説明

建設機械

【課題】 メンテナンスカバーの重量を軽減することにより、メンテナンス作業時にメンテナンスカバーを容易に取扱えるようにする。
【解決手段】 各メンテナンス用開口13C,13Dを覆うためにフロア部材13に取付けたメンテナンスカバー23は、突条部24Bを有する中央折曲板24、立上り板部25B等を有する左側折曲板25、立上り板部26Bを有する右前側折曲板26および立上り板部27Bを有する右後側折曲板27により構成し、メンテナンスカバー23を、凹凸曲げ部によって立体構造体として形成する。これにより、メンテナンスカバー23は、立体構造により曲げ荷重等に対する剛性を高めることができるから、同等の剛性をもった厚肉なメンテナンスカバーと比較し、その板厚を薄くして重量を軽減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば小型な油圧ショベル、油圧クレーン等として用いて好適な建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の建設機械は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより大略構成されている。
【0003】
そして、上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、該旋回フレーム上に設けられたフロア部材と、該フロア部材上に設けられオペレータが着座する運転席とを備えている。また、前記フロア部材は、前記運転席の前側がオペレータの足を乗せる足乗せ部となり、この足乗せ部には、フロア部材で覆われた下側の機器類、例えば旋回モータ、センタジョイント、制御弁装置等のメンテナンス作業を行うためのメンテナンス用開口が設けられている。さらに、足乗せ部の上面には、メンテナンス用開口を開閉するためのメンテナンスカバーが取付け、取外し可能に取付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−32271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した特許文献1の発明では、メンテナンス用開口を閉塞するメンテナンスカバーを平板によって形成している。ここで、メンテナンスカバーには、オペレータの全体重が作用するから、該メンテナンスカバーはオペレータが乗っても変形しないように十分な強度をもって形成する必要がある。しかし、メンテナンスカバーの強度を高めるために板厚寸法を大きくした場合には、該メンテナンスカバーの重量が増大してしまう。このために、旋回モータ、センタジョイント、制御弁装置等のメンテナンス作業を行うときには、メンテナンスカバーの脱着作業に手間を要してしまうという問題がある。
【0006】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、メンテナンスカバーの強度を高めつつ重量を軽減することができ、メンテナンス作業時にメンテナンスカバーを容易に取扱うことができるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による建設機械は、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、前記上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、該旋回フレーム上に設けられ後側に運転席が取付けられると共に該運転席の前側がオペレータが足を乗せる足乗せ部となり該足乗せ部の左,右方向の一側が乗降口となったフロア部材と、該フロア部材で覆われた状態で前記上部旋回体内に配置された機器類のメンテナンスを行うために該フロア部材の足乗せ部に開口して設けられたメンテナンス用開口と、該メンテナンス用開口を開閉するために前記足乗せ部に取付け、取外し可能に取付けられたメンテナンスカバーとを備えている。
【0008】
そして、上述した課題を解決するために、請求項1の発明が採用する構成の特徴は、前記メンテナンスカバーは、板体に上,下方向に折曲げた凹凸曲げ部を形成することにより断面凹凸形状の立体構造体として構成したことにある。
【0009】
請求項2の発明によると、前記メンテナンスカバーには、前記フロア部材の乗降口側となる左,右方向の一側部位にオペレータが足を掛けたときの滑りを止める滑止め部を設ける構成としたことにある。
【0010】
