説明

建設機械の冷却装置

【課題】比較的簡単な構成で、冷却ファン及びファンモータを支持することができる建設機械の冷却装置を提供する。
【解決手段】ファンモータ26は、モータ支持部材40によって支持される。モータ支持部材40は、一対の収容フレーム22,22よりも空気流通方向の下流側に配設される。モータ支持部材40は、モータ取付部41と一対の固定部42とを有する。モータ取付部41には、ファンモータ26が取り付けられ、一対の収容フレーム22,22に跨るように水平方向に延びている。一対の固定部42,42は、モータ取付部41の両端部から収容フレーム22側に延び、収容フレーム22の側壁面にそれぞれ取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、建設機械の冷却装置では、ラジエータやオイルクーラ等の熱交換器を含むクーリングパッケージに対して、冷却ファンにより吸引される冷却空気を通風させて熱交換を行うものが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1に記載の冷却装置では、冷却ファン及びモータは、サポート部材に取り付けられている。サポート部材は、モータが取り付けられたモータ取付台と、このモータ取付台を挟んで上下に並んだ一対のビームとを備えている。一対のビームは、冷却空気の流れを整流するシュラウドの空気流通方向の下流側の板面に取り付けられている。これにより、冷却ファン及びモータが、クーリングパッケージに対向した状態でシュラウドに支持されている。
【0004】
特許文献2に記載の冷却装置では、ファン駆動モータは、モータ支持部材に取り付けられている。モータ支持部材は、熱交換器を内蔵した枠状のクーリングパッケージ本体の開口面に取り付けられている。ファン駆動モータのクーリングパッケージ本体側とは反対側に突出した回転軸には、冷却ファンが取り付けられている。シュラウドは、クーリングパッケージ本体の開口面の端部である開口縁から冷却ファンの周囲にわたって設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−133661号公報
【特許文献2】特開2008−190513号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の冷却装置では、シュラウドはそれ自身の重量に加えて、冷却ファン、モータ、及びサポート部材の重量を支持しなければならないので、建設機械の作業時における車体の振動や、冷却ファンの回転動作に伴う振動の影響に対してシュラウドの板厚を厚くしたり、補強材を追加して強度を高める必要があり、装置全体として重量が増大するという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載の冷却装置では、冷却ファン、ファン駆動モータ、及びモータ支持部材の重量をクーリングパッケージ本体の開口面の端部の開口縁付近で支持している。クーリングパッケージ本体の開口面の端部付近は、シュラウドの重量に加え、冷却ファン、ファン駆動モータ、及びモータ支持部材の重量を支持しなければならないので、開口面の端部付近の補強が必要になる。開口縁付近に取り付けられたシュラウドを補強材として用いても、冷却ファン、ファン駆動モータ、及びモータ支持部材の重量を支持しなければならないことに変わりはないから、装置全体として重量が増大するという問題がある。
【0008】
このように、従来の冷却装置では、シュラウド又はクーリングパッケージ本体の開口面の端部付近に冷却ファン及びファン駆動モータを支持したモータ支持部材を取り付けているから、これらの総重量がシュラウド又はクーリングパッケージ本体の開口面に付与されるので、シュラウド又はクーリングパッケージ本体の開口面の補強が必要になり、コスト高になるという問題があった。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的簡単な構成で、冷却ファン及びファンモータを支持することができる建設機械の冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、互いに間隔をあけて立設する一対の収容フレームと、コア面が空気流通方向に対向するように該一対の収容フレームの間に収容された熱交換器と、該熱交換器よりも空気流通方向の下流側に配設された冷却ファンと、該冷却ファンを駆動するファンモータとを備えた建設機械の冷却装置を対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0011】
すなわち、第1の発明は、前記一対の収容フレームにおける空気流通方向の下流側の面に取り付けられ、前記冷却ファンの外周を囲って冷却空気を整流するシュラウドと、
前記一対の収容フレームよりも空気流通方向の下流側に配設され、前記ファンモータを支持するモータ支持部材とを備え、
