説明

建設機械の排土装置

【課題】作業内容に応じて容易に交換でき、排土板に対する補助排土板の位置を調整でき、また排土板後方への土砂のこぼれを防止する補助ブレード装置を備えた建設機械の排土装置の提供。
【解決手段】本発明は、排土板9の上面には、雌ねじ孔35が設けられ、補助ブレード装置30は、補助排土板32と、補助排土板32の排土板9への取付部となる固定部材33とを備える。固定部材33には、雌ねじ孔32に対応する位置に、少なくとも前後方向に移動させて取り付け可能な2つの長孔38を設け、固定部材33の長孔38にボルトを挿通して雌ねじ孔35に締結して補助排土板32を排土板9の上面に取付ける構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土砂の排土板(ブレード)後方への進入を防止することができる建設機械の排土装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械、例えば、ホイール式油圧ショベルは、下部走行体と、その上部に旋回可能に設けられた上部旋回体とを備えている。この上部旋回体の前部には運転席及び作業アタッチメントが設けられ、この作業アタッチメントはその先端部にバケットを備えている。一方、上部旋回体の後部には燃料タンク、作動油タンク及びエンジン等が搭載されている。
【0003】
一般に、下部走行体の前部及び後部の少なくとも一方には、整地作業等のために用いられる排土装置が取り付けられている。この排土装置は、下部走行体の幅方向に延びる排土板(ブレード)と、この排土板と下部走行体とを接続する回動自在な平行リンクと、下部走行体と平行リンクとを連結し、平行リンクを上下に回動させる油圧シリンダとから構成されている。
【0004】
このような排土装置を用いた作業では、排土量を増大させることや、油圧シリンダ等の装置の保護のために、排土の巻き返しによる排土板後方への土砂のこぼれを少なくする必要がある。
【0005】
特許文献1に記載される発明は、排土板の上端部に補助ブレード装置を設置し、排土板背面側への土砂のこぼれを防いでいる。また上記補助ブレード装置の不要時は、油圧シリンダとリンク機構にて補助ブレード装置を排土板の裏側に格納させることで、足元の視界の確保を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−13536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のような従来技術による補助ブレード装置は、以下に示すような問題点を有している。すなわち、補助ブレード装置は排土板にブラケットと油圧シリンダ、ピンによって接続されており、補助ブレード装置単体での取り外しが容易ではない。このため、排土量の多い作業時に、より大型の補助ブレード装置を使用して、排土量を多く確保したり、ガラ運搬など運搬物の大きい作業時に、補助ブレード装置の補助排土板をメッシュやパンチングメタルなどにして視界を確保したりするといった、補助ブレード装置の交換作業を行うことが困難である。
【0008】
またこの補助ブレード装置では、補助排土板が排土板の裏側に格納されるため、突出時は排土板と補助排土板とに段差が生じてしまう。このため、上記段差部分に土砂が溜まってしまい、隙間からの土砂の進入や、土砂の堆積による清掃性の低下、堆積土の重量による補助ブレード装置の破損などの課題がある。
【0009】
本発明の課題は、作業内容に応じて容易に交換でき、排土板に対する補助排土板の位置を調整でき、また排土板後方への土砂のこぼれを防止する補助ブレード装置を備えた、建設機械の排土装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の目的を達成すべく、請求項1記載の建設機械の排土装置は、建設機械の下部走行体の前端部または後端部のいずれか一方に上下動可能に設けられる排土板の上部に前記排土板によって排土される土砂の排土板背面側への進入を防止するための補助ブレード装置を備えた建設機械の排土装置において、前記排土板の上面には、雌ねじ孔が設けられ、前記補助ブレード装置は、補助排土板と、前記補助排土板の前記排土板への取付部となる固定部材とを備え、前記固定部材には、前記雌ねじ孔に対応する位置に、少なくとも前後方向に移動させて取り付け可能な孔が設けられ、前記固定部材の前記孔に、ボルトを挿通して前記雌ねじ孔に締結することにより、前記補助排土板を前記排土板の上面に取付けることを特徴とする。
