説明

建設機械

【課題】 空調ユニット、ダクトを設けた場合でも、シート周りに広いスペースを確保することにより作業環境を良好にする。
【解決手段】 床板9と隔壁板10とによりフロアベース8を一体的に形成し、フロアベース8の床板9上にシート台13を設け、床板9とシート台13との間の空間部14に空調ユニット24を配設する。また、隔壁板10には、その下側に空調ユニット24と接続する流入開口10Cを設け、上側に吹出口20Fに接続する流出開口10Dを設ける。そして、隔壁板10の背面側に通路形成部材26を取付け、この隔壁板10の背面と通路形成部材26とによりダクト25を構成する。このように、ダクト25を隔壁板10の背面に設けることができるから、キャブ18内に広いスペースを確保し、シート15の調整範囲を大きくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等の建設機械に関し、特に、キャブ内に室内機となる空調ユニットを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とによって大略構成されている。
【0003】
また、上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、該旋回フレームの後側に搭載され油圧ポンプを駆動するエンジンと、前記フレーム上に設けられ床板の後側が該エンジンの前側を隔てる隔壁板となったフロアベースと、該フロアベースの床板の上方に設けられオペレータが着座するシートを搭載するシート台と、前記フロアベースに設けられ該シートの周囲と上部を覆うキャブとにより大略構成されている。
【0004】
また、油圧ショベルには、キャブ内で作業するオペレータの作業環境を良好にするために、冷風、温風等の調和空気を供給する空調ユニットを備えたものがある。この空調ユニットは、例えばシート台と床板との間に形成される空間部に配設されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−121770号公報
【0006】
また、油圧ショベルには、空調ユニットをシートとキャブの後面部との間に位置して床板上に設けたものがあり、この空調ユニットに接続されるダクトは、シートとキャブの後面部との間を上側に延びて吹出口に接続されている(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。
【0007】
【特許文献2】特開2005−145348号公報
【特許文献3】特開2005−239005号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した特許文献2、特許文献3による油圧ショベルでは、空調ユニットから供給される調和空気を上方に導くダクトを、シートとキャブの後面部との間に配置している。しかし、油圧ショベルには、ミニショベルと呼ばれる小型の油圧ショベルがあり、この小型の油圧ショベルでは、車格に合わせてキャブも小さく構成されている。
【0009】
このため、小型の油圧ショベルに用いるキャブに対し、その後面部とシートとの間にダクト等を配置した場合、このダクトによって室内スペースが狭くなり、シートを前,後方向に移動させるスライド量、背もたれ部の角度を調整するリクライニング量が小さくなる。この結果、例えば体格の大きなオペレータは、窮屈な作業姿勢で作業を行わなくてはならず、作業環境、作業効率等が低下してしまうという問題がある。
【0010】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、空調ユニット、ダクトを設けた場合でもシート周りのスペースを広くとることができ、作業環境を良好にできるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明による建設機械は、支持構造体をなし後側にエンジンが搭載されるフレームと、該フレーム上の前側に設けられた床板と、該床板の後側から立上って前記エンジンの前側を隔てる隔壁板と、該隔壁板の前側に位置して前記床板の上方に設けられオペレータが着座するシートを搭載すると共に前記床板との間に空間部を確保するシート台と、該シート台と前記床板との間の前記空間部に配設され調和空気を供給する空調ユニットとを備えてなる。
【0012】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記隔壁板の背面側に前記空調ユニットから供給される調和空気を上方に導くダクトを設ける構成としたことにある。
