説明

建設機械の油圧回路

【課題】ブーム操作のうち特にブーム上げ操作を行ったときに、3つの系統回路にそれぞれ圧油を供給する第1〜第3ポンプを効率良く使用し、結果としてブーム上げ速度を速めることができる建設機械の油圧回路を提供すること。
【解決手段】スプリットポンプ51の吐出口51aから圧油が供給される第1系統回路、スプリットポンプ51の吐出口51bから圧油が供給される第2系統回路、および第3ポンプ53から圧油が供給される第3系統回路を備える油圧回路1である。油圧回路1は、ブーム上げ操作が行われているときに、スプリットポンプ51の2つの吐出口51a・51b、および第3ポンプ53からブーム用油圧シリンダ57に圧油が供給されるように回路構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3つの系統回路を有する建設機械の油圧回路に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の油圧回路としては、例えば特許文献1に記載されたものがある。特許文献1に記載された油圧回路(例えば図1)によると、ブーム単独操作が行われたとき、第1ポンプ(22)と第3ポンプ(24)とからブームシリンダ(10)に圧油が供給され、第2ポンプ(23)からの圧油は使用されずにタンクに戻されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−190330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この場合、第1ポンプ(22)の負荷と第2ポンプ(23)の負荷との差が大きくなり、第2ポンプ(23)の有する効率の良い吐出量範囲が使用されない結果となる。一方、ブームを具備してなる建設機械においては、一般に、ブーム上げ速度を速めることで作業性の向上が期待できる。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ブーム操作のうち特にブーム上げ操作を行ったときに、3つの系統回路にそれぞれ圧油を供給する第1〜第3ポンプを効率良く使用し、結果としてブーム上げ速度を速めることができる建設機械の油圧回路を提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、第1ポンプに接続される第1アンロード通路と、前記第1アンロード通路に接続され、ブーム用アクチュエータに圧油を給排するブーム用方向切換弁と、を有する第1系統回路と、第2ポンプに接続される第2アンロード通路と、前記第2アンロード通路に接続され、アーム用アクチュエータに圧油を給排するアーム用方向切換弁と、を有する第2系統回路と、第3ポンプに接続される第3アンロード通路と、前記第3アンロード通路に接続され、旋回用アクチュエータに圧油を給排する旋回用方向切換弁と、を有する第3系統回路と、を備える建設機械の油圧回路において、ブーム上げ操作が行われているときに、前記第1ポンプ、前記第2ポンプ、および前記第3ポンプから前記ブーム用アクチュエータに圧油が供給されることを特徴とする、建設機械の油圧回路を提供する。
【0007】
この構成によると、第1ポンプ、第2ポンプ、および第3ポンプの相互間の負荷の差を小さくすることができ、その結果、第1ポンプ、第2ポンプ、および第3ポンプをいずれも効率良く使用することができる。また、3つのポンプからの圧油でブームを上げるのでブーム上げ速度も速くなる。
【0008】
また本発明において、ブーム上げ操作および旋回操作がいずれも行われているときに、前記第1ポンプ、前記第2ポンプ、および前記第3ポンプから前記ブーム用アクチュエータに圧油が供給されることが好ましい。
【0009】
この構成によると、旋回速度に比べてブーム上げ速度を格段に速めることができる。
【0010】
