
これにより、ドアの前面の傾斜角度や前後方向における幅寸法の変化率等に応じて、適切な乗降用ドアの取付け傾斜角度を算出することができる。
【0012】
第3の発明に係る建設機械のキャブは、第1または第2の発明に係る建設機械のキャブであって、乗降用ドアは、側面部に沿って開閉されるスライド式ドアである。
ここでは、上述した所定の傾斜角度を持って取り付けられる乗降用ドアとして、側面部に沿って移動することで開閉されるスライド式ドアを採用している。
これにより、上述した所定の傾斜角度を持って側面部に対してスライド式ドアを取り付けることで、正面視における外観性を損なうことのないキャブを得ることができる。
【0013】
第4の発明に係る建設機械のキャブは、第3の発明に係る建設機械のキャブであって、乗降用ドアが閉状態から開状態へ移行する際に、傾斜角度分だけ傾いて取り付けられた乗降用ドアを立てながら側面部に沿って移動させる開閉機構を、さらに備えている。
ここでは、上述したように、所定の傾斜角度を持って側面部に取り付けた乗降用ドアを側面部に沿ってスライド移動させながら開状態へ移行させる際には、乗降用ドアを略鉛直方向に起こしながら移動させる。
これにより、キャブの前後方向において幅が異なるキャブ構成において乗降用ドアを側面部に沿ってスライド移動させた場合でも、乗降用ドアの傾斜によってキャブ内部の空間が必要以上に狭小化してしまうことを防止することができる。よって、キャブの内部空間を十分に確保しつつ、正面視における外観性に優れたキャブを得ることができる。
【0014】
第5の発明に係る建設機械のキャブは、第1または第2の発明に係る建設機械のキャブであって、乗降用ドアは、側面部に沿って取り付けられたヒンジ式の開閉ドアである。
ここでは、上述した所定の傾斜角度を持って取り付けられる乗降用ドアとして、側面部に対してヒンジを介して取り付けられる開閉ドアを採用している。
これにより、乗降用ドアとしてヒンジ開閉式のドアを採用した場合でも、スライド式ドアと同様に、正面視における外観性に優れ、かつ共通の乗降用ドアを用いることができる。
【0015】
第6の発明に係る建設機械のキャブは、第1から第5の発明のいずれか1つに係る建設機械のキャブであって、側面部は、外側に向かって膨らんだ略円弧形状を有している。
ここでは、例えば、油圧ショベル等の建設機械に含まれる旋回台上に設置され、最小の旋回半径を形成するための略円弧形状(ラウンド形状)を側面部に含むキャブを用いている。
【0016】
これにより、従来の取付け方法では、正面視において乗降用ドアの基準線が斜めに見えてしまう略円弧形状を含むキャブ構成であっても、正面視における外観性を損なうことを回避することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る建設機械のキャブによれば、形状が異なるキャブごとに共通の乗降用ドアを取り付けた場合でも、正面視における外観性を損なうことを回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係るキャブ(建設機械のキャブ)10を搭載した油圧ショベル(建設機械)1について、図1〜図7(c)を用いて説明すれば以下の通りである。
[油圧ショベル1の構成]
本実施形態に係る油圧ショベル1は、図1および図2に示すように、下部走行体2と、上部旋回体3と、作業機4と、カウンタウェイト5と、キャブ10と、を備えている。
【0019】
下部走行体2は、進行方向左右両端部分に巻き掛けられた履帯Pを回転させることで、油圧ショベル1を前後進させるとともに、上面側に上部旋回体3を旋回可能な状態で搭載している。
上部旋回体3は、下部走行体2側の旋回ベアリングに噛み合ったピニオンギアが回転することで、下部走行体2上において任意の方向に旋回する。そして、上部旋回体3は、図1および図2に示すように、作業機4と、カウンタウェイト5と、キャブ10とを上面に搭載している。
【0020】
作業機4は、ブームと、ブームの先端に取り付けられたアームと、アームの先端に取り付けられたバケットとを含むように構成されており、油圧シリンダによってアームやバケット等を上下に移動させながら、土砂や砂礫等の掘削を行う土木工事の現場において作業を行う。
カウンタウェイト5は、採掘時等において車体のバランスをとるために上部旋回体3の後部に配置された重りであって、内部空間に鉄くずやセメント等が充填されている。
【0021】
キャブ10は、油圧ショベル1のオペレータが乗降する運転室であって、上部旋回体3上における作業機4の取り付け部分の側方となる左側前部に配置されている。なお、このキャブ10の詳細な構成については、後段にて詳述する。
