説明

建設機械の排気浄化装置

【課題】パティキュレートフィルタの再生処理において排気管から排気ガスが漏れた場合に迅速に対応することができる建設機械の排気浄化装置の提供。
【解決手段】排気ガス中に含まれるパティキュレートマターを処理する後処理装置12と、エンジン5aから排出される排気ガスを後処理装置12へ導く排気管18と、後処理装置12に設けられ、パティキュレートマターを捕集するパティキュレートフィルタと、パティキュレートフィルタによって捕集されたパティキュレートマターを燃焼して除去する再生処理を行う再生処理手段8と、排気管18に導かれる排気ガスの漏れを検知する圧力センサ17と、圧力センサ17が排気ガスの漏れを検知しなかった場合には再生処理手段8による再生処理を実行させ、圧力センサ17が排気ガスの漏れを検知した場合には再生処理手段8による再生処理を実行させないように制御する制御手段9とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンから排出される排気ガス中に含まれるパティキュレートマターを処理する後処理装置を備えた建設機械の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、油圧ショベル等の建設機械は、走行体と、この走行体の上方に配置された旋回体と、この旋回体に設けられ、作業者が乗車するキャブと、旋回体の前方に取り付けられ、キャブ内の作業者の操作によって掘削等の作業を行うフロント作業機とを備えている。上述の旋回体は、キャブの後方に配置され、開閉可能な車体カバーが上部に形成されたエンジンルームと、このエンジンルーム内に配設されたエンジンと、このエンジンによって駆動され、フロント作業機へ圧油を吐出する油圧ポンプと、キャブ内に設けられた操作レバーの操作に応じて油圧ポンプから吐出される圧油の流れを制御する制御弁とを有している。さらに旋回体は、エンジンから排出される排気ガス中に含まれる有害なパティキュレートマターを処理する後処理装置と、エンジンから排出される排気ガスを後処理装置へ導く排気管とを有している。
【0003】
具体的に後処理装置には、排気ガス中に含まれる粒子状のパティキュレートマターを捕集するパティキュレートフィルタが内部に設けられている。このパティキュレートフィルタは、例えば白金等の酸化触媒付きの多孔質体から成るものであり、パティキュレートマターの成分は、主に固体炭素等のススから成っているものである。従って、エンジンから排出された排気ガスは排気管によって後処理装置へ導かれ、後処理装置に導かれた排気ガスがパティキュレートフィルタを通過した際に、排気ガス中に含まれるパティキュレートマターが上述の多孔質体の壁中に捕捉されるようになっている。
【0004】
ここで、パティキュレートマターが長期に渡ってパティキュレートフィルタに捕捉され続けると、パティキュレートマターが多孔質体の壁中に堆積してパティキュレートフィルタが次第に目詰まりを起こし、エンジンの排気ガスの背圧が上昇するので、パティキュレートフィルタによって捕集されたパティキュレートマターを適宜取り除く必要がある。そのため、後処理装置には、パティキュレートフィルタによって捕集されたパティキュレートマターを燃焼して除去する再生処理を行う再生処理手段が設けられている。
【0005】
この再生処理手段による再生処理は、エンジンの主噴射に対し進角又は遅角させて燃焼室内へ燃料を噴射する副噴射(パイロット噴射、ポスト噴射)を行って、排気中にHCやCOを含ませる方式が採られており、これら未燃成分がパティキュレートフィルタの上流に設けられた酸化触媒において燃焼することで排気温度が上昇し、酸化触媒の下流に設置されたパティキュレートフィルタにおいて600℃ほどの燃焼温度が得られ、この燃焼温度によりススを燃焼させることで行われる。
【0006】
このとき、酸化触媒が有効な触媒機能を発揮するためには、エンジンから排出される排気ガスの温度が酸化触媒に特有の所定の温度以上であることが必要であり、キャブ内に設けられた操作レバーが中立位置にあるときのようにエンジン出力が小さくなっている場合には、排気中のHCやCOが燃焼されないことがある。
【0007】
