説明

建設機械

【課題】 フロア部材をチルト動作したときに、潰れたり損傷するホースを廃止し、空調ユニットのドレンを外部に確実に排出できるようにする。
【解決手段】 空調ユニット22には、内部で発生したドレンをフロア部材10の下側に排出する前,後のドレン排出口22D,22Eを設け、旋回フレーム6には、各ドレン排出口22D,22Eから下側に排出されるドレンを受ける第1のドレン受け23を設け、この第1のドレン受け23には、集めたドレンを外部に排出するための排出ホース24を接続する構成とした。従って、従来技術のように旋回フレーム6と空調ユニット22とを長尺なホースで繋ぐことなく、空調ユニット22のドレンを、旋回フレーム6側の第1のドレン受け23に集めることができ、ドレン受け23から排出ホース24を通じて上部旋回体4の外部に排出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等の建設機械に関し、特に、キャブ内に調和空気を供給する空調ユニットを備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例である油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより構成されている。
【0003】
また、上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、該旋回フレーム上に設けられたフロア部材と、該フロア部材上に設けられオペレータが着座する運転席と、該運転席を取囲んで前記フロア部材に設けられたキャブとにより大略構成されている。また、キャブを備えた油圧ショベルには、キャブ内の温度等を適正に調整するための空調ユニットが搭載されている。このキャブ仕様の油圧ショベルは、空調ユニットから流出されるドレンを排出ホースを用いて外部に排出する構成としている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−002479号公報
【0005】
さらに、この小型な油圧ショベルは、旋回フレーム上のメンテナンス作業を容易に行うことができるように、フロア部材の前側が旋回フレームの前側に対し傾転動作(チルト動作)可能に取付けられている。これにより、フロア部材は、チルト機構によって運転席、キャブ等と一緒に、後側を持上げて傾転(チルトアップ)することができる。この状態では、旋回フレーム上に大きな作業スペースが形成されるから、メンテナンス作業を効率よく行うことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上述した特許文献1による油圧ショベルでは、チルト機構によってフロア部材の後側を旋回フレームから持上げるように傾転(チルトアップ)させているから、空調ユニット用の排出ホースは、フロア部材が持ち上がることを考慮して長尺に形成する必要がある。
【0007】
しかし、長尺な排出ホースは、フロア部材を下げたチルトダウンの状態で、挟まって潰れたり、ねじれたりして損傷する虞があり、ドレンの詰まり、ホースの損傷によるドレンの漏れ等が発生するという問題がある。また、排出ホースの一部が周囲の部材に引っ掛かったままチルトアップした場合には、排出ホースに過度な引張り力が作用し、排出ホースが損傷するという問題がある。
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、フロア部材をチルト動作した場合でも、ホースの潰れによる空調ユニットのドレンの詰まり、ホースの損傷によるドレンの漏れを防止でき、空調ユニットのドレンを外部に確実に排出できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による建設機械は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、前記上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、該旋回フレームの前側を支点として該旋回フレーム上で傾転可能に設けられたフロア部材と、該フロア部材上に設けられオペレータが着座する運転席と、該運転席を取囲んで前記フロア部材に設けられたキャブと、前記フロア部材に設けられ該キャブ内に調和空気を供給する空調ユニットとを備えている。
【0010】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記空調ユニットには、内部で発生したドレンを前記フロア部材の下側に排出するためのドレン排出口を設け、前記旋回フレームには、前記ドレン排出口から前記フロア部材の下側に排出されるドレンを受けるドレン受けを設け、該ドレン受けには、集めたドレンを外部に排出するための排出ホースを接続して設ける構成としたことにある。
