説明

建設機械の空調装置

【課題】外気フィルタと内気フィルタのメンテナンス作業を同時に行えるようにして、作業の簡略化を図ることができる建設機械の空調装置を提供する。
【解決手段】運転室を画成してなるキャブ内に設けた空調ユニット24を有し、該空調ユニット24の空気流入口22側を、外気フィルタ30aを介してキャブ外の空気を吸い込む外気吸込口25と内気フィルタ30bを介してキャブ15内の空気を吸い込む内気吸込口26に接続してなる建設機械の空調装置において、外気フィルタ30aと内気フィルタ30bをフィルタユニット30として一体化し、フィルタユニット30を空調ユニット24に対して着脱可能に設けた建設機械の空調装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は建設機械の空調装置に関するものであり、特に、油圧ショベル、油圧クレーン等の建設機械におけるキャブ内の空気を調和する建設機械の空調装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル、油圧クレーン等の建設機械は、下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体に俯仰動可能に設けられた作業装置とから構成され、前記上部旋回体のフレーム上にオペレータが着座する運転席を備えたキャブが設けられている。また、前記キャブには、該キャブ内に冷気または暖気からなる調和空気を吹き出して該キャブ内を好みの温度に調整する空調装置が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図5に、従来の油圧ショベルにおけるキャブの内部構造を概略的に示す。同図において、前記キャブ101の内部には、オペレータが着座して運転操作を行う着座シート102と、その着座したオペレータが運転操作するために使用する左右の操作レバー装置103,103と、前記キャブ101内に調和空気を供給する空調装置104等が設けられている。
【0004】
また、前記キャブ101の一方の側面部には、開閉可能な乗降用ドア105を取り付けてなる乗降口106と、前記空調装置104が外気を取り入れるための開口部107が設けられている。
【0005】
前記空調装置104は、前記着座シート102の後方に設けられており、エバポレータ及びヒータ(いずれも図示せず)等を内蔵してなる空調ユニット110を有している。また、該空調ユニット110には、流入口108a,108bと流出口109が設けられており、該流入口108a,108bから吸い込んだ空気を調和し、この調和空気を前記流出口109から吐出するようになっている。
【0006】
また、前記空調ユニット110の前記流入口108aには、前記キャブ101の前記開口部107を通して外気を取り入れる外気吸込口111を有する外気吸入ダクト112が接続され、前記流入口108bには、キャブ101内の空気を取り入れる内気吸込口113を有する内気吸込ダクト114が接続されている。
【0007】
一方、前記空調ユニット110の前記流出口109には、調和空気供給ダクト116が接続されている。調和空気供給ダクト116は、前記空調ユニット110の前記流出口109から吐出される調和空気を、前記キャブ内101内の所定の位置まで搬送するもので、その出口側には調和空気吹出口115を設けている。
【0008】
また、前記外気吸込ダクト112には、前記外気吸込口111から前記空調ユニット110内に吸い込まれる外気中の塵埃を除去する外気フィルタ117が取り付けられ、前記内気吸込ダクト114には、前記内気吸込口113から前記空調ユニット110内に吸い込まれる内気中の塵埃を除去する内気フィルタ118が取り付けられている。なお、前記外気フィルタ117は、前記外気吸込ダクト112の側面に設けられた開口119を通して、前記外気吸込ダクト112内に着脱可能に取り付けられ、前記内気フィルタ118は、前記内気吸込ダクト114の側面に設けられた開口120を通して、前記内気吸込ダクト114内に着脱可能に取り付けられている。
【0009】
そして、このように構成された空調装置は、前記外気吸入ダクト112から外気を、前記内気吸込ダクト114から内気をそれぞれ前記空調ユニット110内に吸い込み、該空調ユニット110内で所定の温度等に調和し、この調和された空気を前記調和空気供給ダクト116の前記調和空気吹出口115から前記キャブ101内に吹き出すことにより、該キャブ内101内の温度等をオペレータの好みに応じて調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−142663号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述したように、従来の建設機械の空調装置では、前記キャブ101外から前記空調ユニット110内に吸い込む外気中の塵埃を除去する前記外気フィルタ117と、前記キャブ101内から前記空調ユニット110内に吸い込む内気中の塵埃を除去する前記内気フィルタ118が別体に形成されていた。しかも、これら外気フィルタ117と内気フィルタ118は、互いに離れた位置に配置されている外気吸込ダクト112と内気吸込ダクト114にそれぞれ別れて、着脱可能に取り付けられている。
【0012】
ところで、これら外気フィルタ117及び内気フィルタ118は、それぞれ必要な時期に洗浄若しくは交換等のメンテナンスをする必要がある。このメンテナンスでは、両方のフィルタ117,118を同時にメンテナンスしなければ空調の機能が損なわれる虞がある。したがって、一般には、前記フィルタ117,118のメンテナンスは同時に行われている。
【0013】