前記モータ支持部材は、前記ファンモータが取り付けられるとともに前記一対の収容フレームに跨るように水平方向に延びるモータ取付部と、該モータ取付部の両端部から前記収容フレーム側に延びて該収容フレームの側壁面にそれぞれ取り付けられた一対の固定部とを有することを特徴とするものである。
【0012】
第1の発明では、シュラウドは、一対の収容フレームにおける空気流通方向の下流側の面に取り付けられ、冷却ファンの外周を囲って冷却空気を整流させる。ファンモータは、モータ支持部材によって支持される。モータ支持部材は、一対の収容フレームよりも空気流通方向の下流側に配設される。モータ支持部材は、モータ取付部と一対の固定部とを有する。モータ取付部には、ファンモータが取り付けられ、一対の収容フレームに跨るように水平方向に延びている。一対の固定部は、モータ取付部の両端部から収容フレーム側に延び、収容フレームの側壁面にそれぞれ取り付けられる。
【0013】
このような構成とすれば、冷却ファン、ファンモータ、及びモータ支持部材の重量を一対の収容フレームのみで支持することができる。そのため、補強用の部材を別途設ける必要がなく、コストダウンや装置全体の軽量化を図ることができる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、
前記シュラウドは、板状体で構成されていることを特徴とするものである。
【0015】
第2の発明では、板状体で構成された閉じ断面形状のシュラウドを用いている。このような構成とすれば、皿状や箱状に形成されたシュラウドを用いた場合に比べて、収容フレームの振動に伴う微小な曲げ変形やねじり変形を柔軟に吸収することができる。これにより、シュラウドを薄型化することができるので、コストダウンを図ることができる。
【0016】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、
前記モータ支持部材の前記モータ取付部と前記固定部とは、それぞれ別体の部材で構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
第3の発明では、モータ支持部材のモータ取付部と固定部とを、それぞれ別体の部材で構成するようにしている。このような構成とすれば、例えば、長さの異なる固定部に取り替えることで、冷却ファンとシュラウドとの相対位置を容易に調整することができ、冷却空気の整流調整を効率良く行うことができる。
【0018】
第4の発明は、第1乃至第3の発明のうち何れか1つにおいて、
前記モータ取付部と前記固定部とを連結するブレースを備えたことを特徴とするものである。
【0019】
第4の発明では、モータ取付部と固定部とがブレースによって連結されている。このような構成とすれば、冷却ファンの回転駆動による振動に伴って、固定部が曲げ変形してしまうのを抑えることができる。これにより、冷却ファンの回転数を上げた場合でも、振動を抑えて安定して運転することができるので、冷却性能を向上することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、モータ支持部材を、シュラウドやクーリングパッケージ本体の開口面ではなく、一対の強固な収容フレームの側壁面に取り付けるようにしたから、冷却ファン、ファンモータ、及びモータ支持部材の重量を一対の収容フレームのみで支持することができる。そのため、補強用の部材を別途設ける必要がなく、コストダウンや装置全体の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る建設機械の全体構成を示す側面図である。
【図2】冷却装置を冷却ファン側から見たときの構成を示す斜視図である。
【図3】冷却装置の構成を示す平面図である。
【図4】シュラウド及びモータ支持部材の構成を示す斜視図である。
【図5】ブレースの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1は、本発明を適用した建設機械の全体構成を示す側面図である。図1に示すように、この建設機械10は、クローラ式の下部走行体1の上に、旋回可能な上部旋回体2が搭載された油圧ショベルである。
【0024】
上部旋回体2は、車体フレームとしての旋回フレーム3と、旋回フレーム3の前端側に設けられて土砂等の掘削作業を行うアタッチメント4と、キャブ5と、機械室6と、旋回フレーム3の後端側に設けられてアタッチメント4との重量バランスを取るためのカウンターウエイト7とを備えている。
【0025】
なお、本実施形態では、図1において、図面左側のアタッチメント4が配置された側を前側、紙面手前側のキャブ5が配置された側を左側とし、以下の説明では前後左右等の方向は特に言及しない限り、これに従うものとする。
【0026】
アタッチメント4は、基端側が旋回フレーム3に設けられた一対の縦板(図示省略)に回動可能に取り付けられたブーム11と、ブーム11の先端側に回動可能に取り付けられたアーム12と、アーム12の先端側に回動可能に取り付けられたバケット13とを備えている。
【0027】