さらに本発明において、前記第2系統回路に設けられ、前記第2アンロード通路に接続され、前記ブーム用アクチュエータに圧油を給排するブーム用第2方向切換弁と、前記旋回用方向切換弁の上流側の前記第3アンロード通路から分岐する合流用通路に接続され、前記第3ポンプを前記第1系統回路に接続する合流弁と、を有し、前記合流弁は、ブーム上げ操作が行われることで、前記合流用通路を前記ブーム用方向切換弁に接続するとともに、前記旋回用方向切換弁の下流側の前記第3アンロード通路をタンクに接続する第1合流位置となり、ブーム上げ操作および旋回操作がいずれも行われたとき、前記合流弁が前記第1合流位置となって、前記第1ポンプ、および前記第3ポンプから前記ブーム用方向切換弁を介して前記ブーム用アクチュエータに圧油が供給されるとともに、前記第2ポンプから前記ブーム用第2方向切換弁を介して前記ブーム用アクチュエータに圧油が供給されることが好ましい。
【0011】
この構成によると、ブーム上げ操作が行われたときに、旋回操作が行われていることを条件として第1ポンプ、第2ポンプ、および第3ポンプからブーム用アクチュエータに圧油が供給される。すなわち、旋回操作が行われているときはより多くの圧油がブーム用アクチュエータに供給され、ブーム上げ速度が速くなる。
【0012】
さらに本発明において、前記第1系統回路に設けられ、前記第1アンロード通路に接続され、前記アーム用アクチュエータに圧油を給排するアーム用第2方向切換弁を有し、アーム操作およびブーム下げ操作がいずれも行われているときに、前記第2ポンプから前記アーム用方向切換弁を介して前記アーム用アクチュエータに圧油が供給されるとともに、前記第1ポンプから前記ブーム用方向切換弁を介して前記ブーム用アクチュエータに圧油が供給され、且つ、前記第1ポンプから前記アーム用第2方向切換弁を介して前記アーム用アクチュエータに圧油が供給されることが好ましい。
【0013】
この構成によると、第1ポンプからの圧油をアーム用アクチュエータにも供給することで、アーム操作とブーム下げ操作とのみを同時操作する場合は、それぞれの操作量に応じて第1ポンプおよび第2ポンプの流量を配分でき、エネルギーロスを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る油圧回路を示す回路図である。
【図2】図1のA部拡大図である。
【図3】図1のB部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。なお、油圧ショベルの油圧回路としての実施形態を以下に示している。図示を省略するが、油圧ショベルは、走行装置、旋回体、旋回体に取り付けられたブーム、ブームの先端部に取り付けられたアーム、およびアームの先端部に取り付けられたバケットなどから構成される。
【0016】
図1の回路図中に示すように、油圧ショベルは、圧油の吐出流量を制御するレギュレータ52付きのスプリットポンプ51、第3ポンプ53、パイロットポンプ54、タンク55・59、バケット用油圧シリンダ56、ブーム用油圧シリンダ57、アーム用油圧シリンダ58、ドーザ用油圧シリンダ60、旋回用アクチュエータ61、ブームスイング用油圧シリンダ62、走行用油圧モータ(不図示)などを付属機器として備えている。そして、これら油圧シリンダ(56〜58、60、62)・走行用油圧モータなどのアクチュエータ、ポンプ(51、53、54)に対して油圧回路1が組まれている。なお、ポンプ(51、53、54)はエンジンで駆動される。
【0017】
スプリットポンプ51は、可変容量型の1シリンダ2ポート吐出のポンプであり、2つの吐出口51a、51bから同一流量の圧油を吐出する。スプリットポンプ51は、本発明における第1ポンプと第2ポンプとを合わせたものに相当する。吐出口51a側が第1ポンプに相当し、吐出口51b側が第2ポンプに相当する。なお、1シリンダ1ポート吐出のポンプを2台用意して、それぞれ、第1ポンプ、第2ポンプとしてもよい。
【0018】
(油圧回路の構成)
図1〜3に示すように、油圧回路1は、第1〜第3系統回路を有する。第1系統回路は、スプリットポンプ51の吐出口51aから圧油が供給される系統である。第2系統回路は、スプリットポンプ51の吐出口51bから圧油が供給される系統である。また、第3系統回路は、第3ポンプ53から圧油が供給される系統である。