しかしながら、前記フィルタ117,118のメンテナンスは、同時に行うようになってはいるが、前記外気フィルタ117と前記内気フィルタ118は互いに大きく離れた位置にそれぞれ設けられているので、個々に取り外してメンテナンスを行う必要がある。このため、メンテナンス作業が面倒であるという問題点があった。
【0014】
そこで、外気フィルタと内気フィルタのメンテナンス作業を同時に行えるようにして、作業の簡略化を図ることができるようにするために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、運転室を画成してなるキャブ内に設けた空調ユニットを有し、該空調ユニットの空気流入口側を、外気フィルタを介して前記キャブ外の空気を吸い込む外気吸込口と内気フィルタを介して前記キャブ内の空気を吸い込む内気吸込口に接続してなる建設機械の空調装置において、前記外気フィルタと前記内気フィルタをフィルタユニットとして一体化し、該フィルタユニットを前記空調ユニットに対して着脱可能に設けた建設機械の空調装置を提供する。
【0016】
この構成によれば、外気フィルタと内気フィルタをフィルタユニットとして一体化しているので、作業時、両フィルタを同時に着脱させて同時にメンテナンスを行うことができる。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、上記フィルタユニットを脱着可能に取り付けるフィルタユニット取付部を、上記キャブ内に設けてなる建設機械の空調装置を提供する。
【0018】
この構成によれば、フィルタユニットを着脱する作業を行うとき、作業者はキャブ内で作業を行うことができるので、フィルタユニットを着脱操作する際に開閉する開閉カバー等を、キャブの外側面に設ける必要がなくなる。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明は、メンテナンス作業時等に、外気フィルタと内気フィルタを同時に着脱して同時にメンテナンス作業を行うことができるので、作業工数の低減が図れ、作業性の向上が期待できる。また、一方のフィルタをメンテナンスし、他方のフィルタのメンテナンスを忘れるというようなことを防止することができるので、メンテナンス作業における信頼性の向上も期待できる。
【0020】
請求項2記載の発明は、キャブ内でフィルタユニットの着脱作業を行うことができるので、キャブ外にフィルタユニットを脱着するための開閉カバー等を設ける必要がなくなる。これにより請求項1記載の発明の効果に加えて、キャブの小型軽量化が図れる。また、フィルタへの水侵入防止対策が無くなり、デザインの簡略化も可能になるとともに、デザインの自由度も増すという効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る空調装置を適用した油圧ショベルの全体側面図である。
【図2】図1に示す油圧ショベルのキャブの一部を破断し、そのキャブの内部を拡大して示す平面図である。
【図3】同上空調装置の要部拡大平面図である。
【図4】図3に示す空調装置要部の空調ユニット及び吸込ダクト等をフィルタユニットを引き出した状態で示す概略斜視図である。
【図5】従来の油圧ショベルにおけるキャブの一部を破断し、そのキャブの内部を示す平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明は、外気フィルタと内気フィルタのメンテナンス作業を同時に行えるようにして、作業の簡略化を図るという目的を達成するために、運転室を画成してなるキャブ内に設けた空調ユニットを有し、該空調ユニットの空気流入口側を、外気フィルタを介して前記キャブ外の空気を吸い込む外気吸込口と内気フィルタを介して前記キャブ内の空気を吸い込む内気吸込口に接続してなる建設機械の空調装置において、前記外気フィルタと前記内気フィルタをフィルタユニットとして一体化し、該フィルタユニットを前記空調ユニットに対して着脱可能に設けたことにより実現した。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の建設機械の空調装置について、好適な実施例を添付図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は本発明の一実施例に係る空調装置を適用した建設機械である油圧ショベルの全体側面図である。同図において、油圧ショベル10は、下部走行体11と、該下部走行体11上に旋回可能に搭載された上部旋回体12と、該上部旋回体12に俯仰動可能に設けられた作業装置13等により構成されている。また、前記上部旋回体12の本体フレーム14上には運転室を画成するキャブ15が設けられている。
【0025】
図2は、キャブ15の内部を概略的に示す図である。同図において、前記キャブ15の内部には、オペレータが着座する着座シート16と、その着座したオペレータが運転操作するために使用する左右の操作レバー装置17,17と、前記キャブ15内に調和空気を供給する空調装置18等が設けられている。また、前記キャブ15の一方の側面部には、開閉可能な乗降用ドア19を取り付けてなる乗降口20と、前記空調装置18が外気を取り入れるための開口部21が設けられている。
【0026】
前記空調装置18は、図2に示すように着座シート16の後方に設けられており、エバポレータ及びヒータ(いずれも図示せず)等を内蔵してなる空調ユニット24を有している。また、該空調ユニット24には、流入口22と流出口23が設けられており、該流入口22から吸い込んだ空気を調和し、この調和空気を該流出口23から吐出するようになっている。
【0027】
また、前記空調ユニット24の前記流入口22には、吸入ダクト27の出口側が接続されている。図2〜図4に示すように、該吸入ダクト27の入口側には、前記開口部21を通して前記キャブ15外の空気を吸い込む外気吸込口25と前記キャブ15内の空気を吸い込む内気吸込口26が設けられている。
【0028】