【0011】
請求項2の発明は、前記空調ユニットには前記ドレン排出口を複数個設け、前記旋回フレームにはドレン受けを1個設けることにより、前記複数個のドレン排出口から排出されるドレンを1個のドレン受けで集めて前記排出ホースから外部に排出する構成としたことにある。
【0012】
請求項3の発明は、前記空調ユニットには、建設作業中に車体が傾いた場合でもドレンを排出できるように前記ドレン排出口を2個設け、前記旋回フレームに設けられた前記ドレン受けを、一方のドレン排出口から排出されるドレンを受ける第1のドレン受けとし、前記フロア部材には、他方のドレン排出口から排出されるドレンを受ける第2のドレン受けを設ける構成としたことにある。
【0013】
請求項4の発明は、前記ドレン排出口は、前記フロア部材に設けられた貫通孔を貫通して前記フロア部材の下面側に延びる管体によって構成したことにある。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、旋回フレームには、空調ユニットのドレン排出口から下側に排出されるドレンを受けるドレン受けを設けているから、旋回フレームと空調ユニットとを長尺なホースで繋ぐことなく、該空調ユニットからフロア部材の下側に排出されたドレンを、旋回フレーム側のドレン受けに集めることができ、該ドレン受けから排出ホースを通じて上部旋回体の外部に排出することができる。
【0015】
しかも、ドレン受けは、フロア部材上に設けられた空調ユニットと別個となるように旋回フレーム側に設けているから、旋回フレームに対してフロア部材を傾転動作(チルトアップ、チルトダウン)しても、ドレン排出口をドレン受けと独立して移動させることができる。
【0016】
この結果、フロア部材をチルト動作する構成とした場合でも、旋回フレームと空調ユニットとの間を繋ぐホースを排除することにより、ホースの損傷によるドレンの詰まり、ドレンの漏れを防止することができる。これにより、空調ユニット内で発生するドレンを確実に排出することができ、信頼性を向上することができる。
【0017】
請求項2の発明によれば、空調ユニットにドレン排出口を複数個設けた場合でも、これら複数個のドレン排出口から排出されるドレンは、1個のドレン受けによって集めることができ、該ドレン受けから排出ホースを介して外部に排出することができる。これにより、少ない部品点数でドレンを排出することができる。
【0018】
請求項3の発明によれば、空調ユニットにはドレン排出口を2個設けているから、建設作業中に車体が傾いた場合でも、いずれか一方のドレン排出口からドレンを排出することができる。そして、2個のドレン排出口のうち、一方のドレン排出口から排出されるドレンは、旋回フレームに設けた第1のドレン受けで受けることができる。また、他方のドレン排出口から排出されるドレンは、フロア部材に設けた第2のドレン受けで受けることができる。この結果、フロア部材に2個のドレン排出口を設けた場合でも、第1のドレン受けと第2のドレン受けにより、ドレンを集めて確実に排出することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、管体からなるドレン排出口は、フロア部材の貫通孔を貫通してフロア部材の下面側に延びることができ、旋回フレーム側のドレン受けに向けてドレンを排出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態に係る建設機械の代表例として油圧ショベルを例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0021】
まず、図1ないし図11は、本発明の本実施の形態を示している。図1ないし図4において、1は本実施の形態に適用される建設機械としてのキャブ仕様の油圧ショベルを示している。この油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、該上部旋回体4の前側に揺動可能および俯仰動可能に設けられたスイング式の作業装置5とにより大略構成されている。
【0022】
また、上部旋回体4は、支持構造体をなす旋回フレーム6と、該旋回フレーム6の後部側に左,右方向に延在する横置き状態で搭載されたエンジン7と、該エンジン7の左側に取付けられた油圧ポンプ8と、熱交換器、作動油タンク、燃料タンク(いずれも図示せず)と、これらを覆う外装カバー9と、後述するフロア部材10、運転席台座16、運転席17、キャブ20、空調ユニット22、第1のドレン受け23、排出ホース24、第2のドレン受け25等とにより大略構成されている。