【0022】
[キャブ10の構成]
図3(a)、図3(b)および図4は、本実施形態のキャブ10を模式的に示したものである。
キャブ10は、前窓部FWが取り付けられた前面部10aと、スライドドア(乗降用ドア)SDが開閉可能な状態で取り付けられた側面部10bと、を備えている。
前面部10aは、平面視において幅方向における距離Aであって、キャブ10の前面部分を形成しており、前窓部FWを含むように構成されている。また、前面部10aは、後方に向かって緩やかに傾斜する前柱部材(図示せず)の形状に合わせたラウンド形状を有している。この前面部10aの傾斜角度に応じて、スライドドアSDの前面部10a側の端面の形状が設定される。なお、この前面部10aの傾斜角度αを含むキャブ10の形状とスライドドアSDの取付け傾斜角度θとの関係については、後段にて詳述する。
【0023】
側面部10bは、キャブ10の左側側面を形成しており、対向する側面に対して最大幅Bとなる部分を含むラウンド形状を有している。側面部10bは、オペレータの乗降用の開口部を覆うように取り付けられたスライドドアSDが取り付けられている。また、側面部10bは、スライドドアSDをスライド移動させるためのレール部材(図示せず)を有している。なお、スライドドアSDの側面部10bに対する取付け傾斜角度θについては、後段にて詳述する。
【0024】
[スライドドアSDの取付け傾斜角度]
本実施形態のスライドドアSDは、図5に示すように、側面部10bに沿ってスライド移動することで、オペレータのキャブ10内への乗降を可能とする。
また、スライドドアSDが閉状態にある場合には、図5のX−X線矢視断面図である図6(a)に示すように、スライドドアSDは、キャブ10の室内側に向かって傾斜角度θだけ傾斜した状態で取り付けられている。
【0025】
一方、スライドドアSDが開状態にある場合には、図5のY−Y線矢視断面図である図6(b)に示すように、スライドドアSDが略鉛直方向に沿って配置される。
すなわち、本実施形態のキャブ10は、図6(a)に示す閉状態と図6(b)に示すように開状態とで、スライドドアSDの傾斜角度が変化するように、スライドドアSDを誘導する。つまり、スライドドアSDは、キャブ10の側面部10bの床面と天井面とに設置されたレール部材を含む開閉機構20を介して、閉状態において傾いていた状態を起こしながらスライド移動していき、開状態まで移行する。
【0026】
開閉機構20は、キャブ10の床面と天井面とに設置されており、スライドドアSDを誘導するレール部材の配置によって構成されている。具体的には、キャブ10の前寄りの部分においては床面のレール部材よりも天井面のレール部材がキャブ10の内側に位置しており、キャブ10の後寄りの部分においては床面のレール部材と天井面のレール部材とが略鉛直方向に並ぶように配置される。
これにより、閉状態では傾斜していたスライドドアSDを立てながら開状態へ移行させることで、キャブ10の後半部分、つまり運転席の側方におけるキャブ内空間Zを、スライドドアSDの傾斜によって狭めることなく、有効に活用することができる。
【0027】
<取付け傾斜角度θの計算方法>
本実施形態では、上述したスライドドアSDの取付け傾斜角度θを、以下のような計算方法を用いて設定する。
【0028】
ここで、上記取付け傾斜角度θは、図6(a)に示すように、スライドドアSDにおける前面部10a側の端面の軸線L−Lの傾きを意味している。
すなわち、図7(a)〜図7(c)に示すように、キャブ10の高さをE、側面視におけるキャブ10の高さEに対する前面部10aの出幅量をF、出幅量Fに対する側面部10bの出幅量をH、側面視における前面部10aの傾斜角度をα、平面視における側面部10b側のキャブ10の前面部10aと背面部とを結ぶ直線に対する側面部10bの傾斜角度をβとすると、各角度α,βは以下のように表される。
【0029】
図7(a)より、
tanα=E/F
図7(b)および図7(c)より、
sinβ=H/F
よって、
スライドドアSDの取付け傾斜角度θは、
tanθ=H/E
=Fsinβ/Ftanα
=sinβ/tanα
と表すことができる。
【0030】
よって、取付け傾斜角度θは、
θ=tan-1(sinβ/tanα) ・・・・・(1)
として算出することができる。
本実施形態では、以上のように、閉状態におけるスライドドアSDの傾斜角度θを、キャブ10の形状(前面部10aおよび側面部10bの傾斜角度α,β等)に応じて、適切な値になるように調整している。