そこで、パティキュレートマターを燃焼して除去する再生処理において、排気中のHCやCOが十分に燃焼されるようにするために、排ガス浄化装置の入口側にエンジンの排気抵抗を検出する圧力検出器を設けると共に、圧力検出器の検出値が予め定められた所定値以上になったとき、油圧ポンプから吐出される圧油の吐出量及び吐出圧力を同時に上昇させる信号を出力し、エンジンの排ガス温度を排ガス浄化装置、すなわち後処理装置が具備している排ガス浄化機能を正常に発揮しえる温度以上に上昇させる機能を付加した制御装置を有する排ガス浄化装置を備えた油圧作業機械が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3073380号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この特許文献1に開示された従来技術の排ガス浄化装置を備えた油圧作業機械のように排ガス浄化装置、すなわち後処理装置を備えた建設機械の排気浄化装置では、上述したように再生処理手段によるパティキュレートフィルタの再生処理においてエンジンから後処理装置へ副噴射(パイロット噴射、ポスト噴射)が行われることにより、エンジンと後処理装置とを接続する排気管中へ高温となったHCやCO等の未燃燃料が排気ガスと共に勢いよく噴き出される。そのため、排気管内は排気ガスと未燃燃料によって高温かつ高圧となっているので、万一この未燃燃料を含む排気ガスが排気管から漏洩した場合には、漏洩した部分から白煙や異臭等が発生して周囲の環境に悪影響を及ぼすことが懸念される。
【0010】
また、排気管の継ぎ目部分や排気管とエンジンとの接続部分には、例えば排気管のフランジとエンジンのフランジとの間に排気ガスの漏れを防ぐガスケットを挟み込み、各フランジをボルト等で締め付けることによって排気管とエンジンとが接続されているものもあるが、仮に、ガスケットの位置がずれていたり、あるいはボルト等の締め付けが十分でない場合には、建設機械の振動を繰り返し受けることによってガスケットが破損したり、あるいはボルト等が脱落する虞がある。万一、ガスケットが破損したり、あるいはボルト等が脱落した状態で再生処理手段によるパティキュレートフィルタの再生処理が行われた場合には、排気管とエンジンとの接続部分から未燃燃料を含む排気ガスが漏れ、旋回体のエンジンルームに備えられるエンジンや油圧ポンプ等の機器に飛散することにより、これらの機器に重大な損傷を与えることが懸念される。
【0011】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、パティキュレートフィルタの再生処理において排気管から排気ガスが漏れた場合に迅速に対応することができる建設機械の排気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために、本発明の建設機械の排気浄化装置は、旋回体に設けられたキャブと、前記旋回体に設けられたエンジンとを有する建設機械に備えられ、前記エンジンから排出される排気ガス中に含まれるパティキュレートマターを処理する後処理装置と、前記エンジンから排出される排気ガスを前記後処理装置へ導く排気管と、前記後処理装置に設けられ、前記パティキュレートマターを捕集するパティキュレートフィルタと、このパティキュレートフィルタによって捕集された前記パティキュレートマターを燃焼して除去する再生処理を行う再生処理手段とを有する建設機械の排気浄化装置において、前記排気管に導かれる排気ガスの漏れを検知する検知手段と、この検知手段が排気ガスの漏れを検知しなかった場合には前記再生処理手段による再生処理を実行させ、前記検知手段が排気ガスの漏れを検知した場合には前記再生処理手段による再生処理を実行させないように制御する制御手段とを有することを特徴としている。
【0013】
このように構成した本発明は、再生処理手段によるパティキュレートフィルタの再生処理においてエンジンから後処理装置へ副噴射(パイロット噴射、ポスト噴射)が行われることにより、エンジンと後処理装置とを接続する排気管の中をHCやCO等の未燃燃料を含む排気ガスが流通する。本発明は、エンジンから排出される排気ガスを後処理装置へ導く排気管から排気ガスの漏れを検出する検知手段を有しているので、排気管から未燃燃料を含む排気ガスが漏れた場合には、検知手段によって排気ガスの漏れが検出される。そして、制御手段は、検知手段が排気管から排気ガスが漏れたことを検出したかどうかに応じて再生処理手段によるパティキュレートフィルタの再生処理を制御する。
【0014】