一方、前記空調ユニット24の前記流出口23には、調和空気供給ダクト29の入口側が接続されている。該調和空気供給ダクト29は、前記空調ユニット24の前記流出口23から吐出される調和空気を、前記キャブ内15内の所定の位置(例えば、前記着座シート16の前方)まで搬送するダクトであり、その出口側には調和空気吹出口28を設けている。
【0029】
また、前記吸込ダクト27には、フィルタユニット30が着脱可能に取り付けられている。該フィルタユニット30は、図2乃至図4に示すように前記外気吸込口25から吸い込まれる外気中の塵埃を除去する外気フィルタ30aと内気吸込口26から吸い込まれる内気中の塵埃を除去する内気フィルタ30bを互いに平面的に配置させた状態にして一体化し、一枚のフィルタとしてユニットされている。そして、該フィルタユニット30は、前記キャブ15内において、吸込ダクト27の上部側面に設けられている開口31を通して該吸込ダクト27内に差し込むことにより所定の位置(該吸込ダクト27のフィルタ取付部)に取り付けられ、反対に上方に向かって引き抜くことにより該吸込ダクト27内から取り外すことができるようになっている。図2及び図3は、前記フィルタユニット30が前記吸込ダクト27内に挿入されて所定の位置に取り付けられている状態を示し、図4は前記吸込ダクト27内から取り外された状態をそれぞれ示している。
【0030】
そして、前記フィルタユニット30が前記吸込ダクト27内のフィルタ取付位置に取り付けられた状態では、前記外気フィルタ30aが前記外気吸込口25の通路を塞ぐとともに、前記内気フィルタ30bが内気吸込口26の通路を塞いで配置される。このようにして前記吸込ダクト27内に取り付けられた前記フィルタユニット30は、前記外気吸込口25から吸い込まれる外気中の塵埃を前記外気フィルタ30aが除去し、前記内気吸込口26から吸い込まれる内気中の塵埃を前記内気フィルタ30bが除去できるようになっている。
【0031】
このように構成された空調装置は、前記外気吸込口25及び前記内気吸込口26から外気及び内気を前記空調ユニット24内に吸い込み、該空調ユニット24内で所定の温度等に調和し、この調和された空気を前記調和空気供給ダクト29の前記調和空気吹出口28から前記キャブ15内に吹き出すことにより、該キャブ内15内の温度等をオペレータの好みに応じて調整することができる。
【0032】
また、前記外気フィルタ30a及び前記内気フィルタ30bが洗浄若しくは交換等のメンテナンスが必要となる時期になった場合は、前記キャブ15内において、前記フィルタユニット30の上面部に設けられている取手部32を手で掴んで、該フィルタユニット30を上側に持ち上げると、前記外気フィルタ30aと前記内気フィルタ30bを同時に前記吸込ダクト27から取り外すことができる。一方、メンテナンス後は、前記開口部31を通して前記吸込ダクト27内に前記フィルタユニット30を戻すことにより、前記外気フィルタ30aと前記内気フィルタ30bが同時に戻され、必要なメンテナンス作業を終了することができる。
【0033】
したがって、本実施例の空調装置によれば、前記外気フィルタ30aと前記内気フィルタ30bをフィルタユニットとして一体化しているので、メンテナンス等を行う時には両フィルタ30a,30bを同時に外して同時に作業を行うことができる。これにより、作業工数の低減が図れる。また、一方のフィルタをメンテナンスし、他方のフィルタのメンテナンスを忘れるというようなことも確実に防止できる。
【0034】
なお、上記実施例において、フィルタユニット30は、外気フィルタ30aと内気フィルタ30bを横方向に並べ、かつ、上下方向に移動させて着脱する構造を開示したが、左右方向に移動させて着脱するようにしてもよい。さらに、外気フィルタ30aと内気フィルタ30bを縦方向に並べ、上下、あるいは横方向に移動させて着脱するようにしてもよい。
【0035】
また、これ以外にも、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上説明したように、本発明は建設機械の空調装置に限ることなく、建設機械以外の車両における空調装置にも応用できる。
【符号の説明】
【0037】
14 本体フレーム
15 キャブ
16 着座シート
17 操作レバー
18 空調装置
21 外気用開口部
22 流入口
23 流出口
24 空調ユニット
25 外気吸込口
26 内気吸込口
27 吸込ダクト
28 調和空気吹出口
29 調和空気供給ダクト
30 フィルタユニット
30a 外気フィルタ
30b 内気フィルタ
31 開口(フィルタユニット取付部)
32 取手部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転室を画成してなるキャブ内に設けた空調ユニットを有し、該空調ユニットの空気流入口側を、外気フィルタを介して前記キャブ外の空気を吸い込む外気吸込口と内気フィルタを介して前記キャブ内の空気を吸い込む内気吸込口に接続してなる建設機械の空調装置において、
前記外気フィルタと前記内気フィルタをフィルタユニットとして一体化し、該フィルタユニットを前記空調ユニットに対して着脱可能に設けたことを特徴とする建設機械の空調装置。
【請求項2】
上記フィルタユニットを脱着可能に取り付けるフィルタユニット取付部を、上記キャブ内に設けてなることを特徴とする請求項1に記載の建設機械の空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−106534(P2012−106534A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255229(P2010−255229)
【出願日】平成22年11月15日(2010.11.15)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】