請求項3の発明によると、ベース枠体上に設けられた前面部、後面部、左側面部、右側面部および天面部を有し、前記運転席の周囲と上部を覆うキャブを備え、前記キャブは、前記ベース枠体を前記フロア部材の周縁に取付ける構成とし、前記メンテナンスカバーは、左,右方向の一端側を前記キャブのベース枠体の上側に重ねて配置する構成としたことにある。
【0011】
請求項4の発明によると、前記メンテナンスカバーは、前記凹凸曲げ部が左,右方向に延び前記メンテナンス用開口を覆う中央折曲板と、前,後方向に延びた立上り板部を有して形成され該中央折曲板の左,右方向の一側に固着された一側折曲板と、前,後方向に延びた立上り板部を有して形成され前記中央折曲板の左,右方向の他側に固着された他側折曲板とにより構成したことにある。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、板体を上,下方向に折曲げて凹凸曲げ部を形成することによりメンテナンスカバーを断面凹凸形状の立体構造体としているから、該メンテナンスカバーは、曲げ荷重等に対する剛性を高めることができる。これにより、メンテナンスカバーは、同等の剛性をもった厚肉なメンテナンスカバーと比較し、その重量を軽減することができる。
【0013】
この結果、フロア部材の足乗せ部にメンテナンスカバーを取付け、取外しするときには、軽量なメンテナンスカバーを容易に取扱うことができるから、メンテナンスカバーに覆われた機器類のメンテナンス作業、組立作業等の作業性を向上することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、メンテナンスカバーには、フロア部材の乗降口側にオペレータが足を掛けたときの滑りを止める滑止め部を設けているから、オペレータは、足を滑らせることなくフロア部材に乗り降りすることができる。また、滑止め部は、メンテナンスカバーに一体的に設けているから、メンテナンスカバーと一緒に滑止め部をフロア部材に簡単に取付けることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、キャブのベース枠体は、前面部、後面部、左側面部、右側面部および天面部をフロア部材の上面に取付けるための強度部材となっている。そして、メンテナンスカバーの一端側は、前記キャブのベース枠体の上側に重ねて配置している。これにより、メンテナンス用開口を設けたことによってフロア部材の足乗せ部の強度が低下した場合でも、メンテナンスカバーに作用する荷重は、強度をもったキャブのベース枠体で受止めることができ、足乗せ部の局部的な変形等を防止することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、メンテナンスカバーのうち、メンテナンス用開口を覆う中央折曲板は、上,下方向の荷重に対し、左,右方向に延びた凹凸曲げ部によって左,右方向に強度を発揮して撓みを抑えることができる。また、一側折曲板と他側折曲板は、上,下方向の荷重に対し、前,後方向に延びた立上り板部によって前,後方向に強度を発揮して撓みを抑えることができる。これにより、メンテナンスカバーは、その全体にバランスよく剛性をもたせることができるから、板厚を薄くして軽量化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係るキャブ仕様の油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】上部旋回体を拡大して示す外観斜視図である。
【図3】図2中の乗降口側を示す要部拡大の外観斜視図である。
【図4】キャブを省略した上部旋回体を拡大して示す平面図である。
【図5】図4の上部旋回体からメンテナンスカバーを取外した状態を示す平面図である。
【図6】図4の上部旋回体からフロア部材等を取外した状態を示す平面図である。
【図7】フロア部材とメンテナンスカバーを拡大して示す平面図である。
【図8】フロア部材を単体で示す平面図である。
【図9】メンテナンスカバーを単体で拡大して示す外観斜視図である。
【図10】メンテナンスカバーの分解斜視図である。
【図11】フロア部材とメンテナンスカバーを図7中の矢示XI−XI方向からみた要部拡大の断面図である。
【図12】フロア部材とメンテナンスカバーを図7中の矢示XII−XII方向からみた要部拡大の断面図である。
【図13】本発明の第1の変形例によるメンテナンスカバーを示す外観斜視図である。
【図14】本発明の第2の変形例によるメンテナンスカバーを図11と同様位置からみた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態に適用される建設機械として、キャブ仕様の油圧ショベルを例に挙げ、図1ないし図12に従って詳細に説明する。