【0019】
(第1系統回路)
第1系統回路は、スプリットポンプ51の一方の吐出口51aに接続された第1アンロード通路12と、第1アンロード通路12に直列接続された4つの方向切換弁4w〜4zと、方向切換弁4w〜4zの中で最下流に位置する方向切換弁4zの下流側に配置された第1補助アンロード弁7とを備えている。第1アンロード通路12はタンク55に連通している。方向切換弁4w〜4zはセンターバイパス型であってかつ油圧パイロット型の方向切換弁である。また、方向切換弁4w〜4zに対して、それぞれセンターバイパス型のサブバルブ17w〜17zが一体的に設けられている。
【0020】
ここで、方向切換弁4wは、走行用油圧モータに圧油を給排するする走行用方向切換弁であり、方向切換弁4xは、ブーム用油圧シリンダ57に圧油を給排するブーム用方向切換弁であり、方向切換弁4yは、バケット用油圧シリンダ56に圧油を給排するバケット用方向切換弁であり、方向切換弁4zは、アーム用油圧シリンダ58に圧油を給排するアーム用第2方向切換弁である。
【0021】
(第2系統回路)
第2系統回路は、スプリットポンプ51の他方の吐出口51bに接続された第2アンロード通路13と、第2アンロード通路13に直列接続された3つの方向切換弁5w〜5yと、方向切換弁5w〜5yの中で最下流に位置する方向切換弁5yの下流側に配置された第2補助アンロード弁8とを備えている。第2アンロード通路13はタンク55に連通している。方向切換弁5w〜5yはセンターバイパス型であってかつ油圧パイロット型の方向切換弁である。また、方向切換弁5w〜5yに対して、それぞれセンターバイパス型のサブバルブ18w〜18yが一体的に設けられている。
【0022】
ここで、方向切換弁5wは、走行用油圧モータに圧油を給排するする走行用方向切換弁であり、方向切換弁5xは、ブーム用油圧シリンダ57のシリンダ室57aに圧油を供給するブーム用第2方向切換弁であり、方向切換弁5yは、アーム用油圧シリンダ58に圧油を給排するアーム用方向切換弁である。
【0023】
なお、ブーム用油圧シリンダ57のシリンダ室57aに圧油が供給されることでブームが上がり(ブーム上げ)、ブーム用油圧シリンダ57のシリンダ室57bに圧油が供給されることでブームは下がる(ブーム下げ)。
【0024】
(第3系統回路)
第3系統回路は、第3ポンプ53に接続された第3アンロード通路29と、第3アンロード通路29に直列接続された3つの方向切換弁6w〜6yとを備えている。第3アンロード通路29は後述する合流弁9を介してタンク55に連通している。方向切換弁6w〜6yはセンターバイパス型であってかつ油圧パイロット型の方向切換弁である。
【0025】
ここで、方向切換弁6wは、旋回用アクチュエータ61に圧油を給排する旋回用方向切換弁であり、方向切換弁6xは、ドーザ用油圧シリンダ60に圧油を給排するドーザ用方向切換弁であり、方向切換弁6yは、ブームスイング用油圧シリンダ62に圧油を給排するブームスイング用方向切換弁である。
【0026】
一方、第1パイロット通路24と、第2パイロット通路25と、第3パイロット通路26とに下流側で分岐するパイロット通路20がパイロットポンプ54に接続されている。第1パイロット通路24、第2パイロット通路25、および第3パイロット通路26は、いずれもタンク55に連通している。第1系統の4つのサブバルブ17w〜17zは、このうちの第1パイロット通路24に直列接続され、第2系統の3つのサブバルブ18w〜18yは、第2パイロット通路25に直列接続されている。サブバルブ17w〜18yは、対応する方向切換弁4w〜5yが中立位置のとき(操作されていないとき)に連通位置となり、方向切換弁4w〜5yが切換位置のとき(操作されているとき)に遮断位置となるように形成されている(サブバルブ18w〜18yについても同様)。
【0027】
