説明

建設機械の冷却装置

【課題】熱交換器の清掃作業を行う際の冷却ファンの視認性を向上できる新規な建設機械の冷却装置の提供。
【解決手段】一定の間隔を隔てて位置する熱交換器40と冷却ファン30間の周囲をシュラウド50で囲んで前記熱交換器40と冷却ファン30との間にメンテナンススペースSを区画形成すると共に、前記シュラウド50の一部にメンテナンス用の作業窓55を形成し、当該作業窓55に開閉板56を着脱自在に設けると共に、当該開閉板56を取り付けるための前記作業窓55の縁部57に、前記開閉板56を取り外したときに外部から前記メンテナンススペースS内の冷却ファン30を視認するための透過部70を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械に搭載されるエンジン等を冷却するための冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の建設機械に搭載されるエンジンには、ラジエーターやオイルクーラー等の熱交換器と冷却ファン等からなる冷却装置が付設されている。この冷却装置は、冷却ファンを回転させて周囲の空気を熱交換器側に吸い込むことによって高温となったエンジン冷却水や潤滑油等を熱交換器内で強制的に冷却(空冷)してエンジンに循環するようになっている。
【0003】
油圧ショベル等の建設機械は大量の粉塵が発生しやすい現場での作業が多い。そのため、建設機械に搭載されるエンジンの冷却装置の場合は、舞い上がった大量の粉塵が空気と共に熱交換器内に流れ込んで目詰まりを起こして熱交換器の冷却機能を低下させる頻度が高いことから、定期的なメンテナンス(清掃)が欠かせない。
【0004】
このような熱交換器の目詰まりを防止するための従来のメンテナンス(清掃)方法としては、例えば以下の特許文献1に示すような方法が行われている。すなわち、先ず熱交換器と冷却ファンとの間の周囲を覆う導風板(シュラウド)の上面部側に形成された開口部を開き、この開口部から熱交換器と冷却ファンとの間のメンテナンススペースにエアガンを挿入する。そして、このエアガンから熱交換器の裏面側に向けて高圧の圧縮空気を吹き付けることで目詰まりした粉塵を熱交換器の表面側から吹き飛ばして除去するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−329842
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1に示すような方法で熱交換器の清掃を行った場合、熱交換器と冷却ファンとの間のメンテナンススペースに挿入したエアガン等が清掃作業中に誤って冷却ファンとぶつかってしまい、ファン(羽根)を損傷するおそれがある。
【0007】
そのため、清掃作業時にはエアガンが冷却ファンに接触しないように常に冷却ファンの位置に注意しながらエアガンの操作をしなければならないが、その冷却ファンの位置確認は導風板(シュラウド)の上面部側に形成された開口部を介して行われるため、冷却ファンの視認性が悪いといった問題がある。
【0008】
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その目的は、熱交換器の清掃作業を行う際の冷却ファンの視認性を向上できる新規な建設機械の冷却装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために第1の発明は、一定の間隔を隔てて位置する熱交換器と冷却ファン間の周囲をシュラウドで囲んで前記熱交換器と冷却ファンとの間にメンテナンススペースを区画形成すると共に、前記シュラウドの一部にメンテナンス用の作業窓を形成し、当該作業窓に開閉板を着脱自在に設けると共に、当該開閉板を取り付けるための前記作業窓の縁部に、前記開閉板を取り外したときに外部から前記メンテナンススペース内の冷却ファンを視認するための透過部を形成したことを特徴とする建設機械の冷却装置である。
【0010】
このような構成によれば、シュラウドの作業窓の縁部に形成された透過部を介して外部からメンテナンススペース内の冷却ファンを視認できるため、作業窓を利用した熱交換器の清掃作業を行う際の冷却ファンの視認性が大幅に向上する。
【0011】
第2の発明は、前記透過部は、複数の小穴からなることを特徴とする建設機械の冷却装置である。このような構成によれば、シュラウドの作業窓の縁部の強度を維持しつつ、作業窓を利用した熱交換器の清掃作業を行う際の冷却ファンの視認性を向上できる。
【0012】
第3の発明は、前記透過部は、前記縁部の幅方向又は長手方向あるいは斜め方向に延びる複数の長穴からなることを特徴とする建設機械の冷却装置である。このような構成によれば、熱交換器の清掃を行う際の冷却ファンの視認性がより向上するため、作業窓を利用した熱交換器の清掃作業を行う際の冷却ファンの視認性を大幅に向上できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、シュラウドの作業窓の開閉板を外したときにその作業窓の縁部に形成された透過部を介して外部からメンテナンススペース内の冷却ファンを視認することができる。これによって、作業窓を利用した熱交換器の清掃作業を行う際の冷却ファンの視認性が大幅に向上するため、熱交換器の清掃作業時の冷却ファンの損傷などを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る建設機械(油圧ショベル)100の実施の一形態を示す全体側面図である。
【図2】本発明に係る建設機械(油圧ショベル)100の実施の一形態を示す全体平面図である。
