説明

建設機械

【課題】 キャブを取付けていたフロアにキャブに代えてキャノピを取付ける場合でも、キャブとキャノピでフロアを共用できるようにする。
【解決手段】 キャブ18をフロア11に対し防振支持する防振マウント20の取付台座21は、取付ボルト22を用いて前側フロアプレート12,14に着脱可能に取付ける構成とした。従って、防振マウント20の取付台座21は、取付ボルト22によってフロア11に簡単に取付けることができる。また、取付ボルト22を緩めて防振マウント20の取付台座21をフロア11から取外した場合には、キャノピ30の取付けを邪魔する取付台座21を排除することができ、キャノピ30をフロア11上に取付けることができる。これにより、キャブ18に代えてキャノピ30を取付ける場合でも、1つのフロア11をキャブ18とキャノピ30の両方で共用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等の建設機械に関し、特に、キャブまたはキャノピを取付けることができる建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例としては油圧ショベルが知られており、この油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより構成されている。
【0003】
また、上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、該旋回フレーム上に設けられオペレータが着座する運転席と、該運転席の前側の足元に位置して前記フレーム上に設けられたフロアと、該フロア上に設けられ前記運転席の周囲と上方を覆うキャブと、前記旋回フレームの後側に搭載されたエンジン、油圧ポンプ等とにより大略構成されている。
【0004】
ここで、キャブ仕様の油圧ショベルの場合は、弾性を有するゴム部材等からなる防振マウントを介してキャブをフロアに防振状態で取付ける構成としている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−115267号公報
【0006】
また、防振マウントは、取付台座、弾性部材、ストッパ、固定ボルト等により構成されている。この防振マウントは、例えば取付台座を旋回フレーム側に溶接手段を用いて固着し、この取付台座に弾性部材、ストッパ、キャブの一部等を積み重ねるように組付け、これらを固定ボルトにより取付台座に固定する構成となっている(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献2】特開2005−219634号公報
【0008】
一方、油圧ショベルには、ミニショベルと呼ばれる超小型な油圧ショベルがあり、この種の油圧ショベルには、キャブに代えて運転席の上方を覆うキャノピを取付けることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した従来技術による油圧ショベルでは、旋回フレーム側に溶接手段を用いて防振マウントの取付台座を固着し、この防振マウントを介してキャブを取付ける構成としている。また、油圧ショベルは、作業環境等によって、キャブをキャノピに交換する場合がある。この場合には、防振マウントと共にキャブを取外し、代わりにキャノピをフロアに取付ける。
【0010】
しかし、キャブの防振マウントを取付ける位置とキャノピを取付ける位置とは、ほぼ同じ位置になるために、フロア側に残った取付台座がキャノピの取付部位に干渉してしまう。このように、取付台座がキャノピに干渉する場合には、例えば旋回フレーム側のフロアをキャノピ用のフロアに変更しなくてはならず、フロア、油圧機器、油圧配管等の着脱作業等が必要になるから、多大な労力や時間を要するという問題がある。
【0011】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、キャブを取付けていたフロアにキャブに代えてキャノピを取付けることができ、キャブとキャノピでフロアを共用できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による建設機械は、支持構造体をなし前側に作業装置が取付けられるフレームと、該フレーム上に設けられオペレータが着座する運転席と、該運転席の前側の足元に位置して前記フレーム上に設けられたフロアと、キャブを防振支持するために該フロアに設けられる防振マウントの取付台座とを備えてなる。
【0013】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記防振マウントの取付台座は、ボルトを用いることにより前記フロアに対して着脱可能に取付ける構成としたことにある。