また、第1系統の2つのサブバルブ17x・17y、および第2系統のサブバルブ18yは、第3パイロット通路26に直列接続されている。第1系統のサブバルブ17wおよび第2系統のサブバルブ18wは、それぞれ単独で第3パイロット通路26に接続されている。さらに、これらとは別に、後述する合流弁9の一方の室93には第3パイロット通路26が接続されている。なお、合流弁9の一方の室93の上流側であって且つ各サブバルブ(17w〜17x、18w、18y)の上流側には、第3パイロットライン絞り34が設けられている。
【0028】
[合流弁]
ここで、方向切換弁6w〜6yの中で最下流に位置する方向切換弁6yの下流側には合流弁9が配置されている。合流弁9は、第3ポンプ53からの圧油を第1系統回路および第2系統回路に供給するための3位置弁である。
【0029】
旋回用方向切換弁6wの上流側の第3アンロード通路29から合流用通路11が分岐し、この合流用通路11は合流弁9に接続している。また、方向切換弁6yの下流側の第3アンロード通路29も合流弁9に接続している。
【0030】
合流弁9と第1系統回路との間は第1系統合流用通路33で接続され、合流弁9と第2系統回路との間は第2系統合流用通路35で接続されている。第1系統合流用通路33は、ブーム用方向切換弁4x、バケット用方向切換弁4y、およびアーム用第2方向切換弁4zに接続している。また、第2系統合流用通路35は、ブーム用第2方向切換弁5xに接続している。
【0031】
合流弁9は、方向切換弁6yの下流側の第3アンロード通路29をタンク55に接続する非合流位置9aと、合流用通路11を第1系統回路に接続するとともに、方向切換弁6yの下流側の第3アンロード通路29をタンク55に接続する第1合流位置9bと、方向切換弁6yの下流側の第3アンロード通路29および合流用通路11を第1系統回路および第2系統回路に接続する第2合流位置9cと、を有する。
【0032】
合流弁9の一方の室93には、第3パイロットライン絞り34の下流側のパイロット圧が入力され、室93と同じ側に形成された室92にはブーム上げ用のパイロット圧が入力されている。合流弁9の他方の室にはバネ91(付勢手段)が配置されている。また、合流弁9の他方の室には、合流弁9が非合流位置9a、第1合流位置9bのときに、方向切換弁6yの下流側の第3アンロード通路29の圧が入力されている。
【0033】
合流弁9の一方の室92にブーム上げ用のパイロット圧が入力されると、合流弁9は第1合流位置9bとなる。また、方向切換弁4x・4y・5yに連動してサブバルブ17x・17y・18yのいずれかが遮断位置になり、方向切換弁4wに連動してサブバルブ17wが遮断位置になり、且つ方向切換弁5wに連動してサブバルブ18wが遮断位置になるとパイロットポンプ54からのパイロット圧が一方の室93に導入されて、合流弁9は第2合流位置9cとなる。
【0034】
また、合流弁9が第1合流位置9bにあるときの合流用通路11と第1系統合流用通路33との間の通路に絞り94が設けられ、第2合流位置9cにあるときの合流用通路11と第1系統合流用通路33との間の通路に絞り95が設けられている。
【0035】
[補助アンロード弁]
前記した第1補助アンロード弁7は、方向切換弁4zの下流側の油圧である第1ネガコン圧および第1パイロット通路24からのパイロット圧が入力され、第1系統のすべての方向切換弁4w〜4zが操作されていないときに当該第1ネガコン圧に替わって当該パイロットポンプ圧を第1アンロード弁2および低圧選択弁10に出力するように構成された弁である(第2補助アンロード弁8についても同様)。
【0036】
[低圧選択弁]
低圧選択弁10は、第1補助アンロード弁の出力圧(第1ネガコン圧または第1パイロット通路24からのパイロット圧)および第2補助アンロード弁の出力圧(第2ネガコン圧(方向切換弁5yの下流側の油圧)または第2パイロット通路25からのパイロット圧)のうちの低い方の油圧を第3ネガコン圧としてレギュレータ52および第1アンロード弁2に出力するように構成された弁である。
【0037】
[アンロード弁]
