説明

建設機械

【課題】上面両端部に把手が形成された複数のバッテリを小さなスペースに効率良く設置可能なバッテリ搭載構造を提供する。
【解決手段】建設機械に、長方形のバッテリ搭載部1を設け、該バッテリ搭載部1内に、2つのバッテリ2,3を収納する。バッテリ2,3には、長手方向の両端部に把手2a,3aが設けられる。バッテリ搭載部1内において、バッテリ2,3は、把手2a,3aが設けられた側面を突き合わせ、その突き合わされた各側面を左右方向に所定量だけずらし、かつ、バッテリ搭載部1を構成する各壁面Cに対して斜めに配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン始動用電源などとして用いられるバッテリが搭載された建設機械に係り、特に、車体に対するバッテリの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ポンプの駆動源としてエンジンを用いる建設機械には、エンジン始動用電源としてバッテリが搭載されている。また、このバッテリは、建設機械に備えられる照明装置等の各種電装品用の電源、及びマイクロコンピュータを備えた制御装置等の各種電子機器用の電源としても利用される。
【0003】
このように、近年の建設機械は、消費電力が大きいため、バッテリが1つだけでは足りず、複数個のバッテリの搭載が必要になる場合もあるが、建設機械の床面は狭く、しかも床面の形状が複雑な場合も多いので、複数のバッテリを搭載可能なスペースを確保することが困難である。
【0004】
従来、このような問題を解決するため、複数のバッテリの向きを相互に90度ずつ変更して、狭いバッテリ搭載部内に複数のバッテリを効率的に搭載できるようにしたもの(例えば、特許文献1参照。)や、平面形状が異なる複数種のバッテリを組合わせて、狭いバッテリ搭載部内に複数のバッテリを効率的に搭載できるようにしたもの(例えば、特許文献1参照。)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−173949号公報
【特許文献2】特開2007−261543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、バッテリの設定に複雑なケース及び保持部材を必要とするので、部品コストが高く、かつ建設機械に対するバッテリの搭載作業や建設機械からのバッテリの取り外し作業に多大の労力を要するという問題がある。また、特許文献2に記載の技術は、平面形状が異なる複数種のバッテリを用意しなくてはならないので、建設機械の組立時において、その管理に多大の労力を要し、建設機械が高コスト化するという問題がある。
【0007】
また、これら特許文献1,2においては、上面両端部に把手が設けられたバッテリを用いることについて何らの考慮もされておらず、建設機械に対するバッテリの搭載作業及び建設機械からのバッテリの取り外し作業を効率化する上で、改善の余地がある。即ち、車載バッテリとして、上面両端部に把手が設けられたものと用いれば、特別な治具を用いることなくバッテリを容易に持ち上げることができるので、建設機械に対するバッテリの取り付け・取り外し作業を容易なものにすることができる。
【0008】
しかしながら、上面両端部に把手が設けられたバッテリは、把手が形成された側面を突き合わせて複数のバッテリを配置すると、把手に指をかけることが著しく困難になって、作業性が害されたり、作業時に誤って手指を挟みやすくなるので、狭いバッテリ搭載部内に複数のバッテリを搭載することが可能で、しかも良好な作業性や安全性を確保できるバッテリの配列を工夫する必要がある。
【0009】
本発明は、かかる従来技術の問題を解消するためになされたものであり、その目的は、上面両端部に把手が形成された複数のバッテリを小さなスペースに効率良く設置可能なバッテリ搭載構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するため、第1に、上面両端部に把手が設けられた複数のバッテリを、車体に設定された平面形状が四角形のバッテリ搭載部内に搭載してなる建設機械において、前記複数のバッテリを、前記把手が設けられた側面を相互にずらし、かつ、前記バッテリ搭載部を構成する少なくとも1つの壁面に対して斜めに配置するという構成にした。
【0011】
かかる構成によると、バッテリの把手が設けられた側面を相互にずらすので、把手を持ちやすく、建設機械に対するバッテリの取り付け・取り外し作業時における良好な作業性及び安全性が確保される。また、バッテリ搭載部を構成する少なくとも1つの壁面に対してバッテリを斜めに配置するので、壁面に対してバッテリを平行に配置する場合とは異なり、壁面とバッテリとの間の一部に広い空間を設けることができる。よって、この空間を利用してハーネス、ホース、その他の部材を配置することができ、バッテリ搭載部の有効利用が図れると共に、バッテリの最低液面線を目視しやすくなることから、バッテリのメンテナンスを行いやすくなる。
【0012】
本発明は第2に、前記第1の建設機械において、前記複数のバッテリを、前記把手が設けられた側面どうしを対向させて配置するという構成にした。
【0013】
バッテリの把手は、通常、バッテリ本体の長手方向の端部に設けられているので、バッテリの把手が設けられた側面どうしを対向させて複数のバッテリを配置することにより、細長い平面形状を有するバッテリ搭載部への適用が可能になる。
【0014】
本発明は第3に、前記第1の建設機械において、前記複数のバッテリを、前記把手が設けられていない側面どうしを対向させて配置するという構成にした。
【0015】
上述の通り、バッテリの把手は、通常、バッテリ本体の長手方向の端部に設けられているので、バッテリの把手が設けられていない側面どうしを対向させて複数のバッテリを配置することにより、縦横比が小さい平面形状を有するバッテリ搭載部への適用が可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の建設機械は、複数のバッテリを、把手が設けられた側面を相互にずらし、かつ、バッテリ搭載部を構成する少なくとも1つの壁面に対して斜めに配置するので、建設機械に対するバッテリの取り付け・取り外し作業時における良好な作業性及び安全性が確保されると共に、壁面とバッテリとの間の一部に広い空間を設けることができ、バッテリ搭載部の有効利用と、バッテリのメンテナンスの容易化とを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態に係る建設機械のバッテリ搭載部を示す平面図である。