これにより、図3(b)に示すように、正面視において、スライドドアSDの前面側の端面が略鉛直方向に沿って配置されるように見せることができる。よって、キャブ10の形状に応じて専用の乗降用ドアを設けることなく、共通の乗降用ドアを用いて、かつ外観性の低下を回避することができる。
【0031】
<特徴>
(1)
本実施形態の油圧ショベル1に搭載されたキャブ10は、図1および図2に示すように、前面部10aと、側面部10bと、スライドドアSDと、を備えている。前面部10aは、図3(a)に示すように、後方(キャブ10の内側)へ傾斜した状態で取り付けられている。側面部10bは、図4および図5に示すように、上部旋回台3上において旋回するキャブ10の外側の面を構成しており、前後方向においてキャブ幅が広くなるラウンド形状を有している。スライドドアSDは、図6(a)に示すように、側面部10bに沿って移動可能な状態で、キャブ10の内側へ傾斜した状態で取り付けられている。そして、キャブ10の正面視におけるスライドドアSDの基準線Lの傾斜角度は、キャブ10の前面部10aの傾斜角度と側面部10bの平面視における傾斜角度とに基づいて設定される。
【0032】
これにより、例えば、共通のスライドドアSDを用いて、形状(前面部10a、側面部10bの傾斜角度等)の異なるキャブ10を構成する場合でも、前面部10aおよび側面部10bの傾斜角度等のキャブ10の形状に応じた適切な傾斜角度を設定して、スライドドアSDを取り付けることで、正面視において、スライドドアSDが傾いて見えない形態とすることができる。よって、形状が異なるキャブに対しても、正面視における外観性の低下を回避しつつ、共通のドア(スライドドアSD等)を使用してキャブ10を構成することができる。
【0033】
(2)
本実施形態のキャブ10では、図7(a)〜図7(c)に示すように、閉状態におけるスライドドアSDの取付け傾斜角度θを、キャブ10の形状に合わせて以下のような計算式(1)によって算出する。
θ=tan-1(sinβ/tanα) ・・・・・(1)
(ただし、αはキャブ前面部の傾斜角度、βはキャブの平面視における側面部の傾斜角度とする。)
これにより、キャブ10の前面部10aの傾斜角度αや側面部の傾斜角度βの大きさによって適切な傾斜角度θを設定した上で、スライドドアSDを取り付けることができる。よって、キャブ10の形状にかかわらず、共通のドアを用いることができるとともに、正面視における外観性の低下を回避することができる。
【0034】
(3)
本実施形態のキャブ10は、図4に示すように、側面部10bに沿ってスライド移動するスライドドアSDを備えている。
これにより、正面視においてスライドドアSDが斜めに見えることを回避して、外観性の良いキャブ10を構成することができる。また、上部旋回台3上から大きくはみ出すことなく、ドアの開閉を行うことができるため、油圧ショベル1等のような上部旋回台3の旋回半径を最小化した構成では、特に有効である。
【0035】
(4)
本実施形態のキャブ10は、図5に示すように、閉状態から開状態へ移行する際に、スライドドアSDを立てながら移動させる開閉機構20を備えている。
これにより、閉状態においてのみ、傾斜させた状態でキャブ10を構成することができるため、キャブ10の後半部分におけるキャブ内空間Zを十分に確保しつつ、正面視における外観性の高いキャブ10を構成することができる。
【0036】
(5)
本実施形態のキャブ10では、図5等に示すように、側面部10bが、旋回の軌跡に沿って外側に向かって膨らむラウンド形状を有している。
これにより、上述した取付け傾斜角度θで側面部10bに対してスライドドアSDを取り付けることで、キャブ10の前後方向においてキャブ幅が変化する構成であっても、正面視において、スライドドアSDが略鉛直方向に沿って配置された状態とすることができる。
【0037】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、図4(a)に示すように、前後方向における中程に最大幅を有するラウンド形状を含む側面部10bを備えたキャブ10を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0038】
例えば、キャブの形態としては、図8(a)に示すように、キャブ(建設機械のキャブ)110aの前後方向において、前面幅D1、背面幅D2(最大幅Dmax)を有する構成に対して、本発明を適用することもできる。また、図8(b)に示すように、キャブ(建設機械のキャブ)110bの側面部を直線状とし、前面幅D1、背面幅D3を最大幅Dmaxとした構成に対して、本発明を適用することもできる。さらに、図8(c)に示すように、キャブ(建設機械のキャブ)110cの側面部を直線の組合せとし、前面幅D1、背面幅D4と同程度の最大幅Dmaxを前後方向における中程に有する構成に対して、本発明を適用することもできる。