【図3】図2に示す建設機械(油圧ショベル)100の旋回体の部分を示す平面図である。
【図4】エンジン10と冷却装置20との関係を示す平面図である。
【図5】図4中A部を示す部分拡大図である。
【図6】図5中A−A線拡大断面図である。
【図7】開閉板56を外した状態を示す平面図である。
【図8】作業窓55の縁部57に透過部70が無い状態を示す平面図である。
【図9】本発明に係る冷却装置20の他の実施の形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る建設機械(油圧ショベル)100の実施の一形態を示す全体側面図、図2は、その全体平面図である。図示するようにこの油圧ショベル100は、自走可能な下部走行体200と、この下部走行体200上に旋回可能に搭載された上部旋回体300と、この上部旋回体300の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置400とから主に構成されている。
【0016】
上部旋回体300は、オペレータが搭乗するキャブ310と、エンジン等の機器類を収容するエンジン室320と、作業装置400との重量バランスを取るためのカウンターウエイト330とが旋回フレーム340上に順に載置された構成となっている。
【0017】
エンジン室320は、キャブ310とカウンターウエイト330間を覆う上面カバー341と側面カバー342とからなる建屋カバーによって区画形成されており、図3に示すように、その内部には、動力源となるエンジン10と、このエンジン10を冷却する冷却装置20の他、図示しない燃料タンクや油圧ポンプ、ユーティリティスペース等が収容されている。
【0018】
また、図3に示すように、このエンジン室320の上面を区画する上面カバー341であって、カウンターウエイト330の近傍には、上部旋回体300の幅方向に延びる上面開口部321が形成されており、この上面開口部321は、図2に示すように矩形状をしたエンジンカバー322によって開閉自在に覆われている。また、このエンジン室320の左側面部には、左側面ドア323、324が設けられており、上部旋回体300の左側面側からエンジン室320内に臨めるようになっている。そして、本実施の形態にあっては、この左側面ドア323、324のうち、冷却装置20側に位置する左側面ドア324の上部に外気を取り込むための空気取込口325が形成されている。
【0019】
図4は、このエンジン室320に収容されるエンジン10と、このエンジン10を冷却する冷却装置20とを示したものである。なお、この図4は、上面開口部321側から見た図(平面図)である。先ず、エンジン10は、軽油等の化石燃料を燃料とするディーゼルエンジン等の内燃機関から構成されており、作業装置400や下部走行体200の動力源となる油圧を発生すると同時に、その燃焼によって燃焼排ガスと共に高温の燃焼熱を発生する。
【0020】
一方、冷却装置20は、冷却ファン30と、この冷却ファン30と一定の間隔を隔てて位置する熱交換器40と、これらの間の周囲を覆うように位置するシュラウド50とから主に構成されている。冷却ファン30は、エンジン10の駆動軸側に減速装置等を介して接続しており、エンジン10の駆動力で回転することによって図4に示すように熱交換器40側からエンジン10側に向かって冷却空気を導入するようになっている
【0021】
熱交換器40は、エンジン10内の冷却水や潤滑油を循環して冷却するラジエーターやオイルクーラー等であり、矩形状のケーシング内に蛇行状に配置した伝熱管に冷却フィン(図示せず)を溶接して空気との接触面積を増大させた構造となっている。そして、この熱交換器40は冷却ファン30と対向するように一定の間隔(十数cm〜数十cm)を隔てて設けられている。なお、この熱交換器40側には、前述したような空気取込口325が形成された左側面ドア324が位置している。
【0022】
シュラウド50は、互いに一定の間隔を隔てて位置する熱交換器40と冷却ファン30間の周囲を囲むように構成されており、冷却ファン30よりも通風面積が大きい熱交換器40内に冷却空気を効率的に導くようにその流れを規制すると共に、熱交換器40と冷却ファン30との間に一定の作業空間となるメンテナンススペースSを区画形成するようになっている。
【0023】
すなわち、このシュラウド50は、冷却ファン30側に位置してこの冷却ファン30が臨むように位置する円形の開口部(図示せず)が形成された矩形状のファン側導風板51と、このファン側導風板51の底辺と熱交換器40の底面間に位置してメンテナンススペースSの底部(紙面奥側)を区画する底部導風板52と、このファン側導風板51の側辺と熱交換器40の側面間に位置してメンテナンススペースSの両側面を区画する一対の側面導風板53,54とから構成されている。
【0024】
そして、メンテナンススペースSの上部に相当する位置には、熱交換器40の長さ方向に延びるメンテナンス用の作業窓55が形成されており、この作業窓55には、図5に示すようにこれを塞いでメンテナンススペースSの上面部を区画するための長板状の開閉板56が着脱自在に設けられている。
【0025】
この開閉板56は、図5および図6に示すようにファン側導風板51の上端縁部を熱交換器40側に向けてほぼ水平状態に折り曲げてなるファン側縁部57上と、側部導風板54の上端縁部を側部導風板53側に向けてほぼ水平状態に折り曲げてなる側縁部58上と、熱交換器40の側面に設けられたブラケット59上とに架け渡すように設けられている。
【0026】