【図2】実施形態に係る建設機械のバッテリ搭載部を示す斜視図である。
【図3】実施形態に係る建設機械に適用されるバッテリ固定具の斜視図である。
【図4】他の実施形態に係る建設機械のバッテリ搭載部を示す平面図である。
【図5】さらに他の実施形態に係る建設機械のバッテリ搭載部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る建設機械の実施形態を、図1乃至図3に従って説明する。
【0019】
実施形態に係る建設機械には、図1及び図2に示すように、ラジエータの設置スペースA及びユーティリティスペースBに隣接して長方形のバッテリ搭載部1が設けられており、該バッテリ搭載部1内に、2つのバッテリ2,3が収納されている。これら2つのバッテリ2,3は、長手方向の両端部に把手2a,3aが設けられている。バッテリ搭載部1内において、これら2つのバッテリ2,3は、把手2a,3aが設けられた側面を突き合わせて配置し、その突き合わされた各側面を左右方向に所定量だけずらし、かつ、バッテリ搭載部1を構成する各壁面Cに対して斜めに配置されている。
【0020】
バッテリ搭載部1内に収納されたバッテリ2,3は、図3に示すように、ねじ棒11と、締め付け金具12と、蝶ナット13とからなる固定具4をもって固定される。ねじ棒11は、下端部にフック11aを形成すると共に、上端部に雄ねじ11bを形成してなる。一方、締め付け金具12は、その両端部に、ねじ棒11の上端部を貫通するためのねじ貫通孔(図示省略)が開設されている。バッテリ2,3の固定は、ねじ棒11の下端部に形成されたフック11aをバッテリ搭載面に形成されたフック係合部14に係合すると共に、その上端部に形成された雄ねじ11bを、バッテリ1の上面側に配置された締め付け金具12のねじ貫通孔に貫通し、締め付け金具12の上面より上方に突出したねじ棒11の雄ねじ11bに蝶ナット13を螺合することにより行われる。
【0021】
本例の建設機械は、バッテリ2,3の把手2a,3aが設けられた側面を相互にずらすので、何れのバッテリ2,3についても把手2a,3aが把持しにくくなることが無く、バッテリ搭載部1に対するバッテリ2,3の取り付け・取り外し作業時における良好な作業性が確保される。また、一方のバッテリ2の把手2aを掴んだときに、手指が他方のバッテリ3の把手3aに当たりにくくなるので、把手2a,3aの間に手指を挟み込みにくく、作業の安全性が確保される。さらに、バッテリ搭載部1を構成する壁面Cに対してバッテリ2,3を斜めに配置するので、壁面Cに対してバッテリ2,3を平行に配置する場合とは異なり、図1に示すように、壁面Cとバッテリ2,3との間の一部に広い空間Dを設けることができ、この空間Dを利用してハーネス、ホース、その他の部材を配置することができて、バッテリ搭載部1の有効利用を図ることができる。加えて、壁面Cとバッテリ2,3との間の一部に広い空間Dを設けることができることから、図2に示すように、バッテリ2,3の前方に壁面Cがある場合にも、バッテリ2,3の最低液面線5を目視しやすくなり、バッテリ2,3のメンテナンスを容易化することができる。
【0022】
なお、上述の実施形態では、バッテリ搭載部1の平面形状が長方形である場合を例にとって説明したが、図4に示すように、バッテリ搭載部1の平面形状が長方形及び正方形以外の四角形である場合にも、同様に実施することができる。
【0023】
また、上述の実施形態では、2つのバッテリ2,3を、把手2a,3aが設けられた側面を突き合わせて配置する場合を例にとって説明したが、図5に示すように、把手2a,3aが設けられていない側面を突き合わせて、2つのバッテリ2,3を配置する場合にも、同様に実施することができる。本例のバッテリ搭載方式は、縦横比が小さい平面形状を有するバッテリ搭載部1に対して、好適に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、油圧ショベルなどの建設機械の搭載バッテリに利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 バッテリ搭載部
2,3 バッテリ
2a,3a 把手
4 固定具
5 最低液面線
11 ねじ棒
12 締め付け金具
13 蝶ナット13
14 フック係合部
A ラジエータの設置スペース
B ユーティリティスペース
C バッテリ搭載部の壁面
D 利用可能空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面両端部に把手が設けられた複数のバッテリを、車体に設定された平面形状が四角形のバッテリ搭載部内に搭載してなる建設機械において、
前記複数のバッテリを、前記把手が設けられた側面を相互にずらし、かつ、前記バッテリ搭載部を構成する少なくとも1つの壁面に対して斜めに配置したことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記複数のバッテリを、前記把手が設けられた側面どうしを対向させて配置したことを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記複数のバッテリを、前記把手が設けられていない側面どうしを対向させて配置したことを特徴とする請求項1に記載の建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−168779(P2010−168779A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11189(P2009−11189)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)