すなわち、制御手段は、検知手段が排気ガスの漏れを検知しなかった場合には再生処理手段による再生処理を実行させるように制御することにより、排気ガスが漏れていないことが判断された後にパティキュレートフィルタの再生処理を開始したり、あるいは継続することができる。これにより、パティキュレートフィルタの再生処理を適切に行うことができる。一方、制御手段は、検知手段が排気ガスの漏れを検知した場合には再生処理手段による再生処理を実行させないように制御することにより、再生処理手段による再生処理に伴う上述の副噴射が行われないので、排気管の中へ噴出される未燃燃料や排気ガスの流量が減少し、排気管のうち未燃燃料を含む排気ガスが漏洩した部分から白煙や異臭等が発生することを抑えることができる。さらに、エンジンから排気管の中へ副噴射が行われないことによって排気管内を流通する排気ガスの温度上昇と排気管の内圧が抑制されるので、排気管のうち未燃燃料を含む排気ガスが漏洩した部分から排気ガスがエンジンや油圧ポンプ等の機器に飛散することを抑え、これらの機器に与える損傷を軽減することができる。このように、再生処理手段によるパティキュレートフィルタの再生処理において排気管から排気ガスが漏れた場合に迅速に対応することができる。
【0015】
また、本発明に係る建設機械の排気浄化装置は、前記発明において、前記制御手段は、前記再生処理手段による再生処理が行われているときに、前記検知手段が排気ガスの漏れを検知した場合には前記再生処理手段による再生処理を中断させる再生処理中断手段を含むことを特徴としている。このように構成すると、再生処理手段によってパティキュレートフィルタの再生処理が行われている最中に排気ガスが排気管から漏れた場合には、再生処理中断手段によって現在行われている再生処理が早期に中断されるので、排気管から漏れた未燃燃料を含む排気ガスが旋回体内で拡散することを食い止めることができ、排気ガスの漏れによる影響が拡大することを防止することができる。
【0016】
また、本発明に係る建設機械の排気浄化装置は、前記発明において、前記排気管の周囲を覆い、前記排気管の周辺部を保護する保護カバーを設けたことを特徴としている。このように構成すると、再生処理手段によるパティキュレートフィルタの再生処理が行われているときに、排気管から未燃燃料を含む排気ガスが漏れて飛散した場合であっても、飛散した未燃燃料は保護カバーに付着すると共に、排気管から漏れた排気ガスは保護カバーによって拡散することが抑制されるので、旋回体内に備えられるエンジンや油圧ポンプ等の機器を漏洩した未燃燃料を含む排気ガスから十分に保護することができる。
【0017】
また、本発明に係る建設機械の排気浄化装置は、前記発明において、前記検知手段は、前記排気管を流通する排気ガスの圧力を測定する圧力センサから成ることを特徴としている。このように構成すると、排気管を流通する排気ガスが漏れた場合には、圧力センサによって測定される測定値が、排気管から排気ガスが漏れていない正常な状態における排気管内の圧力値と比較して小さくなるので、排気管から排気ガスが漏れていることを容易かつ正確に検出することができる。これにより、制御手段が、排気ガスの漏れに応じて再生処理手段の実行を精度良く制御することができる。
【0018】
また、本発明に係る建設機械の排気浄化装置は、前記発明において、前記検知手段が排気ガスの漏れを検知した場合に、排気ガスが漏れていることを前記キャブ内の作業者へ知らせる報知手段を有することを特徴としている。このように構成すると、排気管を流通する排気ガスが排気管から漏れた場合には、報知手段によってキャブ内の作業者が排気管から排気ガスが漏れていることを知ることができるので、作業者は、再生処理手段によるパティキュレートフィルタの再生処理が完全に停止するまでキャブ内に乗車し、安全を確認してからキャブの外へ降車することができる。
【0019】