【0011】
また請求項2に記載の建設機械の排土装置は、前記雌ねじ孔は、前記排土板の上面に前後方向に所定の間隔をもって少なくとも2つの設けられるものであり、前記固定部材は、ベース板と、前記ベース板の左右両端部にそれぞれ立設されたリブとを備え、前記ベース板には、前記雌ねじ孔に対応する位置に少なくとも2つの孔が設けられることを特徴とする。
【0012】
また、請求項3に記載の建設機械の排土装置は、前記固定部材に設けられる前記孔は、前後方向に延びる長孔からなることを特徴とする。
【0013】
また、請求項4に記載の建設機械の排土装置は、前記固定部材に設けられる前記孔は、隣り合う前後方向の間隔が前記2つの雌ねじ孔の間隔と同じ間隔をもって、前後、左右方向に複数個設けられる貫通孔からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載の建設機械の排土装置によれば、補助ブレード装置を排土板にボルトにより着脱可能にしたので、作業内容に応じて補助排土板の大きさや形状を容易に変更することが可能になる。また、排土板の上面に補助ブレード装置の補助排土板を、少なくとも前後方向に移動可能に取付けられるようにしたので排土板に対する補助排土板の取り付け位置を土質や作業に合わせて調整でき、作業性が向上する。
【0015】
また、請求項2に記載の建設機械の排土装置によれば、請求項1に加え、排土板の上面に設けられる前記雌ねじ孔を前後方向に所定の間隔をもって2つ設け、補助排土板の排土板上面へとなる取付部となる固定部材をベース板と、前記ベース板の左右両端部にそれぞれ立設されたリブとを備え、前記ベース板には、前記雌ねじ孔に対応する位置に少なくとも2つの孔が設けたことにより、補助排土板が土砂に押されて回転し、隙間に土砂が侵入したり、補助排土板が破損したりすることを防ぐことができる。
【0016】
また、請求項3、4に記載の建設機械の排土装置によれば、固定部材の孔を長孔、または複数個の貫通孔により構成したので、簡単な構成で補助排土板の位置調整が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る建設機械としてのホイール式油圧ショベルの側面図である。
【図2】本発明による排土装置の要部側面図である。
【図3】図2の排土板の斜視図である。
【図4】図3の排土板上面の一部を拡大した拡大平面図である。
【図5】他の実施形態における図4に対応する拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の建設機械の排土装置の第1の実施の形態を図1〜図4により説明する。図1は、本発明に係る排土装置を備えたホイール式油圧ショベルの全体図、図2は、排土装置を示す要部側面図、図3は、図2における排土板のみ示す斜視図、図4は、図3の排土板上面の一部を拡大する拡大平面図である。図1に示すように、ホイール式油圧ショベルは車輪2が取り付けられた下部走行体1と、下部走行体1には旋回輪を介して設けられる上部旋回体3とからなり、上部旋回体3には前方に運転室4と作業装置5が設けられ、後方には機械室6、カウンターウェイト7が設けられている。下部走行体1の前部には、運転室4内の不図示の操作レバーにより操作される排土装置8が設けられている。
【0019】
排土装置8は排土板9を備え、この排土板9は下部走行体1の幅と同程度の幅を有し、下部走行体1の前方に向けて凹んだ形状をなしている。排土板9と下部走行体1とは左右一対の平行リンク機構10によって互いに接続されている。詳しくは、各平行リンク機構10は、上段リンク11及び下段リンク12からなり、これらリンク11,12の両端部には接続孔(図示せず)がそれぞれ形成されている。また、排土板9の上部には、後述する補助ブレード装置30が設けられている。
【0020】
一方、下部走行体1の前端面には各平行リンク機構10と組みをなす左右一対のブラケット13がそれぞれ設けられている。各ブラケット13はアウタブラケット14及びインナブラケット15からなり、これらアウタブラケット14及びインナブラケット15は下部走行体1の前端面から排土板9に向けて突出されている。インナブラケット15は上下方向に延びる板状をなしているのに対し、アウタブラケット14はインナブラケット15の中央に位置付けられた略三角の板状をなし、これらブラケット14、15間には所定の間隔が確保されている。