【0014】
請求項2の発明は、前記防振マウントの取付台座は、前記フロアに運転席の周囲と上方を覆うキャブを搭載するときに前記ボルトを用いて前記フロアに取付け、運転席の上方を覆うキャノピを取付けるときには前記フロアから取外す構成としたことにある。
【0015】
請求項3の発明は、前記ボルトが挿通されるボルト挿通孔は、前記取付台座の取付位置を調整するために前記ボルトよりも大径な孔径の大径孔として形成したことにある。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、フロアにキャブを防振支持するために設けられた防振マウントは、ボルトを用いることにより取付台座をフレーム側のフロアに対して着脱可能に取付ける構成としている。
【0017】
従って、防振マウントの取付台座は、ボルトによってフロアに簡単に取付けることができる。これにより、防振マウントを構成する他の部品と共にキャブを取付台座に取付けることができる。一方、ボルトを緩めて防振マウントの取付台座をフロアから取外した場合には、キャノピの取付位置から取付台座を排除することができ、キャノピをフロアに簡単に取付けることができる。
【0018】
この結果、キャブに代えてキャノピを取付ける場合でも、防振マウントの取付台座を取外すことにより、1つのフロアをキャブとキャノピの両方で共用することができ、キャブからキャノピへの変更作業を容易に行うことができる。また、フロアを1種類にすることができ、生産性の向上、製造コストの低減を図ることができる。さらに、フロアにキャブもキャノピも取付けない場合には、取付台座を取外すことにより、フロアを平坦にすることができる。
【0019】
請求項2の発明によれば、フロアに運転席の周囲と上方を覆うキャブを搭載するときには、ボルトを用いてフロアに取付けることができる。一方、ボルトを緩めて防振マウントの取付台座をフロアから取外すことにより、運転席の少なくとも上方を覆うキャノピをフロアに取付けることができる。
【0020】
請求項3の発明によれば、ボルトが挿通されるボルト挿通孔は、取付台座の取付位置を調整するためにボルトよりも大径な孔径の大径孔として形成しているから、フロアにキャブを搭載するときには、ボルトを緩めることにより該ボルトと大径孔との隙間の分だけ取付台座の位置を調整することができ、キャブを簡単な作業で正確な位置に配設することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態による建設機械として、クローラ式の下部走行体を備えた超小型な油圧ショベルを例に挙げ、図1ないし図9に従って詳細に説明する。なお、本実施の形態では、キャブを搭載したキャブ仕様の油圧ショベルをキャノピを搭載したキャノピ仕様の油圧ショベルに変更する場合について説明する。
【0022】
図1において、1は土砂の掘削作業等に用いられる建設機械の代表例をなすキャブ仕様の油圧ショベルである。この油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、該上部旋回体3の前側に揺動および俯仰動可能に設けられた作業装置4と、前記下部走行体2の前側に設けられた排土装置5とにより大略構成されている。
【0023】
また、上部旋回体3は、油圧ショベル1の車格に対応して非常にコンパクトに形成されている。そして、上部旋回体3は、図2に示すように、後述の旋回フレーム6、エンジン、油圧ポンプ、作動油タンク、燃料タンク(いずれも図示せず)、運転席台座7、運転席8、フロア11、キャブ18、防振マウント20等を含んで構成されている。
【0024】
6は上部旋回体3の支持構造体をなすフレームとしての旋回フレームを示している。この旋回フレーム6は、図3に示す如く、厚肉な鋼板等を用いて形成された底板6Aと、該底板6A上に前,後方向に延びるように立設された左,右の縦板6Bと、該各縦板6Bの左,右両側に前,後方向に延びて設けられた左,右のサイドフレーム6Cと、前記縦板6Bとサイドフレーム6Cとを接続する複数本の張出しビーム6Dと、前記各縦板6Bの前端部に設けられ、スイング式の作業装置4を支持する円筒状の支持ブラケット6Eとにより大略構成されている。
【0025】
そして、旋回フレーム6後側には、エンジン、油圧ポンプ等が搭載され、右前側には、例えば作動油タンク、燃料タンク等が搭載され、左前側には、後述するフロア11のフロア支持部材10上に位置して制御弁装置(いずれも図示せず)等が搭載されている。
【0026】
7は旋回フレーム6の後側に設けられた運転席台座を示している。この運転席台座7は、図8、図9に示すように、エンジンの前側と上側を覆うようにステップ状に形成されている。