【0019】
図1において、1は本実施の形態に適用される建設機械としてのキャブ仕様の油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、自走可能な下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回装置3を介して旋回可能に搭載された上部旋回体4と、該上部旋回体4の前側に揺動可能かつ俯仰動可能に設けられ、土砂の掘削作業等を行う作業装置5とにより大略構成されている。
【0020】
ここで、下部走行体2は、中央上部に旋回装置3が取付けられる略H字状のトラックフレーム2Aと、該トラックフレーム2Aの左,右両側に位置して前,後方向の一端部に設けられた遊動輪2Bと、前記トラックフレーム2Aの左,右両側に位置して前,後方向の他端部に設けられ油圧モータ等からなる駆動輪2Cと、前記遊動輪2Bと駆動輪2Cとに亘って巻回された履帯2Dとによって大略構成されている。
【0021】
また、上部旋回体4は、図1ないし図4に示すように、支持構造体をなす旋回フレーム6と、該旋回フレーム6の後側に搭載されたエンジン、油圧ポンプ(いずれも図示せず)等と、前記旋回フレーム6の右側から後側に亘って設けられ、燃料タンク、作動油タンク、ラジエータ、オイルクーラ(いずれも図示せず)、エンジン等を覆った外装カバー7と、前記旋回フレーム6の後部に取付けられたカウンタウエイト8と、旋回フレーム6の左側に設けられた後述のセンタジョイント9、旋回モータ10、制御弁装置11、フロア部材13、運転席16、キャブ21、メンテナンスカバー23等とにより大略構成されている。
【0022】
そして、旋回フレーム6は、図6に示すように、底板6Aと、該底板6Aに前,後方向に延びて立設された左縦板6B,右縦板6Cと、左,右両側に設けられ略L字状に屈曲した左サイドフレーム6D,右サイドフレーム6Eとにより大略構成されている。また、旋回フレーム6の前側位置には、後述するフロア部材13の前側部位を支持する台座状の前側支持部材6Fが左,右方向に延びて設けられ、前,後方向の中間位置には、フロア部材13の後側部位を支持する後側支持部材6Gが左,右方向に延びて設けられている。
【0023】
9は旋回フレーム6の底板6Aの旋回中心に設けられたセンタジョイントで、該センタジョイント9は、後述するフロア部材13の下側に配置された機器類の1つを構成している。また、センタジョイント9は、下部走行体2の駆動輪2C(油圧モータ)に圧油を給排するために、該駆動輪2Cと制御弁装置11とを旋回自在に接続するものである。
【0024】
10はセンタジョイント9の近傍に位置して旋回フレーム6の底板6Aに設けられた旋回モータで、該旋回モータ10は、フロア部材13の下側に配置された機器類の1つを構成している。
【0025】
11は旋回フレーム6の左縦板6Bの左側に設けられた制御弁装置である。この制御弁装置11は、複数個の油圧パイロット式スプール弁からなり、前述したセンタジョイント9、旋回モータ10と共にフロア部材13の下側に配置された機器類の1つを構成している。そして、制御弁装置11は、後述する各操作レバー17,18の操作に応じて旋回装置3の旋回モータ10、作業装置5のアクチュエータ、下部走行体2の駆動輪2Cを制御するものである。
【0026】
また、12はフロア部材13の下側に配置された複数本の油圧ホースで、該各油圧ホース12は、センタジョイント9、旋回モータ10、制御弁装置11、作業装置5のアクチュエータ等に接続されている。
【0027】
次に、運転席16、キャブ21等の土台となるフロア部材13について、その構成について述べる。
【0028】
即ち、13は旋回フレーム6の左前側に設けられたフロア部材を示している。このフロア部材13上には、図2、図3、図4に示すように、後述の運転席取付台15、運転席16、キャブ21、メンテナンスカバー23等が配設されている。また、フロア部材13は、図7、図8に示す如く、例えば前,後方向に長尺な長方形状の平板として形成され、後側部分が運転席取付部13Aとなり、中間部分から前側部分がオペレータが足を乗せる足乗せ部13Bとなっている。
【0029】
また、フロア部材13には、図8に示すように、足乗せ部13Bの後側寄りに位置して左側メンテナンス用開口13Cと右側メンテナンス用開口13Dとが形成されている。この左側メンテナンス用開口13Cは、図5に示すように、制御弁装置11、油圧ホース12等のメンテナンス作業(点検作業、修理作業等)を行うための開口となり、右側メンテナンス用開口13Dは、センタジョイント9、旋回モータ10、油圧ホース12等のメンテナンス作業を行うための開口となっている。さらに、足乗せ部13Bの左側には、後述するキャブ21の乗降口21Kが形成されている。