また、排気管から排気ガスが漏れていた場合には、排気管を新しいものに交換する等のメンテナンス作業を行うことにより、作業者は、報知手段によって安全を確認した上で再生処理手段によるパティキュレートフィルタの再生処理を行うことができると判断した場合には、パティキュレートフィルタの再生処理を手動で再開させることができる。このように、キャブ内の作業者が報知手段によって再生処理に対して適切な判断を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の建設機械の排気浄化装置は、エンジンから排出される排気ガス中に含まれるパティキュレートマターを処理する後処理装置と、エンジンから排出される排気ガスを後処理装置へ導く排気管と、後処理装置に設けられ、パティキュレートマターを捕集するパティキュレートフィルタと、このパティキュレートフィルタによって捕集されたパティキュレートマターを燃焼して除去する再生処理を行う再生処理手段とを有している。そして、本発明は、排気管に導かれる排気ガスの漏れを検知する検知手段と、この検知手段が排気ガスの漏れを検知しなかった場合には再生処理手段による再生処理を実行させ、検知手段が排気ガスの漏れを検知した場合には再生処理手段による再生処理を実行させないように制御する制御手段とを有している。従って、排気管から排気ガスが漏れていない場合には、検知手段によって排気ガスが漏れていないと判断された後に再生処理手段による再生処理が行われることになるので、パティキュレートフィルタの再生処理を適切に行うことができる。
【0021】
一方、排気管から排気ガスが漏れている場合には、検知手段によって排気ガスの漏れが検知され、制御手段が検出手段の検知結果に応じて再生処理手段による再生処理を実行させないように制御するので、排気管の中へ噴出される未燃燃料や排気ガスの流量が減少し、排気管のうち未燃燃料を含む排気ガスが漏洩した部分から白煙や異臭等が発生することを抑えることができる。また、排気管内を流通する排気ガスの温度上昇と排気管の内圧が抑制されるので、未燃燃料を含む排気ガスがエンジンや油圧ポンプ等の機器に飛散することを抑えることができ、これらの機器に与える損傷を軽減することができる。このように、再生処理手段によるパティキュレートフィルタの再生処理において排気管から排気ガスが漏れた場合に迅速に対応することができ、パティキュレートフィルタの再生処理における安全性及び信頼性を従来よりも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る排気浄化装置の一実施形態が備えられる建設機械の一例として挙げた油圧ショベルを示す側面図である。
【図2】図1に示す油圧ショベルに備えられる旋回体内の構造を説明する図である。
【図3】本実施形態の構成を示す図である。
【図4】図2に示す排気管にカバーを取り付けた状態を示す図である。
【図5】図1に示す油圧ショベルに備えられるキャブ内の状況を示す図である。
【図6】本実施形態の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る建設機械の排気浄化装置を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0024】
本発明に係る建設機械の排気浄化装置の一実施形態は、例えば図1に示すように油圧ショベル1に設けられる。この油圧ショベル1は、走行体2と、この走行体2の上側に配置され、旋回フレーム3aを有する旋回体3と、この旋回体3の前方に取り付けられて上下方向に回動するフロント作業機4とを備えている。また、旋回体3は、前方にキャブ7を備え、後方にカウンタウェイト6を備え、また、これらキャブ7及びカウンタウェイト6の間にエンジンルーム5と、このエンジンルーム5の上部に設けられた車体カバー15とを備えている。なお、この車体カバー15には、後述の尾管10が挿通される図示しない貫通孔が設けられており、キャブ7内には、図5に示すように作業者が着座する座席シート24と、この座席シート24に着座した作業者がフロント作業機4を操作する図示しない操作レバーとが設けられている。
【0025】
さらに、旋回体3は、図2、図3に示すようにエンジンルーム5内に配設されたエンジン5aと、このエンジン5aに隣接するように設けられた油圧ポンプ11と、エンジン5aを挟んで油圧ポンプ11と反対側に設けられ、エンジン5a及び油圧ポンプ11等の熱源と図示しない熱交換器とを区画する仕切板25と、この仕切板25にシュラウド27を介して取り付けられ、エンジン5aの駆動力によって回転するファン20と、油圧ポンプ11の上方に配置され、エンジン5aから排出される排気ガス中に含まれるパティキュレートマターを処理する後処理装置12と、キャブ7内の操作レバーの操作に応じて油圧ポンプ11から吐出される圧油の流れを制御する図示しない制御弁とを有している。また、旋回体3は、後処理装置12に接続され、車体カバー15の貫通孔に挿通された上述の尾管10と、エンジン5aから排出される排気ガスを後処理装置12へ導く排気管18と、後処理装置12の内部に配設され、パティキュレートマターを捕集する図示しないパティキュレートフィルタと、このパティキュレートフィルタによって捕集されたパティキュレートマターを燃焼して除去する再生処理を行う再生処理手段8とを有している。
