説明

建設機械用車載制御装置

【課題】建設機械用制御装置間の通信データや通信プロトコルが変更されても、プログラムの修正箇所を最小限にすることができる、建設機械用制御装置を提供することにある。
【解決手段】通信データ処理部63の通信データ生成部17は、送信対象データが多重通信線の規格で定められるパケットの上限サイズを超える場合に、送信対象データを複数のパケットに分割して送信する手順を定めた通信プロトコルに従い、送信対象データの一部に送信対象データ識別子を付与しパケットデータを作成する。通信プロトコル処理部62の通信セッション処理部81は、通信相手と通信プロトコルで定められる、通信セッション制御パケットデータを交換し、送信可能な時点でパケットデータの作成を、通信データ生成部71に依頼する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロコンピュータを備えた建設機械用制御装置に係り、特に、そのマイクロコンピュータが、他の建設機械用制御装置に備えられた他のマイクロコンピュータとデータ通信を行うことにより、その通信対象のマイクロコンピュータと、制御用データと当該建設機械の稼動記録を共有する場合に好適な建設機械用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械、特に,大型の油圧ショベル等の建設機械は、例えば,広大な作業現場での土石掘削作業に供されている。この大型の油圧ショベルは、その生産性向上のために、一般的に連続稼動される場合が多い。このため、異常が発生すると、油圧ショベルの運転を停止し、その修理を行わなければならないが、その異常の度合いによっては、長期間運転を休止しなければならない事態が生じることがある。一方で、上述したように、大型の油圧ショベルは連続運転を要求されており、その故障による休止期間を極力低減しなければならない。
【0003】
そこで、例えばエンジンの出力低下等の、エンジン系異常の兆候から、異常を事前に察知し、建設機械の休止期間を抑えることができる建設機械の診断情報提供装置及び建設機械の診断情報表示システムが提唱されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1では、建設機械の動作状態又は周囲環境に係わる状態量が所定の基準値範囲とを比較し、基準範囲外である場合に不具合があると判定することができ、異常を事前に察知することができる。
【0004】
従来より、建設機械に搭載されたエンジンや油圧装置等の制御対象を制御する建設機械用制御装置は、ROMに記憶されたプログラムを実行して、建設機械の動作状態又は周囲環境に係わる状態量を検出し、制御対象を制御するための演算処理を行う。
【0005】
そして、近年における制御内容の複雑化に伴い、この種の建設機械用制御装置では、他の建設機械用制御装置とデータ通信を行って、その通信対象と制御対象の制御に用いる制御用データを共有することにより、制御性を向上させている。
【0006】
更に、前記制御用データの他に、建設機械の動作状態又は周囲環境に係わる状態量についても、データ通信を行って他の建設機械用制御装置と共有し、上述したような、建設機械の異常を未然に察知する処理を行う。
【0007】
ここで、こうした建設機械用制御装置(以下、「ECU」と称する)の通信形態上のシステム構成例について説明すると、まず2つのECUが、建設機械内に配設されたシリアル通信線を介し1対1でデータ通信を行う、建設機械制御装置間シリアル通信のシステム構成がある。
【0008】
更に、3つ以上のECUが、建設機械内に配設された多重通信線を介し1対多或いは多対1でデータ通信を行う、ECU間多重通信のシステム構成がある。
そして、上記各システム構成を併せ持ったシステム構成もある。例えば、ECUがシリアル通信線を介して他のECUとデータ通信を行うと共に、前記通信対象とは別のECUと多重通信線を介してデータ通信を行うシステム構成や、多重通信線が複数配設され、2本の多重通信線に接続されたECUを介して、異なる多重通信線に接続されたECU間でデータ通信を行う、といったシステム構成である。
【0009】
建設機械では、その製品特性上、建設機械用制御装置の数や通信線への接続形態など、様々なシステム構成が採られる。また、通信形態上のシステム構成が同じであっても、通信プロトコルには様々なものがある。また更に、システム構成や通信プロトコルが同じであっても、どのECUが、どの制御用データや稼動記録を、どのECUに送信するか、というECU間で送受信される通信データ列が変更される場合もある。
【0010】
ところが、従来の建設機械用制御装置により実行されるプログラムは、制御対象を制御するための演算処理を行う部分と、通信対象との間で通信データの送受信を処理する部分とが、明確に区別されておらず不可分に作成されていた。
【0011】
このため、従来の建設機械用制御装置では、建設機械制御装置間で送受信される制御用データや稼動記録と、または通信プロトコルが変更されると、プログラムの修正範囲が、プログラム全体に及ぶという問題があった。また、あるシステム構成の建設機械用に開発したプログラムを、他のシステム構成の建設機械に再利用することも困難であった。
【0012】
こうした問題に対し、システム構成や通信プロトコルおよび通信データに変更がなされた場合でも、プログラムの修正箇所を最小限にすることのできる自動車用制御装置が提唱されている(例えば、特許文献2参照)。
【0013】
この従来技術では、自動車用制御装置で実行されるプログラムを、制御対象を制御するための演算処理を行うアプリケーションプログラムと、制御用データを通信プロトコルに対応した通信データ列に変換するデータ変換用プログラムと、通信プロトコルに従い、通信対象に送信する通信ドライバ用プログラムとの、夫々独立したプログラムモジュールで構成している。プログラムの各部分を独立したプログラムモジュールとすることにより、通信データや通信プロトコルに変更がある場合に、プログラムの修正箇所を最小限にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第4074615号