【0023】
ここで、旋回フレーム6は、図5に示す如く、厚肉な鋼板等を用いて形成された底板6Aと、該底板6A上に前,後方向に延びるように立設された左縦板6B,右縦板6Cと、該各縦板6B,6Cの左,右両側に前,後方向に延びて設けられた左サイドフレーム6D,右サイドフレーム6Eと、前記縦板6B,6Cとサイドフレーム6D,6Eとを接続する複数本の張出しビーム6Fと、前記各縦板6B,6Cの前端部に設けられ、スイング式の作業装置5を支持する円筒状の支持ブラケット6Gとにより大略構成されている。
【0024】
また、旋回フレーム6の左前部には、キャブ支持フレーム6Hが左,右方向に延びて設けられ、該キャブ支持フレーム6Hには、後述するフロア部材10の床板11の前部がフロア前支持部15を介して上,下方向に傾転可能に取付けられる。一方、左縦板6Bは、斜めに延びた途中部位6Jがフロア部材10の床板11の下側に位置し、この途中部位6Jには、後述する第1のドレン受け23が取付けられている。
【0025】
10は旋回フレーム6上に設けられたフロア部材である。このフロア部材10は、図6に示すように、後述するキャブ20の下側が取付けられるものであり、運転室の下側を閉塞するものである。また、フロア部材10は、図7ないし図9に示す如く、後述の床板11、隔壁板12等により構成されている。
【0026】
11はフロア部材10の前側部分を構成する床板で、該床板11は、旋回フレーム6上の前側に位置して設けられるものである。また、床板11は、図8等に示すように、ほぼ四角形状に形成され、前側部位が運転席17に着座したオペレータが足を乗せる足乗せ部11Aとなっている。一方、床板11の後側部位は台取付部11Bとなっている。
【0027】
ここで、台取付部11Bは、後述の運転席台座16、空調ユニット22等を取付けるもので、左,右方向のほぼ中央部には、図8、図9に示す如く、貫通孔としてのホース貫通孔11C,11Dが前,後方向に間隔をもって2個形成されている。これら各ホース貫通孔11C,11Dは、図10に示すように、空調ユニット22のドレンを台取付部11Bの下側に排出させるために、該空調ユニット22のドレン排出口22D,22Eが挿通するものである。
【0028】
12は床板11の後側に設けられた隔壁板で、該隔壁板12は、床板11の後側に立上って形成され、フロア部材10を旋回フレーム6に取付けたときにエンジン7の前側と上側を覆うものである。また、13はフロア部材10の左側に位置して床板11と隔壁板12との間に設けられた左側板、14はフロア部材10の右側に位置して床板11と隔壁板12との間に設けられた右側板をそれぞれ示している。
【0029】
15は旋回フレーム6の前側に支点として設けられた2組のフロア前支持部(図2中に左側の一部のみ図示)を示している。このフロア前支持部15は、旋回フレーム6のキャブ支持フレーム6Hにフロア部材10の前側部位を傾転可能に支持するもので、左,右方向に離間して配設されている。これにより、各フロア前支持部15は、フロア部材10、キャブ20等を上側ないし前側にチルトアップさせたり、下側ないし後側にチルトダウンさせたりすることができる。
【0030】
16は床板11上に設けられた運転席台座(図6等参照)で、該運転席台座16は、床板11の後側に位置する台取付部11B上に取付けられている。この運転席台座16は、中空な箱形形状をなし、その内部には、後述の空調ユニット22が配設されている。
【0031】
17は運転席台座16上に搭載された運転席で、該運転席17は、油圧ショベル1の建設作業、例えば走行作業、掘削作業等を行うときにオペレータが着座するものである。また、運転席17の左,右両側には、作業装置5等を操作するための作業レバー18が設けられている。一方、運転席17の前側には、床板11の足乗せ部11Aの前側に位置して下部走行体2を走行させるための走行レバー・ペダル19が配置されている。
【0032】
20は旋回フレーム6の左側に位置してフロア部材10上に設けられたキャブである。このキャブ20は、運転席17の周囲と上部を覆うことにより、オペレータが各種操作を行う運転室を画成するものである。また、キャブ20内には、調和空気を吹き出す吹出口21A,21B等を備えた空調ダクト21が設けられている。
【0033】
