説明

建設機械のベースフレーム構造

【目的】 メインフレームを柔軟構造として、車体の耐久性と乗り心地の向上を図る。
【構成】 左右一対のトラックフレーム11,11間に橋架されて旋回ベアリング用台座12をほぼ中央に支持するメインフレーム13の垂直断面形状を、荷重方向とは反対方向に凸でかつ連続した湾曲形状とすることにより、メインフレーム13に過度の剛性をもたせず柔軟構造とし、車体落下時の衝撃を緩和して耐久性と乗り心地の向上を図る。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
この考案は、トラックフレーム上に旋回ベアリング用台座を支持するメインフレームを、円筒面又は球面或いは放物面等の連続した湾曲形状をもって形成した建設機械のベースフレーム構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
油圧ショベル等の建設機械は、基本機能として走行機能と旋回機能が不可欠であり、下部走行体と上部旋回体が、ベースフレーム構造を介して結合されている。ベースフレーム構造は、図3,4にそれぞれ平面図と正面図を示したように大略3ブロックからなり、下部走行体に支持される左右一対のトラックフレーム1と、上部旋回体を支承する旋回ベアリングを固定する旋回ベアリング用台座2と、左右一対のトラックフレーム1,1間に橋架され、旋回ベアリング用台座2を中央に支持するメインフレーム3とから構成される。左右のトラックフレーム1はともに断面逆U字状をなし、無限軌道装置(図示せず)にしっかりと組み付けられる。旋回ベアリング用台座2は、上部旋回体を旋回自在に支承する旋回ベアリング(図示せず)のための取り付けフランジ4と、この取り付けフランジ4一体化された円筒5からなる。
【0003】
メインフレーム3は、前後左右の計4脚で左右のトラックフレーム1,1間に跨がっており、脚端がトラックフレーム1に固着され、中央部上面に旋回ベアリング用台座2が固着される。本例に示したメインフレーム3は、中央の平坦な基部6aと四方に延びる脚部6bとを含む台形状に一体化された上下一対のフランジ6,6’と、これら上下一対のフランジ6,6’間に放射状に挟持された8枚のウェブ7とからなる。各脚部6bは、それぞれ2枚のウェブ7によって箱型の立体形状とされ、捩り剛性など所要の剛性を得ている。
【0004】
【考案が解決しようとする課題】
上記従来の建設機械のベースフレーム構造8は、車体の最低地上高を確保する目的もあって、メインフレーム3を構成する一対のフランジ6,6’を台形の肩の部分で屈曲させてあり、このため基部6aと脚部6bが交わる屈曲部分に局部的に高い応力集中が発生しやすい。こうした応力集中は、繰り返し荷重を受けたときに破損を招く要因となるため、部材強度確保の観点から従来のベースフレーム構造8は上下のフランジ6,6’の板厚を厚くするなどメインフレーム3全体の剛性を高めるよう設計してある。しかし、このようにメインフレーム3全体の剛性を高めると、ベースフレーム構造8を含めた車体重量が増すとともに、作業中の車体落下時に下部走行体からベースフレーム構造8を介して上部旋回体に及ぶ衝撃力が増し、その結果上部旋回体の構造物へ悪影響を与えるだけではなく、上部旋回体に搭乗して作業する作業者にも過度の衝撃が伝わり、車体の耐久性の劣化と乗り心地の低下を招くといった課題があった。また、車体の最低地上高を大きくすべくメインフレーム3の基部6aと脚部6bとの屈曲度を増せば、上記の問題はより顕著となるために、従来のベースフレーム構造8では最低地上高の確保にも限界があるといった課題を抱えていた。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この考案は、上記課題を解決したものであり、下部走行体と上部旋回体を有する建設機械の該下部走行体に支持される左右一対のトラックフレームと、前記上部旋回体を支承する旋回ベアリングを支持する旋回ベアリング用台座と、前記左右一対のトラックフレーム間に橋架され、前記旋回ベアリング用台座をほぼ中央に支持するメインフレームからなる建設機械のベースフレーム構造において、前記メインフレームの垂直断面形状を、荷重方向とは反対方向に凸でかつ連続した湾曲形状としたことを特徴とするものである。
【0006】
【作用】
左右一対のトラックフレーム間に橋架されて旋回ベアリング用台座をほぼ中央に支持するメインフレームの垂直断面形状を、荷重方向とは反対方向に凸でかつ連続した湾曲形状とすることにより、メインフレームに過度の剛性をもたせず柔軟な構造とし、車体落下時の衝撃を緩和して耐久性と乗り心地の向上を図ることができる。
【0007】
【実施例】
以下、この考案の実施例について、図1,2を参照して説明する。図1,2は、それぞれこの考案の建設機械のベースフレーム構造の一実施例を示す平面図及び正面図である。
【0008】
図1,2に示した建設機械のベースフレーム構造20は、下部走行体の無限軌道装置(図示せず)に支持される左右一対のトラックフレーム11と、上部旋回体を支承する旋回ベアリング(図示せず)を固定する旋回ベアリング用台座12と、トラックフレーム11,11間に橋架され、旋回ベアリング用台座12を中央に支持する4脚のメインフレーム13からなる。左右のトラックフレーム11と旋回ベアリング用台座12は、従来とほぼ同様の形状である。すなわち、トラックフレーム11は、左右ともに断面逆U字状をなし、無限軌道装置(図示せず)にしっかりと組み付けられる。また、旋回ベアリング用台座12は、上部旋回体を旋回自在に支承する旋回ベアリング(図示せず)のための取り付けフランジ14と、この取り付けフランジ14が上面開口に鍔状に一体化された円筒15からなる。
【0009】
メインフレーム13は、円孔が中央を貫通する基部16aから脚部16bが四方に延びる上下一対のフランジ16,16’と、これら上下一対のフランジ16,16’間に放射状に挟持される計8枚のウェブ17からなる。上下のフランジ16,16’の各脚部16bは、2枚のウェブ17を互いに所定間隔離間させて挟持しており、脚端がトラックフレーム11に溶接される。ただし、上フランジ16の脚端はトラックフレーム11の上面に溶接され、下フランジ16’の脚端はトラックフレーム11の側面に溶接される。また、フランジ16,16’の基部16aの中央に穿設した円孔には旋回ベアリング用台座12の円筒15が嵌合し、溶接により嵌合状態を固定される。
【0010】
上下一対のフランジ16,16’は、荷重方向とは反対方向に凸でかつ連続した湾曲形状としてある。また、これら上下一対のフランジ16,16’間に挟持されるウェブ17も相応した湾曲形状を有する。すなわち、ベースフレーム構造20を正面から見た図2に明らかなように、上下のフランジ16,16’はここでは円筒面の一部より形成してあり、各ウェブ17の上下端面は円形の輪郭を有する。このため、平面形状で見れば従来のフランジ6,6’と似通っているが、正面から見たときに接線が連続的に変化する滑らかな円筒面を形成しており、従来のフランジ6,6’のごとく台形の肩の部分に相当するような屈曲点は存在しない。従って、フランジ16,16’は、局部的に応力が集中する応力集中とは無縁であり、しかも旋回ベアリング用台座12の円筒15の側面から放射状に延びる8枚のウェブ17が連続梁を形成しているため、フランジ16,16’の板厚を格別厚くしなくとも、メインフレーム13自体の剛性は十分に確保される。
このように、上記のベースフレーム構造20によれば、メインフレーム13には局部的な応力集中が発生する箇所がなく、従って剛性確保のための無駄な肉厚等を排除して構造の軽量化を図ることができ、また従来のベースフレーム構造8と異なり、柔軟構造とすることができるため、落下時の衝撃力が緩和され、それだけ車体の耐久性と乗り心地の向上を図ることができ、さらに連続した湾曲形状としてあるために最低地上高を大きくすることで走行性を向上させることかできる。
【0011】
なお、上記実施例では、円筒面でメインフレーム13の湾曲形状を形成したが、円筒面以外にも、例えば球面或いは放物面でメインフレーム13の湾曲形状を形成することもできる。この場合、メインフレーム13は、円筒面又は球面或いは放物面を形成する上下一対のフランジ16,16’と、これら上下一対のフランジ16,16’間に放射状に挟持され、両フランジ16,16’を一定間隔に離間対向させる複数のウェブ17から構成される。
【0012】
【考案の効果】
以上説明したように、この考案は、左右一対のトラックフレーム間に橋架されて旋回ベアリング用台座をほぼ中央に支持するメインフレームを、荷重方向とは反対方向に凸でかつ連続した湾曲形状としたから、メインフレームには応力集中が発生する箇所がなく、これにより剛性確保のための無駄な肉厚等を排除して構造の軽量化を図ることができ、またメインフレームに過度の剛性をもたせずに柔軟構造とすることができるので、作業中に車体が落下したときに、下部走行体からベースフレーム構造を介して上部旋回体に及ぶ衝撃を抑えることができ、これにより上部旋回体の構造物に悪影響を与えたり、上部旋回体の搭乗者に過度の衝撃が伝わって乗り心地を悪くするといった不都合を排し、また車体の最低地上高を十分に確保して走行性を高めることができる等の優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この考案の建設機械のベースフレーム構造の一実施例を示す平面図である。
【図2】図1に示した建設機械のベースフレーム構造の正面図である。
【図3】従来の建設機械のベースフレーム構造の一例を示す平面図である。
【図4】図3に示した建設機械のベースフレーム構造の正面図である。
【符号の説明】
20 建設機械のベースフレーム構造
11 トラックフレーム
12 旋回ベアリング用台座
13 メインフレーム
14 取り付けフランジ
15 円筒
16 上フランジ
16’下フランジ
17 ウェブ