【特許文献2】特許第3692820号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ここで、通信対象とやり取りする制御用データや稼動記録のサイズが、使用する通信プロトコルで定められているパケットサイズより大きくなる場合、その通信プロトコルで定められる手順に従い、複数のパケットに分割されて通信される場合がある。このような場合では、通信対象へ、最初のパケットを送信してから最後のパケットを送信するまでの期間に、制御対象を制御するための演算処理を行うアプリケーションプログラムにより、送信中の制御用データもしくは稼動記録が更新されると、分割されたパケット間の整合性が取れなくなる。また、複数のパケットに分割される通信データを受信する場合、パケットを受信した時点で通信データに対応する制御用データや稼動記録を更新すると、アプリケーションプログラムがその制御用データや稼動記録を参照した時点で、データ内の一部範囲の更新タイミングの整合性が取れなくなる。
【0016】
このようなパケット間の不整合を回避するため、通信プロトコルで定められているパケットサイズより大きな制御用データや稼動記録を送受信する場合、アプリケーションプログラムが参照する制御用データもしくは稼動記録の他に、同サイズのバッファ領域を用意し、アプリケーションプログラムが参照するデータのコピーをそのバッファに格納し、送受信の処理はバッファに格納したコピーに対して行う。そして必要に応じて、バッファに格納されたコピーと、アプリケーションプログラムが参照するデータを入れ替えることにより、通信途中にデータの一部が更新されるような不整合が起きないようにする、といった手法を採ることが一般的である。
【0017】
ここで、自動車用制御装置と比較すると、建設機械用制御装置では制御データの他に稼動記録など、よく利用される通信プロトコルで定められたパケットサイズより大きいデータを通信する場合がある。そのため、パケットサイズより大きいデータに対しては、上述したようなバッファを用意し、コピーを格納することが不可欠となる。
【0018】
しかし、建設機械用制御装置で扱う、全てのパケットサイズより大きいデータに対して、そのデータのコピーを格納するバッファを用意するには、建設機械用制御装置に備えられているマイクロコンピュータが、全てのパケットサイズより大きいデータの合計サイズ分のRAMを余分に持たなければならない。また更に、送信時には、アプリケーションプログラムが算出した制御用データもしくは稼動記録をバッファーにコピーする。そして、受信時には、バッファーに格納した他の建設機械用制御装置より受信した制御用データもしくは稼動記録を、アプリケーションプログラムが参照する制御用データもしくは稼動記録にコピーする、といった処理が必要となる。
【0019】
この課題に対し、従来の建設機械用制御装置のプログラムでは、建設機械用制御装置間でやり取りされる通信データの内、通信プロトコルで定められたパケットサイズより大きいデータに対して、バッファを用意しコピーを格納する必要があるかどうかを、建設機械用制御装置ごとに検討を行う。そして、バッファを用意しコピーを格納する必要があるデータに対してのみ、バッファを用意しコピーを格納する処理を追加することによって、プログラム実行時に必要とするRAMのサイズと、データをコピーしバッファへ格納する処理と、バッファからデータへコピーする処理を必要最小限にしてきた。
【0020】
ところが、ある通信データがバッファへのコピーが必要かどうか、と言うことは、建設機械のシステム構成や、建設機械間でやり取りされる通信データによって変更されるが、従来の手法では、建設機械用制御装置のプログラムの、データのコピーを作成しバッファへ格納する処理の部分と、通信処理の部分が、明確に区別されておらず不可分に作成されていた。このため、従来技術の手法を採っている場合においても、建設機械制御装置間で送受信される制御用データもしくは稼動記録が変更されると、建設機械用制御装置のプログラムの通信処理部分にも修正が及ぶ問題があった。
【0021】
本発明の目的は、建設機械用制御装置間の通信データや通信プロトコルが変更されても、プログラムの修正箇所を最小限にすることができる、建設機械用制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
(1)上記目的を達成するために、本発明は、原動機と、作業装置と、前記原動機により液圧動力を発生し前記作業装置を駆動する複数の油圧機器を含む油圧回路を備える建設機械の制御に用いられ、前記原動機、作業装置、油圧機器のいずれかに係わる複数の建設機械用制御装置であって、これら複数の建設機械用制御装置を共通の多重通信線を介して互いに接続しデータの送受信を行う建設機械の電子制御システムに用いられ、前記建設機械用制御装置は、建設機械に搭載された制御対象を制御するための演算処理を実行するとともに、前記演算処理により算出した制御用データと、前記建設機械の動作状態又は周囲環境に係わる状態量から生成された稼動記録のデータを共有メモリに格納するアプリケーション部と、前記共有メモリに格納されたデータのうちで、前記多重通信線を介して接続されている他の建設機械用制御装置である通信相手へ送信すべき送信対象データを前記通信相手へ送信する通信データ処理部と、前記多重通信線の通信規格で定められている手順で送受信を行なう通信プロトコル処理部とを備え、前記通信データ処理部は、前記送信対象データが前記多重通信線の規格で定められるパケットの上限サイズを超える場合に、前記送信対象データを複数のパケットに分割して送信する手順を定めた通信プロトコルに従い、前記送信対象データの一部に送信対象データ識別子を付与しパケットデータを作成する通信データ生成部を備え、前記通信プロトコル処理部は、前記通信相手と前記通信プロトコルで定められる、通信セッション制御パケットデータを交換し、送信可能な時点で前記パケットデータの作成を、前記通信データ生成部に依頼する通信セッション処理部を備えるようにしたものである。