22はキャブ20内に冷気、暖気等の調和空気を供給する室内機となる空調ユニット(図7参照)で、該空調ユニット22は、運転席台座16内に位置して床板11の台取付部11B上に取付けられている。また、空調ユニット22は、エンジン7側に取付けられたコンプレッサ、凝縮機(いずれも図示せず)等の室外機と共に空調装置を構成している。そして、空調ユニット22は、吸込んだ空気を冷気または暖気に調整し、この調和空気を空調ダクト21等を介してキャブ20内に向けて供給するものである。
【0034】
また、空調ユニット22は、左,右方向に延びる箱体状に形成され、左側の吸気部22A内には、送風ファン(図示せず)等が収容されている。また、中央の本体部22B内には、エバポレータ、ヒータコア(いずれも図示せず)等が収容され、右側は空調ダクト21に繋がる送気部22Cとなっている。
【0035】
さらに、空調ユニット22には、図10に示す如く、本体部22B内に発生するドレンを排出するためのドレン排出口22D,22Eが例えば2個設けられている。また、各ドレン排出口22D,22Eは、前,後方向に間隔をもって配置された直線状の管体、例えば樹脂管、金属管、ゴムホース、樹脂ホース等からなり、床板11の各ホース貫通孔11C,11Dを通って床板11の下面側に突出して延びている。この場合、他方のドレン排出口となる前側ドレン排出口22Dは、後述する第2のドレン受け25内に開口するために短尺に形成されている。また、一方のドレン排出口となる後側ドレン排出口22Eは、後述する第1のドレン受け23の近傍まで達するように長尺に形成されている。
【0036】
ここで、前,後方向に間隔をもって配置された2個のドレン排出口22D,22Eは、各種の建設作業、例えば傾斜地を走行したり、掘削作業等を行ったりして車体が傾いていたとしても、空調ユニット22内で発生するドレンを、傾いた状態で下側となるドレン排出口22D,22Eから排出できるようになっている。
【0037】
そして、空調ユニット22は、送風ファンを回転駆動することにより、吸気部22A内に空気を吸込み、この空気を本体部22B内のエバポレータで冷やし、またはヒータコアで温めて調和空気とする。そして、この調和空気を、送気部22Cから空調ダクト21に供給することにより、該空調ダクト21の吹出口21A,21Bからキャブ20に供給し、該キャブ20内を適度な温度に調整する。
【0038】
次に、空調ユニット22内で発生したドレンを上部旋回体4の外部に排出するための構成について説明する。
【0039】
23は旋回フレーム6に設けられた1個の第1のドレン受け(図3、図4参照)を示し、該ドレン受け23は、フロア部材10の後側部位の下方に位置する左縦板6Bの途中部位6Jに取付けられている。また、第1のドレン受け23は、図10に示すように、一方のドレン排出口となる空調ユニット22の後側ドレン排出口22Eから下側に排出されるドレンを受けるものである。さらに、第1のドレン受け23は、他方のドレン排出口となる空調ユニット22の前側ドレン排出口22Dから排出されるドレンを、後述する第2のドレン受け25を経由して受けることもできる。
【0040】
そして、第1のドレン受け23は、図5に示す如く、上側に開口して前,後方向に延びた箱体形状をなし、その底面23Aは、前側に向け下側に傾斜した傾斜面となっている。また、底面23Aの最深部には、後述の排出ホース24が接続されるホース接続口23Bが形成されている。ここで、第1のドレン受け23は、後述する第2のドレン受け25によって前側ドレン排出口22Dから流出するドレンを、後側ドレン排出口22Eの近傍まで案内(移動)することにより、小さくコンパクトに形成することができる。
【0041】
さらに、第1のドレン受け23は、前記底面23Aから下向きに延びる取付支柱23Cを有し、該取付支柱23Cが旋回フレーム6を構成する左縦板6Bの途中部位6Jにボルト止めされている。この取付支柱23Cは、ドレン受け23を後側ドレン排出口22E、第2のドレン受け25に近接する高い位置に支持することにより、ドレンの漏れ、周囲への飛散を防止している。
【0042】
24は第1のドレン受け23に接続して設けられた排出ホースを示し、該排出ホース24は、第1のドレン受け23が集めたドレンを上部旋回体4の外部に排出するもので、例えばゴムホース等により形成されている。そして、排出ホース24は、一端がドレン受け23の底面23Aの最深部に設けられたホース接続口23Bに接続され、例えば他端が旋回装置3を避けて前側に延び、旋回フレーム6の下側に突出している。
【0043】
25はフロア部材10に設けられた第2のドレン受けを示し、該ドレン受け25は、他方のドレン排出口となる空調ユニット22の前側ドレン排出口22Dから排出されるドレンを受け、このドレンを第1のドレン受け23に供給するものである。また、第2のドレン受け25は、後側に向け下側に傾斜した樋状をなし、その前側部位で前側ドレン排出口22Dを覆うように、床板11の台取付部11Bの下面側にボルト止め等の手段で取付けられている。
