説明

建設機械のバケットツース

【課題】ツース交換時の作業性を向上させ、簡易な構成により、アダプタに対してバケットツースを固定することが可能な建設機械のバケットツースを提供する。
【解決手段】ツース2は、側面2iに建設機械の作業機であるバケットに装着されるための貫通孔2bを有している。貫通孔2bは、側面2i側に設けられた開口部2kと、開口部2kに連続して空洞部V1側に設けられた回転体孔部2jと、を有している。開口部2kは、ツース後側の側面にある凹部である。回転体孔部2jは、空洞部V1側に設けられた截頭回転錐体の大径側底面をその回転軸に斜めの平面で取り除いた形状の孔である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械のバケットの下面先端部分に交換可能な状態で装着されるバケットツース(以下、ツースと称する。)に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業車両に搭載された作業機には、様々な掘削具が取り付けられている。例えば、油圧ショベルに搭載されるバケット(作業機)には、掘削側の先端部分に、複数のツース(掘削具)が先端部分から突出するように取り付けられている。そして、掘削時には、これらのツースが切刃として機能することで、掘削対象へ貫入されて掘削力を高めている。
【0003】
バケットの掘削側の先端部分に取り付けられるツースは、掘削作業時に掘削対象へ貫入されるため、他の部位と比べて摩耗の度合いが著しい。このため、ツースは、バケットに対して交換可能な状態で取り付けられており、例えば、掘削作業時間1000時間程度で必要に応じて交換される。つまり、ツースは交換頻度が高いため、交換作業時の作業性が高いことが要求される。
【0004】
特許文献1には、このようなツースを、バケットのアダプタに対して取り付ける構造について開示されている。
具体的には、上記公報に開示されたツースの取付け構造では、アダプタ側の側端部に設けられた突起部(バー)を、ツース側に設けられた溝部内に挿入し、C字状のロック部材を回転させることで、アダプタに対してツースを固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7,762,015号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来のツースでは、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示されたツースでは、ロック部材を挿入される溝が、ツース幅方向に沿ってツース内部から外方に向かってツース先端から離れる方向に傾いて、突出部であるツース側端部の後方に配置されている。このため、ツース間の幅が比較的狭く、更に、ロック部材を回転させるための工具は、ツース前後方向でバケットの近くからロック部材に接近するように使用される。換言すると、従来のツースの構造では、ツース交換作業のために必要な空間が非常に狭く、作業性に問題がある。
【0007】
本発明の課題は、ツース交換時における作業性を向上させることが可能な建設機械のバケットツースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る建設機械のバケットツースは、バケットの先端部に装着される建設機械のバケットツースであって、上面と、下面と、一対の側面と、後端開口部と、凸状の側壁部と、空洞部と、貫通孔と、を備えている。下面は、上面と先端部において繋がっている。一対の側面は、上面と下面との間を繋ぐように先端部を含む側に形成されている。後端開口部は、上面、下面、一対の側面の後側に形成され、バケットの先端部が挿入される。凸状の側壁部は、一対の側面の一方の後側に設けられている。空洞部は、後端開口部からバケットツース内に設けられる。貫通孔は、側壁部に形成されて空洞部まで挿通するとともに、回転軸を有し大径側が空洞部側に配置される截頭回転錐体を回転軸に対して斜めに切断して大径側を取り除いた残りの截頭回転錐体の形状を持つ孔である回転体孔部を空洞部側に有し、截頭回転錐体の回転軸がバケットツースの幅方向に沿って空洞部から外方に向かってバケットツースの先端に近づく方向に傾いて配置される。
【0009】
ここで、上記回転錐体とは、直線の中点とその中点を足とする垂線上にある直線上外の1点とを結ぶ軸を回転軸として、直線両端と直線外の1点とでできる平面図形を回転してできる立体を意味している。また、この回転錐体の回転軸を含む平面で切断された直線外の1点を含む線分は、母線と呼ばれる。
【0010】