【0013】
請求項2の発明によると、前記隔壁板には、下側に位置する流入開口と上側に位置する流出開口とを設け、前記ダクトは、前記隔壁板の背面に取付けられ前記流入開口から流出開口に調和空気を流通させる通路を形成する通路形成部材により構成したことにある。
【0014】
請求項3の発明によると、前記隔壁板の上面位置には、前記ダクトを介して導かれる調和空気を吹出す吹出口を設ける構成としたことにある。
【0015】
請求項4の発明によると、前記通路形成部材は、横断面U字状の枠部材によって形成したことにある。
【0016】
請求項5の発明によると、前記通路形成部材は、筒部材によって形成したことにある。
【0017】
請求項6の発明によると、前記床板と隔壁板とによりフロアベースを一体的に形成し、該フロアベースの床板上に前記空調ユニットとシート台を取付け、前記フロアベースにこれら空調ユニットとシート台を取囲むようにキャブを設ける構成としたことにある。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、空調ユニットから供給される調和空気を上方に導くダクトは、エンジン側となる隔壁板の背面側に設けているから、シート周りには、ダクトを外部に配置した分だけ広いスペースを確保することができる。また、例えばシートを前,後方向に移動させるスライド量、背もたれ部の角度を調整するリクライニング量は、ダクトを外部に配置した分だけ大きくすることができる。
【0019】
この結果、オペレータには、その体格に拘らず良好な作業姿勢、作業環境を提供することができる。また、作業姿勢、作業環境を良好にすることにより作業性、安全性についても向上することができる。また、ダクトを隔壁板の背面側(外部)に設けたことにより、隔壁板の内面側は自由な形状に設計することができ、シート、各種機器類等を効率よく配置することができる。
【0020】
一方、隔壁板は、ダクトを取付けたことにより強度を高めることができる。さらに、ダクトは、空調ユニットから供給される調和空気を上方に導くことができるから、シートの後側から調和空気を効率よく吹出すことができ、冷暖房の効率を高めることができる。
【0021】
請求項2の発明によれば、ダクトは、下側の流入開口と上側の流出開口に亘って隔壁板の背面に通路形成部材を取付けることにより、少ない部品点数で簡単に構成することができる。そして、隔壁板の流入開口に空調ユニットを接続することにより、該空調ユニットから供給される調和空気は、流入開口から通路形成部材内の通路に流入することができ、該通路を介して流出開口から流出させることができる。
【0022】
請求項3の発明によれば、ダクト内を流通する調和空気は、シートの後側となる隔壁板の上面位置に設けられた吹出口から吹出すことができる。これにより、シートの周囲では、シートの後側から調和空気を吹出すことにより、この調和空気を効率よく対流させることができ、冷房効率、暖房効率等を向上することができる。
【0023】
請求項4の発明によれば、通路形成部材を横断面U字状の枠部材として形成し、この枠部材を隔壁板の背面に取付けることによりダクトを構成することができる。従って、ダクトを構成するときに隔壁板の一部を利用できるから、通路形成部材は、単純な形状でコンパクトに形成することができる。これにより、小型の建設機械でも調和空気を上方に導くダクトを設けることができる。
【0024】
請求項5の発明によれば、通路形成部材を筒部材によって形成しているから、筒部材の両端部を隔壁板の背面に取付けることによりダクトを構成することができる。
【0025】
請求項6の発明によれば、フロアベースの床板上に空調ユニットとシート台を取付け、この状態でフロアベースにキャブを設けることにより、これら空調ユニットとシート台をキャブによって取囲むことができ、フロアベースとキャブによって運転室を画成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態に適用される建設機械として、ミニショベルと呼ばれる小型の油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0027】
まず、図1ないし図10は本発明の第1の実施の形態を示している。図1において、1は第1の実施の形態に適用される建設機械の具体例として示される小型の油圧ショベルである。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側に俯仰動可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行う作業装置4とにより大略構成されている。
