説明

建設機械

【課題】 ワイパ装置のモータをキャブ内に配設した場合でも、キャブ内のオペレータが前窓等を透して外部を目視するときの視界を大きく確保する。
【解決手段】 ワイパ装置26のモータ27を、キャブ11内に位置して前面部18のうち前窓20よりも上方となる左上角隅部18Aに配設する構成とする。これにより、オペレータが上前窓20Aを透して外部を目視するときに、オペレータの視界がモータ27によって遮られることがなく、当該オペレータの視界を大きく確保することができる。このため、オペレータは、大きな視界を確保しつつキャブ11内で操作レバー装置9等を操作することができるので、作業装置4を用いて掘削作業等を行うときの作業性を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル、油圧クレーン等の建設機械に関し、特に、キャブの前窓の汚れを払拭するワイパ装置を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル、油圧クレーン等の建設機械は、自走可能な下部走行体上に上部旋回体が旋回可能に搭載された車体と、上部旋回体の前部側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより大略構成されている。
【0003】
そして、上部旋回体は、ベースとなる旋回フレームと、作業装置の左側に位置して旋回フレーム上に設けられ運転室を画成するキャブと、旋回フレームの後端部に設けられ作業装置との重量バランスをとるカウンタウエイトと、旋回フレームに搭載されたエンジン、油圧ポンプ等の搭載機器を覆う外装カバーとにより大略構成されている。
【0004】
ここで、運転室を画成するキャブの内部には、オペレータが着席する運転席、下部走行体を操作するための走行レバー・ペダル装置、作業装置を操作するための操作レバー装置等が収容されている。また、キャブの前面部、天面部等には、ガラス窓等の透明な窓が設けられ、運転席に着席したオペレータは、前面部に設けられた前窓及び天面部に設けられた天窓等を透して外部(作業装置等)を目視しながら操作レバー装置を操作し、作業装置を用いて土砂の掘削作業等を行うようになっている。
【0005】
さらに、上述のキャブには、通常、前窓に付着した雨水、泥等の汚れを払拭するワイパ装置が設けられ、このワイパ装置は、駆動源となるモータと、該モータによって駆動され前窓の外側面を払拭するワイパ部材とにより大略構成されている。
【0006】
ここで、キャブの前面部に前窓が固定して設けられる場合には、この固定された前窓にワイパ装置のモータを取付けることができる。しかし、キャブの前窓が上,下方向に移動可能に設けられている場合には、この移動する前窓にモータを取付けることが困難である。このため、上,下方向に移動する前窓を備えたキャブにおいては、例えばキャブの前面部よりも前方に設けられたガード部材を利用し、該ガード部材のうち前窓よりも上側となる部位にモータを取付ける構成が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2003−170812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上述した従来技術では、ワイパ装置のモータをキャブの外側に設けられたガード部材に取付けているため、例えば掘削作業時の土砂等がモータに衝突することにより、該モータが損傷する虞れがある。
【0009】
一方、ワイパ装置のモータをキャブ内に取付けた場合には、キャブ内のオペレータが前窓や天窓を透して外部を目視するときに、このオペレータの視界内にモータが入るため、この分、オペレータの視界が狭まり、掘削作業等の作業性が損なわれるという問題がある。
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、ワイパ装置のモータをキャブ内に配設した場合でも、キャブ内のオペレータが前窓等を透して外部を目視するときに大きな視界を確保することができ、作業性を高めることができるようにした建設機械を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため本発明は、作業装置を備えた自走可能な車体と、運転室を画成するため前記作業装置の左側に配置され前面部に前窓が設けられたキャブと、該キャブに設けられ前記前窓の汚れを払拭するワイパ装置とを備えてなる建設機械に適用される。
【0012】