キャブ5は、その内部に運転シートや各種制御機器、操作機器等が装備された矩形箱型の運転室であり、アタッチメント4の左側に隣接して位置するように上部旋回体2の前部左側に配設されている。
【0028】
機械室6は、その周囲が機械室カバー6aによって覆われている。機械室カバー6aには、機械室6内に外気を取り込むための吸気孔6bが開口している。機械室カバー6aの上部には、ボンネット8が開閉自在に設置されている。
【0029】
機械室6内には、冷却装置20が配設されている。図2及び図3に示すように、この冷却装置20は、一対の収容フレーム22,22と、熱交換器24と、熱交換器24よりも空気流通方向の下流側に配設された冷却ファン25と、冷却ファン25を駆動するファンモータ26と、冷却ファン25の外周を囲って冷却空気を整流するシュラウド30とを備えている。なお、図2及び図3において、実線の矢印で示す方向が空気流通方向である。
【0030】
収容フレーム22は、断面凹状に形成され、幅方向に互いに間隔をあけて底板21から立設する一対の部材で構成されている。一対の収容フレーム22,22間の上部は、上面カバー23によって覆われている。
【0031】
熱交換器24は、縦長の長方形状に形成され、コア面が空気流通方向に対向するように、幅方向に並んで一対の収容フレーム22,22の間に収容されている。ここで、図3で左側の熱交換器24は、エンジン冷却用のラジエータであり、右側の熱交換器24は、作動油冷却用のオイルクーラである。
【0032】
冷却ファン25は、ファンモータ26の回転軸に取り付けられている。冷却ファン25は、機械室カバー6aの吸気孔6bから外気を吸引し、冷却空気として機械室6内に流通させるものである。冷却ファン25により吸引された冷却空気は、熱交換器24を通過し、この際に、熱交換器24の内部を流通する冷却水や作動油を冷却する。熱交換後の冷却空気は、冷却装置20の内部空間Sを通過して冷却ファン25に吸引され、図示しないエンジン等に向けて吹き出される。エンジン等を冷却した後の空気は、機械室カバー6aに形成された排気孔(図示省略)から外部へ排気される。
【0033】
なお、機械室カバー6aと熱交換器24との間には、集塵フィルタ(図示省略)が設けられており、冷却ファン25により吸引された空気中に含まれる塵埃等の異物の進入を防止するようにしている。
【0034】
一対の収容フレーム22,22の空気流通方向の下流側の面には、シュラウド30が締結ボルト35によって取り付けられている。シュラウド30は、中央に開口孔30aが形成された板状体で構成されている(図4参照)。開口孔30aは、冷却ファン25の外径に対して若干の隙間を存するような内径に形成されている。これにより、冷却ファン25の外周をシュラウド30の開口孔30aの内周縁で囲うと、冷却ファン25で吸引された冷却空気がシュラウド30の開口孔30aを通過する際に整流される。シュラウド30には、ファンリング31が取り付けられている。
【0035】
ファンリング31は、筒状部32と、筒状部32におけるシュラウド30側の端部から径方向に広がるフランジ部33とを備えている。筒状部32の筒内径は、シュラウド30の開口孔30aと略同じ大きさで形成されている。フランジ部33は、シュラウド30の板面に当接させた状態で締結ボルト35によって締結固定されている。これにより、シュラウド30の開口孔30aを通過した冷却空気は、ファンリング31の筒状部32を通って排気される。
【0036】
一対の収容フレーム22,22よりも空気流通方向の下流側には、ファンモータ26を支持するモータ支持部材40が配設されている。モータ支持部材40は、ファンモータ26を取り付けるモータ取付部41と、モータ取付部41を収容フレーム22の側壁面に取り付ける一対の固定部42とを有する。
【0037】
モータ取付部41は、一対の収容フレーム22,22に跨るように水平方向に延びる板状体で構成され、その中央位置にファンモータ26が取り付けられている。モータ取付部41の上下両端部は、空気流通方向の下流側に屈曲して補強リブを構成している。モータ取付部41の板面には、ファンモータ26よりも幅方向の両外側位置に通風孔41aが形成されている。
【0038】
固定部42は、断面L字状に屈曲された板状体で構成されている。固定部42は、モータ取付部41の両端部にそれぞれ配設され、締結ボルト35によってモータ取付部41の両端部に締結固定されている。固定部42における収容フレーム22側に延びる面は、収容フレーム22の側壁面に当接した状態で締結ボルト35によって締結固定される。これにより、冷却ファン25及びファンモータ26が、モータ支持部材40によって熱交換器24に対向した位置に支持される。
【0039】
このように、モータ支持部材40を、シュラウド30の板面ではなく、一対の強固な収容フレーム22,22の側壁面に取り付けるようにしたから、冷却ファン25、ファンモータ26、及びモータ支持部材40の重量を一対の収容フレーム22,22のみで支持することができる。そのため、補強用の部材を別途設ける必要がなく、コストダウンや装置全体の軽量化を図ることができる。