【0028】
また、上部旋回体3は、図1ないし図3に示す如く、例えば厚肉な鋼板等を用いて形成された旋回フレーム5と、該旋回フレーム5の後部側に搭載されたエンジン6と、該エンジン6の左側に取付けられた油圧ポンプ7(いずれも図1中に点線で図示)と、旋回フレーム5の右側に設けられた作動油タンク、ラジエータ、オイルクーラ(いずれも図示せず)と、後述するフロアベース8、シート台13、シート15、キャブ18、空調ユニット24、ダクト25等とにより大略構成されている。
【0029】
8は旋回フレーム5上に設けられたフロアベースである。このフロアベース8は、後述するキャブ18の下側が取付けられるものであり、運転室の下側を閉塞するものである。また、フロアベース8は、図4ないし図8に示す如く、後述の床板9、隔壁板10等を溶接等の手段を用いて固着することにより一体的に形成されている。なお、フロアベース8としては、例えば床板9を隔壁板10と別個に設け、ボルト等を用いて連結する構成としてもよい。
【0030】
9はフロアベース8の前側部分を構成する床板で、該床板9は、旋回フレーム5上の前側に位置して設けられるものである。また、床板9は、図8等に示すように、ほぼ四角形状に形成され、前側部位がシート15に着座したオペレータが足を乗せる足乗せ部9Aとなっている。一方、床板9の後側部位は、後述のシート台13、空調ユニット24等を取付ける台取付部9Bとなっている。
【0031】
10は床板9の後側に設けられた隔壁板である。この隔壁板10は、床板9の後側に立上って形成され、フロアベース8を旋回フレーム5に取付けたときにエンジン6の前側と上側を隔てるものである。そして、隔壁板10は、床板9の後端縁から立上がる前壁面をなしエンジン6の前側を覆う立上り板10Aと、該立上り板10Aの上部から後方に延びてエンジン6の上側を覆う後延板10Bと、前記立上り板10Aの上,下方向の中間部に位置して左,右方向の右側寄りに設けられた流入開口10Cと、該流入開口10Cとほぼ同じ左,右方向位置で前記後延板10Bの前側寄りに設けられた流出開口10Dとにより構成されている。
【0032】
また、立上り板10Aは、上側部分が後側に傾斜する傾斜面部10A1となり、この傾斜面部10A1は、後述のシート15を後側に大きくスライドさせたり、背もたれ部15Bを後側に大きくリクライニングするためのスペースを確保する働きを持っている。
【0033】
ここで、隔壁板10の立上り板10Aと後延板10Bは、後述の通路形成部材26と一緒にダクト25を構成するもので、立上り板10Aの背面側(外面側)となる後面側、後延板10Bの背面側(外面側)となる下面側には、両者に亘って前記通路形成部材26を固着する構成となっている。
【0034】
また、11はフロアベース8の左側に位置して床板9と隔壁板10の立上り板10Aとの間に設けられた左側板、12はフロアベース8の右側に位置して床板9と隔壁板10の立上り板10Aとの間に設けられた右側板をそれぞれ示している。これらの左側板11、右側板12は、床板9に対する隔壁板10の取付強度を高めるものである。
【0035】
13は床板9上に設けられたシート台(図2等参照)で、該シート台13は、隔壁板10の前側に位置する台取付部9Bの上方に設けられている。また、シート台13は、図4、図6に示す如く、例えば長方形状の鋼板の両側を折曲げることにより、平坦な上面を有する門型状に形成されている。そして、シート台13は、所定の高さ位置となるように、その上面に後述のシート15を搭載するものである。また、門型状のシート台13は、床板との間に空間部14を確保することができ、この空間部14内には、後述の空調ユニット24が配設されている。
【0036】
15はシート台13上に搭載されたシートで、該シート15は、油圧ショベル1を操作するときにオペレータが着座するものである。そして、シート15は、シート台13上に例えば前,後方向にスライド可能に取付けられた座部15Aと、該座部15Aの後部に前,後方向にリクライニング可能(傾動可能)に取付けられた背もたれ部15Bとにより構成されている。
【0037】
また、シート15の左,右両側には、作業装置4等を操作するための操作レバー16が設けられている。一方、シート15の前側には、床板9の足乗せ部9Aの前側に位置して下部走行体2を走行させるための走行レバー・ペダル17が配置されている。
【0038】