【0021】
また、排土板9の裏面にも各平行リンク機構10と組みをなす一対のブラケット16が設けられており、これらブラケット16はインナブラケット15と同様に上下方向に延びる板状をなし、排土板9の裏面から後方に向けて突出されている。
【0022】
アウタブラケット14の中央及びインナブラケット15の下端には上段及び下段リンク11、12における基端の接続孔と対応する貫通孔がそれぞれ形成され、また、ブラケット16の上下には上段及び下段リンク11、12における先端の接続孔に対応する貫通孔がそれぞれ形成されている。従って、各貫通孔に対応するリンクの接続孔をそれぞれ合致させ、これら貫通孔及び接続孔にピン17を挿通させることで、排土板9は上段及び下段リンク11、12を介して下部走行体1に回動自在に接続されている。
【0023】
また、下部走行体1と排土板9との間には各平行リンク機構10と組みをなす油圧シリンダ18がそれぞれ配置されている。各油圧シリンダ18はそのシリンダ外筒の基端部が対応する側のインナブラケット15の上部にピン19を介して回動自在に取り付けられている。一方、その他端、即ち、ピストンロッドの先端が対応する側の下段リンク12の内面にピン20を介して回動自在に取り付けられている。
【0024】
次に補助ブレード装置30を説明する。なお、図4は、図3における後述の固定部材33の一つを拡大して示す拡大平面図である。図3、図4に示すように前述の補助ブレード装置30は、排土板9の前面と連続するような形状の排土面部31が排土板9の幅方向に延在するように形成された補助排土板32と、補助排土板32を排土板9の上面に固定する複数の固定部材33とにより構成される。補助排土板32は、その幅が排土板9の全幅より小さく、排土面部31が排土板9の上端部と同じ角度に傾斜し、排土板9の中央に近いほど、高さが上がり、最大部で100mmから150mm程度に形成されるものである。また、排土板9の上面部には、固定部材33をボルトにより固定するためのプレート状のねじ座34が、排土板9の幅方向に所定の間隔で複数備えられ、ねじ座34には、補助排土板32の延在方向と直交する方向(前後方向)に所定の間隔を有して2つの雌ねじ孔35が設けられている。なお、図4は、説明の便宜上、ボルトを外した状態を示している。固定部材33は、ねじ座34に対応して補助排土板32の延在する方向に所定の間隔をもって複数個設けられる。図3では、5つの固定部材33を示している。図4に示すように、固定部材33は、ボルトによりねじ座34に固定されるプレート状のベース板36と、ベース板36の左右両端部にそれぞれ立設されるリブ37とから構成される。ベース板36は、その一端側が補助排土板32の背面部に固着される。また、リブ37の一端側も補助排土板32の背面部に固着される。これにより補助排土板32と固定部材33とは、強固に固定される。ベース板36には、ねじ座34の雌ねじ孔35に対応する位置に、それぞれ前後方向延びる長孔38が設けられる。これにより、固定部材33をねじ座34にボルトにより固定する際に、長孔38の長さ分だけ前後方向に移動可能になっている。
【0025】
補助ブレード装置30は、以上のように構成されるので、排土板9に対してボルトにより着脱可能となり、作業内容に応じて補助排土板32の大きさや形状を容易に変更することが可能になる。また、補助排土板32を排土板9の上面のねじ座34に取付けるときに、その取付位置を土質や使用条件、製造誤差に対して自由に調整することができる。これにより、補助ブレード装置30を排土板9に対して適切な位置に設けることが可能になり、土砂が排土板9の上部を越えて後方へこぼれることを低減させることができる。
【0026】
また、ねじ座34の前後方向に設けられる2つの雌ねじ孔35によって固定部材33を固定することにより、補助排土板32が土砂に押されて回転することがなく、また、補助排土板32と排土板9間に隙間が形成されることがないので土砂が侵入したり、補助排土板32が破損したりすることを防ぐことができる。
【0027】
次に、第2の実施の形態を図5により説明する。この実施の形態は、第1の実施の形態における、固定部材33の構成のみが異なるもので、他の構成は同一である。なお、図5は、図4と対応する図となっている。