【0040】
また、モータ支持部材40のモータ取付部41と固定部42とを、それぞれ別体の部材で構成するようにしたから、例えば、長さの異なる固定部42に取り替えることで、冷却ファン25とシュラウド30との相対位置を容易に調整することができ、冷却空気の整流調整を効率良く行うことができる。
【0041】
図5に示すように、モータ取付部41と固定部42とは、各々と連絡され、さらにブレース43によって連結されている。ブレース43は、幅方向の両端部が屈曲した形状とされ、その屈曲面がそれぞれモータ取付部41と固定部42とに当接した状態で、締結ボルト35によって締結固定されている。
【0042】
このような構成とすれば、冷却ファン25の回転駆動による振動に伴って、固定部42が曲げ変形してしまうのを抑えることができる。これにより、冷却ファン25の回転数を上げた場合でも、振動を抑えて安定して運転することができるので、冷却性能を向上することができる。
【0043】
《その他の実施形態》
前記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0044】
本実施形態では、熱交換器24として、エンジン冷却用のラジエータと、作動油冷却用のオイルクーラとを幅方向に並べて配置した形態について説明したが、熱交換器24の個数や配置等は、あくまでも一例であり、この形態に限定するものではない。
【0045】
また、本実施形態では、モータ支持部材40の固定部42を、長さの異なる固定部42に取り替えることで、冷却ファン25とシュラウド30との相対位置を調整するようにした形態について説明したが、例えば、締結ボルト35を挿通させるために固定部42に形成されている孔を長孔にすることで、冷却ファン25とシュラウド30との相対位置を調整するようにしてもよい。また、モータ取付部41と固定部42とを一体化させて、モータ支持部材40を1つの部材で構成してもよい。
【0046】
また、本実施形態では、ブレース43を締結ボルト35によってモータ取付部41と固定部42とに連結するようにしているが、溶接等によって連結させても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
以上説明したように、本発明は、比較的簡単な構成で、冷却ファン及びファンモータを支持することができる建設機械の冷却装置を提供できるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0048】
10 建設機械
20 冷却装置
22 収容フレーム
24 熱交換器
25 冷却ファン
26 ファンモータ
30 シュラウド
40 モータ支持部材
41 モータ取付部
42 固定部
43 ブレース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに間隔をあけて立設する一対の収容フレームと、コア面が空気流通方向に対向するように該一対の収容フレームの間に収容された熱交換器と、該熱交換器よりも空気流通方向の下流側に配設された冷却ファンと、該冷却ファンを駆動するファンモータとを備えた建設機械の冷却装置であって、
前記一対の収容フレームにおける空気流通方向の下流側の面に取り付けられ、前記冷却ファンの外周を囲って冷却空気を整流するシュラウドと、
前記一対の収容フレームよりも空気流通方向の下流側に配設され、前記ファンモータを支持するモータ支持部材とを備え、
前記モータ支持部材は、前記ファンモータが取り付けられるとともに前記一対の収容フレームに跨るように水平方向に延びるモータ取付部と、該モータ取付部の両端部から前記収容フレーム側に延びて該収容フレームの側壁面にそれぞれ取り付けられた一対の固定部とを有することを特徴とする建設機械の冷却装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記シュラウドは、板状体で構成されていることを特徴とする建設機械の冷却装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記モータ支持部材の前記モータ取付部と前記固定部とは、それぞれ別体の部材で構成されていることを特徴とする建設機械の冷却装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうち何れか1つにおいて、
前記モータ取付部と前記固定部とを連結するブレースを備えたことを特徴とする建設機械の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−104310(P2013−104310A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246640(P2011−246640)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000246273)コベルコ建機株式会社 (644)