18は旋回フレーム5の左側に位置してフロアベース8上に設けられたキャブである。このキャブ18は、シート15の周囲と上部を覆うことにより、オペレータが各種操作を行う運転室を画成するものである。そして、キャブ18は、前面部19、後面部20、左側面部21、右側面部22、天井面部23とにより箱型状に形成されている。また、左側面部21には、前側寄りに位置してドア21A(図1中に図示)が開閉可能に取付けられている。
【0039】
ここで、キャブ18の後面部20は、図7、図9等に示す如く、隔壁板10の後延板10B上に取付けられ中央にキャブダクト入口20A1が設けられた取付基板20Aと、該取付基板20Aに設けられ上面に開口20B1を有する箱状の補強枠20Bと、前記取付基板20Aの左,右に立設された左,右の支柱20C,20Dとにより大略構成されている。また、前記補強枠20Bの開口20B1の位置には、前記キャブダクト入口20A1を覆うように箱状のキャブダクト20Eが設けられ、該キャブダクト20Eには、シート15の後側に位置してグリル、ルーバ等と呼ばれる2個の吹出口20Fが取付けられている。そして、吹出口20Fは、後述のダクト25から送られた調和空気をキャブ18内に吹出すものである。
【0040】
24は室内機となる空調ユニットで、該空調ユニット24は、シート台13と床板9との間の空間部14内に位置して床板9の台取付部9B上に取付けられている。また、空調ユニット24は、エンジン6側に取付けられたコンプレッサ、凝縮機(いずれも図示せず)等の室外機と共に空調装置を構成している。そして、空調ユニット24は、吸込んだ空気を冷気または暖気に調整し、この調和空気を後述のダクト25等を介してキャブ18内に向けて供給するものである。
【0041】
また、空調ユニット24は、左,右方向に延びる箱体状の本体ケース24A内に送風ファン、エバポレータ、ヒータコア(いずれも図示せず)等を収容している。また、本体ケース24Aの右側には、調和空気の流出口24Bが設けられ、該流出口24Bには、後向きに屈曲した逆L字状の流出ダクト24Cが取付けられる。
【0042】
ここで、空調ユニット24は、図4、図6に示すように、本体ケース24Aを床板9の台取付部9B上に取付けた後、流出ダクト24Cの一方を流出口24Bに取付け、他方を隔壁板10の流入開口10Cに取付ける。そして、空調ユニット24は、送風ファンを回転駆動することにより、本体ケース24A内を流通する空気を、エバポレータで冷やし、またはヒータコアで温めて調和空気とする。そして、この調和空気は、流出ダクト24C、ダクト25を介して後面部20の各吹出口20F等からキャブ18内に吹出すことにより、該キャブ18内を適度な温度に調整することができる。
【0043】
25は隔壁板10の背面側に設けられた第1の実施の形態によるダクトを示している。このダクト25は、空調ユニット24から供給される調和空気を上方のキャブ18の後面部20に設けられた吹出口20Fに導くものである。このため、ダクト25は、空調ユニット24と吹出口20Fが設けられたキャブダクト20Eとを接続している。ここで、ダクト25は、隔壁板10の背面側に後述の通路形成部材26が取付けることにより、隔壁板10と通路形成部材26とにより内部にエア通路25Aを形成する。このときに、隔壁板10は、ダクト25の1つの面部として利用することができる。
【0044】
26はダクト25を隔壁板10と一緒に構成する通路形成部材を示し、該通路形成部材26は、横断面U字状をした枠部材によって形成されている。この通路形成部材26は、隔壁板10の背面に取付けられている。これにより、通路形成部材26は、隔壁板10との間に流入開口10Cから流出開口10Dに調和空気を流通させるエア通路25Aを有したダクト25を形成するものである。また、通路形成部材26は、隔壁板10の背面に取付けられたときに角筒状のダクト25を形成するように、該ダクト25の3面部を形成している。
【0045】
即ち、通路形成部材26は、図7、図10に示す如く、左,右方向に所定寸法離間して配設された左,右の側面板26A,26Bと、該各側面板26A,26B間に位置してその周縁に固着された底面板26Cとにより、横断面U字状となる凹溝(樋)形状をなしている。また、左,右の側面板26A,26Bは、上側に向け順次後側に湾曲した弓形状に形成され、これに合わせて底面板26Cも湾曲している。さらに、左,右の側面板26A,26Bの離間寸法は、隔壁板10の流入開口10C、流出開口10Dの幅寸法とほぼ同じ寸法または多少広い寸法に設定されている。
【0046】