かかる構成により、建設機械用制御装置間の通信データや通信プロトコルが変更されても、プログラムの修正箇所を最小限にすることができるものとなる。
【0023】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記建設機械用制御装置は、前記送信対象データを前記通信相手へ送信を開始してから終了するまでの期間に、必要な場合に前記送信対象データと同内容のコピーを保持する通信データバッファ部を備え、前記通信データ処理部は、前記送信対象データのうち、どのデータのコピーを前記通信データバッファ部に格納する必要があるかを示す通信データ定義情報と、前記送信対象データを前記通信相手へ送信開始する時点で、前記定義情報を参照し、該送信対象データのコピーを生成し、前記送信対象データ通信データバッファ部へ格納するバッファ処理部と、前記通信データ生成部がパケットデータを作成する時点で、前記定義情報を参照し、前記送信対象データ、もしくは前記通信データバッファ部に格納された該送信対象データのコピーを、前記通信データ生成部に渡す送信対象データアクセス処理部とを備えるようにしたものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、建設機械用制御装置間の通信データや通信プロトコルが変更されても、プログラムの修正箇所を最小限にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態による建設機械の制御装置を適用する油圧ショベルに搭載された油圧システムの一例の概略構成図である。
【図2】本発明の一実施形態による建設機械の制御装置を用いた、建設機械制御システムの構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による建設機械の制御装置である、車体制御ユニットの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の一実施形態による建設機械の制御装置である、車体制御ユニットに用いる通信データ処理部の構成を示すブロック図である。
【図5】本発明の一実施形態による建設機械の制御装置である、車体制御ユニットの通信データ処理部で用いる周期送信設定情報の説明図である。
【図6】本発明の一実施形態による建設機械の制御装置である、車体制御ユニットの通信データ処理部で用いる通信データ定義情報の説明図である。
【図7】本発明の一実施形態による建設機械の制御装置である、車体制御ユニットに用いる通信プロトコル処理部の構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の一実施形態による建設機械の制御装置である、車体制御ユニットの通信プロトコル処理部で用いる通信中セッション情報の説明図である。
【図9】本発明の一実施形態による建設機械の制御装置である、車体制御ユニット内の通信モデルを仮想的に示した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1〜図9を用いて、本発明の一実施形態による建設機械の制御装置の構成及び動作について説明する。
最初に、図1を用いて、本実施形態による建設機械の制御装置を適用する油圧ショベルに搭載された油圧システムの一例の概略構成について説明する。
図1は、本発明の一実施形態による建設機械の制御装置を適用する油圧ショベルに搭載された油圧システムの一例の概略構成図である。
【0027】
なお、本実施の形態の油圧ショベルは、2エンジン搭載型の超大型油圧ショベルであるが、煩雑防止及び理解を容易にするため、ここでは、エンジンを1基として簡略化して図示している。
【0028】
符号21a,21bは油圧ポンプ、22a,22bはブーム用コントロールバルブ、23はアーム用コントロールバルブ、24はバケット用コントロールバルブ、25は旋回用コントロールバルブ、26a,26bは走行用コントロールバルブ、27はブームシリンダ、28はアームシリンダ、29はバケットシリンダ、30は旋回モータ、31a,31bは走行モータであり、これらは油圧ショベル1に搭載された油圧システム20に備えられている。
【0029】
油圧ポンプ21a,21bはいわゆる電子ガバナタイプの燃料噴射装置(図示せず)を備えたエンジン(原動機)32(実際には油圧ショベル1には一対の左・右側エンジン32L,32Rが搭載されているが、ここでは1基のエンジン32として図示。以下、適宜エンジン32L,32Rと記載する。)によりそれぞれ回転駆動されて圧油を吐出し、コントロールバルブ22a,22b〜26a,26bは油圧ポンプ21a,21bから油圧アクチュエータ27〜31a,31bに供給される圧油の流れ(流量及び流れ方向)を制御する。油圧アクチュエータ(油圧機器)27〜31a,31bは、ブーム16、アーム17、バケット(作業装置)18、旋回体13、走行体12の駆動を行う。これら油圧ポンプ21a,21b、コントロールバルブ22a,22b〜26a,26b及びエンジン32は旋回体13の後部の収納室(エンジン室)に設置されている。
【0030】
符号33,34,35,36は、コントロールバルブ22a,22b〜26a,26bに対して設けられた操作レバー装置である。なお、これら操作レバー装置33,34,35,36は、煩雑防止のため図示省略するが、それぞれ電気レバーと比例電磁弁とから構成されており、各電気レバーの電気信号がコントローラネットワーク2(詳細には図2にて後述する電気レバー制御ユニット53)に入力され、コントローラネットワーク2からそれら電気レバーの操作量に応じた電気信号が各比例電磁弁に出力され、これによりパイロット元圧がそれら各電磁弁によって電気レバーの操作量に応じて減圧されて、生成されたパイロット圧がそれぞれの操作レバー装置33,34,35,36から出力されるようになっている。すなわち、例えば操作レバー装置33の操作レバーを十字の一方向X1に操作するとアームクラウドのパイロット圧又はアームダンプのパイロット圧が生成されてアーム用コントロールバルブ23に印加され、操作レバー装置33の操作レバーを十字の他方向X2に操作すると右旋回のパイロット圧又は左旋回のパイロット圧が生成され、旋回用コントロールバルブ25に印加されるようになっている。