そして、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記ワイパ装置は、駆動源となるモータと、該モータによって駆動されることにより前記前窓の外側面を払拭するワイパ部材とにより構成し、前記モータは、前記キャブ内に位置して前記前面部のうち前記前窓よりも上方となる左上角隅部に配設したことにある。
【0013】
請求項2の発明は、前記ワイパ装置のモータが配設される前記キャブ内の左上角隅部は、前記前窓を透して外部を目視することができる視界の範囲から外れた位置としたことにある。
【0014】
請求項3の発明は、前記ワイパ装置のモータは、前記キャブの左前ピラーと該左前ピラーを右前ピラーに連結する連結部材との接合部の近傍位置に設ける構成としたことにある。
【0015】
請求項4の発明は、前記前窓は前記前面部に上,下方向に移動可能に取付ける構成とし、前記ワイパ部材は、前記前窓が下限位置に移動した状態でも該前窓の外側面に当接する構成としたことにある。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、ワイパ装置のモータを、キャブ内に位置して前面部のうち前窓よりも上方となる左上角隅部に配設することにより、キャブ内のオペレータが前窓を透して外部を目視するときに、オペレータの視界がモータによって妨げられることがなく、当該オペレータの視界を大きく確保することができる。これにより、オペレータは、大きな視界を確保しつつキャブ内で建設機械を操作することができ、その作業性を高めることができる。また、モータをキャブ内に設けることにより、掘削作業時の土砂等からモータを保護することができ、ワイパ装置を長期に亘って円滑に作動させることができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、キャブ内の左上角隅部は、キャブ内のオペレータが前窓を透して外部を目視することができる視界の範囲から外れた位置にあるので、このキャブ内の左上角隅部に配設されたモータによってオペレータの視界が妨げられることがなく、当該オペレータの視界を大きく確保することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、ワイパ装置のモータを、キャブの左前ピラーと該左前ピラーを右前ピラーに連結する連結部材との接合部の近傍位置に設ける構成としている。この場合、左前ピラーを右前ピラーに連結する連結部材は、もともとオペレータがキャブの前面部に設けられた前窓、あるいは天面部に設けられた天窓を透して外部を目視するときに、当該オペレータの視線を遮る構造物である。従って、もともとオペレータの視線を遮る構造物であった連結部材を利用してワイパ装置のモータを取付けることにより、このモータによってオペレータの視線が妨げられることがなく、この分、キャブ内のオペレータが外部を目視するときの視界を可及的に大きく確保することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、上,下方向に移動可能に設けられた前窓の外側面に、ワイパ部材を常時当接させておくことができる。これにより、前窓を下限位置に移動させたときに、ワイパ部材が前窓の外側面から外れてキャブ内に入込むのを抑えることができ、前窓を上,下方向に移動させるときの作業性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る建設機械の実施の形態を、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、図1ないし図11を参照しつつ詳細に説明する。
【0021】
図中、1は油圧ショベルで、該油圧ショベル1の車体は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とにより大略構成されている。そして、上部旋回体3の前部側には、オフセット式の作業装置4が俯仰動可能に設けられている。
【0022】
ここで、作業装置4は、後述する旋回フレーム5の前部側に取付けられたロアブーム4Aと、該ロアブーム4Aの先端側に取付けられたアッパブーム4Bと、該アッパブーム4Bの先端側に取付けられたアーム支持体4Cと、該アーム支持体4Cの先端側に取付けられたアーム4Dと、該アーム4Dの先端側に取付けられたバケット4Eと、ロアブーム4Aとアーム支持体4Cとの間を連結するリンクロッド4Fと、ロアブーム4Aを上,下方向に回動(俯仰動)させるブームシリンダ4Gと、アーム4Dを回動させるアームシリンダ4Hと、バケット4Eを回動させるバケットシリンダ4Iと、アッパブーム4Bを左,右方向に揺動させるオフセットシリンダ4Jとにより大略構成されている。
【0023】