そして、通路形成部材26は、図5、図6に示す如く、例えば溶接手段等を用い、立上り板10Aの背面(後面)と後延板10Bの背面(下面)に左側面板26A,右側面板26B、底面板26Cを固着することにより、隔壁板10に一体的に取付けられる。このように、隔壁板10に通路形成部材26を取付けた状態では、隔壁板10の流入開口10Cから流出開口10Dに調和空気を流通させるエア通路25Aを備えた角筒状のダクト25を構成することができる。
【0047】
また、通路形成部材26は、隔壁板10の背面側に取付けているから、ダクト25をキャブ18の外部となるエンジン6側に配置することができ、ダクト25を外部に配置した分だけキャブ18内の室内スペースを広くすることができる。また、障害物になり得るダクト25は、シート15の後側から排除することができ、シート15のスライド量、リクライニング量も大きくすることができる。
【0048】
なお、27はキャブ18内の右前側に配設された前ダクトカバー(図2参照)である。この前ダクトカバー27の上側には、シート15に着座したオペレータに向けて調和空気を吹出す前上吹出口27Aが設けられている。また、前ダクトカバー27の側面には、オペレータの足元等に調和空気を吹出す前下吹出口27Bが2箇所に設けられている。これらの吹出口27A,27Bは、空調ユニット24に設けられた他の流出口(図示せず)に接続されている。
【0049】
第1の実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、フロアベース8に空調ユニット24、ダクト25等を組付けるときの作業手順について説明する。
【0050】
まず、空調ユニット24から後面部20の吹出口20Fに調和空気を流通するダクト25を形成する場合には、隔壁板10の流入開口10Cと流出開口10Dとを接続するように、立上り板10Aと後延板10Bの背面に通路形成部材26を固着する。これにより、隔壁板10の立上り板10A、後延板10Bと通路形成部材26とによってダクト25を形成することができる。
【0051】
また、床板9の台取付部9Bに空調ユニット24の本体ケース24Aを取付け、該本体ケース24Aの流出口24Bと隔壁板10の流入開口10Cとを接続するように流出ダクト24Cを取付ける。これにより、図6に示す如く、空調ユニット24の流出ダクト24Cをダクト25と接続することができる。一方、隔壁板10の後延板10B上にキャブ18の後面部20を取付けることにより、流出開口10D等を介してキャブダクト20E(吹出口20F)をダクト25に接続することができる。
【0052】
次に、油圧ショベル1の動作について説明する。オペレータはキャブ18内に乗込んでシート15に着座する。このときに、オペレータは、シート15の座部15Aを前,後方向にスライドさせると共に、背もたれ部15Bをリクライニングさせることにより、作業し易い運転姿勢でシート15に着座することができる。
【0053】
そして、オペレータは、シート15に着座した状態で走行レバー・ペダル17を操作することにより、下部走行体2によって油圧ショベル1を目的の作業現場まで走行させることができる。また、作業現場では、操作レバー16を操作して作業装置4を俯仰動させることにより、土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0054】
一方、上述した作業時には、空調ユニット24を駆動し、該空調ユニット24から供給される調和空気を、ダクト25のエア通路25Aを介してキャブダクト20Eの吹出口20Fからキャブ18内に吹出すことにより、該キャブ18内をオペレータの好みに応じて適度な温度に調整することができる。
【0055】
以上のように、第1の実施の形態によれば、空調ユニット24から供給される調和空気を上方に導くダクト25は、エンジン6側となる隔壁板10の背面側に設ける構成としている。従って、キャブ18内には、空調用のダクト25を外部に配置した分だけシート15の周囲(特に後側)に広いスペースを確保することができる。また、シート15を後方向に大きくスライドさせることや背もたれ部15Bを後側に大きくリクライニングさせることができる。
【0056】
この結果、体格に拘らずオペレータに良好な作業姿勢、作業環境を提供することができる。また、オペレータの作業姿勢、作業環境を良好にすることにより作業性、安全性についても向上することができる。
【0057】
しかも、通路形成部材26を外部に取付けたことにより、隔壁板10のシート15側(室内側)は自由な形状に設計することができるから、シート15、各種機器類等を効率よく配置することができる。この場合、第1の実施の形態では、隔壁板10の立上り板10A(傾斜面部10A1)を平坦に形成することができるから、シート15のスライド量、背もたれ部15Bのリクライニング量を後側に大きくすることができる。