【0027】
8は旋回フレーム6上となる運転席台座7上に設けられた運転席で、該運転席8は、油圧ショベル1を操作するオペレータが着座するものである。また、運転席8の左,右両側には、作業装置4等を操作するための操作レバー9が配設されている。
【0028】
10は旋回フレーム6の左前側に設けられたフロア支持部材である。このフロア支持部材10は、図4に示す如く、前,後方向に延びた長方形状の取付板10Aと、該取付板10Aの前側に立設された2本の支柱10B,10Cとからなり、該各支柱10B,10C上には、後述するフロア11の前側フロアプレート12が取付けられている。また、フロア支持部材10は、その取付板10Aが旋回フレーム6上に取付けられ、この取付板10A上には例えば制御弁装置等が搭載される。このように、フロア支持部材10は、旋回フレーム6の一部を構成するものであるが、フロア11の取付台としても用いられている。
【0029】
11は運転席8の前側の足元に位置して旋回フレーム6上に設けられたフロアを示している。本実施の形態の場合、フロア11は、図2、図4に示す如く、後述の前側フロアプレート12と後側フロアプレート13と右前側フロアプレート14との3枚のフロアプレートによって構成されている。このフロア11は、旋回フレーム6の前側上方にほぼ平坦な足乗せ場を形成している。
【0030】
なお、本実施の形態のフロア11は、例えば3枚(3分割)のフロアプレート12,13,14により形成している。しかし、このフロア11は、組立作業性、メンテナンス作業性等を考えて3分割にしたものであるから、フロア11を1枚の板体で形成したり、2分割または4分割以上に分割する構成としても何ら問題はない。
【0031】
12は旋回フレーム6の前部に位置してフロア支持部材10の各支柱10B,10C上に設けられた前側フロアプレートである。この前側フロアプレート12は、左,右方向に延びる長方形状の板体として形成されている。また、前側フロアプレート12のほぼ中央には、後述する走行用レバー・ペダル15のバルブユニット(図示せず)を取付けるための中央取付穴12Aが形成され、該中央取付穴12Aの左,右両側には、予備ペダル16のバルブユニット,スイングペダル17のバルブユニット(いずれも図示せず)を取付けるための左取付穴12B,右取付穴12Cが形成されている。これにより、前側フロアプレート12は、各種のバルブを支持するバルブブラケットも構成している。
【0032】
さらに、前側フロアプレート12の左前側位置には、2個のボルト挿通孔12Dが左,右方向に離間して形成されている。これら2個のボルト挿通孔12Dは、図6に示すように、後述する防振マウント20の取付ボルト22を挿通するもので、該取付ボルト22よりも大径な孔径の大径孔として形成されている。これにより、ボルト挿通孔12Dは、取付ボルト22を緩めた状態では、該取付ボルト22との隙間分だけ防振マウント20を水平方向に移動して位置調整することができる。
【0033】
また、前側フロアプレート12には、2個のボルト挿通孔12D間に位置して1個のボルト逃し孔12Eが形成されている。このボルト逃し孔12Eは、後述する防振マウント20の固定ボルト28が取付台座21の下面から突出したときに、この突出端を避けるものである。
【0034】
13は前側フロアプレート12の後側に設けられた後側フロアプレートである。この後側フロアプレート13は、左,右方向に延びる長方形状の板体として形成されている。また、後側フロアプレート13は、運転席8に着座したオペレータの足元に位置するメインのフロアプレートを構成している。
【0035】
さらに、14は前側フロアプレート12の右側に連続するように設けられた右前側フロアプレートで(図4、図7参照)、該右前側フロアプレート14は、略長方形状の板体として形成されている。また、右前側フロアプレート14には、前側フロアプレート12のボルト挿通孔12D、ボルト逃し孔12Eと同様に形成されたボルト挿通孔14A、ボルト逃し孔14Bが形成されている。
【0036】
ここで、フロア11には、その前側部位に後述するキャブ18の前側部分が取付けられる。これに伴って、前側フロアプレート12と右前側フロアプレート14には、それぞれのボルト挿通孔12D,14Bに挿通される後述の取付ボルト22を用いて防振マウント20が取付けられる。
【0037】
15は運転席8の前側となる前側フロアプレート12の中央に設けられた左,右の走行用レバー・ペダルである。この走行用レバー・ペダル15は、そのバルブユニット(図示せず)が中央取付穴12Aに取付けられている。
【0038】