【0039】
(B)
上記実施形態では、側面に取り付けられたスライドドアSDを乗降用ドアとして採用したキャブ10の構成を例として挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、乗降用ドアとしてヒンジ式の開閉ドアを採用したキャブに対して、本発明を適用することもできる。
【0040】
(C)
上記実施形態では、油圧ショベル1に搭載されたキャブ10に対して本発明を適用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、ブルドーザやホイルローダ、ダンプトラックおよびモータグレーダ等のような他の建設機械に搭載されるキャブに対しても、本発明の適用は可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の建設機械のキャブは、形状が異なるキャブごとに共通の乗降用ドアを取り付けた場合でも、正面視における外観性を損なうことを回避することができるという効果を奏することから、各種建設機械に搭載されるキャブに対して広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態に係る建設機械のキャブを搭載した油圧ショベルの構成を示す側面図。
【図2】図1の油圧ショベルの正面図。
【図3】(a)は、図1の油圧ショベルに搭載されたキャブの構成を模式的に示す側面図。(b)は、その正面図。
【図4】図3(a)等のキャブを模式的に示す平面図。
【図5】図4(a)等のキャブ構成において、スライドドアを開閉した際のスライドドアの動きを模式的に示す平面図。
【図6】(a)は、図5のX−X線矢視断面図。(b)は、図5のY−Y線矢視断面図。
【図7】(a)〜(c)は、スライドドアの取付け傾斜角度を算出するための説明図。
【図8】(a)〜(c)は、本発明の他の実施形態に係るキャブの形状を示す平面図。
【符号の説明】
【0043】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 作業機
5 カウンタウェイト
10 キャブ(建設機械のキャブ)
10a 前面部
10b 側面部
20 開閉機構
110a〜110c キャブ(建設機械のキャブ)
FW 前窓部
L 基準線
P 履帯
SD スライドドア(乗降用ドア)
Z キャブ内空間
θ 取付け傾斜角度
α,β 角度
D1 前面幅
D2〜D4 背面幅
Dmax 最大幅


【特許請求の範囲】
【請求項1】
後方へ傾斜した状態で取り付けられる前面部と、
前記前面部よりも幅方向における距離が大きい膨らんだ部分を含む側面部と、
正面視において基準線が略鉛直方向に沿って配置されるように、所定の傾斜角度だけ内側に傾けられた状態で前記側面部に対して取り付けられている乗降用ドアと、
を備えている建設機械のキャブ。
【請求項2】
前記所定の傾斜角度をθとすると、前記傾斜角度θは以下の関係式(1)に基づいて算出される、
請求項1に記載の建設機械のキャブ。
θ=tan-1(sinβ/tanα) ・・・・・(1)
(ただし、αはキャブ前面部の傾斜角度、βはキャブの平面視における側面部の傾斜角度とする。)
【請求項3】
前記乗降用ドアは、前記側面部に沿って開閉されるスライド式ドアである、
請求項1または2に記載の建設機械のキャブ。
【請求項4】
前記乗降用ドアが閉状態から開状態へ移行する際に、前記傾斜角度分だけ傾いて取り付けられた前記乗降用ドアを立てながら前記側面部に沿って移動させる開閉機構を、さらに備えている、
請求項3に記載の建設機械のキャブ。
【請求項5】
前記乗降用ドアは、前記側面部に沿って取り付けられたヒンジ式の開閉ドアである、
請求項1または2に記載の建設機械のキャブ。
【請求項6】
前記側面部は、外側に向かって膨らんだ略円弧形状を有している、
請求項1から5のいずれか1項に記載の建設機械のキャブ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−263986(P2009−263986A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114547(P2008−114547)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】