そして、作業装置4は、オフセットシリンダ4Jによりアッパブーム4Bをロアブーム4Aに対して左,右方向に平行移動(オフセット)した状態で、ブームシリンダ4Gによってロアブーム4Aを俯仰動させ、アームシリンダ4Hによってアーム4Dを回動させ、バケットシリンダ4Iによってバケット4Eを回動させることにより、道路脇の側溝等の掘削作業を行うものである。
【0024】
一方、上部旋回体3は、下部走行体2上に旋回装置を介して旋回可能に設けられた強固な支持構造体をなす旋回フレーム5と、旋回フレーム5の後端部に設けられ作業装置4との重量バランスをとるカウンタウエイト6と、カウンタウエイト6に連続して旋回フレーム5の後部側に設けられエンジン、油圧ポンプ、燃料タンク、作動油タンク等の搭載機器(いずれも図示せず)を覆う外装カバー7と、後述のキャブ11とにより大略構成されている。
【0025】
ここで、上部旋回体3は、例えば下部走行体2の車幅内で旋回できるように、上方からみてほぼ円形状に形成されている。また、上部旋回体3の後端部の旋回半径は、カウンタウエイト6の外側面によって規定されており、カウンタウエイト6は、上部旋回体3の後端部の旋回半径を小さくするため、できるだけ前側(作業装置4側)に寄せて配置されている。
【0026】
8はオペレータが着席する運転席で、該運転席8は、図1及び図5に示すように、後述のキャブ11内に収容されるものである。ここで、運転席8の左,右両側には、作業装置4を操作するための操作レバー装置9が設けられ、運転席8の前側には、油圧ショベル1(下部走行体2)の走行を制御する左,右の走行レバー・ペダル装置10が設けられている。
【0027】
11は旋回フレーム5の前部左側に配設されたキャブで、該キャブ11は、図1ないし図5に示すように、その内部に運転席8、操作レバー装置9、走行レバー・ペダル装置10等を収容し、運転室を画成するものである。ここで、キャブ11は、後述の左前ピラー12、右前ピラー13、左後ピラー14、右後ピラー15、左中間ピラー16と、連結部材17と、前面部18、後面部22、左側面部23、右側面部24、及び天面部25とにより箱状に形成されている。
【0028】
12はキャブ11の左前部に設けられた左前ピラーで、該左前ピラー12は、中空なパイプ材を用いて形成され、運転席8の左前側を上,下方向に延びている。13はキャブ11の右前部に設けられた右前ピラーで、該右前ピラー13は、中空なパイプ材を用いて形成され、運転席8の右前側を上,下方向に延びている。
【0029】
14はキャブ11の左後部に設けられた左後ピラーで、該左後ピラー14は、中空なパイプ材を用いて形成され、運転席8の後側を上,下方向に延びている。15はキャブ11の右後部に設けられた右後ピラーで、該右後ピラー15は、中空なパイプ材を用いて形成され、運転席8の右後側を上,下方向に延びている。
【0030】
16は左前ピラー12の後側に位置してキャブ11の前,後方向の中間部に設けられた左中間ピラーで、該左中間ピラー16は、中空なパイプ材を用いて形成され、運転席8の左側を上,下方向に延びている。そして、左中間ピラー16は、油圧ショベル1の転倒時におけるキャブ11の剛性を高めるものである。また、左中間ピラー16は、後述の左側面部23を前,後に仕切り、左中間ピラー16と左前ピラー12との間には、後述の乗降口23Aが設けられる構成となっている。
【0031】
17は左前ピラー12、右前ピラー13、左後ピラー14、右後ピラー15、左中間ピラー16の上端側を連結する連結部材で、該連結部材17は、左前ピラー12と右前ピラー13の上端部間を連結し左,右方向に延びる前横連結部材17Aと、左後ピラー14と右後ピラー15の上端部間を連結し左,右方向に延びる後横連結部材17Bと、左前ピラー12と左中間ピラー16と左後ピラー14の上端部間を連結し湾曲しつつ前,後方向に延びる左縦連結部材17Cと、右前ピラー13と右後ピラー15の上端部間を連結し前,後方向に延びる右縦連結部材17Dとにより構成されている。
【0032】
ここで、左前ピラー12の上端部を右前ピラー13の上端部に連結する前横連結部材17Aは、図8及び図9に示すように、後述する前面部18の外側面を構成する外側パネル17A1と、前面部18の内側面を構成する内側パネル17A2とを溶接することにより、中空な閉断面構造をもって左,右方向に延びている。そして、前横連結部材17Aの内側パネル17A2には、後述のモータ27が取付けられる構成となっている。
【0033】
18は左前ピラー12と右前ピラー13との間に設けられたキャブ11の前面部で、該前面部18には、後述する上前窓20Aと下前窓20Bとが上,下方向に移動可能に設けられている。そして、運転席8に着席したオペレータは、上前窓20A及び下前窓20Bを透してキャブ11の前方を目視する構成となっている。