また、第1アンロード弁2は、第1補助アンロード弁7の出力圧および低圧選択弁10からの第3ネガコン圧に応じてスプリットポンプ51からの油をタンク59へ排出するように構成された弁である(第2アンロード弁3についても同様)。
【0038】
(油圧ショベルの作動)
(ブーム上げ+旋回操作)
まず、ブーム上げ操作と旋回操作とが同時に行われているときの作動について説明する。なお、以下の説明では、旋回操作に先行してブーム上げ操作が行われたときの作動について説明するが、ブーム上げ操作に先行して旋回操作が行われてもよいし、ブーム上げ操作と旋回操作とが同時に開始されてもよい。
【0039】
ブーム上げ操作により、ブーム用方向切換弁4xのパイロット室4xaにパイロット圧が導入されるとともに、ブーム用第2方向切換弁5xのパイロット室5xaにパイロット圧が導入され、且つ合流弁9のパイロット室92にもパイロット圧が導入される。
【0040】
これにより、スプリットポンプ51の吐出口51a(第1ポンプ)からブーム用方向切換弁4xを介してブーム用油圧シリンダ57のシリンダ室57aに圧油が供給されるとともに、スプリットポンプ51の吐出口51b(第2ポンプ)からブーム用第2方向切換弁5xを介してブーム用油圧シリンダ57のシリンダ室57aに圧油が供給される。
【0041】
このとき、合流弁9は非合流位置9aから第1合流位置9bに切り換わっている。まだ、旋回操作が行われていないため、第3ポンプ53の吐出油は、旋回用方向切換弁6wの下流側の第3アンロード通路29から合流弁9を経由してタンク55へ流出する。そのため、第3アンロード通路29から分岐する合流用通路11の圧が上昇せず、第1系統合流用通路33へ油は流れない。
【0042】
少し遅れて旋回操作が行われ、旋回用方向切換弁6wのパイロット室6waにパイロット圧が導入されると、旋回用方向切換弁6wが動作する(切り換わる)ことで、旋回用方向切換弁6wの上流側の第3アンロード通路29の圧が上昇し合流用通路11に油が流れる。これにより、第3ポンプ53から第1系統合流用通路33に油が流れ、ブーム用方向切換弁4xを介してブーム用油圧シリンダ57のシリンダ室57aに圧油が供給される。その結果、スプリットポンプ51の吐出口51a、吐出口51b、および第3ポンプ53のいずれもからブーム用油圧シリンダ57のシリンダ室57aに圧油が供給される。
【0043】
[効果]
ブーム上げ操作時、スプリットポンプ51の吐出口51a、吐出口51b、および第3ポンプのいずれもからブーム用油圧シリンダ57に圧油が供給されるので、スプリットポンプ51の吐出口51a(第1ポンプ)、吐出口51b(第2ポンプ)、および第3ポンプの相互間の負荷の差を小さくすることができ、その結果、第1ポンプ、第2ポンプ、および第3ポンプをいずれも効率良く使用することができる。
【0044】
特に、スプリットポンプ51の場合は、2つの吐出口51a、51bからの油吐出量が同じなので、第2系統の吐出口51b(第2ポンプ)から使用されずにタンク55に戻る余剰流量を減少させることができることで、エネルギーロスを低減することができる。
【0045】
また、3つのポンプからの圧油でブームを上げるのでブーム上げ速度が飛躍的に速くなる。例えば油圧ショベルにおいて、ブーム上げ操作は、掘削作業とは異なりバケット内の土砂を持ち上げるだけなので大きな負荷はかからない。また、バケット内の土砂を積み降ろしする前作業では地面よりも上方をバケットが移動する動きとなるので、作業員の視認性がよく素早いブーム駆動が要求される。こうした前作業においてブーム上げ速度が飛躍的に速まることで作業性が向上する。さらには、掘削から土砂排出までの一回あたりの作業時間が短縮することでエンジンの燃費も向上する。
【0046】
また、上記した例のように、ブーム上げ操作と旋回操作とが同時に行われた場合、旋回速度に比べてブーム上げ速度が格段に速まる。旋回用アクチュエータ61には1つのポンプからの圧油供給となるが、ブーム用油圧シリンダ57には3つのポンプからの圧油供給となるからである。具体的には、例えばトラックへの土砂積み作業において、旋回体が最大加速減速で約45度旋回する間に、地面高さからトラック荷台高さまでバケットを上げることができる。