【0026】
具体的には、エンジン5aには、排出された排気ガスが流通する複数のシリンダから構成され、これらの各シリンダを流通する排気ガスを一つの管路に合流させる排気マニホールド16と、エンジン5aの熱効率を高めるターボチャージャ15とが設けられている。そして、上記排気管18の一端は、このターボチャージャ15を介して接続され、例えば図示されないが排気管18のフランジとターボチャージャ15のフランジとの間にガスケットを挟み込み、各フランジをボルト等で締め付けることによって接続されている。エンジン5aから排出される排気ガスは、排気マニホールド16で一つの管路にまとめられてターボチャージャ15の内部に流入して排気管18に排出されるようになっている。
【0027】
同様に、排気管18の他端は、後処理装置12に接続され、例えば図示されないが排気管18のフランジと後処理装置12のフランジとの間にガスケットを挟み込み、各フランジをボルト等で締め付けることによって接続されている。排気管18から導かれた排気ガスは、後処理装置12で処理された後に尾管15から旋回体3の外部へ排出されるようになっている。なお、油圧ポンプ11とエンジン5aとの間には、逆L字型のブラケット14が取り付けられており、後処理装置12は、Uボルト13a,13bによってブラケット14の上部に固定されている。
【0028】
本実施形態は、図3に示すように排気管18に導かれる排気ガスの漏れを検知する検知手段と、この検知手段が排気ガスの漏れを検知しなかった場合には再生処理手段8によるパティキュレートフィルタの再生処理を実行させ、検知手段が排気ガスの漏れを検知した場合には再生処理手段8によるパティキュレートフィルタの再生処理を実行させないように制御する制御手段9とを有している。上述の検知手段は、例えば排気管18を流通する排気ガスの圧力を測定する圧力センサ17から成っている。
【0029】
ここで、排気管18から排気ガスが漏れている場合には、排気ガスが漏れていない正常な状態のときに比べて排気管18内の圧力が小さくなる。従って、圧力センサ17は、例えばパティキュレートフィルタの再生処理において排気管18内の圧力を測定した測定値が正常な状態のときの所定の圧力値よりも小さくなった場合に、排気ガスの漏れを示す信号を制御手段9へ送信するようになっている。従って、制御手段9は、当該信号の受信の有無に応じて再生処理手段8によるパティキュレートフィルタの再生処理を実行させるかどうかを判断するようになっている。なお、本実施形態では、再生処理手段8は制御手段9に含まれており、キャブ7内には、例えば作業者が手動で再生処理手段8にパティキュレートフィルタの再生処理を始動させる手動スイッチ26が設けられている。
【0030】
本実施形態では、制御手段9は、再生処理手段8によるパティキュレートフィルタの再生処理が行われているときに、圧力センサ17が排気ガスの漏れを検知した場合には再生処理手段8による再生処理を中断させる再生処理中断手段9aを含んでいる。また、旋回体3は、図4に示すように排気管18の周囲を覆い、排気管18の周辺部を保護する保護カバー19を有している。特に、排気管18と後処理装置12との接続部分、及び排気管18とターボチャージャ15との接続部分は排気ガスが他の部分よりも漏れる可能性が高いので、保護カバー19はこれらの接続部分まで覆うように設けられている。
【0031】
さらに、キャブ7内には、圧力センサ17が排気ガスの漏れを検知した場合に、排気ガスが漏れていることを乗車している作業者へ知らせる報知手段が設けられている。具体的にこの報知手段は、例えば図3、図5に示すように作業者の前方の図示しないフロントガラスを支持する支柱7bに設置され、点灯することによって作業者に注意を喚起する警告灯21と、作業者の後方の壁7aに設置され、キャブ7内の作業者が操作レバーによってフロント作業機4を操作しているときでも聞こえるように設定されたブザー22とから成っている。
【0032】