【0030】
そして、フロア部材13は、その前側の各角隅部が旋回フレーム6の前側支持部材6Fに対し防振マウント14を介して取付けられ、後側の各角隅部が旋回フレーム6の後側支持部材6Gに対し防振マウント14を介して取付けられている。また、フロア部材13上には、各メンテナンス用開口13C,13Dを閉塞するように後述のメンテナンスカバー23が取付け、取外し可能に取付けられている。
【0031】
15はフロア部材13上に設けられた運転席取付台で、該運転席取付台15は、例えば箱形状に形成され、フロア部材13の後側に位置する運転席取付部13Aにボルト止めされている。また、運転席取付台15は、その上面に後述の運転席16を支持し、内部に例えば空調装置の室内機等(図示せず)を収容している。
【0032】
16は運転席取付台15の上側に設けられた運転席で、該運転席16は、オペレータが着座するものである。また、運転席16の左,右両側には、旋回装置3と作業装置5を操作するための作業用操作レバー17が設けられている。
【0033】
18は運転席16の前側に位置してフロア部材13に設けられた走行用操作レバー・ペダルである。この走行用操作レバー・ペダル18は、下部走行体2を走行させるもので、足乗せ部13Bの前部中央に取付けられている。また、19は走行用操作レバー・ペダル18の左,右両側に位置して足乗せ部13Bの前部に設けられたペダルで、該各ペダル19は、作業装置5を左,右方向に揺動させたり、オプションで追加された他のアクチュエータ(図示せず)を操作するものである。
【0034】
20は運転席取付台15の右側から前側に延びて設けられた空調用ダクトで(図2参照)、該空調用ダクト20は、空調装置の室内機から供給される温風または冷風を、例えばオペレータの上半身、足元、運転室の前側等に向けて吹き出すものである。
【0035】
21は旋回フレーム6の左前側に設けられたキャブである。このキャブ21は、運転席16の周囲と上部を覆うことにより、オペレータが各種操作を行う運転室を形成するものである。また、キャブ21は、矩形状の枠体として該キャブ21の下端部に形成されたベース枠体21Aと、逆U字状に形成され該ベース枠体21Aの左端部に取付けられた左ピラー21Bと、逆U字状に形成され前記ベース枠体21Aの右端部に取付けられた右ピラー21Cと、前記左ピラー21Bの前,後方向の中間位置に上,下方向に延びて設けられた中間ピラー21Dと、前記各ピラー21B,21C,21D間に形成された前面部21E、後面部21F、左側面部21G、右側面部21H、天井面部21Jとにより上側が閉塞された箱体として構成されている。
【0036】
また、キャブ21の左側には、中間ピラー21Dの前側でベース枠体21A、左ピラー21Bとに囲まれて乗降口21Kが形成されている。この乗降口21Kは、オペレータがキャブ21(運転席16)に乗り降りするときの通り道となっている。さらに、中間ピラー21Dには、乗降口21Kを開閉するドア21Lが取付けられている。
【0037】
ここで、キャブ21の取付ベースとなるベース枠体21Aは、振動や揺れに耐えてフロア部材13にキャブ21を固定するものであるから、例えば断面L字状の鋼材を内向きに張出すように配置し、矩形状をなすように溶接することで強度部材として形成されている。また、ベース枠体21Aは、フロア部材13の周縁部分にボルト止め代分だけ重なるように、張出し寸法が設定されている。
【0038】
そして、ベース枠体21Aは、図3に示すように、フロア部材13の周縁部分に上側から重ねた状態で、所望の取付間隔で配置された複数本のボルト22(1本のみ図示)を用いてフロア部材13の周囲に取付けられている。また、角枠状のベース枠体21Aのうち、乗降口21Kの位置には、上側に重なるように後述するメンテナンスカバー23の左側折曲板25(滑止め部25D)が配置されている。
【0039】
次に、キャブ21内に位置してフロア部材13上に重なるように設けられるメンテナンスカバー23について述べる。
【0040】
即ち、図7において、23はフロア部材13の上面に取付け、取外し可能に取付けられたメンテナンスカバーを示している。このメンテナンスカバー23は、図11、図12に示すように、フロア部材13のメンテナンス用開口13C,13Dを開閉可能に閉塞するもので、足乗せ部13Bの上面の後側寄り位置に取付け、取外し可能に取付けられている。また、メンテナンスカバー23は、図8、図11に示す如く、板体に上,下方向に折曲げた凹凸曲げ部を形成することにより断面凹凸形状の立体構造体として構成されている。そして、メンテナンスカバー23は、図9、図10に示す如く、後述の中央折曲板24、左側折曲板25、右前側折曲板26、右後側折曲板27により構成されている。