【0058】
また、板材を折り曲げて形成した隔壁板10に横断面U字状の通路形成部材26を取付けることにより、隔壁板10の強度を通路形成部材26によって高めることができ、隔壁板10(フロアベース8)の軽量化、振動等に対する耐久性の向上等を図ることができる。また、通路形成部材26は、単純な横断面U字状(樋形状)とすることができるから、簡単な作業で安価に製造することができ、生産性を向上することができる。
【0059】
一方、横断面U字状に形成された通路形成部材26を隔壁板10の背面に取付けることにより、隔壁板10を1つの面部として利用しつつ、該隔壁板10と通路形成部材26とによりダクト25を形成することができる。これにより、単純な断面形状の通路形成部材26を隔壁板10に取付けるだけでダクト25を簡単に形成することができ、該ダクト25を少ない部品点数でコンパクトに形成できる。
【0060】
また、ダクト25をコンパクトに形成したことにより、小型の油圧ショベル1のキャブ18でも、シート15の後側の吹出口20Fからキャブ18内に調和空気を吹出す構成とすることができる。これにより、吹出口20Fから吹出す調和空気は、キャブ18内で円滑に対流させることができるから、冷暖房の効率を高めることができる。
【0061】
また、空調ユニット24は、シート15を搭載するシート台13と床板9との間の空間部14を利用して設ける構成としているから、空調ユニット24を設けた場合でもキャブ18内のスペースを広くとることができ、この点でもキャブ18内の居住性を良好にすることができる。
【0062】
さらに、床板9と隔壁板10とによりフロアベース8を一体的に形成しているから、床板9と隔壁板10とを旋回フレーム5に簡単に取付けることができる。しかも、床板9上にキャブ18を取付けることにより、空調ユニット24、シート台13等をキャブ18によって取囲むことができ、フロアベース8とキャブ18によって運転室を画成することができる。
【0063】
次に、図11は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、通路形成部材を筒部材によって形成したことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0064】
図11において、31は第2の実施の形態によるダクトを示している。このダクト31は、第1の実施の形態によるダクト25とほぼ同様に、空調ユニット24から供給される調和空気をエア通路31Aにより上方に位置するキャブ18の後面部20の吹出口20Fに導くものである。しかし、第2の実施の形態によるダクト31は、隔壁板10を利用することなく、後述する通路形成部材32単独で構成している点で、第1の実施の形態によるダクト25と相違している。
【0065】
32はダクト25を構成する第2の実施の形態による通路形成部材を示している。この通路形成部材32は、隔壁板10の背面に取付けられるもので、横断面が例えば角形、丸型等をした筒部材として形成されている。そして、通路形成部材32は、下端側が隔壁板10の流入開口10Cに連通するように立上り板10Aの背面(後面)に取付けられ、上端側が流出開口10Dに連通するように後延板10Bの背面(下面)に取付けられている。これにより、通路形成部材32は、隔壁板10の流入開口10Cから流出開口10Dに調和空気を流通させるエア通路31Aを備えたダクト31を構成することができる。
【0066】
かくして、このように構成された第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、通路形成部材32の両端部を隔壁板10の背面に取付けるだけで、ダクト31を簡単に構成することができる。
【0067】
なお、第1の実施の形態では、隔壁板10と共にダクト25を構成する通路形成部材26は、左,右の側面板26A,26Bの周縁に底面板26Cを固着することにより横断面U字状に形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばプレス成型等の手段を用いて通路形成部材26を一体成型物として形成する構成としてもよい。また、通路形成部材26は、横断面形状を円弧形状等の他の形状としてもよい。
【0068】