また、圧力センサ17は、上述したように排気ガスの漏れを示す信号を制御手段9へ送信するときに当該信号を警告灯21とブザー22にも送信するように設定されており、これら警告灯21とブザー22が圧力センサ17から当該信号を受信したときに、警告灯21が点灯し始め、ブザー22も鳴り始めるようになっている。そして、警告灯21は点灯し始めてから一定時間の間、点灯し続け、同様にブザー22も鳴り始めてから一定時間の間、鳴り続けるようになっている。
【0033】
次に、本実施の形態における再生処理を行う場合の動作を図6のフローチャートに基づいて説明する。
【0034】
図6に示すように、まず作業者は、油圧ショベル1のキャブ7に乗車して掘削等の作業を行っている場合には、キャブ7内の操作レバーを操作して作業を停止する(S1)。そして、作業者がキャブ7内の手動スイッチ26を押して再生処理手段8にパティキュレートフィルタの再生処理を始動させる(S2)。S2において再生処理手段8がパティキュレートフィルタの再生処理を始動すると、エンジン5aから後処理装置12へ副噴射(パイロット噴射、ポスト噴射)が行われるので、エンジン5aから排気管18の中へHCやCO等の未燃燃料を含む排気ガスが噴出される(S3)。
【0035】
このとき、圧力センサ17が排気管18内の圧力を測定しており(S4)、測定された測定値が排気ガスの漏れがない正常な状態のときの所定の圧力値よりも小さくなった場合には(S5)、圧力センサ17が排気ガスの漏れを示す信号を制御装置9へ送信すると共に、当該信号をキャブ7の警告灯21とブザー22へ送信する。そして、制御手段9が圧力センサ17から当該信号を受信すると、制御手段9は、再生処理手段8によるパティキュレートフィルタの再生処理を実行しないように制御するので、再生処理手段8によってパティキュレートフィルタの再生処理が行われない(S7)。また、警告灯21とブザー22が当該信号を受信すると、図5に示すように警告灯21が点灯すると共にブザー22が鳴るので、キャブ7内の作業者は排気管18から排気ガスが漏れていることを確認できる。そして、警告灯21及びブザー22により排気ガスの漏れを確認した後、安全を確認した上でキャブ7から降車して排気ガスの漏出箇所のメンテナンスを行う。
【0036】
一方、S5において測定された測定値が排気ガスの漏れがない正常な状態のときの所定の圧力値にある場合には、制御手段9は、再生処理手段8によるパティキュレートフィルタの再生処理を実行するように制御するので、再生処理手段8がパティキュレートフィルタの再生処理を開始する(S6)。これにより、後処理装置12においてパティキュレートフィルタに堆積したパティキュレートマターが燃焼して除去される。
【0037】
そして、パティキュレートフィルタの再生処理が完了した場合には(S8)、一連の処理を終了する。一方、パティキュレートフィルタの再生処理が完了していない場合には(S8)、圧力センサ17は、パティキュレートフィルタの再生処理中も排気管18内の圧力を測定しているので(S4)、測定された測定値が排気ガスの漏れがない正常な状態のときの所定の圧力値にある場合には(S5)、再生処理手段8がパティキュレートフィルタの再生処理を継続する(S6)。
【0038】
S5においてパティキュレートフィルタの再生処理中に圧力センサ17によって測定された測定値が排気ガスの漏れがない正常な状態のときの所定の圧力値よりも小さくなった場合には(S5)、圧力センサ17が排気ガスの漏れを示す信号を制御装置9へ送信すると共に、当該信号をキャブ7の警告灯21とブザー22へ送信する。そして、制御手段9が圧力センサ17から当該信号を受信すると、制御手段9の再生処理中断手段9aが再生処理手段8による再生処理を中断させるので、パティキュレートフィルタの再生処理が中断される(S7)。この場合も、上述したのと同様に警告灯21とブザー22が圧力センサ17から当該信号を受信することによって警告灯21が点灯すると共にブザー22が鳴るので、これによって排気ガスが漏れていることを確認し、安全を確認した上でキャブ7から降車して排気ガスの漏出箇所のメンテナンスを行う。
【0039】
このように構成した本実施形態によれば、S4において圧力センサ17は、排気管18内の圧力を測定し、S5において測定値が排気ガスの漏れがない正常な状態のときの所定の圧力値よりも小さいことを検知することにより、排気管18から排気ガスが漏れていることを知ることができる。そして、制御手段9は、S5において圧力センサ17から排気ガスの漏れを示す信号を受信しなかった場合に再生処理手段8によるパティキュレートフィルタの再生処理を実行させるように制御することにより、排気ガスが漏れていないことが判断された後にS6においてパティキュレートフィルタの再生処理を開始したり、あるいは継続することができる。これにより、パティキュレートフィルタの再生処理を適切に行うことができる。