これにより、バケットツースを着脱する際には、ツース前後方向におけるツース前方側から貫通孔の側壁部側へアクセスして行うことができる。よって、ツース交換時には、バケットのない広い空間側から貫通孔にアクセスできるため、作業性を向上させることができる。
【0011】
第2の発明に係る建設機械のバケットツースは、第1の発明に係る建設機械のバケットツースであって、貫通孔は、回転体孔部に繋がり側壁部側に配される凹状の開口部をさらに有している。開口部は、バケットツースの側壁部表面から截頭回転錐体の回転軸に直交してバケットツース前方に向かって傾斜する平面状の開口部底面を有する。
これにより、作業に伴い開口部に蓄積する土砂を容易に取り除くことが可能となり、ツース交換時間を短くすることができる。
【0012】
第3の発明に係る建設機械のバケットツースは、第1または第2の発明に係る建設機械のバケットツースであって、截頭回転錐体は、截頭回転錐体の回転軸を含む平面で切断された断面における側辺部分が直線である。
【0013】
これにより、截頭回転錐体は母線が直線なので、截頭回転錐体となる。そして、貫通孔を截頭回転錐体とすることで、貫通孔の加工が容易となり、かつバケットの取付構造としての信頼性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る建設機械のバケットツースによれば、ツース交換時における作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る建設機械のバケットツースおよびその周辺の構造を示す斜視図。
【図2】図1のバケットツースの取付け部分付近を拡大した分解斜視図。
【図3】(a)は、バケットツースとアダプタとの接合部分を示す拡大断面図。(b)は、(a)の係止部材を軸方向から見た平面図。
【図4】(a),(b)は、バケットツースとアダプタとの接合部分に設けられる係止部材を回転させて係止状態と非係止状態とを切り換えることを示す拡大断面図。
【図5】(a)は、本発明の他の実施形態に係る建設機械のバケットツースの接合部分に設けられた係止部材周辺の構成を示す拡大断面図。(b)は、(a)の係止部材を見る角度を90度変えた拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
本発明の一実施形態に係るツース2について、バケット1への取付構造について言及しつつ、図1〜図4(b)を用いて説明すれば以下の通りである。
【0017】
本実施形態に係るバケット1のツース2は、図1に示すように、バケット1の掘削側となる下面の先端(図1では、右上側端部)に設けられた複数のアダプタ3に対してそれぞれ取り付けられ、作業によって摩耗した場合には交換される。
【0018】
なお、本実施形態において、バケットツース組立体は、ツース2に相当するものであって、後述する本体部2aに係止部材4が装着された組立品であり、バケット1のアダプタ3に対してそのまま取付可能となっている。
【0019】
(ツース2)
ツース2は、図2に示すように、バケット1によって掘削を行うためにバケット1の掘削部分の先端に取り付けられた爪状の部材であって、先端に向かって薄くなるクサビ状の外形を有している。そして、ツース2は、図2に示すように、本体部(バケットツース)2aと、貫通孔2bと、側壁部2cと、当接面2d(図3(a)参照)と、空洞部V1と、を有している。
【0020】
本体部2aは、それぞれ略矩形で先端で繋がっている上面2eと下面2f、その上面2eと下面2f間にあって、上述の先端を含む略三角形の側面2h,2i、それら上面2e、下面2f、側面2h,2iの後端によって形成される略矩形の後端面2gによって構成される外面を有している。後端面2gは、開口を有しており、空洞部V1へと続いている。空洞部V1は、本体部2aの内部にある内面2vにより形成されている。
【0021】
空洞部V1は、ツース2の後端面2gから先端方向に向かって本体部2aの内部に形成された凹状の空間である。この凹状の空間は、ツース2の外形と同じように先端に向かって薄くなるクサビ状の形状を有している。この空洞部V1には、後述するアダプタ3の挿入部3bが挿入される。
【0022】
側壁部2cは、側面2h,2iの後側において隆起する凸部である。そして、側壁部2cは、本体部2aの内部に形成された空洞部V1の両側面を形成し、その片側(側面2i)に後述する貫通孔2bが形成されている。
【0023】