【0041】
24はメンテナンスカバー23の大部分を構成する中央折曲板で、該中央折曲板24は、フロア部材13のメンテナンス用開口13C,13Dのほぼ全体を覆い隠すものである。また、中央折曲板24は、図11に示すように、足乗せ部13Bの上面に重なる平板部24Aと、該平板部24Aから上側に突出するように設けられた凹凸曲げ部としての例えば2つの突条部24Bとにより構成されている。また、平板部24Aには、フロア部材13に固定するための後述のボルト28が挿通されるボルト挿通孔24Cが複数個穿設されている。
【0042】
ここで、中央折曲板24の2本の突条部24Bは、例えば略長方形状に切り出された1枚の鋼板に左,右方向に延びる折曲線に沿ってほぼ直角の曲げ加工を施すことにより、上側に突出して左,右方向の全長に延びる四角形状の凸部として形成されている。これにより、中央折曲板24は、左,右方向に延びて設けた各突条部24Bが高強度なリブとして作用するから、このリブ構造によって上側からの荷重に耐えて上,下の撓みを抑えることができる。
【0043】
また、左,右方向に延びて形成した各突条部24Bは、オペレータが足を乗せたときに、その両足を突条部24B上の高い位置、または平板部24A上の低い位置に揃えて置くことができる。しかも、突条部24Bは、その上面を平坦に形成しているから、中央折曲板24のほぼ全体を平坦面として形成することができる。さらに、1枚の鋼板を折曲げて形成した中央折曲板24は、その構造から高い剛性を得ることができ、板厚の薄い鋼板を選択することができる。
【0044】
25は中央折曲板24の左側に設けられた左側折曲板で、該左側折曲板25は、中央折曲板24の左端部に溶接等の固着手段を用いて一体的に固着されている。また、左側折曲板25は、図12示すように、足乗せ部13Bの上面に重なる平板部25Aと、該平板部25Aの右側から上側に突出するように設けられ中央折曲板24の左側面を閉塞する立上り板部25Bと、前記平板部25Aの左側にクランク状に屈曲して設けられ足乗せ部13Bとの間に後述の隙間を形成する重ね板部25Cと、該重ね板部25Cの左端部を上向きに折曲げて形成された滑止め部25Dとにより構成されている。また、平板部25Aの前,後位置には、フロア部材13に固定するためのボルト28が挿通されるボルト挿通孔25Eが形成されている。さらに、重ね板部25Cの後側寄りには、キャブ21を固定するボルト22を避けるための切欠部25Fが形成されている。
【0045】
そして、左側折曲板25の立上り板部25Bは、例えば略長方形状に切り出された1枚の鋼板に前,後方向に延びる折曲線に沿って曲げ加工を施すことにより、立上がって前,後方向に延びるように形成されている。これにより、左側折曲板25は、前,後方向に延びて設けた立上り板部25Bが高強度なリブとして作用するから、このリブ構造によって上側からの荷重に耐えて上,下の撓みを抑えることができる。また、折曲げて形成した重ね板部25Cと滑止め部25Dも、凹凸曲げ部として機能しており、左側折曲板25の強度を高めることに寄与している。
【0046】
ここで、左側折曲板25の重ね板部25Cと左側折曲板25の足乗せ部13Bとの隙間は、図12に示すように、キャブ21のベース枠体21Aの厚さ寸法とほぼ同じ寸法に設定されている。即ち、重ね板部25Cは、ベース枠体21Aの厚さ寸法とほぼ同じ寸法だけ平板部25Aから上側に平行移動(オフセット)するようにクランク状に曲げられている。これにより、左側折曲板25は、その重ね板部25Cをキャブ21のベース枠体21A上に重ねることができ、メンテナンスカバー23に作用する荷重の一部を高強度なベース部材21Aに負担させることができる。
【0047】
さらに、滑止め部25Dは、キャブ21の乗降口21K側に位置して設けられている。また、滑止め部25Dの上端部には、図9に示すように、前,後方向に所定の間隔で切欠を形成することにより複数個の係合突起25D1が突設されている。これにより、滑止め部25Dは、乗降するときにキャブ21の乗降口21Kを通る方向とほぼ直交する前,後方向に複数個の係合突起25D1を列設して設けることができ、乗降口21Kのほぼ全幅となる前,後方向の広い範囲で乗降時における足の滑りを防止することができる。
【0048】