また、16は走行用レバー・ペダル15の左側に位置して前側フロアプレート12に取付けられた予備ペダルである。この予備ペダル16は、ブレーカ等の油圧機器(図示せず)を追加したときに、この油圧機器を足踏み操作するものである。そして、予備ペダル16は、そのバルブユニット(図示せず)が左取付穴12Bに取付けられている。
【0039】
さらに、17は走行用レバー・ペダル15の右側に位置して前側フロアプレート12に取付けられたスイングペダルである。このスイングペダル17は、作業装置4を左,右方向に揺動するスイングシリンダ(図示せず)を足踏み操作するものである。そして、スイングペダル17は、そのバルブユニット(図示せず)が右取付穴12Cに取付けられている。
【0040】
18は旋回フレーム6の上方に設けられたキャブを示している。このキャブ18は、運転席8の周囲と上方を覆ったボックス体として形成されている。また、キャブ18の周囲は、大きく開口し、オペレータに広い視界を提供している。さらに、キャブ18は、前側部分がフロア11の前側フロアプレート12,14に防振マウント20を介して取付けられ、後側部分が後述するカウンタウエイト29のマウント取付部29Aに他の防振マウント(図示せず)を介して取付けられている。
【0041】
ここで、キャブ18の前側部分には、防振マウント20を取付ける構成となっている。このため、キャブ18の下部には、内向きに突出する突出板部18Aが設けられ、該突出板部18Aには、左前ピラー18Bと右前ピラー(図示せず)の近傍にそれぞれマウント取付孔18C(図6に左前ピラー18B側のみ図示)が形成されている。
【0042】
19は上部旋回体3に周囲を覆うように設けられた外装カバーを示している(図1、図2参照)。この外装カバー19は、旋回フレーム6とフロア11との間を覆う左前カバー19A、右前カバー19B、エンジンの左側を覆う左後カバー19C、右後カバー(図示せず)、エンジンカバー19D等により構成されている。
【0043】
次に、キャブ18を防振支持するために、例えばキャブ18の四隅に配置される防振マウントのうち、左前側に配置される防振マウント20について説明する。なお、右前側に配置される防振マウントは、左前側の防振マウント20と同様であるので同一の符号を付して説明を省略するものとする。
【0044】
20はフロア11の左前側に設けられた防振マウントを示している。この防振マウント20は、フロア11に対してキャブ18を防振状態で支持するものである。また、防振マウント20は、図6に示すように、後述の取付台座21、取付ボルト22、下側ストッパ23、弾性部材24,25、スリーブ26、上側ストッパ27、固定ボルト28等により構成されている。
【0045】
21は防振マウント20の取付ベースとなる取付台座を示している。この取付台座21は、フロア11の前側フロアプレート12に着脱可能に取付けられている。また、取付台座21は、フロア11にキャブ18を搭載するときに後述の取付ボルト22を用いてフロア11に取付け、後述のキャノピ30を取付けるときには前記フロア11から取外すことができる。
【0046】
詳しくは、取付台座21は、例えば厚肉な円板状に形成され、そのほぼ中央部には、固定ボルト28が螺合する中央ねじ穴21Aが形成されている。また、取付台座21には、中央ねじ穴21Aを挟むように2個の外側ねじ穴21Bが形成されている。
【0047】
そして、取付台座21は、前側フロアプレート12上の左側に載置した状態で、各ボルト挿通孔12Dに下側から取付ボルト22を挿入し、該取付ボルト22を外側ねじ穴21Bに螺合して締着する。これにより、取付台座21は、前側フロアプレート12上に取付け、取外し可能に取付けることができる。
【0048】
ここで、取付ボルト22は、該取付ボルト22よりも大径な孔径のボルト挿通孔12Dに挿通しているから、この取付ボルト22を緩めた状態では、取付ボルト22とボルト挿通孔12Dとの隙間分だけ取付台座21を水平方向に移動することができる。
【0049】
さらに、取付台座21の上面には、短尺な円筒状の下側ストッパ23が溶接等の固着手段を用いて一体的に固着されている。この下側ストッパ23の上端部は、キャブ18の突出板部18Aと所定の間隔で離間している。これにより、下側ストッパ23は、後述の下側弾性部材24が大きく変形しようとしたときに、キャブ18の突出板部18Aに当接し、下側弾性部材24が過剰に変形するのを防止している。
【0050】
24は取付台座21とキャブ18の突出板部18Aとの間に設けられた下側弾性部材である。この下側弾性部材24は、例えばゴム等の弾性材料を用いて円筒状に形成されている。また、下側弾性部材24の上部には、段付のワッシャ24Aが固着され、該ワッシャ24Aは、下側弾性部材24をキャブ18のマウント取付孔18Cにほぼ同軸に位置決めするものである。
【0051】