【0034】
ここで、図4等に示すように、前面部18のうち後述する前窓20よりも上側となる左上角隅部18Aは、運転席8に着席したオペレータが後述の前窓20を透して外部を目視することができる視界の範囲から外れた位置にあり、キャブ11内における左上角隅部18Aには、後述するワイパ装置26のモータ27が取付けられる構成となっている。
【0035】
19はキャブ11の前面部18に設けられた窓枠で、該窓枠19は、図6及び図7に示すように、全体として上,下方向に延びる長方形の枠状をなしている。そして、窓枠19の内周側には、図9に示すように、コ字型の断面形状を有し後述の上前窓20Aを支持する前レール19Aと、同じくコ字型の断面形状を有し後述の下前窓20Bを支持する後レール19Bとが形成されている。
【0036】
20は前面部18の窓枠19に取付けられた前窓で、該前窓20は、窓枠19の前レール19Aに沿って上,下方向に移動(スライド)する上前窓20Aと、窓枠19の後レール19Bに沿って上,下方向に移動(スライド)する下前窓20Bとにより構成されている。ここで、上前窓20Aと下前窓20Bとは、例えばガラス板等の透明な板体により形成されている。そして、上前窓20Aには、前レール19Aに対して上前窓20Aを固定する左,右一対のロック機構20Cが設けられ、下前窓20Bにも、後レール19Bに対して下前窓20Bを固定する左,右一対のロック機構20Cが設けられている。
【0037】
21は前レール19Aの下端側に設けられたストッパで、該ストッパ21は、図6及び図7に示すように、前レール19Aに沿って下方に移動する上前窓20Aの下端部が当接することにより、該上前窓20Aの下限位置を設定するものである。従って、上前窓20Aは、図6に示す上限位置と図7に示す下限位置との間で上,下方向に移動(スライド)できる構成となっている。一方、下前窓20Bは、図6等に示す下限位置から上方に僅かな距離(例えば、5cm程度)だけ移動し、運転席8に着席したオペレータの足元に外気を送り込むものである。
【0038】
そして、ストッパ21によって上前窓20Aの下限位置を設定することにより、上前窓20Aを下限位置に移動させた場合でも、上前窓20Aの外側面に後述のワイパブレード28Bを当接させておくことができ、ワイパブレード28Bが上前窓20Aから外れてキャブ11内に入込むのを防止できる構成となっている。
【0039】
22は左後ピラー14と右後ピラー15との間に設けられたキャブ11の後面部で、該後面部22には、ガラス板等により形成された透明な後窓22Aが固定して設けられている。そして、運転席8に着席したオペレータは、後窓22Aを透してキャブ11の後方を目視する構成となっている。
【0040】
23は左前ピラー12と左後ピラー14との間に設けられたキャブ11の左側面部で、該左側面部23のうち左前ピラー12と左中間ピラー16との間には、オペレータがキャブ11内に乗降するための乗降口23Aが設けられている。そして、乗降口23Aは、左中間ピラー16に取付けられた乗降ドア23Bによって開,閉され、該乗降ドア23Bは左側面部23の前側部分を構成している。また、左側面部23のうち左中間ピラー16と左後ピラー14との間には、ガラス板等により形成された透明な左後窓23Cが固定して設けられ、オペレータは、左後窓23Cを透してキャブ11の左側方を目視する構成となっている。
【0041】
24は右前ピラー13と右後ピラー15との間に設けられたキャブ11の右側面部で、該右側面部24には、ガラス板等により形成された透明な右窓24Aが固定して設けられている。そして、運転席8に着席したオペレータは、右窓24Aを透してキャブ11の右側方を目視する構成となっている。
【0042】
25は上述した前面部18、後面部22、左側面部23、右側面部24の上端側を閉塞する天面部で、該天面部25の前部側には、ガラス板等により形成された透明な天窓25Aが固定して設けられ、運転席8に着席したオペレータは、天窓25Aを透してキャブ11の上方を目視する構成となっている。
【0043】
ここで、図8ないし図10に示すように、前面部18に設けられた上前窓20Aの上端縁と天面部25に設けられた天窓25Aの前端縁とは、左前ピラー12と右前ピラー13の上端部間を連結する前横連結部材17Aによって仕切られている。従って、運転席8に着席したオペレータが、上前窓20A及び天窓25Aを透してキャブ11の前方及び上方を目視するときには、前横連結部材17Aの範囲がオペレータにとって死角になる構成となっている。
【0044】