貫通孔2bは、側壁部2cに設けられ外側に開放される凹状の開口部2kと、その開口部2kより小径の孔であって後述の係止部材4が挿入される回転体孔部2jとを有している。そして、貫通孔2bは、本体部2aの片側の側面2iから空洞部V1まで貫通しており、ツース2の幅方向(図3(a)のBL方向)に沿って空洞部V1側から外方にツース2先端に近づく方向に傾いて形成されている。そして、この貫通孔2bには、後述する係止部材4が空洞部V1側から挿入される。
【0024】
貫通孔2bの回転体孔部2jは、截頭回転錐体の一部の形状を有する空間である。
ここで、回転錐体とは、直線があり、その直線の中点とその中点を足とする垂線上にある直線上外の1点とを結ぶ線を回転軸として、直線両端と直線外の1点とでできる平面図形を回転してできる立体を指す。そして、截頭回転錐体とは、回転錐体を底面(直線が回転してできる面)と平行な面で切断して、底面を含む側の立体を指す。その空間の小径側はツース2の側壁部2c側に、大径側は空洞部V1側にある。大径側から小径側に向かう截頭回転錐体の回転軸(貫通孔2bの回転体孔部2jの中心軸と同じである。以下、貫通孔2bの中心軸と呼ぶ。)は、ツース2の幅方向(図3(a)のBL方向)からツース2の先端寄りに斜めになるように配置される。回転体孔部2jは、側壁部2cに傾いて配置された截頭回転錐体の底面の周上の1点から回転軸に対して斜めに切断して底面を取り除いた残りの截頭回転錐体の形状を有している。回転軸が上述のように傾いているので、貫通孔2bの空洞部側の最後端の点が、上記底面の周上の1点に対応する。貫通孔2bは、後述する係止部材4の外径よりも対応する位置で遊び分だけ大きな内径を有している。また、この回転錐体は、母線(回転錐体の回転軸を含む平面の側辺)が直線である円錐体である。なお、上述の截頭回転錐体の回転体孔部2j外の残りの部分の形状を、截頭回転錐体の他部の形状とする。
【0025】
貫通孔2bの開口部2kは、貫通孔2bの側壁部2c側に設けられており、回転体孔部2jへと続いている。その開口部2kは、回転体孔部の中心軸4aに直交する開口部底面2mと、平行な開口部側面2nと、から形成されている。貫通孔2bの中心軸は、上述のように傾斜しているので、開口部底面2mは、ツース前後方向(図3(a)のCL方向)後側から前側に向かって側壁部2cの表面からツース先端方向に傾く溝を形成する平面として形成される。そして、その前側から垂直に開口部側面2nが形成されている。貫通孔2bの中心軸を含むツース幅方向(図3(b)のBL方向)の面における開口部2kの断面は、図3(a)で示される通り、おおよそ斜辺が側壁部2cにある直角三角形の形状を有している。これにより、掘削作業に伴って、開口部2k内で土砂が詰まっても、容易にその土砂を取り除くことができ、ツース交換時間を短くすることができる。
【0026】
当接面2dは、内面2vの一部であって、本体部2aの内部に空洞部V1を形成するV字状に配置された内壁面であって、後述するアダプタ3側の当接面3bbに対して当接する。ここで、このツース2の当接面2dがアダプタ3の当接面3bbに当接している状態が、ツース2が最も深くアダプタ3に挿入されている状態である。以下、この状態を、当接状態と呼ぶ。
【0027】
(アダプタ3)
アダプタ3は、図1に示すように、バケット1の下面端部に複数設けられており、それぞれに対して、上述したツース2が取り付けられる。そして、アダプタ3は、図2に示すように、凹部3aと、挿入部3bと、を有している。
【0028】
凹部3aは、有底溝であって、アダプタ3の挿入部3bの一方の側面(側壁部3ba)に形成されている。その凹部3aは、截頭回転錐体の他部の形状を有し、ツース2をアダプタ3に当接状態で嵌合させると、ツース2の貫通孔2bの略截頭回転錐体空間の一部(挿入部3b)と連続して1つの完成した略截頭回転錐体形状の空間が形成される。また、凹部3aの底がその完成した略截頭回転錐体形状空間の大径側の底面であり、その凹部3aの底の最もツース後端側にある部位がアダプタ3の側壁部3baに概ね位置する。従って、凹部3aは、ツース2の先端側の略截頭回転錐体の曲面を持つ面と、ツース2の後端側の略截頭回転錐体の平坦な面と、によって構成されている。そして、凹部3aには、貫通孔2bに挿入された係止部材4を回転させることで、係止部材4の一部(底部4b)が挿入されたり、退避したりする。
【0029】
つまり、凹部3a内に係止部材4の底部4bが挿入された状態が、ツース2の係止状態を意味している。逆に、凹部3a内から係止部材4の底部4bが退避して、係止部材4全体が貫通孔2b内に収まっている状態が、ツース2の非係止状態を意味している。
【0030】