【0044】
そして、第2のドレン受け25は、図9、図10に示すように、空調ユニット22の前側ドレン排出口22Dから下側に排出されるドレンを受け、このドレンを後側に移動させ、第1のドレン受け23に供給するものである。これにより、床板11に前,後方向に離間して2個のドレン排出口22D,22Eを設けた場合でも、これらから流出するドレンを1個の第1のドレン受け23で受けることができる。
【0045】
ここで、第1のドレン受け23、排出ホース24および第2のドレン受け25を用い、空調ユニット22から排出されるドレンの排出経路について説明する。まず、空調ユニット22の後側ドレン排出口22Eから流出したドレンは、第1のドレン受け23に滴下し、傾斜した底面23Aに沿って前側に流れ、排出ホース24を介して外部に排出される。一方、空調ユニット22の前側ドレン排出口22Dから流出したドレンは、第2のドレン受け25に滴下し、該第2のドレン受け25に沿って後側に流れ、第1のドレン受け23から排出ホース24を介して外部に排出される。
【0046】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0047】
まず、油圧ショベル1を用いて建設作業を行う場合には、運転席17に着座したオペレータが作業レバー18、走行用レバー・ペダル19等を操作する。これにより、オペレータは、下部走行体2を走行させたり、上部旋回体4を旋回させることができると共に、作業装置5を作動させて土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0048】
また、オペレータが空調装置のスイッチを入れたときには、空調ユニット22のエバポレータやヒータコアによって冷風と温風とが調和された調和空気が発生し、この調和空気は、空調ダクト21等を経由して各吹出口21A,21Bからキャブ20内に吹出すから、キャブ20内を適度な温度に調整することができる。
【0049】
また、空調ユニット22の作動時には、エバポレータ等の低温な部位で空気中の水分が凝結し、本体部22B内でドレンが発生する。このドレンは、例えば車体の傾き等に応じて前側ドレン排出口22Dまたは後側ドレン排出口22Eのいずれかから下側に排出される。そして、空調ユニット22の後側ドレン排出口22Eから流出したドレンは、第1のドレン受け23に滴下する。また、前側ドレン排出口22Dから流出したドレンは、第2のドレン受け25に沿って後側に流れ、第1のドレン受け23に滴下する。これにより、第1のドレン受け23は、集めたドレンを排出ホース24を介して外部に排出する。
【0050】
次に、油圧ショベル1のメンテナンス作業を行うために、フロア部材10等をチルトアップする場合について説明する。まず、フロア部材10を旋回フレーム6側に固定しているロックを解除し、図2、図11に示すように、前側のフロア前支持部15を支点にしてフロア部材10の後側を持ち上げて上側ないし前側に傾転させる。これにより、旋回フレーム6上に広い作業スペースを形成することができ、各種のメンテナンス作業を効率よく行うことができる。
【0051】
しかも、空調ユニット22のドレンを外部に排出するために設けた第1のドレン受け23と第2のドレン受け25とは、独立しているから、フロア部材10のチルトアップ、チルトダウンの動作によって損傷することもない。
【0052】
かくして、本実施の形態では、空調ユニット22には、本体部22B内で発生したドレンをフロア部材10の下側に排出する前,後のドレン排出口22D,22Eを設け、旋回フレーム6には、各ドレン排出口22D,22Eから下側に排出されるドレンを受ける第1のドレン受け23を設け、該第1のドレン受け23には、集めたドレンを外部に排出するための排出ホース24を接続して設けている。
【0053】
従って、本実施の形態によれば、従来技術のように旋回フレーム6とフロア部材10とを長尺なホースで繋ぐことなく、空調ユニット22から流出したドレンを、旋回フレーム6側の第1のドレン受け23に集めることができ、該ドレン受け23から排出ホース24を通じて上部旋回体4の外部に排出することができる。
【0054】
しかも、第1のドレン受け23は、空調ユニット22が設けられたフロア部材10と別個となるように旋回フレーム6側に設けているから、旋回フレーム6に対してフロア部材10をチルトアップ、チルトダウンした場合に、第1のドレン受け23と独立してドレン排出口22D,22Eを移動させることができる。