そして、図6に示すようにファン側縁部57上に開閉板56の縁部を載置させて両者に穿たれた取付孔60,61を一致させた状態でファン側縁部57の下面に固定されたナット62にボルト63を螺合させることでファン側縁部57に開閉板56を着脱自在に固定(取り付け)できるようになっている。また、反対のブラケット59側でも同様にして開閉板56を着脱自在に固定(取り付け)できるようになっている。また、この開閉板56の上面中央部には、この開閉板56を把持するための取っ手64が設けられている。
【0027】
そして、本実施の形態では、図7に示すように、このファン側導風板51のファン側縁部57に、複数の小穴71、71…からなる透過部70を形成したものである。したがって、開閉板56を取り外したときに、この透過部70を透過して外部からメンテナンススペースS内の冷却ファン30を視認することが可能となっている。
【0028】
すなわち、冷却ファン30と熱交換器40間のメンテナンススペースSを利用して熱交換器40のメンテナンス(清掃作業)等を行うために開閉板56を取り外して作業窓55を開放した場合、図8に示すように冷却ファン30の取付位置によっては、この冷却ファン30がファン側縁部57に隠れてしまって外部から見えなってしまうことがある。
【0029】
より具体的に説明すると、このメンテナンス作業は、エンジン10を停止した後、作業員が上部旋回体300の上面カバー341上に登ってエンジンカバー322を外し、上面開口部321を開いた状態で行われる。そのため、冷却装置20を上方からのぞき込むような姿勢で作業を行うことになることから、開閉板56を取り外した状態であってもそのファン側縁部57の下部に位置する冷却ファン30がファン側縁部57に隠れてしまってその上方(外部)から見えなってしまうことがある。しかも、エンジン室300内はその周囲がカバーで覆われて周囲よりも暗い状況となっていることから、仮にその一部が見えていても、うっかり見落としてしまう可能性が高い。
【0030】
このような状態でメンテナンススペースS内にエアガン等の工具を入れてメンテナンス作業を行うと、前述したようにその工具が作業中に誤って冷却ファン30とぶつかってしまい、そのファンなどを損傷するおそれがある。特に、冷却ファン30は軽量化などのために合成樹脂製で形成されているため、物理的な衝撃には弱い。
【0031】
しかしながら、本発明の冷却装置20は、この冷却ファン30の視認性を悪化させるファン側縁部57に透過部70を形成したため、この透過部70を介して外部からメンテナンススペースS内の冷却ファン30を確実に視認することが可能となる。これによって、熱交換器40の清掃作業を行う際の冷却ファン30の視認性が大幅に向上するため、熱交換器40の清掃作業中における冷却ファン30の損傷などを防止することができる。また、この透過部70を複数の小穴71、71…で構成したことから、ファン側縁部57の強度を大きく損なうこともない。
【0032】
そして、清掃作業が終了したならば再び作業窓55を開閉板56で閉じることになるがこの開閉板56によってこの透過部70も同時に塞がれることになるため、冷却ファン30が駆動した際にその透過部70から外気が流入するようなことがなく、優れた導風効果を維持することができる。
【0033】
なお、図7の例では、ファン側縁部57の透過部70を複数の小穴71、71…で構成したが、外部からファン側縁部57を介してメンテナンススペースS内の冷却ファン30を視認できる形態であれば、その形態はこれに限定されるものでなく、その他に例えば図9に示すような形態であっても良い。
【0034】
すなわち、図9(A)乃至(C)に示すように、この透過部70をファン側縁部57の幅方向又は長手方向あるいは斜め方向に延びる複数の長穴72、72…から構成しても良いし、図9(D)に示すように、この透過部70をファン側縁部57の幅方向および長手方向に亘る大きな覗き窓73で構成したり、さらにこの覗き窓73に金属製の網体74を設けるような構成としても良い。
【符号の説明】
【0035】
100…建設機械(油圧ショベル)
10…エンジン
20…冷却装置
30…冷却ファン
40…熱交換器
50…シュラウド
55…作業窓
56…開閉板
57…縁部
70…透過部
71…小穴
72…長穴
S…メンテナンススペース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の間隔を隔てて位置する熱交換器と冷却ファン間の周囲をシュラウドで囲んで前記熱交換器と冷却ファンとの間にメンテナンススペースを区画形成すると共に、前記シュラウドの一部にメンテナンス用の作業窓を形成し、
当該作業窓に開閉板を着脱自在に設けると共に、当該開閉板を取り付けるための前記作業窓の縁部に、前記開閉板を取り外したときに外部から前記メンテナンススペース内の冷却ファンを視認するための透過部を形成したことを特徴とする建設機械の冷却装置。
【請求項2】
前記透過部は、複数の小穴からなることを特徴とする請求項1に記載の建設機械の冷却装置。
【請求項3】
前記透過部は、前記縁部の幅方向又は長手方向あるいは斜め方向に延びる複数の長穴からなることを特徴とする請求項1に記載の建設機械の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−104345(P2013−104345A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248401(P2011−248401)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)