【0031】
一方、操作レバー装置34の操作レバーを十字の一方向X3に操作するとブーム上げのパイロット圧又はブーム下げのパイロット圧が生成されてブーム用コントロールバルブ22a,22bに印加され、操作レバー装置34の操作レバーを十字の他方向X4に操作するとバケットクラウドのパイロット圧又はバケットダンプのパイロット圧が生成され、バケット用コントロールバルブ24に印加される。また、操作レバー装置35,36の操作レバーを操作すると、左走行のパイロット圧及び右走行のパイロット圧が生成され、走行用コントロールバルブ26a,26bに印加される。なお、操作レバー装置33〜36はコントローラネットワークシステム2とともに運転室14内に配置されている。
【0032】
符号40〜49は、以上のような構成の油圧システム20に設けられた各種のセンサである。センサ40は、フロント作業機15の操作信号としてこの例ではアームクラウドのパイロット圧を検出する圧力センサである。センサ41は、旋回操作信号としてシャトル弁41aを介し取り出された旋回パイロット圧を検出する圧力センサである。センサ42は、走行操作信号としてシャトル弁42a,42b,42cを介して取り出された走行のパイロット圧を検出する圧力センサである。
【0033】
センサ43は、エンジン32のキースイッチのON・OFFを検出するセンサである。センサ44は、シャトル弁44aを介して取り出された油圧ポンプ21a,21bの吐出圧力、即ちポンプ圧を検出する圧力センサである。センサ45は、油圧システム20の作動油の温度(油温)を検出する油温センサである。センサ46は、エンジン32の回転数を検出する回転数センサである。センサ47aは、エンジン32の燃料噴射装置(図示せず)によって噴射される噴射量(いいかえれば燃料消費量)を検出する燃料センサである。センサ47bは、エンジン32のシリンダのブローバイ圧をそれぞれ検出する圧力センサである。センサ47cは、エンジン32を冷却する冷却水(ラジエータ水)の温度を検出する温度センサである(なお、実際には上記のセンサ46,47a,47b,47cは左・右側エンジン32L,32Rのそれぞれに設けられているが、ここではそれぞれ一基のセンサとして図示している。以下、適宜、センサ46,47a,47b,47cをそれぞれセンサ46L,46R、47aL,47aR、47bL,47bR、47cL,47cRと記載する)。
【0034】
センサ48は、フロント作業機15による掘削圧力としてこの例ではバケットシリンダ29(若しくはアームシリンダ28でもよい)のボトム側の圧力を検出する圧力センサである。センサ49aは、走行圧力すなわち走行モータ31a,31bの圧力(例えば図示しないシャトル弁を介し2つのうちの最高圧を求めてもよい)を検出する圧力センサである。センサ49bは旋回圧力すなわち旋回モータ30の圧力を検出する圧力センサである。これらセンサ40〜49の検出信号は、いずれもコントローラネットワーク2に送られ収集される。
【0035】
次に、図2を用いて、本実施形態による建設機械の制御装置を用いた、建設機械制御システム(コントローラネットワーク)2の構成について説明する。
図2は、本発明の一実施形態による建設機械の制御装置を用いた、建設機械制御システムの構成を示すブロック図である。なお、図1と同一符号は、同一部分を示している。
【0036】
尚、本実施形態の建設機械制御システム2は、建設機械に搭載されたエンジン、車体を制御し、排気温度を監視し、建設機械の動作状態又は周囲環境に係わる状態量を稼動記録として蓄積し、前記状態量をオペレータに表示するディスプレイ54を備えるものである。
【0037】
図2に示すように、本実施形態の建設機械制御システム2は、主にエンジンを制御する電子制御装置(以下、エンジン制御ユニットという)50L、50Rと、エンジン制御ユニットを監視する電子制御装置(以下、エンジンモニタユニットという)51L、51Rと、車体の動作の制御を行う電子制御装置(以下、車体制御ユニットという)60と、運転席に備えられたディスプレイ54に建設機械の運転状態や警告を表示する電子制御装置(以下、表示制御ユニットという)55と、運転席に備えられた操作レバーの操作量を検出する電気レバー制御ユニット53と、稼動情報を蓄積し後から参照できるようにする電子制御装置(以下、データ記録ユニットという)56と、衛星通信端末57とを備えている。
【0038】
そして、エンジンモニタユニット51L、51Rとデータ記録ユニット56は、多重通信線2Aを介して、互いに通信可能に接続されている。また、データ記録ユニット56は、多重通信線2Aとは別の多重通信線2Bを介して、表示制御ユニット56と、車体制御ユニット60と、電気レバー制御ユニット53と通信可能に接続されている。
【0039】
ここで、エンジン制御ユニット50L、50Rは、エンジン回転数を検出するための回転角センサ、エンジンの冷却水温を検出するための水温センサ、及び燃料温度を検出するための燃料温度センサ等の、各種センサからの検出信号に基づいて、建設機械の運転状態を検出する。そして、その検出結果に基づいて、エンジンを最適状態に制御する。
【0040】
一方、エンジンモニタユニット51L、51Rは、エンジン制御ユニットの検出結果のデータをデータ記録ユニット56に送信する。
【0041】
衛星通信端末57は、データ記録ユニット56に記録された制御用データと当該建設機械の稼動記録を、他の建設機械用制御装置に備えられた他のマイクロコンピュータにデータ通信により送信する。これにより、制御用データと当該建設機械の稼動記録を、他の建設機械用制御装置共有する。
【0042】
一方、車体制御ユニット60は、電気レバー制御ユニット53が検出した操作レバーの操作量に応じて、各油圧アクチュエータの操作量を算出し、必要な油圧を出力するように、エンジン回転数指令値をエンジンモニタユニット51L、51Rに送信する。車体制御ユニット60の詳細構成については、図3を用いて後述する。