26はキャブ11に設けられたワイパ装置で、該ワイパ装置26は、キャブ11の前面部18に設けられた前窓20(上前窓20A)に付着した雨水、汚れ等を払拭し、この前窓20を清浄な状態に保つものである。ここで、ワイパ装置26は、図6ないし図10に示すように、一定の角度範囲で出力軸27Aを往復回動させるモータ27と、該モータ27によって駆動され上前窓20Aの外側面を払拭するワイパ部材28とにより大略構成されている。
【0045】
そして、ワイパ部材28は、一端側がモータ27の出力軸27Aに取付けられたワイパアーム28Aと、該ワイパアーム28Aの他端側に設けられたゴム板等からなるワイパブレード28Bとにより構成されている。また、モータ27には、ボルト挿通孔29Aが穿設された鋼板等からなるモータ側ブラケット29が固定されている。
【0046】
一方、キャブ11を構成する前横連結部材17Aの内側パネル17A2には、鋼板等を用いて形成されたキャブ側ブラケット30が溶接等の手段を用いて固着されている。そして、モータ側ブラケット29のボルト挿通孔29Aに挿通したボルト31を、キャブ側ブラケット30に螺着することにより、モータ27がキャブ側ブラケット30に着脱可能に取付けられている。このとき、モータ27の出力軸27Aは、キャブ側ブラケット30、前横連結部材17Aの内側パネル17A2及び外側パネル17A1を貫通し、該外側パネル17A1の外部へと突出している(図9参照)。
【0047】
そして、外側パネル17A1の外部に突出した出力軸27Aの突出端側には、ワイパアーム28Aの一端側が取付けられ、該ワイパアーム28Aの他端側に取付けられたワイパブレード28Bは、上前窓20Aの外側面に適度な押付力をもって当接している。
【0048】
これにより、モータ27が作動して出力軸27Aが一定の角度範囲を往復回動すると、ワイパアーム28Aが、図3中に実線で示す位置と二点鎖線で示す位置との間で連続的に左,右方向に揺動する。このため、ワイパアーム28Aの他端側に取付けられたワイパブレード28Bが、上前窓20Aの外側面上を摺動することにより、上前窓20Aの外側面に付着した雨水、汚れ等をワイパブレード28Bによって払拭することができる構成となっている。
【0049】
ここで、ワイパ装置26のモータ27は、図6ないし図9に示すように、キャブ11内における前面部18の左上角隅部18A、即ち、キャブ11の左前ピラー12と前横連結部材17Aとの接合部の近傍に位置して前横連結部材17Aに取付けられている。この場合、左上角隅部18Aは、運転席8に着席したオペレータが前窓20を透して外部を目視することができる視界の範囲から外れた位置にあり、前横連結部材17Aは、もともとオペレータが上前窓20Aあるいは天窓25Aを透して外部を目視するときに、当該オペレータの視線を遮る構造物である。
【0050】
これにより、運転席8に着席したオペレータが上前窓20A及び天窓25Aを透してキャブ11の前方及び上方を目視するときに、当該オペレータの視界がモータ27によって遮られることがなく、大きな視界を確保することができる構成となっている。また、モータ27をキャブ11内に設けることにより、掘削作業時における土砂等からモータ27を保護することができる構成となっている。
【0051】
ここで、ワイパ装置26のモータ27を、キャブ11の前面部18のうち前窓20よりも上方となる左上角隅部18Aに配置する理由について述べる。
【0052】
即ち、例えば図2に示すように、油圧ショベル1の作業装置4を小旋回姿勢に移行させるときに、キャブ11内のオペレータは、上前窓20A、天窓25Aを透してキャブ11の右上方を目視し、作業装置4のバケット4Eがキャブ11に干渉しないように監視しつつ、操作レバー装置9を慎重に操作する必要がある。
【0053】
この場合、仮にワイパ装置26のモータ27が、キャブ11の前面部18の右上角隅部、あるいは前面部18のうち左,右方向の中間部等に配設されていた場合には、上前窓20A及び天窓25Aを透してバケット4Eを目視するオペレータの視界が、モータ27、ワイパ部材28によって妨げられ、作業装置4を小旋回姿勢に移行させるときの作業性が低下してしまうという問題がある。
【0054】
これに対し、前面部18の左上角隅部18Aは、運転席8に着席したオペレータが上前窓20Aを透して外部を目視することができる視界の範囲から外れた位置にあるので、この左上角隅部18Aにモータ27を配置した場合には、キャブ11内のオペレータが上前窓20A及び天窓25Aを透してキャブ11の右上方を目視するときに、このオペレータの視界がモータ27等によって妨げられることがなく、オペレータは、バケット4Eとキャブ11との干渉を確実に監視しつつ作業装置4を小旋回姿勢に移行させることができる。
【0055】
以上の理由により、本実施の形態では、ワイパ装置26のモータ27を、キャブ11の前面部18のうち前窓20よりも上方となる左上角隅部18Aに配置する構成を採用している。