【0040】
一方、制御手段は、S5において圧力センサ17から排気ガスの漏れを示す信号を受信した場合に再生処理手段8によるパティキュレートフィルタの再生処理を実行させないように制御することにより、パティキュレートフィルタの再生処理に伴うエンジン5aの副噴射が行われないので、排気管18の中へ噴出される未燃燃料や排気ガスの流量が減少し、排気管18のうち未燃燃料を含む排気ガスが漏洩した部分から白煙や異臭等が発生することを抑えることができる。さらに、エンジン5aから排気管18の中へ副噴射が行われないことによって排気管18内を流通する排気ガスの温度上昇と排気管18内の圧力が抑制されるので、排気管18のうち未燃燃料を含む排気ガスが漏洩した部分から排気ガスがエンジン5aや油圧ポンプ11等の機器に飛散することを抑え、これらの機器に与える損傷を軽減することができる。このように、再生処理手段8によるパティキュレートフィルタの再生処理において排気管18から排気ガスが漏れた場合に迅速に対応することができ、パティキュレートフィルタの再生処理における安全性及び信頼性を向上させることができる。
【0041】
また、本実施形態は、S7において制御手段9の再生処理中断手段9aは、パティキュレートフィルタの再生処理中に圧力センサ17が排気ガスの漏れを検知した場合には再生処理手段8による再生処理を中断させることにより、現在行われているパティキュレートフィルタの再生処理が早期に中断されるので、排気管18から漏れた未燃燃料を含む排気ガスが旋回体3内で拡散することを食い止めることができ、排気ガスの漏れによる影響が拡大することを防止することができる。
【0042】
また、本実施形態は、図4に示すように排気管18の周辺部を保護する保護カバー19が排気管18の周囲を覆うように設けられているので、再生処理手段8によるパティキュレートフィルタの再生処理が行われているときに、排気管18から未燃燃料を含む排気ガスが漏れて飛散した場合であっても、飛散した未燃燃料は保護カバー19の内面に付着すると共に、排気管18から漏れた排気ガスは保護カバー19によって拡散することが抑制されるので、旋回体3内に備えられたエンジン5aや油圧ポンプ11等の機器を漏洩した未燃燃料を含む排気ガスから十分に保護することができる。これにより、エンジン5aや油圧ポンプ11等の機器が重大な損傷を受けることを回避することができる。
【0043】
また、本実施形態は、S4において圧力センサ17が排気管18を流通する排気ガスの圧力を測定することにより、排気管18を流通する排気ガスが漏れた場合には、S5において圧力センサ17によって測定される測定値が、上述したように排気管18から排気ガスが漏れていない正常な状態における排気管18内の圧力値と比較して小さくなるので、排気管18から排気ガスが漏れていることを容易かつ正確に検出することができる。これにより、制御手段9が、排気ガスの漏れに応じて再生処理手段8の実行を精度良く制御することができる。
【0044】
また、本実施形態は、S5において圧力センサ17から排気ガスの漏れを示す信号を受信したときに動作する警告灯21とブザー22がキャブ7内に設けられているので、排気管18を流通する排気ガスが漏れた場合には、キャブ7内の作業者が排気管18から排気ガスが漏れていることを確実に知ることができる。そして、これらの警告灯21とブザー22は、当該信号を受信してから一定時間の間、動作し続けるので、作業者は、再生処理手段8によるパティキュレートフィルタの再生処理が完全に停止するまでキャブ7内の座席シート24に着座し、旋回体3の周囲を見渡してからキャブ7の外へ降車することができる。これにより、作業者の安全を確保することができる。
【0045】
また、S5において排気管18から排気ガスが漏れていた場合には、排気管18を新しいものに交換する等のメンテナンス作業を行うことにより、作業者は、キャブ7内に乗車して警告灯21とブザー22が動作していないことを確認し、再生処理手段8によるパティキュレートフィルタの再生処理を行うことができると判断した場合には、手動スイッチ26を押すことによってパティキュレートフィルタの再生処理を手動で再開させることができる。このように、キャブ7内の作業者が警告灯21とブザー22によってパティキュレートフィルタの再生処理に対して適切な判断を行うことができる。