【0055】
この結果、フロア部材10をチルト動作する構成とした場合でも、旋回フレーム6とフロア部材10との間からホースによる接続構造を排除することができ、ホースの損傷によるドレンの詰まり、ドレンの漏れを防止することができる。これにより、空調ユニット22のドレンを確実に排出することができ、油圧ショベル1に対する信頼性を向上することができる。
【0056】
また、空調ユニット22の本体部22Bに2個のドレン排出口22D,22Eを設けた場合でも、これら2個のドレン排出口22D,22Eから排出されるドレンは、1個の第1のドレン受け23により集めて排出ホース24を介して外部に排出することができる。これにより、少ない部品点数で空調ユニット22のドレンを排出することができる。
【0057】
さらに、空調ユニット22には2個のドレン排出口22D,22Eを設けているから、建設作業中に車体が傾いた場合でも、いずれか一方のドレン排出口22D,22Eからドレンを排出することができる。そして、後側ドレン排出口22Eから排出されるドレンは、旋回フレーム6に設けた第1のドレン受け23で受けることができる。また、前側ドレン排出口22Dから排出されるドレンは、フロア部材10に設けた第2のドレン受け25で受けることができる。この結果、空調ユニット22に2個のドレン排出口22D,22Eを設けた場合でも、第1のドレン受け23と第2のドレン受け25により、ドレンを集めて確実に排出することができる。
【0058】
なお、実施の形態では、床板11の台取付部11Bの下面に前側ホース貫通孔11C、前側ドレン排出口22Dを覆うように第2のドレン受け25を設け、この第2のドレン受け25によって前側ドレン排出口22Dから下側に排出されるドレンを受け、このドレンを後側に移動させて第1のドレン受け23に供給する構成とした。
【0059】
しかし、本発明はこれに限らず、例えば図12に示す第1の変形例のように、第2のドレン受け25を廃止する構成としてもよい。この第1の変形例では、空調ユニット31の前側ドレン排出口31Dを、樹脂管、金属管等の形状を固定できる管体により形成し、床板11の下側で後側に折曲げることにより、ドレンを第1のドレン受け23に供給する構成としている。この場合、後側ドレン排出口31Eは、直線状に形成しているが、前側に折曲げることもでき、第1のドレン受け23をより一層小型化することもできる。
【0060】
また、図13に示す第2の変形例のように、空調ユニット22の前側ドレン排出口22Dと後側ドレン排出口22Eとの両方から排出されるドレンを受けることができるように、前,後方向に長尺な第1のドレン受け41を設ける構成としてもよい。
【0061】
また、実施の形態では、空調ユニット22の後側ドレン排出口22Eから排出されるドレンを受ける第1のドレン受け23は、その底面23Aを前側に向け下側に傾斜した傾斜面とし、空調ユニット22の前側ドレン排出口22Dから排出されるドレンを受ける第2のドレン受け25は、後側に向け下側に傾斜した樋状に形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図14に示す第3の変形例のように、実施の形態と前,後方向の配置を反転し、第1のドレン受け51で空調ユニット22の前側ドレン排出口22Dから排出されるドレンを受け、第2のドレン受け52で後側ドレン排出口22Eから排出されるドレンを受ける構成としてもよい。この場合には、フロア部材10をチルトアップしたときの傾きを利用して、第2のドレン受け52に残存するドレンを第1のドレン受け51に積極的に供給することができる。
【0062】
一方、実施の形態では、空調ユニット22に前,後方向に離間して2個のドレン排出口22D,22Eを設けた場合を例示した。しかし、本発明はこれに限らず、フロア部材のドレン排出口を1個または3個以上設ける構成としてもよい。また、ドレン排出口は、例えば前,後方向と左,右方向に離間して4個設ける構成としてもよい。
【0063】
また、実施の形態では、空調ユニット22に2個のドレン排出口22D,22Eを設け、フロア部材10の床板11にもドレン排出口22D,22Eと同じ数のホース貫通孔11C,11Dを設けた場合を例示した。しかし、本発明はこれに限らず、例えばホース貫通孔を前,後方向に延びる1個の長孔として形成し、この1個のホース貫通孔に2個のドレン排出口22D,22Eを貫通させる構成としてもよい。
【0064】