【0056】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、この油圧ショベル1は、下部走行体2によって作業現場まで自走した後、この作業現場において上部旋回体3を旋回させつつ、オフセット式の作業装置4を用いて側溝等の掘削作業を行う。
【0057】
このとき、キャブ11内で運転席8に着席したオペレータは、前面部18に設けられた前窓20(上前窓20A)及び天面部25に設けられた天窓25Aを透してキャブ11の前方及び上方を目視することにより、作業装置4の動作を確認しつつ操作レバー装置9によって作業装置4を操作することができる。
【0058】
そして、例えば雨天時における掘削作業により、前面部18の上前窓20Aに雨水、泥等の汚れが付着した場合には、ワイパ装置26を作動させることにより、図3中に実線及び二点鎖線で示すようにワイパアーム28Aを左,右方向に揺動させる。これにより、ワイパアーム28Aの他端側に取付けられたワイパブレード28Bが、上前窓20Aの外側面に付着した汚れを払拭し、上前窓20Aを清浄な状態に保つことができる。
【0059】
ここで、本実施の形態によれば、図6ないし図9等に示すように、ワイパ装置26のモータ27を、キャブ11内に位置して前面部18のうち前窓20よりも上方となる左上角隅部18Aに配設する構成としている。この場合、前面部18の左上角隅部18Aは、運転席8に着席したオペレータが上前窓20Aを透して外部を目視することができる視界の範囲から外れた位置にあるので、オペレータが上前窓20A、天窓25Aを透して外部を目視するときに、オペレータの視界がモータ27によって遮られることがなく、当該オペレータの視界を大きく確保することができる。このため、オペレータは、大きな視界を確保しつつキャブ11内で操作レバー装置9等を操作することができるので、作業装置4を用いて掘削作業等を行うときの作業性を高めることができる。
【0060】
また、モータ27をキャブ11内に配設することにより、作業装置4を用いた掘削作業時における土砂等からモータ27を保護することができ、ワイパ装置26を長期に亘って円滑に作動させることができる。
【0061】
また、本実施の形態によれば、ワイパ装置26のモータ27を、キャブ11の左前ピラー12と前横連結部材17Aとの接合部の近傍位置に設ける構成としている。この場合、前横連結部材17Aは、もともとオペレータがキャブ11の上前窓20A、天窓25Aを透して外部を目視するときに、当該オペレータの視線を遮る構造物である。従って、もともとオペレータの視線を遮る構造物であった連結部材を利用してモータ27を取付けることにより、このモータ27がさらにオペレータの視線を遮ることがなく、この分、キャブ11内のオペレータが上前窓20A、天窓25Aを透して外部を目視するときの視界を可及的に大きく確保することができる。
【0062】
しかも、ワイパ装置26のモータ27を前面部18の左上角隅部18Aに配設することにより、上前窓20Aの払拭動作を行わないときには、ワイパ部材28のワイパアーム28A及びワイパブレード28Bを、窓枠19の左端縁部に沿った位置に保持しておくことができる。これにより、オペレータが上前窓20Aを透してキャブ11の前方を目視するときに、当該オペレータの視界がワイパ部材28によって妨げられることがなく、オペレータの視界をさらに大きく確保することができる。
【0063】
さらに、本実施の形態によれば、窓枠19の前レール19Aにストッパ21を設け、該ストッパ21によって上前窓20Aの下限位置を設定することにより、上前窓20Aを下限位置に移動させた場合でも、上前窓20Aの外側面にワイパブレード28Bを当接させておくことができる。これにより、上前窓20Aを下限位置と上限位置との間で移動させたときに、ワイパブレード28Bが上前窓20Aから外れて不用意にキャブ11内に入込むのを抑えることができ、上前窓20Aを移動させるときの作業性を高めることができる。
【0064】
なお、上述した実施の形態では、キャブ11の左前ピラー12と前横連結部材17Aとの接合部の近傍位置にワイパ装置26のモータ27を配置するため、前横連結部材17Aに固着したキャブ側ブラケット30に、ワイパ装置26のモータ27を取付ける構成としている(図8参照)。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図11に示す変形例のように、左前ピラー12に溶接等の手段を用いてキャブ側ブラケット32を固着し、このキャブ側ブラケット32にワイパ装置26のモータ27を取付ける構成としてもよい。