【0043】
そして、表示制御ユニット55は、建設機械の動作状態を表示すると共に、各種センサが異常値を検出した場合に、警告を表示する。
【0044】
一方また、データ記録ユニット56は、エンジンモニタユニット51L、51Rや車体制御ユニット60が送信する稼動記録を受信し、データ記録ユニット56が有する記憶装置に蓄積する。
【0045】
次に、図3を用いて、本実施形態による建設機械の制御装置である、車体制御ユニット60の構成について説明する。
図3は、本発明の一実施形態による建設機械の制御装置である、車体制御ユニットの構成を示すブロック図である。なお、図2と同一符号は、同一部分を示している。
【0046】
なお、ここでは、建設機械の制御装置の一例として、車体制御ユニット60の詳細構成について説明するが、他の制御装置であるエンジン制御ユニット50L、50Rと、エンジンモニタユニット51L、51Rと、車体制御ユニット60と、表示制御ユニット55と、電気レバー制御ユニット53との構成も基本的に同様である。但し、後述するアプリケーション部6xに備えられる演算処理の内容は、個々の制御装置に対応した演算処理内容となっている。
【0047】
図3に示すように、本実施形態の車体制御ユニット60の構成は、制御対象を制御するための演算処理を行うアプリケーション部6xと、アプリケーション部6xが算出したデータを格納する共有メモリ65と、他の制御ユニット55、56とデータの送受信を行う通信部61と、アプリケーション部6xによって算出される制御用データもしくは稼動記録から、通信部61が送信すべき通信データ列を生成する通信データ処理部63と、通信データ処理部63が生成した通信データ列を、このコントローラが接続されている多重通信線2Bの通信規格で定められている手順で送受信を行なう通信プロトコル処理部62と、通信プロトコル処理部62において通信中の通信データを一時的に格納する通信データバッファ64と、送信処理の開始処理を行なう通信トリガー発生部66からなる。
【0048】
ここで、アプリケーション部6xは、車体制御ユニット60の制御対象及び制御内容ごとに細分化された各オブジェクトからなる。一例としては、車体制御部67,油圧制御部68,レバー制御部69等のオブジェクトからなる。そして、本実施形態において、アプリケーション部6xは、油圧ポンプ圧力等の制御用データ(制御パラメータ)を算出して、共有メモリ65に格納する。また、制御用データの算出処理の中で各種センサを介して検出した検出信号の値を基準値と比較し、検出信号の値が基準範囲から外れていた場合に、どの検出信号がどの程度基準値から外れているかを調べる。そして基準値から外れている全ての検出信号について、保守データとして共有メモリ65に格納する。また、エンジンの型式,エンジン番号,使用しているソフト(オブジェクト)のバージョン番号などの部品識別子を、共有メモリ65に格納する。
【0049】
通信トリガー発生部66は、一定の周期で通信データ処理部63に、周期通信処理の開始を指令する。通信開始の指令を受けた、通信データ処理部63は、共有メモリ65に格納されているデータから送信すべきデータを抽出する。ここで、抽出したデータが、通信プロトコル処理部62で定められた通信パケットサイズ以内の場合は、抽出したデータから通信プロトコルに対応した通信データを生成し、通信プロトコル処理部62に渡す。通信データ処理部63の詳細構成については、図4を用いて後述する。通信プロトコル処理部62は、通信部61を介して、通信データ処理部63から渡された通信データを送信する。通信プロトコル処理部62の詳細構成については、図7を用いて後述する。
【0050】
一方、通信データ処理部63が、共有メモリ65から抽出したデータが、通信プロトコル処理部62が使用する通信プロトコルで定められた通信パケットサイズより大きい場合で、かつ通信中に制御データが変更され通信パケットの整合性が取れなくなってしまう場合は、通信データバッファ64に、送信すべきデータをコピーを格納する。そして通信データ処理部63は、通信データバッファ64に格納したコピーから通信データを生成し、通信プロトコル処理部62に渡す。通信プロトコル処理部62は、上の例と同様に通信部61を介して、通信データ処理部63から渡された通信データを送信する。
【0051】
以上のように、プログラムは、アプリケーション部6xの前記演算処理を行うためのアプリケーションプログラムと、通信データ処理部63のデータ変換用プログラムと、通信プロトコル処理部62の通信ドライバ用プログラムとの、夫々独立したプログラムモジュールからなっている。そして、通信データ処理部63のデータ変換用プログラムにより、アプリケーションプログラムによって算出される制御用データと稼動記録のうちから、通信対象へ送信すべき制御用データを抽出すると共に、その抽出した制御用データを、通信対象との間で定められた特定の通信プロトコルに対応した通信データ列に変換する処理が行われる。
【0052】
また、通信プロトコル処理部62の通信ドライバ用プログラムにより、データ変換用プログラムによって変換された通信データ列を、前記特定の通信プロトコルに従い通信対象へ送信する処理が行われる。
【0053】
このように、制御対象に応じた制御用演算処理を行うアプリケーションプログラムとは別の、データ変換用プログラムと通信ドライバ用プログラムといった、独立したプログラムモジュールによって、通信対象へ送信すべき制御用データと稼動記録を、通信プロトコルに従い通信対象へ送信する処理を行うようにしているため、通信対象へ送信すべき制御用データの種類やデータ長、或いは通信プロトコルが変わったとしても、アプリケーションプログラムを修正する必要が無いものである。
【0054】
次に、図4〜図6及び図9を用いて、本実施形態による建設機械の制御装置である、車体制御ユニット60に用いる通信データ処理部63の構成及び動作について説明する。