また、25はキャブ18の突出板部18Aの上側に設けられた上側弾性部材である。この上側弾性部材25は、突出板部18Aを挟んで下側弾性部材24と上,下方向で対をなすものである。そして、上側弾性部材25は、下側弾性部材24と同様にゴム等の弾性材料を用いて円筒状に形成され、その下部にはワッシャ25Aが固着されている。
【0052】
26は各弾性部材24,25内に挿通された円筒状のスリーブである。このスリーブ26は、各弾性部材24,25に適度な初期圧力を加えることができるように、取付台座21と後述する上側ストッパ27との間隔寸法を設定するものである。
【0053】
27は上側弾性部材25の上側に配置された上側ストッパで、該上側ストッパ27の下端部は、キャブ18の突出板部18Aと所定の間隔で離間している。これにより、上側ストッパ27は、上側弾性部材25が大きく変形しようとしたときに、キャブ18の突出板部18Aに当接し、上側弾性部材25が過剰に変形するのを防止している。
【0054】
28はフロア11側の取付台座21にキャブ18を変位可能に取付けるための固定ボルトである。この固定ボルト28は、取付台座21とキャブ18の突出板部18Aとの間に下側弾性部材24を配置し、突出板部18A上に上側弾性部材25を配置し、該各弾性部材24,25内にスリーブ26を挿通し、該スリーブ26上に上側ストッパ27を配置した状態で、上側からスリーブ26内等に挿通して取付台座21の中央ねじ穴21Aに螺着することにより、これらの部材を積み重ねるように組付けた状態で固定するものである。
【0055】
なお、29は旋回フレーム6の後部に取付けられたカウンタウエイトである。このカウンタウエイト29は、作業装置4との重量バランスをとるもので、重量物として形成されている。また、カウンタウエイト29の上部には、左,右に離間してマウント取付部29Aが設けられ、該各マウント取付部29Aには、図示しない防振マウントを介してキャブ18の後側が取付けられている。
【0056】
次に、油圧ショベル1をフロア11等に対しキャノピ30を取付けたキャノピ仕様に変更した場合について説明する。このキャノピ仕様の油圧ショベル1では、図7に示す如く、フロア11から防振マウント20の取付台座21を取外すことにより、フロア11を交換することなく、共通部品としてそのまま使用することができる。
【0057】
図8において、30はキャブ18に代えてフロア11上に設けられたキャノピを示している。このキャノピ30は、右前支柱30A、左後支柱30B、右後支柱30Cを有する3柱キャノピとして構成され、上部のルーフ30Dによって運転席8の上方を覆っている。また、キャノピ30は、右前支柱30Aから左側に延びた前側取付部30Eが各前側フロアプレート12,14上に取付けられている。一方、キャノピ30の各後支柱30B,30Cは、カウンタウエイト29上に取付けられている。
【0058】
ここで、フロア11の各前側フロアプレート12,14上にキャノピ30の前側取付部30Eを取付ける場合には、防振マウント20の取付台座21と取付位置が近いために、そのままでは前側取付部30Eが取付台座21に干渉してしまう。しかし、取付ボルト22を緩めて取付台座21を取外すことにより、各前側フロアプレート12,14上を平坦にすることができる。これにより、キャノピ30の前側取付部30Eを各前側フロアプレート12,14上に簡単に取付けることができる。
【0059】
31はフロア11上を覆うように設けられたフロアマットである(図9参照)。このフロアマット31は、足元のクッション性を良好にすることができる。また、フロアマット31は、図8で露出している前側フロアプレート12の各取付穴12A,12B,12Cを、図9のように覆い隠すことができる。
【0060】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、油圧ショベル1の動作について説明する。
【0061】
運転席8に着座したオペレータは、前側の走行用レバー・ペダル15を操作することにより、下部走行体2を前進または後退させて作業現場に移動することができる。そして、作業現場では、左,右に配置された操作レバー9を操作することにより、作業装置4を俯仰動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0062】
次に、本実施の形態の特徴部分であるキャブ18をキャノピ30に代える作業について説明する。
【0063】
まず、キャブ18は防振マウント20によってフロア11上に防振状態で支持されている。この状態から、外装カバー19の各前カバー19A,19Bを取外し、取付台座21を前側フロアプレート12,14に取付けている取付ボルト22を緩めて取外す。また、キャブ18の後側をカウンタウエイト29に取付けているボルト(図示せず)も取外す。これにより、キャブ18を防振マウント20と共にフロア11等から取外す。