26は中央折曲板24の右前側に設けられた右前側折曲板、27は中央折曲板24の右後側に設けられた右後側折曲板をそれぞれ示し、該右前側折曲板26と右後側折曲板27とは、一体的に固着されることでメンテナンスカバー23の右側折曲板を構成している。まず、右前側折曲板26は、平板部26Aと、該平板部26Aの左側から上側に突出するように設けられ中央折曲板24の右側面を閉塞する立上り板部26Bとにより、前,後方向に延びる断面L字状の強度部材として形成されている。また、右前側折曲板26には、平板部26Aの前側位置にボルト挿通孔26Cが形成されている。一方、右後側折曲板27は、平板部27Aと中央折曲板24の右側面を閉塞する立上り板部27Bとにより、傾斜しつつ前,後方向に延びた断面L字状の強度部材として形成されている。
【0049】
そして、右前側折曲板26は、中央折曲板24の右端部の前側寄りに溶接等の固着手段を用いて固着され、右後側折曲板27は、中央折曲板24の右端部の後側寄りと右前側折曲板26の後端部とに溶接等の固着手段を用いて固着されている。
【0050】
このように、メンテナンスカバー23は、中央折曲板24、左側折曲板25、右前側折曲板26および右後側折曲板27により構成され、複数本のボルト28を用いてフロア部材13の足乗せ部13B上面に取付け、取外し可能に取付けられている。このときに、メンテナンスカバー23は、板体を上,下方向に折曲げた多くの凹凸曲げ部を有しており、断面凹凸形状の立体構造体を構成している。
【0051】
即ち、メンテナンスカバー23は、中央折曲板24の突条部24B、左側折曲板25の立上り板部25B、右前側折曲板26の立上り板部26B、右後側折曲板27の立上り板部27B等によって断面凹凸形状の立体構造体として構成している。これにより、メンテナンスカバー23は、各部の板厚寸法を大きくすることなく、上側から作用する曲げ荷重等に対する剛性を高めることができる。
【0052】
本実施の形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について説明する。
【0053】
まず、運転席16に乗り込む場合、オペレータは、下部走行体2の履帯2D上に乗り、キャブ21のドア21Lを開き、乗降口21Kの位置で足を掛けてキャブ21内に乗り込む。このときに、乗降口21Kの下部には、メンテナンスカバー23を構成する左側折曲板25の滑止め部25Dが配設されているから、オペレータは、この滑止め部25Dの各係合突起25D1によって足を滑らすことなく運転席16に乗り込むことができ、同様にキャブ21から降りることもできる。
【0054】
そして、運転席16に着座したオペレータは、走行用操作レバー・ペダル18を操作することにより、下部走行体2を走行させて作業現場まで移動することができる。また、作業現場まで移動したら、作業用操作レバー17を操作することにより、作業装置5等を俯仰動させ、土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0055】
次に、フロア部材13の下側に配設されたセンタジョイント9、旋回モータ10、制御弁装置11およびこれらに接続された油圧ホース12のメンテナンス作業(点検作業、修理作業等)を行う場合について述べる。
【0056】
まず、メンテナンスカバー23をフロア部材13に固定している各ボルト28を緩めて取外し、このメンテナンスカバー23を作業の邪魔にならないようにキャブ21の外部に移動する。ここで、メンテナンスカバー23は、断面凹凸形状の立体構造体として形成することで重量が軽減されているから、このメンテナンスカバー23の取外し作業および移動作業では、該メンテナンスカバー23を容易に取扱うことができる。
【0057】
また、メンテナンスカバー23を取外したら、フロア部材13の足乗せ部13Bに設けた左側メンテナンス用開口13Cと右側メンテナンス用開口13Dを通じ、センタジョイント9、旋回モータ10、制御弁装置11、各油圧ホース12等のメンテナンス作業を行うことができる。そして、各部のメンテナンス作業が終了したら、各メンテナンス用開口13C,13Dを閉じるように、フロア部材13の足乗せ部13Bにメンテナンスカバー23をボルト止めする。この取付作業でも軽量化されたメンテナンスカバー23は容易に取扱うことができる。
【0058】
かくして、本実施の形態によれば、フロア部材13の各メンテナンス用開口13C,13Dを覆うために足乗せ部13Bに取付けられるメンテナンスカバー23は、突条部24Bを有する中央折曲板24、立上り板部25B等を有する左側折曲板25、立上り板部26Bを有する右前側折曲板26および立上り板部27Bを有する右後側折曲板27により構成している。これにより、メンテナンスカバー23は、上記構成によって板体を上,下方向に折曲げた凹凸曲げ部を有しており、断面凹凸形状をもった立体構造体として形成することができる。