【0047】
ここで、ブーム上げ操作が行われたときに、旋回操作が行われていることを条件として3つのポンプからブーム用油圧シリンダ57に圧油が供給される。すなわち、旋回操作が行われているときはより多くの圧油がブーム用油圧シリンダ57に供給され、ブーム上げ速度が速くなる。
【0048】
(アーム操作+ブーム下げ)
次に、アーム操作とブーム下げ操作とを同時に行う(同時操作する)ときの作動について説明する。
【0049】
アーム操作とブーム下げ操作とを同時に行うと、アーム用方向切換弁5yの例えばパイロット室5yaにパイロット圧が導入されるとともに、ブーム用方向切換弁4xのパイロット室4xbにパイロット圧が導入され、且つアーム用第2方向切換弁4zのパイロット室4zaにパイロット圧が導入される。
【0050】
これにより、スプリットポンプ51の吐出口51b(第2ポンプ)からアーム用方向切換弁5yを介してアーム用油圧シリンダ58に圧油が供給されるとともに、スプリットポンプ51の吐出口51a(第1ポンプ)からブーム用方向切換弁4xを介してブーム用油圧シリンダ57のシリンダ室57bに圧油が供給され、且つスプリットポンプ51の吐出口51a(第1ポンプ)からアーム用第2方向切換弁4zを介してアーム用油圧シリンダ58に圧油が供給される。
【0051】
[効果]
第1ポンプからの圧油をブーム用油圧シリンダ57のみに供給するのではなく、アーム用油圧シリンダ58にも供給することで、アーム操作とブーム下げ操作とのみを同時操作する場合(第1系統回路および第2系統回路に接続されたアクチュエータのうち操作されているのがアームとブームのみの場合)は、それぞれの操作量に応じて第1ポンプおよび第2ポンプの流量を配分でき、エネルギーロスを低減することができる。また、その結果、エンジンの燃費が向上する。特にスプリットポンプ51の場合は、第1ポンプの負荷と第2ポンプの負荷との差を減少させて使用できるのでエネルギーロスが少なく有利である。
【0052】
また、例えば、掘削・土砂の積み降ろし・水平ならしのいずれの作業においても、アーム操作量に対するブーム操作量は僅かであり、従来は、第1系統の圧油の大半を余剰としてタンク55へ流出させていた(従来は、第2ポンプおよび第3ポンプ53からアーム用油圧シリンダ58へ圧油を供給していた)。本実施形態の油圧回路1によると、アーム操作とブーム下げ操作とを同時に行うときは、第1ポンプの余剰分をアーム用油圧シリンダ58に供給することで、第3ポンプ53の負荷を低減することができる。結果として、エンジン出力をスプリットポンプ51(第1ポンプおよび第2ポンプ)に多く配分することができる。
【0053】
なお、例えばアーム操作のみを行う場合においても、第1ポンプおよび第2ポンプからアーム用油圧シリンダ58に圧油が供給されるので第1ポンプの負荷と第2ポンプの負荷との差を減少させることができる。
【0054】
(変形例)
前記した油圧回路1の変形例について記載する。合流弁9が第1合流位置9bにあるときの、方向切換弁6w〜6yの下流側の第3アンロード通路29とタンク55との間の通路(バルブ内通路)に絞りを設けることも好ましい。この絞りにより、ブーム上げ操作が行われて合流弁9が第1合流位置9bに切り換わったとき、旋回操作が行われていないときでも、第3ポンプ53からの圧油をブーム用方向切換弁4xおよびブーム用第2方向切換弁5xからブーム用油圧シリンダ57に供給することが可能となる。すなわち、第3ポンプ53からの圧油をブーム用方向切換弁4x、ブーム用第2方向切換弁5xの2つの弁から送ることができ、圧力損失を低減させることができる。
【符号の説明】
【0055】
1:油圧回路
2:第1アンロード弁
3:第2アンロード弁
4x:ブーム用方向切換弁
5y:アーム用方向切換弁
6w:旋回用方向切換弁
9:合流弁
10:低圧選択弁
12:第1アンロード通路
13:第2アンロード通路