【0064】
このように、フロア11から防振マウント20を取外したときには、図7に示すように、取付台座21も一緒に取外すことができるから、この取付台座21を無くして前側フロアプレート12,14上を平坦にすることができる。
【0065】
次に、フロア11の前側フロアプレート12,14上を平坦にしたら、キャノピ30の前側取付部30Eを前側フロアプレート12,14上にボルト止めし、後支柱30B,30Cをカウンタウエイト29上にボルト止めする。その後に、各前カバー19A,19Bを取付け、ボルト挿通孔12D,14A等を隠すようにフロア11上にフロアマット31を敷くことにより、キャノピ仕様の油圧ショベル1に変更することができる。
【0066】
以上のように、本実施の形態によれば、フロア11の前側に位置する前側フロアプレート12,14に防振マウント20を介してキャブ18を防振支持し、この防振マウント20の取付ベースとなる取付台座21は、取付ボルト22を用いて前側フロアプレート12,14に着脱可能に取付ける構成としている。
【0067】
従って、防振マウント20の取付台座21は、取付ボルト22によってフロア11に簡単に取付けることができる。これにより、防振マウント20を構成する弾性部材24,25、スリーブ26等と共にキャブ18を取付台座21に簡単に取付けることができ、組立作業性を向上することができる。
【0068】
一方、取付ボルト22を緩めて防振マウント20の取付台座21をフロア11から取外した場合には、キャノピ30の前側取付部30Eが取付けられる前側フロアプレート12,14上から取付台座21を排除することができ、キャノピ30をフロア11上に簡単に取付けることができる。
【0069】
この結果、キャブ18に代えてキャノピ30を取付ける場合でも、防振マウント20の取付台座21を取外すことにより、1つのフロア11(前側フロアプレート12,14等)をキャブ18とキャノピ30の両方で共用することができ、キャブ18からキャノピ30への変更作業を容易に行うことができる。また、フロア11を1種類にすることができるから、生産性を向上することができ、また製造コストを低減することができる。
【0070】
また、フロア11に対してキャブ18もキャノピ30も取付けない場合には、取付台座21を取外したことにより、フロア11上を平坦にすることができるから、足が引っ掛かったりすることもなく、見た目も良好にすることができる。
【0071】
さらに、防振マウント20の取付ボルト22が挿通される前側フロアプレート12,14のボルト挿通孔12D,14Aは、前記取付ボルト22よりも大径な孔径の大径孔として形成している。従って、フロア11にキャブ18を搭載するときに、取付台座21の位置がずれている場合でも、取付ボルト22を緩めることにより、該取付ボルト22と大径なボルト挿通孔12D,14Aとの隙間の分だけ取付台座21の位置を調整することができ、キャブ18を簡単な作業で正確な位置に配設することができる。
【0072】
なお、実施の形態では、防振マウント20の取付台座21は、厚肉な円板状に形成し、そのほぼ中央部に中央ねじ穴21Aを形成し、これを挟むように2個の外側ねじ穴21Bを形成している。そして、取付台座21は、前側フロアプレート12上に載置した状態で、各ボルト挿通孔12Dに下側から取付ボルト22を挿入し、該取付ボルト22を外側ねじ穴21Bに螺合することにより、前側フロアプレート12上に着脱可能に取付ける構成とした場合を例に挙げて説明した。
【0073】
しかし、本発明はこれに限らず、例えば図10に示す第1の変形例のように、前側フロアプレート41には、大径な台座通し穴41Aと、これを取囲むように複数個、例えば3個以上のボルト挿通孔41B(2個のみ図示)とを設ける。一方、防振マウント42の取付台座43は、下側にフランジ部43Aを有する有蓋円筒状に形成し、その蓋部43Bの中央には中央ねじ穴43Cを形成し、フランジ部43Aに複数個の外側ねじ穴43D(2個のみ図示)を形成する。そして、第1の変形例による取付台座43は、前側フロアプレート41の台座通し穴41Aに下側から通し、フランジ部43Aを台座通し穴41Aの周囲に当接させる。この状態で、各ボルト挿通孔41Bに上側から取付ボルト44を挿入し、該取付ボルト44を外側ねじ穴43Dに螺合することにより、取付台座43を前側フロアプレート41に着脱可能に取付ける構成としてもよい。
【0074】