さらに、実施の形態では、建設機械としてクローラ式の下部走行体2を備えた油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えばホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベル等に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の実施の形態に適用される油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】図1中のフロア部材とキャブをチルトアップした状態の油圧ショベルを示す正面図である。
【図3】上部旋回体を拡大して示す一部破断の正面図である。
【図4】上部旋回体を外装カバーの一部を取外した状態で示す斜視図である。
【図5】旋回フレームと第1のドレン受けを拡大して示す斜視図である。
【図6】フロア部材、運転席台座、運転席、キャブ等を拡大して示す斜視図である。
【図7】フロア部材、空調ユニット等を拡大して示す斜視図である。
【図8】図7中のフロア部材を単体で示す斜視図である。
【図9】図7中のフロア部材等を下側からみた斜視図である。
【図10】空調ユニットのドレンの排出経路を拡大して示す断面図である。
【図11】図10のドレンの排出経路をチルトアップした状態で示す断面図である。
【図12】本発明の第1の変形例によるドレンの排出経路を示す断面図である。
【図13】本発明の第2の変形例によるドレンの排出経路を示す断面図である。
【図14】本発明の第3の変形例によるドレンの排出経路を示す断面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 旋回装置
4 上部旋回体
5 作業装置
6 旋回フレーム
10 フロア部材
11 床板
11A 足乗せ部
11B 台取付部
11C 前側ホース貫通孔
11D 後側ホース貫通孔
15 フロア前支持部
16 運転席台座
17 運転席
20 キャブ
22,31 空調ユニット
22D,31D 前側ドレン排出口
22E,31E 後側ドレン排出口
23,41,51 第1のドレン受け
24 排出ホース
25,52 第2のドレン受け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、前記上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、該旋回フレームの前側を支点として該旋回フレーム上で傾転可能に設けられたフロア部材と、該フロア部材上に設けられオペレータが着座する運転席と、該運転席を取囲んで前記フロア部材に設けられたキャブと、前記フロア部材に設けられ該キャブ内に調和空気を供給する空調ユニットとを備えてなる建設機械において、
前記空調ユニットには、内部で発生したドレンを前記フロア部材の下側に排出するためのドレン排出口を設け、
前記旋回フレームには、前記ドレン排出口から前記フロア部材の下側に排出されるドレンを受けるドレン受けを設け、
該ドレン受けには、集めたドレンを外部に排出するための排出ホースを接続して設ける構成としたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記空調ユニットには前記ドレン排出口を複数個設け、前記旋回フレームにはドレン受けを1個設けることにより、前記複数個のドレン排出口から排出されるドレンを1個のドレン受けで集めて前記排出ホースから外部に排出する構成としてなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記空調ユニットには、建設作業中に車体が傾いた場合でもドレンを排出できるように前記ドレン排出口を2個設け、
前記旋回フレームに設けられた前記ドレン受けを、一方のドレン排出口から排出されるドレンを受ける第1のドレン受けとし、
前記フロア部材には、他方のドレン排出口から排出されるドレンを受ける第2のドレン受けを設ける構成としてなる請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記ドレン排出口は、前記フロア部材に設けられた貫通孔を貫通して前記フロア部材の下面側に延びる管体によって構成してなる請求項1,2または3に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−179959(P2009−179959A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17719(P2008−17719)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】