29:第3アンロード通路
51:スプリットポンプ(第1ポンプおよび第2ポンプ)
52:レギュレータ
53:第3ポンプ
54:パイロットポンプ
55、59:タンク
56:バケット用油圧シリンダ(バケット用アクチュエータ)
57:ブーム用油圧シリンダ(ブーム用アクチュエータ)
58:アーム用油圧シリンダ(アーム用アクチュエータ)
61:旋回用アクチュエータ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ポンプに接続される第1アンロード通路と、
前記第1アンロード通路に接続され、ブーム用アクチュエータに圧油を給排するブーム用方向切換弁と、
を有する第1系統回路と、
第2ポンプに接続される第2アンロード通路と、
前記第2アンロード通路に接続され、アーム用アクチュエータに圧油を給排するアーム用方向切換弁と、
を有する第2系統回路と、
第3ポンプに接続される第3アンロード通路と、
前記第3アンロード通路に接続され、旋回用アクチュエータに圧油を給排する旋回用方向切換弁と、
を有する第3系統回路と、
を備える建設機械の油圧回路において、
ブーム上げ操作が行われているときに、前記第1ポンプ、前記第2ポンプ、および前記第3ポンプから前記ブーム用アクチュエータに圧油が供給されることを特徴とする、建設機械の油圧回路。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械の油圧回路において、
ブーム上げ操作および旋回操作がいずれも行われているときに、前記第1ポンプ、前記第2ポンプ、および前記第3ポンプから前記ブーム用アクチュエータに圧油が供給されることを特徴とする、建設機械の油圧回路。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械の油圧回路において、
前記第2系統回路に設けられ、前記第2アンロード通路に接続され、前記ブーム用アクチュエータに圧油を給排するブーム用第2方向切換弁と、
前記旋回用方向切換弁の上流側の前記第3アンロード通路から分岐する合流用通路に接続され、前記第3ポンプを前記第1系統回路に接続する合流弁と、
を有し、
前記合流弁は、ブーム上げ操作が行われることで、前記合流用通路を前記ブーム用方向切換弁に接続するとともに、前記旋回用方向切換弁の下流側の前記第3アンロード通路をタンクに接続する第1合流位置となり、
ブーム上げ操作および旋回操作がいずれも行われたとき、前記合流弁が前記第1合流位置となって、前記第1ポンプ、および前記第3ポンプから前記ブーム用方向切換弁を介して前記ブーム用アクチュエータに圧油が供給されるとともに、前記第2ポンプから前記ブーム用第2方向切換弁を介して前記ブーム用アクチュエータに圧油が供給されることを特徴とする、建設機械の油圧回路。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の建設機械の油圧回路において、
前記第1系統回路に設けられ、前記第1アンロード通路に接続され、前記アーム用アクチュエータに圧油を給排するアーム用第2方向切換弁を有し、
アーム操作およびブーム下げ操作がいずれも行われているときに、前記第2ポンプから前記アーム用方向切換弁を介して前記アーム用アクチュエータに圧油が供給されるとともに、前記第1ポンプから前記ブーム用方向切換弁を介して前記ブーム用アクチュエータに圧油が供給され、且つ、前記第1ポンプから前記アーム用第2方向切換弁を介して前記アーム用アクチュエータに圧油が供給されることを特徴とする、建設機械の油圧回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−108614(P2013−108614A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256657(P2011−256657)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【Fターム(参考)】