挿入部3bは、ツース2内に形成された空洞部V1の形状に合わせて形成されており、ツース2の内部に形成された空洞部V1に挿入される。また、ツース2をアダプタ3に装着した状態において、作業時等にツース2に対して負荷が掛かった場合には、空洞部V1を形成するツース2の当接面2dと、アダプタ3側の挿入部3bの当接面3bbとが面同士で当接してアダプタ3がその負荷を受ける。これにより、作業時等にツース2に対して掛かった負荷が、後述する係止部材4に掛かることはない。
【0031】
当接面3bbは、ツース2が取り付けられた状態において、ツース2側の当接面2dに対して当接する挿入部3bの外壁面である。当接面3bbは、上述したように、作業中にツース2に掛かる負荷を、アダプタ3側において面で受け止める。
【0032】
(係止部材4)
係止部材4は、ツース2がアダプタ3から脱落しないように取り付けられる略截頭回転錐体状の部材であって、図2に示すように、ツース2側の貫通孔2a内に空洞部V1側から挿入される。また、係止部材4は、図3(a)に示すように、略截頭回転錐体形状を持つ係止部材本体と、その係止部材本体の回転軸(係止部材の回転軸)4aと、底部4bと、工具挿入部4cと、を有している。
【0033】
ここで、係止部材4の回転軸4aと係止部材4が挿入される貫通孔2bの中心軸とは同一であり、係止部材4は貫通孔2b内において回転可能とされる。
係止部材4の本体の形状は、図4(a)に示すように、当接状態でツース2の貫通孔2bとアダプタ3の凹部3aとにより形成される完成した截頭回転錐体状の空間を、ツース2の空洞部V1を形成する面で切断し、その切断された截頭回転錐体状空間の貫通孔2b側の空間の形状である。換言すると、係止部材4の本体は、ツース2の貫通孔2bにある截頭回転錐体の空間と遊び分だけ小さい相似の形状を有し、実質的に上述の截頭回転錐体の一部の形状を有する。切断面のツース2の最も後端にある部位は、截頭回転錐体状空間底部の最も後端の位置に略等しい。係止部材4の本体の回転軸4aは、貫通孔2bと凹部3aとによって形成される截頭回転錐体空間の回転軸と同一である。
【0034】
回転軸4aは、工具T(図2参照)を用いて、貫通孔2b内において係止部材4を回転させる際の回転中心となる。
底部4bは、図3(a)に示すように、係止部材4の断面視において略截頭回転錐体状の外形の外周面(母線)の長さが異なることで、略截頭回転錐体状の係止部材4における回転軸4aに対して斜めに形成されている。そして、上述のように、ある特定の回転位置において係止部材4の底部4bはツース2の空洞部V1を形成するツース内面と同一面となる。そして、この特定の回転位置から係止部材4を180度回転させると、係止部材4のツース2の最後端にあった部位が、ツース2の空洞部面からアダプタ凹部3aの底部のツース2の先端側の位置に移動し、係止部材4とアダプタ3とが係合する。これにより、回転軸4aを中心に係止部材4を回転させるだけで、係止部材4の一部(底部4b)が、アダプタ3側の凹部3a内に挿入した状態(係止状態)と、凹部3a内から退避した状態(非係止状態)とを切り換えることができる。
【0035】
工具挿入部4cは、係止部材4における略截頭回転錐体体形状の小径側から延設される部位の回転軸4aに直交する面に設けられ、貫通孔2bの開口部2k内に配置されている。この工具挿入部4cは、係止部材4を手動で回転させるための工具T(図2参照)の先端部Taが挿入される溝であって、工具Tの先端部Taの形状に合わせた形状(図3(b)では四角形)に形成されている。延設される部位の外周の一部には、溝が設けられており、後述するCリング5がその溝に巻装される。なお、図3(b)は、図3(a)の視点Aからの挿通孔2b周辺の図である。
【0036】
ツース2の交換時には、工具挿入部4cへ工具Tを接近させて作業を行う必要がある。本実施形態では、工具Tを、貫通孔2bの回転軸4aに沿って工具挿入部4cへアクセスしながら行われる、つまり、ツース2の前後方向におけるツース2の前方から、すなわちバケット1のない開放された空間から工具を接近させて作業を行うことができる。よって、従来よりもツース2の交換時における作業性を向上させることができる。
【0037】
また、本実施形態では、工具Tを用いて係止部材4を手動で回転させる際以外に、建設機械の作業中に生じる振動や衝撃等によって係止部材4が意図せずに回転してしまうことがないように、係止部材4の回転を抑止するCリング(回り止め部材)5を設けている。
【0038】
Cリング5は、金属や樹脂、ゴム製等の弾性部材をU字状に成形した部材であって、係止部材4の外周面に設けられた溝に対して密着している。Cリング5の両端部は、側壁部2cに固定されている。係止部材4は、Cリング5に密着して、摩擦により所定位置からの回動が阻止されている。