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】 下部走行体と上部旋回体を有する建設機械の該下部走行体に支持される左右一対のトラックフレームと、前記上部旋回体を支承する旋回ベアリングを支持する旋回ベアリング用台座と、前記左右一対のトラックフレーム間に橋架され、前記旋回ベアリング用台座をほぼ中央に支持するメインフレームからなる建設機械のベースフレーム構造において、前記メインフレームの垂直断面形状を、荷重方向とは反対方向に凸でかつ連続した湾曲形状としたことを特徴とする建設機械のベースフレーム構造。
【請求項2】 前記メインフレームは、それぞれ円筒面を形成する上下一対のフランジと、これら上下一対のフランジ間に放射状に挟持され、両フランジを一定間隔に離間対向させる複数のウェブからなることを特徴とする請求項1記載の建設機械のベースフレーム構造。
【請求項3】 前記メインフレームは、それぞれ球面を形成する上下一対のフランジと、これら上下一対のフランジ間に放射状に挟持され、両フランジを一定間隔に離間対向させる複数のウェブからなることを特徴とする請求項1記載の建設機械のベースフレーム構造。
【請求項4】 前記メインフレームは、それぞれ放物面を形成する上下一対のフランジと、これら上下一対のフランジ間に放射状に挟持され、両フランジを一定間隔に離間対向させる複数のウェブからなることを特徴とする請求項1記載の建設機械のベースフレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】実開平6−10078
【公開日】平成6年(1994)2月8日
【考案の名称】建設機械のベースフレーム構造
【国際特許分類】
【出願番号】実願平4−50284
【出願日】平成4年(1992)7月17日
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)