【0059】
従って、メンテナンスカバー23は、立体構造により曲げ荷重等に対する剛性を高めることができるから、メンテナンスカバー23は、同等の剛性をもった厚肉なメンテナンスカバーと比較し、その重量を軽減することができる。
【0060】
この結果、フロア部材13の足乗せ部13Bにメンテナンスカバー23を取付け、取外しするときには、軽量なメンテナンスカバー23を容易に取扱うことができるから、フロア部材13の下側に配置されたセンタジョイント9、旋回モータ10、制御弁装置11、各油圧ホース12等のメンテナンス作業や組立作業の作業性を向上することができる。
【0061】
また、メンテナンスカバー23の左側折曲板25には、フロア部材13の乗降口側となるキャブ21の乗降口21K側に位置してオペレータが足を掛けたときの滑りを止める滑止め部25Dを設けている。従って、オペレータは、滑止め部25Dによって足を滑らせることなくフロア部材13に乗り降りすることができる。また、滑止め部25Dは、メンテナンスカバー23に一体的に設けているから、該メンテナンスカバー23と一緒に滑止め部25Dをフロア部材13に簡単に取付けることができる。
【0062】
一方、フロア部材13の足乗せ部13B上に取付けたメンテナンスカバー23の一部、即ち、左側折曲板25の重ね板部25Cをキャブ21のベース部材21Aの上側に重ねて配置している。これにより、例えば各メンテナンス用開口13C,13Dを設けたことによってフロア部材13の足乗せ部13Bの強度が低下した場合でも、メンテナンスカバー23に作用する荷重は、強度をもったキャブ21のベース部材21Aで受止めることができるから、足乗せ部13Bの局部的な変形等を防止することができる。
【0063】
さらに、中央折曲板24には突条部24Bを左,右方向に延びて設け、左側折曲板25には立上り板部25B等を前,後方向に延びて設け、右前側折曲板26,右後側折曲板27には立上り板部26B,立上り板部27Bを前,後方向に延びて設ける構成としている。従って、メンテナンスカバー23は、上,下方向の荷重に対し、左,右方向と前,後方向のいずれの方向に対しても強度を発揮することができ、上,下方向の撓みを抑えることができる。これにより、メンテナンスカバー23は、全体にバランスよく剛性をもたせることができるから、板厚を薄くして軽量化することができる。
【0064】
なお、実施の形態では、メンテナンスカバー23の中央折曲板24に設けた2本の突条部24Bは、該中央折曲板24の左,右方向の全長に亘って形成する構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図13に示す第1の変形例によるメンテナンスカバー31のように、中央折曲板32の平板部32Aに複数、例えば左,右方向に延びる凹凸曲げ部としての5つの突条部32Bを千鳥に配置する構成としてもよい。ここで、突条部の個数、配置は、例示したものに限定されることはなく、キャブ21内のレイアウト、操作形態等の条件によって適宜に設定することができる。
【0065】
また、実施の形態では、メンテナンスカバー23の中央折曲板24に設けた2本の突条部24Bは、鋼板にほぼ直角の曲げ加工を施すことにより上側に突出した四角形状の凸部として形成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図14に示す第2の変形例によるメンテナンスカバー41のように、中央折曲板42の平板部42Aに左,右方向に延びる略三角形状(山形状)の突条部42Bを凹凸曲げ部として複数設ける構成としてもよい。ここで、突条部の形状は、例示した四角形状、三角形状に限定されることはなく、必要とされる強度の分布、足を乗せる位置等の条件によって適宜に設定することができる。
【0066】
また、実施の形態では、メンテナンスカバー23を、中央折曲板24、左側折曲板25、右前側折曲板26、右後側折曲板27の4部材から構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、メンテナンスカバーを1部材ないし3部材または5部材以上から構成してもよい。この場合、メンテナンスカバーを構成する部材の数は、全体の形状、組立て易さ等によって適宜に設定することができる。
【0067】