また、各実施の形態では、建設機械としてキャブ18内に空調ユニット24を備えたクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、キャブ内に空調ユニット24を備えた建設機械であれば、ホイール式の油圧ショベル、ホイールローダ、リフトトラック等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1の実施の形態に適用される油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】フロアベース、シート台、シート、キャブ等を拡大して示す外観斜視図である。
【図3】キャブ内を図1中の矢示III−III方向からみた拡大断面図である。
【図4】フロアベース、シート台、空調ユニット、通路形成部材、キャブの後面部を組立てた状態で前側から示す組立斜視図である。
【図5】フロアベースと通路形成部材を組立てた状態で後側から示す組立斜視図である。
【図6】空調ユニットとダクトと吹出口との接続状態を図3中の矢示VI−VI方向からみた拡大断面図である。
【図7】フロアベース、空調ユニット、通路形成部材、キャブの後面部を分解した状態で前側から示す分解斜視図である。
【図8】フロアベースを単体で示す外観斜視図である。
【図9】キャブの後面部を拡大して示す要部拡大の外観斜視図である。
【図10】通路形成部材を単体で示す外観斜視図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態によるダクトを空調ユニット、キャブの後面部等と一緒に図6と同様位置から示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0070】
1 油圧ショベル(建設機械)
5 旋回フレーム
6 エンジン
8 フロアベース
9 床板
9A 足乗せ部
9B 台取付部
10隔壁板
10A 立上り板
10B 後延板
10C 流入開口
10D 流出開口
13 シート台
14 空間部
15 シート
15A 座部
15B 背もたれ部
18 キャブ
20 後面部
20A 取付基板
20B 補強枠
20C 左支柱
20D 右支柱
20E キャブダクト
20F 吹出口
24 空調ユニット
24A 本体ケース
24B 流出口
24C 流出ダクト
25,31 ダクト
25A,31A エア通路
26,32 通路形成部材
26A 左側面板
26B 右側面板
26C 底面板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造体をなし後側にエンジンが搭載されるフレームと、該フレーム上の前側に設けられた床板と、該床板の後側から立上って前記エンジンの前側を隔てる隔壁板と、該隔壁板の前側に位置して前記床板の上方に設けられオペレータが着座するシートを搭載すると共に前記床板との間に空間部を確保するシート台座と、該シート台座と前記床板との間の前記空間部に配設され調和空気を供給する空調ユニットとを備えてなる建設機械において、
前記隔壁板の背面側に前記空調ユニットから供給される調和空気を上方に導くダクトを設ける構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記隔壁板には、下側に位置する流入開口と上側に位置する流出開口とを設け、
前記ダクトは、前記隔壁板の背面に取付けられ前記流入開口から流出開口に調和空気を流通させる通路を形成する通路形成部材により構成してなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記隔壁板の上面位置には、前記ダクトを介して導かれる調和空気を吹出す吹出口を設ける構成としてなる請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記通路形成部材は、横断面U字状の枠部材によって形成してなる請求項2または3に記載の建設機械。
【請求項5】
前記通路形成部材は、筒部材によって形成してなる請求項2または3に記載の建設機械。
【請求項6】
前記床板と隔壁板とによりフロアベースを一体的に形成し、該フロアベースの床板上に前記空調ユニットとシート台座を取付け、前記フロアベースにこれら空調ユニットとシート台座を取囲むようにキャブを設ける構成としてなる請求項1,2,3,4または5に記載の建設機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−13033(P2008−13033A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185817(P2006−185817)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】