また、例えば図11に示す第2の変形例のように、防振マウント51の取付台座52を大径に形成し、その中央に中央ねじ穴52Aを形成すると共に、前側フロアプレート12のボルト挿通孔12Dに対応する位置にボルト挿通孔52Bを形成する。そして、各ボルト挿通孔52B,12Dに取付ボルト53を挿通し、ナット54を用いて締付けることにより、取付台座52を前側フロアプレート12に着脱可能に取付ける構成としてもよい。
【0075】
一方、実施の形態では、フロア11を、例えば3枚(3分割)の前側フロアプレート12と後側フロアプレート13と右前側フロアプレート14とにより構成した場合を例示した。しかし、本発明はこれに限らず、フロア11は、1枚の板体で形成したり、2分割または4分割以上に分割する(2枚または4枚以上のフロアプレートにより)構成してもよい。
【0076】
また、実施の形態では、キャノピ30は、右前支柱30A、左後支柱30B、右後支柱30Cを有する3柱キャノピとして構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば4本の支柱を有するキャノピ、5本以上の支柱を有するキャノピ等をフロア11上に取付ける構成としてもよい。
【0077】
さらに、実施の形態では、建設機械として、クローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。それ以外にも、ホイールローダ、リフトトラック等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態による油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】キャブを省略した上部旋回体を拡大して示す平面図である。
【図3】旋回フレームとフロアの一部とを拡大して示す外観斜視図である。
【図4】フロア支持部材と前側フロアプレートとを示す外観斜視図である。
【図5】前側フロアプレートに防振マウントを介してキャブの左前部分を取付けた状態をキャブ内からみた要部拡大の斜視図である。
【図6】図5中の矢示VI−VI方向からみた防振マウント等の断面図である。
【図7】キャブを省略した上部旋回体を取付台座を取外した状態で示す平面図である。
【図8】フロア上にキャノピを取付けた上部旋回体を示す外観斜視図である。
【図9】フロア上にキャノピとフロアマットを取付けた上部旋回体を示す外観斜視図である。
【図10】本発明の第1の変形例による防振マウント等を図6と同様位置からみた断面図である。
【図11】本発明の第2の変形例による防振マウント等を図6と同様位置からみた断面図である。
【符号の説明】
【0079】
1 油圧ショベル(建設機械)
4 作業装置
6 旋回フレーム
8 運転席
10 フロア支持部材
11 フロア
12,41 前側フロアプレート
12D,41B,52B ボルト挿通孔
13 後側フロアプレート
14 右前側フロアプレート
18 キャブ
20,42,51 防振マウント
21,43,52 取付台座
21A,43C,52A 中央ねじ穴
21B,43D 外側ねじ穴
22,44,53 取付ボルト
24 下側弾性部材
25 上側弾性部材
28 固定ボルト
30 キャノピ
54 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造体をなし前側に作業装置が取付けられるフレームと、該フレーム上に設けられオペレータが着座する運転席と、該運転席の前側の足元に位置して前記フレーム上に設けられたフロアと、キャブを防振支持するために該フロアに設けられる防振マウントの取付台座とを備えてなる建設機械において、
前記防振マウントの取付台座は、ボルトを用いることにより前記フロアに対して着脱可能に取付ける構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記防振マウントの取付台座は、前記フロアに運転席の周囲と上方を覆うキャブを搭載するときに前記ボルトを用いて前記フロアに取付け、運転席の上方を覆うキャノピを取付けるときには前記フロアから取外す構成としてなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記ボルトが挿通されるボルト挿通孔は、前記取付台座の取付位置を調整するために前記ボルトよりも大径な孔径の大径孔として形成してなる請求項1または2に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−143304(P2009−143304A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−320886(P2007−320886)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】