【0028】
図5に示すように固定部材40は、ねじ座34に固定されるプレート状のベース板41と、ベース板41の左右両端部にそれぞれ立設されるリブ42とから構成される。ベース板41は、その一端側が補助排土板32の背面部に固着される。また、リブ42の一端側も補助排土板32の背面部に固着される。これにより補助排土板32と固定部材40とは、強固に固定される。ベース板41には、ねじ座34の雌ねじ孔35の径に対応する大きさでかつ、隣り合う前後方向の間隔がねじ座34の2つの雌ねじ孔35の間隔に対応する間隔となった貫通孔43が前後方向、左右方向に亘って複数個設けられる。これにより、固定部材40をねじ座34にボルトにより固定する際に、雌ねじ孔35に合わせる貫通孔43を変えることで排土板9に対する補助排土板32の取付位置が前後、左右方向に変更可能となる。これによって補助排土板32を排土板9の上面部のねじ座34に取付けるときに、第1の実施の形態と同様、その取付位置を土質や使用条件、製造誤差に対して自由に調整することができ、補助ブレード装置30を排土板9に対して適切な位置に設けることが可能になり、土砂が排土板9の上部を越えて後方へこぼれることを低減することができる。特に本実施の形態では、左右方向にも取付位置を変更できるので、例えば、左右方向の一方側に多くの土砂が集まるような作業を行なう場合に、補助排土板32をその方向に片寄せて取り付けることで、効率良く、土砂の排土板9後方へのこぼれを低減させることができる。
【0029】
なお、本実施の形態では、排土装置8を下部走行体1の前部に設けた例を示したが、下部走行体1の後部に設けることもできる。
【符号の説明】
【0030】
1 下部走行体
2 車輪
3 上部旋回体
4 運転室
5 作業装置
6 機械室
8 排土装置
9 排土板
10 リンク機構
11 上段リンク
12 下段リンク
13、16 ブラケット
14 アウタブラケット
15 インナブラケット)
17、19、20 ピン
18 油圧シリンダ
30 補助ブレード装置
31 排土面部
32 補助排土板
33、40 固定部材
34 ねじ座
35 雌ねじ孔
36、41 ベース板
37、42 リブ
38 長孔
43 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の下部走行体の前端部または後端部のいずれか一方に上下動可能に設けられる排土板の上部に前記排土板によって排土される土砂の排土板背面側への進入を防止するための補助ブレード装置を備えた建設機械の排土装置において、
前記排土板の上面には、雌ねじ孔が設けられ、
前記補助ブレード装置は、補助排土板と、前記補助排土板の前記排土板への取付部となる固定部材とを備え、
前記固定部材には、前記雌ねじ孔に対応する位置に、少なくとも前後方向に移動させて取り付け可能な孔が設けられ、
前記固定部材の前記孔に、ボルトを挿通して前記雌ねじ孔に締結することにより、前記補助排土板を前記排土板の上面に取付けることを特徴とする建設機械の排土装置。
【請求項2】
前記雌ねじ孔は、前記排土板の上面に前後方向に所定の間隔をもって少なくとも2つの設けられるものであり、
前記固定部材は、ベース板と、前記ベース板の左右両端部にそれぞれ立設されたリブとを備え、
前記ベース板には、前記雌ねじ孔に対応する位置に少なくとも2つの孔が設けられることを特徴とする請求項1に記載の建設機械の排土装置。
【請求項3】
前記固定部材に設けられる前記孔は、前後方向に延びる長孔からなることを特徴とする請求項2に記載の建設機械の排土装置
【請求項4】
前記固定部材に設けられる前記孔は、隣り合う前後方向の間隔が前記2つの雌ねじ孔の間隔と同じ間隔をもって、前後、左右方向に複数個設けられる貫通孔からなることを特徴とする請求項2に記載の建設機械の排土装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−40496(P2013−40496A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178075(P2011−178075)
【出願日】平成23年8月16日(2011.8.16)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)