図4は、本発明の一実施形態による建設機械の制御装置である、車体制御ユニットに用いる通信データ処理部の構成を示すブロック図である。なお、図2及び図3と同一符号は、同一部分を示している。
【0055】
図5は、本発明の一実施形態による建設機械の制御装置である、車体制御ユニットの通信データ処理部で用いる周期送信設定情報の説明図である。図6は、本発明の一実施形態による建設機械の制御装置である、車体制御ユニットの通信データ処理部で用いる通信データ定義情報の説明図である。図9は、本発明の一実施形態による建設機械の制御装置である、車体制御ユニット内の通信モデルを仮想的に示した概念図である。
【0056】
図4に示すように、通信データ処理部63は、更に通信データ生成部71と、バッファ処理部73と、通信データアクセス処理部72と、通信データ定義情報75と、周期送信処理部70と、周期送信設定情報74からなる。
【0057】
周期送信処理部70は、周期送信設定情報74を参照し、現在の処理タイミングで送信すべきデータがあるかどうかを調べる。周期送信設定情報74には、送信周期ごとに送信するデータの情報が、通信データ定義情報75の何処に格納されているかを示すインデックス番号が記録されている。
【0058】
図5に示すように、周期送信設定情報74には、送信周期,通信データ定義情報インデックス番号の各項目が設けられている。例えば、インデックス番号が1,2,3の通信データは、送信周期が10msecであることを示している。
【0059】
図4の周期送信処理部70は、周期送信設定情報74からインデックス番号を抽出し、通信データ生成部71にインデックス番号を渡す。通信データ生成部71は、渡されたインデックス番号を、さらに通信データアクセス処理部72に渡す。
【0060】
通信データアクセス処理部72は、インデックス番号に基づき通信データ定義情報75を参照し、通信対象のデータが通信データバッファ64にコピーを格納すべきデータかどうかを調べる。通信データ定義情報75には、建設機械用制御装置が送信する夫々のデータが、送信処理の間にバッファにコピーを格納する必要があるかどうかの情報と、通信データバッファ64のどこにコピーを格納するかが記憶してある。
【0061】
図6に示すように、通信データ定義情報75には、インデックス番号,送信対象データ識別子,データ長,送信周期,データコピー,共有メモリ部変数,送信対象データバッファ部変数の各項目が設けられている。インデックス番号は、周期送信設定情報74の通信データ定義情報インデックス番号に対応する。送信対象データ識別子は、送信対象のデータを示す識別子である。データ長は、送信対象のデータの長さ(バイト;B)を示している。送信周期は、送信対象のデータを送信する周期を示している。データコピーは、データコピーの要否を示している。共有メモリ部変数は、共有メモリ65で用いられる変数である。送信対象データバッファ部変数は、送信対象のデータをバッファに格納する場合の変数である。
【0062】
例えば、図6の例において、インデックス番号「1」のデータは、エンジン回転数(EngN)に関するデータであり、そのデータ長は8バイト(B)である。1回の通信で送信できるデータ長は8Bであるため、インデックス番号「1」のデータは、1回で送信可能であり、バッファは使用しないため、データコピーは「不要」となっている。インデックス番号「9」のデータは、エンジンの設定情報(Eng_Config)に関するデータであり、そのデータ長は20バイト(B)であるため、バッファを使用し、データコピーは「要」となっている。エンジンの設定情報(Eng_Config)のデータは、バッファ部に「Eng_Config_Buf」という変数名で格納される。
【0063】
インデックス番号「15」のデータは、ソフトIDであり、インデックス番号「17」のデータは、エンジン形式であり、部品識別子である。これらの部品識別子のデータ長は8バイト(B)よりも大きいが、これらのデータは頻繁に変更されるデータではないため、バッファは用いずに送信する。
【0064】
図4の通信データアクセス処理部72は、通信対象のデータがコピーを通信データバッファ64に格納すべきデータである場合に、バッファ処理部73に指示を出し、共有メモリ65に格納されているデータのコピーを作成し、通信データバッファ64に格納させる。そして、通信データアクセス処理部72は、通信対象のデータの識別子とデータ長と、そしてデータ長が通信プロトコル処理部62で定められる通信パケットサイズ以内の場合は通信データ列を、通信データ生成部71に渡す。図9に示した通信データ生成部71に示した通信パケットの中で、左側のブロックが通信対象のデータの識別子とデータ長とからなるヘッダ情報であり、その右側に通信データ列が付加される。
【0065】
通信データ生成部71は、通信データ長が通信パケットサイズ以内の場合は、通信データアクセス処理部72から渡された、通信対象データ識別子と通信データ列から、通信パケットを生成し、通信プロトコル処理部62に渡す。また通信パケットサイズより大きい場合は、通信対象データ識別子と通信データ長のみを通信プロトコル処理部62に渡す。
【0066】
上述したように、通信データ生成部71により、アプリケーションプログラムによって算出される制御用データもしくは稼動記録のうちから、通信対象へ送信すべき制御用データもしくは稼動記録を抽出する。この制御用データもしくは稼動記録が、通信プロトコルで定められたパケットサイズより大きい場合、バッファ処理部73は、定義情報75を参照し、バッファ64にコピーを格納すべきデータの場合であれば、コピーを作成しバッファ64に格納する。定義情報75には、建設機械用制御装置が送信する夫々のデータが、送信処理の間にバッファにコピーを格納する必要があるかどうかの情報と、通信データバッファ部64のどこにコピーを格納するかが記憶してある。
【0067】
そして、通信データ生成部71は、通信データアクセス処理部72を介して、送信すべき制御用データもしくは稼動記録を読み出す。通信データアクセス処理部は、定義情報を参照し、送信すべきデータが、アプリケーションプログラムにより算出された元のデータなのか、バッファに格納されたコピーなのかを判定する。