【0039】
これにより、作業時等の振動等によって、係止部材4が勝手に回転してしまった結果、アダプタ3に対するツース2の係止状態が解除されて非係止状態へ移行してしまうことを
回避することができる。
【0040】
<ツース2の係止状態と非係止状態の切り換え>
本実施形態では、以上のような構成を備えており、アダプタ3に対するツース2の係止状態(第2状態)と非係止状態(第1状態)とを切り換えている。
【0041】
すなわち、アダプタ3に対してツース2を取り付ける際には、図4(a)に示すように、ツース2の貫通孔2b内に挿入された係止部材4の一部(底部4b)がアダプタ3側の凹部3a内に進入しておらず、貫通孔2b内に収まった状態(非係止状態)とする。このとき、ツース2を取り付ける際にこの非係止状態になっていない場合には、工具Tを用いて係止部材4を回転させて、非係止状態を形成すればよい。
【0042】
これにより、アダプタ3の挿入部3bを、ツース2の空洞部V1の内部へ挿入することができる。
次に、アダプタ3の挿入部3bがツース2の空洞部V1内へ挿入された状態において、工具Tを用いて係止部材4を非係止状態から180度回転させ、図4(b)に示すように、係止部材4の一部(底部4b)がアダプタ3側の凹部3a内に進入した状態(係止状態)へ移行させる。
【0043】
このとき、アダプタ3側の凹部3a内に進入した係止部材4の底部4bは、ツース2に対してアダプタ3から離間する方向に力が加わると、ツース2と一体的に移動する係止部材4の一部がアダプタ3の凹部3a内に引っ掛かる。これにより、ツース2がアダプタ3から脱落しない係止状態を形成することができる。
【0044】
逆に、ツース2がアダプタ3側に押し込まれる方向(図3(a)でのCL方向の右方向)に力が加わると(例えば、掘削時)、作業中にツース2に掛かる大きな負荷は、ツース2側の当接面2dとアダプタ3側の当接面3bbとにおいて面同士で受け止められるため、係止部材4には負荷が掛からないように構成されている。本実施形態では、ツース2とアダプタ3の当接状態においてアダプタ3と係止部材4とは当接しているが、ツース2に加わる負荷は、それぞれの当接面2d,3bbにおいて受け止められて、係止部材4に負荷がかかることはない。また、当接面2d,3bbの磨耗によって、ツース2が摩滅前の位置よりも後端側に押し込まれても、係止部材4はアダプタ3から離間する方向に移動してアダプタ3と非接触となる。このため、同様にツース2がアダプタ3に押し込まれる方向への負荷は、係止部材4には加わらない。よって、係止部材4には、ツース2がアダプタ3から脱落しないように係止するだけの機能があればよいため、係止部材4が作業中にツース2に掛かる負荷によって破損することを防止できる。この結果、ツース2の取付構造部分における部品寿命を確保しつつ、簡易な構成によって、ツース2の係止状態と非係止状態とを切り換えることができる。また、係止状態と非係止状態の切り換えが、係止部材4を回転させるだけで可能となるため、ツース2のアダプタ3への着脱作業、つまり交換作業の作業性を向上させることができる。
【0045】
(実施形態2)
本発明の他の実施形態に係る建設機械のツースについて、図5(a)および図5(b)を用いて説明すれば以下の通りである。
【0046】
本実施形態では、係止部材4の回転を抑止する回り止め部材として、上記実施形態のCリング5を用いる代わりに、図5(a)および図5(b)に示すように、回転軸54aを中心に回転し外周面に溝部54cが形成された係止部材54の回転を抑止するボルト(回り止め部材)55を用いている。そして、上記実施形態1では挿通孔の開口部が開口部底面を有し、その開口部断面が略直角三角形であるのに対し、本実施形態では、開口部は底面を持たない点で上記実施形態1とは異なっている。
【0047】
なお、図5(b)は、ツース前後方向と幅方向を含む面での係止部材周辺の拡大断面図だが、説明のためボルト55は重ねて表示している。
本実施形態では、図5(b)に示すように、ツース52の本体部52aの内部へアダプタ53の挿入部53bを挿入した状態で、回転軸54aを中心に係止部材54を回転させることで、係止部材54の底部54bをアダプタ53の凹部53a内に出し入れすることができる。そして、係止部材54によってツース52の本体部52aをアダプタ53に対して係止した状態で、係止部材54の回転を抑止するために、本体部52aの側面に形成されたボルト孔52c内にボルト55を挿入する。このとき、ボルト55を奥まで挿入すると、ボルト55の先端が係止部材54の外周面に形成された溝部54c内に入り込む。ここで、溝部54cは、図5(a)に示すように、係止部材54の外周面における対向する2箇所に設けられている。