【0065】
また、上述した実施の形態では、キャブ11を構成する左前ピラー12と左後ピラー14との間に左中間ピラー16を設けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば左中間ピラーを持たないキャブにも適用することができる。
【0066】
また、上述した実施の形態では、オフセット式の作業装置4を備えた油圧ショベル1を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えばスイングポストを有するスイング式の作業装置を備えた油圧ショベル、あるいはオフセット動作やスイング動作を行わないモノブーム式の作業装置を備えた油圧ショベルにも適用することができる。
【0067】
さらに、上述した各実施の形態では、建設機械として油圧ショベル1を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば油圧クレーン、ホイールローダ等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施の形態による油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】作業装置を小旋回姿勢に移行させた状態の油圧ショベルを示す斜視図である。
【図3】油圧ショベルのキャブを単体で左前部側からみた斜視図である。
【図4】乗降ドアを取外したキャブを単体で左後部側からみた斜視図である。
【図5】キャブ、運転席、操作レバー装置等を図1中の矢示V−V方向からみた断面図である。
【図6】キャブの上前窓、下前窓、ワイパ装置等を上前窓が上限位置に移動した状態で示す一部破断の斜視図である。
【図7】キャブの上前窓、下前窓、ワイパ装置等を上前窓が下限位置に移動した状態で示す図6と同様な斜視図である。
【図8】ワイパ装置のモータをキャブの前横連結部材に取付けた状態をキャブ内からみた要部拡大図である。
【図9】キャブの前窓、天窓、前横連結部材、ワイパ装置等を図8中の矢示IX−IX方向からみた断面図である。
【図10】キャブの前横連結部材にモータを取付ける状態を示す分解斜視図である。
【図11】ワイパ装置のモータをキャブの左前ピラーに取付けた変形例を示す図8と同様な要部拡大図である。
【符号の説明】
【0069】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
11 キャブ
12 左前ピラー
13 右前ピラー
17 連結部材
17A 前横連結部材
18 前面部
18A 左上角隅部
20 前窓
20A 上前窓
20B 下前窓
26 ワイパ装置
27 モータ
28 ワイパ部材
28A ワイパアーム
28B ワイパブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業装置を備えた自走可能な車体と、運転室を画成するため前記作業装置の左側に配置され前面部に前窓が設けられたキャブと、該キャブに設けられ前記前窓の汚れを払拭するワイパ装置とを備えてなる建設機械において、
前記ワイパ装置は、駆動源となるモータと、該モータによって駆動されることにより前記前窓の外側面を払拭するワイパ部材とにより構成し、前記モータは、前記キャブ内に位置して前記前面部のうち前記前窓よりも上方となる左上角隅部に配設する構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記ワイパ装置のモータが配設される前記キャブ内の左上角隅部は、前記前窓を透して外部を目視することができる視界の範囲から外れた位置である請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記ワイパ装置のモータは、前記キャブの左前ピラーと該左前ピラーを右前ピラーに連結する連結部材との接合部の近傍位置に設ける構成としてなる請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記前窓は前記前面部に上,下方向に移動可能に取付ける構成とし、前記ワイパ部材は、前記前窓が下限位置に移動した状態でも該前窓の外側面に当接する構成としてなる請求項1,2または3に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−50785(P2007−50785A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−237702(P2005−237702)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】