【0046】
なお、上述した本実施形態は、報知手段として警告灯21とブザー22の両方がキャブ7内に設けられた場合について説明したが、これらの警告灯21及びブザー22のうちいずれか一方を用いても良いし、これら警告灯21及びブザー22以外の手段で排気ガスが漏れていることを作業者に知らせても良い。
【0047】
また、本実施形態は、S2においてキャブ7内に乗車した作業者が手動スイッチ26を押すことによって手動で再生処理手段8にパティキュレートフィルタの再生処理を始動させた場合について説明したが、この場合に限らず、例えばパティキュレートフィルタに一定量のパティキュレートマターが堆積したことを検出する堆積量取得手段を備え、この堆積量取得手段からの信号によって制御手段9が自動で再生処理手段8にパティキュレートフィルタの再生処理を始動させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 走行体
3 旋回体
4 フロント作業機
5 エンジンルーム
5a エンジン
7 キャブ
7a 壁
7b 支柱
8 再生処理手段
9 制御手段
10 尾管
11 油圧ポンプ
12 後処理装置
13a,13b Uボルト
14 ブラケット
15 ターボチャージャ
16 排気マニホールド
17 圧力センサ(検知手段)
18 排気管
19 保護カバー
21 警告灯(報知手段)
22 ブザー(報知手段)
24 座席シート
26 手動スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回体に設けられたキャブと、前記旋回体に設けられたエンジンとを有する建設機械に備えられ、
前記エンジンから排出される排気ガス中に含まれるパティキュレートマターを処理する後処理装置と、前記エンジンから排出される排気ガスを前記後処理装置へ導く排気管と、前記後処理装置に設けられ、前記パティキュレートマターを捕集するパティキュレートフィルタと、このパティキュレートフィルタによって捕集された前記パティキュレートマターを燃焼して除去する再生処理を行う再生処理手段とを有する建設機械の排気浄化装置において、
前記排気管に導かれる排気ガスの漏れを検知する検知手段と、この検知手段が排気ガスの漏れを検知しなかった場合には前記再生処理手段による再生処理を実行させ、前記検知手段が排気ガスの漏れを検知した場合には前記再生処理手段による再生処理を実行させないように制御する制御手段とを有することを特徴とする建設機械の排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の排気浄化装置において、
前記制御手段は、前記再生処理手段による再生処理が行われているときに、前記検知手段が排気ガスの漏れを検知した場合には前記再生処理手段による再生処理を中断させる再生処理中断手段を含むことを特徴とする建設機械の排気浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の建設機械の排気浄化装置において、
前記排気管の周囲を覆い、前記排気管の周辺部を保護する保護カバーを設けたことを特徴とする建設機械の排気浄化装置。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械の排気浄化装置において、
前記検知手段は、前記排気管を流通する排気ガスの圧力を測定する圧力センサから成ることを特徴とする建設機械の排気浄化装置。
【請求項5】
請求項1に記載の建設機械の排気浄化装置において、
前記検知手段が排気ガスの漏れを検知した場合に、排気ガスが漏れていることを前記キャブ内の作業者へ知らせる報知手段を有することを特徴とする建設機械の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−117462(P2012−117462A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268406(P2010−268406)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】