【0048】
これにより、溝部54c内にボルト55の先端が挿入されたことで、係止部材54は回転軸54aを中心に回転不能な状態とすることができる。
なお、図5(b)に示すように、アダプタ53の左右両側面に凹部53aが設けられていることが好ましい。
【0049】
これにより、ツース52の本体部52aの側面のどちら側に貫通孔52bが設けられている場合でも、係止部材54によってツース52をアダプタ53に対して係止することができる。よって、形状の異なるツース52でも取り付け可能となり、部品の共有化を図れる。
【0050】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0051】
(A)
上記実施形態では、回転体孔部2jの形状は、回転体の母線が直線である円錐である例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0052】
例えば、上記回転体孔部の回転体の母線は、係止部材が挿入部の挿入・脱着可能であれば、曲線であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の建設機械のバケットツースは、バケットへの装着のための各種掘削具の取付け構造に対して広く適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 バケット
2 ツース
2a 本体部(建設機械のバケットツース)
2b 貫通孔
2c 側壁部
2d 当接面
2e 上面
2f 下面
2g 後端面
2h,2i 側面
2j 回転体孔部
2k 開口部
2m 開口部底面
2n 開口部側面
2v 内面
3 アダプタ
3a 凹部
3b 挿入部
3ba 側壁部
3bb 当接面
4 係止部材
4a 回転軸(係止部材の回転軸、貫通孔の中心軸)
4b 底部
4c 工具挿入部
5 Cリング(回り止め部材)
52 ツース
52a 本体部(建設機械のバケットツース)
52b 貫通孔
52c ボルト孔
53 アダプタ
53a 凹部
53b 挿入部
54 係止部材
54a 回転軸
54b 底部
54c 溝部
55 ボルト(回り止め部材)
T 工具
Ta 先端部
V1 空洞部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
バケットの先端部に装着される建設機械のバケットツースであって、
上面と、
前記上面と先端部において繋がる下面と、
前記上面と前記下面との間を繋ぐように前記先端部を含む側に形成された一対の側面と、
前記上面、前記下面、前記一対の側面の後側に形成され、前記バケットの先端部が挿入される後端開口部と、
前記一対の側面の一方の後側に設けられた凸状の側壁部と、
前記後端開口部から前記バケットツース内に設けられる空洞部と、
前記側壁部に形成されて前記空洞部まで挿通するとともに、回転軸を有し大径側が前記空洞部側に配置される截頭回転錐体を前記回転軸に対して斜めに切断して大径側を取り除いた残りの截頭回転錐体の形状を持つ孔である回転体孔部を前記空洞部側に有し、前記截頭回転錐体の前記回転軸が前記バケットツースの幅方向に沿って前記空洞部から外方に向かって前記バケットツースの先端に近づく方向に傾いて配置される貫通孔と、
を備えている建設機械のバケットツース。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記回転体孔部に繋がり前記側壁部側に配される凹状の開口部をさらに有しており、
前記開口部は、前記バケットツースの前記側壁部表面から前記截頭回転錐体の回転軸に直交してバケットツース前方に向かって傾斜する平面状の開口部底面を有する、
請求項1に記載の建設機械のバケットツース。
【請求項3】
前記截頭回転錐体は、前記截頭回転錐体の回転軸を含む平面で切断された断面における側辺部分が直線である、
請求項1または2に記載の建設機械のバケットツース。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−233379(P2012−233379A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104556(P2011−104556)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】