【0068】
よって、システム構成の変更に伴い、通信対象へ送信すべき制御用データの種類やデータ長、そのデータのコピーをバッファに格納する必要があるかどうかが、変更されても、定義情報のみを修正すれば良く、バッファ処理部と通信データアクセス処理部、通信データ生成部、さらにアプリケーションプログラムと通信ドライバ用プログラムを修正する必要が無いものである。
【0069】
次に、図7〜図9を用いて、本実施形態による建設機械の制御装置である、車体制御ユニット60に用いる通信プロトコル処理部62の構成及び動作について説明する。
図7は、本発明の一実施形態による建設機械の制御装置である、車体制御ユニットに用いる通信プロトコル処理部の構成を示すブロック図である。なお、図2及び図3と同一符号は、同一部分を示している。図8は、本発明の一実施形態による建設機械の制御装置である、車体制御ユニットの通信プロトコル処理部で用いる通信中セッション情報の説明図である。
【0070】
図7に示すように、通信プロトコル処理部62は、通信方式選択部80と、通信セッション処理部81と、通信中セッション情報82とからなる。
【0071】
通信方式選択部80は、通信対象のデータが通信パケットサイズ以内で、通信データ生成部71より通信パケットを渡された場合は、通信パケットをそのまま通信部61を介して送信する。一方、通信対象のデータが通信パケットサイズより大きく、通信データ生成部71より通信データ識別子と、通信データ長のみ渡された場合は、通信データ識別子と、通信データ長を、通信セッション処理部81に渡す。
【0072】
通信セッション処理部81は、渡された通信データ識別子と通信データ長から、複数パケット通信開始を通知するパケットを生成し、通信部61を介して送信する。そして、新たに開始した通信セッションの情報を通信中セッション情報82に記録する。
【0073】
図8に示すように、通信中セッション情報82には、通信先識別子,通信状態,通信対象データ識別子,総パケット数,通信済みパケット数,待機状態経過時間の各項目が設けられている。通信先識別子は、コントローラID#1,コントローラID#3のように、データの送信先であるコントローラのIDが保持されている。通信状態には、「送信可能」,「送信完了/応答待ち」,「受信準備完了待ち」のように、通信状態が保持されている。通信対象データ識別子は、通信対象のデータの識別子である。待機状態経過時間は、待機状態になってから経過した時間を示している。
【0074】
通信セッション処理部81は、通信中セッション情報82を調べて、記録されている通信中セッションのうちからパケットの送信が行なえるセッションがある場合に、そのセッションで通信中のデータ識別子と、送信すべきパケットが何パケット目かの情報を抽出する。そして、通信データ生成部71に対し、通信データ識別子と何バイト目から何バイト目かを指定し、通信パケットの生成を要求する。
【0075】
通信データ生成部71は、通信データアクセス処理部72を介して、送信すべき制御用データもしくは保守データの指定された範囲を読み出す。通信データアクセス処理部72は、通信データ定義情報75を参照し、読み出すべきデータが、共有メモリ65に格納されているのか、通信データバッファ部64に格納されたコピーなのかを判断する。そして、読み出すべきデータが、通信データバッファ部64に格納されたコピーの場合には、通信データアクセス処理部72は、通信データバッファ部64に格納されたコピーから指定範囲を通信データ生成部71に渡す。一方、送信すべきデータが、共有メモリ65に格納されたデータの場合には、通信データアクセス処理部72は、共有メモリ65に格納されたデータから指定範囲を通信データ生成部71に渡す。そして、通信データ生成部71は、渡されたデータから、共有メモリ65から抽出したデータが、通信プロトコルで定められたパケットサイズ以内の場合と同様に、通信パケットを生成し、通信セッション処理部81に渡す。通信セッション処理部81は、通信データ生成部71から渡された通信パケットを、通信部61を介して送信する。
【0076】
つまり、共有メモリに格納するデータの内容に変更があった場合でも、通信データ定義情報75のみを修正すれば、通信データバッファ部64にコピーを格納するかどうかの処理を使い分けることができ、プログラムの修正範囲を最小限に抑えることができる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態では、記憶媒体に記憶されたプログラムを実行することにより、建設機械に搭載された制御対象を制御するための演算処理と、前記建設機械の動作状態又は周囲環境に係わる状態量から稼動記録を生成する記録処理を行うと共に、前記演算処理により算出した制御用データと、前記稼動記録のうち何れかを通信対象へ送信する処理を行う。
【0078】
ここで特に、記憶媒体に記憶されているプログラムは、アプリケーション部の前記演算処理を行うためのアプリケーションプログラムと、通信データ処理部のデータ変換用プログラムと、通信プロトコル処理部の通信ドライバ用プログラムとの、夫々独立したプログラムモジュールからなっている。
【0079】
そして、通信データ処理部のデータ変換用プログラムにより、アプリケーションプログラムによって算出される制御用データと稼動記録のうちから、通信対象へ送信すべき制御用データを抽出すると共に、その抽出した制御用データを、通信対象との間で定められた特定の通信プロトコルに対応した通信データ列に変換する処理が行われる。
【0080】
また、通信プロトコル処理部の通信ドライバ用プログラムにより、前記データ変換用プログラムによって変換された通信データ列を、前記特定の通信プロトコルに従い通信対象へ送信する処理が行われる。
【0081】