特に、右前側折曲板26と右後側折曲板27とは、1つの部材として形成してもよい。それ以外にも、右前側折曲板26と右後側折曲板27とに代えて前,後方向に真直ぐに延びた1つの右側折曲板を設ける構成としてもよい。さらに、右前側折曲板26と右後側折曲板27とを廃止する構成としてもよい。
【0068】
一方、実施の形態では、前面部21E、後面部21F、左側面部21G、右側面部21H、天井面部21Jにより箱形状に形成され、左側面部21Gに乗降口21Kが形成されたキャブ21を用いたキャブ仕様の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、例えば運転席の上方を覆うキャノピを備えたキャノピ仕様の油圧ショベルに適用する構成としてもよい。
【0069】
さらに、実施の形態では、建設機械として油圧ショベル1を例示した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば油圧クレーン、ホイールローダ等の他の建設機械にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 油圧ショベル(建設機械)
2 下部走行体
3 旋回装置
4 上部旋回体
5 作業装置
6 旋回フレーム
9 センタジョイント(機器)
10 旋回モータ(機器)
11 制御弁装置(機器)
13 フロア部材
13A 運転席取付部
13B 足乗せ部
13C 左側メンテナンス用開口
13D 右側メンテナンス用開口
16 運転席
21 キャブ
21A ベース枠体
21B 左ピラー
21C 右ピラー
21D 中間ピラー
21E 前面部
21F 後面部
21G 左側面部
21H 右側面部
21J 天井面部
21K 乗降口
23,31,41 メンテナンスカバー
24,32,42 中央折曲板
24A,25A,26A,27A,32A,42A 平板部
24B,32B,42B 突条部(凹凸曲げ部)
25 左側折曲板
25B,26B,27B 立上り板部
25D 滑止め部
26 右前側折曲板
27 右後側折曲板
28 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、該上部旋回体に俯仰動可能に設けられた作業装置とからなり、
前記上部旋回体は、支持構造体をなす旋回フレームと、該旋回フレーム上に設けられ後側に運転席が取付けられると共に該運転席の前側がオペレータが足を乗せる足乗せ部となり該足乗せ部の左,右方向の一側が乗降口となったフロア部材と、該フロア部材で覆われた状態で前記上部旋回体内に配置された機器類のメンテナンスを行うために該フロア部材の足乗せ部に開口して設けられたメンテナンス用開口と、該メンテナンス用開口を開,閉するために前記足乗せ部に取付け、取外し可能に取付けられたメンテナンスカバーとを備えてなる建設機械において、
前記メンテナンスカバーは、板体に上,下方向に折曲げた凹凸曲げ部を形成することにより断面凹凸形状の立体構造体として構成したことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記メンテナンスカバーには、前記フロア部材の乗降口側となる左,右方向の一側部位にオペレータが足を掛けたときの滑りを止める滑止め部を設ける構成としてなる請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
ベース枠体上に設けられた前面部、後面部、左側面部、右側面部および天面部を有し、前記運転席の周囲と上部を覆うキャブを備え、
前記キャブは、前記ベース枠体を前記フロア部材の周縁に取付ける構成とし、
前記メンテナンスカバーは、左,右方向の一端側を前記キャブのベース枠体の上側に重ねて配置する構成としてなる請求項1または2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記メンテナンスカバーは、前記凹凸曲げ部が左,右方向に延び前記メンテナンス用開口を覆う中央折曲板と、前,後方向に延びた立上り板部を有して形成され該中央折曲板の左,右方向の一側に固着された一側折曲板と、前,後方向に延びた立上り板部を有して形成され前記中央折曲板の左,右方向の他側に固着された他側折曲板とにより構成してなる請求項1,2または3に記載の建設機械。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2010−163753(P2010−163753A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4808(P2009−4808)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】