このように、制御対象に応じた制御用演算処理を行うアプリケーションプログラムとは別の、データ変換用プログラムと通信ドライバ用プログラムといった、独立したプログラムモジュールによって、通信対象へ送信すべき制御用データと稼動記録を、通信プロトコルに従い通信対象へ送信する処理を行うようにしているため、通信対象へ送信すべき制御用データの種類やデータ長、或いは通信プロトコルが変わったとしても、アプリケーションプログラムを修正する必要が無いものである。
【0082】
また、通信データ処理部のデータ変換プログラムは、定義情報と、通信データバッファ部と、バッファ処理部と、通信データ生成部と、通信データアクセス処理部と、からなる。
【0083】
そして、通信データ生成部により、アプリケーションプログラムによって算出される制御用データもしくは稼動記録のうちから、通信対象へ送信すべき制御用データもしくは稼動記録を抽出する。この制御用データもしくは稼動記録が、通信プロトコルで定められたパケットサイズより大きい場合、バッファ処理部は、定義情報を参照し、バッファにコピーを格納すべきデータの場合であれば、コピーを作成しバッファに格納する。定義情報には、建設機械用制御装置が送信する夫々のデータが、送信処理の間にバッファにコピーを格納する必要があるかどうかの情報と、通信データバッファ部のどこにコピーを格納するかが記憶してある。
【0084】
そして、通信データ生成部71は、通信データアクセス処理部を介して、送信すべき制御用データもしくは稼動記録を読み出す。通信データアクセス処理部は、定義情報を参照し、送信すべきデータが、アプリケーションプログラムにより算出された元のデータなのか、バッファに格納されたコピーなのかを判定する。
【0085】
よって、システム構成の変更に伴い、通信対象へ送信すべき制御用データの種類やデータ長、そのデータのコピーをバッファに格納する必要があるかどうかが、変更されても、定義情報のみを修正すれば良く、バッファ処理部と通信データアクセス処理部、通信データ生成部71、さらにアプリケーションプログラムと通信ドライバ用プログラムを修正する必要が無いものである。
【0086】
従って、本実施形態によれば、建設機械用制御装置間の通信データや通信プロトコルが変更されても、プログラムの修正箇所を最小限にすることができるものとなる。
【符号の説明】
【0087】
2…建設機械制御システム(コントローラネットワーク)
50L、50R…エンジン制御ユニット
51L、51R…エンジンモニタユニット
53…電気レバー制御ユニット
55…表示制御ユニット
56…データ記録ユニット
60…車体制御ユニット
61…通信部
62…通信プロトコル処理部
63…通信データ処理部
64…通信データバッファ
65…共有メモリ
66…通信トリガー発生部
6x…アプリケーション部
70…周期送信処理部
71…通信データ生成部
72…通信データアクセス処理部
73…バッファ処理部
74…周期送信設定情報
75…通信データ定義情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機と、作業装置と、前記原動機により液圧動力を発生し前記作業装置を駆動する複数の油圧機器を含む油圧回路を備える建設機械の制御に用いられ、
前記原動機、作業装置、油圧機器のいずれかに係わる複数の建設機械用制御装置であって、
これら複数の建設機械用制御装置を共通の多重通信線を介して互いに接続しデータの送受信を行う建設機械の電子制御システムに用いられ、
前記建設機械用制御装置は、
建設機械に搭載された制御対象を制御するための演算処理を実行するとともに、前記演算処理により算出した制御用データと、前記建設機械の動作状態又は周囲環境に係わる状態量から生成された稼動記録のデータを共有メモリに格納するアプリケーション部と、
前記共有メモリに格納されたデータのうちで、前記多重通信線を介して接続されている他の建設機械用制御装置である通信相手へ送信すべき送信対象データを前記通信相手へ送信する通信データ処理部と、
前記多重通信線の通信規格で定められている手順で送受信を行なう通信プロトコル処理部とを備え、
前記通信データ処理部は、前記送信対象データが前記多重通信線の規格で定められるパケットの上限サイズを超える場合に、前記送信対象データを複数のパケットに分割して送信する手順を定めた通信プロトコルに従い、前記送信対象データの一部に送信対象データ識別子を付与しパケットデータを作成する通信データ生成部を備え、
前記通信プロトコル処理部は、前記通信相手と前記通信プロトコルで定められる、通信セッション制御パケットデータを交換し、送信可能な時点で前記パケットデータの作成を、前記通信データ生成部に依頼する通信セッション処理部を備えている
ことを特徴とする建設機械用制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械用制御装置において、
前記建設機械用制御装置は、前記送信対象データを前記通信相手へ送信を開始してから終了するまでの期間に、必要な場合に前記送信対象データと同内容のコピーを保持する通信データバッファ部を備え、
前記通信データ処理部は、
前記送信対象データのうち、どのデータのコピーを前記通信データバッファ部に格納する必要があるかを示す通信データ定義情報と、
前記送信対象データを前記通信相手へ送信開始する時点で、前記定義情報を参照し、該送信対象データのコピーを生成し、前記送信対象データ通信データバッファ部へ格納するバッファ処理部と、
前記通信データ生成部がパケットデータを作成する時点で、前記定義情報を参照し、前記送信対象データ、もしくは前記通信データバッファ部に格納された該送信対象データのコピーを、前記通信データ生成部に渡す送信対象データアクセス処理部とを備える
ことを特徴とする建設機械用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−52380(P2012−52380A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196972(P2010−196972)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】